説明

燃料残量警告装置

【課題】燃料残量減少時の警告動作の繰り返しを抑制することができる燃料残量警告装置を提供する。
【解決手段】イグニッションスイッチ10が継続してON状態にある一期間中において、スピーカ7は、初めて燃料残量が設定値以下であると判定されたときのみに制御装置2により駆動されて警告メッセージ吹鳴を行い、これ以降においては、再度燃料残量が設定値以下であると判定されても警告メッセージ吹鳴が中止される。一方、燃料残量警告灯6は、燃料残量が設定値以下であると判定されたときには必ず点灯される。これにより、運転者が煩わしく警告メッセージ吹鳴動作の実施を必要最小限の回数に留めて、警告メッセージ吹鳴により運転者の運転操作が妨害されることを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンク内の燃料残量が少なくなったときに警告を発生する燃料残量警告装置に関するものであり、特に自動車等に用いて好適である。
【背景技術】
【0002】
従来の燃料残量警告装置としては、たとえば、燃料タンク内に配置された燃料センサからの検出信号に基づいて、マイクロプロセッサユニットにより燃料タンク内の燃料残量が規定値より少なくなったことが判断されると、燃料残量警告灯が点灯される、あるいはスピーカから警告メッセージ音が発せられるように構成されたものがある(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−246947号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般に、燃料タンク内に配置された燃料センサは、燃料タンク内の燃料液面位置を検出して、液面位置に応じた大きさの信号を出力している。一方、自動車の作動中において、燃料タンク内の液面位置は、走行時の車体の振動や、走行路の勾配状況に応じて絶えず変動している。そのため、一旦燃料センサからの検出信号に基づいてマイクロプロセッサユニットにより燃料タンク内の燃料残量が規定値より少なくなったと判断された後に、上述した液面位置変動により燃料センサからの検出信号の大きさが変化して、燃料残量が規定値より多いと判断される場合がある。このような現象が起きると、先ず警告動作、すなわち燃料残量警告灯点灯、あるいはスピーカからの警告メッセージ音発生が実施され、暫くしてそれらが中止されることになる。燃料タンク内の燃料残量が少ない場合は、このような動作が繰り返される。
【0004】
上述した燃料残量減少時の警告動作が繰り返し、つまり警告灯の点滅、あるいは警告メッセージ音の間歇的発生は、運転者には煩わしく感じられ、運転操作の妨げと感じられる可能性がある。特に、警告メッセージ音は、前方を注視している状況においても聞こえてしまうため、特に煩わしく感じられる。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みなされたもので、その目的は、イグニッションスイッチが継続してON状態にある一期間中においては、警告動作を初回のみ実施することにより、燃料残量減少時の警告動作の繰り返しを抑制することができる燃料残量警告装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成する為、以下の技術的手段を採用する。
【0007】
本発明の請求項1に記載の燃料残量警告装置は、燃料タンク内の燃料残量を検出する燃料残量検出手段と、燃料残量検出手段で検出された燃料残量が設定値以下であるか否かを判定する燃料残量判定手段と、燃料残量判定手段により燃料残量が設定値以下であると判定された場合に警告動作を行う警告手段と、警告手段の警告動作履歴を記憶する記憶手段と、イグニッションスイッチが継続してON状態にある一期間中において警告手段が既に警告動作をしているか否かを記憶手段と協働して判定する警告動作履歴判定手段とを備え、警告動作履歴判定手段により警告手段が既に警告動作をしていると判定された時点以降においては、燃料残量判定手段により燃料残量が設定値以下であると判定されると、燃料残量判定手段は警告手段による警告動作を中止させることを特徴としている。
【0008】
このように構成された燃料残量警告装置の作動について説明する。燃料タンク内の燃料残量が減少し、イグニッションスイッチがON状態となって以来初めて燃料残量判定手段により、燃料残量検出手段で検出された燃料残量が設定値以下であると判定される。このときまでに警告手段は作動しておらず、記憶手段には警告手段が作動したことが記憶されていない。したがって、警告動作履歴判定手段により、既に警告手段が動作していないと判定されて、警告手段が動作する。同時に、記憶手段には、警告手段が作動したことが警告動作履歴として記憶される。この後、燃料タンク内の液面変動により、燃料残量が設定値以上であると判定されると、警告手段の動作が停止される。さらに燃料が消費されて液面位置が変化すると、燃料残量判定手段は、再び燃料残量検出手段で検出された燃料残量が設定値以下であると判定する。この時点では、既に記憶手段には警告手段が動作したこと、つまり警告動作履歴が記憶されている。したがって、警告動作履歴判定手段は、記憶手段の記憶内容を参照して、既に警告手段が動作していると判定する。この判定結果に基づいて、燃料残量判定手段は警告手段に警告動作を中止させる。すなわち、本発明の請求項1に記載の燃料残量警告装置によれば、イグニッションスイッチが継続してON状態にある一期間中において、警告手段は、初めて燃料残量が設定値以下であると判定されたときのみに警告動作を行い、これ以降においては、再度燃料残量が設定値以下であると判定されても警告動作が中止されることになる。これにより、警告動作を初回のみ実施することにより、燃料残量減少時の警告動作の繰り返しを抑制可能な燃料残量警告装置を提供することができる。
【0009】
本発明の請求項2に記載の燃料残量警告装置は、警告手段は発音装置であることを特徴としている。
【0010】
警告手段として発音装置を用いると、対象者に警告を確実に認識させることができる反面、警告動作、すなわち警告音発生が頻繁に繰り返されるとその音が運転操作の妨げとして感じられてしまう可能性がある。そこで、警告音発生動作を初回のみ実施する構成とすれば、燃料残量減少時の警告動作の繰り返しにより運転操作を妨害することを抑制できる、という効果を有効に活用することができる。
【0011】
本発明の請求項3に記載の燃料残量警告装置は、警告手段は第1警告部および第2警告部から構成され、記憶手段は第1警告部の警告動作履歴を記憶し、警告動作履歴判定手段はイグニッションスイッチが継続してON状態にある一期間中において第1警告部が既に警告動作をしているか否かを記憶手段の記憶内容を参照して判定し、警告動作履歴判定手段により第1警告部が既に警告動作をしていると判定された時点以降においては、燃料残量判定手段により燃料残量が設定値以下であると判定されると、燃料残量判定手段は第1警告部による警告動作を中止させることを特徴としている。
【0012】
上述した構成によれば、イグニッションスイッチが継続してON状態にある一期間中において、第1警告部は、初めて燃料残量が設定値以下であると判定されたときのみに警告動作を行い、これ以降においては、再度燃料残量が設定値以下であると判定されても警告動作は行われないことになる。一方、第2警告部は、燃料残量が設定値以下であると判定されたときには必ず警告動作を行う。したがって、第1警告部として、それが繰り返し警告動作をすると運転者が煩わしく感じるような装置を採用し、一方、第2警告部として、それが繰り返し警告動作をしても運転者がさほど煩わしく感じないような装置を採用すれば、燃料残量減少時の警告動作の繰り返しによる運転操作妨害を排除しつつ、運転者に対して燃料残量が減少していることを確実に知らせることが可能な燃料残量警告装置を提供することができる。
【0013】
この場合、本発明の請求項4に記載の燃料残量警告装置のように、第1警告部を発音装置により、第2警告部を表示装置によりそれぞれ構成すれば、発音装置による警告動作、つまり警告音発生は、初回のみで、以降繰り返されないので、運転者の運転操作が妨害されることがない。一方、表示装置の警告動作、たとえば警告灯点灯による警告動作は、燃料残量が設定値以下であると判定される毎に実行される。しかし、この警告動作は音を発生せず、また運転者は絶えず車外前方を注視しているため、警告灯点灯が運転者の運転操作の妨げとなることはほとんどない。さらに、燃料残量が設定値以下であると判定される毎に警告灯を点灯させることで、運転者に対して燃料残量が減少していることを確実に知らせることができる。
【0014】
以上から、燃料残量減少時の警告動作の繰り返しによる運転操作妨害を排除しつつ、運転者に対して燃料残量が減少していることを確実に知らせることが可能な燃料残量警告装置を提供することができる。
【0015】
本発明の請求項5に記載の燃料残量警告装置は、イグニッションスイッチが継続してON状態にある一期間中において燃料タンクへ燃料が供給されたか否かを判定する給油判定手段を備え、給油判定手段により給油が行われたものと判定された場合は、記憶手段に記憶される警告動作履歴を消去することを特徴としている。
【0016】
燃料残量警告装置は、イグニッションスイッチがONされてその作動が開始されると、先ず初期化され、このときに記憶手段内の記憶内容が消去される。
【0017】
通常、自動車の燃料タンクに燃料を供給する際にはイグニッションスイッチはOFFされている。給油後に再度イグニッションスイッチONされると、記憶手段に記憶されたそれ以前における警告動作履歴は消去され、このイグニッションスイッチON状態が継続している期間中に初めて燃料残量が設定値以下であると判定されると、警告手段の動作が実行される。
【0018】
ところが、給油中でもエアコンを作動させておきたい場合等においては、給油時にイグニッションスイッチがON状態に維持されることがある。この場合は、給油以前に警告手段が作動していると、記憶手段にはそのことが記憶されており、給油後においても記憶手段には警告手段が既に作動したことが記憶され続ける。このため、給油後もイグニッションスイッチON状態が継続され、燃料残量が設定値以下であると判定されても、警告動作履歴判定手段により既に警告手段が動作している判定され、その結果、警告手段の動作が中止される。すなわち、給油時にイグニッションスイッチがON状態に維持された場合には、給油後に燃料残量が設定値以下であると判定されても警告動作が行われない、という問題が発生する可能性がある。
【0019】
これに対して、本発明の請求項5に記載の燃料残量警告装置のように、イグニッションスイッチが継続してON状態にある一期間中において、給油判定手段により給油が行われたものと判定された場合は、記憶手段に記憶される警告動作履歴を消去する構成とすれば、給油後に最初に燃料残量が設定値以下であると判定されたときに、警告手段に警告動作を行わせることができるので、運転者に確実に燃料残量減少を知らせることができる。
【0020】
本発明の請求項3に記載の燃料残量警告装置は、警告手段は発音手段であることを特徴としている。このような構成とすれば、警告動作を初回のみ実施することにより燃料残量減少時の警告動作の繰り返しにより運転操作を妨害することを抑制できる、という効果を有効に活用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明にかかる燃料残量警告装置の実施の形態について、自動車に搭載された燃料残量警告装置1に適用した場合を例に、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、同一構成要素には同一符号を付してある。
【0022】
(第1実施形態)
図1は、本発明の実施の形態に係る燃料残量警告装置1の電気的な構成を示すブロック図である。この燃料残量警告装置1は、大きくは、制御装置2、燃料タンク8内に設けられた燃料センサ9、燃料計5、第2警告部である表示装置としての燃料残量警告灯6、第1警告部であり発音装置としてのスピーカ7等から構成されている。
【0023】
燃料残量警告装置1は、イグニッションスイッチ10がONされるとバッテリ11から電力を供給されて作動を開始し、燃料センサ9からの検出信号に基づき、燃料タンク8内の燃料残量を算出し、それを燃料計5に表示する。さらに、燃料が消費されて燃料残量が減少し、予め設定されている所定値よりも少なくなると、燃料残量警告灯6を点灯させ且つスピーカ7から警告音を発生させて、燃料残量が減少したことを運転者に警告するものである。
【0024】
先ず、本発明の実施の形態に係る燃料残量警告装置1の構成について説明する。
【0025】
制御装置2は、燃料残量警告装置1が上述した機能を果たすように燃料残量警告装置1全体を制御している。制御装置2は、図1に示すように、マイクロプロセッサユニット(以降、MPUと表す)10、およびメモリ4等から構成されている。
【0026】
MPU3は、燃料残量警告装置1全体の制御を司っており、予め入力されているプログラムに基づいて燃料センサ9からの検出信号を処理して燃料残量を算出するとともに、この算出結果に基づいて燃料計5、燃料残量警告灯6およびスピーカ7の作動を制御している。後述する本発明の燃料残量判定手段、警告発生履歴判定手段、給油判定手段等は、このMPU3により構成されている。このMPU3による制御の内容は後にフローチャートを参照して詳細に説明する。
【0027】
メモリ4は、例えば書き込み可能なリードオンリメモリ(ROM)で構成されており、MPU3の信号処理過程において、MPU3によってデータの書き込み及び読み出しが行われる。なお、このメモリ4は、MPU3に内蔵させることもできる。
【0028】
燃料タンク8は、燃料を貯蔵するものである。この燃料タンク8の内部には、燃料残量検出手段としての燃料センサ9が配置されている。燃料センサ9は、たとえば、燃料タンク8内で燃料液面に浮かび液面に従って上下動するフロートと、このフロートを一端に固定し、他端を中心に揺動するアームと、このアームの揺動に基づいて燃料タンク8内の燃料残量を連続的に検出して燃料残量信号として出力する信号出力部とから構成されている。この燃料センサ9で検出された燃料残量信号はMPU3に供給される。
【0029】
MPU3の制御対象である燃料計5、燃料残量警告灯6およびスピーカ7は、本発明の実施の形態に係る燃料残量警告装置1の場合、図1に示すように、自動車に備えられて当該自動車に係る各種情報を運転者に向けて表示するためのコンビネーションメータ100内に設置されている。
【0030】
燃料計5は、MPU3からの表示信号に応答して現在の燃料残量を表示する。燃料計5は、たとえば、指針計器として構成されている。すなわち、MPU3により駆動されて燃料残量に対応した角度位置に回転される指針と、その背後の文字盤に形成された目盛とにより表示される。燃料残量警告灯6およびスピーカ7は、それぞれMPU3からの駆動信号に応じて作動する。
【0031】
第2警告部である表示装置としての燃料残量警告灯6は、たとえば文字盤に透光性を有するように形成された警告図形と、その背後に配置された光源としての発光ダイオードとから構成されている。MPU3により駆動されて発光ダイオードが点灯すると、警告図形は、発光ダイオードが発する光により透過照明されて所定の色で発光表示される。なお、本発明の実施の形態に係る燃料残量警告装置1の場合、燃料残量が予め設定されている所定値よりも少ない期間中は、燃料残量警告灯6は点灯され続ける。
【0032】
第1警告部である発音装置としてのスピーカ7は、たとえば、MPU3からの駆動信号に応答して燃料残量警告メッセージを発生する。燃料残量警告メッセージは、断続するブザー音を所定時間だけ吹鳴させる、あるいは、メモリ4に予め記憶されている合成音声(たとえば、「燃料が少なくなりました。給油してください」等のことば)を所定回数だけ発生させることにより実施される。
【0033】
以上説明したように構成された燃料残量警告装置1は、運転者の操作によりイグニッションスイッチ10がONされると、バッテリ11から電力を供給されて作動を開始し、イグニッションスイッチ10がOFFされると作動を停止する。
【0034】
以上説明したように構成された、本発明の実施の形態に係る燃料残量警告装置1の動作、すなわち、燃料残量を計測し表示すること、および燃料残量が少なくなったときに警告を発することについて、図2に示すフローチャートを参照しながら説明する。この燃料残量計測・表示・警告処理は、制御装置2内のMPU3およびメモリ4において実行されている。
【0035】
運転者の操作によりイグニッションスイッチがONされると、燃料残量警告装置1にバッテリ11から電力を供給され、制御装置2が燃料残量計測・表示・警告動作を開始する。
【0036】
燃料残量計測・表示・警告動作が開始されると、制御装置2は、先ずステップ110の初期化処理を実行する。この初期化処理では、メモリ3に記憶されている警告メッセージ発生履歴を消去する。すなわち、燃料残量警告装置1を、未だに警告メッセージが発生されていない状態とする。
【0037】
続いて、制御装置2は、ステップ120の処理として、燃料センサ9からの検出信号に基づき燃料残量を計測し、且つ計測された燃料残量を燃料計5により表示すべく、燃料計5に対して表示駆動信号を出力する。
【0038】
続いて、制御装置2は、燃料残量判定手段としてのステップ130の処理を行う。すなわち、ステップ130においては、ステップ120で計測された燃料残量が、予めメモリ4内に記憶されている燃料残量の設定値より少ないかどうかを判定する。この燃料残量の設定値は、たとえば最寄りの給油所まで余裕を持って走行可能であるような燃料量として設定されている。ステップ130における判定の結果、図2に示すように、計測された燃料残量が設定値より少ない場合はステップ140の処理に進む。一方、計測された燃料残量が設定値より多い場合は、ステップ180の処理として、燃料残量警告灯6を消灯させるように、発光ダイオードに(図示せず)に消灯信号を出力し、続いてステップ120の処理に進む。
【0039】
計測された燃料残量が設定値より少ない場合、制御装置2は、ステップ140の処理として、燃料残量警告等6を点灯させるように、発光ダイオード(図示せず)に点灯駆動信号を出力する。続いて、制御装置2は、警告発生履歴判定手段としてのステップ150の処理を行う。ステップ150では、警告メッセージ発生済みであるか否かの判定を行う。これは、MPU3からメモリ4内の記憶領域を参照して行われる。ステップ150における判定の結果、未だ警告メッセージが発生されていない場合は、図2に示すように、続くステップ160の処理に進む。既に警告メッセージが発生されている場合は、ステップ190の処理に進む。
【0040】
未だ警告メッセージが発生されていない場合、制御装置2は、ステップ160の処理として、スピーカ7から警告メッセージを発生させるように、スピーカ7に対して警告メッセージ信号を出力する。続いて、制御装置2は、ステップ170の処理として、警告メッセージを発生したことを、メモリ4内の記憶領域に記録する。
【0041】
既に警告メッセージが発生されている場合は、制御装置2は、上述のステップ160およびステップ170の処理を行わずに、ステップ190の処理に進む。
【0042】
続いて、制御装置2は、給油判定手段であるステップ190の処理を実行する。ステップ190は、燃料残量警告装置1の作動中、すなわちイグニッションスイッチ10が継続してON状態にある一期間中において、給油が行われたか否かを判定する処理である。
【0043】
ステップ190における給油判定処理の一例を説明する。イグニッションスイッチ10が連続してON状態である条件が成立しているときに、当該自動車の停止状態(車速=0km/h)が所定時間継続した後における燃料残存量と、当該停止状態直前における燃料残存量とを比較する。その結果、停止状態が所定時間継続した後の燃料残存量が当該停止状態直前における燃料残存量よりも所定量以上増大した場合に、給油が行われたものと判定している。以上は、給油判定処理の一例であり、他の方法により給油の有無を判定しても良い。
【0044】
ステップ190において、給油が実施されたと判定された場合は、メモリ4内の記憶領域の警告メッセージ発生履歴をリセットする。すなわち、メモリ4内の記憶領域に保存される警告メッセージ発生記録を消去する。これにより、ステップ190の処理に到る前に、警告メッセージ発生処理が実行されそれがメモリ4内に記録されている場合、その記録は消去される。すなわち、イグニッションスイッチ10がONされ、制御装置2が燃料残量計測・表示・警告動作を開始して以来、燃料残量警告メッセージ発生処理は行われていない状態となる。続いて、ステップ120へ進み、上述した各処理を繰り返す。
【0045】
ステップ190において、給油が実施されていないと判定された場合は、直ちにステップ120へ進み、上述した各処理を繰り返す。
【0046】
次に、図3(a)〜図3(f)に示すタイミングチャートを参照して、本実施の形態の動作を総括する。図3(a)は、イグニッションスイッチ10のON時期を、図3(b)は、メモリ4内に記憶される警告メッセージ履歴変更時期を、図3(c)は、メモリ4内に記憶される給油履歴変更時期を、図3(d)は燃料センサ9の出力信号の時間推移、つまり燃料残量の時間推移を、図3(e)は燃料残量警告灯6の点灯・消灯時期を、図3(f)はスピーカ7による警告メッセージ吹鳴時期を、それぞれ示すタイミングチャートである。
【0047】
先ず、図3(a)に示すように、時刻t10において、イグニッションスイッチ10がONされて当該自動車が作動状態に操作され、同時に燃料残量警告装置1が作動を開始する。
【0048】
燃料残量の減少に応じて燃料センサ9の信号レベルが低下し、時刻t11において、図3(d)に示すように、設定値以下となる。すると、燃料残量が設定値以下であると判定され、図3(e)に示すように、燃料残量警告灯6が点灯される。一方、この時点までに、つまりt10からt11までの期間にスピーカ7により警告メッセージが吹鳴されておらず、図3(b)に示すように、警告メッセージ履歴は「無し」である。したがって、警告メッセージ履歴「無し」と判定され、制御装置2によりスピーカ7へ駆動信号が出力され、図3(f)に示すように、スピーカ7から警告メッセージが吹鳴される。
【0049】
当該自動車の走行に伴う燃料タンク8内の液面の揺動に応じて燃料センサ9からの信号レベルが変動する。時刻t12において、燃料センサ9の信号レベルが設定値を超えると、燃料残量が設定値より多いと判定され、図3(e)に示すように、燃料残量警告灯6が消灯される。そして、時刻t13において、燃料センサ9の信号レベルが再び設定値以下となると、燃料残量が設定値以下であると判定され、図3(e)に示すように、再び燃料残量警告灯6が点灯される。時刻t13においては、図3(b)に示すように、警告メッセージ履歴は「有り」の状態のため、制御装置2からスピーカ7へ駆動信号が出力されず警告メッセージは吹鳴されない。さらに、時刻t14において、燃料センサ9の信号レベルが設定値を超えると、燃料残量が設定値より多いと判定され、図3(e)に示すように、燃料残量警告灯6が消灯される。
【0050】
時刻t15において、当該自動車は給油され、燃料センサ9の信号レベルは、図3(d)に示すように、ほぼ満タン時のレベルとなる。これにより、制御装置2は給油実施と判定し、図3(c)に示すように、給油履歴を「無し」から「有り」へ変更する。続いて制御装置2は、警告メッセージ履歴を「有り」から「無し」へ変更する。
【0051】
当該自動車の走行により燃料が消費され、やがて時刻t16に至り、燃料センサの信号レベルが再び設定値以下となると、燃料残量が設定値以下であると判定され、図3(e)に示すように、燃料残量警告灯6が点灯される。また、時刻t16の時点では、図3(b)に示すように、警告メッセージ履歴は「無し」である。したがって、警告メッセージ履歴「無し」と判定され、制御装置2によりスピーカ7へ駆動信号が出力され、図3(f)に示すように、スピーカ7から警告メッセージが吹鳴される。
【0052】
燃料タンク8内の液面の揺動に応じて燃料センサ9からの信号レベルが変動し、時刻t17において、燃料センサ9の信号レベルが設定値を超えると、燃料残量が設定値より多いと判定され、図3(e)に示すように、燃料残量警告灯6が消灯される。そして、時刻t18において、燃料センサ9の信号レベルが再び設定値以下となると、燃料残量が設定値以下であると判定され、図3(e)に示すように、再び燃料残量警告灯6が点灯される。時刻t18においては、図3(b)に示すように、警告メッセージ履歴は「有り」の状態のため、制御装置2からスピーカ7へ駆動信号が出力されず警告メッセージは吹鳴されない。
【0053】
以上説明したように、本発明の実施の形態に係る燃料残量警告装置1では、イグニッションスイッチ10が継続してON状態にある一期間中において、スピーカ7は、初めて燃料残量が設定値以下であると判定されたときのみに制御装置2により駆動されて警告メッセージ吹鳴を行い、これ以降においては、再度燃料残量が設定値以下であると判定されても警告メッセージ吹鳴が中止される。一方、燃料残量警告灯6は、燃料残量が設定値以下であると判定されたときには必ず点灯される。これにより、運転者が煩わしく警告メッセージ吹鳴動作の実施を必要最小限の回数に留めて、警告メッセージ吹鳴により運転者の運転操作が妨害されることを防止できる。一方、運転者の運転操作の妨げとはなり難い燃料残量警告灯6は、燃料残量が設定値以下であると判定されたときには必ず点灯されるので、運転者に対して燃料残量が減少していることを確実に知らせることができる。
【0054】
以上から、燃料残量減少時の警告メッセージ吹鳴動作の繰り返しによる運転操作妨害を排除しつつ、運転者に対して燃料残量が減少していることを確実に知らせることが可能な燃料残量警告装置1を提供することができる。
【0055】
また、本発明の実施の形態に係る燃料残量警告装置1では、イグニッションスイッチ10が継続してON状態にある一期間中において、制御装置2が当該自動車に給油が行われたものと判定した場合は、メモリ4に記憶された警告メッセージ吹鳴履歴を消去する構成としている。以下に、このことの効果について説明する
一般に、自動車の燃料タンクに燃料を供給する際には、安全確保の観点からイグニッションスイッチ10はOFFされている。したがって、給油後に再度イグニッションスイッチONされると、記憶手段に記憶されたそれ以前における警告動作履歴は消去され、このイグニッションスイッチ10のON状態が継続している期間中に初めて燃料残量が設定値以下であると判定されると、制御装置2によりスピーカ7が駆動され警告メッセージ吹鳴動作が実行される。
【0056】
ところが、給油中でもエアコンを作動させておきたい場合等においては、給油時にイグニッションスイッチがON状態に維持されることがある。すなわち、イグニッションスイッチ10を操作してエンジンは停止させるが、イグニッションスイッチ10は依然としてONポジションにある場合がある。給油以前に制御装置2によりスピーカ7が駆動され警告メッセージ吹鳴動作が行われ、メモリ4内に警告メッセージ履歴「有り」と記憶されている場合は、給油後においてもイグニッションスイッチ10が継続してON状態であるため、メモリ4内には警告メッセージ履歴「有り」が記録され続ける。このため、給油後に燃料残量が設定値以下であると判定されると、燃料残量警告灯6は点灯されるが、スピーカ7による警告メッセージ吹鳴が行われないことになり、運転者が燃料残量減少に気付かない恐れがある。
【0057】
そこで、本発明の実施の形態に係る燃料残量警告装置1では、イグニッションスイッチ10が継続してON状態にある一期間中において、制御装置2が当該自動車に給油が行われたものと判定した場合は、メモリ4に記憶された警告メッセージ吹鳴履歴を消去している。これにより、イグニッションスイッチが継続してON状態にある一期間中において給油が実施された場合において、給油後に最初に燃料残量が設定値以下であると判定されたときに、制御装置2はスピーカ7を駆動して警告メッセージ吹鳴動作を行わせる。したがって、運転者に確実に燃料残量減少を知らせて必要な処置を実施させることができる。
【0058】
なお、以上説明した実施の形態においては、第1警告部である発音装置としてスピーカ7を用いているが、スピーカに限定する必要は無く、他の種類の発音装置であってもよい。たとえば、ブザー、ベル等を用いても良い。
【0059】
また、以上説明した実施の形態においては、第2警告部である表示装置として燃料残量警告灯6を用いているが、燃料残量警告灯6に限定する必要は無く、他の種類の表示装置であってもよい。たとえば、液晶表示器の画面上に警告表示画像を形成する構成としてもよい。
【0060】
また、上記の実施の形態では、燃料残量警告装置を自動車に適用した例について言及したが、搭載先は自動車に限られるものではなく、他の車両、鉄道車両、船舶等広く移動体に搭載して有益である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施の形態に係る燃料残量警告装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る燃料残量警告装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態に係る燃料残量警告装置における、(a)は、イグニッションスイッチのON時期を、(b)は、警告メッセージ履歴変更時期を、(c)は、給油履歴変更時期を、(d)は燃料センサの出力信号の時間推移、つまり燃料残量の時間推移を、(e)は燃料残量警告灯の点灯・消灯時期を、(f)は警告メッセージ吹鳴時期を、それぞれ示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0062】
1 燃料残量警告装置
2 制御装置
3 MPU
4 メモリ
5 燃料計
6 燃料残量警告灯(第2警告部、表示装置)
7 スピーカ(第1警告部、発音装置)
8 燃料タンク
9 燃料センサ
10 イグニッションスイッチ
11 バッテリ
100 コンビネーションメータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンク内の燃料残量を検出する燃料残量検出手段と、
前記燃料残量検出手段で検出された燃料残量が設定値以下であるか否かを判定する燃料残量判定手段と、
前記燃料残量判定手段により燃料残量が前記設定値以下であると判定された場合に警告動作を行う警告手段と、
前記警告手段の警告動作履歴を記憶する記憶手段と、
イグニッションスイッチが継続してON状態にある一期間中において前記警告手段が既に警告動作をしているか否かを前記記憶手段の記憶内容を参照して判定する警告動作履歴判定手段とを備え、
前記警告動作履歴判定手段により前記警告手段が既に警告動作をしていると判定された時点以降においては、前記燃料残量判定手段により燃料残量が前記設定値以下であると判定されると、前記燃料残量判定手段は前記警告手段による警告動作を中止させることを特徴とする燃料残量警告装置。
【請求項2】
前記警告手段は発音装置であることを特徴とする請求項1に記載の燃料残量警告装置。
【請求項3】
前記警告手段は第1警告部および第2警告部から構成され、
前記記憶手段は前記第1警告部の警告動作履歴を記憶し、
前記警告動作履歴判定手段はイグニッションスイッチが継続してON状態にある一期間中において前記第1警告部が既に警告動作をしているか否かを前記記憶手段の記憶内容を参照して判定し、
前記警告動作履歴判定手段により前記第1警告部が既に警告動作をしていると判定された時点以降においては、前記燃料残量判定手段により燃料残量が前記設定値以下であると判定されると、前記燃料残量判定手段は前記第1警告部による警告動作を中止させることを特徴とする請求項1に記載の燃料残量警告装置。
【請求項4】
前記第1警告部は発音装置であり前記第2警告部は表示装置であることを特徴とする請求項3に記載の燃料残量警告装置。
【請求項5】
イグニッションスイッチが継続してON状態にある一期間中において前記燃料タンクへ燃料が供給されたか否かを判定する給油判定手段を備え、
前記給油判定手段により給油が行われたものと判定された場合は、前記記憶手段に記憶される警告動作履歴を消去することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一つに記載の燃料残量警告装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−216204(P2008−216204A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−57608(P2007−57608)
【出願日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】