説明

燃料電池およびその運転方法

【課題】起動時に燃料電池スタック全体を均一に加熱する構造を設けることにより、燃料電池全体の大型化を回避しつつ、信頼性に優れる燃料電池を提供する。
【解決手段】燃料(F)と空気(A)とを反応させて発電する燃料電池スタック(3)と、前記燃料電池スタック(3)からの排燃料および排空気を燃焼させる燃焼器(9)と、前記燃焼器(9)で発生した熱を利用して改質燃料を生成する改質器(5)とを備える燃料電池(1)において、外部から導入された空気を、前記燃焼器(9)からの熱によって加熱して前記燃料電池スタックに供給する空気予熱器(7)と、前記空気予熱器(7)で加熱される空気流量と、前記空気予熱器を迂回して直接燃料電池スタック(3)に導入される空気流量との流量比を調整することにより、前記燃料電池スタック(3)に供給される空気の温度を制御する空気温度制御機構(11)とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池スタックからの排ガスを触媒燃焼させる燃焼器を有する燃料電池に関し、特には、燃料電池の起動時における運転のための構造および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換する燃料電池が、高効率でクリーンな発電装置として注目されており、特に、固体酸化物電解質型燃料電池(SOFC)は発電効率に優れることから、種々の用途への展開が期待されている。
【0003】
一般に、SOFCは発電時には600℃〜800℃と高温であり、起動時においては発電可能温度である600℃〜700℃に達するまでに燃料電池スタックを昇温する必要がある。SOFCの起動時において昇温を行うための構成として、燃料電池スタックの底面に、加熱用のバーナを設けることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−335163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように構成された燃料電池では、バーナで加熱された空気でスタックを内部から加熱するとともに、バーナ燃焼ガスで燃料電池スタックを外周部から加熱することにより、燃料電池スタックの外周部と内部との温度差を小さく抑えることで、発電セルの割れを防ぎながら発電セルを効率良く昇温させることができるとしている。しかし、本方式では電池スタックに入って来る空気、および燃焼ガスの微妙な温度制御が困難と考えられ、発電セルに大きな温度勾配が生じてセル割れが発生する可能性が高い。その傾向は燃料電池スタックが複数個の場合により顕著である。また、昇温用に大型バーナを設けるため、ホットモジュールが大型化する。
【0006】
本発明の目的は、上記の課題を解決するために、燃料電池全体の大型化を回避しつつ、起動時に燃料電池スタック全体を均一に昇温する加熱構造を設けることにより発電セル割れを防いで、信頼性の高い燃料電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記した目的を達成するために、本発明に係る燃料電池は、燃料と空気とを反応させて発電する発電セルを複数積層してなる燃料電池スタックと、前記燃料電池スタックから排出された排燃料および排空気を燃焼させて、熱を発生させる燃焼器と、外部から導入された燃料を、前記燃焼器で発生した熱を利用して水蒸気改質することにより改質燃料を生成し、この改質燃料を前記燃料電池スタックに供給する改質器と、外部から導入された空気を、前記燃焼器で発生した熱によって加熱して前記燃料電池スタックに供給する空気予熱器と、前記空気予熱器で加熱される空気の流量と、前記空気予熱器を迂回して直接燃料電池スタックに導入される空気の流量との流量比を調整することにより、前記燃料電池スタックに供給される空気の温度を制御する空気温度制御機構とを備えている。
【0008】
この構成によれば、燃料電池の起動時における燃料電池スタックの昇温においても、空気予熱器を利用して燃料電池スタックを内部から加熱可能であり、しかも、空気温度制御機構を設けたことにより、燃料電池スタックに導入される空気の温度を制御することができる。特には、燃料電池の起動時における昇温を行う場合に、所望の昇温速度に制御することができる。したがって、急激な加熱による発電セルの損傷が回避されるので、燃料電池の信頼性が向上する。さらには、追加の熱源装置を要しないので、燃料電池全体の大型化が抑制される。
【0009】
本発明の一実施形態に係る燃料電池において、さらに、前記改質器に接続されて、この改質器内に還元性ガスを導入する還元ガス導入路を備えていることが好ましい。この構成によれば、改質器に都市ガス等の燃料を導入することのできない燃料電池の起動時において還元ガス導入路および改質器を介して、H、CO等の還元性ガスを燃料電池スタック内に導入することができるので、起動時における改質器内の改質触媒および発電セル燃料極の酸化を防止でき、燃料電池の性能が低下することが防止される。また、上記還元性ガスを、さらに燃焼器内に導入して触媒燃焼反応に利用することができるので、効率的に昇温を行うことが可能となる。
【0010】
本発明の一実施形態に係る燃料電池において、前記空気予熱器が、前記燃料電池スタックの側面の少なくとも一部に対向して配置されていることが好ましい。この構成によれば、燃料電池スタックが、空気予熱器からの空気により内部から加熱されるのみならず、空気予熱器の輻射熱によって外部からも加熱されるので、燃料電池スタック全体が一層均一に加熱される。
【0011】
本発明の一実施形態に係る燃料電池において、前記燃焼器が触媒によって前記排燃料および排空気を燃焼させる触媒燃焼器であり、この燃焼器の内部又は外部に、前記触媒による触媒燃焼反応を起こすのに必要な温度まで加熱する触媒加熱器が設けられていてもよい。あるいは、前記空気予熱器に可燃性ガスを導入する可燃性ガス導入路が接続されており、前記空気予熱器内に、前記可燃性ガスを燃焼させる可燃性ガス着火器が設けられていてもよい。これらの構成によれば、起動バーナ等の大規模な熱源装置を追加することなく、燃料電池スタックの昇温が可能である。
【0012】
本発明の一実施形態に係る燃料電池において、前記燃焼器と、前記改質器および前記空気予熱器の少なくとも一方とが一体的に形成されていることが好ましい。この構成によれば、燃焼器から改質器または空気予熱器への熱供給における熱損失を抑制することにより、燃料電池をコンパクトに構成することができる。
【0013】
本発明の一実施形態に係る燃料電池において、前記燃料電池スタックが扁平な直方体形状の前記発電セルを複数積層してなり、前記改質器、前記空気予熱器および前記燃焼器が、前記燃料電池スタックの外周を囲む角筒形状のスタック外囲ユニットを形成していることが好ましい。この構成によれば、空気予熱器のみならず、改質器からの輻射熱も利用して、燃料電池スタックを一層均一かつ高効率に昇温することができる。
【0014】
また、本発明に係る燃料電池の運転方法は、前記空気温度制御機構によって、前記空気予熱器で加熱された後に前記燃料電池スタックに流入する空気の流量と、前記空気予熱器を迂回して直接前記燃料電池スタックに導入される空気の流量との流量比を調整することにより、前記燃料電池スタックに導入される空気の温度を制御することを含む。この構成によれば、燃料電池の起動時における昇温においても、空気予熱器を利用して燃料電池スタックを内部から加熱することが可能であり、しかも、空気温度制御機構を設けたことにより、燃料電池スタックに導入される空気の温度を制御することができる。特には、燃料電池の起動時における昇温を行う場合に、所望の昇温速度に制御することができる。したがって、急激な加熱による発電セルの損傷が回避されるので、燃料電池の信頼性が向上する。さらには、大型の熱源装置を要しないので、燃料電池の大型化が抑制される。
【0015】
本発明の一実施形態に係る燃料電池の運転方法は、さらに、前記改質器に、この改質器内に還元性ガスを導入する還元ガス導入路を接続し、当該燃料電池の起動時において、前記還元性ガスを前記改質器内に導入することを含む。この構成によれば、還元ガス導入路および改質器を介して還元性ガスを燃料電池スタック内に導入することができるので、昇温時における改質器内の改質触媒および発電セル燃料極が酸化して、燃料電池の性能が低下することが防止される。また、上記還元性ガスを、さらに燃焼器内に導入して触媒燃焼反応に利用することができるので、効率的に昇温を行うことが可能となる。
【0016】
本発明の一実施形態に係る燃料電池の運転方法は、さらに、当該燃料電池の起動時において、前記触媒加熱器によって前記触媒を加熱して触媒燃焼反応を起こすことにより前記空気予熱器に熱を供給し、この熱を利用して前記空気を加熱することにより前記燃料電池スタックを昇温することを含む。この構成によれば、触媒燃焼器の燃焼触媒を利用することにより、起動時の昇温用に、起動バーナのような大掛かりな加熱装置が不要となる。したがって、燃料電池全体の大型化を一層抑制しながら、燃料電池スタックを均一に昇温することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明に係る燃料電池およびその運転方法によれば、起動時に燃料電池スタック全体を均一に加熱する加熱構造を設けることにより、燃料電池全体の大型化を回避しつつ、燃料電池の信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態に係る燃料電池を示す斜視図である。
【図2】図1のII-II方向から見た縦断面図である。
【図3】図1の燃料電池の構成を示すブロック図である。
【図4】図1の燃料電池を示す横断面図である。
【図5】図1の燃料電池の変形例として外部触媒加熱器を設けた燃料電池を示す断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る燃料電池を示すブロック図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る燃料電池を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施形態を図面に従って説明するが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0020】
図1は、本発明の第1実施形態に係る燃料電池1を示す斜視図である。燃料電池1は、発電装置として使用されるものであり、燃料電池スタック3、改質器5、空気予熱器7、燃焼器9および空気温度制御機構11を主要な構成要素として備えている。
【0021】
図1のII-II方向から見た縦断面図である図2に模式的に示すように、燃料電池1は後述の断熱部材で囲まれた密閉された高温室13内に設置されている。燃料電池スタック3は、燃料と空気とを反応させて発電する扁平な直方体形状の発電セル15を、その主面と直交する方向Xに、セパレータ17を介して複数積層して構成されている。各発電セル15は燃料極(アノード)と空気極(カソード)との間にイオン導電性セラミック製電解質を介在させた固体酸化物型燃料電池(SOFC)として構成されている。また、図1に示すように、燃料電池スタック3の底部には、スタックアダプタ19が取り付けられている。スタックアダプタ19内には燃料電池スタック3に接続する空気用、燃料用、排燃料用のガス流路が設けられている。燃料電池1の発電時においては、空気供給管21、燃料供給管23を通じて、空気及び燃料が燃料電池スタック3へ供給されるとともに、燃料電池スタック3に供給された燃料が排燃料配管25を介して排燃料EFとして排出され、その一部あるいは全部が燃焼器9へ導入される。また、燃料電池スタック3に供給された空気が燃料電池スタック3の空気極から排空気EAとして高温室13に排出され、燃焼器9へ導入される。
【0022】
燃料電池1の発電時においては、改質器5には、外部から燃料導入通路を形成する燃料導入管27を介して、水蒸気を含む燃料Fが導入され、水蒸気改質反応によって、改質燃料RFであるHおよびCO等が生成される。なお、燃料Fとしてはメタン、都市ガス、バイオガス等が使用できる。そのため、改質器5内には、図2に示すように、改質触媒29として、ニッケル、ルテニウム等を担持したアルミナボールが充填されている。改質触媒29としては、このほかに、水蒸気改質用触媒として一般的に用いられる各種の金属粒子を使用することができる。
【0023】
燃料電池1の起動時においては、図3に示すように、改質器5には還元ガス導入管31を介してH,CO等の還元性ガスRGが導入される。昇温時に改質器5内に導入された還元性ガスRGは、燃料供給管23を介してスタックアダプタ19に送られた後、燃料電池スタック3の発電セル燃料極に供給され、さらに排燃料配管25を介して燃焼器9に供給される。
【0024】
このように、起動時においては還元ガス導入管31を介して還元性ガスRGを供給することにより、改質器5内の改質触媒29(図2)や、燃料電池スタック3内の燃料極に用いられるニッケルが酸化することを防止できる。これにより、燃料電池1の発電特性および長期信頼性の低下が抑制される。
【0025】
空気予熱器7は、空気ブロワ35によって外部から導入された空気Aを、主に燃焼器9で発生した熱によって加熱する。より具体的には、図4に示すように、空気予熱器7は、外部からの空気Aが導入される空気室37と、この空気室37に隣接して設けられた燃焼ガス室39とを有している。燃焼ガス室39には、燃焼器9からの高温の燃焼ガスBGが導入され、燃焼ガス室39に流入した燃焼ガスBGの熱によって空気室37に導入された空気Aが加熱される。
【0026】
図3に示す空気温度制御機構11は、空気予熱器7に導入される空気の流量を調整することにより、燃料電池スタック3に供給される空気の温度を制御する。具体的には、空気温度制御機構11は、空気ブロワ35からの空気を導入する空気導入路43と、空気導入路43の下流端部に電動モータで起動される三方弁45を介して2方向に分岐して接続された空気予熱器側導入路47および空気予熱器迂回路49とを有している。空気予熱器側導入路47は中途に設けられた空気予熱器7を介してスタックアダプタ19に連通しており、一方、空気予熱器迂回路49は、空気予熱器7を介さずに直接スタックアダプタ19に連通している。空気ブロワ35から導入された空気Aは、空気予熱器7によって加熱された高温空気HAと、空気予熱器迂回路49を通ってきた加熱されていない低温空気LAが合流して昇温空気PHAとなり、空気供給管21を介してスタックアダプタ19に送られた後、燃料電池スタック3の発電セル15の空気極に供給される。
【0027】
このように構成された空気温度制御機構11の三方弁45の開度を調整して、空気予熱器7で加熱される高温空気HAの流量と空気予熱器7を迂回する低温空気LAの流量比を調整することにより、スタックアダプタ19を介して燃料電池スタック3に供給される昇温空気PHAの温度を制御することが可能になる。なお、本実施形態では、空気予熱器側導入路47を通る空気流量と空気予熱器迂回路49を通る空気流量との流量比を調整する機構として三方弁45を用いているが、空気予熱器導入路47,空気予熱器迂回路49への流量比を調整することが可能であれば、どのような機構を用いてもよい。
【0028】
図1に示すように、起動時においては、燃料電池スタック3の燃料極から排出された還元性ガスRGが排燃料流路を形成する排燃料配管25を介して燃焼器9に導入される。また、発電時においては、燃料電池スタック3の燃料極から排出された排燃料Fの一部または全部が排燃料流路を形成する排燃料配管25を介して燃焼器9に導入される。燃焼器9の端部にはパンチングメタルを備える空気導入部9aが設けられており、昇温時においては、燃料電池スタック3の空気極から高温室13に排出された昇温空気PHAが空気導入部9aを介して燃焼器9に導入され、発電時においては、燃料電池スタック3の空気極から高温室13に排出された排空気EAが空気導入部9aを介して燃焼器9に導入される。燃焼器9は、導入された還元性ガスRG(起動時)又は排燃料EF(発電時)および昇温空気PHA(起動時)又は排空気EA(発電時)を燃焼させて、高温の燃焼ガスBGを生成する。燃焼ガスBGは、燃焼器9の下流側端部に接続された空気予熱器7の燃焼ガス室39を経由して外部へ排出される。
【0029】
本実施形態の燃焼器9は、触媒によって還元性ガスRG(起動時)又は排燃料EF(発電時)および昇温空気PHA(起動時)又は排空気EA(発電時)を燃焼させる触媒燃焼器として構成されており、図2に示すように、その内部に、燃焼触媒51として、パラジウム、白金等を担持したアルミナボールが充填されている。燃焼器9における燃焼によって発生する熱は、燃料電池1内に供給され、上述のように改質器5における改質反応および空気予熱器7における空気の加熱に利用される。
【0030】
燃焼器9は、その内部に、燃料電池1の起動時において、燃焼触媒51を加熱するための内部触媒加熱器53を備えている。より具体的には、内部触媒加熱器53は、図1に示すように、燃焼器9内の還元性ガスRGおよび予熱昇温空気PHAの流れ方向における上流側、すなわち空気導入部9aの下流部近傍に設けられている。本実施形態では、内部触媒加熱器53として電熱線ヒータを用いており、電熱線ヒータは外部の電源(図示せず)に接続されている。もっとも、内部触媒加熱器53としては、燃焼器9内に収容可能であり、かつ、還元性ガスRGおよび昇温空気PHAの燃焼反応を起こすのに必要な温度まで燃焼触媒51を加熱できるものであれば、電熱線ヒータに限らず使用することができる。なお、本実施形態における、還元性ガスRGおよび昇温空気PHAの燃焼反応を起こすのに必要な温度は約250℃である。
【0031】
このように、燃焼器9内に内部触媒加熱器53を設けて、燃焼器9の燃焼触媒51を利用することにより、起動時の昇温用に、起動バーナのような大掛かりな加熱装置を設けることが不要となるので、燃料電池1全体の大型化を抑制することができる。
【0032】
以下、燃料電池1の全体構造について説明する。燃料電池1では、空気予熱器7が燃焼器9と一体的に形成されており、さらに、改質器5が燃焼器9および空気予熱器7と一体的に形成されている。すなわち、図1に示すように、改質器5、空気予熱器7および燃焼器9が、単一のユニットハウジング61(図2)に収容されることにより一体化されており、ほぼ角筒形状のスタック外囲ユニット63を形成している。スタック外囲ユニット63の内周部63Aにおいて、図4に示す平面視における一辺の位置を改質器5が占め、他の三辺の位置を空気予熱器7の空気室37が占めている。一方、スタック外囲ユニット63の外周部63Bにおいて、改質器5の外周側の部分が燃焼器9によって形成されており、空気予熱器7の空気室37の外周側の部分が、燃焼ガスの流路を形成する燃焼ガス室39として形成されている。
【0033】
なお、改質器5および空気予熱器7の両方またはいずれか一方が、燃焼器9と別体に形成および配置されていてもよいが、このように一体的に形成することにより、燃焼器9で発生した熱が、放熱損失を抑制しながら改質器5および空気予熱器7に供給される。
【0034】
図2に示すように、燃料電池スタック3は、その外周部3aが、スタック外囲ユニット63によって所定の間隔離間した状態で囲まれている。換言すれば、燃料電池スタック3の外周部3a、つまり、ほぼ直方体形状を有する燃料電池スタック3の、発電セル15の積層方向Xに平行な4つの側面に対向して、スタック外囲ユニット63の内周部63Aを形成する改質器5および空気予熱器7のいずれか一方が配置されている。図1に示すように、スタック外囲ユニット63の全体は、スタックアダプタ19とスタック外囲ユニット63とを接続する燃料供給管23、空気供給管21等の配管およびスタックアダプタ19に取り付けられた金属製の支持部材65によって、燃料電池スタック3を囲むように支持されている。
【0035】
このように、改質器5および空気予熱器7が燃料電池スタック3に対向して配置されているので、起動時において、燃料電池スタック3内に導入される加熱空気によって燃料電池3が内部から加熱されるのみならず、燃焼器9の熱によって加熱された改質器5および空気予熱器7からの輻射熱を利用して燃料電池スタック3を外部からも加熱することができる。特に、本実施形態では、燃料電池スタック3の4つの側面(外周面)の、積層方向Xにおける中央部分60%以上が、改質器5および空気予熱器7に対向するように配置されているので、燃料電池スタック3を積層方向(上下方向)Xにきわめて均一に加熱することができる。なお、燃料電池スタック3を均一に加熱するためには、改質器5または空気予熱器7の代わりに、燃焼器9が直接燃料電池スタック3に対向するように配置されていてもよい。
【0036】
スタック外囲ユニット63は、例えば、ステンレス鋼のような耐食性を有する金属板で形成されたユニットハウジング61の内部に、同じ材質からなる仕切板67を溶接などによって接合して設けることにより形成されている。すなわち、燃焼器9と改質器5とは、ユニットハウジング61を共有し、1枚の仕切板67のみを介して隣接している。同様に、燃焼器9と空気予熱器7とは、ユニットハウジング61を共有し、仕切板のみを介して隣接している。このような構造を有していることにより、熱損失をきわめて小さく抑えながら、燃焼器9から改質器5および空気予熱器7への熱伝達が可能となる。なお、スタック外囲ユニット63を形成する材料は、ステンレス鋼に限らず、機械的強度、耐食性、熱伝導性等を考慮して適宜選択してよい。また、スタック外囲ユニットの構造も、図2に示した例に限らず、機械的強度や組立性を考慮して適宜選択することができる。
【0037】
なお、図4に示すように、燃料電池1は、その外側を密閉構造によって覆う断熱部材69によって形成された高温室13に設置されている。断熱部材69としては、グラスウールのような一般的な断熱材を用いることができる。
【0038】
本実施形態に係る燃料電池1によれば、燃料電池1の起動時において、予熱空気PHAと還元性ガスRGは燃焼器9に入って、内部触媒加熱器53により燃焼反応が起こる約250℃程度まで予熱され、還元性ガスRGが燃焼触媒上で燃焼を開始する。燃焼が開始したら、自立的かつ連続的に燃焼は継続するので内部触媒加熱器53を停止する。発生した燃焼熱で改質器5が加熱されるとともに、燃焼器9を出た高温の燃焼ガスBGが空気予熱器7に入り、空気Aを加熱する。空気予熱器7で加熱された高温空気HAは、空気予熱器7を迂回した低温空気LAと合流して昇温空気PHAとなった後、燃料電池スタック3に入り、燃料電池スタック3を内部から加熱する。その際、空気温度制御機構11により、昇温空気PHAの温度が時間経過とともに直線的に上昇するように、高温空気HAと低温空気LAの流量比が制御される。また、加熱された改質器5、空気予熱器7の輻射熱で燃料電池スタック3を外部から加熱する。燃料電池スタック3は、内部、外部から加熱され、空気量、還元性ガス量、混合比を制御して約600〜700℃まで昇温される。
【0039】
このように、本実施形態に係る燃料電池1によれば、燃料電池1の起動時における昇温においても、空気予熱器7を利用して燃料電池スタック3を内部から加熱可能であり、しかも、空気温度制御機構11を設けたことにより、燃料電池スタック3に導入される空気の温度を制御することができる。特には、燃料電池1の起動時における昇温を行う場合に、所望の昇温速度に制御することができる。したがって、急激な加熱による発電セル15の損傷が回避されるので、燃料電池1の信頼性が向上する。さらには、大型の熱源装置を要しないので、燃料電池1全体の大型化が抑制される。
【0040】
なお、燃焼器9の内部に内部触媒加熱器53を設ける代わりに、または内部触媒加熱器53に追加して、第1実施形態の変形例として、図5に示すように、燃焼器9の外部に外部触媒加熱器71を設けることもできる。具体的には、燃焼器9の外部に配置した、燃焼器9に接触するアルミナボール等のセラミックボール51を充填した加熱器ハウジング73内に外部触媒加熱器71として電熱線ヒータを設けており、電熱線ヒータに通電してセラミックボール51を加熱し、燃焼器9の外部触媒加熱器に接した燃焼触媒51を予熱するものである。ここでは、加熱器ハウジング73内の充填物としてセラミックボール51を例として挙げたが、充填物としては加熱器ハウジング73の熱容量を増加させることのできるものであれば何でもよい。
【0041】
また、燃焼器9の予熱方法として内部触媒加熱器53を設ける代わりに、図6に示す第2実施形態のように、空気予熱器7の燃焼ガス室39に可燃性ガスCFを導入する可燃性ガス導入路77を接続し、燃焼ガス室39に、この可燃性ガスCFを燃焼させる可燃性ガス着火器79を設けてもよい。この実施形態の場合も、起動時の燃焼器9の予熱用に、バーナのような大掛かりな加熱装置を設けることが不要となるので、燃料電池1全体の大型化を抑制することができる。本実施形態において燃焼ガス室39に導入される可燃性ガスCFとしては、例えば、メタンや都市ガスのような燃料電池1の燃料と同様のガスを用いることができる。また、可燃性ガス着火器79としては、例えば、点火プラグのような点火装置を用いることができる。この可燃性ガスCFの燃焼により、空気予熱器7、さらに空気Aが加熱され、スタックを加熱する。スタックから出た空気PHAが燃焼器9を250℃程度に予熱する。
【0042】
さらに、図7に示す第3実施形態のように、小型パイロットバーナ81を設けて空気ブロワ83とバーナ燃料BFを燃焼させて高温ガスHGを発生させ、高温室13内に高温ガスHGを送り込んで燃焼器9を予熱する方法も考えられる。何れの方法においても、第1実施形態の場合と同様、還元性ガスRGが燃焼を開始したら、燃焼器9の予熱を停止する。
【0043】
以上のとおり、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0044】
1 燃料電池
3 燃料電池スタック
5 改質器
7 空気予熱器
9 燃焼器
11 空気温度制御機構
A 空気
HA 高温空気
LA 低温空気
PHA 昇温空気
EA 排空気
F 燃料
RF 改質燃料
EF 排燃料
RG 還元性ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料と空気とを反応させて発電する発電セルを複数積層してなる燃料電池スタックと、
前記燃料電池スタックから排出された排燃料および排空気を燃焼させて、熱を発生させる燃焼器と、
外部から導入された燃料を、前記燃焼器で発生した熱を利用して水蒸気改質することにより改質燃料を生成し、この改質燃料を前記燃料電池スタックに供給する改質器と、
外部から導入された空気を、前記燃焼器で発生した熱によって加熱して前記燃料電池スタックに供給する空気予熱器と、
前記空気予熱器で加熱される空気の流量と、前記空気予熱器を迂回して直接燃料電池スタックに導入される空気の流量との流量比を調整することにより、前記燃料電池スタックに供給される空気の温度を制御する空気温度制御機構と、
を備える燃料電池。
【請求項2】
請求項1において、さらに、前記改質器に接続されて、この改質器内に還元性ガスを導入する還元ガス導入路を備える燃料電池。
【請求項3】
請求項1または2において、前記空気予熱器が、前記燃料電池スタックの側面の少なくとも一部に対向して配置されている燃料電池。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項において、前記燃焼器が触媒によって前記排燃料および排空気を燃焼させる触媒燃焼器であり、この燃焼器の内部又は外部に、前記触媒による触媒燃焼反応を起こすのに必要な温度まで加熱する触媒加熱器が設けられている燃料電池。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか一項において、前記空気予熱器に可燃性ガスを導入する可燃性ガス導入路が接続されており、前記空気予熱器内に、前記可燃性ガスを燃焼させる可燃性ガス着火器が設けられている燃料電池。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項において、前記燃焼器と、前記改質器および前記空気予熱器の少なくとも一方とが一体的に形成されている燃料電池。
【請求項7】
請求項6において、前記燃料電池スタックが扁平な直方体形状の前記発電セルを複数積層してなり、前記改質器、前記空気予熱器および前記燃焼器が、前記電池スタックの外周を囲む角筒形状のスタック外囲ユニットを形成している燃料電池。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の燃料電池を運転する方法であって、
前記空気温度制御機構によって、前記空気予熱器で加熱された後に前記燃料電池スタックに流入する空気の流量と、前記空気予熱器を迂回して直接前記燃料電池スタックに導入される空気の流量との流量比を調整することにより、前記燃料電池スタックに導入される空気の温度を制御すること
を含む燃料電池の運転方法。
【請求項9】
請求項8において、さらに、前記改質器に、この改質器内に還元性ガスを導入する還元ガス導入路を接続し、当該燃料電池の起動時において、前記還元性ガスを前記改質器内に導入することを含む燃料電池の運転方法。
【請求項10】
請求項8または9において、さらに、当該燃料電池の起動時において、前記触媒加熱器によって前記触媒を加熱して触媒燃焼反応を起こすことにより前記空気予熱器に熱を供給し、この熱を利用して前記空気を加熱することにより前記燃料電池スタックを予熱することを含む燃料電池の運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−198994(P2012−198994A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60601(P2011−60601)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】