説明

燃料電池システムの駆動方法およびシステム

【課題】安定的に燃料の供給を行うことが可能な燃料電池スタックの駆動方法およびシステムを提供する。
【解決手段】燃料タンクからの燃料供給がない状態で燃料電池スタックにより電力を生成するステップと、前記電力の出力電圧を目標電圧まで減少させるステップと、前記電力の出力電流の増加率を測定するステップと、前記出力電流の増加率が目標増加率よりも低い時、前記燃料電池スタックに燃料の供給を開始するステップと、目標電流水準で前記出力電流を維持するように前記燃料電池スタックの燃料濃度を制御するステップと、を含む、燃料電池システムの駆動方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムの駆動方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は燃料と酸化剤を用いて電気化学的に電力を生産する装置である。具体的には、燃料電池は、外部から持続的に供給される燃料(水素または改質ガス)と酸化剤(酸素または空気)を電気化学反応により直接電気エネルギーに変換させる装置である。
【0003】
このような燃料電池の酸化剤としては、純粋酸素(または酸素が多量含まれている空気)が用いられ、燃料としては、純粋水素(または炭化水素系燃料(LNG、LPG、CHOH)を改質して生成された水素が多量含まれている燃料)が使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃料電池システムにおいて均一な量の燃料を供給するために、精密濃度センサーおよび高精密ポンプが使用される。しかし、精密濃度センサーは温度が変化すると濃度を精密に測定することができないという問題がある。また、特に低流量高精密ポンプは、異物の流入に脆弱性があるので、異物が多い燃料を長時間供給するには耐久性に問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、安定的に燃料の供給を行うことが可能な、新規かつ改良された燃料電池システムの駆動方法およびシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、燃料タンクからの燃料供給がない状態で燃料電池スタックにより電力を生成するステップと、前記電力の出力電圧を目標電圧まで減少させるステップと、前記電力の出力電流の増加率を測定するステップと、前記出力電流の増加率が目標増加率よりも低い時、前記燃料電池スタックに燃料の供給を開始するステップと、目標電流水準で前記出力電流を維持するように前記燃料電池スタックの燃料濃度を制御するステップと、を含む、燃料電池システムの駆動方法が提供される。
【0007】
前記電力を生成するステップにおいて、前記燃料電池スタックで生成される電力の前記出力電圧が開放回路電圧水準で安定化されるまで前記燃料電池スタックを駆動することを含んでもよい。前記電力の出力電圧を減少させる段階において、前記出力電圧は前記目標電圧に到達するまで減少させてもよい。
【0008】
前記目標増加率は0A/sより小さく設定され、前記目標増加率は−0.5A/s〜0A/sの範囲に属するように設定されてもよい。前記出力電圧は前記目標電圧で維持されてもよい。
【0009】
また、前記燃料電池スタックの燃料濃度を制御するステップは、第1期間の間に前記燃料を供給し、第2期間の間に前記燃料の供給を中断してもよい。
【0010】
また、前記燃料ポンプは比例(proportional)制御器、比例積分(proportional−integral、PI)制御器、比例積分微分(proportional−integral−derivative、PID)制御器からなる群より選択された制御器により制御してもよい。
【0011】
また、前記目標電圧で前記出力電圧を維持するステップと、前記燃料電池スタックで温度を測定するステップと、前記測定された温度が限界温度よりも大きい時、前記目標電圧を減少させるステップと、をさらに含んでもよい。
【0012】
また、前記目標電圧を減少させるステップは、前記減少された目標電圧で前記出力電圧を維持するように前記燃料電池スタックの燃料濃度を制御してもよい。
【0013】
また、前記限界温度は基準運転温度よりも2%〜10%高く設定されてもよい。
【0014】
また、前記目標電圧で前記出力電圧を維持するステップと、前記燃料電池スタックを冷却するように構成された冷却ファンに供給される駆動電力を測定するステップと、前記測定された駆動電力が限界駆動電力よりも高い時、前記目標電圧を減少させるステップと、をさらに含んでもよい。
【0015】
また、前記限界駆動電力は基準駆動電力よりも5%〜20%大きく設定されてもよい。
【0016】
また、前記基準駆動電力は前記冷却ファンの最大使用電力の70%で設定されてもよい。
【0017】
本発明のさらに他の観点によれば、燃料タンクから燃料供給がない状態で電力を生成する燃料電池スタックと、前記電力の出力電流が増加するように前記電力の出力電圧を目標電圧まで減少させる手段と、前記出力電流の増加率を測定する手段と、前記出力電流の増加率が目標増加率よりも低い時、前記燃料電池スタックに燃料の供給を開始する手段と、目標電流水準で前記出力電流を維持するように前記燃料電池スタックでの燃料濃度を制御する手段と、を含む燃料電池システムの駆動システムが提供される。
【0018】
また、前記燃料電池スタックの前記燃料濃度を制御する手段は、第1期間の間に前記燃料を供給し、第2期間の間に前記燃料の供給を中断してもよい。
【0019】
また、前記燃料電池スタックの前記燃料濃度を制御する手段は、前記目標電圧で前記出力電圧を維持する手段と、前記燃料電池スタックの温度を測定する手段と、前記測定された温度が限界温度より大きい時、前記目標電圧を減少させる手段と、を含んでもよい。
【0020】
本発明のさらに他の観点によれば、燃料タンクから燃料供給がない状態で電力を生成する燃料電池スタックと、前記電力の出力電流が増加するように前記電力の出力電圧を目標電圧まで減少させ、前記出力電流の増加率を測定する周辺機器と、前記出力電流の増加率が目標増加率よりも低い時、前記燃料電池スタックに燃料の供給を開始し、目標電流水準で前記出力電流を維持するように前記燃料電池スタックの燃料濃度を制御する制御部と、を含む燃料電池システムの駆動システムが提供される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、安定的に燃料の供給を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施例による燃料電池システムを概略的に示した構成図である。
【図2】本発明の第1実施例による燃料電池システムの駆動方法を示したフローチャートである。
【図3】図2に示された燃料電池システムの駆動方法に従う場合、時間に応じた電圧および電流グラフである。
【図4】本発明の第2実施例による燃料電池システムを概略的に示した構成図である。
【図5】本発明の第2実施例による燃料電池システムの駆動方法を示したフローチャートである。
【図6】本発明の第1実施例と第2実施例による燃料電池システムの駆動方法に従うスタックの電圧、電流、電力量、燃料濃度を示したグラフである。
【図7】本発明の第1実施例と第2実施例による燃料電池システムの駆動方法に従うスタックの電流と燃料濃度を示したグラフである。
【図8】本発明の第1実施例と第2実施例による燃料電池システムの駆動方法に従うスタック温度とアノード温度、および外部温度を示したグラフである。
【図9】本発明の第1実施例と第2実施例による燃料電池システムの駆動方法で運転を再開始する時、スタックの電力、電圧、電流、燃料濃度を示したグラフである。
【図10】本発明の第1実施例と第2実施例による燃料電池システムの駆動方法で運転を再開始する時、スタックの電流と燃料濃度を示したグラフである。
【図11】本発明の第3実施例による燃料電池システムを概略的に示した構成図である。
【図12】本発明の第3実施例による燃料電池システムの駆動方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の技術的思想による実施例について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。しかし、本発明の技術的思想による実施例は、さまざまな他の形態に変形され、本発明の範囲が以下で説明する実施例によって限定されるものであると解釈されてはならない。本発明の技術的思想による実施例は、本発明が属する技術分野で当業者に、本発明をさらに完全に説明するために提供されるものである。添付図面の同じ符号は、一貫して同じ構成要素を意味する。
【0024】
燃料電池システムにおいて均一な量の燃料を供給することは重要である。20W級直接メタノール型燃料電池システムの場合、0.03cc/minの流量が変化すれば、約10%の燃料効率差が発生する。このような流量の変化は、運転濃度、運転温度、および運転圧力などの運転状態変化を誘発して燃料電池スタックの安定性を低下させ、寿命を減少させる原因となる。
【0025】
微細流量制御のための最も普遍的な方法は、精密濃度センサーおよび高精密ポンプを使用する方法である。
【0026】
しかしながら、精密濃度センサーは温度が変化すれば濃度を精密に測定することができないという問題がある。温度に応じて濃度センサーを補正する方法があるが、燃料電池スタックで発生する熱により温度センサーが影響を受けるので、周辺温度に応じて正確に補正することが困難であるという問題がある。
【0027】
また、燃料電池システムを長時間使用する場合、精密濃度センサーは零点が変化して濃度測定に誤差が発生するという問題がある。
【0028】
また、低流量高精密ポンプの場合、異物の流入に脆弱性があり、長時間使用時に性能の低下が激しいので、耐久性が弱いという問題がある。低流量高精密ポンプは通常実験で使用するために製造されたものであるので、異物が多い燃料を長時間供給する場合に使用されるには耐久性に脆弱性があるという問題がある。
【0029】
図1は、本発明の第1実施例による燃料電池システムを概略的に示した構成図である。
【0030】
図1を参照して説明する本実施例による燃料電池システム101は、メタノールと酸素の直接的な反応により電気エネルギーを発生させる直接メタノール型燃料電池(Direct Methanol Fuel Cell)方式を採用してもよい。
【0031】
ただし、本発明が直接メタノール型燃料電池方式に制限されることはなく、本実施例による燃料電池システムは、エタノール、LPG、LNG、ガソリン、ブタンガスなどのように水素を含有した液体または気体燃料を酸素と反応させる直接酸化型燃料電池(Direct Oxidation Fuel Cell)方式であってもよい。また、燃料を水素が豊富な改質ガスで改質し、前記改質ガスを酸化させて電気を発生させる高分子電解質型燃料電池(Polymer Electrode Membrane Fuel Cell;PEMFC)からなってもよい。
【0032】
このような燃料電池システム101に使用される燃料は、メタノール、エタノールまたは天然ガス、LPGなどのように液状または気体状態からなる炭化水素系燃料を含む。
【0033】
そして、本燃料電池システム101は、水素と反応する酸化剤として空気を使用してもよく、別途の貯蔵手段に貯蔵された酸素ガスを使用してもよい。
【0034】
本実施例による燃料電池システム101は、燃料と酸化剤を用いて電力を発生させる燃料電池スタック30、燃料電池スタック30に燃料を供給する燃料タンク12、電気生成のための酸化剤を燃料電池スタック30に供給する酸化剤ポンプ21、燃料電池スタック30、および燃料タンク12の間に設置された混合器16を含む。
【0035】
燃料タンク12には第1燃料ポンプ14が連結設置されて所定のポンピング力により燃料タンク12に貯蔵された液状の燃料を燃料タンク12の内部から排出させる。本実施例において燃料タンク12に貯蔵された燃料はメタノールからなってもよい。一方、酸化剤ポンプ21は空気を燃料電池スタック30に供給する役割を果たす。
【0036】
混合器16は燃料タンク12で供給された燃料と前記燃料電池から回収管を通じて回収された水とを混合して燃料電池スタック30に供給する役割を果たす。混合器16と燃料電池スタック30との間には混合器16に貯蔵された燃料を燃料電池スタック30に供給する第2燃料ポンプ18が設置される。
【0037】
燃料電池スタック30は、燃料と酸化剤との酸化/還元反応を誘導して電気エネルギーを発生させる複数の電気生成部35を備える。
【0038】
それぞれの電気生成部35は電気を発生させる単位セルを含み、燃料と酸化剤の中の酸素を酸化/還元させる膜−電極集合体(Membrane Electrode assembly:MEA)31および、燃料と酸化剤を膜−電極集合体31に供給するためのセパレータ(当業界ではバイポーラプレートともいう)32、33を含む。
【0039】
電気生成部35は、膜−電極集合体31を中心としてその両側にセパレータ32、33がそれぞれ配置された構造を有する。セパレータ32、33は、膜−電極集合体31を介して密着配置され、膜−電極集合体31の両側にそれぞれ燃料通路と空気通路を形成する。この時、燃料通路は膜−電極集合体31のアノード電極側に配置され、空気通路は膜−電極集合体31のカソード電極側に配置される。そして、電解質膜はアノード電極で生成された水素イオンをカソード電極に移動させ、カソード電極の酸素と反応して水を生成させるイオン交換を可能にする。
【0040】
これによって、前記アノード電極では酸化反応を通じて水素を電子とプロトン(水素イオン)に分解する。そして、プロトンが電解質膜を通じてカソード電極に移動し、電子は電解質膜を通じて移動することができずに、セパレータ33を通じて隣接した膜−電極集合体31のカソード電極に移動するが、この時、電子の流れにより電流を発生させる。また、カソード電極では移動したプロトンおよび電子と酸素の還元反応を通じて水分が生成される。
【0041】
本燃料電池システム101は、上述したように複数の電気生成部35が連続的に配置されることによって燃料電池スタック30を構成する。燃料電池スタック30の一側には燃料電池スタック30の冷却のための冷却ファン36が設置される。燃料電池スタック30の発電中には多くの熱が発生するので、冷却ファン36により燃料電池スタック30に空気を供給することで、燃料電池スタック30の温度を低める。
【0042】
本実施例による燃料電池スタック30は容量が小さい30w級燃料電池スタック30を例に挙げて説明する。ただし、30w級燃料電池スタック30は例示であり、本発明がこれに制限されることはない。
【0043】
燃料電池スタックには周辺機器50と負荷62が電気的に連結設置される。周辺機器50は、電圧センサー52、電流センサー53、およびコンバータ51を含む。電圧センサー52は燃料電池スタック30の電圧(つまり、出力電圧)を測定し、電流センサー53は燃料電池スタックの電流(つまり、出力電流)を測定する。また、コンバータ51は燃料電池スタック30で生成された電力の出力電圧と出力電流を負荷で使用することができるように補正する役割を果たす。コンバータ51は負荷62と連結されて負荷62に電力を供給する。前記燃料電池システム101は前記測定された電圧と電流に応じて前記第1燃料ポンプ14の駆動を制御する制御器40をさらに含む。
【0044】
図2は、本発明の第1実施例による燃料電池システムの駆動方法を示したフローチャートである。図3は、図2に示された燃料電池システムの駆動方法に従った場合の、時間に応じた電圧および電流グラフである。
【0045】
図2および図3を参照して本実施例による燃料電池システムの駆動方法について考察する。
【0046】
本実施例による燃料電池システム101の駆動方法は、燃料供給なしの運転開始段階(S101)、電圧減少段階(S102)、電流増加率測定段階(S103)、燃料供給開始段階(S104)、および電流に追従して燃料を供給する段階(S105)を含む。
【0047】
燃料供給なしの運転開始段階(S101)では、燃料電池システム101の運転開始時に燃料の供給を中断した状態で燃料電池スタック30にコンバータ51を連結して運転を開始する。この時、開放回路電圧(Open Circuit Voltage、OCV)を確認して安定した値になるまで一定の電圧で燃料電池システム101を運転する。開放回路電圧が安定化されると出力電圧を目標電圧(Vso)まで所定の速度(例えば、一定の速度)で低める(例えば、前記コンバータ51が前記出力電圧を低める)。出力電圧を低めると(一定の電力を維持するために)電流が増加するため、電流は持続的に増加することができずに減少するようになる。これは燃料電池スタック30内部に残留する燃料が発電に参加して全て消耗されたためである。電流が減少し始める時点が燃料電池スタック30内部の燃料濃度が最小化された時点と見ることができる。
【0048】
電流増加率測定段階(S103)は、電流の増加速度を測定して電流増加率が目標増加率(Irso)よりも小さいか判断する。燃料供給開始段階(S104)は、電流増加率が目標増加率(Irso)よりも小さい場合に燃料電池スタック30に燃料の供給を開始する。この時、目標増加率(Irso)は、0(A/s)〜−0.5(A/s)の範囲に属するように設定されてもよい。
【0049】
一方、電流追従燃料供給段階(S105)では、燃料の供給が開始された後、燃料電池スタック30で目標電流(Iso)が出力され得るように燃料の濃度を電流の出力に応じて調節する。この時、燃料電池スタック30の出力電圧はコンバータにより目標電圧(Vso)で一定に固定される。目標電圧(Vso)と目標電流(Iso)は燃料電池システムの種類に応じて適正に設定されてもよい。例えば、定格出力が60Wである燃料電池システムである場合には、目標電圧が1.5V、目標電流が40Aで設定されてもよく、定格出力が300Wである燃料電池システムである場合には、目標電圧が6V、目標電流が50Aで設定されてもよい。
【0050】
電流に追従して燃料を供給する段階(S105)は、混合器16への燃料供給と燃料供給中断を繰り返す段階を含む。本実施例では低精密ポンプである第1燃料ポンプ14が使用されるので、設定された期間で燃料の供給と燃料供給中断を実施すると(例えば、第1期間の間に燃料の供給が実施され、第2期間の間に燃料の供給が中断されると)、全体期間の間に均一な(一定の)量の燃料が供給されたことと同一の効果を得ることができる。例えば、第1燃料ポンプ14により供給され得る最大燃料量の1/10を供給しようとする時、前記第1燃料ポンプ14は設定された期間の1/10の間(例えば、前記第1期間が設定された期間の1/10になってもよい)は燃料を供給し、設定された期間の9/10の間(例えば、前記第2期間が設定された期間の9/10になってもよい)は燃料の供給を中断すると所望の精密度(例えば、所望の量の燃料供給)を得ることができる。混合器16に流入した燃料は水と十分に混合されて燃料電池スタックに流入されるため、均一な(または安定した)濃度を確保することができる。
【0051】
このように出力電圧が目標電圧(Vso)で固定され、燃料の濃度に応じて出力電流が変化すると燃料電池スタック30の損傷を最小化または減少させることができる。反対に、コンバータを用いて強制的に目標電流(Iso)を出力する場合、強制的に反応を起こして燃料電池スタック30が損傷するという問題が発生することがある。
【0052】
燃料の濃度は燃料タンク12から出る燃料の量に応じて決定されるため、第1燃料ポンプ14の作動が電流量に応じて前記制御器40で制御されるため、第1燃料ポンプ14の制御は比例(proportional、P)制御、比例積分(proportional−integral、PI)制御、比例積分微分(proportional−integral−derivative、PID)制御など、一般に適用される多様な方法で制御されてもよい。P、PI、PID制御などは広く知られているので、これに対する詳しい説明は省略する。
【0053】
本実施例によれば、前記制御器40は出力電流に応じて燃料の供給量を制御して濃度センサーなしにも出力電流を目標電流(Iso)で維持するので、より容易に燃料を供給することができる。また、混合器16で高濃度燃料と水が混合されて燃料電池スタック30に供給されるので、低精密ポンプを使用することができる。制御器40(例えば、PID制御器など)として低精密ポンプを使用して燃料タンク12から混合器16に一定量の燃料を周期的に供給すると、安定した濃度の燃料を持続的に(または安定的に)供給する効果を得ることができる。
【0054】
一方、運転開始時には燃料電池スタック30の温度が低いので発電が活発に行われない。この時、燃料の濃度を調節して目標電流を出力するためには、燃料電池スタック30に高濃度の燃料を供給することが考えられるが、これにより燃料電池スタック30が損傷するという問題が発生する。しかしながら、本実施例によれば、燃料タンク12から燃料供給なしに運転を開始し、燃料電池スタック30内部の燃料濃度を最小化させた状態で燃料を供給するので、目標電流を出力するように燃料(例えば、より低い濃度の燃料)が供給され、高濃度の燃料は供給されない。また、燃料電池スタック30内部の残留燃料を用いて運転が開始され、燃料電池スタック30の温度が上昇した状態で燃料が供給されるため、円滑に目標電流を出力することができる。
【0055】
図4は、本発明の第2実施例による燃料電池システムを概略的に示した構成図である。図5は、本発明の第2実施例による燃料電池システムの駆動方法を説明するためのフローチャートである。
【0056】
図4および図5を参照して説明すれば、本実施例による燃料電池システム102は、燃料電池スタック30に設置された温度センサー38をさらに含む。温度センサー38を除いては前記第1実施例による燃料電池システムと同一の構成からなるので、同一の構成についての重複説明は省略する。
【0057】
本実施例による燃料電池システム102の駆動方法は、第1目標電圧下での電流追従燃料供給段階(S201)と燃料電池スタック温度測定段階(S202)と電圧減少段階(S203)、および第2目標電圧下での電流追従燃料供給段階(S204)を含む。
【0058】
第1目標電圧下での電流追従燃料供給段階(S201)は、目標電流(Iso)を出力することができるように燃料電池スタック30に燃料の濃度を調節して供給する。この時、出力電圧は第1目標電圧(Vso1)で維持される定電圧(CV)運転が行われる。
【0059】
一方、燃料電池スタック温度測定段階(S202)では、燃料電池スタック30の温度を測定して燃料電池スタック30の温度が限界温度(Tsl)よりも高いか判断する。燃料電池システム102を長時間駆動する時、燃料電池スタック30の性能が低下するため、第1目標電圧(Vso1)条件で目標電流を出力することができなくなる。この場合、目標電流(Iso)を出力するために高濃度の燃料(または付加的な燃料)が燃料電池スタック30に供給されるという問題が発生する。高濃度の燃料が供給されると燃料電池スタック30で過度な熱が発生するばかりか、燃料電池スタック30が損傷する。本実施例では燃料電池スタック30を冷却するために一側に冷却ファン36が設置され、冷却ファン36は一定の速度で回転するように設定される。これによって、燃料電池スタック温度測定段階(S202)では、温度センサー38を用いて燃料電池スタック30の温度が限界温度(Tsl)よりも高いか判断することができる。
【0060】
ここで限界温度(Tsl)は、基準運転温度よりも2〜10%高い温度で設定される。基準運転温度は燃料電池システムの種類に応じて相異するため、限界温度(Tsl)は基準運転温度に応じて適宜に設定されてもよい。基準運転温度が62℃である直接メタノール型燃料電池(DMFC)を例に挙げれば、限界温度(Tsl)は63.4℃〜68.2℃の範囲内の温度で設定されてもよい。
【0061】
電圧減少段階(S203)は、燃料電池スタック30の温度が限界温度(Tsl)よりも高い場合には第1目標電圧(Vso1)から第2目標電圧(Vso2)に目標電圧を減少させる。燃料電池スタック30の性能低下に応じて目標電圧を減少させると目標電流を出力しても燃料の濃度が過度に高まらない。
【0062】
第2目標電圧(Vso2)下での電流追従燃料供給段階(S204)では、第2目標電圧(Vso2)で電圧を固定したまま、目標電流(Iso)が出力されるように前記燃料ポンプ14を制御する。
【0063】
このように本実施例によれば、長時間運転中、燃料電池スタック30の性能が低下した場合にも、濃度センサーなしで、抵抗体とポンプを用いて圧力の変化に関係なく容易に、燃料の濃度が過度に高まることを防止しながら安定的に精密な流量の燃料を供給することができる。
【0064】
図6は、本発明の第1実施例と第2実施例による燃料電池システムの駆動方法に従うスタックの電圧(V_stack)、電流(I_stack)、電力量(P_stack)、燃料濃度(MeOH)を示したグラフであり、図7は、本発明の第1実施例と第2実施例による燃料電池システムの駆動方法に従うスタックの電流(I_stack)と燃料濃度(MeOH)を示したグラフであり、図8は、本発明の第1実施例と第2実施例による燃料電池システムの駆動方法に従うスタック温度(T_stack)とアノード温度(T_anode)、および外部温度(T_external)を示したグラフである。
【0065】
図6〜図8を参照して説明すれば、前記グラフに適用された燃料電池は30Wの定格出力を有し、正格電圧が20Vであり、正格電流が1.5Aである燃料電池である。
【0066】
まず、図7に示されているように、始動時には第1実施例のように運転して濃度の変化が0.63M〜0.9Mと安定的に示された。また、始動以降、240分〜430分の間には燃料濃度の変化が0.68M〜0.72Mと極めて安定的であることが確認された。
【0067】
図6〜図8に示されているように、運転開始後、200分に近接する時点には燃料の濃度が増加し、燃料電池スタックの温度が約65℃まで上昇することが確認された。200分に燃料電池スタック30の目標電圧を22Vから21Vに低めた時、燃料の濃度がしばらく減少した後、230分以降は燃料の濃度が安定的に維持された。また、この時、燃料電池スタック30の温度および電圧、電流、出力がすべて安定的に維持された。
【0068】
図9は、本発明の第1実施例と第2実施例による燃料電池システムの駆動方法で運転を再開始する時、スタックの電力(P_stack)、電圧(V_stack)、電流(I_stack)、燃料濃度(MeOH)を示したグラフであり、図10は、本発明の第1実施例と第2実施例による燃料電池システムの駆動方法で運転を再開始する時、スタックの電流(I_stack)と燃料濃度(MeOH)を示したグラフである。
【0069】
図8と図10は、燃料電池システムの目標電圧を低めた状態で運転を再開始する時の状態を示す。図8と図9に示されているように、始動30分後には供給される燃料の濃度が安定した状態となり、電流および電力も安定的に出力されることを確認することができる。
【0070】
このように第1実施例と第2実施例によれば、始動時と運転中に濃度センサーなしにも目標電流に追従して安定した濃度の燃料を供給することができる。
【0071】
図11は、本発明の第3実施例による燃料電池システムを概略的に示した構成図であり、図12は、本発明の第3実施例による燃料電池システムの駆動方法を説明するためのフローチャートである。
【0072】
図11および図12を参照して説明すれば、本実施例による燃料電池システム103は、冷却ファン36の駆動電圧を測定する電力センサー37をさらに含む。電力センサー37を除いては前記第1実施例による燃料電池システムと同一の構成からなるので、同一の構成についての重複説明は省略する。
【0073】
本実施例による燃料電池システム103の駆動方法は、第1目標電圧(Vso1)下での電流に追従して燃料を供給する段階(S301)、冷却ファン36駆動電力(P)測定段階(S302)、電圧減少段階(S303)、および第2目標電圧(Vso2)下で電流に追従して燃料を供給する段階(S304)を含む。
【0074】
第1目標電圧(Vso1)下での電流追従燃料供給段階(S301)は、目標電流(Iso)を出力することができるように燃料電池スタックに燃料の濃度を調節して供給する。この時、電圧は第1目標電圧(Vso1)で一定に維持される。
【0075】
一方、冷却ファン36駆動電力(P)測定段階(S302)では、電力センサー37で冷却ファン36の駆動電力(P)を測定して冷却ファン36の駆動電力(P)が限界駆動電力(Pfl)よりも高いか判断する。
【0076】
燃料電池システム102を長時間駆動する時、燃料電池スタック30の性能が低下するため、第1目標電圧(Vso1)条件で目標電流を出力することができなくなる。この場合、目標電流(Iso)を出力するために高濃度の燃料が燃料電池スタック30に供給されるという問題が発生する。高濃度の燃料が供給されると燃料電池スタック30で過度な熱が発生するばかりか、燃料電池スタック30が損傷する。
【0077】
本実施例では燃料電池スタック30が一定の温度を維持することができるように燃料電池スタック30内部の温度が上昇すると冷却ファン36の回転速度が増加するように設定される。これによって、燃料電池スタック30で過度な熱が発生すると冷却ファン36の駆動電力(P)が増加して冷却ファン36の回転速度が上昇し、冷却ファン36の駆動電力(P)が限界駆動電力(Pfl)よりも高いか判断することができる。
【0078】
ここで限界駆動電力(Pfl)は、基準駆動電力よりも5%〜20%高い電力で設定される。基準駆動電力は燃料電池システムの大きさに応じて相異するため、限界駆動電力(Pfl)は基準駆動電圧に応じて多様に設定されてもよい。基準駆動電力が最大使用電力の70%である場合、限界駆動電力(Pfl)は最大使用電力の73.5%〜84%となる。
【0079】
電圧減少段階(S303)は、冷却ファン36の駆動電力(P)が限界駆動電力(Pfl)よりも高い場合には第1目標電圧(Vso1)から第2目標電圧(Vso2)に目標電圧を減少させる。燃料電池スタック30の性能低下に応じて目標電圧を減少させると目標電流を出力しても燃料の濃度が過度に高まらない。
【0080】
第2目標電圧(Vso2)下での電流追従燃料供給段階(S304)では、第2目標電圧(Vso2)で電圧を固定したまま、目標電流(Iso)が出力されるように燃料ポンプを制御する。
【0081】
このように本実施例によれば、長時間運転中に燃料電池スタック30の性能が低下した場合にも濃度センサーなしで容易に、燃料の濃度が過度に高まることを防止しながら安定的に燃料を供給することができる。
【0082】
以上で本発明の好適な実施例について説明したが、本発明はこれに限定されるのではなく、特許請求の範囲と発明の詳細な説明および添付図面の範囲内で多様に変形して実施することが可能であり、これも本発明の範囲に属するのは当然である。
【符号の説明】
【0083】
101、102、103 燃料電池システム
12 燃料タンク
14 第1燃料ポンプ
16 混合器
18 第2燃料ポンプ
21 酸化剤ポンプ
30 燃料電池スタック
36 冷却ファン
31 膜−電極集合体
32、33 セパレータ
35 電気生成部
36 冷却ファン
37 電力センサー
38 温度センサー
40 制御部
50 周辺機器
51 コンバータ
52 電圧センサー
53 電流センサー
62 負荷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクからの燃料供給がない状態で燃料電池スタックにより電力を生成するステップと、
前記電力の出力電圧を目標電圧まで減少させるステップと、
前記電力の出力電流の増加率を測定するステップと、
前記出力電流の増加率が目標増加率よりも低い時、前記燃料電池スタックに燃料の供給を開始するステップと、
目標電流水準で前記出力電流を維持するように前記燃料電池スタックの燃料濃度を制御するステップと、
を含む、燃料電池システムの駆動方法。
【請求項2】
前記電力を生成するステップにおいて、前記燃料電池スタックで生成される電力の前記出力電圧が開放回路電圧水準で安定化されるまで前記燃料電池スタックを駆動する、請求項1に記載の燃料電池システムの駆動方法。
【請求項3】
前記電力の出力電圧を減少させるステップにおいて、前記出力電圧は前記目標電圧に到達するまで減少する、請求項1に記載の燃料電池システムの駆動方法。
【請求項4】
前記目標増加率は0A/sより小さく設定される、請求項1に記載の燃料電池システムの駆動方法。
【請求項5】
前記目標増加率は−0.5A/s〜0A/sの範囲に属するように設定される、請求項4に記載の燃料電池システムの駆動方法。
【請求項6】
前記出力電圧は前記目標電圧で維持される、請求項1に記載の燃料電池システムの駆動方法。
【請求項7】
前記燃料電池スタックの燃料濃度を制御するステップは、
第1期間の間に前記燃料を供給し、
第2期間の間に前記燃料の供給を中断する、請求項1に記載の燃料電池システムの駆動方法。
【請求項8】
前記燃料電池スタックでの燃料濃度を制御するステップは、
前記燃料を前記燃料タンクから混合器に供給するように燃料ポンプを駆動する、請求項1に記載の燃料電池システムの駆動方法。
【請求項9】
前記燃料電池スタックでの燃料濃度を制御するステップは、
前記混合器で、前記燃料タンクから供給された前記燃料と水を混合する、請求項8に記載の燃料電池システムの駆動方法。
【請求項10】
前記燃料ポンプは比例制御器、比例積分制御器、比例積分微分制御器からなる群より選択された制御器により制御される、請求項8に記載の燃料電池システムの駆動方法。
【請求項11】
前記目標電圧で前記出力電圧を維持するステップと、
前記燃料電池スタックで温度を測定するステップと、
前記測定された温度が限界温度よりも大きい時、前記目標電圧を減少させるステップと、
をさらに含む、請求項1に記載の燃料電池システムの駆動方法。
【請求項12】
前記目標電圧を減少させるステップは、前記減少された目標電圧で前記出力電圧を維持するように前記燃料電池スタックの燃料濃度を制御する、請求項11に記載の燃料電池システムの駆動方法。
【請求項13】
前記限界温度は基準運転温度よりも2%〜10%高く設定される、請求項11に記載の燃料電池システムの駆動方法。
【請求項14】
前記目標電圧で前記出力電圧を維持するステップと、
前記燃料電池スタックを冷却するように構成された冷却ファンに供給される駆動電力を測定するステップと、
前記測定された駆動電力が限界駆動電力よりも高い時、前記目標電圧を減少させるステップと、
をさらに含む、請求項1に記載の燃料電池システムの駆動方法。
【請求項15】
前記限界駆動電力は基準駆動電力よりも5%〜20%大きく設定される、請求項14に記載の燃料電池システムの駆動方法。
【請求項16】
前記基準駆動電力は前記冷却ファンの最大使用電力の70%で設定される、請求項15に記載の燃料電池システムの駆動方法。
【請求項17】
燃料タンクから燃料供給がない状態で電力を生成する燃料電池スタックと、
前記電力の出力電流が増加するように前記電力の出力電圧を目標電圧まで減少させる手段と、
前記出力電流の増加率を測定する手段と、
前記出力電流の増加率が目標増加率よりも低い時、前記燃料電池スタックに燃料の供給を開始する手段と、
目標電流水準で前記出力電流を維持するように前記燃料電池スタックでの燃料濃度を制御する手段と、
を含む、燃料電池システムの駆動システム。
【請求項18】
前記燃料電池スタックの前記燃料濃度を制御する手段は、
第1期間の間に前記燃料を供給し、
第2期間の間に前記燃料の供給を中断する、請求項17に記載の燃料電池システムの駆動システム。
【請求項19】
前記燃料電池スタックの前記燃料濃度を制御する手段は、
前記目標電圧で前記出力電圧を維持する手段と、
前記燃料電池スタックの温度を測定する手段と、
前記測定された温度が限界温度より大きい時、前記目標電圧を減少させる手段と、を含む、請求項17に記載の燃料電池システムの駆動システム。
【請求項20】
燃料タンクから燃料供給がない状態で電力を生成する燃料電池スタックと、
前記電力の出力電流が増加するように前記電力の出力電圧を目標電圧まで減少させ、前記出力電流の増加率を測定する周辺機器と、
前記出力電流の増加率が目標増加率よりも低い時、前記燃料電池スタックに燃料の供給を開始し、目標電流水準で前記出力電流を維持するように前記燃料電池スタックの燃料濃度を制御する制御部と、
を含む、燃料電池システムの駆動システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−216483(P2011−216483A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74777(P2011−74777)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】