説明

燃料電池システム及び燃料電池システムの運転方法

【課題】環境温度が変化する場合においても、酸化剤の供給量を精度良く調整することができる燃料電池システムの運転方法を提供する。
【解決手段】燃料電池システム1の運転方法は、環境温度を参照して流量測定装置3の流量計指示目標値が決定され、流量測定装置3が流量計指示目標値を示すように酸化剤供給装置2が制御されて酸化剤が燃料電池6に供給されるため、環境温度の高低に関わらず、燃料電池6の出力電流の電流値に応じた酸化剤物質量の燃料供給が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システム及び燃料電池システムの運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムは、都市ガス、液化天然ガス(LPG)、灯油等の水素含有燃料を改質器に供給して水素を生成し、水素を燃料電池スタックの燃料極に供給すると共に、酸化剤(空気中の酸素)を燃料電池スタックの空気極に供給する。
【0003】
通常、ポンプによって燃料電池の空気極に供給される酸化剤の流量は、物質量を一定として考えた場合、環境温度によって異なる場合がある。例えば、体積流量計を用いる場合は、寒冷地であれば濃度が高まるため小さい体積流量となり、温暖地であれば濃度が低くなるため大きい体積流量となる。このような現象は、寒冷地において酸化剤が濃くなることで効率が低下したり、温暖地において酸化剤が薄くなることで燃料枯れが生じて燃料電池の損傷を招く。
【0004】
従来、このような分野の技術として、下記特許文献1に記載されるように、燃料電池の空気極へ酸化剤を供給するポンプを備え、このポンプに対する制御指示値(出力制御量)をポンプ付近の環境温度(外気温度)に基づいて補正し、補正した制御指示値によりポンプを制御することで、環境温度が変化した場合でも供給量の安定化を図る燃料電池システムが知られている。
【0005】
このシステムでは、例えば、ある環境温度における制御指示値の基準値を記憶しており、システムの運転時における環境温度とその基準値に対応する環境温度との比を基準値に乗じることで、気体の状態方程式に基づく制御指示値の演算を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−207133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、実在の気体を取り扱う場合、また、上記特許文献1に記載されたような、外気温度及び出力電流に基づいて決定されるガス供給量を燃料電池等に供給するために、ガス供給手段の出力を直接的に調整する燃料電池システムにおいては、ガス供給手段の精度や劣化を考慮していないため、燃料電池等に実際に供給されるガス量が正確であるとは限らないという問題がある。
【0008】
本発明は、環境温度が変化する場合においても、酸化剤の供給量を精度良く調整することができる燃料電池システム及び燃料電池システムの運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る燃料電池システムは、気体燃料の改質反応により水素を含有する改質ガスを生成する改質器と、酸化剤と改質ガスとを用いて発電を行う燃料電池と、燃料電池に酸化剤を供給する酸化剤供給手段と、燃料電池に供給される酸化剤の流量を測定する流量測定手段と、燃料電池の出力電流の電流値を測定する電流値測定手段と、環境温度を測定する環境温度測定手段と、電流値に応じて燃料電池に供給すべき単位時間当たりの酸化剤物質量を予め記憶し、環境温度を参照して酸化剤物質量に相当する流量で酸化剤を酸化剤供給手段に吐出させるための流量測定手段の指示目標値を決定し、流量測定手段が指示目標値を示すよう酸化剤供給手段を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る燃料電池システムの運転方法は、気体燃料の改質反応により水素を含有する改質ガスを生成する改質器と、酸化剤と改質ガスとを用いて発電を行う燃料電池と、燃料電池に酸化剤を供給する酸化剤供給手段と、燃料電池に供給される酸化剤の流量を測定する流量測定手段と、燃料電池の出力電流の電流値を測定する電流値測定手段と、環境温度を測定する環境温度測定手段と、電流値に応じた酸化剤物質量を予め記憶する制御手段と、を備えた燃料電池システムにおいて、電流値に応じて燃料電池に供給すべき単位時間当たりの酸化剤物質量を決定するステップと、環境温度を参照して酸化剤物質量に相当する流量で酸化剤を酸化剤供給手段に吐出させるための流量測定手段の指示目標値を決定するステップと、流量測定手段が指示目標値を示すよう酸化剤供給手段を制御するステップと、を備えることを特徴とする。
【0011】
これらの燃料電池システム及び燃料電池システムの運転方法によれば、環境温度を参照して、電流値に応じた酸化剤物質量に相当する流量の酸化剤が酸化剤供給手段によって吐出されるよう、流量測定手段の指示目標値が決定される。よって、環境温度が変化する場合においても、電流値に応じた酸化剤物質量を燃料電池に供給することができ、酸化剤の供給量を精度良く調整することができる。
【0012】
また、本発明に係る燃料電池システムにおいて、制御手段は、流量測定手段の経年劣化情報を記憶しており、記憶した経年劣化情報を更に参照して指示目標値を決定することが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る燃料電池システムの運転方法において、制御手段は、流量測定手段の経年劣化情報を記憶しており、経年劣化情報を参照して指示目標値を決定するステップを更に備えることが好ましい。
【0014】
これらの燃料電池システム及び燃料電池システムの運転方法によれば、長期間の使用により流量測定手段に経年劣化が生じた場合であっても、この経年劣化が酸化剤供給手段の制御に加味されるため、酸化剤供給手段の精度や劣化に拠らず、酸化剤の供給量を確実に調整でき、システムの運用効率および長期信頼性を高めることができる。
【0015】
また、本発明に係る燃料電池システムにおいて、制御手段は、流量測定手段の運転時間の累積値を経年劣化情報として記憶することが好ましい。
【0016】
また、本発明に係る燃料電池システムの運転方法において、制御手段は、流量測定手段の運転時間の累積値を経年劣化情報として記憶しており、運転時間の累積値を参照して指示目標値を決定するステップを備えることが好ましい。
【0017】
これらの燃料電池システム及び燃料電池システムの運転方法によれば、経年劣化情報として流量測定手段の運転時間の累積値を用いることにより、流量測定手段を構成する部品等の機械的な劣化を容易に推定することができるため、酸化剤の供給量をより精度良く調整することができる。
【0018】
また、本発明に係る燃料電池システムにおいて、制御手段は、流量測定手段によって測定される流量の累積値を経年劣化情報として記憶することが好ましい。
【0019】
また、本発明に係る燃料電池システムの運転方法において、制御手段は、流量測定手段によって測定される流量の累積値を経年劣化情報として記憶しており、流量測定手段によって測定される流量の累積値を参照して指示目標値を決定するステップを備えることが好ましい。
【0020】
これらの燃料電池システム及び燃料電池システムの運転方法によれば、経年劣化情報として流量測定手段によって測定される流量の累積値を用いることにより、酸化剤に含まれる不純物の蓄積等による流量測定手段の経年劣化状態を容易に推定することができるため、酸化剤の供給量をより精度良く調整することができる。
【0021】
また、本発明に係る燃料電池システムにおいて、制御手段は、指示目標値をマップとして記憶しており、マップに基づいて指示目標値を決定することが好ましい。
【0022】
また、本発明に係る燃料電池システムの運転方法において、制御手段は、指示目標値をマップとして更に記憶しており、マップに基づいて指示目標値を決定するステップを備えることが好ましい。
【0023】
これらの燃料電池システム及び燃料電池システムの運転方法によれば、環境温度測定手段及び電流値測定手段によってそれぞれ測定される環境温度及び電流値、若しくは流量測定手段の経年劣化情報に対応づけられた制御指示値をマップから選択することにより、演算負荷を一層低減することができる。
【0024】
また、上記作用をより効果的に発揮させる構成としては、流量測定手段は、体積に基づく流量測定手段である構成が挙げられる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、環境温度が変化する場合においても、酸化剤の供給量を精度良く調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る燃料電池システムの一実施形態を概略的に示すブロック図である。
【図2】燃料電池システムにおける制御手順を示すフローチャートである。
【図3】流量測定手段の運転時間の累積値のマップを示す図である。
【図4】第2実施形態における制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0028】
[第1実施形態]
図1に示されるように、本実施形態の燃料電池システム1は、気体燃料を用いて水素を含有する改質ガスを生成する改質器5と、空気と改質ガスとを用いて発電を行う固体酸化物形燃料電池6と、を備えている。
【0029】
改質器5は、内部に改質触媒を収容しており、水蒸気改質、部分酸化改質、自己熱改質などの改質反応により、改質ガスを生成する。改質触媒としては、公知の触媒を用いることができる。
【0030】
気体燃料としては、改質ガスの原料として固体酸化物方燃料電池の分野で公知の炭化水素系燃料、すなわち、分子中に炭素と水素とを含む化合物(酸素等、他の元素を含んでいてもよい)若しくはその混合物から適宜選んで用いることができる。例えば、炭化水素類、アルコール類、エーテル類等、分子中に炭素と水素とを含む化合物である。より具体的には、メタン、エタン、プロパン、ブタン、天然ガス、LPG(液化石油ガス)、都市ガス、ガソリン、ナフサ、灯油、軽油等の炭化水素類、メタノール、エタノール等のアルコール類、ジメチルエーテル等のエーテル類等である。なかでも、灯油やLPGは、入手が容易であるため好ましい。また、灯油やLPGは、独立して貯蔵可能であるため、都市ガスのラインが普及していない地域において有用である。更に、灯油やLPGを利用した固体酸化物方燃料電池は、非常用電源として有用である。なお、常温で液体である燃料の場合、例えば気化器によって気化することで、気体燃料として用いることができる。
【0031】
燃料電池6は、改質器5で生成された改質ガスを燃料として用い、SOFC(Solid Oxide Fuel Cells)と称される複数のセルを直列させてなるセルスタックで発電を行う。各セルは、固体酸化物である電解質が燃料極と空気極との間に配置されることで構成されている。電解質は、例えばイットリア安定化ジルコニア(YSZ)からなり、800℃〜1000℃の温度で酸化物イオンを伝導する。燃料極は、例えばニッケルとYSZとの混合物からなり、酸化物イオンと燃料極に供給される改質ガス中の水素とを反応させて、電子及び水を発生させる。空気極は、例えばランタンストロンチウムマンガナイトからなり、空気極に供給される空気中の酸素と電子とを反応させて、酸化物イオンを発生させる。
【0032】
また、燃料電池システム1は、燃料電池6の空気極に酸化剤としての空気を供給する酸化剤供給装置2と、酸化剤供給装置2によって燃料電池6に供給される空気の流量を測定する流量測定装置3と、燃料電池6の出力電流の電流値を測定する電流値測定装置7と、環境温度を測定する環境温度測定装置8と、を備えている。更に、燃料電池システム1は、電流値測定装置7によって測定された電流値および環境温度測定装置8によって測定された環境温度に基づいて酸化剤供給装置2を制御する制御装置4を備えている。
【0033】
ここで、環境温度とは、燃料電池システム1が設置された環境における外気温である。更に、以下の説明において用いる酸化剤物質量とは、酸化剤供給装置2によって燃料電池6に供給される空気の単位時間あたりの質量(酸素に換算した場合、モル数あるいは質量)である。
【0034】
酸化剤供給装置2は、燃料電池6の空気極に空気を供給するためのポンプを有している。酸化剤供給装置2は、後述する流量測定手段3で取得される値が、燃料電池6に供給すべき空気の単位時間当たりの酸化剤物質量に相当する流量になるようフィードバック制御することにより、燃料電池6の空気極に空気を供給する。
【0035】
酸化剤供給装置2は、ポンプの運転中においては、運転中である旨を示す情報を制御装置4に出力する。酸化剤供給装置2は、ポンプのほか、空気の供給ラインに設けられた調節弁等を有している。
【0036】
流量測定装置3は、空気の供給ラインに設けられた流量計を有している。流量測定装置3は、体積に基づく空気の流量を測定し、流量の測定値を制御装置4に出力する。ここで、流量測定装置3による流量の測定精度は、使用初期においては誤差が小さく高精度であるが、使用年月が長くなるにつれて、流量測定装置3を構成する部品の機械的な劣化や、酸化剤に含まれる不純物等が流路に付着することによる劣化により、測定精度が低下する傾向にある。
【0037】
電流値測定装置7は、燃料電池6における掃引電流値を測定する電流計を有しており、測定した掃引電流値を制御装置4に出力する。
【0038】
環境温度測定装置8は、環境温度を測定する温度計を有している。この温度計は、具体的には、酸化剤供給装置2の周辺に設置されて、酸化剤供給装置2の周辺の温度を測定し、測定した環境温度を制御装置4に出力する。
【0039】
制御装置4は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及び入出力インターフェイス等を有して構成されており、燃料電池システム1のシステム全体を制御するものである。すなわち、制御装置4は、燃料電池6における発電量(例えば燃料電池6からの電流掃引)を制御する。また、制御装置4は、電流測定装置7から出力される掃引電流値Iを、環境温度測定装置8から出力される環境温度Kを、また流量測定装置3から出力される酸化剤(空気)の実流量Faをそれぞれ取得する。そして、取得した各情報に基づいて所定の処理を実行することにより、酸化剤供給装置2を制御する。
【0040】
制御装置4は、掃引電流値に応じた燃料電池6に供給すべき酸化剤の酸化剤物質量を予め記憶している。そのため、制御装置4は、電流測定装置7から取得した掃引電流Iを取得することにより、発電に必要な酸化剤の酸化剤物質量Nfを決定することができる。なお、掃引電流値に応じた酸化剤物質量は、計算式として記憶していてもよいし、実験的に得られた好適な値をマップとして記憶していてもよい。
【0041】
また、制御装置4は、環境温度測定装置8から取得した環境温度Kを参照して、流量測定装置3の指示目標値Ftを決定する。指示目標値は、気体の状態方程式を用いて都度演算を行ってもよいし、環境温度毎に流量測定装置の好適な指示目標値をマップとして予め記憶しておき、そのマップを参照して指示目標値を決定してもよい。
【0042】
更に、制御装置4は、流量測定装置3から取得した酸化剤供給装置2が吐出している実際の酸化剤流量Faと、流量測定装置3の指示目標値Ftとを比較する。そして、制御装置4は、実際の酸化剤流量Faと指示目標値Ftとが等しくなるように酸化剤供給装置2を制御する。具体的には、実際の酸化剤流量Faが指示目標値Ftより小さい場合は酸化剤供給装置2の吐出量を上げ、反対に、実際の酸化剤流量Faが指示目標値Ftより大きい場合は酸化剤供給装置2の吐出量を下げるように、酸化剤供給装置2を制御する。
【0043】
なお、図示は省略するが、燃料電池システム1は、改質器5に水蒸気を供給する水蒸気供給装置と、改質器5に気体燃料を供給する燃料供給装置と、を備えている。水蒸気供給装置は、改質器5と一体に又は改質器5とは別体に設けられた気化器によって水を気化し、水蒸気として改質器5に供給する。
【0044】
続いて、本実施形態における制御装置4の機能について説明する。図2は、第1実施形態において、燃料電池システムが起動し、発電を開始したときに制御装置4が実行する処理のフロー図である。図2に示される各処理は、燃料電池システム1の通常運転中、制御装置4によって繰り返し実行される。
【0045】
まず、制御装置4は、掃引電流値Iを取得し(S1)、取得した掃引電流値Iのときに燃料電池6に供給すべき単位時間当たりの酸化剤物質量Nfを決定する(S2)。
【0046】
次に、環境温度Kを取得し(S3)、当該温度において酸化剤物質量Nfに相当する所望の流量Xを決定する(S4)。そして、当該所望の流量で酸化剤を酸化剤供給装置2に吐出させるための流量測定装置3の指示目標値Ftを決定する(S5)。
【0047】
次に、制御装置4は、現在の燃料電池6に供給されている酸化剤流量Faを取得し(S6)、指示目標値Ftと比較する(S7)。現在の酸化剤流量Faと指示目標値Ftとが等しい場合は、ステップS1に戻り、ステップS1〜S7の処理を繰り返す。一方、現在の酸化剤流量Faと指示目標値Ftとが等しくない場合は、酸化剤供給装置2の出力を調整する(S8)。具体的には、制御装置4は、Fa<Ftの場合は酸化剤供給装置2の吐出量を増やすように酸化剤供給装置2を制御し、Fa>Ftの場合は酸化剤供給装置2の吐出量を減らすように酸化剤供給装置2を制御する。そして、ステップS6に戻り、再び現在の酸化剤流量Faを取得して指示目標値Ftと比較する。
【0048】
本実施形態の燃料電池システム1及び燃料電池システム1の運転方法によれば、環境温度を参照して流量測定装置3の流量計指示目標値Ftが決定され、流量測定装置3が流量計指示目標値を示すように酸化剤供給装置2が制御されて酸化剤が燃料電池6に供給されるため、環境温度の高低に関わらず、燃料電池6の出力電流の電流値に応じた酸化剤物質量の酸化剤供給が可能になる。
【0049】
また、環境温度に基づく制御指示値の設定は予めマップとして記憶することができるため、数式から求められる値の他、実験的に得られたより好適な値を記憶することができ、好適な値を低演算負荷で実現することができる。従って、環境温度が変化する場合においても、演算負荷を低減しつつ酸化剤の供給量を精度よく調整することができる。
【0050】
[第2実施形態]
第2実施形態の燃料電池システムは、図1に示した燃料電池システム1と同様の構成を有しているが、制御装置4は、流量測定装置3の経年劣化情報を更に記憶しており、また、制御装置4における処理が第1実施形態とは異なっている。本実施形態においては、流量測定装置3の指示目標値を決定する際に流量測定装置3の経年劣化情報を加味する処理を有する。具体的には、経年劣化情報として、流量測定装置3の運転時間の累積値を用いる。図3は、当該経年劣化情報を加味した酸化剤吐出量と流量測定装置3指示値との関係を示すマップである。図4は、本実施形態において、燃料電池システムが起動し、発電を開始したときに制御装置4が実行する処理のフロー図である。図4に示される各処理は、燃料電池システムの通常運転中、制御装置4によって繰り返し実行される。
【0051】
図4に示されるように、制御装置4は、環境温度Kを取得し(S3)、当該温度において酸化剤物質量Nfに相当する所望の流量Xを決定した後、流量測定装置3の累積運転時間tを取得する(S9)。制御装置4は、流量測定装置3の累積運転時間tから経年劣化情報であるマップを選択する。具体的には、掃引電流値I、必要な酸化剤物質量Nf及び環境温度Kから決定される所望の酸化剤流量がX1である場合、0年≦t年<3年の場合はマップM1を参照し(S10〜S11A)、指示目標値X1に決定する(S5A)。3年≦t年<5年の場合はマップM2を参照し(S10〜S11B)、指示目標値FtをX2に決定する(S5B)。5年≦t年<6年の場合はマップM3を参照し(S10〜S11C)、指示目標値FtをX3に決定する(S5C)。以下、第1実施形態と同様に、現在の酸化剤流量Faと指示目標値Ftとを比較する。
【0052】
本実施形態の燃料電池システム及び燃料電池システムの運転方法によれば、流量測定装置3を長期使用することにより生じる流量測定装置3を構成する部品類の機械的劣化や、燃料に含まれる不純物が流路に蓄積することによる劣化による、流量測定装置3の指示値と実際の吐出量との誤差を加味して指示目標値Ftを決定することができる。これによって酸化剤の供給量を精度良く調整でき、システムの運用効率および長期信頼性を高めて長期的な寿命を確保することができる。
【0053】
なお、上述の実施形態では、グラフ形式のマップを用いて説明したが、マトリックス形式のマップを用いてもよい。また、なお、ステップS9で取得する経年劣化情報は、流量測定装置3の累積運転時間ではなく、流量測定装置3の流量の累積値を用いても上記と同様の効果を得ることができる。
【0054】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではない。例えば、上記実施形態では、固体酸化物形燃料電池を用いる場合について説明したが、本発明は、固体高分子形燃料電池や溶融炭酸塩形燃料電池を用いた燃料電池システムにも適用できる。
【0055】
また、上記各実施形態における運転方法では、ステップS8の後、流量の測定値を流量の指示目標値に追従させるステップS6に戻る場合について説明したが、掃引電流値を取得するステップS1や、環境温度を取得するステップS3に戻ってもよい。
【符号の説明】
【0056】
1…燃料電池システム、2…酸化剤供給装置(酸化剤供給手段)、3…流量測定装置(流量測定手段)、4…制御装置(制御手段)、5…改質器、6…燃料電池、7…電流値測定装置(電流値測定手段)、8…環境温度測定装置(環境温度測定手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体燃料の改質反応により水素を含有する改質ガスを生成する改質器と、
酸化剤と前記改質ガスとを用いて発電を行う燃料電池と、
前記燃料電池に前記酸化剤を供給する酸化剤供給手段と、
前記燃料電池に供給される前記酸化剤の流量を測定する流量測定手段と、
前記燃料電池の出力電流の電流値を測定する電流値測定手段と、
環境温度を測定する環境温度測定手段と、
前記電流値に応じて前記燃料電池に供給すべき単位時間当たりの酸化剤物質量を予め記憶し、前記環境温度を参照して前記酸化剤物質量に相当する流量で前記酸化剤を前記酸化剤供給手段に吐出させるための前記流量測定手段の指示目標値を決定し、前記流量測定手段が前記指示目標値を示すよう前記酸化剤供給手段を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記制御手段は、前記流量測定手段の経年劣化情報を記憶しており、記憶した前記経年劣化情報を更に参照して前記指示目標値を決定することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記制御手段は、前記流量測定手段の運転時間の累積値を前記経年劣化情報として記憶することを特徴とする請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記制御手段は、前記流量測定手段によって測定される流量の累積値を前記経年劣化情報として記憶することを特徴とする請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記制御手段は、前記指示目標値をマップとして記憶しており、前記マップに基づいて前記指示目標値を決定することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記流量測定手段は、体積に基づく流量測定手段である請求項1〜5のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
気体燃料の改質反応により水素を含有する改質ガスを生成する改質器と、
酸化剤と前記改質ガスとを用いて発電を行う燃料電池と、
前記燃料電池に前記酸化剤を供給する酸化剤供給手段と、
前記燃料電池に供給される前記酸化剤の流量を測定する流量測定手段と、
前記燃料電池の出力電流の電流値を測定する電流値測定手段と、
環境温度を測定する環境温度測定手段と、
前記電流値に応じた酸化剤物質量を予め記憶する制御手段と、を備えた燃料電池システムにおいて、
前記電流値に応じて前記燃料電池に供給すべき単位時間当たりの前記酸化剤物質量を決定するステップと、
前記環境温度を参照して前記酸化剤物質量に相当する流量で前記酸化剤を前記酸化剤供給手段に吐出させるための前記流量測定手段の指示目標値を決定するステップと、
前記流量測定手段が前記指示目標値を示すよう前記酸化剤供給手段を制御するステップと、を備えることを特徴とする燃料電池システムの運転方法。
【請求項8】
前記制御手段は、前記流量測定手段の経年劣化情報を記憶しており、
前記経年劣化情報を参照して前記指示目標値を決定するステップを更に備えることを特徴とする請求項7に記載の燃料電池システムの運転方法。
【請求項9】
前記制御手段は、前記流量測定手段の運転時間の累積値を前記経年劣化情報として記憶しており、
前記運転時間の累積値を参照して前記指示目標値を決定するステップを備えることを特徴とする請求項8に記載の燃料電池システムの運転方法。
【請求項10】
前記制御手段は、前記流量測定手段によって測定される流量の累積値を前記経年劣化情報として記憶しており、
前記流量測定手段によって測定される流量の累積値を参照して前記指示目標値を決定するステップを備えることを特徴とする請求項8に記載の燃料電池システムの運転方法。
【請求項11】
前記制御手段は、前記指示目標値をマップとして更に記憶しており、
前記マップに基づいて前記指示目標値を決定するステップを備えることを特徴とする請求項7〜10のいずれか一項に記載の燃料電池システムの運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−104433(P2012−104433A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253652(P2010−253652)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(000004444)JX日鉱日石エネルギー株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】