説明

燃料電池システム

【課題】異状原因に応じて、複数の停止制御形態から特定の停止制御形態を選択することができる燃料電池システムを提供する。
【解決手段】燃料電池システムは、改質用燃料から改質ガスを生成する改質器1と、前記改質器1で生成させた改質ガスに基づいて発電する燃料電池2aと、制御装置3とを備えている。制御装置3は、燃料電池システムの作動を停止させる停止制御形態が異なる複数の停止制御形態を備えており、異状原因に応じて、複数の停止制御形態から特定の停止制御形態を選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムに関するフェール停止制御装置として、特許文献1が開示されている。このものは、燃料電池システムの異状停止時にシステム内部の水が凍結するおそれがあるか否か判定し、水が凍結するおそれがあるとき、システム内の水を外部に放出することしている。また、燃料電池が運転中において停電したとき、燃料電池システムに組み込まれている二次電池から電力を供給して運転の弊害を防止する燃料電池システムが開示されている(特許文献2)。また、起動スイッチがオンされると、システムチェックを行い、システムチェックにおいて異状が検出されると、燃料電池システムの停止処理が実行される燃料ガス製造装置の異状停止方法が知られている(特許文献3)。燃料電池本体および補機の異状を検知して保護停止を制御する燃料電池システムの保護停止制御装置が知られている(特許文献4)。
【特許文献1】特開2004−103395号公報
【特許文献2】特開2002−63927号公報
【特許文献3】特開2005−251603号公報
【特許文献4】特開2002−352839号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、異状原因に適応できる燃料電池システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に係る燃料電池システムは、改質用燃料から改質ガスを生成する改質器と、前記改質器で生成させた改質ガスに基づいて発電する燃料電池とを具備する燃料電池システムにおいて、燃料電池システムを制御する制御装置が設けられており、制御装置は、燃料電池システムを停止させる停止制御形態が異なる複数の停止制御形態を備えており、異状原因に応じて、複数の停止制御形態から特定の停止制御形態を選択することを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、燃料電池システムに関連して発生する異状原因に応じて、制御装置は、複数の停止制御形態から特定の停止制御形態を選択する。これにより異状原因に適応する停止制御形態を実行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
改質器と燃料電池との間に設けられ改質器から改質ガスを燃料電池に供給する開閉可能な供給バルブが設けられている形態が例示される。この場合、緊急停止性が相対的に低いときに制御装置が実行する停止制御形態は、供給バルブを開放させて改質器の改質ガスを燃料電池に供給して封入する操作を含み、且つ、緊急停止性が相対的に高いときに制御装置が実行する停止制御形態は、供給バルブを閉鎖させて改質器の改質ガスを燃料電池に供給することを禁止する操作を含む。
【0007】
また、改質器は、改質用燃料から改質ガスを生成する改質部と、燃焼用空気および燃焼用燃料が供給され燃焼用燃料の燃焼により改質部を加熱する燃焼部とを備えている形態が例示される。緊急停止性が相対的に低いときに制御装置が実行する停止制御形態は、燃焼部への燃焼用燃料の供給を停止させつつ、燃焼部へ燃焼用空気を供給させて改質器を冷却させる操作を含み、且つ、緊急停止性が相対的に高いときに制御装置が実行する停止制御形態は、燃焼部への燃焼用燃料の供給を停止させつつ、燃焼部への燃焼用空気の供給を禁止する操作を含む形態が例示される。
【0008】
改質器から燃料電池に向かう改質ガスに含まれている水分を凝縮させる凝縮器と、凝縮器を冷却させる冷却媒体を移動させる凝縮系搬送源と、燃料電池を冷却する冷却媒体が循環する冷却媒体通路と、貯湯槽に繋がる貯湯通路と、冷却媒体通路の冷却媒体および貯湯通路の水を熱交換させる熱交換部と、貯湯通路の水を移動させる貯湯系搬送源とが設けられている形態が例示される。この場合、緊急停止性が相対的に低いときに制御装置が実行する停止制御形態は、凝縮系搬送源および貯湯系搬送源を駆動させる冷却操作を含み、且つ、緊急停止性が相対的に高いときに制御装置が実行する停止制御形態は、凝縮系搬送源および貯湯系搬送源を駆動の禁止する禁止操作を含む形態が例示される。
【0009】
燃料電池システムの運転状態を定期的または不定的的に記憶する不揮発性メモリと、燃料電池システムの再起動時に、不揮発性メモリに記憶されている燃料電池システムの運転状態に基づいて燃料電池システムの再起動を制御する再起動制御手段とを備えている形態が例示される。この場合、再起動制御手段は、再起動スイッチの操作に伴い診断モードを実行し、診断モードにおける診断の結果、燃料電池システムの構成部品の状態が良好であるとき、再起動を許可し、且つ、燃料電池システムの構成部品の状態が良好でないとき、再起動を禁止する再起動禁止手段を備えている形態が例示される。
【0010】
本発明によれば、燃料電池システムの運転停止に伴い改質器の内部の圧力が高圧化されるとき、改質器に残留するガスを燃料電池のアノードに供給してアノードの過剰負圧化を抑制するアノード過剰負圧化防止手段を備えている形態が例示される。アノード過剰負圧化防止手段としては、通常時に閉鎖されており、入力圧が所定の開放設定圧になると開放されるリリーフ部が例示される。このリリーフ部は、通常時には閉鎖されている弁口と、弁口を閉鎖する可動式の弁体と、弁体が弁口を閉鎖する方向に弁体を付勢する付勢部材とを備えている形態が例示される。
【0011】
また本発明によれば、燃料電池システムの運転停止に伴い改質器の内部の圧力が高圧化されるとき、改質器に残留するガスを燃焼部に供給し、改質器の過剰高圧化を抑制する改質器過剰高圧化防止手段を備えている形態が例示される。改質器過剰高圧化防止手段としては、通常時に閉鎖されており、入力圧が所定の開放設定圧になると開放されるリリーフ部が例示される。このリリーフ部は、通常時には閉鎖されている弁口と、弁口を閉鎖する可動式の弁体と、弁体が弁口を閉鎖する方向に弁体を付勢する付勢部材とを備えている形態が例示される。
【0012】
制御装置は、燃料電池システムの異状原因の程度または種類に応じて、(1)(2)(3)を使い分ける形態が例示される。
(1)改質器と燃料電池のアノードとの連通を遮断し、改質器の改質ガスを燃料電池に供給することを禁止する制御。この場合、燃料電池には改質ガスが供給されることが禁止されている。
(2)改質器と燃料電池のアノードとの連通を遮断し、改質器の改質ガスを燃料電池のスタックに供給することを禁止すると共に、改質用燃料を改質器に供給することを禁止する制御。この場合、(1)に加えて、改質用燃料を改質器に供給することが禁止されているため、改質器では改質ガスが生成されない。
(3)改質器と燃料電池のアノードとの連通を遮断し、改質器の改質ガスを燃料電池のスタックに供給することを禁止すると共に、改質用燃料を改質器に供給することを禁止し、且つ、燃焼用空気を改質器の燃焼部に供給することを禁止する制御。この場合、(2)に加えて、直接的な燃焼性がないものの助燃性をもつ燃焼用空気を改質器の燃焼部に供給することを禁止されている。
【0013】
本発明によれば、燃料電池システムの運転を非常停止させるために操作者により操作される非常停止操作子が設けられている形態が例示される。
【0014】
異状要因により燃料電池システムが非常停止した後に初めて起動させるために操作者により操作され、操作に伴い、燃料電池システムの機能の一部または全部を解除し、操作されないと、燃料電池システムの機能の一部または全部を制限する制限解除操作子が設けられている形態が例示される。なお制御装置は、単一構造でも良いし、分割された複数の制御部が統合されているものでも良い。
【実施例1】
【0015】
以下、本発明の実施例1について図1〜図5を参照して説明する。本実施例に係る燃料電池システムは、改質用燃料(例えば炭化水素系のガス)から改質ガスをアノードガスとして生成する改質器1と、改質器1で生成させた改質ガスに基づいて発電する燃料電池2aのスタック2とを備えており、更に、燃料電池システムを制御する制御装置3とを備えている。
【0016】
燃料電池2aのスタック2は、高分子型のイオン伝導膜20(プロトン伝導膜)をアノード21(燃料極)とカソード22(酸化剤極)とで挟持した膜電極接合体23を複数備えている。スタック2は、シート型の膜電極接合体23を複数積層しているタイプでも良いし、チューブ型の膜電極接合体23を複数搭載しているタイプでも良い。
【0017】
改質器1は、改質部10と、改質部10を加熱する加熱部として機能する燃焼部11とを備えている。改質部10は、図略の蒸発部で改質水から形成された水蒸気と改質用燃料とを反応させることにより、水素ガスを主要成分とする改質ガスを改質用燃料から生成する。改質部10は、改質反応を促進させる触媒を有する。燃焼部11は、燃焼用空気および燃焼用燃料が供給され、燃焼用燃料を燃焼させる。ここで、燃焼用空気ブロア16(燃焼用空気搬送源)が作動すると、燃焼用空気が燃焼用空気通路17を経て改質器1の燃焼部11に供給される。燃料ポンプ4(燃料搬送源)が作動し、燃焼用燃料バルブ40が開放すると、燃料源49の燃料が燃焼用燃料通路41を介して改質用燃料として改質器1の燃焼部11に供給される。これにより燃焼部11で燃焼用燃料が燃焼する。燃焼部11の燃焼排ガスは、燃焼排ガス通路1mを経て外部に放出される。改質部10が改質反応に適するように高温(例えば400℃以上)に加熱される。また燃料ポンプ4が作動し、改質用燃料バルブ42が開放すると、改質用燃料通路43を介して、燃料源49の燃料(例えば炭化水素系の燃料ガス)が燃焼用燃料として改質器1の改質部10に供給される。改質水バルブ46が開放すると、改質水用通路47を介して改質器1の蒸発部(図示せず)に改質水が供給されて気相状の水が生成する。改質用燃料が気相状の水により水蒸気改質される。これにより水素を主要成分とする改質ガスが改質器1の内部で生成される。なお、燃料ポンプ4は燃焼用燃料バルブ40および改質用燃料バルブ42において共通化されているが、個別に設けられていてもよい。改質器1は、改質ガスに含まれている一酸化炭素を低減させるCO除去部(図示せず)をもつ。
【0018】
図1に示すように、改質器1の改質ガス出口1pと燃料電池2aのスタック2のアノード21の入口21iとを繋ぐアノードガス通路5が設けられている。アノードガス通路5は、改質ガスを冷却する凝縮器50と、改質器1の内部の圧力P1を検知する改質器圧力センサ51と、スタック2のアノード21の上流に位置する電磁弁で形成された開閉可能な供給バルブ52とを備えている。アノードガス通路5は、改質器1の出口1pと凝縮器50とを繋ぐ通路部分5aと、凝縮器50とスタック2の入口21iと合流域5wを介して繋ぐ通路部分5cとを備えている。
【0019】
図1に示すように、燃料電池2aのスタック2のアノード21の出口21pと改質器1の燃焼部11とを繋ぐオフガス通路55が設けられている。スタック2の通常運転時において、オフガス通路55は、燃料電池2aのスタック2のアノード21の出口21pから排出された発電反応後のアノードガスのオフガス(未反応の水素を含有する可能性がある)を改質器1の燃焼部11に供給し、燃焼部11で燃焼させる。オフガス通路55は、燃料電池2aのアノード21側の内部の圧力P2を検知するスタック圧力センサ56と、スタック2のアノード21の出口21pの下流に位置する排出バルブ57とを備えている。
【0020】
図1に示すように、改質ガスを冷却させる凝縮系60が設けられている。凝縮系60は、改質器1の出口1pから燃料電池2aのアノード21の入口21iに供給される改質ガスを冷却させることにより、改質ガスに含まれている水分を凝縮させて除去する。凝縮系30は、熱交換器として機能する凝縮器50を介して冷却媒体としての冷却水(液状の冷却媒体)を循環させる冷却水通路62(冷却媒体通路)と、冷却水通路62の冷却水を循環移動させる凝縮系ポンプ63(凝縮系搬送源)とを備えている。凝縮系ポンプ63が駆動すると、冷却水通路62の冷却水が冷却水通路を循環するため、高温の改質ガスが凝縮器50において熱交換されて冷却される。ひいてはアノードガス通路5を流れる改質ガスに含まれている水分が凝縮されて除去される。
【0021】
アノードガス通路5の分岐部5wと改質器1の燃焼部11とを繋ぐバイパス通路66が設けられている。バイパス通路66はアノードガス通路5と燃焼部11とを連通させている。バイパス通路66は、アノードガス通路5を流れる改質ガスをスタック2に供給するのではなく、燃焼部11に供給するものである。バイパス通路66は、電磁弁で形成された開閉可能なバイパスバルブ67を備えている。ここで、供給バルブ52が閉鎖されている状態で、バイパスバルブ67が開放されると、凝縮器50の出口50pから吐出された改質ガスは、スタック2ではなく、燃焼部11に供給され、燃焼部11で燃焼される。
【0022】
スタック2の発電運転においてスタック2は発熱する。図1に示すように、燃料電池2aのスタック2を冷却する燃料電池冷却系70が設けられている。燃料電池冷却系70は、燃料電池2aのスタック2を介して冷却水(冷却媒体)が循環する燃料電池冷却通路71(冷却媒体通路)と、燃料電池冷却通路71に設けられた燃料電池冷却ポンプ72(冷却媒体搬送源)とを備えている。
【0023】
図1に示すように、燃料電池2aで生成された熱量を回収する貯湯系75が設けられている。貯湯系75は、燃料電池2aのスタック2の熱エネルギを温水として貯める貯湯槽76と、貯湯槽76に繋がる貯湯通路77と、燃料電池冷却通路71の冷却水(冷却媒体)および貯湯通路77の水を熱交換させる熱交換器78と、貯湯通路77の水を移動させる貯湯系ポンプ79(貯湯系搬送源)とを備えている。
【0024】
燃料ポンプ4(燃料供給手段)と燃料電池2aのスタック2のアノード21の入口21iとを繋ぐパージ通路80が設けられている。パージ通路80は、電磁弁で形成された開閉可能なパージバルブ82を備えている。パージバルブ82が開放すると、パージ通路80から燃料源49の燃料が燃料電池2aのスタック2のアノード21の入口21iに供給される。
【0025】
図1に示すように、改質器1の内部温度を検知する温度センサ83が設けられている。燃焼部11の温度を検知する温度センサ84、燃料電池2aのスタック2の温度を検知する温度センサ85が設けられている。アノードガス通路5の凝縮器50の下流の温度を検知する温度センサ86が設けられている。凝縮系60の冷却水通路62の温度を検知する温度センサ87が設けられている。燃料電池冷却通路71の温度を検知する温度センサ88が設けられている。貯湯通路77の水の温度を検知する温度センサ89が設けられている。
【0026】
制御装置3が設けられている。制御装置3(コンピュータ)は、入力処理回路30と、CPU31と、出力処理回路32と、第1メモリ33と、不揮発性メモリで構成された書込可能な第2メモリ34とを備えている。各温度センサ83〜89および各圧力センサ51,56の信号は、制御装置3の入力処理回路30に入力される。出力処理回路32は制御信号を構成部品である各ポンプ、各バルブ等に出力する。
【0027】
本実施例によれば、燃料電池システムを起動させる起動スイッチ101E、燃料電池システムの発電運転を停止するスイッチ111E(通常停止操作子)と、燃料電池システムの運転を非常停止させる非常停止スイッチ104E(非常停止操作子)と、燃料電池システムの異状(例えば発電運転の停止、中断等)を知らせる警報ブザー(警報手段)が作動したとき、操作者(ユーザ、メンテナンス者等)が警報器(ブザー)を停止させる警報器停止スイッチ105E(警告報知停止操作子)と、異状要因により燃料電池システムが非常停止した後に初めての起動時に起動させるために操作者により操作されるリセットスイッチ108E(制限解除操作子、リセット操作子、再起動スイッチ)と、燃料電池システムに異なる機能を指示入力させるためのディップスイッチ125E(操作内容変更操作子)が設けられている。これらの各スイッチ信号が制御装置3の入力処理回路30に入力される。
【0028】
燃料電池システムの現在の運転の有無を表示する運転状態表示部102Eと、燃料電池システムの現在の出力値を表示する表示部103Eと、燃料電池システムの現在の運転コードを表示する第1表示部106Eと、燃料電池システムが故障で停止するときにおけるエラーコードを表示する第2表示部107Eと、燃料電池システムの累積起動回数を表示する表示部115Eと、燃料電池システムの累積運転時間および/または累積起動回数が所定回数を超えているとき、定期点検等の点検を要請する旨を表示する表示部114E等が設けられている。これらの表示部等に制御装置3の出力処理回路32はそれぞれ制御信号を出力する。
【0029】
次に、燃料電池システムを起動させるときについて説明する。この場合、制御装置3は、燃料ポンプ4を駆動させると共に、燃焼用燃料バルブ40を開放させ、且つ、ブロア16を駆動させて燃焼用空気を燃焼用空気通路17を経て燃焼部11に供給する。この場合、制御装置3は、パージバルブ82、供給バルブ52、排出バルブ57、改質用燃料バルブ42を閉鎖させる。このように制御装置3は、燃焼用燃料バルブ40を開放させるので、燃料源49の燃焼用燃料は燃焼部11に供給され、燃焼部11で燃焼が発生し、改質部10が改質反応に適するように高温に加熱される。この状態で制御装置3が改質用燃料バルブ42を開放するため、図略の蒸発部で生成された蒸気と共に改質用燃料が改質器11に供給される。よって改質器1で改質用原料が水蒸気改質され、水素を含む改質ガスがアノードガスとして生成される。燃料電池システムの起動当初では、改質ガスの組成が必ずしも安定しない。このため制御装置3は、起動当初では、供給バルブ52および排出バルブ57を閉鎖した状態で、バイパスバルブ67を開放する。この場合、改質器1で生成された改質ガスはアノードガス通路5を通過し、凝縮器50で水分を低減させ、更にバイパスバルブ67、バイパス通路66を経て燃焼部11に供給され、燃焼部11において燃焼に使用される。発生する燃焼排ガスは改質器1の燃焼排ガス通路1mから排出される。改質ガスの組成が安定してくると、制御装置3はバイパスバルブ67を閉鎖し、供給バルブ52および排出バルブ57を開放する。この場合、改質器1で生成された改質ガスは、アノードガスとして、アノードガス通路5を経て凝縮器50に至り、凝縮器50で水分を低減させ、更に、合流域5w、開放状態の供給バルブ52を経て燃料電池2aのアノード21の入口21iに供給される。カソードガス通路27からも空気がカソードガスとして燃料電池2aのスタック2のカソード22に供給される。これにより燃料電池2aのスタック2は発電運転を行い、電気エネルギを生成させる。燃料電池システムの運転中において、制御装置3は凝縮系ポンプ63をオンし、冷却水通路62の冷却水を循環させ、アノードガス通路5を流れる改質ガス(アノードガス)を冷却させ、改質ガスから過剰の水分を取る。
【0030】
燃料電池システムの運転中において、スタック2は発熱する。制御装置3は、燃料電池冷却ポンプ72および貯湯系ポンプ79をオンする。この場合、燃料電池冷却ポンプ72により燃料電池冷却通路71の冷却水が循環し、燃料電池2aのスタック2が冷却される。また、貯湯系ポンプ79により貯湯通路77の水が循環し、燃料電池冷却通路71の冷却水の温度が熱交換器78を介して貯湯通路77の水に伝達される。結果として、スタック2の熱エネルギが温水として貯湯槽76に貯められる。
【0031】
本実施例によれば、制御装置3の第1メモリ33には、燃料電池システムを構成する要素の作動を停止させる形態が異なる複数の停止制御形態に関するプログラムが格納されている。万一、燃料電池システムに異状原因が発生する場合には、制御装置3は、燃料電池システムの異状原因に応じて、複数の停止制御形態から特定の停止制御形態を選択し、特定の停止制御形態を実行する。
【0032】
本実施例によれば、故障原因の緊急性に応じて、制御装置3は、図2に示す制御A、図3に示す制御B、図4に示す制御C、図5に示す制御Dを実行する。図2〜図5の横軸は時間を示す。制御A〜Dは、上記した各センサ類の故障が発生したとしても支障がないように、時間の経過につれて制御が進行するように設定されている。
制御A…燃料電池システムの通常の停止制御に相当する。制御Aは、軽微な部品故障における停止制御にも相当する。軽微な部品故障とは、一般的には、二次的な不具合につながらない部品故障に相当する。
制御B…スタック2の出力異状、温度異状、給排水異状、ガス漏れ異状、電気系異状等における停止制御に相当する。
制御C…圧力異状における停止制御に相当する。
制御D…重要部品の異状、燃料電池システムボックス内の温度異状、制御異状、停電異状等における停止制御における停止制御に相当する。この場合、一般的には、二次的な不具合につながるおそれが高い部品故障に相当する。
【0033】
(制御A)
図2は制御Aを示す。制御Aは、燃料電池システムを正常に運転しているときにおいて通常に停止させる場合に相当する。あるいは、制御Aは、軽微な部品故障における停止制御に相当する。この場合、構成部品の故障は特に認められない場合において、制御装置3が燃料電池システムを停止させる停止制御形態である。図2に示すように、停止指令が出力されるまでは、制御装置3は、燃焼用燃料バルブ40を開放して燃焼用燃料を燃焼部11に供給していると共に、改質用燃料バルブ42を開放し、改質用燃料を改質器1に供給している。制御装置3または操作者(ユーザ、メンテナンス者等)により停止指令が出力されると、制御装置3は、閉鎖指令100により改質用燃料バルブ42を閉鎖する。この結果、制御装置3は、改質用燃料を改質部10に供給することを禁止し、改質部10における改質反応を抑える。同様に、制御装置3は燃焼用燃料バルブ40を閉鎖する。これにより燃焼用燃料を燃焼部11に供給することを禁止し、燃焼部11の燃焼を禁止する。
【0034】
ここで、燃料電池システムが直前まで運転されているため、改質器1はまだ高温である。且つ、改質器1の改質部10の内部に残留している液相の改質水が蒸気化する。このため、改質部10の内部の圧力P1が次第に増加し、高圧化することになる。もし、バイバスバルブ67が閉鎖されると、改質器1の内部、改質器1の出口1p、アノードガス通路5、凝縮器50、合流域5m、バイパスバルブ67の入口67i、供給バルブ52の入口52iまでの通路の圧力が高圧化する。
【0035】
このため、停止指令が出力されているにもかかわらず、制御装置3は、バイバスバルブ67を所定時間開放させ、停止指令が出力された時刻t1から時刻t3まで開放させる。これにより改質器1の改質部10の内部の圧力P1の過剰高圧化が抑制される。この場合、改質器1の内部の構成部品が過剰の高圧で故障することが抑制または回避される。停止指令が出力された時刻t1から所定時間経過して時刻t3になると、制御装置3は、閉鎖指令101により、バイバスバルブ67を閉鎖させ、改質器1を密閉化させる。
【0036】
しかし改質器1の内部に残留している水分の蒸気化により、図2の特性線X1に示すように、時刻t3経過後、改質器1の内部の圧力P1が次第に増加することがある。上記したようにバイバスバルブ67が閉鎖されると、改質器1の内部、改質器1の出口1p、アノードガス通路5、凝縮器50、合流域5m、バイパスバルブ67の入口67i、供給バルブ52の入口52iまでの通路の圧力が高圧化する。そこで改質器1の内部の圧力P1が増加して所定圧になると、制御装置3は、指令102よりバイパスバルブ67を所定時間ta開放し、改質器1の内部の高圧化した圧力を逃がす。この場合、高圧化したガスは燃焼排ガス通路1mから外部に放出される。制御装置3は、所定時間ta経過後、バイパスバルブ67を再び閉鎖する。上記したように改質器1の内部の圧力P1が増加して所定圧になると、制御装置3は再びバイパスバルブ67を所定時間ta開放させる。
【0037】
更に制御装置3は、継続指令103により、時刻t3経過した後においても、燃焼用空気ブロア16の作動を継続させる。これにより燃焼用空気を冷却用空気として改質器1の燃焼部11に供給し、燃焼部11および改質部10を燃焼用空気により冷却させる。この場合、燃焼用燃料が燃焼部11に供給されることが禁止されているため、燃焼部11は消火されている。時刻t5は、改質器1の温度が低下して目標値まで到達した時刻を意味する。時刻t5においては、燃焼部11を含む改質器1の温度は冷却されて既に低温とされている。このため、制御装置3は、指令104により燃焼用空気ブロア16をオフとし、燃焼用空気を改質器1の燃焼部11に供給することを禁止する。
【0038】
改質器1の温度が低下して目標値まで到達した時刻t5においては、制御装置3は、開放指令105により改質用燃料バルブ42を所定時間tc開放させ、改質用燃料(例えば炭化水素系ガス)を改質器1に封入する。これにより改質器1の冷却が更に進行したとしても、改質器1の内部における負圧化が防止され、改質器1の内部の保護性が高められている。よって、外気や凝縮水が誤って改質器1の内部に侵入することが抑制される。
【0039】
更に燃料電池システムの運転停止に伴い、燃料電池2aのスタック2は発電を停止するものの、スタック2の内部に残留するアノードガスが反応して水が生成される。このため、図2の特性線X2に示すように、燃料電池2aのスタック2のアノード21側の圧力P2が次第に低下してくる。そこで、スタック2のアノード21側の圧力P2が極端な負圧とならないように、制御装置3は開放指令106によりパージバルブ82を所定時間tb開放し、改質用燃料(例えば炭化水素系ガス)をスタック2のアノード21に封入し、スタック2のアノード21の圧力を高めに維持する。これによりスタック2の内部の負圧化が防止される。よってスタック2への外気の進入が防止される。これによりスタック2の内部の触媒が保護される。なお、スタック2のアノード21側の圧力P2が再び低下すると、制御装置3は、指令106により再びパージバルブ82を所定時間tb開放させる。
【0040】
更に制御装置3は、継続指令108により凝縮系ポンプ63の作動を継続し、凝縮系ポンプ63の冷却水の目標流量を時刻t5まで流す。更に制御装置3は、継続指令109により貯湯系ポンプ79の作動を継続し、貯湯系ポンプ79の冷却水の目標流量を時刻t5まで流す。且つ、制御装置3は、継続指令110により燃料電池冷却ポンプ72の作動を継続し、燃料電池冷却ポンプ72の冷却水の目標流量を時刻t5まで流す。この場合、凝縮系ポンプ63が作動しているため、凝縮器50における冷却性が確保され、アノードガス通路5を流れるアノードガスの冷却性が良好に確保される。また、貯湯系ポンプ79が作動しているため、貯湯通路の冷却性が良好に確保される。これにより関連部品の冷却性が良好に確保される。改質器1(燃焼部11)の温度が充分に低下した時刻t5においては、関連部品の冷却を終了しても良いため、制御装置3は、停止指令111により凝縮系ポンプ63をオフさせると共に、停止指令112により貯湯系ポンプ79をオフさせ、停止指令113により燃料電池冷却ポンプ72をオフさせる。
【0041】
本実施例によれば、部品等の軽微な故障である場合には、正常運転における停止制御形態と同様に、制御装置3は、上記した制御Aに基づいて燃料電池システムを停止させる。
【0042】
(制御B)
図3は制御Bを示す。制御Bは制御Aと基本的には同様の構成をもち、制御Aよりも更に高い緊急停止性をもつ場合の制御に相当する。以下、制御Aと相違する部分を中心として説明する。燃料電池システムの運転が停止しているため、図3の特性線Y1に示すように、燃料電池2aのスタック2のアノード21側の圧力P2が次第に低下する。スタック2の内部に残留するアノードガスの反応、スタック2の冷却が寄与しているものと推察される。
【0043】
しかし制御Bによれば、制御装置3は、パージバルブ82の開放を禁止している。つまり、制御装置3は、改質用燃料をスタック2のアノード21に供給することを禁止している。この場合、スタック2のアノード21が昇圧することが抑制されている。従って燃料電池2aのアノード21は改質用燃料で封入されないままに維持される。この場合、スタック2のアノード21の圧力は次第に低下したままとなるため、燃料電池2aに外気が進入し、燃料電池2aにおける触媒の酸化が進行し、触媒の性能が変化するおそれがある。このようなことの発生を考慮しても、制御装置3は、改質用燃料をスタック2のアノード21に供給することを禁止している。その理由としては、封入用ガスである改質用燃料は、可燃性をもつため、二次的な不具合となるおそれがあるためである。なお、万一、燃料電池2aにおける触媒が変化したとしても、還元性をもつ水素を主要成分とする改質ガスに基づいて燃料電池2aの触媒を再生させる処理を後処理として制御装置3が実行すれば、その触媒は再生される。更に制御Bによれば、制御Aで実行されていた開放指令105が実行されない。よって、冷却された改質器1の内部に改質用燃料を封入しないため、改質器1が負圧化されるおそれがある。
【0044】
(制御C)
図4は制御Cを示す。制御Cは制御Bと基本的には同様の構成をもつものであり、制御Bよりも更に高い緊急停止性をもつ場合の制御に相当する。以下、制御Bと相違する部分を中心として説明する。即ち、制御Cは、緊急停止性が更に高い制御であり、燃料電池システムの構成部品に損傷が発生するおそれがあったとしても、制御装置3は、燃料電池システムをより適切に停止すべく、優先的に制御Cを実行する。
【0045】
制御Cによれば、制御Bと同様に、燃料電池システムの運転が停止しているため、図4の特性線W1に示すように、燃料電池2aのスタック2のアノード21側の圧力P2が次第に低下する。しかし制御Cによれば、制御装置3はパージバルブ82の開放を禁止している。このためスタック2のアノード21の圧力P2は次第に低下したままとなり、スタック2のアノード21が負圧化すること、スタックの触媒の性状が変化することが容認されている。
【0046】
更に制御Cによれば、制御装置3は、停止指令と共に、閉鎖指令302によりバイパスバルブ67を閉鎖し、以後開放しない。この結果、制御装置3は、改質器1の圧力を逃がす操作を禁止する。このため、図4の特性線W2に示すように、改質器1の内部の圧力P1は次第に増加し、高圧化される。この場合、改質器1の関連する部品の性能が変化するおそれがある。それにも拘わらず、制御装置3は、制御Cの実行を優先し、バイパスバルブ67の開放を禁止し、改質器1の高圧化を容認する。
【0047】
更に制御Cによれば、制御装置3は、燃料電池システムの停止指令と共に、停止指令304により凝縮系ポンプ63の作動を禁止し、停止指令305により貯湯系ポンプ79の作動を禁止し、停止指令306により燃料電池冷却ポンプ72の作動を禁止している。この結果、凝縮系ポンプ63の作動に伴い発熱、貯湯系ポンプ79の作動に伴う発熱、燃料電池冷却ポンプ72の作動に伴う発熱が回避される。しかしながらこの場合、凝縮系60の冷却水通路62、燃料電池冷却通路71、貯湯通路77において水が流れないため、燃料電池システムにおける冷却性が損なわれるおそれがある。それにもかかわらず、制御装置3は、凝縮系ポンプ63、貯湯系ポンプ79、燃料電池冷却ポンプ72の作動を禁止させ、燃料電池システムの冷却性が損なわれることを容認する。但し、制御Cによれば、制御装置3は、制御Bと同様に、継続指令306により、燃焼用空気ブロア16の作動を継続させることにより、燃焼用空気通路17から燃焼用空気を改質器1の燃焼部11に供給し、改質器1の冷却性、即ち、燃焼部11および改質部10の冷却を促進させている。燃料電池システムの発電運転の停止直前まで、改質器1の温度は高温であるため、改質器1を冷却させた方がよいためである。
【0048】
(制御D)
図5は制御Dを示す。制御Dは制御Cと基本的には同様の構成をもつものであり、制御Cよりも更に高い緊急停止性をもち、燃料電池システムの二次的な損傷につながるおそれがある場合における制御である。即ち、制御Dは、最も緊急停止性が高い制御であり、構成部品に損傷が発生するおそれがあったとしても、制御装置3は、優先的に制御Dを実行する。以下、制御Cと相違する部分を中心として説明する。制御Dによれば、制御Cと同様に、燃料電池システムの発電運転が停止しているため、図5の特性線U1に示すように、燃料電池2aのスタック2のアノード21の圧力P2が次第に低下していく。しかし制御装置3は、パージバルブ82を閉鎖しており、パージバルブ82の開放を禁止している。このため図5の特性線U1に示すように、スタック2のアノード21の圧力は次第に低下したままとなる。
【0049】
制御Dによれば、制御装置3は燃料電池システムの停止指令の出力と共に、閉鎖閉鎖指令402によりバイパスバルブ67の開放を禁止している。つまり制御装置3は改質器1の圧力を逃がす操作を禁止する。このため特性線U2に示すように、改質器1の内部の圧力P1は次第に増加していく。
【0050】
更に制御Dによれば、制御装置3は、燃料電池システムの停止指令の出力と共に、停止指令404により凝縮系ポンプ63の作動を禁止し、停止指令405により貯湯系ポンプ79の作動を禁止し、停止指令406により貯湯系ポンプ79の作動を禁止している。このため、凝縮系ポンプ63の作動に伴い発熱、貯湯系ポンプ79の作動に伴う発熱、燃料電池冷却ポンプ72の作動に伴う発熱が回避される。しかしながらこの場合、凝縮系60の冷却水通路62、燃料電池冷却通路71、貯湯通路77において水が流れないため、燃料電池システムの冷却性が損なわれるおそれがある。それにもかかわらず、制御装置3は、凝縮系ポンプ63、貯湯系ポンプ79、燃料電池冷却ポンプ72の作動を禁止させる。
【0051】
制御Dによれば、制御装置3は、制御Cと異なり、停止指令408により、燃焼用空気ブロア16を非作動とし、燃焼用空気ブロア16の作動を禁止させている。この結果、燃焼用空気通路17から空気を冷却用空気として改質器1の燃焼部11に供給する冷却操作を禁止している。即ち、燃焼部11および改質部10の冷却を禁止している。
【0052】
上記したように制御Dによれば、制御装置3は、停止指令408により燃焼用空気ブロア16をオフとする。従って、冷却用の燃焼用空気は、改質器1の燃焼部11および改質器1の双方に供給されないため、改質器1の燃焼部11および改質器1は自然放冷とされる。冷却用の燃焼用空気の改質器1への供給を停止する理由としては、燃焼用空気といえども、助燃性を有するため、燃料電池システムの二次的な性能変化、二次的な損傷を回避するためである。
【0053】
上記した制御Dによれば、前記したように、燃料電池システムの停止指令が出力されると共に、制御装置3は、改質器1への改質用燃料の供給停止、バイパスバルブ67の遮断、燃焼用空気の遮断、凝縮系ポンプ63の遮断、貯湯系ポンプ79の遮断,燃料電池冷却ポンプ72の遮断を実行する。このため二次的な故障を誘発するおそれがあるが、燃料電池システムの緊急停止性が極めて高い場合であるため、やむ得ない。万一、二次的な故障が発生していれば、故障した部品の交換や修理を行う必要がある。
【0054】
本実施例によれば、故障した部品が特定された場合、その部品を使用した停止処理が組み込まれている場合には、その故障部品を使用せずに燃料電池システムを停止させる制御とされている。例えば、制御装置3は、改質器1の燃焼部11の温度を監視しており、正常時の停止制御を実施している。しかしこの温度センサが故障し、それが特定できた場合には、制御装置3は、当該温度センサからの信号を使用せず、経過時間に基づいて燃料電池システムの停止制御を実行する。
【実施例2】
【0055】
図6は実施例2を示す。本実施例は実施例1と同様の構成および作用効果を有する。以下、異なる部分を中心として説明する。上記した実施例1では、燃料電池システムが発電運転を停止したとしても、改質器1の内部に残留している水が改質器1の余熱で蒸気化する。上記した実施例1では、制御Cの場合、図4に示すように、制御装置3がバイパスバルブ67の開放を禁止するため、改質器1の内部の圧力P1は次第に増加し、高圧化していく。制御Dの場合においても、図5に示すように、改質器1の内部の圧力P1は次第に増加し高圧化していく。この場合、停止条件によっては、圧力P1が過剰に高くなるおそれがあり、改質器1に関連する部品が損傷するおそれがある。
【0056】
そこで本実施例によれば、燃料電池システムにおける異状要因に応じて、制御装置3は、基本的には、制御A〜制御Dのバルブ操作およびポンプ操作などを実行する(但し、圧力P1,P2の上昇曲線が異なる)。更に本実施例では、次の機械的構造が採用されている。即ち、バイパスバルブ67は制御装置の指令により開放される電磁弁であり、電磁ソレノイドによる開閉機能の他に、機械的に開放する圧力応答式の機械的な逆止弁であるリリーフ部67aをもつ方式とされている。
【0057】
リリーフ部67aは、通常時には閉鎖されている弁口67bをもつ通路67cと、通路67cの弁口67bを閉鎖する可動式の弁体67eと、弁体67eが弁口67bを閉鎖する方向に弁体67eを付勢する付勢部材であるバネ部材67fとを備えている。弁口67bはバイパス通路66(バイパスバルブ67の弁口)に対して並列に設けられている。通常時には、バネ部材67fの付勢力により弁体67eが弁口67bを機械的に閉鎖している。
【0058】
これに対して、制御装置3がバイパスバルブ67の開放を禁止しているときであっても、バイパスバルブ67の上流の入力圧Pe(図6参照)がリリーフ部67aの開放設定圧Pk1を越えると、制御装置3による制御に依存することなく、リリーフ部67aの弁体67eがバネ部材67fに抗しつつ機械的に退避し、自動的に開放する。この場合、リリーフ部67aの弁口67bは、バイパスバルブ67の上流の圧力Peに応答して機械的に開放される。この場合、電磁弁であるバイパスバルブ67が開放せずとも、改質器1の内部の高圧のガスは燃焼部11に送られ、燃焼排ガス通路1mから外部に放出される。このようにして改質器1の内部の圧力P1の過剰高圧化が抑制される。このため、改質器1の構成部品の保護性が向上する。よってリリーフ部67aは改質器過剰高圧化防止手段として機能する。
【0059】
更に本実施例によれば、スタック2のアノードの上流に位置する供給バルブ52は、制御装置3の指令により開閉される電磁弁であり、電磁ソレノイドによる開閉機能の他に、機械的に開放する圧力応答式の機械的な逆止弁としてのリリーフ部52aをもつ。図6に示すように、リリーフ部52aは、通常時には閉鎖されている弁口52bをもつ通路52cと、通路52cの弁口52bを閉鎖する可動式の弁体52eと、弁体52eが弁口52bを閉鎖する方向に弁体52eを付勢する付勢部材であるバネ部材52fとを備えている。弁口52bは、アノードガス通路5(供給バルブ52の弁口)に対して並列に設けられている。通常時には、バネ部材52fの付勢力により弁体52eが弁口52bを機械的に閉鎖している。
【0060】
これに対して、供給バルブ52の上流の入力圧Pf(図6参照)がリリーフ部52aの開放設定圧Pk2を越えると、制御装置3が供給バルブ52の開放を禁止しているときであっても、制御装置3による制御に依存することなく、リリーフ部52aの弁体52eがバネ部材52fに抗しつつ機械的に退避し、自動的にて開放する。この場合、リリーフ部52aの弁口52bは、供給バルブ52の上流の圧力Pfに応答して機械的に開放される。この場合、制御装置3が供給バルブ52を開放させずとも、ガスがスタック2のアノード21に供給され、アノード21側の圧力の過剰負圧化が抑制される。よって、スタック2のアノード21に外気が侵入することが抑制され、スタック2の触媒の保護性が向上する。よってリリーフ部52aは、アノード過剰負圧化防止手段として機能する。
【0061】
本実施例によれば、バイパスバルブ67とリリーフ部67aとは一体的に組み込まれいても良いし、互いに別体として搭載されていても良い。供給バルブ52とリリーフ部52aとは一体的に組み込まれていても良いし、互いに別体として搭載されていても良い。リリーフ部67aの開放設定圧Pk1とリリーフ部52aの開放設定圧Pk2との関係については、Pk1>Pk2の関係、Pk1<Pk2の関係、Pk1=Pk2の関係、Pk1≒Pk2の関係に設定できる。Pk1>Pk2の関係であれば、改質器1の内部のガスはスタック2のアノード21に優先的に吐出されるため、スタック2のアノード21の圧力P2の過剰負圧化が良好に抑制される。なお、リリーフ部67aおよびリリーフ部52aの双方が設けられているが、いずれか一方のみとしても良い。
【実施例3】
【0062】
図7〜図9は実施例3を示す。本実施例は実施例1,2と同様の構成および作用効果を有するため、図1〜図6を準用することができる。以下、実施例1,2と異なる部分を中心として説明する。図7は制御装置3が発電運転時に実行する記憶処理のフローチャートを示す。フローチャートはこれに限定されるものではない。先ず、制御装置3は燃料電池システムの運転情報を読み込み(ステップSB202)、燃料電池システムが運転(起動モード、発電運転モード、待機モード)中か否か判定する(ステップSB204)。燃料電池システムが運転中であれば、タイマーをスタートし(ステップSB206)、一定時間が経過したか否か判定する(ステップSB208)。一定時間が経過していれば、圧力情報を読み込み、記憶する(ステップSB210)。次に温度情報を読み込み、記憶する(ステップSB212)。ボックス内の温度情報を読み込み、記憶する(ステップSB214)。次にガス漏れ情報を読み込み、記憶する(ステップSB216)。次に重要部品の情報を読み込み、記憶する(ステップSB218)。次にスタック2の出力情報を読み込み、記憶する(ステップSB222)。次に電気系情報を読み込み、記憶する(ステップSB224)。次に制御系情報を読み込み、記憶する(ステップSB226)。次に、その他の情報を読み込み、記憶する(ステップSB228)。その他の情報としては、燃料電池システムの運転時間、燃料電池システムの起動回数を記憶する。これにより燃料電池システムの累積運転時間および累積起動回数がそれぞれ記憶される。更に現在の運転コードを表示する指令を出力し(ステップSB230)、メインルーチンにリターンする。各記憶は、制御装置3が第2メモリ34(不揮発性メモリ)の所定のエリアに各情報を書き込むことにより行われる。
【0063】
このような本実施例によれば、燃料電池システムの運転が停止するときであっても、停止直前における各構成部品の作動状況、各センサの出力値といった各情報が第2メモリ34(不揮発性メモリ)の所定のエリアに書き込まれている。
【0064】
図8は、操作者(ユーザ、メンテナンス者等)により操作される燃料電池システムの操作パネル100Eを示す。操作パネル100Eは、操作者が操作し易い部位に設けられている。図8に示すように、操作パネル100Eは、燃料電池システムを起動させる起動スイッチ101Eと、燃料電池システムの発電運転を停止するスイッチ111E(通常停止操作子)と、燃料電池システムの現在の運転の有無を表示する運転状態表示部102Eと、燃料電池システムの現在の出力値を表示する表示部103Eと、燃料電池システムの運転を非常停止させる非常停止スイッチ104E(非常停止操作子)と、燃料電池システムの異状(例えば発電運転の停止、中断等)を知らせる警報ブザー(警報手段)が作動したとき、操作者(ユーザ、メンテナンス者等)が警報器(ブザー)を停止させる警報器停止スイッチ105E(警告報知停止操作子)と、燃料電池システムの現在の運転コードを表示する第1表示部106Eと、燃料電池システムが故障で停止するときにおけるエラーコードを表示する第2表示部107Eと、異状要因により燃料電池システムが非常停止した後に初めての起動時に起動させるために操作者により操作されるリセットスイッチ108E(制限解除操作子、リセット操作子、再起動スイッチ)と、燃料電池システムの累積運転時間(一般的には発電運転時間)を表示する表示部113Eと、燃料電池システムの累積起動回数を表示する表示部115Eと、燃料電池システムの累積運転時間および/または累積起動回数が所定回数を超えているとき、定期点検等の点検を要請する旨を表示する表示部114Eと、異なる機能を指示入力させるためのディップスイッチ125E(操作内容変更操作子)とを備えている。
【0065】
各スイッチは操作者により操作される。各スイッチの信号は制御装置3に入力される。上記した非常停止スイッチ104E(非常停止操作子)は、スイッチ111E(通常停止操作子)とは別に設けられるものであり、操作パネル100Eに限らず、異状時において操作者が操作し易いように、建物内に設けられる遠隔操作パネルの他に、本体側(貯湯ユニットおよび/またはスタックユニット)に設けられていても良い。非常停止スイッチ104Eが操作されると、前記した緊急停止性が高い制御C,制御Dに移行するように設定できる。
【0066】
燃料電池システムの累積運転時間および累積起動回数は、制御装置3の第2メモリ34に格納される。制御装置3は、燃料電池システムの累積運転時間および/または累積起動回数が第1所定時間Wa1を超えているとき、定期点検を要請する旨を表示させる指令を表示部114Eに出力する。更に、制御装置3は、燃料電池システムの累積運転時間および/または累積起動回数が第2所定時間(Wa2,Wa2>Wa1)を超えているとき、定期点検を要請する旨を表示部114Eに表示させる指令と、燃料電池システムの機能の一部または全部を停止させる指令を出力する。
【0067】
リセットスイッチ108Eは、非常停止後に、燃料電池システムが復帰する際にリセットするための操作子であり、非常停止後には、リセットスイッチ108Eを操作しない限り、制御装置3は、燃料電池システムの機能の一部または全部に制限をかける指令を出力する。当該機能としては、燃料を燃料電池の燃料極に供給することを停止すること、酸化剤ガスを燃料電池の酸化剤極に供給することを停止すること、改質装置の運転を停止すること等のうちの少なくとも一つがあげられる。
【0068】
上記した運転コードはコードNo.1〜コードNo.4を含む。コードNo.1は待機モードに相当する。待機モードは、補機類はオフとされており、改質器1も非作動で、燃料電池2aも発電していない状態をいう。コードNo.2は起動モードに相当する。起動モードは、改質器1を起動させている状態であり、燃料電池2aは発電していない状態をいう。コードNo.3は発電運転モードに相当する。発電運転モードは、改質器1を起動させて改質ガスを生成させており、燃料電池2aは発電している状態をいう。コードNo.4は停止モードに相当する。停止モードは、改質器1により改質ガスの生成中且つ燃料電池2aにより発電中の状態から、燃料電池2aのスタック2および改質器1を停止させる状態をいう。
【0069】
エラーコードは、燃料電池システムの構成部品の故障または不具合ごとに複数設定されている。例えば、エラーコードNo.100は圧力異状を示す。エラーコードNo.101は温度異状を示す。エラーコードNo.102は燃料電池システムの外ハウジングであるボックス内の温度異状を示す。エラーコードNo.103は給排水異状を示す。エラーコードNo.104はガス漏れ異状を示す。エラーコードNo.105は、二次的な故障や不具合に繋がる重要部品の故障を示す。エラーコードNo.106は重要部品ではない部品故障を示す。エラーコードNo.107はスタック2の出力異状を示す。エラーコードNo.108は電気系の異状を示す。エラーコードNo.109は制御異状を示す。エラーコードNo.110は停電異状を示す。
【0070】
図9は、燃料電池システムが故障等で停止した後、操作者(ユーザ、メンテナンス者等)が再起動させるときに制御装置3が実行するフローチャートを示す。図9に示すように、制御装置3は、操作者(ユーザ、メンテナンス者等)によるリセットスイッチ108Eの操作状態を読み込む(ステップS202)。リセットスイッチ108が起動側に操作されていると(ステップS204のYES)、再起動制御手段を構成する制御装置3は、先ず優先的に、第2メモリ34(不揮発性メモリ)に記憶されている燃料電池システムの停止直前の運転状態を読み込む(ステップS206)。
【0071】
制御装置3は、燃料電池システムが停止した直前における運転コードを操作パネル100の第1表示部106Eに表示させる(ステップS208)。この運転コードが待機コードと異なるときには、商用電源の停電による燃料電池システムの停止であると推定される。更に制御装置3は、燃料電池システムの停止したときにおけるエラーコードを第2表示部107Eに表示する(ステップS210)。エラーコードにより操作者(ユーザ、メンテナンス者等)は燃料電池システムの異状要因を把握することができる。
【0072】
制御装置3は、診断モードを実行すべく、燃料電池システムの構成部品の故障の有無を診断する。つまり、圧力異状の有無を診断する(ステップS212)。次に温度異状の有無を診断する(ステップS214)。次に燃料電池システムのボックス内の温度異状を診断する(ステップS216)。次に、燃料電池システムの給排水異状を診断する(ステップS218)。次にガス漏れ異状を診断する(ステップS220)。次に重要部品の故障の有無を診断する(ステップS222)。次に、重要部品ではない部品故障の有無を診断する(ステップS224)。次にスタック2の出力異状を診断する(ステップS226)。次に電気系の異状を診断する(ステップS228)。制御異状を診断する(ステップS230)。次に、上記した診断モードにおける診断の結果、構成部品が起動に支障がない程度に良好であるときには、制御装置3は再起動を許可する信号を出力する(ステップS232,再起動許可手段)。また、構成部品が起動に支障がある程度に良好でないとき、再起動を禁止する信号を出力する(ステップS234,再起動禁止手段)。
【実施例4】
【0073】
本実施例は実施例1と同様の構成および作用効果を有するため、図1を準用することができる。制御装置3は、燃料電池システムの異状原因の程度または種類に応じて、(1)(2)(3)を使い分ける。
(1)供給バルブ52を閉鎖し、改質器1の出口1pとスタック2のアノード21の入口21iとの連通を遮断し、改質ガスを燃料電池2aのスタック2に供給することを禁止する制御。この場合、スタック2のアノード21には改質ガスが供給されないため、スタック2のアノード21の負圧化が容認されている。
(2)前記したように改質ガスを燃料電池2aのスタック2に供給することを禁止すると共に、バルブ42を閉鎖し、改質用燃料を改質器1に供給することを禁止する制御。この場合、(1)の制御と同様に、スタック2のアノード21には改質ガスが供給されないため、スタック2のアノード21の負圧化が容認されている。更に、(1)の制御に加えて、改質用燃料を改質器1に供給することが禁止されている。このため、改質器1における改質反応は制限され、改質器1において改質ガスの生成は禁止されている。
(3)前記したように改質ガスを燃料電池2aのスタック2に供給することを禁止すると共に、バルブ42を閉鎖し、改質用燃料を改質器1に供給することを禁止し、更に、ブロア16をオフとし、燃焼用空気を改質器1の燃焼部11に供給することを禁止する制御。この場合、(1)(2)の制御に加えて、助燃性をもつ燃焼用空気を改質器1の燃焼部11に供給することが更に禁止されている。
【実施例5】
【0074】
本実施例は基本的には前記した各実施例と同様の構成および作用効果を有するため、前記した各図を準用することができる。
【0075】
本実施例によれば、地震が検知されるとき(例えば貯湯槽76が転倒したり、スタック2が転倒したりすることが転倒検知部により検知されるとき場合には、地震検知手段がこれを検知し、緊急停止性が低いとき、制御装置3は、制御Aまたは制御Bを選択する。緊急停止性が高いとき、制御装置3は、制御Cまたは制御Dを選択する。震度が激しい地震の場合には、制御装置3は制御Dを必ず選択する。震度が軽い時には、制御装置3は、制御Aまたは制御Bを選択することにしても良い。更に地震が検知されるときには、燃料電池システムにおける温水または熱水の流出を防止すべく、制御装置3は、貯湯槽73の温水、燃料電池冷却系70の温水が流れる通路の各バルブを閉鎖させる指令を各バルブに出力しても良い。更に、制御装置3は、貯湯系75の貯湯系ポンプ79を停止させる指令を出力し、燃料電池冷却系70の燃料電池冷却ポンプ72を停止させる指令を出力しても良い。
【0076】
地震検知手段としては、転倒センサ、貯湯槽76および/またはスタック2の転倒を検知する転倒検知部、振動を検知する振動センサ、地震波を検知する地震波センサが例示される。近くでの落雷が落雷検知手段により検知されるときには、制御装置3は、制御A〜制御Dのうちいずれかを選択する。落雷の程度によって制御Cまたは制御Dのうちから選択する。
【0077】
上記した各実施例によれば、スタック2は高分子型のイオン伝導膜20(プロトン伝導膜)をもつ構成であるが、イオン伝導膜20は高分子型に限定されず、酸化物型としても良い。その他、本発明は上記し且つ図面に示した実施例のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施可能である。ある実施例に設けられている特有の構造および機能は、他の実施例においても適用可能である。
【0078】
上記した記載から次の技術的思想が把握される。
【0079】
(付記項1)改質用燃料から改質ガスを生成する改質器と、前記改質器で生成させた改質ガスに基づいて発電する燃料電池と、改質器および燃料電池の運転停止を制御する制御装置を具備する燃料電池システムにおいて、燃料電池システムの運転停止に伴い改質器の内部の圧力が高圧化されるとき、改質器に残留するガスを燃料電池のスタックのアノードに供給してアノードの過剰負圧化を抑制するアノード過剰負圧化防止手段を備えていることを特徴とする燃料電池システム。燃料電池システムの運転停止に伴い、改質器の圧力が過剰高圧化されるときにおいて、改質器に残留する過剰のガスを燃料電池のアノートに供給する。このためアノードの過剰負圧化が抑制される。更に改質器の圧力の過剰高圧化が抑制され、改質器の構成部品の保護性が向上する。
【0080】
(付記項2)改質用燃料から改質ガスを生成する改質器と、前記改質器で生成させた改質ガスに基づいて発電する燃料電池と、改質器および燃料電池の運転停止を制御する制御装置を具備する燃料電池システムにおいて、燃料電池システムの運転停止に伴い改質器の内部の圧力が高圧化されるとき、改質器の改質部に残留するガスを、燃焼排ガス通路をもつ燃焼部に供給し、改質器の過剰高圧化を抑制する改質器過剰高圧化防止手段を備えていることを特徴とする燃料電池システム。改質器の過剰高圧化が抑制され、改質器の構成部品の保護性が向上する。
【0081】
(付記項3)改質用燃料から改質ガスを生成する改質器と、前記改質器で生成させた改質ガスに基づいて発電する燃料電池とを具備する燃料電池システムにおいて、前記燃料電池システムを制御する制御装置が設けられていることを特徴とする燃料電池システム。この場合、燃料電池システムを良好に制御できる。
【0082】
(付記項4)付記項3において、燃料電池システムの運転を非常停止させるために操作者(例えばユーザ、メンテナンス者)により操作される非常停止操作子が設けられていることを特徴とする燃料電池システム。非常停止操作子は燃料電池システムの発電を停止させる操作子とは独立して別に設けられている。非常停止操作子により当該システムを直ちに停止できる。
【0083】
(付記項5)付記項3または4において、異状要因により燃料電池システムが非常停止した後に初めて起動させるために操作者(例えばユーザ、メンテナンス者)により操作され、操作に伴い、燃料電池システムの機能の一部または全部を解除し、操作されないと、燃料電池システムの機能(発電機能)の一部または全部を制限する制限解除操作子が設けられていることを特徴とする燃料電池システム。支障がないように当該システムを再起動させることができる。
【0084】
(付記項6)付記項3〜5のうちの一項において、燃料電池システムの異状(例えば発電運転の停止、中断等)を知らせる警報手段が設けられており、制御装置は、警報手段が警報を出力しているとき、燃料電池システムの機能(発電機能)の一部または全部を制限する燃料電池システム。当該機能としては、アノードガスの生成停止、アノードガスの供給停止、カソードガスの生成停止、アノードガスの供給停止等が例示される。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は例えば車両用、定置用、電気機器用、電子機器用、携帯用の燃料電池システムに利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】実施例1に係り、燃料電池システムのブロック図である。
【図2】制御Aを示すタイミングチャートである。
【図3】制御Bを示すタイミングチャートである。
【図4】制御Cを示すタイミングチャートである。
【図5】制御Dを示すタイミングチャートである。
【図6】実施例2に係り、燃料電池システムのブロック図である。
【図7】実施例3に係り、制御装置が実行する記憶処理のフローチャートである。
【図8】実施例3に係り、操作パネルの正面図である。
【図9】実施例3に係り、制御装置が実行する再起動のフローチャートである。
【符号の説明】
【0087】
1は改質器、10は改質部、11は燃焼部、16はブロア、2はスタック、3は制御装置、34は第2メモリ(不揮発性メモリ)、5はアノードガス通路、50は凝縮器、52は供給バルブ、55はオフガス通路、56はスタック2圧力センサ、57は排出バルブ、63はポンプ(凝縮系搬送源)、79はポンプ(貯湯系搬送源)、108Eはリセットスイッチ(再起動手段)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
改質用燃料から改質ガスを生成する改質器と、前記改質器で生成させた改質ガスに基づいて発電する燃料電池とを具備する燃料電池システムにおいて、
前記燃料電池システムを制御する制御装置が設けられており、
前記制御装置は、前記燃料電池システムの作動を停止させる停止制御形態が異なる複数の停止制御形態を備えており、前記燃料電池システムの異状原因に応じて、複数の前記停止制御形態から特定の前記停止制御形態を選択することを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1において、前記改質器と前記燃料電池との間に設けられ前記改質器で生成された前記改質ガスを前記燃料電池に供給する開閉可能な供給バルブが設けられており、
緊急停止性が相対的に低いときに前記制御装置が実行する停止制御形態は、前記供給バルブを開放させて前記改質器の改質ガスを前記燃料電池に供給して封入する操作を含み、
緊急停止性が相対的に高いときに前記制御装置が実行する停止制御形態は、前記供給バルブを閉鎖させて前記改質器の改質ガスを前記燃料電池に供給することを禁止する操作を含むことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項3】
請求項1または2において、前記改質器は、改質用燃料から改質ガスを生成する改質部と、燃焼用空気および燃焼用燃料が供給され前記燃焼用燃料の燃焼により前記改質部を加熱する燃焼部とを備えており、
緊急停止性が相対的に低いときに前記制御装置が実行する停止制御形態は、前記燃焼部への燃焼用燃料の供給を禁止させつつ、前記燃焼部へ燃焼用空気を供給させて前記改質器を冷却する操作を含み、
緊急停止性が相対的に高いときに前記制御装置が実行する停止制御形態は、前記燃焼部への燃焼用燃料の供給を停止させつつ、前記燃焼部への燃焼用空気の供給を禁止する操作を含むことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項4】
請求項1または2において、前記改質器から前記燃料電池に向かう改質ガスに含まれている水分を凝縮させる凝縮器と、前記凝縮器を冷却させる冷却媒体を移動させる凝縮系搬送源と、前記燃料電池を冷却する前記冷却媒体が循環する冷却媒体通路と、貯湯槽に繋がる貯湯通路と、前記冷却媒体通路の前記冷却媒体および前記貯湯通路の水を熱交換させる熱交換部と、前記貯湯通路の水を移動させる貯湯系搬送源とが設けられており、
緊急停止性が相対的に低いときに前記制御装置が実行する停止制御形態は、前記凝縮系搬送源および前記貯湯系搬送源を駆動させる冷却操作を含み、
緊急停止性が相対的に高いときに前記制御装置が実行する停止制御形態は、前記凝縮系搬送源および前記貯湯系搬送源を駆動の禁止する禁止操作を含むことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項5】
請求項1または2において、前記燃料電池システムの運転状態を定期的または不定期的に記憶するメモリと、前記燃料電池システムの再起動時に、前記メモリに記憶されている前記燃料電池システムの運転状態に基づいて燃料電池システムの再起動を制御する再起動制御手段とを備えていることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項6】
請求項5において、前記再起動制御手段は、再起動スイッチの操作に伴い診断モードを実行し、前記診断モードにおける診断の結果、前記燃料電池システムの構成部品の状態が良好であるとき再起動を許可し、前記構成部品の状態が良好でないとき、再起動を禁止する再起動禁止手段を備えていることを特徴とする特徴とする燃料電池システム。
【請求項7】
請求項1〜6のうちのいずれか一項において、前記制御装置は、前記燃料電池システムの異状原因の程度または種類に応じて、(1)(2)(3)を使い分ける。
(1)改質器と燃料電池のアノードとの連通を遮断し、前記改質器の改質ガスを前記燃料電池に供給することを禁止する制御
(2)前記改質器と前記燃料電池のアノードとの連通を遮断し、前記改質器の改質ガスを前記燃料電池に供給することを禁止すると共に、改質用燃料を前記改質器に供給することを禁止する制御
(3)前記改質器と前記燃料電池のアノードとの連通を遮断し、前記改質器の改質ガスを前記燃料電池に供給することを禁止すると共に、改質用燃料を改質器に供給することを禁止し、且つ、燃焼用空気を前記改質器に供給することを禁止する制御
【請求項8】
請求項1〜7のうちのいずれか一項において、前記燃料電池システムの運転停止に伴い前記改質器の内部の圧力が高圧化されるとき、前記改質器に残留するガスを前記燃料電池のアノードに供給して前記アノードの過剰負圧化を抑制するアノード過剰負圧化防止手段を備えていることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項9】
請求項1〜8のうちのいずれか一項において、前記燃料電池システムの運転停止に伴い前記改質器の内部の圧力が高圧化されるとき、前記改質器に残留するガスを、前記燃焼部に供給し、前記改質器の過剰高圧化を抑制する改質器過剰高圧化防止手段を備えていることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項10】
請求項1〜9のうちのいずれか一項において、前記燃料電池システムの運転を非常停止させるために操作者により操作される非常停止操作子が設けられていることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項11】
請求項1〜10のうちのいずれか一項において、異状要因により前記燃料電池システムが非常停止した後に初めて起動させるために操作者により操作され、操作に伴い、前記燃料電池システムの機能の一部または全部を解除し、操作されないと、前記燃料電池システムの機能の一部または全部を制限する制限解除操作子が設けられていることを特徴とする燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−84730(P2008−84730A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−264419(P2006−264419)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】