説明

燃料電池システム

【課題】燃料電池システムの各状態において回転機,遮断弁,センサなどで消費される電力を最小限に抑える。
【解決手段】燃料電池システム30は、燃料ガスg1を水素に変換する燃料処理装置50および当該燃料処理装置50から燃料ガスg1が供給されて発電する発電システム43およびこの発電システム43の稼動制御を行う制御ユニット44を備えた燃料電池ユニット41と、燃料処理装置50からの排熱を利用して温水w5を生成する貯湯タンク42とから構成される。制御ユニット44は、発電システム43の稼動停止時に、回転機群M,遮断弁群Vおよびセンサ群Sの少なくとも一群への電力供給を停止するよう制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムにおける補機への電源供給制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムは、化石燃料が有している化学エネルギーを直接電気に変換し、この発電を自動車や家庭用として応用するシステムが開発されている。
【0003】
燃料電池システムの燃料電池は、燃料である水素と酸化剤である酸素とを電気化学的に反応させて直接電気を発生させるものであり、高い発電効率で電気エネルギーを取り出すことができる。
【0004】
また、この種の燃料電池システムは、燃料電池本体にて発電に伴い生成される排熱を温水として回収することで、総合効率の向上を図ることができるとともに、静かで有害な排ガスを出さないという環境性に優れた特徴を有している。
【0005】
近年まで、比較的大型のPAFC(りん酸形燃料電池)が主に開発されてきたが、最近では小型のPEFC(固体高分子型燃料電池)の開発が活性化し、家庭用燃料電池システムの普及も間近な状況となっている。
【0006】
この燃料電池システムの燃料電池は、都市ガスやLPGなどの燃料を水素に変換する燃料処理装置、発電部である燃料電池本体、燃料電池本体より発電された直流電圧を交流電圧に変換するインバータ、制御装置、熱交換器、ポンプやブロワなどの回転機、センサ、電磁弁などから構成されている。
【0007】
従来の典型的な燃料電池システムは、電気と同時に有効に利用できる熱を発生し、エネルギーを多段的に活用しつつ最大限の省エネルギー性を達成することが可能なシステムが提供されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
図4は、従来の燃料電池システムの構成を示す概要図である。図5は、従来の燃料電池システムの出力制御装置の構成を示すブロック図である。
【0009】
図4に示す従来の燃料電池システム1は、燃料電池本体2、インバータ3、排熱熱交換器4、余剰電力ヒータ5、発電制御部(燃料処理装置)6、暖房熱交換器7、貯湯槽8、補助熱源9および給湯用制御部10を備えている。
【0010】
燃料電池本体2は、供給された天然ガスから水素を作り出し水素および空気から発電を行うと共に、発電時に発生する熱(以下、「排熱」という。)を出力する。インバータ3には、燃料電池本体2から出力される電気と商用電源から送電される電気とが入力される。
【0011】
そして、インバータ3は、電力負荷で要求される電力に応じて、燃料電池本体2から出力される電力を施設内の電気機器等の電力負荷に供給するようになっている。
【0012】
燃料電池本体2において発電時に発生する排熱は、燃料電池本体2の冷却水により取り出される。
【0013】
インバータ3は、電力負荷で要求される電力に応じて、燃料電池本体2から出力される電力を施設内の電気機器等の電力負荷に供給するために設けられる。
【0014】
排熱熱交換器4は、蓄熱装置である貯湯槽8から供給される循環水と熱交換される。この循環水は、循環ポンプ11により貯湯槽8の下部から取り出され、排熱熱交換器4に送られる。排熱熱交換器4において排熱が供給された循環水は、余剰電力ヒータ5及び暖房熱交換器7を経て貯湯槽8の上部に戻される。
【0015】
ここで、余剰電力ヒータ5は、余剰な電力を消費させ、燃料電池本体2から商用電源側への電力の逆潮流を防止する働きをする。また、余剰電力ヒータ5は、供給される電力を熱に変換し、電熱変換により発生する熱を、循環水に供給する。これにより、余剰電力は循環水により熱として回収されるようになっている。
【0016】
発電制御部6は、電流センサ12により電力負荷に供給される電流を検出するとともに、電流センサ13により商用電源から供給される電流を検出する。これにより、発電制御部6は、電力負荷において消費された電力及び商用電源から供給された電力を検出することができる。
【0017】
暖房熱交換器7は、循環水に供給された熱を、暖房機器等の暖房負荷(図示せず)に循環される熱媒体に熱交換する。暖房負荷の熱媒体は、熱媒循環ポンプ14により暖房負荷から暖房熱交換器7に送られた後、補助熱源9を通って再び暖房負荷に戻される。
【0018】
貯湯槽8は、台所、風呂等の給湯負荷へ温湯を供給する場合には、貯湯槽8の上層の温湯が、補助熱源9を介して送水される。そして、給湯による貯湯槽8内の水の減少分は、貯湯槽8の底部からの給水により補われる。この給水量は、流量センサ11により検出される。また、給水時の水の温度は、温度センサ12により検出される。
【0019】
給湯用制御部10は、複数の温度センサ12や流量センサ11により検出される湯温や給水量、補助熱源9により発生した熱量、熱媒循環ポンプ13の熱媒循環流量等から、暖房負荷や給湯負荷において実際に消費された熱量や貯湯槽8における放熱損失を検出するように設けられる。
【0020】
また、燃料電池システム1には省エネ度が最大となる演算機能を有する出力制御装置15を備えている。この出力制御装置15は、図5に示すように、負荷消費量予測手段16、負荷記憶手段17、有効消費エネルギー算出手段18、省エネ性評価手段19、発電出力最適化手段20、運転計画記憶手段21及びシステム制御手段22を有している。
【0021】
特に、システム制御手段22によれば、燃料電池システム1の燃料電池本体2、インバータ3、余剰電力ヒータ5、補助熱源9、循環ポンプ23、熱媒循環ポンプ13等の運転制御を行う。このシステム制御手段22は、燃料電池本体運転制御手段24を有している。この燃料電池本体運転制御手段24は、運転計画記憶手段21に格納された1日の発電出力{W(n);n=0,…,23}に従って燃料電池本体2の発電出力の制御を行う。
【0022】
この制御により、消費電力量のみならず消費熱量も含めてコージェネレーション装置の省エネ量又は省エネ度が最大となるように最適化することができる。
【0023】
従って、従来よりも省エネルギー性に優れた燃料電池システムとなり、発電量を最適化しようとする点において有効となるものである。
【特許文献1】特開2005−12906号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
しかしながら、従来の燃料電池システムによれば、燃料電池システムの運転停止時(不稼動時)や運転停止後の降温過程において、強制空冷用のポンプやブロワなどの回転機,遮断弁,センサに常時電源が供給されており、待機電力を消費していた。また、運転時にもセンサによるプロセスデータの連続監視や遮断弁の保持電力などにより電力を消費しており、発電効率の向上を阻害するという課題があった。
【0025】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、燃料電池システムの不稼動時あるいは更に運転時において回転機,遮断弁,センサなどで消費される電力を最小限に抑えることにより、省エネルギー性に優れた高い発電効率を保持した燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記目的を達成するために、本発明によれば、燃料ガスを水素に変換する燃料処理装置および当該燃料処理装置から前記燃料ガスが供給されて発電する発電システムおよびこの発電システムの稼動制御を行う制御ユニットを備えた燃料電池ユニットと、前記燃料処理装置からの排熱を利用して生成された温水を蓄える貯湯タンクとから構成される燃料電池システムであって、
前記発電システムは、前記燃料処理装置へ改質水を供給する貯水タンクと、
前記燃料処理装置からの排熱を、排熱空気を介して前記貯湯タンク側へ伝熱する熱交換器システムと、前記燃料処理装置,燃料電池本体,貯水タンクおよび熱交換器システムへの燃料ガス,空気,改質水のそれぞれを供給するブロワ用回転機群およびポンプと、前記燃料処理装置,燃料電池本体,貯水タンク,熱交換器システムへの燃料ガス,空気,改質水それぞれの供給を遮断する遮断弁群と、
前記燃料処理装置,燃料電池本体,貯水タンク,熱交換器システムへの燃料ガス,空気,改質水の供給量を検知するセンサ群と、を備え、前記制御ユニットは、前記発電システムの稼動停止時に、前記回転機群,遮断弁群およびセンサ群の少なくとも一群への電力供給を停止するよう制御することを特徴とする燃料電池システムを提供する。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、燃料電池システムの不稼動時あるいは更に運転時において回転機,遮断弁,センサなどで消費される電力を最小限に抑えることにより、省エネルギー性に優れた高い発電効率を保持した燃料電池システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明に係る燃料電池システムの実施形態について説明する。
【0029】
図1は、本発明に係る燃料電池システムの実施形態を示す概要図である。図2は、図1に示す燃料電池システムの燃料電池ユニットの発電システムおよび出力制御装置を示す系統図である。
【0030】
図1に示す燃料電池システム30は、一般家屋31において実施した例を示している。燃料電池システム30は、1KW程度の電力供給を標準として利用可能になされたものであって、例えば室内の電灯32あるいはエアコン33の電源として利用したり、また、燃料電池システム30の温水供給機能を利用して、一般家屋31内の例えば風呂における温水用のシャワー35、台所の蛇口36あるいは床暖房システム34に接続して利用することができるものである。
【0031】
この燃料電池システム30は、図2に示すように、燃料電池ユニット41と、貯湯タンク42とから構成される。
【0032】
燃料電池ユニット41は、発電システム43と、制御ユニット44とから構成される。
【0033】
発電システム43は、発電制御機能を有する燃料処理装置50と、この燃料処理装置50により発電制御される燃料電池本体51と、燃料処理装置50および燃料電池本体51に対して水成分w1を供給する貯水タンク52と、貯湯タンク42へ温水を供給する機能を有する熱交換器システム53を備える。
【0034】
また、発電システム43には、燃料処理装置50に対して燃料ガスgを供給するバーナ燃焼ラインL1と、発電用空気a1を供給する空気供給ラインL2と、選択酸化用空気a2を供給する選択酸化用空気供給ラインL3と、貯水タンク52から改質水w2を供給する改質水供給ラインL4と、バーナ燃焼ラインL1内には、燃料処理装置50にて生成された水素の一部に余剰が生じた場合、リサイクルさせるためにリサイクル遮断弁V3を有するリサイクルラインL5が設けられる。燃料電池本体51に対しては、水素極51aに対して燃料ガスg1を供給する燃料ガス供給ラインL6が設けられる。また、燃料処理装置50から燃料電池本体51へ供給した燃料ガスg1の残余分を燃料処理装置50へフィードバックさせる残余燃料戻しラインL7が設けられる。
【0035】
また、バーナ燃焼ラインL1側へ流れる燃料ガスg1の残余の燃料ガスg1は、燃料遮断弁V4および燃料供給圧力センサS2を介して燃料処理装置50内への燃料供給を行う燃料供給ラインL8が設けられる。
【0036】
バーナ燃焼ラインL1は、燃料元遮断弁V1,燃料元圧センサS1,燃料流量計60,燃料供給ブロワ用回転機M1およびバーナ燃料遮断弁V2を直列に接続し、燃料処理装置50に接続される。
【0037】
空気供給ラインL2は、燃料処理装置50に対して発電用空気a1を供給するために、バーナ空気ブロワ用回転機M2に直列にバーナ空気流量計61が直列に接続して構成され、バーナ燃焼ラインL1と燃料処理装置50の接合部に共通に接合して設けられる。
【0038】
選択酸化用空気供給ラインL3は、燃料処理装置50に対して選択酸化用空気a2を供給するために、選択酸化用空気ブロワ用回転機M3に直列に選択酸化用空気遮断弁V5が直列に接続して構成され、この選択酸化用空気遮断弁V5側が燃料処理装置50に接続される。
【0039】
改質水供給ラインL4は、燃料処理装置50に対して貯水タンク52から改質水w2を供給するために改質水ポンプP1を介して接続される。
【0040】
残余燃料戻しラインL7は、燃料処理装置50燃料電池本体51へ供給された燃料ガスg1のうち、消費されなかった残燃料g1を電池出口燃料遮断弁V7を介してリサイクルさせるために設けられる。
【0041】
また、燃料処理装置50からは、排熱空気である排ガスa3を、後述する熱交換器システム53の熱交換器54の放熱側54aに熱伝導させるための第一の排ガスラインL9が設けられる。
【0042】
また、燃料電池本体51に対しては、水素極51aに対して燃料ガスg1を供給する燃料ガス供給ラインL6と、燃料電池本体51の酸素極51bに対して発電用空気a1を供給する空気供給ラインL10と、燃料電池本体51へ貯水タンク52から水成分w1を供給する冷却水供給ラインL11とを備えている。
【0043】
燃料ガス供給ラインL6は、燃料電池本体51の水素極51aに対して改質された燃料ガス(以下、改質ガスという。)g2を供給するラインで、燃料供給量を調節する電池出口燃料遮断弁V7が設けられる。
【0044】
空気供給ラインL10は、燃料電池本体51の酸素極51bに対して発電用空気a1を供給するラインで、この空気a1を供給するカソード空気ブロワ用回転機M4,カソード空気流量計62および電池入口空気遮断弁V8が設けられる。
【0045】
冷却水供給ラインL11は、燃料電池本体51に対して貯水タンク52から水成分w1を供給するためのラインで、このラインの電池冷却水圧を検知して水圧信号を出力する水圧センサS3を備えている。
【0046】
更に、燃料電池本体51から出た排ガスa3を電池出口空気遮断弁V9を介して第一の排ガスラインL9に通じるように第二の排ガスラインL12が設けられる。
【0047】
更に、燃料電池本体51には、冷却水供給ラインL11で供給された電池冷却水w3の余剰分を電池冷却水ポンプP2を介して貯水タンク52へ戻す電池冷却水循環ラインL13が設けられる。
【0048】
また、燃料電池本体51には、貯水タンク52に対して熱交換器54で熱交換した後の凝縮水w4を回収する凝縮水供給ラインL14とを備えている。
【0049】
更には、貯水タンク52には、水位センサS4が設けられ、水位が監視されるようになっている。
【0050】
熱交換器システム53は、放熱側54aと吸熱側54bが設けられ、そしてこの吸熱側54bには、任意に受水する給湯用水を貯湯タンク42へ強制循環させる循環水ポンプP3が設けられる。
【0051】
次に、制御ユニット44について説明する。
【0052】
制御ユニット44は、図2に示すように、出力制御装置45と、消費電力検出手段46とから構成される。
【0053】
出力制御装置45は、燃料電池本体51に対して供給される燃料ガスg1,改質ガスg2,水成分w1,改質水w2,電池冷却水w3等の供給あるいは循環させる流体の供給量を発電力に応じて自動的に制御可能に設けられる。
【0054】
消費電力検出手段46は、出力制御装置45にて制御された結果、得られた電力量に応じて常に最適なシステム運用ができるように出力制御装置45側と協同作動するものである。
【0055】
一方、貯湯タンク42は、図2に示すように、燃料電池ユニット41側に設けられる熱交換システム53の貯湯用水の循環水ポンプP3を介して熱交換器54の吸熱側54bに循環させて吸熱した温水w5が蓄えられる。そしてこの温水w5が、例えば図示しない給湯器へ供給可能に設けられる。
【0056】
出力制御装置45は、具体的には図3に示すように、図示しない運転指令部より運転指令(発電出力指令)を受けて運転時様態の監視を始める運転状態監視部70と、消費電力検出手段46から消費電力検出信号を受けて補機電源最適化制御部71と、この補機電源最適化制御部71により演算された最適化データをデータ収集してセンサ群S(S1〜S4)の検出値の制御を行うデータ収集制御部72と、補機電源最適化制御部71の最適化制御信号を受けつつセンサ群Sの設定値の範囲でシステム制御するシステム制御部73とより構成される。
【0057】
補機電源電力としては、通常運転時で50〜60W程度であるが、待機時にあっては、ほぼ10W程度が消費されている。
【0058】
この出力制御装置45は、運転指令部より運転指令を受けることにより、センサ群S、ポンプ群P、ブロワ用回転機群M、ファンFおよび遮断弁群Vの省電力な最適的制御を行うことができるものである。
【0059】
次に、燃料電池システム30の作用を燃料電池システムの運転(発電)時および運転停止時に区分して説明する。
【0060】
[燃料電池システムの運転時]
燃料電池システム30の運転時において、都市ガスやLPGなどの燃料ガスg1は、発電システム43のバーナ燃焼ラインL1に導入され、燃料元遮断弁V1を介して燃料処理装置50へ導入される。
【0061】
先ず、バーナ燃焼ラインL1に供給された燃料ガスg1は、燃料元圧センサS1および燃料流量計60にて状態監視がなされ、燃料供給ブロワ用回転機M1により流量調整がなされる。
【0062】
そして、燃料供給ブロワ用回転機M1を通じた燃料ガスg1の一部は、バーナ燃料ガスとしてバーナ燃料遮断弁V2を介する一方、空気供給ラインL2のバーナ空気ブロワ用回転機M2にて調整された空気a1と混合して、燃料処理装置50のバーナ燃焼に利用する。このバーナ空気量はバーナ空気流量計61にて監視され、バーナ空気ブロワ用回転機M2にて適切な流量に調整される。なお、この流量調整時には、燃料元圧センサS1および燃料流量計60への電源供給(電力消費)がなされると同時に制御ユニット44の出力制御装置45においてデータ収集を連続的または断続的に行なう。
【0063】
また、このバーナ空気ブロワ用回転機M2にての流量の調整時に、バーナ空気流量計61への電源供給およびデータ収集を連続的または断続的に行なつてもよい。
【0064】
また、バーナ燃焼ラインL1から導入された燃料ガスg1の残りの燃料ガスg1はリサイクルラインL5のリサイクル遮断弁V3を介して燃料処理装置50へ導入され、改質水供給ラインL4の改質水ポンプP1にて燃料処理装置50へ導入された改質水w2の作用により、主に水素と二酸化炭素に改質される。この時、燃料処理装置50内部の圧力は燃料供給圧力センサS2にて監視される。ここで、燃料供給圧力センサS2への電源供給も行われ、また、出力制御装置45によるデータ収集も行われる。
【0065】
さらに、燃料処理装置50の触媒の種類により燃料処理装置50で生成した水素の一部を、燃料供給ブロワ用回転機M1の上流に戻すことが必要になる場合があるが、この場合は、リサイクルラインL5のリサイクル遮断弁V3を介してなされる。また、燃料処理装置50へは、改質ガスg2中の一酸化炭素を二酸化炭素に変換する目的で、選択酸化用空気供給ラインL3の選択酸化用空気ブロワ用回転機M3にて選択酸化用空気遮断弁V5を介して空気が送られる。
【0066】
改質ガスg2は、燃料ガス供給ラインL6の電池入口燃料遮断弁V6を介して、燃料電池本体51へ供給される。この電池本体51にて消費されなかった残燃料は、残余燃料戻しラインL7の電池出口燃料遮断弁V7を介して、再度、燃料処理装置50へ供給され、バーナ燃焼に利用される。さらに、燃焼後の排ガスa3は、第二の排ガスラインL12から熱交換器54を介して外部へ放出される。この熱交換器54の2次側、すなわち、吸熱側54bには、循環水ポンプP3により外部から水が供給され、排ガスa3と熱交換がなされることにより温水w5が生成され、例えば家庭用給湯として利用される。
【0067】
また、燃料電池本体51へは電池入口空気遮断弁V8を介して、カソード空気ブロワ用回転機M4にて空気が供給される。このカソード空気量はカソード空気流量計62にて監視され、カソード空気ブロワ用回転機M4にて適切な流量に調整される。ここで、カソード空気流量計62への電源供給がなされ、また、出力制御装置45により連続的あるいは断続的にデータ収集がなされる。そして、燃料電池本体51を出た空気は第二の排ガスラインL12を介して、第一の排ガスラインL9と混合し、熱交換器54を介して外部へ排出される。
【0068】
また、燃料電池本体51へは、貯水タンク52から電池冷却水ポンプP2により水が供給され、燃料電池本体51入口の電池冷却水の水圧センサS3により、圧力が監視される。この貯水タンク52の水位は、水位センサS4により監視される。ここで、電池冷却水の水圧センサS3及び水位センサS4への電源供給がなされる一方、出力制御装置45のセンサ群Sによるデータ収集を連続的あるいは断続的に行なわれる。
【0069】
次に、以上に記したセンサ群Sへの連続的あるいは断続的な電源供給および出力制御装置45によるデータ収集について、図3を参照して具体的に説明する。
【0070】
図3に示す運転状態監視部70にて発電システム43の状態が確認され、補機電源最適化制御部71にて間欠的な電源供給およびデータ収集の方法が選択される。その結果が、システム制御部73へ伝えられ、圧力センサS1〜S3、水位センサS4、流量計60〜62の連続的あるいは断続的な電源供給および出力制御装置45によるデータ収集がなされる。
【0071】
以上の作用により、発電システム43の発電時においてセンサ群Sや流量計60〜62で消費される電力を必要最小限に抑えることができる。
【0072】
また、燃料電池システム30の発電出力が一定である場合は、状態変化が少ないと考えられるので通常より長い間隔とし、発電出力を変動させる場合は、データ収集を密に行ない監視する必要があるため通常より短かい間隔とする。これにより、プロセスの状態監視による電源消費を必要最小限に低減することができる。
【0073】
そして、センサ群Sや流量計60〜62への電源供給およびデータ収集は、図3に示す出力制御装置45にてなされるので、運転状態監視部70にて発電システム43の状態が常に確認され、補機電源最適化制御部71にて断続的な電源供給およびデータ収集の方法が選択できる。その結果が、システム制御部73へ伝えられ、圧力センサS1〜S3、水位センサS4、流量計60〜62の断続的な電源供給およびデータ収集がなされる。
【0074】
したがって、発電システム43の稼動時にあっては、遮蔽弁群Vの開閉状態を、例えば永久磁石などで機械的に保持する機構を備えた遮断弁、例えば通常遮断弁は外部からの電源により開または閉位置が電気的に保持されるが、位置を保持するのに電力を要しない弁を用いることにより、遮断弁群Vによる消費電力を低減させることができる。
【0075】
このような弁を採用することにより、一層の省エネルギー性が高められる。
【0076】
[燃料電池システムの運転停止時]
燃料電池システム30の運転停止時には、燃料処理装置50の内部圧力を一定の範囲に保持するため、燃料供給ラインL8の燃料供給圧力センサS2にて圧力状態の監視がなされ、必要に応じてバーナ燃焼ラインL1の燃料元遮断弁V1および燃料供給ライン燃料遮断弁V4が開放される。また、燃料処理装置50の温度が一定値以上となっている場合は、空気供給ラインL2のバーナ空気ブロワ用回転機M2の強制動作により、降温操作がなされる。ここで、バーナ空気流量はバーナ空気流量計61にて監視され、バーナ空気ブロワ用回転機M2にて適切な流量に調整される。一方、貯湯タンク42の循環水ポンプP3は、貯湯タンク42独自の外部指令により、本指令に応じた動作がなされる。
【0077】
その他の回転機群M,センサ群Sについては、燃料電池システム30の停止時に動作する必要がないので、図3に示す出力制御装置45にて電源停止操作がなされる。
【0078】
具体的には、運転状態監視部70にて燃料電池システム30の状態が確認され、補機電源最適化制御部71にて電源供給の必要性について判断される。
【0079】
その結果、システム制御部73により不要な補機への電源供給が停止される。
【0080】
電源供給が停止される対象は、まず回転機群Mとしては、燃料供給ブロワ用回転機M1、選択酸化用空気ブロワ用回転機M3、カソード空気ブロワ用回転機M4、電池冷却水ポンプP2、改質水ポンプP1、が挙げられる。次に、センサ群Sとしては、燃料元圧センサS1,水圧センサS3および水位センサS4、バーナ空気流量計61およびカソード空気流量計62が挙げられる。
【0081】
また、発電システム43の停止過程で、燃料処理装置50の内部温度を降温させるため、空気供給ラインL2のバーナ空気ブロワ用回転機M2、改質水供給ラインL4の改質水ポンプP1を動作させる。このバーナ空気量はバーナ空気流量計61にて監視され、バーナ空気ブロワ用回転機M2にて適切な流量に調整される。また、循環水ポンプP3は、制御ユニット44からの図示しない外部指令により、本指令に応じた動作がなされる。
【0082】
その他の回転機群M,センサ群Sについては、発電システム43の運転停止時と同様に、システム制御部73により不要な補機への電源供給が停止される。
【0083】
電源供給が停止される対象もまた発電システム43の運転停止時と同様である。
【0084】
なお、燃料電池システム30により得られた直流電力は、別途図示しないインバータを通して、交流化して家庭用機器等の電源として利用することができる。
【0085】
また、発電システム43の稼動時にあって、電力不使用時などで電力の逆潮が生じ得る場合には、燃料電池ユニット41内に設けられるヒータ(図示せず)に接続して電力消費させるようにすることもできる。
【0086】
以上説明したように、本発明の燃料電池システム30によれば、
燃料ガスg1を水素に変換する燃料処理装置50および当該燃料処理装置50から燃料ガスg1が供給されて発電する発電システム43およびこの発電システム43の稼動制御を行う制御ユニット44を備えた燃料電池ユニット41と、燃料処理装置50からの排熱を利用して生成された温水を蓄える貯湯タンク42とから構成され、燃料電池ユニット41は、発電システム43および当該発電システム43の発電を制御する制御ユニット44を具備する。
【0087】
発電システムは、燃料処理装置50へ改質水w2を供給する貯水タンク52と、燃料処理装置50からの排熱を、排ガスa3を介して貯湯タンク42側へ伝熱する熱交換器システム53の熱交換器54と、燃料処理装置50,燃料電池本体51,貯水タンク52および熱交換器54への燃料ガスg1,空気a1,a2,改質水w2それぞれを供給するブロワ用回転機群Mと、燃料処理装置50,燃料電池本体51,貯水タンク52,熱交換器54への燃料ガスg1,空気a1,a2,改質水w2それぞれの供給を遮断する遮断弁群Vと、燃料処理装置50,燃料電池ユニット41,貯水タンク52,熱交換器54への燃料ガスg1,空気a1,a2,改質水w2の供給量を検知するセンサ群Sを備える。制御ユニット44は、発電システム43の稼動停止時に、回転機群M,遮断弁群Vおよびセンサ群Sの少なくとも一群への電力供給を停止するよう制御するようにしたから、
燃料電池システム30の種々の状態において回転機群M,遮断弁群V,センサ群Sなどで消費される電力を最小限に抑えることにより、省エネルギー性に優れた高い発電効率を保持した燃料電池システムを提供することができる。
【0088】
また、本発明の燃料電池システム30によれば、センサ群Sは、発電システム43の稼動時において、特に稼動状態が安定している場合には、当該センサ群Sの電力受給を断続的に行なうことができるようにシステム構成したから、より一層の省電力を効果が得られる。
【0089】
更に、センサ群Sは、当該センサ群Sへの電力受給間隔を、前記発電システム43による発電出力が一定である場合には、発電出力が変動している場合より長くなるようにシステム構成したから、さらにより一層の省電力を効果が得られる。
【0090】
更にまた、センサ群Sは、発電システム43の稼動停止後の燃料処理装置の降温過程では、上記降温過程でのシステム制御上の変動要因が少ないことから、電力受給間隔を通常時と比べ相対的に長くさせたシステム構成としたから、更にまた、より一層の省電力を効果が得られる。
【0091】
また、遮断弁群Vは、発電システム43の稼動時においても、遮断または開放時の消費電力が伴わない構成を採用することにより、当該遮断弁群Vに関わる電力消費を皆無とすることができるので、より一層の省電力を効果が得られる。
【0092】
更に、発電システム43の稼動停止後の燃料処理装置50の降温過程で、ブロワ用回転機群Mのバーナ空気ブロワ用回転機M2により、燃料処理装置50を強制空冷するように設けた構成を採用したので、間接的に発電システム43の発電効率向上に寄与させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明に係る燃料電池システムの実施形態を示す概要図。
【図2】図1に示す燃料電池システムの燃料電池ユニットの発電システムおよび出力制御装置を示す系統図。
【図3】図1に示す燃料電池システムの制御ユニットを示すブロック図。
【図4】従来の燃料電池システムの構成を示す概要図。
【図5】従来の燃料電池システムの発電システムに対する出力制御装置の関係を示すブロック図。
【符号の説明】
【0094】
30 燃料電池システム
31 一般家屋
32 電灯
33 エアコン
34 床暖房システム
35 シャワー
36 蛇口
41 燃料電池ユニット
42 貯湯タンク
43 発電システム
44 制御ユニット
45 出力制御装置
46 消費電力検出手段
50 燃料処理装置
51 燃料電池本体
51a 水素極
51b 酸素極
52 貯水タンク
53 熱交換器システム
54 熱交換器
54a 放熱側
54b 吸熱側
60 燃料流量計
61 バーナ空気流量計
62 カソード空気流量計
70 運転状態監視部
71 補機電源最適化制御部
72 データ収集制御部
73 システム制御部
L1 バーナ燃焼ライン
L2,L10 空気供給ライン
L3 選択酸化用空気供給ライン
L4 改質水供給ライン
L5 リサイクルライン
L6 燃料ガス供給ライン
L7 残余燃料戻しライン
L8 燃料供給ライン
L9 第一の排ガスライン
L11 冷却水供給ライン
L12 第二の排ガスライン
L13 電池冷却水循環ライン
L14 凝縮水供給ライン
a1 発電用空気
a2 選択酸化用空気
a3 排ガス(排熱空気)
g1 燃料ガス
g2 改質ガス(燃料ガス)
w1 水成分
w2 改質水
w3 電池冷却水
w4 凝縮水
w5 温水
V(V1〜V9) 遮断弁群
V1 燃料元遮断弁
V2 バーナ燃料遮断弁
V3 リサイクル遮断弁
V4 燃料遮断弁
V5 選択酸化用空気遮断弁
V6 電池入口燃料遮断弁
V7 電池出口燃料遮断弁
V8 電池入口空気遮断弁
V9 電池出口空気遮断弁
M(M1〜M4) ブロワ用回転機群
M1 燃料供給ブロワ用回転機
M2 バーナ空気ブロワ用回転機
M3 選択酸化用空気ブロワ用回転機
M4 カソード空気ブロワ用回転機
F ファン
P(P1〜P3) ポンプ群
P1 改質水ポンプ
P2 電池冷却水ポンプ
P3 循環水ポンプ
S(S1〜S8)センサ群
S1 燃料元圧力センサ
S2 燃料供給圧力センサ
S3 水圧センサ
S4 水位センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスを水素に変換する燃料処理装置および当該燃料処理装置から前記燃料ガスが供給されて発電する発電システムおよびこの発電システムの稼動制御を行う制御ユニットを備えた燃料電池ユニットと、前記燃料処理装置からの排熱を利用して生成された温水を蓄える貯湯タンクとから構成される燃料電池システムであって、
前記発電システムは、前記燃料処理装置へ改質水を供給する貯水タンクと、
前記燃料処理装置からの排熱を、排熱空気を介して前記貯湯タンク側へ伝熱する熱交換器システムと、
前記燃料処理装置,燃料電池本体,貯水タンクおよび熱交換器システムへの燃料ガス,空気,改質水のそれぞれを供給するブロワ用回転機群およびポンプと、
前記燃料処理装置,燃料電池本体,貯水タンク,熱交換器システムへの燃料ガス,空気,改質水それぞれの供給を遮断する遮断弁群と、
前記燃料処理装置,燃料電池本体,貯水タンク,熱交換器システムへの燃料ガス,空気,改質水の供給量を検知するセンサ群と、を備え、
前記制御ユニットは、前記発電システムの稼動停止時に、前記回転機群,遮断弁群およびセンサ群の少なくとも一群への電力供給を停止するよう制御することを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記センサ群は、発電システムの稼動時において、当該センサ群の電力受給を断続的に行なうことを特徴とする請求項1記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記センサ群は、当該センサ群への電力受給間隔を、前記発電システムによる発電出力が一定である場合には、発電出力が変動している場合より長くすることを特徴とする請求項1記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記センサ群は、発電システムの稼動停止後の燃料処理装置の降温過程で、電力受給間隔を通常時と比べ相対的に長くしたことを特徴とする請求項1記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記遮断弁群は、発電システムの稼動時において、遮断または開放時の消費電力が伴わない構成としたことを特徴とする請求項1記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記ブロワ用回転機群のバーナ空気ブロワ用回転機は、発電システムの稼動停止後の燃料処理装置の降温過程で、当該燃料処理装置が強制空冷されるようにしたことを特徴とする請求項1記載の燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−181941(P2009−181941A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−22654(P2008−22654)
【出願日】平成20年2月1日(2008.2.1)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(301060299)東芝燃料電池システム株式会社 (358)
【Fターム(参考)】