説明

燃料電池システム

【課題】システム始動時の燃料電池温度を短時間で精度よく算出可能な燃料電池システムを提供する。
【解決手段】アノードガス及びカソードガスの供給を受けて発電する燃料電池1を備える燃料電池システム100であって、燃料電池1の含水量を算出する含水量算出手段S202と、燃料電池1の内部インピーダンスを算出する内部インピーダンス算出手段S203と、前回システム停止時における燃料電池1の含水量と、システム始動時における燃料電池1の内部インピーダンスとに基づいて、システム始動時の燃料電池温度を算出する始動時温度算出手段S204と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アノードガス及びカソードガスを供給して燃料電池を発電させる燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、システム始動時に冷却水温度センサを用いて冷却水温度を検出し、検出された冷却水温度をシステム始動時における燃料電池温度とする燃料電池システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−186599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃料電池システムを氷点下において始動する場合には、燃料電池内の生成水が凍結したり燃料電池の発電性能が低下したりするため、燃料電池システムにおける発電部位が暖機されるまで車両の走行を制限することがある。そのため、燃料電池システムでは、システム始動時に算出した燃料電池温度を用いて車両の走行許可判断を行っている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の燃料電池システムでは、冷却水温度センサを用いてシステム始動時の燃料電池温度を求めるため、システム始動後に冷却水を数秒程度通流させてから冷却水温度を検出する必要があり、燃料電池温度を算出するまでに時間がかかるという問題があった。このように燃料電池温度の算出に時間がかかると、燃料電池温度を用いた車両の走行許可判断も遅れることになる。
【0006】
そこで、本発明は、上記した問題点に鑑みてなされたものであり、システム始動時の燃料電池温度を短時間で精度よく算出可能な燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、アノードガス及びカソードガスの供給を受けて発電する燃料電池を備える燃料電池システムである。この燃料電池システムは、燃料電池の含水量を算出する含水量算出手段と、燃料電池の内部インピーダンスを算出する内部インピーダンス算出手段と、含水量算出手段によって算出される前回システム停止時における燃料電池の含水量と、内部インピーダンス算出手段によって算出されるシステム始動時における燃料電池の内部インピーダンスとに基づいて、システム始動時の燃料電池温度を算出する始動時温度算出手段と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、システム始動後すぐに算出可能な燃料電池の含水量及び内部インピーダンスを用いて燃料電池温度を算出するので、従来技術と比較して短時間で高精度の燃料電池温度を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態による燃料電池システムの概略構成図である。
【図2】燃料電池システムが備えるコントローラが実行する内部インピーダンス算出処理を示すフローチャートである。
【図3】バンドパスフィルタの周波数−振幅特性を示す図である。
【図4】コントローラが実行するシステム始動時の車両走行許可判断処理を示すフローチャートである。
【図5】所定温度毎の燃料電池スタックの内部インピーダンスと燃料電池スタックの含水量との関係を表すマップデータである。
【図6】所定温度毎の燃料電池スタックの内部インピーダンスと燃料電池スタックの含水量との関係を表すマップデータである。
【図7】始動時燃料温度−上限出力値特性を示す図である。
【図8】所定温度毎の燃料電池スタックの内部インピーダンスと燃料電池スタックの含水量との関係を表すマップデータである。
【図9】第2実施形態による燃料電池システムが備えるコントローラが実行する乾燥運転制御処理を示すフローチャートである。
【図10】交流周波数−位相遅れθ特性を示す図である。
【図11】1kHzの交流電流を燃料電池スタックに重畳した時に算出される燃料電池スタックの内部インピーダンスを複素平面上に示した図である。
【図12】第3実施形態による燃料電池システムが備えるコントローラが実行するシステム始動時の車両走行許可判断処理を示すフローチャートである。
【図13】燃料電池スタックの出力電圧−位相遅れθ特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面等を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0011】
(第1実施形態)
燃料電池は、電解質膜を燃料極としてのアノード電極と酸化剤極としてのカソード電極とで挟んで構成されており、アノード電極に供給される水素を含有するアノードガス及びカソード電極に供給される酸素を含有するカソードガスを用いて発電する。アノード電極及びカソード電極の両電極において進行する電気化学反応は、以下の通りである。
【0012】
アノード電極: 2H2 → 4H++4e- ・・・(1)
カソード電極: 4H++4e-+O2 → 2H2O ・・・(2)
【0013】
これら(1)(2)の電気化学反応によって、燃料電池は1V(ボルト)程度の起電力を生じる。
【0014】
このような燃料電池を自動車用動力源として使用する場合には、要求される電力が大きいため、数百枚の燃料電池を積層した燃料電池スタックとして使用する。そして、燃料電池スタックにアノードガス及びカソードガスを供給する燃料電池システムを構成して、車両を駆動させるための電力を取り出す。
【0015】
図1は、本発明の第1実施形態による燃料電池システム100の概略構成図である。
【0016】
燃料電池システム100は、燃料電池スタック1と、アノードガス供給装置2と、カソードガス供給装置3と、冷却装置4と、インバータ5と、駆動モータ6と、バッテリ7と、DC/DCコンバータ8と、コントローラ60と、を備える。
【0017】
燃料電池スタック1は、所定枚数の燃料電池10を積層して構成されている。燃料電池スタック1は、アノードガス(水素)及びカソードガス(空気)の供給を受けて発電し、車両を駆動する駆動モータ6等の各種電装部品に電力を供給する。燃料電池スタック1は、電力を取り出すための出力端子として、アノード側端子11とカソード側端子12とを有している。
【0018】
アノードガス供給装置2は、高圧タンク21と、アノードガス供給通路22と、調圧弁23と、圧力センサ24と、アノードガス排出通路25と、バッファタンク26と、パージ通路27と、パージ弁28と、を備える。
【0019】
高圧タンク21は、燃料電池スタック1に供給されるアノードガスとしての水素を高圧状態に保って貯蔵する容器である。
【0020】
アノードガス供給通路22は、高圧タンク21から排出されたアノードガスを燃料電池スタック1に供給するための通路である。アノードガス供給通路22の一端は高圧タンク21に接続され、他端は燃料電池スタック1のアノードガス入口部に接続される。
【0021】
調圧弁23は、連続的又は段階的に開度を調節可能な電磁弁であって、アノードガス供給通路22に設置される。調圧弁23は、高圧タンク21から排出された高圧状態のアノードガスを所定の圧力に調節する。調圧弁23の開度はコントローラ60によって制御される。
【0022】
圧力センサ24は、調圧弁23よりも下流側のアノードガス供給通路22に設けられる。圧力センサ24は、アノードガス供給通路22を流れるアノードガスの圧力を検出する。圧力センサ24で検出されたアノードガスの圧力は、バッファタンク26や燃料電池スタック1内部のアノードガス流路等を含むアノード系全体の圧力を代表する。
【0023】
アノードガス排出通路25は、燃料電池スタック1とバッファタンク26とを連通する通路である。アノードガス排出通路25の一端は燃料電池スタック1のアノードガス出口部に接続され、他端はバッファタンク26の上部に接続される。アノードガス排出通路25には、電気化学反応に使用されなかった余剰のアノードガスと、燃料電池スタック1内においてカソード側からアノードガス流路へとリーク(クロスオーバー)してきた窒素や水蒸気等を含む不純ガスとの混合ガス(以下、「アノードオフガス」という。)が排出される。
【0024】
バッファタンク26は、アノードガス排出通路25を流れてきたアノードオフガスを一時的に蓄える容器である。アノードオフガスに含まれる水蒸気の一部は、バッファタンク26内で凝縮して凝縮水となり、アノードオフガスから分離される。
【0025】
パージ通路27は、バッファタンク26を外部に連通させる通路である。パージ通路27の一端はバッファタンク26の下部に接続され、パージ通路27の他端は開口端として形成される。バッファタンク26に溜められたアノードオフガスは、後述のカソードガス排出通路35からパージ通路27に流入するカソードオフガスによって稀釈され、凝縮水とともにパージ通路27の開口端から外部へ排出される。
【0026】
パージ弁28は、連続的又は段階的に開度を調節可能な電磁弁であり、パージ通路27に設置される。パージ弁28の開度を調節することで、パージ通路27から外部へ排出されるアノードオフガスの量が調整される。パージ弁28の開度はコントローラ60によって制御される。
【0027】
カソードガス供給装置3は、カソードガス供給通路31と、フィルタ32と、コンプレッサ33と、圧力センサ34と、カソードガス排出通路35と、調圧弁36と、を備える。
【0028】
カソードガス供給通路31は、燃料電池スタック1に供給されるカソードガスである空気が流れる通路である。カソードガス供給通路31の一端はフィルタ32に接続され、他端は燃料電池スタック1のカソードガス入口部に接続される。
【0029】
フィルタ32は、外部から取り込まれる空気に含まれる塵や埃等の異物を除去するものである。フィルタに32によって異物が除去された空気が、燃料電池スタック1に供給されるカソードガスとなる。
【0030】
コンプレッサ33は、フィルタ32と燃料電池スタック1との間のカソードガス供給通路31に設置される。コンプレッサ33は、フィルタ32を介して取り込まれたカソードガスを燃料電池スタック1に圧送する。
【0031】
圧力センサ34は、コンプレッサ33よりも下流側のカソードガス供給通路31に設けられる。圧力センサ34は、カソードガス供給通路31を流れるカソードガスの圧力を検出する。圧力センサ34で検出されたカソードガスの圧力は、燃料電池スタック1内部のカソードガス流路等を含むカソード系全体の圧力を代表する。
【0032】
カソードガス排出通路35は、燃料電池スタック1とアノードガス供給装置2のパージ通路27とを連通する通路である。カソードガス排出通路35の一端は燃料電池スタック1のカソードガス出口部に接続され、他端はパージ弁28よりも下流側のパージ通路27に接続される。燃料電池スタック1において電気化学反応に使用されなかったカソードガスは、カソードオフガスとして、カソードガス排出通路35を介してパージ通路27に排出される。
【0033】
調圧弁36は、連続的又は段階的に開度を調節可能な電磁弁であって、カソードガス排出通路35に設置される。調圧弁36は、コントローラ60によって開度が制御され、燃料電池スタック1に供給されるカソードガスの圧力を調整する。
【0034】
冷却装置4は、冷却水によって燃料電池スタック1を冷却するための装置であり、冷却水循環通路41と、冷却水循環ポンプ42と、ラジエータ43と、冷却水温度センサ44,45と、を備える。
【0035】
冷却水循環通路41は、燃料電池スタック1を冷却するための冷却水が流れる通路である。冷却水循環通路41の一端は燃料電池スタック1の冷却水入口部に接続され、他端は燃料電池スタック1の冷却水出口部に接続される。
【0036】
冷却水循環ポンプ42は、冷却水を循環させる圧送装置であって、冷却水循環通路41に設置される。
【0037】
ラジエータ43は、燃料電池スタック1から排出された冷却水を冷却するための放熱器であって、冷却水循環ポンプ42よりも上流側の冷却水循環通路41に設置される。
【0038】
冷却水温度センサ44,45は、冷却水の温度を検出するセンサである。冷却水温度センサ44は、燃料電池スタック1の冷却水入口部寄りの冷却水循環通路41に設けられ、燃料電池スタック1に流入する冷却水の温度を検出する。これに対して、冷却水温度センサ45は、燃料電池スタック1の冷却水出口部寄りの冷却水循環通路41に設けられ、燃料電池スタック1から排出された冷却水の温度を検出する。
【0039】
インバータ5は、スイッチ部51及び平滑コンデンサ52を備え、アノード側端子11及びカソード側端子12を介して燃料電池スタック1に電気的に接続される。スイッチ部51は、複数のスイッチング素子から構成され、直流を交流に又は交流を直流に変換する。平滑コンデンサ52は、燃料電池スタック1と並列に接続されて、スイッチ部51でのスイッチング等によって生じるリプルを抑制する。
【0040】
駆動モータ6は、三相交流モータであって、インバータ5から供給される交流電流によって作動して車両を駆動させるトルクを発生する。
【0041】
バッテリ7は、DC/DCコンバータ8を介して、駆動モータ6及び燃料電池スタック1と電気的に接続される。バッテリ7は、リチウムイオン二次電池等の充放電可能な二次電池である。
【0042】
DC/DCコンバータ8は、燃料電池スタック1に電気的に接続される。DC/DCコンバータ8は、燃料電池スタック1の電圧を昇降圧させる双方向性の電圧変換機であり、直流入力から直流出力を得るとともに入力電圧を任意の出力電圧に変換する。
【0043】
コントローラ60は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。コントローラ60には、圧力センサ24,34や冷却水温度センサ44,45の他に、燃料電池スタック1の出力電流を検出する電流センサ61や燃料電池スタック1の出力電圧を検出する電圧センサ62、車両に備えられるアクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルペダルセンサ63、バッテリ7の充電量を検出するSOCセンサ64からの検出信号が、燃料電池システム100の運転状態を検出するための信号として入力する。
【0044】
コントローラ60は、これらの入力信号に基づいて燃料電池スタック1の目標燃料電池電圧等を算出し、燃料電池スタック1に供給するアノードガス及びカソードガスの流量等を制御する。
【0045】
また、コントローラ60は、燃料電池システム100を起動するシステム始動時において、燃料電池スタック1の燃料電池温度(燃料電池10の電解質膜の温度)を算出し、算出した燃料電池温度に基づいて車両走行許可判断を実行する(図4参照)。
【0046】
本実施形態による燃料電池システム100では、コントローラ60は、前回システム停止時における燃料電池スタック1の含水量(燃料電池10の電解質膜の湿潤度)及び今回システム始動時における燃料電池スタック1の内部インピーダンス(燃料電池10の電解質膜の内部インピーダンス)を用いることで、システム始動直後に精度よく燃料電池温度を算出している。
【0047】
まず、図2を参照して、燃料電池スタック1の内部インピーダンスの算出方法について説明する。
【0048】
図2は、コントローラ60が実行する燃料電池スタック1の内部インピーダンス算出処理のフローチャートである。燃料電池スタック1の内部インピーダンス算出処理は、従来から知られている交流インピーダンス法に基づくものである。内部インピーダンス算出処理は、燃料電池スタック1の内部インピーダンスの算出が必要となる所定タイミングで実行される。
【0049】
S101(ステップ101)において、コントローラ60は、車両運転状態に応じて設定される燃料電池スタック1の目標燃料電池電圧に1kHzの交流電圧値を加算したものを、今回の目標燃料電池電圧として設定する。
【0050】
S102において、コントローラ60は、S101で設定した目標燃料電池電圧となるようにDC/DCコンバータ8を制御する。DC/DCコンバータ8を制御して、交流電圧を燃料電池スタック1に印加することで、燃料電池スタック1の出力電流に交流電流が重畳される。このようにDC/DCコンバータ8を制御することで、燃料電池の出力信号が1kHzの周波数を含んだ交流電圧及び交流電流となる。
【0051】
S103において、コントローラ60は、電流センサ61を用いて燃料電池スタック1の出力電流を検出するとともに、電圧センサ62を用いて燃料電池スタック1の出力電圧を検出する。
【0052】
S104において、コントローラ60は、S103で検出した電流値及び電圧値の直流成分をバンドパスフィルタを用いて除去し、交流電流値及び交流電圧値を算出する。なお、バンドパスフィルタは、図3に示すように、通過帯域中心が1kHzに設定された周波数−振幅特性を有するフィルタである。
【0053】
S105において、コントローラ60は、交流電流値に既知のフーリエ変換処理を施して、1kHzにおける電流振幅値を算出する。
【0054】
S106において、コントローラ60は、交流電圧値に既知のフーリエ変換処理を施して、1kHzにおける電圧振幅値を算出する。
【0055】
S107において、コントローラ60は、S106で算出した電圧振幅値をS105で算出した電流振幅値で除して、燃料電池スタック1の内部インピーダンスZを算出する。
【0056】
S108において、コントローラ60は、交流電流値及び交流電圧値にフーリエ変換処理を施し、交流電流値に対する交流電圧値の位相遅れθを算出して、内部インピーダンス算出処理を終了する。
【0057】
次に、図4を参照して、コントローラ60が実行するシステム始動時の車両走行許可判断処理について説明する。車両走行許可判断処理は、イグニッションスイッチがオンされてから車両走行が許可されるまでの間、所定演算周期(例えば100マイクロ秒周期)で実行される。
【0058】
S201において、コントローラ60は、燃料電池温度算出要求があるか否かを判定する。システム始動直後や車両走行禁止が報知されている場合等に、コントローラ60は、燃料電池温度算出要求があると判定してS202の処理を実行する。これに対して、車両走行許可が報知されている場合等に、コントローラ60は、燃料電池温度算出要求がないと判定して車両走行許可判断処理を終了する。
【0059】
S202において、コントローラ60は、図5に示すマップデータを参照し、前回システム停止時における燃料電池温度及び燃料電池スタック1の内部インピーダンスに基づいて、システム停止時における燃料電池スタック1の含水量を算出する。
【0060】
なお、前回システム停止時における燃料電池温度は、イグニッションスイッチがオフされた時に、冷却水温度センサ44によって検出された冷却水温度と冷却水温度センサ45によって検出された冷却水温度との平均値である。また、前回システム停止時における燃料電池スタック1の内部インピーダンスは、イグニッションスイッチがオフされた時に、内部インピーダンス算出処理(図2参照)で算出された内部インピーダンスである。
【0061】
図5は、燃料電池スタック1の含水量を算出するために使用されるマップデータである。このマップデータは、燃料電池システム100が使用される温度領域において所定温度毎の燃料電池スタック1の内部インピーダンスと燃料電池スタック1の含水量との関係を規定する特性図である。マップデータは、予め設定されたデータであって、コントローラ60のROM等に記憶されている。
【0062】
図5のマップデータに示すように、燃料電池温度が一定の場合には、燃料電池スタック1の含水量が小さく燃料電池10の電解質膜が乾燥しているほど、燃料電池スタック1の内部インピーダンスは大きくなる。また、燃料電池スタック1の含水量が一定である場合には、燃料電池温度が低くなるほど、燃料電池スタック1の内部インピーダンスは大きくなる。このように、内部インピーダンス−含水量特性における等温度線は、燃料電池温度が高くなるほど図中右上に位置するようになる。
【0063】
例えば、前回システム停止時における燃料電池温度がT1で、燃料電池スタック1の内部インピーダンスがZeである場合には、図5のマップデータから前回システム停止時における燃料電池スタック1の含水量はWeと算出される。
【0064】
S202で燃料電池スタック1の含水量Weを算出した後、S203において、コントローラ60は、システム始動時における燃料電池スタック1の内部インピーダンスZsを算出する。システム停止時における燃料電池スタック1の内部インピーダンスは、イグニッションスイッチがオンされた時に、内部インピーダンス算出処理(図2参照)によって算出される。
【0065】
S204において、コントローラ60は、図6に示すマップデータを参照し、S202で算出した前回システム停止時の燃料電池スタック1の含水量We及びS203で算出したシステム始動時の内部インピーダンスZsに基づいて、システム始動時における始動時燃料電池温度Tsを算出する。
【0066】
図6は、燃料電池温度を算出するために使用されるマップデータである。図6のマップデータは、図5に示したマップデータと同じマップデータである。前回システム停止時における燃料電池スタック1の含水量がWeで、システム始動時の燃料電池スタック1の内部インピーダンスがZsである場合には、図6のマップデータから始動時燃料電池温度TsはT2と算出される。
【0067】
なお、始動時燃料電池温度Tsの算出では、前回停止時から始動時までの間に燃料電池スタック1の含水量がほとんど変化していないことを前提として、前回システム停止時における燃料電池スタック1の含水量Weを使用している。
【0068】
S205において、コントローラ60は、始動時燃料電池温度Tsに基づいて、燃料電池スタック1の上限出力値Pmaxを算出する。燃料電池スタック1の上限出力値Pmaxは、図7に示す予め設定された始動時燃料温度−上限出力値特性から求められる。図7に示すように、始動時燃料電池温度Tsが高いほど、システム始動時における燃料電池スタック1の上限出力値Pmaxは大きくなる。
【0069】
S206において、コントローラ60は、上限出力値Pmaxが走行可能出力値P0よりも大きいか否かを判定する。走行可能出力値P0は、駆動モータ6が車両を走行させるために必要なトルクを発生可能な燃料電池スタック1の出力電流値に基づいて設定されている。
【0070】
S206の処理において、上限出力値Pmaxが走行可能出力値P0よりも大きいと判定された場合には、コントローラ60はS207の処理を実行する。
【0071】
S207では、コントローラ60は、車両を走行させることが可能であると判断して走行許可報知処理を実行し、車両走行許可判断処理を終了する。走行許可報知処理では、青色の走行許可ランプを点灯させる等して、車両が走行可能状態であることを運転者に報知する。
【0072】
一方、S206の処理において、上限出力値Pmaxが走行可能出力値P0以下であると判定された場合には、コントローラ60はS208及びS209の処理を実行する。
【0073】
S208において、コントローラ60は、システム始動時における燃料電池温度が低く燃料電池スタック1からの出力が不足しており車両の走行を制限する必要があると判断して、走行禁止報知処理を実行する。走行禁止報知処理では、赤色の走行禁止ランプを点灯させる等して、車両が走行禁止状態であることを運転者に報知する。
【0074】
S209において、コントローラ60は、燃料電池スタック1を暖機するための暖機処理を実行し、車両走行許可判断処理を終了する。暖機処理では、燃料電池スタック1の上限出力値Pmaxよりも小さい出力で動作可能な補器類等に燃料電池スタック1から電力を供給し、燃料電池スタック1の暖機を行う。
【0075】
なお、バッテリ7の電力を用いてヒータを作動させ、ヒータを介して燃料電池スタック1を暖めるようにしてもよい。
【0076】
また、S205及びS206の処理では、始動時燃料電池温度Tsから算出した上限出力値Pmaxに基づいて走行許可又は走行禁止の判定を行うようにしたが、始動時燃料電池温度Tsに基づいて走行許可又は走行禁止の判定を行うようにしてもよい。この場合には、コントローラ60は、始動時燃料電池温度Tsが基準温度(例えば0度)よりも大きい場合にS207の処理を実行して、始動時燃料電池温度Tsが基準温度以下の場合にS208及びS209の処理を実行する。
【0077】
上記のように構成される本実施形態の燃料電池システム100によれば、以下の効果を得ることができる。
【0078】
燃料電池システム100では、前回システム停止時に検出された冷却水温度及び燃料電池スタック1の内部インピーダンスに基づいて燃料電池スタック1の含水量を算出し、前回システム停止時の燃料電池スタック1の含水量とシステム始動時の内部インピーダンスとに基づいてシステム始動時における始動時燃料電池温度を算出する。このようにシステム始動とほぼ同時に算出可能な燃料電池スタック1の含水量及び内部インピーダンスを用いて燃料電池温度を算出するので、システム始動後に冷却水を循環させてから冷却水温度センサの検出値に基づいて燃料電池温度を算出する従来技術と比較して、システム始動後すぐに高精度の燃料電池温度を求めることができる。
【0079】
また、燃料電池システム100では、始動時燃料電池温度又は始動時燃料電池温度から求められる燃料電池スタック1の上限出力値に基づいて走行可否判断を実施するので、システム始動後すぐに走行可否判断結果を得ることができる。
【0080】
さらに、燃料電池システム100では、始動時燃料電池温度又は始動時燃料電池温度から求められる燃料電池スタック1の上限出力値にに基づいて暖機可否判断を実施するので、システム始動後すぐに暖機可否判断結果を得ることができる。
【0081】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態による燃料電池システム100について説明する。本実施形態の燃料電池システム100は、システム停止時に燃料電池スタック1の含水量が低下するように乾燥運転を実施する点において、第1実施形態の燃料電池システムと相違する。以下、その相違点を中心に説明する。
【0082】
なお、以下の各実施形態では、第1実施形態と同じ機能を果たす構成等には同一の符号を用い、重複する説明を適宜省略する。
【0083】
図8は、第2実施形態による燃料電池システム100が備えるコントローラ60が実行する走行許可判断処理において、燃料電池スタック1の含水量や始動時燃料電池温度を算出するために使用されるマップデータである。図8のマップデータは、図5及び図6のマップデータと同じものである。
【0084】
図8に示すように、燃料電池温度毎の内部インピーダンス−含水量特性においては、燃料電池スタック1の含水量が小さくなるほど、燃料電池温度変化に対する燃料電池スタック1の内部インピーダンスの変化量ΔZが大きくなる。例えば、燃料電池温度がT1からT2に変化した時の燃料電池スタック1の内部インピーダンス変化量は、燃料電池スタック1の含水量がW1である場合にはΔZ1となり、燃料電池スタック1の含水量がW2である場合にはΔZ1よりも大きいΔZ2となる。
【0085】
第2実施形態の燃料電池システム100では、システム停止前に燃料電池スタック1の含水量が低下するように乾燥運転を実施して、燃料電池温度変化に対する内部インピーダンスの変化量が大きくなる状態としておくことで、次回システム始動時における内部インピーダンスの検出精度を高めている。
【0086】
図9は、コントローラ60が実行する乾燥運転制御処理を示すフローチャートである。乾燥運転制御処理は、イグニッションスイッチがオフされてから乾燥運転が終了するまでの間、所定演算周期(例えば100マイクロ秒周期)で実行される。
【0087】
S301において、コントローラ60は、燃料電池スタック1の含水量を低下させる乾燥運転を実施する。
【0088】
燃料電池システム100では、通常運転時に燃料電池スタック1の内部インピーダンスが通常運転用設定値となるように制御することで、燃料電池10の電解質膜が適度な湿潤度を保つようにして発電効率を高めている。イグニッションスイッチがオフされると、すぐにシステム停止せずに乾燥運転を実施する。乾燥運転では、燃料電池スタック1の目標内部インピーダンスが、通常運転用設定値から、通常運転用設定値よりも高く設定された停止用設定値に切り替えられる。そして、燃料電池スタック1の内部インピーダンスが停止用設定値に到達するまで、燃料電池スタック1へのカソードガス供給流量を大きくする等して燃料電池スタック1の含水量を低下させる。
【0089】
S302では、コントローラ60は、図2の内部インピーダンス算出処理に基づいて、乾燥運転時における燃料電池スタック1の内部インピーダンスを算出する。
【0090】
S303では、コントローラ60は、S302で算出した乾燥運転時の内部インピーダンスが停止用設定値に到達したか否かを判定する。
【0091】
乾燥運転時の内部インピーダンスが停止用設定値に到達していない場合には、コントローラ60は、S304〜S306における乾燥運転終了処理を実行せずに、乾燥運転制御処理を終了する。
【0092】
一方、乾燥運転時の内部インピーダンスが停止用設定値に到達した場合には、コントローラ60は、S304〜S306における乾燥運転終了処理を実行する。
【0093】
S304において、コントローラ60は、冷却水温度センサ44によって検出された冷却水温度と冷却水温度センサ45によって検出された冷却水温度との平均値を、システム停止時における燃料電池温度として算出する。
【0094】
S305において、コントローラ60は、図2の内部インピーダンス算出処理に基づいて、システム停止時における燃料電池スタック1の内部インピーダンスを算出する。
【0095】
S304及びS305で算出されたシステム停止時における燃料電池温度及び内部インピーダンスは、図4のS202において燃料電池スタック1の含水量を算出するために使用される。
【0096】
S306において、コントローラ60は、乾燥運転を終了して、燃料電池システム100を停止させる。
【0097】
上記のように構成される本実施形態の燃料電池システム100によれば、以下の効果を得ることができる。
【0098】
燃料電池システム100では、システム停止前に燃料電池スタック1の含水量が低下するように乾燥運転を実施するので、システム停止後から次回システム始動時における燃料電池温度変化に対する燃料電池スタック1の内部インピーダンス変化量が大きくなり、システム始動時における内部インピーダンスの算出精度を高めることができる。これにより、第1実施形態の場合よりも、精度よく始動時燃料電池温度を算出することが可能となる。
【0099】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態による燃料電池システム100について説明する。本実施形態の燃料電池システム100は、始動時燃料電池温度の算出の仕方をアノード系のアノードガス濃度(水素濃度)に応じて変更する点において、第1又は第2実施形態の燃料電池システムと相違する。以下、その相違点を中心に説明する。
【0100】
図2に示した内部インピーダンス算出処理では、S107で燃料電池スタック1の内部インピーダンスZを算出するとともに、S108で1kHzの交流電流値に対する交流電圧値の位相遅れθを算出している。この位相遅れθはアノード系内の水素濃度と相関があることが、本願出願人らの研究により明らかになった。
【0101】
図10は、交流周波数と位相遅れθとの関係を示す図である。実線は燃料電池システム100のアノード系内が水素で満たされている場合を示し、破線はアノード系内のほとんどが空気で満たされている場合を示す。
【0102】
システム停止直後等、燃料電池システム100のアノード系内が水素で満たされている状態では、S108で算出される1kHzでの位相遅れθ1は、図10の実線に示すようにほぼゼロに近い値となる。
【0103】
一方、システム停止後からある程度の時間が経過すると、燃料電池システム100のアノード系内はカソード側からリークしてきた空気等によって満たされる。アノード系内のほとんどが空気で満たされ、水素濃度が低下した状態では、S108で算出される1kHzでの位相遅れθ2は、図10の破線に示すように位相遅れθ1よりも大きく遅れた値として算出される。
【0104】
このように、燃料電池システム100のアノード系内の水素濃度が低下するほど、交流電流値に対する交流電圧値の位相遅れθは大きくなる。図11に示すように、アノード系内の水素濃度が低く位相遅れθが大きい場合には、アノード系内の水素濃度が高く位相遅れがほとんどない場合と比較して、燃料電池温度及び含水量が一定であるとした時の内部インピーダンスは大きく算出される。
【0105】
図11は、1kHzの交流電流を燃料電池スタック1に重畳した時に算出される燃料電池スタック1の内部インピーダンスを複素平面上に示した図である。横軸は内部インピーダンスの実部であり、縦軸は内部インピーダンスの虚部である。
【0106】
図11に示すように、アノード系内の水素濃度が低い場合の内部インピーダンスは、アノード系内の水素濃度が高い場合の内部インピーダンスと比べて位相遅れが大きく、実部の値がほとんど変わらずに虚部の値が大きくなる。これにより、矢印の長さで表わされる内部インピーダンスの大きさは、高水素濃度の場合よりも低水素濃度の場合の方が大きなる。
【0107】
第3実施形態の燃料電池システム100では、アノード系内の水素濃度に応じて燃料電池スタック1の内部インピーダンスが変化することに着眼し、始動時燃料電池温度の算出の仕方をアノード系の水素濃度に応じて変更することで、始動時燃料電池温度の算出精度を高めている。
【0108】
図12を参照して、第3実施形態による燃料電池システム100が備えるコントローラ60が実行するシステム始動時の車両走行許可判断処理について説明する。図12の車両走行許可判断処理では、図4のS203及びS204の処理を実行する代わりに、S210〜S214の処理を実行する。図12のS201,S202,S205〜S209の処理は図4のものと同じである。
【0109】
S202の処理で前回停止時における燃料電池スタック1の含水量Weを算出した後、S210において、コントローラ60は、アノード系内の水素濃度が低下しているか否かを判定する。水素濃度低下判定は、イグニッションスイッチがオンされた直後であって燃料電池スタック1に水素を供給する前に算出した位相遅れθ(図2のS108)に基づいて行われる。
【0110】
位相遅れθが基準値よりも遅れていない場合には、アノード系内にある程度水素が残っており低水素濃度ではないと判定し、コントローラ60は、S211及びS212の処理を実行する。
【0111】
S211において、コントローラ60は、調圧弁23を所定開度に設定して燃料電池スタック1にアノードガスを供給した後に、システム始動時における燃料電池スタック1の内部インピーダンスZs1を算出する。アノード系内に水素及び空気がある程度存在する場合には、燃料電池スタック1内における水素濃度分布のばらつきに起因して内部インピーダンス算出精度が低下してしまう。そのため、アノード系内を水素で満たすことによって、燃料電池スタック1内における水素濃度分布を略均一にして、内部インピーダンス算出精度の低下を抑制する。
【0112】
S212において、コントローラ60は、図6と同じマップデータである通常水素濃度用マップデータを参照し、前回システム停止時の燃料電池スタック1の含水量We及びシステム始動時の内部インピーダンスZs1に基づいて、システム始動時における始動時燃料電池温度Tsを算出する。
【0113】
S212の処理後、コントローラ60はS205以降の処理を実行する。
【0114】
一方、S210において、位相遅れθが基準値よりも遅れており、アノード系内のほとんどが空気で満たされた低水素濃度であると判定された場合には、コントローラ60は、S213及びS214の処理を実行する。
【0115】
S213において、コントローラ60は、燃料電池スタック1にアノードガスを供給する前に、システム始動時における燃料電池スタック1の内部インピーダンスZs2を算出する。アノード系内のほとんどが空気で満たされている状態では燃料電池スタック1の内部インピーダンスは大きくなるため、S/N比が改善され、精度よく内部インピーダンスを算出することができる。
【0116】
S214において、コントローラ60は、低水素濃度用マップデータを参照し、前回システム停止時の燃料電池スタック1の含水量We及びシステム始動時の内部インピーダンスZs2に基づいて、システム始動時における始動時燃料電池温度Tsを算出する。低水素濃度用マップデータにおける内部インピーダンスは、通常水素濃度用マップデータの同含水量及び同燃料電池温度における内部インピーダンスよりも大きく設定されている。
【0117】
S214の処理後、コントローラ60はS205以降の処理を実行する。
【0118】
上記のように構成される本実施形態の燃料電池システム100によれば、以下の効果を得ることができる。
【0119】
燃料電池システム100では、アノード系内のほとんどが空気で満たされている低水素濃度状態において、燃料電池スタック1に水素(アノードガス)を供給する前に、システム始動時における燃料電池スタック1の内部インピーダンスZs2を算出する。アノード系内のほとんどが空気で満たされている状態では、燃料電池スタック1の内部インピーダンスは大きくなるため、内部インピーダンス算出時のS/N比が改善される。このシステム始動時の内部インピーダンスZs2を用いることで、始動時燃料電池温度Tsを精度よく求めることが可能となる。
【0120】
また、燃料電池システム100では、アノード系内が低水素濃度状態でない場合において、燃料電池スタック1に水素(アノードガス)を供給した後に、システム始動時における燃料電池スタック1の内部インピーダンスZs1を算出する。アノード系内を水素で満たして、燃料電池スタック1内における水素濃度分布を略均一にすることで、システム始動時における内部インピーダンスZs1の算出精度の低下を抑制することができる。
【0121】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【0122】
例えば、第3実施形態による燃料電池システム100では、図12に示した車両走行許可判断処理のS210において、算出した位相遅れθと基準値とを比較することで水素濃度の低下を判定するようにしたが、システム始動後であって燃料電池スタック1に水素を供給する前における燃料電池スタック1の出力電圧に基づいて水素濃度の低下を判定するようにしてもよい。燃料電池スタック1の出力電圧とアノード系内の水素濃度に起因する位相遅れθとの間には図13に示すような相関関係があり、システム始動直後の燃料電池スタック1の出力電圧がVaよりも小さくなっていることを検出することで、位相遅れθが基準値よりも遅れていることを検知できる。したがって、燃料電池スタック1に水素を供給する前に検出した燃料電池スタック1の出力電圧が基準電圧Vaより小さい場合に、アノード系内が低水素濃度状態であると判断することが可能となる。
【符号の説明】
【0123】
100 燃料電池システム
1 燃料電池スタック
2 アノードガス供給装置
3 カソードガス供給装置
6 駆動モータ
7 バッテリ
8 DC/DCコンバータ
10 燃料電池
21 高圧タンク
22 アノードガス供給通路
23 調圧弁
31 カソードガス供給通路
32 フィルタ
33 コンプレッサ
44 冷却水温度センサ(冷却水温度検出部)
45 冷却水温度センサ(冷却水温度検出部)
60 コントローラ
61 電流センサ
62 電圧センサ
S202 含水量算出手段
S203、S211、S213 内部インピーダンス算出手段
S204、S212、S214 始動時温度算出手段
S205〜S208 走行可否判断手段
S205、S206、S209 暖機可否判断手段
S210 濃度判定手段
S301 運転制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノードガス及びカソードガスの供給を受けて発電する燃料電池を備える燃料電池システムであって、
燃料電池の含水量を算出する含水量算出手段と、
燃料電池の内部インピーダンスを算出する内部インピーダンス算出手段と、
前記含水量算出手段によって算出される前回システム停止時における前記燃料電池の含水量と、前記内部インピーダンス算出手段によって算出されるシステム始動時における前記燃料電池の内部インピーダンスとに基づいて、システム始動時の燃料電池温度を算出する始動時温度算出手段と、を備えることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記始動時温度算出手段は、含水量、内部インピーダンス、及び燃料電池温度の関係を規定する特性図を用い、前回システム停止時における含水量及びシステム始動時における内部インピーダンスから、システム始動時の燃料電池温度を算出することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記燃料電池を冷却する冷却水の温度を検出する冷却水温度検出部をさらに備え、
前記含水量算出手段は、システム停止時に検出した冷却水温度と、システム停止時に算出した内部インピーダンスとに基づいて、前記燃料電池の含水量を算出することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
システム停止前に、前記燃料電池の含水量を低下させる乾燥運転を実施する運転制御手段をさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記燃料電池に供給されるアノードガスは水素であって、
システム始動時に前記燃料電池内の水素濃度が所定値よりも低い低水素濃度状態となっているか否かを判定する濃度判定手段をさらに備え、
前記始動時温度算出手段は、前記燃料電池内が低水素濃度状態となっている場合には、前回システム停止時における前記燃料電池の含水量と、前記燃料電池に水素を供給する前に算出されたシステム始動時における前記燃料電池の内部インピーダンスとに基づいて、システム始動時の燃料電池温度を算出することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一つに記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記始動時温度算出手段は、前記燃料電池内が低水素濃度状態となっていない場合には、前回システム停止時における前記燃料電池の含水量と、前記燃料電池に水素を供給した後に算出されたシステム始動時における前記燃料電池の内部インピーダンスとに基づいて、前記燃料電池温度を算出することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一つに記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記内部インピーダンス算出手段は、所定周波数の交流電流を前記燃料電池に重畳した時の前記燃料電池の出力電流及び出力電圧に基づいて、前記燃料電池の内部インピーダンスを算出するとともに出力電流に対する出力電圧の位相遅れを算出し、
前記濃度判定手段は、システム始動時における前記位相遅れに基づいて、前記燃料電池内が低水素濃度状態となっているか否かを判定することを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の燃料電池システム。
【請求項8】
前記濃度判定手段は、システム始動時における前記燃料電池の出力電圧に基づいて、前記燃料電池内が低水素濃度状態となっているか否かを判定することを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の燃料電池システム。
【請求項9】
前記始動時温度算出手段によって算出されたシステム始動時の燃料電池温度に基づいて、車両が走行可能な状態にあるか否かを判断する走行可否判断手段をさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一つに記載の燃料電池システム。
【請求項10】
前記始動時温度算出手段によって算出されたシステム始動時の燃料電池温度に基づいて、前記燃料電池を暖機する必要があるか否かを判断する暖機可否判断手段をさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一つに記載の燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−45514(P2013−45514A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180603(P2011−180603)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】