説明

燃料電池セパレーター用塗料

【課題】優れた耐食性を有するとともに、良好な導電性と密着性を併せ持つ導電性塗膜を形成することができる燃料電池セパレーター用塗料を提供する。
【解決手段】導電材として黒鉛を使用し、燃料電池用の金属製またはカーボン製セパレーターの表面に塗布して導電性塗膜を形成する燃料電池セパレーター用塗料において、塗料の結着材としてスチレン−ブタジエン共重合体、アクリル−スチレン共重合体、アクリル−シリコーン共重合体のエマルションのうちいずれか1つ以上を5重量%以上含有し、媒体として結着材と相溶性のある溶媒を用い、導電材と結着材の配合比率を重量比で20:80〜95:5とし、塗料中に占める固形分を10〜60重量%とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池の金属製またはカーボン製セパレーターの表面に塗布して導電性塗膜を形成する導電塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、水素と酸素の結合反応の際に発生するエネルギーを利用するため、省エネルギーと環境対策の両面から、その導入および普及が期待されている次世代の発電システムである。中でも固体高分子型燃料電池(PEFC:Polymer Electrolyte Fuel Cell)は、出力密度が高く小型化が可能であり、また他のタイプの燃料電池より低温で作動し、起動停止が容易であることから、電気自動車や家庭用の小型コジェネレーションへの利用が期待されており、近年、特に注目を集めている。
【0003】
この燃料電池に用いられるセパレーターの基材材料としては、大きく分けて金属系材料とカーボン系材料とがある。SUS、炭素鋼などの金属系材料は、プレス加工等の方法によりセパレーターを製造し、一方、カーボン系材料は、黒鉛基板にフェノール系、フラン系などの熱硬化性樹脂を含浸硬化して焼成する方法、炭素粉末をフェノール樹脂、フラン樹脂またはタールピッチなどと混練し、板状にプレス成形または成形板に射出成形して焼成し、ガラス状カーボンにする方法などによりセパレーターを製造する。
【0004】
ところが、金属系材料は、金属特有の加工性に優れ、セパレーターの厚みを薄くすることができ、セパレーターの軽量化が図れるなどの利点を有するが、腐食による金属イオンの溶出や金属表面の酸化により電気伝導性が低下する懸念があり、一方、カーボン系材料は軽量なセパレーターが得られる利点があるが、ガス透過性を有するといった問題や、機械的強度が低いといった問題があった。
【0005】
このような問題を解決する方法としては、セパレーター基材の表面に導電性塗膜を形成する方法が考えられ、これによれば、金属系材料においては、腐食の懸念を払拭することができ、また、カーボン系材料においては、ガス透過性および機械的強度の問題を改善することができる。このようなセパレーター基材に塗膜を被覆させる方法としては、酸洗したステンレス鋼基材の表面に黒鉛とカーボンブラックとの混合粉末からなる導電材を3〜20μmの厚さで被覆する方法が特開平11−345618号公報に開示されている。
【0006】
しかしながら、このような導電性塗膜は、例えばプレッシャークッカー試験(PCT)における環境下では、導電性塗膜がセパレーター基材から剥離してしまうといった、導電塗料から得られる塗膜とセパレーター基材との密着性に問題を有していた。
【特許文献1】特開平11−345618号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
よって、本発明は、優れた耐食性を有するとともに、良好な導電性と密着性とを併せ持つ導電性塗膜を形成することができる燃料電池セパレーター用塗料を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の燃料電池セパレーター用塗料は、導電材として黒鉛を使用し、燃料電池用の金属製またはカーボン製セパレーターの表面に塗布して導電性塗膜を形成する燃料電池セパレーター用塗料において、該塗料の結着材としてスチレン−ブタジエン共重合体、アクリル−スチレン共重合体、アクリル−シリコーン共重合体のエマルションのうちいずれか1つ以上を5重量%以上含有し、媒体として上記結着材と相溶性のある溶媒を用い、上記導電材と結着材の配合比率が重量比で20:80〜95:5であり、塗料中に占める固形分が10〜60重量%であることを特徴としている。
【0009】
この塗料においては、塗料中に占める固形分を10〜60重量%にすることにより、好適な厚さを有する均一な導電性塗膜が形成されてセパレーター基材の耐食性が改善され、さらに、このようにして形成された導電性塗膜は、好適な導電材の配合比率により良好な導電性を有し、また、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリル−スチレン共重合体、アクリル−シリコーン共重合体のエマルションのうちいずれか1つ以上を5重量%以上含有することによりセパレーター基材に対する密着性が優れる。
【0010】
さらに、本発明の燃料電池セパレーター用塗料においては、導電材が黒鉛にさらにカーボンブラックを配合した炭素系混合物であり、黒鉛とカーボンブラックの配合比率が重量比で30:70〜90:10であることが好ましい形態である。
【0011】
加えて、本発明の燃料電池セパレーター用塗料においては、導電材の黒鉛の平均粒子径(D50)が30μm以下であることが好ましい形態である。
【0012】
また、本発明の燃料電池セパレーター用塗料においては、25℃における粘度が50〜100,000mPa・sの範囲内であることが好ましい形態である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の燃料電池セパレーター用塗料は、結着材としてスチレン−ブタジエン共重合体、アクリル−スチレン共重合体、アクリル−シリコーン共重合体のエマルションのいずれか1つ以上を用いたことを特徴としているが、この塗料の実施形態について以下に詳細に述べる。
【0014】
結着材であるスチレン−ブタジエン共重合体としては、スチレン−ブタジエンのランダム共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、カルボキシル基で変成した上記共重合体などが挙げられる。スチレン−ブタジエン共重合体は金属との密着性、塗膜の柔軟性の点で優れている。一方、アクリル−スチレン共重合体、アクリル−シリコーン共重合体は金属への密着性、防食性の点で優れている。また、これらの結着材はエマルションであり、溶媒としては有機溶剤を用いる必要がなく、水とすることができるため環境面でも負荷が少なく、取り扱いが容易でコスト面でも利点がある。
【0015】
本発明の燃料電池セパレーター用塗料では、導電材と結着材の配合比率は重量比で20:80〜95:5、好ましくは25:75〜90:10、さらに好ましくは30:70〜85:15が好適である。本発明の導電塗料からなる導電性塗膜としては、前述のとおり電気抵抗値ができる限り低く、かつ耐腐食性および基材に対する密着性が高いことが望まれる。電気抵抗値を低くするためには導電材の配合量をできるだけ多くすることが望ましく、耐腐食性および密着性を向上させるためには、結着材の配合量を多くすることが望ましい。これらの相反する要求を満たすために、導電材と結着材の配合としては前記の範囲が適切である。
【0016】
次に、本発明の燃料電池セパレーター用塗料中の有機溶剤配合量は、多くなれば塗料の粘度は低くなり、得られる塗膜の厚みは薄くなる。逆に、有機溶剤配合量が少ないと塗料粘度は高くなり、得られる塗膜の厚みも厚くなる。緻密でピンホールなどの欠陥が無い均一な塗膜を形成するためには、粘度がある程度低い方が有利であり、例えば、塗膜厚さ20μm程度の薄い塗膜では基材に対する密着性は向上する。一方、このような薄い塗膜では、塗膜を厚くすることができなくなり、耐腐食性が低下してしまう。また、粘度が低すぎる場合、金属セパレーターへの塗布時に塗料のハジケが生じたり、膜厚が薄く、耐食性に問題が生じる。逆に、粘度が高い場合は、泡の巻き込みやピンホールによる塗膜欠陥、膜厚の不均一などの問題を生じ、耐腐食性および基材に対する密着性が低下する。
【0017】
したがって、本発明においては、固形分量が10〜60重量%であることが好ましく、また、25℃における粘度が50〜100,000mPa・sの範囲であることが好ましい。本発明のエマルション系結着材を用いた場合は、塗料中の固形分を変えることで低粘度から高粘度まで塗料粘度を任意に調整することが容易であり、25℃における粘度が50〜100,000mPa・sの範囲内で均一な塗布が可能となる。これらの粘度は、ISO 3219(JIS Z8803)に規定される方法により測定された値である。また、塗膜作製のための塗料の塗布方法としては、ディッピング、スプレー、ブレードコーター、スクリーン印刷など種々の方法が挙げられる。
【0018】
本発明の燃料電池セパレーター用塗料においては、導電塗料の結着材として、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリル−スチレン共重合体、アクリル−シリコーン共重合体のエマルションのいずれか1つ以上を5重量%以上含有することが好ましい。この結果、本発明の塗料から形成された塗膜は、優れた耐食性と基材に対する密着性とを併せ持つことができる。なお、本発明の燃料電池セパレーター用塗料においては、塗料の特性改善のために、他の樹脂材料を結着材として適宜配合してもよい。
【0019】
また、本発明の塗料においては、導電材として黒鉛にさらにカーボンブラックを配合することが好ましい。導電材を黒鉛のみとした場合では、粒子配列の配向性により基材との密着性向上が期待できるが、黒鉛は抵抗値異方性を有するため、導電ネットワーク間に電気的接点が不足するので、電気抵抗値の低減には必然的に限界がある。そこで、炭素系混合物としてカーボンブラックを併用することにより、黒鉛粒子の間隙をカーボンブラックが埋めるように充填され、塗膜全体としての電気抵抗値の低減を可能としている。なお、本発明に係る導電塗料の炭素系混合物における黒鉛とカーボンブラックの配合比率は、重量比で30:70〜90:10であり、好ましくは35:65〜85:15、さらに好ましくは40:60〜80:20が好適である。
【0020】
さらに、本発明の燃料電池セパレーター用塗料において、黒鉛は導電材の役割の他に、耐食性を向上させる役割も有している。リン状またはリン片状に代表されるフレーク状の黒鉛粒子は、塗装面に平行に配向し水等を遮蔽し、耐食性を向上させる。なお、黒鉛の平均粒子径(D50)が大きいほどこの遮蔽効果は大きくなる傾向がある。しかしながら、黒鉛のD50が大きくなるほど配向しやすくなり、また黒鉛は抵抗値異方性を有するため、配向するほど電気抵抗値は高くなってしまう。したがって黒鉛のD50を大きくすることには必然的に限界があり、本発明者らの検討によれば、黒鉛の平均粒子径(D50)は30μm以下であることが好ましいことが分かった。
【実施例】
【0021】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0022】
1.導電材と結着材の配合比率の検討
(塗料および試料の作製)
結着材であるスチレン−ブタジエン共重合体として、スチレン−ブタジエンのランダム共重合体のエマルション(固形分40重量%)を用い、表1に示す配合で、平均粒子径4μmの天然黒鉛粉末(黒鉛)とファーネスブラック(カーボンブラック)を8:2で投入し、分散処理を行い、試料番号11〜15の燃料電池セパレーター用の導電塗料を作製した。
【0023】
【表1】

【0024】
作製した導電塗料の粘度は、レオメーター粘度計(HAKKE社製のレオメーターRV20)を用い、コーン型回転子の回転数が100rpmおよび1,500rpmにおける粘度を測定した。回転子の回転数を2種とした理由は、この種の導電塗料の塗布方法が種々考えられるためであり、例えば、ディッピングにより塗布する場合では塗料にはそれほどの外力がかからないので低回転で評価した結果が対応することとなり、スクリーン印刷法、ブレードコーターなどで塗布する場合には塗料にある程度の外力がかかることとなるので高回転数で評価した結果が対応することとなるからである。
【0025】
次に、80mm×150mm×1mmのガラス板、10mm×15mm×4mmのステンレス鋼(SUS304)板、30mm×80mm×1mmのステンレス鋼(SUS304)板および炭素鋼(SS400)板に、それぞれの導電塗料をドクターブレードにて塗布し、150℃で15分間加熱乾燥して、評価用試料とした。また、塗布性評価としてステンレス鋼(SUS304)板にドクターブレードにて塗布した後の塗膜状態を観察し、全面均一に塗布できた場合を◎、ほぼ均一に塗布できた場合を○、ピンホールやハジケ等が発生した場合を×とした。
【0026】
(塗膜の評価)
上記の評価用試料の塗膜について、体積抵抗、面抵抗および密着性を次に示す方法により評価した。体積抵抗は、ガラス板上に塗料を塗布した試験片の塗膜に測定端子を押し付け、4探針4端子法(ダイアインスツルメンツ社製のロレスターAP)により塗膜面方向の体積抵抗を測定した。面抵抗は、炭素鋼板上に塗料を塗布した試験片を銀板により挟み込み、4端子法(HIOKI社製の3560mΩHiTESTER)を用いて、炭素鋼込みの塗膜面に垂直な方向の面抵抗を測定した。
【0027】
また、密着性は、JIS K5400に準拠した方法として、ステンレス鋼板、炭素鋼板上に塗料を塗布した試験片の塗膜に1mm幅で各々直角に交わる11本のカットをカッターで入れ、18mm幅のメンディングテープを指圧で塗膜に圧着させた後、テープを180°方向に引き剥がし、引き剥がした後のテープに付着した塗膜を観察し密着性を評価した。さらに、各試験片について、プレッシャークッカー試験(121℃、2気圧の環境下で24時間:PCT)を行った後、その塗膜についても同様の密着性の評価を行い、耐食性の評価とした。これらの評価結果は表1に示した。
【0028】
導電材と結着材の配合比率が20:80〜95:5の範囲内である試料番号11〜13は、電気抵抗値および密着性はいずれも使用可能な範囲にあることが分かった。これに対し、導電材と結着材の配合比率が10:90である試料番号14は、密着性は高く良好であるが、面抵抗が720mΩcmと高く、電気伝導性が劣っていた。また、導電材と結着材の配合比率が98:2である試料番号15は、面抵抗が0.5mΩcmと良好であるが、PCT後に塗膜の剥離が見られた。
【0029】
つまり、本発明の燃料電池セパレーター用塗料においては、結着材の配合量が多いものほど密着性が向上する傾向にあるが、結着材は不導体のため電気抵抗値が上昇してしまう。一方、結着材が少なすぎると、良好な密着性が得られない。したがって、本発明における導電材と結着材の配合比率は、重量比で20:80〜95:5の範囲が好適であることが分かった。
【0030】
2.エマルションの検討
結着材であるスチレン−ブタジエン共重合体として、スチレン−ブタジエンのランダム共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体のエマルションを用い、アクリル系エマルションとしてアクリル−スチレン共重合体、およびアクリル酸エステルとアルコキシシランとの共重合体からなるアクリル−シリコーン共重合体を用い、さらに比較例として、ポリ酢酸ビニルエマルションを表2に示す配合とし、上記の導電材と結着材の配合比率の検討における塗料および試料の作製に記載の方法と同様に試料番号21〜25の燃料電池セパレーター用の導電塗料を作製し、同様の評価を行って樹脂の種類の影響について検討した。塗料組成および得られた塗膜の評価結果は表2に示した。
【0031】
【表2】

【0032】
スチレン−ブタジエン共重合体として、スチレン−ブタジエンのランダム共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体のエマルションを用いた場合(試料番号21、22)では、良好な電気抵抗値と密着性を示した。また、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体を用いたものが、塗布時のハジケが無く、最も良好な塗布性を示した。また、アクリル−スチレン共重合体、アクリル−シリコーン共重合(試料番号23、24)も電気抵抗、密着性ともに良好であった。しかしポリ酢酸エマルジョン(試料番号25)では、導電材の分散が悪く、電気抵抗が高く、またPCT後に塗膜の剥離があった。
【0033】
したがって、本発明の燃料電池セパレーター用塗料では、エマルション系結着材としてスチレン−ブタジエン共重合体、アクリル−スチレン共重合体、アクリル−シリコーン共重合体のいずれかを5重量%以上含有されることにより、優れた特性が得られることが分かった。
【0034】
3.固形分および粘度の検討
次に、表3に示す配合は、固形分量を変更した以外は、上記の導電材と結着材の配合比率の検討における塗料および試料の作製に記載の方法と同様として、試料番号31〜34の燃料電池セパレーター用の導電塗料を作製し、同様の評価を行って塗料の固形分および粘度が及ぼす影響について検討を行った。塗料組成および得られた塗膜の評価結果は表3に示した。
【0035】
【表3】

【0036】
塗料中の固形分が10重量%〜60重量%(試料番号31、32)で良好な塗布性を示した。しかしながら、固形分量が少ない場合(試料番号33)では、塗料粘度も低く、塗料のハジケが生じ、塗料を厚く塗布することができなかった。一方、固形分量が多い場合(試料番号34)では、塗料粘度も高く、印刷性が悪くなり、得られた塗膜にはピンホールが発生した。さらに、PCT後に塗膜剥離が発生し、実用に供し得ないことが分かった。
【0037】
したがって、本発明の燃料電池セパレーター用塗料においては、塗料の粘度および塗布状態を最適にするために、塗料中の固形分が10〜60重量%の範囲内であることが好ましいことが分かった。
【0038】
4.カーボンブラックの添加量の検討
次に、導電材の黒鉛に添加するカーボンブラックの添加量を、表4に示す配合に変更した以外は、上記の導電材と結着材の配合比率の検討における塗料および試料の作製に記載の方法と同様に、試料番号41〜45の燃料電池セパレーター用の導電塗料を作製し、同様の評価を行ってカーボンブラックの添加量の及ぼす影響について検討を行った。塗料組成および得られた塗膜の評価結果は表4に示した。
【0039】
【表4】

【0040】
黒鉛のみの試料番号44に比べ、カーボンブラックを添加した試料番号41〜43では、その添加量の増加に伴い抵抗値が小さくなり、密着性も良好であった。しかしながら、黒鉛とカーボンブラックの配合比率が重量比で25:75である試料番号45では、抵抗値が高くなってしまった。
【0041】
したがって、本発明の燃料電池セパレーター用塗料においては、導電材が黒鉛にさらにカーボンブラックを配合した炭素系混合物であり、黒鉛とカーボンブラックの配合比率が重量比で30:70〜90:10であることが好ましいことが分かった。
【0042】
以上説明したように、本発明は、導電材として黒鉛を使用し、燃料電池用の金属製またはカーボン製セパレーターの表面に塗布して導電性塗膜を形成する燃料電池セパレーター用塗料において、塗料の結着材としてスチレン−ブタジエン共重合体、アクリル−スチレン共重合体、アクリル−シリコン共重合体のエマルションのいずれか1つ以上を用い、結着材量として5重量%以上含有し、導電材と結着材の配合比率を重量比で20:80〜95:5とし、塗料中の固形分を10〜60重量%とすることにより、その塗膜は、優れた耐食性を有するとともに、良好な導電性と密着性とを併せ持つことができまた、環境上、コスト的にも優れた塗料を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
耐食性、導電性および密着性を兼ね備えた導電性塗量を、環境に対して軽負荷で、かつ低コストで提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電材として黒鉛を使用し、燃料電池用の金属製またはカーボン製セパレーターの表面に塗布して導電性塗膜を形成する燃料電池セパレーター用塗料において、該塗料の結着材としてスチレン−ブタジエン共重合体、アクリル−スチレン共重合体、アクリル−シリコーン共重合体のエマルションのうちいずれか1つ以上を5重量%以上含有し、媒体として上記結着材と相溶性のある溶媒を用い、上記導電材と結着材の配合比率が重量比で20:80〜95:5であり、塗料中に占める固形分が10〜60重量%であることを特徴とする燃料電池セパレーター用塗料。
【請求項2】
前記エマルションのうちいずれか1つ以上の含有量は、導電材およびエマルションの合計量に対して、エマルション中の固形分換算で2重量%以上であることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池セパレーター用塗料。
【請求項3】
前記導電材が黒鉛にさらにカーボンブラックを配合した炭素系混合物であり、上記黒鉛とカーボンブラックの配合比率が重量比で30:70〜90:10であることを特徴とする請求項1または2に記載の燃料電池セパレーター用導電塗料。
【請求項4】
前記黒鉛の平均粒子径が30μm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の燃料電池セパレーター用導電塗料。
【請求項5】
25℃における粘度が50〜100,000mPa・sの範囲内であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の燃料電池セパレーター用導電塗料。

【公開番号】特開2008−78143(P2008−78143A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−261623(P2007−261623)
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【分割の表示】特願2003−546425(P2003−546425)の分割
【原出願日】平成14年10月9日(2002.10.9)
【出願人】(000233572)日立粉末冶金株式会社 (272)
【Fターム(参考)】