説明

燃料電池用ガス遮断弁

【課題】開弁時の必要推力を最小限に抑える燃料電池用ガス遮断弁を低コストで提供すること。
【解決手段】弁座53に当接し、反応ガスを遮断する弁体20と、ガス流通状態を切り替えるアクチュエータ60とを備えた燃料電池用ガス遮断弁10であって、弁体20は弁座53に当接した弁体20を介して形成される一次側流路33と二次側流路34との間を反応ガスが流通する主流路31を遮断する主弁21と、主流路31と比べ流路径が小さく、一次側流路33と二次側流路34との間を反応ガスが流通する副流路を遮断し、主弁21に対して口径が小さい副弁41と、主流路31および副流路のガス流通状態をアクチュエータ60により切り替える弁棒40とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスの流通状態を切り替える燃料電池用ガス遮断弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の二次側流路が負圧になる燃料電池用ガス遮断弁において、一次側流路と二次側流路とを連通する弁孔が形成され、弁孔が二次側流路と連通する開口部に設けられた第1弁座に第1弁体を当接または離間することにより反応ガスを制御する第1弁体と、第1弁体を二次側流路から一次側流路に向かって付勢し、第1弁体を駆動させる第1駆動部と、を設け、一次側流路と二次側流路との差圧が大きい場合でも作動することができる技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、スタックの反応ガスの導入・導出部に設けられるバルブの内部にソレノイド部の励磁作用下に軸線方向に沿って変位自在な可動部材を設けてあり、変位作用下にパイロット弁座よりパイロット弁が離間することで、連通室内の流体がパイロット通路を通じて導出ポートへと流通する構造、かつ、ダイヤフラムによって分割された第1連通室と第2連通室との間の圧力差によって弁体の主弁がバルブボディの弁座より離間して開弁状態とする技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−263756号公報
【特許文献2】特開2006−153222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術では、発電停止後など、スタックの導入・導出流路をバルブなどで遮断した場合には、スタック内部に封じ込められた反応ガスの消費や温度低下によりスタック内が負圧環境となる。この負圧環境で反応ガスをスタックに供給するには、負圧による吸引力に対抗する大きな開弁力が必要となる。
【0006】
特許文献1では、弁駆動部を複数設けることにより、大きな差圧条件下でも作動することを可能としているが、構造が大きくなり、コスト高になる問題がある。
【0007】
特許文献2では、ソレノイド、モータ、ダイヤフラムなどのアクチュエータの推力を負圧による吸引力よりも大きくする必要があり、特許文献1と同様に構造が大きくなり、コスト高になる問題がある。
【0008】
本発明は、このような従来の構成が有していた問題を解決するものであり、開弁時の必要推力を最小限に抑える低コストな燃料電池用ガス遮断弁を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するために講じた第1の解決手段は弁座に当接し、反応ガスを遮断する弁体と、ガス流通状態を切り替えるアクチュエータとを備えた燃料電池用ガス遮断弁であって、前記弁体は、一次側流路と二次側流路との間を前記反応ガスが流通する主流路を遮断する主弁と、前記主流路と比べ流路径が小さく、前記一次側流路と前記二次側流路との間を前記反応ガスが流通する副流路を遮断し、前記主弁に対して口径が小さい副弁と、前記主流路および前記副流路のガス流通状態を前記アクチュエータにより切り替える弁棒とを備えることを特徴とする燃料電池用ガス遮断弁である。
【0010】
また、第2の解決手段は、前記主弁は前記弁座に当接し、前記主流路をシールする主シール部と、前記主弁と前記副弁とが当接した際に前記副流路をシールする副シール部とを備え、前記主シール部と前記副シール部はゴムまたは樹脂の弾性体のガスケットにより一体で成形されていることである。
【0011】
また、第3の解決手段は、前記主弁は前記副シール部の内縁に平坦状の定寸接触部を備えることである。
【0012】
また、第4の解決手段は、前記副流路は前記主弁の内壁面と前記弁棒の間に形成されることである。
【0013】
また、第5の解決手段は、前記弁棒は前記副弁と、前記主弁を前記弁座から離間させる引き離しツバ部とを備え、前記副弁と前記引き離しツバ部との間隔において、前記弁棒は、前記主弁に対して相対移動可能に設けられることである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、弁体は主流路を遮断する主弁と、副流路を遮断し、主弁に対して口径が小さい副弁と、主流路と副流路のガス流通状態をアクチュエータにより切り替える弁棒とを備える。このことから、弁棒は小さな推力で口径の小さい副弁を開弁状態にして、副流路内に反応ガスを流通させる。副流路内に反応ガスが流通した後、主弁によって主流路が遮断されている間に発生した一次側流路と二次側流路との差圧は低減する。この作用により、主弁が受ける吸引力が低減するので、弁体を容易に開弁状態にすることができる。
【0015】
また、開弁時にアクチュエータが必要とする推力は副弁を開弁状態にする推力分だけで充分であるため、従来技術にある主弁のみの構造と比べ、推力を最小限に抑え、弁体を開弁状態にすることができ、アクチュエータの小型化が図れる。また、例えば、スタックマニホールドの開口面積を大きくする必要がある場合でも、弁体受圧面積の増加の影響が少ないため、スタックマニホールドの開口面積にかかわらず小型のアクチュエータを使用できる。
【0016】
また、主弁は弁座に当接し、シールする主シール部と、主弁と副弁とが当接した際に、シールする副シール部とを備え、主シール部と副シール部はゴムまたは樹脂の弾性体のガスケットにより一体で成形される。このことから、主シール部と副シール部がそれぞれ弁座と副弁に当接する際、ゴムまたは樹脂の弾性変形により、高いシール性が得られる。また、ガスケットは主シール部と副シール部を一体に成形されているので、製造工程において低コスト化が図れる。
【0017】
また、主弁は主弁と副弁が当接する位置に副シールを備え、副シール部の内縁に平坦状の定寸接触部を備えるため、副シール部が副弁により当接される際、副シール部の潰れしろを管理することができるので副シール部の耐久性が向上できる。また、平坦状の定寸接触部を設けることで、副弁から主弁に力を直接伝達させることができ、主シール部への荷重の管理が容易となる。
【0018】
また、副流路は主弁の内壁面と弁棒の間に形成されるため、弁体に複雑な構造を要することなく、容易に副流路を設けることができる。また、副流路は主流路に対して流路径が小さいため、開弁時に発生する開弁音を低減できる。
【0019】
また、弁棒は副弁と、主弁を弁座から離間させる引き離しツバ部とを備え、副弁と引き離しツバ部との間隔において、弁棒は、主弁に対して相対移動可能であるため、副弁を先に開弁状態にし、副流路に反応ガスを流通後、主弁を開弁状態にすることができる。また、副弁と引き離しツバ部との間隔を調整することで、副弁の開弁時間を調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1実施例における燃料電池用ガス遮断弁の主弁開弁時の正面断面図である。
【図2】第1実施例における燃料電池用ガス遮断弁の副弁開弁時の正面断面図である。
【図3】第1実施例における燃料電池用ガス遮断弁の主弁および副弁の閉弁時の正面断面図である。
【図4】第1実施例における副流路の設け方を示した主弁のC−C断面図である。
【図5】第1実施例における弁棒の引き離しツバ部の形状を示した弁体の正面断面図である。
【図6】第2実施例における燃料電池用ガス遮断弁の副弁開弁時の正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の第1実施例を図面に基づき説明する。
【0022】
図1は第1実施例における燃料電池用ガス遮断弁10の主弁21開弁時の正面断面図である。燃料電池用ガス遮断弁10は第一ボディー50aと第二ボディー50bと仕切壁50cとが連結し構成されたボディー50と、ボディー50内の一次側流路33と二次側流路34との間を流通する反応ガスを第一ボディー50aの内壁に形成された弁座53と主弁21が当接することで遮断する弁体20とを備える。
【0023】
弁体20は一次側流路33と二次側流路34との間を反応ガスが流通する主流路31を遮断する主弁21と、主流路31と比べ流路径が小さく、一次側流路33と二次側流路34との間を反応ガスが流通する副流路32(図2)を遮断する副弁41と、アクチュエータ60により上下方向(A−B方向)に稼動され、主流路31および副流路32の反応ガス流通状態を切り替える弁棒40とを備える。
【0024】
主弁21は弁座53に当接し、主流路31内を流通する反応ガスを遮断する主シール部22と、主弁21と副弁41が当接した際、副流路32内を流通する反応ガスを遮断する副シール部23とを備える。主シール部22および副シール部23は、例えばゴムまたは樹脂等の弾性体のガスケット24により一体成形される。ガスケット24の材質としてはシール性が得られ、耐久性のあるゴムまたは熱可塑性樹脂が使用されれば良く、例えばEPDMやFKMを使用可能である。また、主弁21は副シール部23が副弁41により当接される際、副シール部23の潰れしろを管理するために、副シール部23内縁に平坦状の定寸接触部25を有する。
【0025】
また、弁棒40は仕切壁50cの厚み方向に貫通する弁棒挿通孔51に挿通される。弁棒40の一端部には、図1で示すように弁棒40をA方向に移動させたときに主弁21の一側面(第2実施例ではB方向側の面)に当接し、主弁21を弁座53から離間させる引き離しツバ部42と、弁棒40をB方向に移動させたときに主弁21の他側面(第2実施例ではA方向側の面)に当接し、主弁21を弁座53に押し当てる副弁41とが備えられる。弁棒40の他端側にはバネ取り付け部63と、第一ボディー50a、第二ボディー50bおよび仕切壁50cにより囲まれた空間を分割して閉弁用受圧室54と開弁用受圧室55とを形成させるゴムまたは樹脂製のダイヤフラム62とが取り付けられる。バネ取り付け部63とダイヤフラム取り付け部43の間には、バネ取り付け部63からダイヤフラム取り付け部43を引き離す方向(ダイヤフラム取り付け部43を押す方向)に付勢する付勢バネ61が備えられる。ダイヤフラム62の外端部62pはボディー50に保持されている。すなわちダイヤフラム62の外端部62pは、ボディー50の第1ボディー50aと第2ボディー50bとに挟持されて保持されている。ダイヤフラム62の内端部62iはダイヤフラム取付部43により弁棒40に保持されている。閉弁用受圧室54および開弁用受圧室55には気体圧を付与するポート54a,55aがそれぞれ接続される。
【0026】
アクチュエータ60は弁棒40を上下方向に並進移動させるための駆動装置であり、ダイヤフラム62により隔離された二室(第1実施例では閉弁用受圧室54および開弁用受圧室55)の圧力差により駆動する方式が使用される。第一実施例ではアクチュエータ60としてダイヤフラム62を備えて弁棒40が上下方向に移動するように作動させる構成としたが、アクチュエータ60としてダイヤフラム62の代りにモータで弁棒40が上下方向に移動するように作動させることも可能である。また、弁棒挿通孔51の内壁面と弁棒40の外周面との間には、一次側流路33から流通する反応ガスおよび開弁用受圧室55へ供給させる気体または液体の流通を防止するシール部材52が介在している。
【0027】
図2は第1実施例における燃料電池用ガス遮断弁10の副弁41を開弁した状態の正面断面図である。この状態で反応ガスが副流路32のみを流通するように、副弁41と引き離しツバ部42との間隔は、主弁21の厚みより大きく形成されている。また、弁棒40は、副弁41を容易に開弁させるべく主弁21より小さな受圧面積となるよう構成されている。
【0028】
副弁41のみを開弁することにより、一次側流路33と二次側流路34との差圧で生じていた二次側流路34側の吸引力は解除される。また、副流路32のみを反応ガスが流通する時間は副弁41と引き離しツバ部42の間隔およびアクチュエータ60の駆動速度(または開弁用受圧室55へ作用させる圧力の大きさ)に依存する。
【0029】
ここで、本実施例では第一ボディー50a内で発生する一次側流路33と二次側流路34との差圧を容易に低減すべく、副流路32は弁棒40の移動と連動して副流路32に反応ガスを流通させるように主弁21の内壁面と弁棒40との間に形成されているが、主弁21の一部に孔を形成し、孔を遮断する弁を設けた構造でも同様の効果を発揮できる。
【0030】
図3は、第1実施例における燃料電池用ガス遮断弁10の主弁21および副弁41を閉弁した状態の正面断面図である。ゴムまたは樹脂製の弾性体で成形された主シール部22および副シール部23は、アクチュエータ60の作動により弁座53、副弁41へそれぞれに密着変形してシールする。副シール部23は副弁41閉弁時、定寸接触部25により潰れしろが確保される。定寸接触部25は主弁21の中心に対して略同円状に形成され、副弁41によりB方向へ押し当てられる際、主シール部22全体に均一に荷重を付与する。
【0031】
尚、弁棒40はアクチュエータ60の非作動時においても、付勢バネ61により二次側流路34方向(B方向)へ付勢されており、図3で示すように主弁21および副弁41が閉弁状態となるように構成されている。第1実施例の付勢バネ61は弁棒40のダイヤフラム取り付け部43を押す方向に付勢する押しばねであるが、仕切壁50c側に付設して、弁棒40のダイヤフラム取り付け部43を引く方向に付勢する引きばねとしてもよい。
【0032】
図4は、第1実施例における副流路32の形態を示した主弁21のC−C断面図である。(a)は、第1実施例の形態であって主弁21の内壁面に副流路32を設けた場合である。主弁21の内壁面の一部に設けられた凹部が副流路32として形成されている。凹部の大きさは副流路32内に反応ガスが流通し、副弁41が受ける圧力を小さくするため、主弁21より小さく形成されているが、副弁41の径を超えなければ良い。凹部の形状は断面半円状をなすよう形成されているが、角状でも同様の効果が得られる。(b)および(c)は(a)の副流路32の変形例である。(b)弁棒40に副流路32を設けた場合では、弁棒40の外壁面の一部に設けられた凹部が副流路32として形成されている。(c)弁棒40と主弁21の間を広く設けて副流路32を形成した場合では、弁棒40と主弁21の隙間が副流路32として形成されている。ここで、(a)および(b)の副流路32の設け方は、1つ設けるか複数設けるかに限定されない。また、(c)では副流路32の孔の大きさが副弁41の径を超えなければ良い。
【0033】
図5は第1実施例における弁棒40の引き離しツバ部42の形状を示した弁体20の正面断面図である。(a)は、第1実施例の引き出しツバ部42である。(b)および(c)は(a)の変形例で、引き出しツバ部42を、(b)副流路32側を切断、(c)台形に加工された構成にしてもよい。開弁時において、第一ボディー50a内で発生する一次側流路33と二次側流路34との差圧が低減されないまま引き出しツバ部42により副流路32を塞いでしまうと、差圧低減の作用効率が低下する虞があり、(b)および(c)のような形状の引き出しツバ部42であれば副流路32を塞ぐ問題が解決できる。
【0034】
以下、第1実施例の動作について説明する。
【0035】
まず、上記の構成において、燃料電池ガス遮断弁10が図3に示される閉弁状態から、図2に示される副弁41を開弁にした中間状態を経て、図1に示される開弁状態へと遷移する場合について説明する。閉弁状態(図3)において、第一ボディー50a内の一次側流路33と二次側流路34との差圧により二次側流路34側が負圧環境となるため、弁体20がB方向へ吸引されている。
【0036】
弁体20の閉弁状態(図3)からアクチュエータ60の作動により弁棒40を、A方向に移動させて副弁41を開弁状態とする(図2)。このとき、ポート55aから開弁用受圧室55へ気体を流入させ、開弁用受圧室55内の圧力を閉弁用受圧室54より高くする。この圧力差を緩和するため、ダイヤフラム62はA方向へ上昇する。また、ダイヤフラム62の作動と並行し、ダイヤフラム取り付け部43および弁棒40がA方向へ移動し、副弁41は主弁21から離間する。
【0037】
副弁41が開弁状態である間、反応ガスが副流路32に流通するため、第一ボディー50a内の一次側流路33と二次側流路34との差圧が低減する。即ち、主弁21全体で受ける圧力が低減する。尚、副流路32に反応ガスが流通する時間は、弁棒40の副弁41と引き離しツバ部42との間隔およびアクチュエータ60の駆動速度に依存する。
【0038】
さらにアクチュエータ60の作動により弁棒40をA方向に移動させると、副弁41の開弁状態(図2)から主弁21の開弁状態(図1)になる。このとき、引き離しツバ部42が主弁21の一側面に当接し、主弁21は弁座53から離間し開弁状態となる。アクチュエータ60は主弁21が開弁状態となるまで、上記ダイヤフラム62の動作を継続させる。
【0039】
主弁21が開弁状態である間、反応ガスは主流路31の方に流通し、二次側流路34側に取り付けられるスタックマニホールド(図示略)に供給される。
【0040】
次に、燃料電池ガス遮断弁10が図1に示される開弁状態から、図2に示される副弁41を開弁にした中間状態を経て、図3に示される閉弁状態へと遷移する場合について説明する。アクチュエータ60の作動により、弁棒40がB方向へ移動する。このとき、ポート54aから閉弁用受圧室54へ気体を流入させ、閉弁用受圧室54内の圧力開弁用受圧室55より高くし、ダイヤフラム62をB方向へ下降させる。また、ダイヤフラム62の作動と並行し、弁棒40はB方向への移動し、副弁41が副シール23に当接して副シール23を変形させながら密着状態となり、主弁21の定寸接触部25に当接する。
【0041】
さらにアクチュエータ60の作動により弁棒40をB方向に移動させると、副弁41は、主弁21をB方向へ押し、主弁21の主シール部22が弁座53に当接して変形しながら密着される。即ち、副弁41および主弁21がそれぞれ副シール部23、主シール部22にシールされることにより、燃料電池ガス遮断弁10の弁体20が閉弁状態(図3)となる。
【0042】
以下、第1実施例の効果を説明する。
【0043】
上記の動作の開弁時において、弁棒40は主弁21より受圧面積の小さな副弁41を弱い推力で開弁状態にして、副流路32内に反応ガスを流通させることができる。副流路32内に反応ガスが流通した後、第一ボディー50a内では、主弁21によって主流路31が遮断されることにより発生した一次側流路33と二次側流路34との差圧は低下する。この作用により、弁体20は主弁21で受ける負圧が低減するので、容易に開弁状態にできる。また、アクチュエータ60が必要とする推力は、副弁41を開弁状態にする推力分でよいため、従来技術の主弁21のみの構造より小さくしても、弁体20を開弁状態にすることができ、アクチュエータ60の小型化が図れる。また、スタックマニホールド(図示略)の開口面積が必要な場合でも、小型なアクチュエータ60のまま開口面積の確保が可能となる。
【0044】
また、副弁41と引き離しツバ部42との間隔を調整することにより、副弁41の開弁時間を調整することができる。また、副流路32は弁体20に複雑な構造を要することなく、容易に設けることができ、また、主流路31に対して小径であるため、開弁時に発生する開弁音を低減することができる。
【0045】
一方、閉弁時において、主シール部22と副シール部23がそれぞれ弁座53と副弁41に当接する際、ゴムまたは樹脂の弾性変形により、高いシール性が得られる。また、ガスケット24は主シール部22と副シール部23を一体に成形されたものであるので、製造工程において低コスト化が図れる。また、主弁21は主弁21と副弁41が当接する位置に副シール部23を有し、副シール部23の内縁に平坦状の定寸接触部25を備えるため、副シール部23が副弁41によりシールされる際、副シール部23の弾性変形による潰れしろを管理することができ耐久性が向上する。また、定寸接触部25を設けることで、副弁41から主弁21に押圧力を直接伝達することができ、主シール部22への荷重の管理が容易となる。
【0046】
次に、第2実施例を図面に基づき説明する。
【0047】
図6は、第2実施例における燃料電池用ガス遮断弁の正面断面図である。第1実施例の構成と同様の構成については同一の符号を用い、詳細な説明を省略する。第1実施例と第2実施例の相違点は、弁棒40のダイヤフラム取り付け部43に対する付勢バネ61の付設位置、付勢バネ61の付勢方向、閉弁用受圧室54と開弁用受圧室55の位置関係、副弁41の開弁方向(A方向)および閉弁方向(B方向)であり、他の構成は同様である。以下、第2実施例の動作を一部省略して説明する。
【0048】
弁体20を閉弁する際、アクチュエータ60により弁棒40を図6の上方(A方向)に移動することにより、弁体20の主弁21に備えられた主シール部22が第一ボディー50aに備えられた弁座53に当接し、主流路31内の反応ガスの流通を遮断する。また、副流路32内の反応ガスの流通は、弁棒40に備えられた副弁41と主弁21に備えられた副シール部23が当接した状態で遮断される。主弁21に備えられた定寸接触部25により、副弁41は副シール部23が変形密着し、かつ、主弁21に当接する。
【0049】
また、弁体20を開弁する際、アクチュエータ60により弁棒40を図6の下方(B方向)に移動することにより、弁棒40に備えた副弁41が副シール部23および定寸接触部25から離間して、副流路32に反応ガスを流通させる。副流路32に反応ガスが流通し第一ボディー50a内の一次側流路33と二次側流路との差圧が低下した後、主シール部22を備えた主弁21は、弁棒40の引き離しツバ部42に押され、弁座53から離間する。
【0050】
以下、第2の実施例の効果を説明する。
【0051】
上記の動作の開弁時において、弁棒40は小さい推力で主弁21より受圧面積の小さい副弁41を開弁状態にして、副流路32内に反応ガスを流通させる。これにより、第一ボディー50a内の一次側流路33と二次側流路34との差圧が低下し、容易に弁体20を開弁状態にすることができ、アクチュエータ60の小型化が図れる。尚、他の効果においても第1実施例と同様であるため省略する。
【0052】
尚、図4の副流路30bの形態、および図5の弁棒40の引き離しツバ部42の形状は、第2実施例にも適用可能である。
【0053】
また、第1実施例および第2実施例において、ボディー50内の反応ガスは、一次側流路33から二次側流路34へ流通しているが、図1〜図3および図6で示したように二次側流路34aから一次側流路33aへ流通流路設計の燃料電池ガス遮断弁10でも実施可能である。
【符号の説明】
【0054】
10・・・燃料電池用ガス遮断弁
20・・・弁体
21・・・主弁
22・・・主シール部
23・・・副シール部
24・・・ガスケット
25・・・定寸接触部
31・・・主流路
32・・・副流路
33・・・一次側流路
34・・・二次側流路
40・・・弁棒
41・・・副弁
42・・・引き離しツバ部
50・・・ボディー
53・・・弁座
60・・・アクチュエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁座に当接し、反応ガスを遮断する弁体と、
ガス流通状態を切り替えるアクチュエータとを備えた燃料電池用ガス遮断弁であって、
前記弁体は、
前記弁座に当接した前記弁体を介して形成される一次側流路と二次側流路との間を前記反応ガスが流通する主流路を遮断する主弁と、
前記主流路と比べ流路径が小さく、前記一次側流路と前記二次側流路との間を前記反応ガスが流通する副流路を遮断し、前記主弁に対して口径が小さい副弁と、
前記主流路および前記副流路のガス流通状態を前記アクチュエータにより切り替える弁棒とを備える、
ことを特徴とする燃料電池用ガス遮断弁。
【請求項2】
前記主弁は、前記弁座に当接し、前記主流路をシールする主シール部と、
前記主弁と前記副弁とが当接した際に、前記副流路をシールする副シール部とを備え、
前記主シール部と前記副シール部は、ゴムまたは樹脂の弾性体のガスケットにより一体で成形されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用ガス遮断弁。
【請求項3】
前記主弁は、前記副シール部の内縁に平坦状の定寸接触部を備える、
ことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の燃料電池用ガス遮断弁。
【請求項4】
前記副流路は、前記主弁の内壁面と前記弁棒の間に形成される、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の燃料電池用ガス遮断弁。
【請求項5】
前記弁棒は、前記副弁と、前記主弁を前記弁座から離間させる引き離しツバ部とを備え、
前記副弁と前記引き離しツバ部との間隔において、前記弁棒は、前記主弁に対して相対移動可能に設けられる、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の燃料電池用ガス遮断弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−64245(P2011−64245A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−214388(P2009−214388)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】