説明

燃料電池用燃料容器

液体燃料を収容する空間を有する液体燃料室と、該液体燃料室の出口に設けられ、該液体燃料を該空間から吐出し、又は吐出を停止するバルブと、該バルブの方向に向かって上記空間内を移動可能な隔壁部材と、上記空間と連通し、上記隔壁部材が上記バルブの方向に上記空間内を移動するように上記隔壁部材に背圧を与える圧縮気体を収容する圧縮ガス室とを有し、上記液体燃料室と上記圧縮ガス室とは一体化されている燃料電池用燃料容器。この燃料容器は、燃料電池に搭載されている燃料容器に燃料を補給するための燃料容器として使用するか、あるいは燃料電池に組み込むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直接メタノール型燃料電池(DMFC(Direct Methanol Fuel Cell))などの燃料電池を内蔵する機器に装着される燃料電池用液体燃料容器、あるいは燃料電池に搭載された燃料容器にメタノール水溶液などの液体燃料を供給する燃料電池用燃料容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の液体を収容する容器としては、例えば、エアゾール容器、化粧品容器などがあり、その容器は、ガラス、金属、プラスチックなどから形成されている。これらの容器は、内圧が加圧されることで、ノズルを開作動して、容器の内部の溶液が噴霧状に流出して使用できるように構成されている。
【0003】
これらの容器には、薬剤となる原液と、容器の内部を加圧するための噴射剤とが混合されて収容されるが、原液と噴射剤とが混合された状態で噴出されるため、原液のみを用いたい用途にはピストンなどを用いた二重構造の容器が用いられている。この技術は例えば、特許文献1の第2頁右欄第1行目〜第3頁左欄第39行目、図1、図2に開示されている。
【0004】
【特許文献1】特公平5−20148号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、図13に示すように、携帯用パソコン(ノートパソコン100、PDA(Personal Digital Assistance)など)やその他の電気機器などでは、小型電源として燃料電池200の使用が検討されている。その燃料電池200の燃料としては、例えば、メタノールと純水またはエタノールと純水の混合溶液からなる直接メタノール型燃料電池(DMFC)が検討されている。燃料電池200には、その燃料を貯蔵し、供給するための燃料容器(例えば燃料カートリッジ)300が必要である。
【0006】
前記燃料容器300の形状は、燃料電池200の本体もしくは燃料電池200を搭載しているノートパソコン100などの機器における燃料容器300の収容室110の形状などに応じて設定される。この点から、外形が円筒状のものでは、形状自由度が低いと共に、設置スペースの関係で収容する燃料の容積効率が低いという問題点がある。
【0007】
また、前記特許文献のように燃料を吐出するための圧縮ガスを収容する気室を液体燃料室と二重構造に設けたものでは大きな円筒形状となり、機器のコンパクト化の障害となる問題点がある。
【0008】
さらに、ノートパソコン100などの小型機器は、機器全体の大きさがノートサイズなどの大きさに制限されていることにより、燃料供給用ポンプ、調圧機構、燃料残量検知機構などが省略されることが望まれている。特に、使用者側の利便性向上のため、燃料容器300は、安価で、小型軽量のものが望まれている。
【0009】
本発明は、前記従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、本発明の課題は、燃料容器の形状の自由度が高く、簡便な機構により液体燃料を噴出できる小型軽量かつ安価な燃料電池用燃料容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明は液体燃料を収容する空間を有する液体燃料室と、該液体燃料室の出口に設けられ、該液体燃料を該空間から吐出し、又は吐出を停止するバルブと、該バルブの方向に向かって上記空間内を移動可能な隔壁部材と、上記空間と連通し、上記隔壁部材が上記バルブの方向に上記空間内を移動するように上記隔壁部材に背圧を与える圧縮気体を収容する圧縮ガス室とを有し、上記液体燃料室と上記圧縮ガス室とは一体化されている燃料電池用燃料容器を提供するものである。
【0011】
また、本発明に係る燃料電池用燃料容器のひとつの具体例においては、液体燃料と圧縮ガスとを収容すると共に、当該圧縮ガスにより前記液体燃料を押し出して当該液体燃料を前記燃料電池に供給する燃料電池用燃料容器であって、前記液体燃料及び前記圧縮ガスを収容し、前記燃料電池に前記液体燃料を供給するための接続口を有する容器本体と、前記容器本体に進退自在に内設されると共に、前記液体燃料を収容する液体燃料室と当該液体燃料室に連設されて前記圧縮ガスを封入する圧縮ガス室とを区画する隔壁部材と、前記接続口に設けられたバルブとを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、燃料電池用燃料容器は、液体燃料室と圧縮ガス室とが、隔壁部材によって区画されていることにより、燃料容器の形状の自由度を高くして、燃料容器全体をコンパクト化することが可能である。また、燃料電池用燃料容器は、圧縮ガスによって押圧された隔壁部材によって液体燃料を燃料容器の燃料電池又は燃料電池の燃料容器に対して吐出できるため、機構を簡素化することが可能である。
【0013】
本発明に係る燃料電池用燃料容器によれば、燃料容器の形状を機器の燃料容器収容室の形状などに応じて容易に設定することができ、収容する液体燃料の容積効率が高く、燃料容器のコンパクト化が図れる。さらに、自力で燃料単体を噴出でき、簡便な機構により安価でかつ小型軽量化によって使用者側の利便性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施の形態に係る燃料電池用燃料容器を示す図で、(a)は平面図、(b)は中央断面図である。
【図2】本発明の第1実施の形態に係る燃料電池用燃料容器を示す斜視図である。
【図3】本発明の第1実施の形態に係る燃料電池用燃料容器を示す図で、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【図4】図1(b)のA−A断面図である。
【図5】本発明の第1実施の形態の変形例を示す拡大断面図である。
【図6】本発明の第1実施の形態に係る燃料電池用燃料容器のバルブの設置状態を示す図で、(a)はバルブが閉じているときの状態を示す要部拡大断面図、(b)はバルブが開放されているときの状態を示す要部拡大断面図である。
【図7】本発明の第2実施の形態に係る燃料電池用燃料容器を示す図で、(a)は平面図、(b)は中央断面図である。
【図8】図7(b)のB−B断面図である。
【図9】本発明の第2実施の形態に係る燃料電池用燃料容器を示す斜視図である。
【図10】本発明の第3実施の形態に係る燃料電池用燃料容器を示す図で、(a)は平面図、(b)は中央断面図である。
【図11】図10(b)のC−C断面図である。
【図12】本発明の第3実施の形態に係る燃料電池用燃料容器を示す斜視図である。
【図13】従来のノートパソコンに使用されている燃料電池の燃料容器の取り付け構造を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0015】
1、1A,1B,1C;燃料電池用燃料容器、2,12;容器本体、2b,7a;接続口、2d,2e;目盛表示部、2f,2g;目盛、4;バルブ、5;隔壁部材、100;ノートパソコン、200;燃料電池、F;液体燃料、FR;液体燃料室、G;圧縮ガス、GR;圧縮ガス室。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
[第1の実施の形態]
以下、図1〜図6を参照して、本発明の第1実施の形態に係る燃料電池用燃料容器を説明する。
【0017】
まず、図1〜図3及び図13を参照して、燃料電池用燃料容器(以下、単に「燃料容器」という)1について説明する。
【0018】
図1(a)、(b)、図2、図3(a)及び(b)に示す燃料容器1は、前記した図13に示すようなノートパソコン100やその他の機器などに搭載されている燃料電池200に供給する液体燃料Fを貯蔵するための容器である。この燃料容器1は、燃料電池を内蔵する機器に着脱自在に装着され、直接メタノール型燃料電池(DMFC)などの燃料電池200に連結して液体燃料Fを補充することができる交換可能なカートリッジタイプの密閉容器からなる。
【0019】
燃料容器1は、図1(b)に示すように、液体燃料Fと圧縮ガスGとを容器本体2に内設された収容室2aに収容すると共に、その圧縮ガスGの圧力により液体燃料Fを押圧して液体燃料Fを燃料電池200に供給するように構成されている。燃料容器1は、液体燃料Fと、圧縮ガスGと、隔壁部材5と、容器本体2と、底蓋部材3とを備え、断面が長円形(図1(a)参照)で、扁平な柱体に形成されている。
【0020】
次に、図1〜図4を参照して容器本体2を説明する。
【0021】
容器本体2は、透明部材によって形成された目盛表示部2d,2e(図2、図3(a)及び(b)参照)と、不透明な合成樹脂とを組み合わせて成形し、薄い円筒形状に形成されている。容器本体2は、図1(a)及び図2に示すように、断面が長円形で、左右両端がそれぞれ円弧に形成され、前後面が平坦に形成されて、厚さTが薄い扁平形に形成されている。容器本体2の内部には、液体燃料F、圧縮ガスG及び隔壁部材5を収容する空洞状の収容室2aが形成されている。その収容室2aの一端部には、燃料電池200(図13参照)に液体燃料Fを供給するためのバルブ4が設置される前記接続口2bが形成され、収容室2aの他端部には、底蓋部材3によって密閉される開口部2cが形成されている。
【0022】
収容室2aは、液体燃料F、圧縮ガスG及び隔壁部材5が収容される空間からなり、液体燃料Fが収容される液体燃料室FR(液体燃料を収容する空間、以下同じ)と、圧縮ガスGが収容される圧縮ガス室GRとが連設されている。収容室2aは、中央部に上下方向に向けて形成された仕切壁2jによって第1収容室2hと第2収容室2iとに二分されている。その収容室2aは、液体燃料Fを接続口2bから押し出すための隔壁部材5が接続口2bの開口方向(以下、「上方向」という)に進退する第1収容室2hと、この第1収容室2hに隣接して並設された第2収容室2iと、第1収容室2hと第2収容室2iとが連通している底側の連通路2kとから構成されている。
【0023】
第1収容室2hは、ピストンの役目をする隔壁部材5が上下方向に進退自在に摺動するように内設されるシリンダを構成している。この第1収容室2は、隔壁部材5によって第1収容室2hが液体燃料Fを収容する液体燃料室FRと、圧縮ガスGを封入する圧縮ガス室GRとの二室に区画されている。第1収容室2において、隔壁部材5の上面と接続口2bとの間には、液体燃料室FRが形成され、隔壁部材5の下面と底蓋部材3との間には、圧縮ガス室GRが形成されて、液体燃料室FR及び圧縮ガス室GRの容積は、隔壁部材5の移動によってそれぞれ変化するように形成されている。ガス室の圧縮ガスにより、隔壁部材に背圧を与えて、隔壁部材がバルブの方向に移動する。
【0024】
第1収容室(液体燃料室FR)2hの内壁2mは、図4に示すように、略円柱形状に形成された隔壁部材5が上下動自在に嵌合するように円形に形成されて、円筒状になっている。第1収容室(液体燃料室FR)2hの内壁2mの一部は、断面円弧状の仕切壁2jと、透光性材料からなる目盛表示部2d,2eとで形成されて、目盛表示部2d,2eの外側から液体燃料室FRの液体燃料Fや隔壁部材5が視認できるように形成されている。第1収容室(液体燃料室FR)の形成する容器本体2には、隔壁部材5の位置を表す目盛(残量時間)2f,2gを付記した目盛表示部2d,2eが形成されており、液体燃料Fの量が視認できるようになっている。
【0025】
なお、第1収容室(液体燃料室FR)2hは、断面が円形なものに限定されるものではなく、図5に示す燃料容器1Aのように、第1収容室12h(液体燃料室FR)の断面が長円形の筒状にして、さらに厚さT1を薄くして容器本体12を扁平に成形してもよい。
【0026】
このような燃料容器1Aによれば、燃料容器1と比較して、厚さ方向にさらに薄くすることができ、薄型のノートパソコン100(図13参照)などの携帯機器に容易に装着可能となる。
【0027】
また、燃料容器1Aは、断面が長円形であるため、隔壁部材5が周方向に回転しない。
【0028】
第2収容室2iの全体は、圧縮ガスGが封入される圧縮ガス室GRを形成して、第1収容室2hに幅方向に平行に隣接して並設されている。このため、液体燃料Fと圧縮ガスGを収容する収容室2aは、液体燃料Fが収容される第1収容室(液体燃料室FR)と、圧縮ガスGが収容される第2収容室(圧縮ガス室GR)との上下方向の高さを短くして、燃料容器1の全体の高さHを短くして、コンパクトにすることが可能となる。
【0029】
第1収容室2hと第2収容室2iとの間には、容器本体2の開口部2cに底蓋部材3を嵌着して燃料容器1を形成した際に、第1収容室2hの底部と第2収容室2iの底部とが連通するように、仕切壁2jの下端部を切欠形成された連通路2kが設けられている。
【0030】
液体燃料室FRは、液体燃料Fが収容される箇所であり、第1収容室2h内の隔壁部材5と接続口2bとの間の空間からなる。
【0031】
圧縮ガス室GRは、圧縮ガスGが収容される箇所であり、第1収容室2h内の隔壁部材5と底蓋部材3との間の空間と、連通路2kと、第2収容室2iとからなる。
【0032】
液体燃料室FRと圧縮ガス室GRは、液体燃料Fの量によって、その二室を区画している隔壁部材5が移動することにより、容積が変化する。
【0033】
前記目盛表示部2d,2eは、燃料容器1を装着する機器によって残量監視窓が側方にある場合や、正面にある場合にも対応できるように、容器本体2の正面及び側面の両方に、液体燃料室FRに沿って細長く形成されている。目盛表示部2d,2eは、例えば、アクリル樹脂などの透光性樹脂によって形成されている。
【0034】
目盛2f,2gは、目盛表示部2d,2eの外側表面に、転写印刷、または、紙もしくはフィルムを巻き付けることなどによって外装される。また、容器本体2の外表面には、さらに、デザイン図案、商品名、宣伝などの表示や燃料容器1の装着方向を示す矢印表示2oなどが付記されている。
【0035】
図1(b)に示すように、底蓋部材3は、開口部2cに嵌合される環状突起2nを有する断面が長円形の略板状の樹脂部材であり、例えば、超音波溶着などによって開口部2cに固着されている。底蓋部材3は、圧縮ガス室GR(第1収容室2h及び第2収容室2i)の底面を構成している。環状突起2nは、段差状に形成された開口部2cの内側の第1収容室2h内に食み出るように形成されて、その食み出た箇所が隔壁部材5のストッパの機能を備えている。隔壁部材5は、この環状突起2nによって、底蓋部材3の底面に密着しないように構成されている。
【0036】
次に、図6(a)、(b)を参照してバルブ4を説明する。
【0037】
図6(a)、(b)に示すように、バルブ4は、段差状に形成された接続口2bに取り付けられており、液体燃料Fの流通を開放または遮断する開閉機器であり、容器本体2の第1収容室(液体燃料室FR)2hの上部に形成されている。バルブ4は、スペーサ4aと、圧縮コイルばね4bと、ガスケット4cと、中空部4f及び連通孔4gを有する有底の略円筒状のバルブステム4dと、止着部材4eとから構成されている。
【0038】
スペーサ4aは、接続口2b内の底部の周壁部に配設される円筒状の部材からなり、このスペーサ4aに遊嵌される圧縮コイルばね4bを支持している。
【0039】
圧縮コイルばね4bは、止着部材4eを付勢するばねであり、接続口2b内の底部に配設されている。
【0040】
ガスケット4cは、例えば、リング状の合成ゴムからなり、スペーサ4aの上に載置されている。
【0041】
バルブステム4dは、ガスケット4cに挿通されると共に、圧縮コイルばね4bの上に載置されている。
【0042】
止着部材4eは、周面に形成されたねじ部4hが接続口2bの内壁に形成された雌ねじ部(図示せず)に螺着されると共に、バルブステム4dを圧縮コイルばね4bの弾力に抗して、接続口2bの底面(液体燃料室FR)側に押圧している。
【0043】
次に、図1(b)を参照して隔壁部材5を説明する。
【0044】
図1(b)に示すように、隔壁部材5は、シリンダの役目をする第1収容室2hに摺動可能に嵌挿されて、液体燃料Fを押圧するピストンの役目をすると共に、第1収容室2hを液体燃料室FRと圧縮ガス室GRとに隔てている。隔壁部材5は、弾性を有するシール部材5aと、圧縮ガスGの圧縮力を受ける底面5eを有する芯部材5bとから構成されている。隔壁部材5は、断面形状が図4に示す内壁2mと同じ円形をした略柱体状に形成されている。
【0045】
シール部材5aは、芯部材5bを覆うように形成されると共に、下端部に芯部材5bの凹部5cに係止される係止爪5dが形成されて、芯部材5bと一体化されている。そのシール部材5aの外周は、第1収容室2hの内壁2mに気密に接触して、隔壁部材5の上部空間には液体燃料Fが封入され、隔壁部材5の下部空間には圧縮ガスGが封入されるように構成されている。
【0046】
これにより、隔壁部材5は、所定の姿勢を保持しながら、容器本体2内部を第1収容室2hの内壁2mに案内されて摺動すると、圧縮ガスGの圧力によって液体燃料Fを押圧して、前記バルブ4が連通作動した際に、液体燃料Fを接続口2bより押し出すように作用する。
【0047】
次に、図1(b)を参照して液体燃料Fを説明する。
【0048】
図1(b)に示す液体燃料Fは、例えば、主にメタノールと水の混合物からなる。液体燃料Fは、本実施形態では、燃料容器1がDMFCを内蔵する携帯機器に装着されるため、所定濃度のメタノールと純水、またはエタノールと純水の混合液である。ただし、液体燃料の種類はこれに限定されず、燃料電池の種類に応じて適宜変更自由である。
【0049】
次に、図1(b)を参照して圧縮ガスGを説明する。図1(b)に示す圧縮ガスGは、窒素、炭酸ガス、脱酸素空気などの酸素を含まないガスを用いることが好ましい。このように酸素を含まないガスを使用すれば、燃料電池での反応に悪影響を及ぼす酸素が液体燃料Fへ混入することや、液体燃料Fが酸化することを防止できる。
【0050】
圧縮ガスGの圧力は、液体燃料室FRに充填された液体燃料Fが少なくなっても押し出しきれれば特に制限されない。さらに、例えば、携帯機器が、燃料供給用ポンプ、調圧機構などを備えていない場合には、圧縮ガスGの最大圧力が0.3MPaG以下となるよう設定することが好ましい。このように0.3MPaG以下に設定する場合は、液体燃料Fの充填量が最大の状態(液体燃料室FRの容積が最大であって、圧縮ガス室GRの容積が最小の場合)において、圧縮ガスGの圧力が0.3MPaGとなるように設定する。
【0051】
さらに、圧縮ガスGの圧力変動を極力低減するために、圧縮ガス室GRの容積は、可及的に大きくすることが好ましい。
【0052】
次に、本発明の第1の実施の形態に係る燃料電池用燃料容器の動作を説明する。
【0053】
まず、図1(b)に示すように、圧縮ガスGを圧縮ガス室GRに封入する。圧縮ガスGの封入は、例えば、液体燃料室FRに液体燃料Fを注入していない空の状態で、接続口2bよりバルブ4を通して液体燃料室FRに圧縮ガスGを注入すると共に、隔壁部材5が液体燃料室FRの最底部に移動するまで圧縮ガスGを注入する。このとき、隔壁部材5の底面5eの端部が環状突起2nに当接して傾くことにより、その隔壁部材5と内壁2mとの密閉状態が開放されて液体燃料室FRと圧縮ガス室GRとが連通されて、圧縮ガスGが圧縮ガス室GRの内部に注入される。そして、圧縮ガス室GR内が所定圧力となった際に、圧縮ガスGの注入を停止する。その後、バルブ4を開作動して液体燃料室FR内の圧縮ガスGを排出すると、隔壁部材5が圧縮ガスGの圧力によって移動して、液体燃料室FRが元の密閉状態に戻る。
【0054】
そして、隔壁部材5の底面5eには、圧縮ガスGの圧力が作用されていることにより、隔壁部材5が液体燃料室FRの上端にまで上昇移動して液体燃料Fの全て排出できるように圧縮ガス室GR内の圧縮ガスGを封入することができる。その後、接続口2bのバルブ4を開いて、液体燃料室FRへ液体燃料Fを注入することによって、燃料容器1は、携帯機器に液体燃料Fを補充できるようになる。
【0055】
燃料容器1が、ノートパソコン100(図13参照)などの携帯機器に装着されていない場合、図6(a)に示すように、バルブステム4dの連通孔4gは、ガスケット4cによって遮断されて、バルブ4が閉鎖状態になっている。このため、燃料容器1の液体燃料室FR内の液体燃料Fは、バルブ4から漏れることなく充填された状態にある。液体燃料Fは、隔壁部材5の底面5eが圧縮ガスGの圧力によって押圧されていることにより、隔壁部材5の上面で押圧されて圧縮された状態にある。
【0056】
そして、燃料容器1が、前記携帯機器に装着されると、図4(b)に示すように、バルブステム4dが押し下げられることによってガスケット4cが圧縮変形し、連通孔4gが開放される(開放状態)。すると、液体燃料室FRに充填されて圧縮された状態にある液体燃料Fは、圧縮ガスGの圧縮力によって液体燃料室FRから押し出されて、連通孔4g及び中空部4fを経由し、燃料容器1の外部に噴射され、携帯機器に内蔵された燃料電池200(図13参照)に供給される。
【0057】
液体燃料Fが燃料電池200(図13参照)に供給されて、燃料容器1内の量が減少すると、残留する液体燃料Fの貯蔵量(残量時間h)に応じて隔壁部材5の位置が変化する。その隔壁部材5の移動を目盛表示部2d,2eから視認できると共に、目盛2f,2gによって液体燃料Fの貯蔵量(残量時間h)を測ることができる。隔壁部材5は、液体燃料Fの減少に応じて圧縮ガスGの体積が変化して圧力がやや低下するが、圧縮ガスGの所定範囲内の圧力によって押圧されて移動し、液体燃料Fの貯蔵量が無くなるまで押し出すことができる。すなわち、隔壁部材5は、図1(b)に想像線で示すように、液体燃料室FRの上端まで移動すると、液体燃料室FRの上端面に当接してストップするため、液体燃料室FR内の液体燃料Fを全部押し出すことができる。
【0058】
隔壁部材5が液体燃料室FRの上端でストップするように構成されていることにより燃料容器1は、液体燃料F以外が外部に噴出しない。また、容器本体2の内部で液体燃料室FRと圧縮ガス室GRとに分離形成されたことにより、落下などの衝撃による燃料漏れを防止することができる。
【0059】
また、燃料容器1は、第1収容室2hと第2収容室2iとが横方向に隣接して並設されたことにより、図1〜図4に示すように、扁平型に形成することが可能となるため、高いスペース効率の要求があるノートパソコン100(図13参照)やPDAにおいても対応できるようになり、小型で収容量が多い燃料容器1が構成できる。
【0060】
[第2実施の形態]
次に、図7〜図9を参照して、本発明の第2実施の形態に係る燃料電池用燃料容器を説明する。前記第1実施の形態で説明したものと同一のものは、同じ符号を付記してその説明を省略する。
【0061】
本発明の第2実施の形態は、燃料容器1Bの収容室6aが、中側に配置された第1収容室(液体燃料室FR)6bと、この第1収容室(液体燃料室FR)6bの外側に配置された第2収容室(圧縮ガス室GR)6cとを二重に配置することにより、厚さT2と幅L2とを同じ長さに短くしてコンパクトにしたものである。
【0062】
燃料容器1Bは、上方に開口部6dを形成した容器状の容器本体6と、この容器本体6の開口部6dが嵌着される上蓋部材7と、この上蓋部材7の上面中央部の接続口7aに設置されたバルブ4と、上蓋部材7に設けられたバルブ4の下方に設置された略円筒状のシリンダ部材8とから構成されている。燃料容器1Bは、図9に示すように、圧縮ガス室GRが液体燃料室FRに隣接していることにより、四角柱状に形成することができるため、幅L2を前記第1実施の形態の燃料容器1(図2参照)の幅Lより短く形成することが可能となる。
【0063】
なお、燃料容器1Bは、第1収容室6bの周囲に配置されることにより、形状の自由度が増して、外形の断面形状を四角形や円形や長円形などすることが可能となる。例えば、燃料容器1Bは、容器本体6及び上蓋部材7を円筒状に形成することにより、円柱状などに形成してもよい。
【0064】
容器本体6は、例えば、断面が四角形をした有底筒体からなり、内側に所定間隔をおいてシリンダ部材8を配設している。これにより、容器本体6の内壁とシリンダ部材8との間に第2収容室6cが形成される。
【0065】
上蓋部材7は、容器本体6の開口部6dに嵌着されて、かつ超音波溶着などによって密着されている。
【0066】
シリンダ部材8は、上端部を上蓋部材7のバルブ設置部7bに嵌着されて、下端部を容器本体6の内底から浮かして連通路6eが形成されている。そのシリンダ部材8には、液体燃料Fと、ピストンの役目をする隔壁部材5とが内設されている。シリンダ部材8の内部は、第1収容室6bを形成して、この第1収容室6bを隔壁部材5によって液体燃料Fが収容される液体燃料室FRと前記第2収容室6cに連通している圧縮ガス室GRとの二室に区画されている。
【0067】
本発明の第2実施の形態に係る燃料電池用燃料容器は、このように形成されたことにより、幅L2の短い燃料容器1Bを提供することができ、薄型のノートパソコン100(図13参照)などの携帯機器に容易に装着可能となる。
【0068】
なお、本発明は、前記第1及び第2実施の形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で種々の改造及び変更が可能であり、本発明はこれら改造及び変更された発明にも及ぶことは勿論である。
【0069】
前記した第1及び第2実施の形態に係る燃料容器1、1Bは、液体燃料室FRと圧縮ガス室GRとが、幅方向または外周方向に並列的に並んで配置したとしたが、液体燃料室FRと圧縮ガス室GRの配置はこれに限定されず、例えば図10〜図12に示すように、液体燃料室FRと圧縮ガス室GRとが、高さ方向において直列的(直線的)に配置した細長の燃料容器1Cであってもよい。
【0070】
このように燃料容器1Cは、液体燃料室FRと圧縮ガス室GRとを一直線に配置することのより、燃料容器1C全体を細くしてコンパクト化を図ることができる。
【0071】
なお、前記燃料容器1は、燃料電池に装着して該燃料電池に直接燃料を供給するものであるが、内圧を高めて、再注入可能な燃料電池用燃料容器に対して、液体燃料Fを注入するための注入用燃料容器としても使用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、液体燃料電池の燃料容器として、又は燃料電池に搭載された燃料容器に燃料を補給する燃料容器として利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体燃料を収容する空間を有する液体燃料室と、該液体燃料室の出口に設けられ、該液体燃料を該空間から吐出し、又は吐出を停止するバルブと、該バルブの方向に向かって上記空間内を移動可能な隔壁部材と、上記空間と連通し、上記隔壁部材が上記バルブの方向に上記空間内を移動するように上記隔壁部材に背圧を与える圧縮気体を収容する圧縮ガス室とを有し、上記液体燃料室と上記圧縮ガス室とは一体化されていることを特徴とする燃料電池用燃料容器。
【請求項2】
上記バルブは燃料電池の燃料供給口に接続可能に構成されている請求項1記載の燃料電池用燃料容器。
【請求項3】
液体燃料と圧縮ガスとを収容すると共に、当該圧縮ガスにより前記液体燃料を押し出して該液体燃料を燃料電池に供給する燃料電池用燃料容器であって、
前記液体燃料及び前記圧縮ガスを収容し、前記燃料電池に前記液体燃料を供給するための接続口を有する容器本体と、
前記容器本体に進退自在に内設されると共に、前記液体燃料を収容する液体燃料室と当該液体燃料室に連設されて前記圧縮ガスを封入する圧縮ガス室とを区画する隔壁部材と、
前記接続口に設けられたバルブと、
を備えていることを特徴とする燃料電池用燃料容器。
【請求項4】
上記燃料容器は燃料電池を内蔵する機器に装着可能に構成されていることを特徴とする請求項1記載の燃料電池用燃料容器。
【請求項5】
前記容器本体は、円筒形状に形成され、
前記液体燃料室は、円筒状もしくは断面が長円形の筒状に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の燃料電池用燃料容器。
【請求項6】
前記容器本体は、前記圧縮ガス室が前記液体燃料室に隣接して並設されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の燃料電池用燃料容器。
【請求項7】
前記容器本体は、前記圧縮ガス室が前記液体燃料室に隣接していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の燃料電池用燃料容器。
【請求項8】
前記圧縮ガスの圧力は、最大0.3MPaG以下となるよう構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の燃料電池用燃料容器。
【請求項9】
前記圧縮ガスは、酸素を含まないガスからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の燃料電池用燃料容器。
【請求項10】
前記容器本体は、少なくとも前記液体燃料室の一部が、透光性材料で形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の燃料電池用燃料容器。
【請求項11】
前記容器本体は、前記隔壁部材の位置を表す目盛を有することを特徴する請求項1〜3のいずれかに記載の燃料電池用燃料容器。
【請求項12】
前記液体燃料が、メタノールと水の混合物からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の燃料電池用燃料容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【国際公開番号】WO2005/069418
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【発行日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−517094(P2005−517094)
【国際出願番号】PCT/JP2005/000487
【国際出願日】平成17年1月17日(2005.1.17)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000151265)株式会社東海 (45)
【Fターム(参考)】