燃料電池用高分子電解質膜の製造方法
燃料電池の発電効率を向上させるために、本発明は、以下の工程(A)〜(E)を包含する、3μm以上12μm以下の高さおよび0.4以上2.0以下のアスペクト比を有する複数の微細凸部の配列を有する表面を具備する高分子電解質膜を製造する方法を提供する:複数の微細凹部(103)の配列を有する表面を具備する鋳型を準備する工程(A)、ここで、各微細凹部は底面および側壁を具備し、各底面および各側壁は親水性を有し、各側壁は平滑であり、各複数の微細凹部は3μm以上12μm以下の深さおよび0.4以上2.0以下のアスペクト比を有し、前記表面に親水性の高分子電解質溶液を供給する工程(B)、前記高分子電解質溶液を固化して高分子電解質膜を形成する工程(C)、前記高分子電解質膜を親水性液体に浸漬する工程(D)、および前記親水性溶液中で前記鋳型から前記高分子電解質膜を剥離して、3μm以上12μm以下の高さおよび0.4以上2.0以下のアスペクト比を有する複数の微細凸部を有する配列を具備する高分子電解質膜を形成する工程(E)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用高分子電解質膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、複数の微細凸部を表面に有する高分子電解質膜を備えた固体高分子形燃料電池を開示している。当該微細凸部は、反応面積を増大させ、触媒の効率を向上させる。特許文献1は、高分子電解質膜の表面に微細凸部を形成するために、プレス成型法およびキャスト法を開示している。
【0003】
キャスト法では、高分子電解質またはその前駆体および溶媒を含有する電解質溶液が、表面に複数の微細凹部を有する鋳型上にキャストされる。その後、固化した高分子電解質膜が鋳型から剥離される。得られた高分子電解質膜は、鋳型の鏡面構造をその表面に有する。
【0004】
特許文献2および非特許文献1は、複数の微細凸部を有する高分子電解質膜を形成する方法を開示している。これらの文献によれば、複数の微細凹部を有するポリシアノメチルアクリレートからなる鋳型に、高分子電解質膜の単量体および重合開始剤を含有する電解質溶液が流し込まれる。その後、紫外線照射により単量体を重合させ、固化した高分子電解質膜が鋳型から剥離される。
【0005】
特許文献3は、複数の微細凸部を有する触媒層を備えた高分子電解質膜を作製する方法を開示している。特許文献3によれば、触媒層を備えたアルミナナノホール配列の上に高分子電解質水溶液を滴下し、そこに高分子電解質膜を被覆することによって、当該高分子電解質膜が作製される。
【0006】
特許文献4は、燃料電池用高分子電解質膜以外の樹脂の膜を形成する方法として、キャスト法を用いてフッ化ポリイミド樹脂の表面に複数の微細凸部を形成する方法を開示している。特許文献4によれば、複数の微細凹部を有するシリコン鋳型の表面に親水化処理が施され、当該シリコン鋳型上に樹脂単量体を含む溶液がキャストされる。その後、加熱により樹脂単量体が重合された後、温水に浸される。最後に、得られたフッ化ポリイミド樹脂が鋳型から剥離される。シリコン鋳型の表面に施される親水化処理は、固化後の樹脂とシリコン鋳型との間の密着性を弱め、剥離を容易にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−174620号公報
【特許文献2】特表2007−525802号公報
【特許文献3】特開2006−196413号公報
【特許文献4】特開2005−053198号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Zhilian Zhou et. al. "Molded, High surface Area Polymer Electrolyte Membranes from Cured Liquid Precursors", Journal of the American Chemical Society, 2006, vol. 128, pp. 12963-12972
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献2および非特許文献1に開示されているキャスト法は、30μm以上の厚みを有する高分子電解質膜の表面に複数の微細凸部を形成するためには、単量体を重合することにより電解質膜を形成する工程を含め、多くの工程を必要とする。
【0010】
特許文献3に記載されているキャスト法は、重合開始剤および紫外線を必要としない。しかし、当該キャスト法により形成された複数の微細凸部を有する高分子電解質膜は薄すぎるため、当該高分子電解質膜は他の2枚の高分子電解質膜に貼り付けられることを必要とする。
【0011】
特許文献4では、キャストされる樹脂単量体溶液は疎水性であるが、シリコン鋳型は親水性である。そのため、樹脂単量体溶液と鋳型との間の密着性が低い。鋳型の凹部が3μm以上の深さを有する場合、樹脂単量体溶液が当該凹部に入り込まない。そのため、3μm以上の高さを有する微細凸部が形成され得ない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る燃料電池用高分子電解質膜を製造する方法は、上述の問題点を解決するために提供される。本発明の目的は、高分子電解質溶液および鋳型のみを用いたキャスト法を用いて、3〜12μmの高さ、および0.4〜2.0のアスペクト比を有する複数の微細凸部を表面に備えた高分子電解質膜を得ることである。当該高分子電解質膜は、反応面積を増加させ、かつカソード触媒層へのプロトン輸送効率を改善する。これが、燃料電池の発電効率を向上させる。
【0013】
具体的には、本発明は、以下の工程(A)〜(E)を包含する、3μm以上12μm以下の高さおよび0.4以上2.0以下のアスペクト比を有する複数の微細凸部の配列を有する表面を具備する高分子電解質膜を製造する方法を提供する:
複数の微細凹部(103)の配列を有する表面を具備する鋳型を準備する工程(A)、
ここで、各微細凹部は底面および側壁を具備し、
各底面および各側壁は親水性を有し、各側壁は平滑であり、
各複数の微細凹部は3μm以上12μm以下の深さおよび0.4以上2.0以下のアスペクト比を有し、
前記表面に親水性の高分子電解質溶液を供給する工程(B)、
前記高分子電解質溶液を固化して高分子電解質膜を形成する工程(C)、
前記高分子電解質膜を親水性液体に浸漬する工程(D)、および
前記親水性溶液中で前記鋳型から前記高分子電解質膜を剥離して、3μm以上12μm以下の高さおよび0.4以上2.0以下のアスペクト比を有する複数の微細凸部を有する配列を具備する高分子電解質膜を形成する工程(E)。
【発明の効果】
【0014】
本発明の製造方法は、高分子電解質溶液と鋳型のみを使った簡便なキャスト法によって、高分子電解質膜の表面に高さまたは深さは3〜12μmであり、アスペクト比が0.4〜2.0の複数の微細凸部を作製することが出来る。当該微細凸部は、燃料電池の反応表面積を増加させると共に、カソード触媒層でのプロトン輸送を促進する。その結果、燃料電池の発電効率は、著しく改善される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の高分子電解質膜の製造工程を示す図
【図2】本発明の高分子電解質膜を利用した膜電極接合体を示す模式図
【図3】本発明の燃料電池の模式図
【図4】実施例1におけるシリコン鋳型の電子顕微鏡像
【図5】実施例1における高分子電解質膜の光学顕微鏡像
【図6】実施例1における高分子電解質膜の電子顕微鏡像
【図7】実施例1における膜電極接合体断面の電子顕微鏡像
【図8】実施例1における、微細凸構造を有する高分子電解質膜と従来の平坦膜を利用した燃料電池に対する電流―電圧曲線を示すグラフ
【図9】実施例2における高分子電解質膜の電子顕微鏡像
【図10】比較例1におけるシリコン鋳型上の微細凹部と高分子電解質膜の電子顕微鏡像
【図11】比較例2における高分子電解質膜の原子間力顕微鏡像
【図12】比較例3における高分子電解質膜の光学顕微鏡像
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の構成・作用を一層明らかにするために、以下、適切な実施例について説明する。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、本発明の燃料電池用高分子電解質膜の製造工程を示す。
【0018】
工程(A)では、複数の微細凹部の配列を有する表面を具備する鋳型103が準備される。各微細凹部は親水性である底面および側壁を具備する。各側壁は平滑である。各複数の微細凹部は3μm以上12μm以下の深さおよび0.4以上2.0以下のアスペクト比を有する。
【0019】
当該鋳型103を製造する方法は以下の通りである。ひとつの方法では、疎水性の基板の表面にボッシュエッチングプロセスによって複数の微細凹部が形成されて、疎水性鋳型が形成される。ボッシュエッチングプロセスは、基板の表面に深い孔を形成するエッチング方法である。当該微細凹部の底面および側面にUVオゾン処理によって親水化処理が行われて鋳型103を形成する。他の方法では、親水性の基板の表面にボッシュエッチングプロセスによって複数の微細凹部が形成され、鋳型103を形成する。
【0020】
ボッシュエッチングプロセスによれば、平滑な側壁を有する微細凹部が形成される。具体的には、側壁は0.05μm以下の平均表面粗さ(Ra)を有する。このような側壁は、工程(E)において鋳型103から高分子電解質膜が剥離される際、当該高分子電解質膜が鋳型に引っ掛かることを防止し、そして微細凸部を保護する。
【0021】
本明細書において用いられる用語「親水性」とは、鋳型103の表面における水の接触角が20度以下であることを意味する。
【0022】
工程(B)では、鋳型103の表面に親水性の高分子電解質溶液104が供給される。すなわち、当該高分子電解質溶液104が鋳型103にキャストされる。当該高分子電解質溶液は、高分子電解質および親水性溶媒を含む。高分子電解質溶液104の溶媒は水、ジメチルホルムアミド、またはジメチルアセトアミドであることが好ましい。
【0023】
高分子電解質溶液104は鋳型103にキャストされると、親水性相互作用により、鋳型103の凹部に入り込む。その結果、高分子電解質溶液104は、鋳型103の鏡面構造を有する。
【0024】
工程(C)では、高分子電解質溶液104が固化されて高分子電解質膜105が形成される。具体的には、高分子電解質溶液104は大気中で乾燥される。その後、鋳型103に形成された高分子電解質膜105は高温に加熱されて乾燥される。
【0025】
工程(D)では、鋳型103に形成された高分子電解質膜105は、親水性液体106を含む容器に浸漬される。すなわち、高分子電解質膜105は、鋳型103に貼り付いた状態で容器に浸漬される。好ましくは、親水性液体106は水である。
【0026】
工程(E)では、親水性溶液106の中で鋳型103から高分子電解質膜105が剥離される。こうして、3μm以上12μm以下の高さおよび0.4以上2.0以下のアスペクト比を有する複数の微細凸部を有する配列を具備する高分子電解質膜が形成される。
【0027】
親水相互作用のため強固に吸着している高分子電解質膜105と鋳型103間の界面に、親水性液体106が入り込む。高分子電解質膜105と鋳型103間の界面の親水性液体107がこの吸着作用を弱める。これにより高分子電解質膜105の剥離が容易になる。
【0028】
図2は、105に示す高分子電解質膜の両面に白金担持触媒を塗工することによって作製された膜電極接合体の断面図を示す。201と202は、それぞれカソード側とアノード側の触媒層を表す。図3は、図2に示す膜電極接合体を利用して作製した燃料電池の模式図を示す。301はガス拡散層、302は燃料として水素と空気を供給するための流路がついているセパレータである。図3に示す燃料電池の電流―電圧特性を調べることにより、微細凸構造を有する高分子電解質膜を利用した燃料電池の性質を調べる。
【0029】
(実施例1)
シリコン鋳型は、直径15センチの単結晶シリコンの中央部に、周期的微細凹構造を形成することにより作製した。当該微細凹構造を有する領域は、鋳型上の6センチx6センチであった。当該凹部は四角柱の穴であり、一辺が7.5μm、ピッチが15μm、深さが3μmであった。他の二つの鋳型も、四角柱の深さを7.5μmと11μmに増やすことにより作製した。図4は、ボッシュ法により平滑化された微細凹部分の側壁を示す。電子顕微鏡解析により、側壁の平均表面荒さは0.05μm以下であった。当該鋳型は、110℃で10分間のUVオゾン洗浄を施すことにより、親水処理した。当該鋳型上における水の接
触角は、20度以下であった。UVオゾン洗浄に加え、アールシーエー洗浄や酸素プラズマ処理でも、鋳型表面を親水化することが出来た。
【0030】
9mlの水を溶媒とするパーフルオロスルホン酸系高分子電解質溶液(濃度20%、イオン交換基量700)を親水性シリコン鋳型上にキャストした。当該高分子電解質溶液と当該鋳型は共に親水性であるため、親水相互作用により、高分子電解質溶液は鋳型の微細凹部分に入り込んだ。当該高分子電解質溶液を大気中で一晩放置することにより、無色透明の高分子電解質膜が鋳型上に生成した。当該高分子電解質膜は、膜中に微量に存在する水を除去するために、真空中において150℃で一時間加熱された。
【0031】
加熱された高分子電解質膜を室温まで冷やした後、水に浸した。数分後、高分子電解質膜を、水中で鋳型から徐々に剥離した。当該高分子電解質膜上の水をティシュで拭き取った後、高分子電解質膜を窒素置換デシケーター中で乾燥させた。図5は、当該高分子電解質膜の光学顕微鏡像を示す。高分子電解質膜の剥離を水中で行った場合、膜と鋳型中の界面に入り込んだ水により、膜の鋳型に対する吸着力が弱められるため、剥離が容易になった。
【0032】
図6は、凸部分の高さが3μm(a)、7.5μm(b)、11μm(c)である高分子電解質膜の電子顕微鏡像を示す。当該高分子電解質膜上に形成された凸部分は、相当する鋳型構造の鏡面構造を呈していた。当該凸部分のアスペクト比は、それぞれ0.4、1.0、1.5であった。凸部分を除いた当該高分子電解質膜の平均膜厚は、55μmであった。
【0033】
カソード及びアノード触媒として、ケッチェンブラックに白金ナノ粒子を重量比で50%担持した触媒(田中貴金属社製、TEC10E50E)を用いた。触媒ペーストは、当該白金担持触媒に、ポリマー濃度を20%に調整したデュポン社製ナフィオン溶液(イオン交換基量:1100)を混合することで作成した。膜電極接合体は、当該触媒ペーストを微細凸構造を片面に有する高分子電解質膜の両面にスプレー塗工することにより作製した。当該高分子電解質膜の凸構造を有する表面をカソード側とした。触媒ペーストの高分子電解質膜への密着度を改善するために、当該膜電極接合体は、2枚のステンレス板の間で100℃、1MPaで5分間、ホットプレスされた。
【0034】
図7は、図6(b)に示す高分子電解質膜を利用して作製した膜電極接合体の電子顕微鏡断面図を示す。図7に示すように、当該高分子電解質膜上の凸部分はカソード触媒層に入り込んでいた。
【0035】
図6(c)に示す高分子電解質膜を利用した燃料電池の性能を、従来の平坦高分子電解質膜と比較した。平坦高分子電解質膜は上記と同様な工程で作製されたが、平坦なシリコンウエハーをキャスト基板として使用した。図8は、これら燃料電池の電流―電圧曲線の比較を示す。データは、セル温度90℃、相対湿度35%で測定した。ガス利用率は、水素70%、空気50%に設定した。図8に示すように、微細凸構造を有する高分子電解質膜を利用した燃料電池の性能は、平坦高分子電解質膜より優れていた。
【0036】
(実施例2)
高分子電解質膜上により高アスペクト比を有する微細凸構造を形成するために、実施例1において作製したシリコン鋳型上の微細凹構造のサイズを変更した。新しい鋳型上の微細凹構造は、一辺が6μm、ピッチが15μm、深さが12μmであった。当該鋳型を用いて、実施例1と同様にして高分子電解質膜を作製した。図9は、微細凸構造を有する高分子電解質膜上を示す。当該微細凸部は、一辺が6μm、ピッチが15μm、高さが12μmであった。当該微細凸部のアスペクト比は、2.0であった。
【0037】
(実施例3)
実施例1で使用したパーフルオロスルホン酸系高分子電解質溶液中の水(溶媒)を、ロータリーエバポレーターを利用して除去した。水蒸発後に得られた高分子電解質を、高分子濃度が20%になるように、ジメチルホルムアミドまたはジメチルアセトアミドに再度溶解した。これら親水性有機溶媒に溶解した高分子電解質溶液からも、図6と図9に示す高分子電解質膜が作製された。形成された微細凸部の高さは3〜12μmであり、アスペクト比は0.4〜2.0であった。
【0038】
(比較例1)
実施例1で使用したシリコン鋳型上の微細凹構造のサイズを変更することにより、新しいシリコン鋳型を作製した。当該鋳型の微細凹部は、一辺が10μm、ピッチが15μm、深さが7.5μmであった。当該微細凹部分は、ボッシュ法を使用せずに作製した。図10(a)は、当該鋳型上の凹部分の側壁を示す。当該側壁上には、粗い表面構造が観測された。電子顕微鏡解析によると、当該側壁の平均表面粗さは0.3μmであった。当該鋳型を用い実施例1と同様にして、微細凸構造を有する高分子電解質膜を作製した。図10(b)は、当該高分子電解質膜の表面構造を示す。多数の欠陥や鋳型から転写された粗い表面構造が、微細凸部に見られた。
【0039】
(比較例2)
実施例1において使用された微細凹構造を有するシリコン鋳型(一辺7.5μm、凹部間ピッチが15μm、深さ7.5μm)の表面に対して、UVオゾン洗浄による親水化処理を行わなかった。当該鋳型上における水の接触角は、80度であった。実施例1と同様にして、微細凸構造を有する高分子電解質膜を作製した。図11に当該鋳型を使用して作製した高分子電解質膜の原子間力顕微鏡像を示す。鋳型とキャストされた高分子電解質溶液は、それぞれ疎水性、親水性であるため、当該高分子電解質溶液は、当該鋳型の凹部に入り込まなかった。それゆえ、鋳型の鏡面構造を有する微細凸構造を高分子電解質膜に形成出来なかった。
【0040】
(比較例3)
実施例1における、高分子電解質膜の鋳型からの剥離を、水中の代わりに大気中で行った。図12は、当該高分子電解質膜の光学顕微鏡像を示す。剥離を大気中で行った場合、高分子電解質膜が部分的に破壊された。これは、高分子電解質が鋳型に強く吸着されていることに起因しており、剥離過程の実施が困難であった。
【0041】
(比較例4)
実施例1において、鋳型からの高分子電解質膜の剥離を水中ではなく、エタノール及びアセトン中で試みた。エタノールの場合は電解質膜が膨潤し、アセトンでは電解質膜が溶解する傾向が見られたため、所望の微細構造を有する高分子電解質膜は作製出来なかった。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、微細凸部を表面に有する高分子電解質膜の製造方法を提供する。
【符号の説明】
【0043】
103 鋳型
104 高分子電解質溶液
105 高分子電解質膜
106 親水性液体
107 高分子電解質膜105および鋳型104の間の親水性液体
201 カソード触媒層
202 アノード触媒層
301 ガス拡散層
302 セパレータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用高分子電解質膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、複数の微細凸部を表面に有する高分子電解質膜を備えた固体高分子形燃料電池を開示している。当該微細凸部は、反応面積を増大させ、触媒の効率を向上させる。特許文献1は、高分子電解質膜の表面に微細凸部を形成するために、プレス成型法およびキャスト法を開示している。
【0003】
キャスト法では、高分子電解質またはその前駆体および溶媒を含有する電解質溶液が、表面に複数の微細凹部を有する鋳型上にキャストされる。その後、固化した高分子電解質膜が鋳型から剥離される。得られた高分子電解質膜は、鋳型の鏡面構造をその表面に有する。
【0004】
特許文献2および非特許文献1は、複数の微細凸部を有する高分子電解質膜を形成する方法を開示している。これらの文献によれば、複数の微細凹部を有するポリシアノメチルアクリレートからなる鋳型に、高分子電解質膜の単量体および重合開始剤を含有する電解質溶液が流し込まれる。その後、紫外線照射により単量体を重合させ、固化した高分子電解質膜が鋳型から剥離される。
【0005】
特許文献3は、複数の微細凸部を有する触媒層を備えた高分子電解質膜を作製する方法を開示している。特許文献3によれば、触媒層を備えたアルミナナノホール配列の上に高分子電解質水溶液を滴下し、そこに高分子電解質膜を被覆することによって、当該高分子電解質膜が作製される。
【0006】
特許文献4は、燃料電池用高分子電解質膜以外の樹脂の膜を形成する方法として、キャスト法を用いてフッ化ポリイミド樹脂の表面に複数の微細凸部を形成する方法を開示している。特許文献4によれば、複数の微細凹部を有するシリコン鋳型の表面に親水化処理が施され、当該シリコン鋳型上に樹脂単量体を含む溶液がキャストされる。その後、加熱により樹脂単量体が重合された後、温水に浸される。最後に、得られたフッ化ポリイミド樹脂が鋳型から剥離される。シリコン鋳型の表面に施される親水化処理は、固化後の樹脂とシリコン鋳型との間の密着性を弱め、剥離を容易にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−174620号公報
【特許文献2】特表2007−525802号公報
【特許文献3】特開2006−196413号公報
【特許文献4】特開2005−053198号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Zhilian Zhou et. al. "Molded, High surface Area Polymer Electrolyte Membranes from Cured Liquid Precursors", Journal of the American Chemical Society, 2006, vol. 128, pp. 12963-12972
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献2および非特許文献1に開示されているキャスト法は、30μm以上の厚みを有する高分子電解質膜の表面に複数の微細凸部を形成するためには、単量体を重合することにより電解質膜を形成する工程を含め、多くの工程を必要とする。
【0010】
特許文献3に記載されているキャスト法は、重合開始剤および紫外線を必要としない。しかし、当該キャスト法により形成された複数の微細凸部を有する高分子電解質膜は薄すぎるため、当該高分子電解質膜は他の2枚の高分子電解質膜に貼り付けられることを必要とする。
【0011】
特許文献4では、キャストされる樹脂単量体溶液は疎水性であるが、シリコン鋳型は親水性である。そのため、樹脂単量体溶液と鋳型との間の密着性が低い。鋳型の凹部が3μm以上の深さを有する場合、樹脂単量体溶液が当該凹部に入り込まない。そのため、3μm以上の高さを有する微細凸部が形成され得ない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る燃料電池用高分子電解質膜を製造する方法は、上述の問題点を解決するために提供される。本発明の目的は、高分子電解質溶液および鋳型のみを用いたキャスト法を用いて、3〜12μmの高さ、および0.4〜2.0のアスペクト比を有する複数の微細凸部を表面に備えた高分子電解質膜を得ることである。当該高分子電解質膜は、反応面積を増加させ、かつカソード触媒層へのプロトン輸送効率を改善する。これが、燃料電池の発電効率を向上させる。
【0013】
具体的には、本発明は、以下の工程(A)〜(E)を包含する、3μm以上12μm以下の高さおよび0.4以上2.0以下のアスペクト比を有する複数の微細凸部の配列を有する表面を具備する高分子電解質膜を製造する方法を提供する:
複数の微細凹部(103)の配列を有する表面を具備する鋳型を準備する工程(A)、
ここで、各微細凹部は底面および側壁を具備し、
各底面および各側壁は親水性を有し、各側壁は平滑であり、
各複数の微細凹部は3μm以上12μm以下の深さおよび0.4以上2.0以下のアスペクト比を有し、
前記表面に親水性の高分子電解質溶液を供給する工程(B)、
前記高分子電解質溶液を固化して高分子電解質膜を形成する工程(C)、
前記高分子電解質膜を親水性液体に浸漬する工程(D)、および
前記親水性溶液中で前記鋳型から前記高分子電解質膜を剥離して、3μm以上12μm以下の高さおよび0.4以上2.0以下のアスペクト比を有する複数の微細凸部を有する配列を具備する高分子電解質膜を形成する工程(E)。
【発明の効果】
【0014】
本発明の製造方法は、高分子電解質溶液と鋳型のみを使った簡便なキャスト法によって、高分子電解質膜の表面に高さまたは深さは3〜12μmであり、アスペクト比が0.4〜2.0の複数の微細凸部を作製することが出来る。当該微細凸部は、燃料電池の反応表面積を増加させると共に、カソード触媒層でのプロトン輸送を促進する。その結果、燃料電池の発電効率は、著しく改善される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の高分子電解質膜の製造工程を示す図
【図2】本発明の高分子電解質膜を利用した膜電極接合体を示す模式図
【図3】本発明の燃料電池の模式図
【図4】実施例1におけるシリコン鋳型の電子顕微鏡像
【図5】実施例1における高分子電解質膜の光学顕微鏡像
【図6】実施例1における高分子電解質膜の電子顕微鏡像
【図7】実施例1における膜電極接合体断面の電子顕微鏡像
【図8】実施例1における、微細凸構造を有する高分子電解質膜と従来の平坦膜を利用した燃料電池に対する電流―電圧曲線を示すグラフ
【図9】実施例2における高分子電解質膜の電子顕微鏡像
【図10】比較例1におけるシリコン鋳型上の微細凹部と高分子電解質膜の電子顕微鏡像
【図11】比較例2における高分子電解質膜の原子間力顕微鏡像
【図12】比較例3における高分子電解質膜の光学顕微鏡像
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の構成・作用を一層明らかにするために、以下、適切な実施例について説明する。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、本発明の燃料電池用高分子電解質膜の製造工程を示す。
【0018】
工程(A)では、複数の微細凹部の配列を有する表面を具備する鋳型103が準備される。各微細凹部は親水性である底面および側壁を具備する。各側壁は平滑である。各複数の微細凹部は3μm以上12μm以下の深さおよび0.4以上2.0以下のアスペクト比を有する。
【0019】
当該鋳型103を製造する方法は以下の通りである。ひとつの方法では、疎水性の基板の表面にボッシュエッチングプロセスによって複数の微細凹部が形成されて、疎水性鋳型が形成される。ボッシュエッチングプロセスは、基板の表面に深い孔を形成するエッチング方法である。当該微細凹部の底面および側面にUVオゾン処理によって親水化処理が行われて鋳型103を形成する。他の方法では、親水性の基板の表面にボッシュエッチングプロセスによって複数の微細凹部が形成され、鋳型103を形成する。
【0020】
ボッシュエッチングプロセスによれば、平滑な側壁を有する微細凹部が形成される。具体的には、側壁は0.05μm以下の平均表面粗さ(Ra)を有する。このような側壁は、工程(E)において鋳型103から高分子電解質膜が剥離される際、当該高分子電解質膜が鋳型に引っ掛かることを防止し、そして微細凸部を保護する。
【0021】
本明細書において用いられる用語「親水性」とは、鋳型103の表面における水の接触角が20度以下であることを意味する。
【0022】
工程(B)では、鋳型103の表面に親水性の高分子電解質溶液104が供給される。すなわち、当該高分子電解質溶液104が鋳型103にキャストされる。当該高分子電解質溶液は、高分子電解質および親水性溶媒を含む。高分子電解質溶液104の溶媒は水、ジメチルホルムアミド、またはジメチルアセトアミドであることが好ましい。
【0023】
高分子電解質溶液104は鋳型103にキャストされると、親水性相互作用により、鋳型103の凹部に入り込む。その結果、高分子電解質溶液104は、鋳型103の鏡面構造を有する。
【0024】
工程(C)では、高分子電解質溶液104が固化されて高分子電解質膜105が形成される。具体的には、高分子電解質溶液104は大気中で乾燥される。その後、鋳型103に形成された高分子電解質膜105は高温に加熱されて乾燥される。
【0025】
工程(D)では、鋳型103に形成された高分子電解質膜105は、親水性液体106を含む容器に浸漬される。すなわち、高分子電解質膜105は、鋳型103に貼り付いた状態で容器に浸漬される。好ましくは、親水性液体106は水である。
【0026】
工程(E)では、親水性溶液106の中で鋳型103から高分子電解質膜105が剥離される。こうして、3μm以上12μm以下の高さおよび0.4以上2.0以下のアスペクト比を有する複数の微細凸部を有する配列を具備する高分子電解質膜が形成される。
【0027】
親水相互作用のため強固に吸着している高分子電解質膜105と鋳型103間の界面に、親水性液体106が入り込む。高分子電解質膜105と鋳型103間の界面の親水性液体107がこの吸着作用を弱める。これにより高分子電解質膜105の剥離が容易になる。
【0028】
図2は、105に示す高分子電解質膜の両面に白金担持触媒を塗工することによって作製された膜電極接合体の断面図を示す。201と202は、それぞれカソード側とアノード側の触媒層を表す。図3は、図2に示す膜電極接合体を利用して作製した燃料電池の模式図を示す。301はガス拡散層、302は燃料として水素と空気を供給するための流路がついているセパレータである。図3に示す燃料電池の電流―電圧特性を調べることにより、微細凸構造を有する高分子電解質膜を利用した燃料電池の性質を調べる。
【0029】
(実施例1)
シリコン鋳型は、直径15センチの単結晶シリコンの中央部に、周期的微細凹構造を形成することにより作製した。当該微細凹構造を有する領域は、鋳型上の6センチx6センチであった。当該凹部は四角柱の穴であり、一辺が7.5μm、ピッチが15μm、深さが3μmであった。他の二つの鋳型も、四角柱の深さを7.5μmと11μmに増やすことにより作製した。図4は、ボッシュ法により平滑化された微細凹部分の側壁を示す。電子顕微鏡解析により、側壁の平均表面荒さは0.05μm以下であった。当該鋳型は、110℃で10分間のUVオゾン洗浄を施すことにより、親水処理した。当該鋳型上における水の接
触角は、20度以下であった。UVオゾン洗浄に加え、アールシーエー洗浄や酸素プラズマ処理でも、鋳型表面を親水化することが出来た。
【0030】
9mlの水を溶媒とするパーフルオロスルホン酸系高分子電解質溶液(濃度20%、イオン交換基量700)を親水性シリコン鋳型上にキャストした。当該高分子電解質溶液と当該鋳型は共に親水性であるため、親水相互作用により、高分子電解質溶液は鋳型の微細凹部分に入り込んだ。当該高分子電解質溶液を大気中で一晩放置することにより、無色透明の高分子電解質膜が鋳型上に生成した。当該高分子電解質膜は、膜中に微量に存在する水を除去するために、真空中において150℃で一時間加熱された。
【0031】
加熱された高分子電解質膜を室温まで冷やした後、水に浸した。数分後、高分子電解質膜を、水中で鋳型から徐々に剥離した。当該高分子電解質膜上の水をティシュで拭き取った後、高分子電解質膜を窒素置換デシケーター中で乾燥させた。図5は、当該高分子電解質膜の光学顕微鏡像を示す。高分子電解質膜の剥離を水中で行った場合、膜と鋳型中の界面に入り込んだ水により、膜の鋳型に対する吸着力が弱められるため、剥離が容易になった。
【0032】
図6は、凸部分の高さが3μm(a)、7.5μm(b)、11μm(c)である高分子電解質膜の電子顕微鏡像を示す。当該高分子電解質膜上に形成された凸部分は、相当する鋳型構造の鏡面構造を呈していた。当該凸部分のアスペクト比は、それぞれ0.4、1.0、1.5であった。凸部分を除いた当該高分子電解質膜の平均膜厚は、55μmであった。
【0033】
カソード及びアノード触媒として、ケッチェンブラックに白金ナノ粒子を重量比で50%担持した触媒(田中貴金属社製、TEC10E50E)を用いた。触媒ペーストは、当該白金担持触媒に、ポリマー濃度を20%に調整したデュポン社製ナフィオン溶液(イオン交換基量:1100)を混合することで作成した。膜電極接合体は、当該触媒ペーストを微細凸構造を片面に有する高分子電解質膜の両面にスプレー塗工することにより作製した。当該高分子電解質膜の凸構造を有する表面をカソード側とした。触媒ペーストの高分子電解質膜への密着度を改善するために、当該膜電極接合体は、2枚のステンレス板の間で100℃、1MPaで5分間、ホットプレスされた。
【0034】
図7は、図6(b)に示す高分子電解質膜を利用して作製した膜電極接合体の電子顕微鏡断面図を示す。図7に示すように、当該高分子電解質膜上の凸部分はカソード触媒層に入り込んでいた。
【0035】
図6(c)に示す高分子電解質膜を利用した燃料電池の性能を、従来の平坦高分子電解質膜と比較した。平坦高分子電解質膜は上記と同様な工程で作製されたが、平坦なシリコンウエハーをキャスト基板として使用した。図8は、これら燃料電池の電流―電圧曲線の比較を示す。データは、セル温度90℃、相対湿度35%で測定した。ガス利用率は、水素70%、空気50%に設定した。図8に示すように、微細凸構造を有する高分子電解質膜を利用した燃料電池の性能は、平坦高分子電解質膜より優れていた。
【0036】
(実施例2)
高分子電解質膜上により高アスペクト比を有する微細凸構造を形成するために、実施例1において作製したシリコン鋳型上の微細凹構造のサイズを変更した。新しい鋳型上の微細凹構造は、一辺が6μm、ピッチが15μm、深さが12μmであった。当該鋳型を用いて、実施例1と同様にして高分子電解質膜を作製した。図9は、微細凸構造を有する高分子電解質膜上を示す。当該微細凸部は、一辺が6μm、ピッチが15μm、高さが12μmであった。当該微細凸部のアスペクト比は、2.0であった。
【0037】
(実施例3)
実施例1で使用したパーフルオロスルホン酸系高分子電解質溶液中の水(溶媒)を、ロータリーエバポレーターを利用して除去した。水蒸発後に得られた高分子電解質を、高分子濃度が20%になるように、ジメチルホルムアミドまたはジメチルアセトアミドに再度溶解した。これら親水性有機溶媒に溶解した高分子電解質溶液からも、図6と図9に示す高分子電解質膜が作製された。形成された微細凸部の高さは3〜12μmであり、アスペクト比は0.4〜2.0であった。
【0038】
(比較例1)
実施例1で使用したシリコン鋳型上の微細凹構造のサイズを変更することにより、新しいシリコン鋳型を作製した。当該鋳型の微細凹部は、一辺が10μm、ピッチが15μm、深さが7.5μmであった。当該微細凹部分は、ボッシュ法を使用せずに作製した。図10(a)は、当該鋳型上の凹部分の側壁を示す。当該側壁上には、粗い表面構造が観測された。電子顕微鏡解析によると、当該側壁の平均表面粗さは0.3μmであった。当該鋳型を用い実施例1と同様にして、微細凸構造を有する高分子電解質膜を作製した。図10(b)は、当該高分子電解質膜の表面構造を示す。多数の欠陥や鋳型から転写された粗い表面構造が、微細凸部に見られた。
【0039】
(比較例2)
実施例1において使用された微細凹構造を有するシリコン鋳型(一辺7.5μm、凹部間ピッチが15μm、深さ7.5μm)の表面に対して、UVオゾン洗浄による親水化処理を行わなかった。当該鋳型上における水の接触角は、80度であった。実施例1と同様にして、微細凸構造を有する高分子電解質膜を作製した。図11に当該鋳型を使用して作製した高分子電解質膜の原子間力顕微鏡像を示す。鋳型とキャストされた高分子電解質溶液は、それぞれ疎水性、親水性であるため、当該高分子電解質溶液は、当該鋳型の凹部に入り込まなかった。それゆえ、鋳型の鏡面構造を有する微細凸構造を高分子電解質膜に形成出来なかった。
【0040】
(比較例3)
実施例1における、高分子電解質膜の鋳型からの剥離を、水中の代わりに大気中で行った。図12は、当該高分子電解質膜の光学顕微鏡像を示す。剥離を大気中で行った場合、高分子電解質膜が部分的に破壊された。これは、高分子電解質が鋳型に強く吸着されていることに起因しており、剥離過程の実施が困難であった。
【0041】
(比較例4)
実施例1において、鋳型からの高分子電解質膜の剥離を水中ではなく、エタノール及びアセトン中で試みた。エタノールの場合は電解質膜が膨潤し、アセトンでは電解質膜が溶解する傾向が見られたため、所望の微細構造を有する高分子電解質膜は作製出来なかった。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、微細凸部を表面に有する高分子電解質膜の製造方法を提供する。
【符号の説明】
【0043】
103 鋳型
104 高分子電解質溶液
105 高分子電解質膜
106 親水性液体
107 高分子電解質膜105および鋳型104の間の親水性液体
201 カソード触媒層
202 アノード触媒層
301 ガス拡散層
302 セパレータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程(A)〜(E)を包含する、3μm以上12μm以下の高さおよび0.4以上2.0以下のアスペクト比を有する複数の微細凸部の配列を有する表面を具備する高分子電解質膜を製造する方法:
複数の微細凹部(103)の配列を有する表面を具備する鋳型を準備する工程(A)、
ここで、各微細凹部は底面および側壁を具備し、
各底面および各側壁は親水性を有し、各側壁は平滑であり、
各複数の微細凹部は3μm以上12μm以下の深さおよび0.4以上2.0以下のアスペクト比を有し、
前記表面に親水性の高分子電解質溶液を供給する工程(B)、
前記高分子電解質溶液を固化して高分子電解質膜を形成する工程(C)、
前記高分子電解質膜を親水性液体に浸漬する工程(D)、および
前記親水性溶液中で前記鋳型から前記高分子電解質膜を剥離して、3μm以上12μm以下の高さおよび0.4以上2.0以下のアスペクト比を有する複数の微細凸部を有する配列を具備する高分子電解質膜を形成する工程(E)。
【請求項2】
前記側壁が、0.05μm以下の平均表面粗さを有する、請求項1の方法。
【請求項3】
前記底面および前記側壁はいずれも20度以上の水との接触角を有する、請求項1の方法。
【請求項4】
前記親水性液体は水である、請求項1の方法。
【請求項1】
以下の工程(A)〜(E)を包含する、3μm以上12μm以下の高さおよび0.4以上2.0以下のアスペクト比を有する複数の微細凸部の配列を有する表面を具備する高分子電解質膜を製造する方法:
複数の微細凹部(103)の配列を有する表面を具備する鋳型を準備する工程(A)、
ここで、各微細凹部は底面および側壁を具備し、
各底面および各側壁は親水性を有し、各側壁は平滑であり、
各複数の微細凹部は3μm以上12μm以下の深さおよび0.4以上2.0以下のアスペクト比を有し、
前記表面に親水性の高分子電解質溶液を供給する工程(B)、
前記高分子電解質溶液を固化して高分子電解質膜を形成する工程(C)、
前記高分子電解質膜を親水性液体に浸漬する工程(D)、および
前記親水性溶液中で前記鋳型から前記高分子電解質膜を剥離して、3μm以上12μm以下の高さおよび0.4以上2.0以下のアスペクト比を有する複数の微細凸部を有する配列を具備する高分子電解質膜を形成する工程(E)。
【請求項2】
前記側壁が、0.05μm以下の平均表面粗さを有する、請求項1の方法。
【請求項3】
前記底面および前記側壁はいずれも20度以上の水との接触角を有する、請求項1の方法。
【請求項4】
前記親水性液体は水である、請求項1の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2012−514288(P2012−514288A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517690(P2011−517690)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【国際出願番号】PCT/JP2010/073479
【国際公開番号】WO2011/096149
【国際公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【国際出願番号】PCT/JP2010/073479
【国際公開番号】WO2011/096149
【国際公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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