説明

燃料電池発電システム及び燃料電池発電システムにおける一酸化炭素変成器のヒータ制御方法

【課題】 一酸化炭素変成器ヒータの投入量を最適化することにより、システム信頼性と省エネ性能を高次元で両立することができる燃料電池発電システムを提供する。
【解決手段】 本実施の形態は、制御装置22が、燃料電池21の累積発電時間に基づいて、一酸化炭素変成器12のヒータ12bの設定温度を算出し、この算出された設定温度となるようにヒータ投入量を算出し、この算出されたヒータ投入量に基づいて、一酸化炭素変成器ヒータを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、燃料電池発電システム及び燃料電池発電システムにおける一酸化炭素変成器のヒータ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、炭化水素を含む原燃料ガスと改質蒸気とから水素リッチな改質ガスを生成するための改質器と、改質器で得られた改質ガスの中の一酸化炭素の濃度を低下させる一酸化炭素変成器と、空気を供給して一酸化炭素変成器で得られた変成ガスの一酸化炭素をさらに取り除く一酸化炭素除去器と、一酸化炭素除去器で得られた改質ガスを燃料ガスとして用い、その燃料ガスと酸化剤ガスとの電気化学反応により電気エネルギーを発生する燃料電池と、一酸化炭素変成器の温度を適切に上昇させるための一酸化炭素変成器ヒータと、これらを制御するためのシステム制御装置とを有する燃料電池発電システムが広く知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−299120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の燃料電池発電システムにおいては、一酸化炭素変成器ヒータの設定温度を一定としているため、一酸化炭素変成器の温度低下に伴なうシステムの信頼性の低下や、逆に一酸化炭素変成器のヒータの過大投入に伴うシステムの省エネ性が低下するという課題があった。
【0005】
また、特に発電出力上昇時には、一時的に一酸化炭素変成器の負荷が高まり、整定時よりも高い反応温度が必要となり、システムの信頼性の低下及び省エネ性が低下するという課題があった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、一酸化炭素変成器ヒータの投入量を最適化することにより、システム信頼性と省エネ性能を高次元で両立することができる燃料電池発電システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の燃料電池発電システムは、原燃料ガスから水素リッチな改質ガスを生成する改質器と、前記改質器で得られた改質ガスの中の一酸化炭素の濃度を低下させる一酸化炭素変成器と、前記一酸化炭素変成器で得られた改質ガスを燃料ガスとして用い、その燃料ガスと酸化剤ガスとの電気化学反応により電気エネルギを発生する燃料電池と、前記一酸化炭素変成器の温度を上昇させる一酸化炭素変成器ヒータと、前記一酸化炭素変成器ヒータの設定温度を制御する制御装置とを具備し、前記制御装置は、前記燃料電池の累積発電時間に応じて、前記一酸化炭素変成器ヒータの設定温度を算出する手段と、前記算出された設定温度となるようにヒータ投入量を算出し、この算出されたヒータ投入量に基づいて、前記一酸化炭素変成器ヒータを制御する手段とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、一酸化炭素変成器ヒータの投入量を最適化することにより、システム信頼性と省エネ性能を高次元で両立することができる。これにより、既存システムの構成を変えることなく、顧客満足度の増大を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態の燃料電池発電システムの構成を示す図である。
【図2】実施形態の制御装置の一酸化炭素変成器のヒータの制御方法を説明するための図である。
【図3】実施形態に係る燃料電池発電システムの制御装置のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、本実施の形態に係る燃料電池発電システムの構成を示す図である。なお、図1に示した燃料電池発電システムにおいては、理解の容易のために、本実施の形態に関連する燃料処理系の主要な構成のみを示しており、熱交換系や、ブロア制御系などは示していないが、これらは一般的な燃料電池発電システムと同様である。
【0012】
同図に示すように、燃料電池発電システム1の燃料処理系2は、改質器11、一酸化炭素変成器12及び一酸化炭素除去器13を有している。
【0013】
改質器11には、炭化水素を含む原燃料ガスを通すためのガス配管10が接続され、ガス配管10を介して供給される原燃料ガスと改質蒸気とから水素リッチな改質ガスを生成する。
【0014】
一酸化炭素変成器12は、改質器11によって生成された改質ガスの中の一酸化炭素の濃度を低下させる。また、この一酸化炭素変成器12には、一酸化炭素変成器12の温度を測定するための温度センサ12a及び一酸化炭素変成器12の温度を上昇するためのヒータ12bが設けられている。
【0015】
一酸化炭素除去器13は、一酸化炭素変成器12からの一酸化炭素の濃度が低下した変成ガスに空気を供給して一酸化炭素をさらに取り除き、改質ガスとして燃料電池21のアノードに供給する。
【0016】
燃料電池21は、一酸化炭素変成器12で得られた改質ガスを燃料ガスとして用い、その燃料ガスと酸化剤ガスとの電気化学反応により電気エネルギを発生する。また、燃料電池21には、燃料電池21の発電出力を測定するための電力測定器21bが設けられている。なお、この電力測定器21bはインバータ23に設けられていても良く、その設置箇所は、燃料電池の発電出力が測定できる箇所であれば良い。
【0017】
インバータ23は、燃料電池21の直流電力を交流電力に変換して系統24に出力する。
【0018】
制御装置22は、温度センサ12aによって測定された一酸化炭素変成器12の温度、電力測定器21bによって測定された燃料電池21の発電電力、インバータ21が稼動しているかを示す信号23aなどに基づいて、本実施の形態に係る燃料電池発電システム1の一酸化炭素変成器12の温度制御を行なう。また、制御装置22は、燃料電池発電システム1の全体を制御する。
【0019】
本実施の形態では、一酸化炭素変成器12の温度センサ12aによって測定された一酸化炭素変成器12の温度が設定温度よりも低い場合には、一酸化炭素変成器12のヒータ12bが投入され、一酸化炭素変成器12の温度を設定温度に保つように制御される。
【0020】
この設定温度は、事前検証やシミュレーションにより予め設定される。本実施の形態では、この設定温度に対して、燃料電池21の発電出力及び累積発電時間などが考慮される。すなわち、設定温度は発電出力及び累積発電時間の関数として表現される。一般的には、発電出力が高いほど設定温度が高くなり、累積発電時間が長くなるほど設定温度が高くなる。
【0021】
さらに、発電出力上昇時には、一時的に一酸化炭素変成器12の負荷が高まり、整定時よりも高い反応温度が必要となるため、発電出力上昇を検出した場合は、設定温度を上昇させる。
【0022】
図2は、本実施の形態の制御装置の一酸化炭素変成器12のヒータ12bの制御方法を説明するための図である。
【0023】
電力測定器21bによって測定された燃料電池21の発電出力x1[w]は、発電出力と設定温度との関数f(x1)により、設定温度T1[℃]が算出される。なお、図2においては、関数f(x1)を一次関数として示しているがこれに限られるものではない。
【0024】
一方、制御装置22はインバータ21が稼動しているかを示す信号23aに基づいて、インバータが稼動している時間、すなわち、燃料電池21の累積発電時間x2を制御装置22に内臓のタイマー(図示せず)を利用して計測する。
【0025】
そして、累積発電時間x2は、累積発電時間と係数αとの関数により、その係数αが決定される。図2においては、累積発電時間と係数αとの関係は右上がりの階段形状を示しているが、これに限られるものではない。例えば、一定の累積発電時間以上の場合は係数を「1」として、一定の累積発電時間よりも小さい場合には係数を「0」とするような二者択一の関数としても良い。
【0026】
そして、決定された係数αは、累積発電時間x2に対して設定された所定の温度T2[℃]と乗算される。すなわち、α・T2は、累積発電時間x2の関数f(x2)である。その後、設定温度T1とα・T2とが加算されて、発電出力x1及び累積発電時間x2が考慮された設定温度y1=T1+(α・T2)が算出される。すなわち、y1=f(x1,x2)である。
【0027】
次に、電力測定器21bによって測定された燃料電池21の発電出力が上昇中の場合には、予め設定された温度y3[℃]が加算される。なお、燃料電池21の発電出力が上昇中であるか否かの判断は、例えば、所定の時間間隔で、所定の発電出力上昇があるか否かにより判断される。したがって、最終的な設定温度は、発電出力上昇がある場合にはy2=y1+y3となり、発電出力上昇がない場合にはy2=y1となる。
【0028】
なお、本実施の形態においては、発電出力上昇がある場合と発電出力上昇がない場合とで、最終的な設定温度を変える場合について示したが、このプロセスは省略されても良い。
【0029】
ON/OFF制御部31は、最終的な設定温度y2と、温度センサ12aによって測定された一酸化炭素変成器12の温度との差に基づいて、一酸化炭素変成器12の温度が最終的な設定温度y2となるようヒータ12bのヒータ投入量を算出し、ヒータ12bのON/OFF制御を行なう。
【0030】
図3は、本実施の形態に係る燃料電池発電システムの制御装置のフローチャートである。なお、本実施の形態に係る制御は、所定の時間間隔で行なわれるものとするが、これに限られるものではない。
【0031】
まず、最初に、発電出力x1に基づいて、T1=f(x1)を算出する(S1)。
【0032】
ここで、
x1:燃料電池21の発電出力
f(x):設定温度T1[℃]と発電出出力x[w]との関数
T1:発電出力に対する設定温度
である。
【0033】
次に、累積発電時間x2に基づいて、α・T2=f(x2)を算出する(S2)。
【0034】
ここで、
x2:燃料電池21の累積発電時間x2
α :係数
T2:累積発電時間に対する設定温度
である。
【0035】
次に、y1=f(x1,x2)=T1+α・T2を算出する(S3)。
【0036】
ここで、y1は、発電出力x1及び累積発電時間x2を考慮した設定温度である。
【0037】
次に、電力測定器21bによって測定された燃料電池21の発電出力と、インバータ21が稼動しているかを示す信号23aとに基づいて、燃料電池21の発電出力が上昇しているか否かの判断が行なわれる(S4)。
【0038】
発電出力が上昇していないと判断された場合には、y2=y1とする(S5)。一方、発電出力が上昇していると判断された場合には、y2=y1+y3とする(S6)。ここで、y2は、発電出力x1、累積発電時間x2、発電出力上昇を考慮した最終設定温度である。
【0039】
そして、ON/OFF制御部31により、最終設定温度y2と温度センサ12aによって測定された一酸化炭素変成器12の実際の測定温度との差分に基づいて、ヒータ12bの投入量を算出し(S7)、この算出されたヒータ12bの投入量に基づいてヒータ12bのON/OFF制御を最終設定温度y2となるようにヒータ12bに対して行ない(S8)、S1の処理に戻る。
【0040】
従って、本実施形態によれば、発電出力、累積発電時間及び発電出力が上昇しているか否かに基づいて設定温度を変化させることが可能となり、どのような運転状態においても、一酸化炭素変成器12を最適な状態にすることができる。
【0041】
また、どのような運転状態においても、必要最低限のヒータ投入量とすることができ、システムの信頼性を損なうことなく、高い省エネルギー性を実現することができる。すなわち、一酸化炭素変成器12のヒータ12bへの投入量を最適化することにより、システム信頼性とシステム省エネ性を高次元で両立することができる燃料電池発電システムを提供することができる。これにより、既存システムの構成を変えることなく、顧客満足度の増大を図ることができる。
【0042】
なお、一酸化炭素除去器は省略してもよい。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0044】
1…燃料電池発電システム、2…燃料処理系、10…ガス配管、11…改質器、12…一酸化炭素変成器、12a…温度センサ、12b…ヒータ、13…一酸化炭素除去器、21…燃料電池、21b…電力測定器、22…制御装置、23…インバータ、24…系統。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原燃料ガスから水素リッチな改質ガスを生成する改質器と、
前記改質器で得られた改質ガスの中の一酸化炭素の濃度を低下させる一酸化炭素変成器と、
前記一酸化炭素変成器で得られた改質ガスを燃料ガスとして用い、その燃料ガスと酸化剤ガスとの電気化学反応により電気エネルギーを発生する燃料電池と、
前記一酸化炭素変成器の温度を上昇させる一酸化炭素変成器ヒータと、
前記一酸化炭素変成器ヒータの設定温度を制御する制御装置とを具備し、
前記制御装置は、
前記燃料電池の累積発電時間に応じて、前記一酸化炭素変成器ヒータの設定温度を算出する手段と、
前記算出された設定温度となるようにヒータ投入量を算出し、この算出されたヒータ投入量に基づいて、前記一酸化炭素変成器ヒータを制御する手段と
を具備する燃料電池発電システム。
【請求項2】
前記設定温度を算出する手段は、前記燃料電池の発電出力及び累積発電時間に応じて、前記一酸化炭素変成器ヒータの設定温度を算出する請求項1記載の燃料電池発電システム。
【請求項3】
前記設定温度を算出する手段は、さらに、前記燃料電池の発電出力の上昇時に、前記一酸化炭素変成器ヒータの設定温度を上昇させる手段を具備する請求項1または2記載の燃料電池発電システム。
【請求項4】
前記設定温度を算出する手段は、さらに、
前記燃料電池の発電出力に基づいて第1の設定温度を算出する手段と、
前記燃料電池の累積発電時間に基づいて、第2の設定温度を算出する手段と、
前記燃料電池の発電出力が上昇しているか否かを判断する手段と、
前記燃料電池の発電出力が上昇していると判断された場合には、前記第1の設定温度、前記第2の設定温度及び燃料電池の発電出力の上昇に対して設定された第3の設定温度とに基づいて設定温度を算出し、前記燃料電池の発電出力が上昇していないと判断された場合には、前記第1の設定温度及び前記第2の設定温度に基づいて設定温度を算出することを特徴とする請求項3記載の燃料電池発電システム。
【請求項5】
前記一酸化炭素変成器ヒータを制御する手段は、
前記算出された設定温度と、前記一酸化炭素変成器の測定温度との差分に基づいて、一酸化炭素変成器ヒータのヒータ投入量を算出し、この算出されたヒータ投入量となるように前記一酸化炭素変成器ヒータの制御を行なうことを特徴とする請求項1または2記載の燃料電池発電システム。
【請求項6】
原燃料ガスから水素リッチな改質ガスを生成する改質器と、
前記改質器で得られた改質ガスの中の一酸化炭素の濃度を低下させる一酸化炭素変成器と、
前記一酸化炭素変成器で得られた改質ガスを燃料ガスとして用い、その燃料ガスと酸化剤ガスとの電気化学反応により電気エネルギーを発生する燃料電池と、
前記一酸化炭素変成器の温度を上昇させる一酸化炭素変成器ヒータと、
前記一酸化炭素変成器ヒータの設定温度を制御する制御装置と
を具備する燃料電池発電システムにおける一酸化炭素変成器ヒータの制御方法において、
前記制御装置は、
前記燃料電池の累積発電時間に応じて、前記一酸化炭素変成器ヒータの設定温度を算出し、
前記算出された設定温度となるようにヒータ投入量を算出し、この算出されたヒータ投入量に基づいて、前記一酸化炭素変成器ヒータを制御することを特徴とする制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−4418(P2013−4418A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136683(P2011−136683)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(301060299)東芝燃料電池システム株式会社 (358)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】