説明

燃料電池車用吸気システム

【課題】燃料電池車の反応ガス供給ポンプによる吸気の際に発生する特有の吸気音を、少ない容積の音抑制デバイスで低周波から高周波まで効率よく抑制する燃料電池車用吸気システムを提供する。
【解決手段】2種類の反応ガスが供給されて発電を行う燃料電池の吸気システムにおいて、反応ガスを燃料電池に送り出す反応ガス供給ポンプと、反応ガス供給ポンプに接続され、反応ガスを通流させる反応ガス供給経路と、反応ガス供給経路に設けられ、反応ガスの供給の際に発生する音を抑制する音抑制デバイスと、反応ガス供給経路に設けられ、開度の調整可能な可変開度弁と、反応ガス供給ポンプの出力関連値に基づいて可変開度弁の開度を制御する制御部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池車の反応ガス供給ポンプ(過給器)による吸気の際に発生する特有の吸気音を効率よく抑制する燃料電池車用吸気システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池としては、高分子イオン交換膜(陽イオン交換膜)からなる固体高分子電解質膜の両側に、それぞれアノード側電極及びカソード側電極を対設した電解質膜・電極構造体(電解質・電極構造体)を、一対のセパレータによって挟持した単位セルが多数積層された固体高分子型燃料電池が一般的に用いられている。
【0003】
この単位セルでは、アノード側電極に供給された燃料ガス、例えば、主に水素を含有するガスにおける水素が電極触媒上でイオン化され、電解質膜を介してカソード側電極側へと移動する。その間に生じた電子は外部回路に取り出され、直流の電気エネルギーとして利用される。なお、カソード側電極には、酸化剤ガス、例えば、主に酸素を含有するガスあるいは空気が供給されているために、このカソード側電極において、水素イオン、電子および酸素が反応して水が生成される。
【0004】
このような燃料電池においては、特に車両に燃料電池を搭載する場合に、反応ガス供給のために高回転の反応ガス供給ポンプが用いられている。この反応ガス供給ポンプを用いて吸気を行う際には、低周波から高周波までの広い帯域で音を出すことから、吸気システムに高い音抑制性能が求められ、また同時に車の燃費向上のため小型化が求められている。
【0005】
さらに、燃料電池車の吸気口付近の温度は、使用環境や走行状態により低温から高温まで広い範囲で変化するため、この温度に対する音抑制デバイスの対応周波数も変化させる必要がある。従来においては、流量・圧力・車速に応じて可変バルブを制御する技術が用いられている(例えば、特許文献1及び2参照。)。
【0006】
しかしながら、これらの従来技術では、温度変化に対する音抑制デバイスの対応周波数については、音抑制デバイスの容積を大きくすることで対応しているため、小型化できないといった課題がある。また、少ない音抑制デバイス容積で効率よく音抑制効果を発揮するためには、温度に対する流路断面積を変化させたり、音抑制デバイスの対応周波数を良好に追従させる必要がある。
【0007】
また、ガソリン車では、アクセルに連動して吸気音の周波数が変わるのに対して、燃料電池車では、スタックの必要流量により反応ガス供給ポンプ回転数が決定されており、アクセル開度と吸気音とは連動していない。そのため、ユーザーは運転操作とは連動しない吸気音を感じて、違和感を得やすい。したがって、燃料電池車では、車室内で違和感を与えにくくするよう防音材を増やす等、ガソリン車以上に対策をとる必要がある。
【0008】
さらに、燃料電池車の反応ガス供給ポンプは走行時に高回転となることが多く、その際、基本次数音の周波数帯域がガソリン車に比べ高周波まで及ぶため、燃料電池車の音抑制デバイスでは、ガソリン車のものよりも高周波側に広い周波数帯域での対応が必要となる。一方、アイドル時から初加速時においては、ガソリン車同様、基本次数音は低周波帯域となるが、燃料電池システムの要求によっては、停止状態で反応ガス供給ポンプ回転数が上昇する場合があり、停止時でもアイドル音の低周波のみではなく、中高周波への対応が必要となる。したがって、燃料電池車の音抑制デバイスにおいては、ガソリン車に比べて低周波から高周波までより広範囲な周波数帯域における音抑制性能が必要となる。
【0009】
なお、ガソリン車の吸気システムにあるスロットルバルブは、通常、燃料電池車には無いため、このバルブを音抑制に利用することは勿論できない。そのため、燃料電池車においては、より高い減衰量を有する吸気低周波音対応の音抑制デバイスが必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3580236号
【特許文献2】特開2006−87206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明は、上記問題点に鑑み、燃料電池車の反応ガス供給ポンプによる吸気の際に発生する特有の吸気音を、少ない容積の音抑制デバイスで低周波から高周波まで効率よく抑制する燃料電池車用吸気システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の燃料電池車用吸気システムは、2種類の反応ガスが供給されて発電を行う燃料電池の吸気システムにおいて、反応ガスを燃料電池に送り出す反応ガス供給ポンプと、前記反応ガス供給ポンプに接続され、反応ガスを通流させる反応ガス供給経路と、前記反応ガス供給経路に設けられ、反応ガスの供給の際に発生する音を抑制する音抑制デバイスと、反応ガス供給経路に設けられ、開度の調整可能な可変開度弁と、反応ガス供給ポンプの出力関連値に基づいて可変開度弁の開度を制御する制御部とを備えたことを特徴としている。
【0013】
このような本発明の燃料電池車用吸気システムによれば、アイドル時から初加速時においては、燃料電池用吸気システムの反応ガス供給経路に、開度調整可能な可変開度弁を設け、反応ガス供給ポンプの出力関連値に基づいて可変開度弁の開度を制御することにより、アクセル開度と関連しない反応ガス供給ポンプによる吸気音を適切に抑制することができ、ユーザーに違和感を感じさせることはない。
【0014】
また、使用環境や走行状態により供給する反応ガスの温度が低温または高温であったとしても、上記の可変開度弁の開度制御により、反応ガスの供給経路断面積を制御することで、低温時から高温時まで広範囲に変化する吸気音の音圧・周波数等を特定の範囲内に抑えることもでき、反応ガス供給ポンプによる吸気音の抑制をより効果的に行うことができる。
【0015】
ここで、本発明における反応ガス供給ポンプの出力関連値とは、ポンプ回転数、ポンプ流量、ポンプ出口流速、回転数指令値、ポンプ供給電力、燃料電池出力要求値等をいう。これらの値は、可変開度弁の開度と一定の相関関係を有するものであり、予めこれらの相関関係を算出してマップを作成しておくことにより、抑制すべき吸気音に最適な可変開度弁の開度を設定することができる。これらの相関関係によれば、上記の出力関連値が小さい場合には可変開度弁の開度も小さく、一方、上記出力関連値が大きい場合には可変開度弁の開度も大きくすることで適切に音抑制効果が得られる。
【0016】
具体的には、反応ガス供給経路に可変開度弁を設けた構成において、ポンプ流量が少ない場合には、可変開度弁の開度を小さくし、一時的に吸気ダクト径を絞ることにより、低流量時に吸気口から発生する低周波数音(篭もり音)を低減させることができる。
【0017】
本発明においては、制御部が、反応ガス供給ポンプの出力関連値とともに、反応ガス供給経路を流れる反応ガスの温度に基づいて可変開度弁の開度を制御することが好ましい。この反応ガスの温度は、反応ガス供給経路内に温度センサ等を設けることにより測定できる。このような構成によれば、上記の低周波数音の低減効果とともに、反応ガスの温度に応じて可変開度弁の開度を制御し、反応ガス供給経路断面積を変えることにより、低温時と高温時において変化する吸気音の音圧・周波数等を特定の範囲内に抑える効果も得ることができる。
【0018】
また、本発明における反応ガス供給ポンプにより送り出される反応ガスとは、主にカソード側の酸化剤ガスをさすが、ポンプを用いて供給する構成であれば、アノード側の燃料ガスをも含むものである。
【0019】
さらに、本発明における可変開度弁としては、電動または圧力により駆動されるものが用いられ、具体的には、ソレノイド式アクチュエータやダイヤフラム式アクチュエータを用いたバタフライバルブ等が挙げられる。また、本発明における音抑制デバイスとしては、レゾネータ、サイドブランチ、チャンバー等の共鳴により音を減衰するものが挙げられる。
【0020】
また、本発明の燃料電池車用吸気システムの他の態様は、2種類の反応ガスが供給されて発電を行う燃料電池の吸気システムにおいて、反応ガスを燃料電池に送り出す反応ガス供給ポンプと、前記反応ガス供給ポンプに接続され、反応ガスを通流させる反応ガス供給経路と、前記反応ガス供給経路に設けられ、反応ガスの供給の際に発生する音を抑制する音抑制デバイスと、音抑制デバイスに設けられ、開度の調整可能な可変開度弁と、反応ガス供給経路を流れる反応ガスの温度及び予め測定された音抑制デバイスの周波数特性に基づいて可変開度弁の開度を制御する制御部とを備えることを特徴としている。ここで、本発明における予め測定された音抑制デバイスの周波数特性としては、例えばレゾネータの共振周波数特性が挙げられる。
【0021】
このような構成の本発明の燃料電池車用吸気システムによれば、燃料電池用吸気システムの音抑制デバイスに、開度調整可能な可変開度弁を設け、反応ガス供給経路を流れる反応ガスの温度及び予め測定された音抑制デバイスの周波数特性に基づいて可変開度弁の開度を制御することにより、温度変化に応じて変化する音抑制デバイスの周波数特性に対しても、対応周波数を良好に追従させ、音抑制デバイスの容積を大きくすることなく、反応ガス供給ポンプによる吸気音を有効に抑制することができる。すなわち、本発明によれば、音抑制デバイスを小型化することが可能となる。
【0022】
この態様の具体的な構成としては、音抑制デバイスに可変開度弁が設けられ、反応ガス供給経路を流れる反応ガスの温度及び予め測定された音抑制デバイスの周波数特性に基づいて、可変開度弁の開度を制御することにより、温度変化に応じて変化する音抑制デバイス周波数に対し、対応周波数を追従させ、少ない音抑制デバイス容積で反応ガス供給ポンプによる吸気音を有効に抑制することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の燃料電池車用吸気システムによれば、燃料電池車の反応ガス供給ポンプによる吸気の際に発生する特有の吸気音を、少ない容積の音抑制デバイスで低周波から高周波まで効率よく抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の燃料電池用吸気システムのツイン流路型の一実施形態を示した系統図である。
【図2】本発明の燃料電池用吸気システムのシングル流路型の一実施形態を示した系統図である。
【図3】本発明の燃料電池用吸気システムの音抑制デバイス可変型の一実施形態を示した系統図である。
【図4】本発明の燃料電池用吸気システムのシングル流路型の一実施形態を示した系統図である。
【図5】本発明の燃料電池用吸気システムのシングル流路型の一実施形態を示した系統図である。
【図6】本発明の燃料電池用吸気システムの音抑制デバイス可変型の一実施形態を示した系統図である。
【図7】本発明の燃料電池用吸気システムの音抑制デバイス可変型の一実施形態を示した系統図である。
【図8】本発明の燃料電池用吸気システムの音抑制デバイス可変型の一実施形態を示した系統図である。
【図9】本発明の燃料電池用吸気システムの音抑制デバイス可変型の一実施形態を示した系統図である。
【図10】本発明の燃料電池用吸気システムの音抑制デバイス可変型の一実施形態を示した系統図である。
【図11】本発明の燃料電池用吸気システムの音抑制デバイス可変型の一実施形態を示した系統図である。
【図12】本発明の燃料電池用吸気システムにおける吸気音の音抑制処理の手順を示すフロチャートである。
【図13】本発明の燃料電池用吸気システムにおける吸気音の音抑制処理の手順を示すフロチャートである。
【図14】本発明の燃料電池用吸気システムにおける吸気音の音抑制処理の手順を示すフロチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を用いて本発明の燃料電池用吸気システムの実施形態について具体的に説明する。図1は本発明の燃料電池用吸気システムのツイン流路型の一実施形態を示した系統図であり、図2はシングル流路型の一実施形態を示した系統図である。図中の符号1はエアポンプ(反応ガス供給ポンプ)、2はエア供給配管(反応ガス供給経路)、3はエアクリーナー、4は可変開度弁、5はレゾネータ(音抑制デバイス)である。図1においては、エアポンプ1にはエア供給配管2が接続され、エア供給配管2にはエアクリーナー3が介装されている。そして、エアクリーナー3の上流側のエア供給配管2は2本に分岐されている。これらのエア供給配管2の一方には可変開度弁4が配置され、もう一方のエア供給配管2にはレゾネータ5が介装されている。また、図2においては、エアポンプ1にはエア供給配管2が接続され、エア供給配管2にはエアクリーナー3が介装されている。そして、エアクリーナー3の上流側のエア供給配管2には可変開度弁4が配置され、さらに上流側にレゾネータ5が介装されている。
【0026】
これらの構成においては、エアポンプ1により図面右側から左側へエアが送り出される。この際、レゾネータ5により、吸気音の音圧を低減させるとともに、エアポンプ1の流量(例えば、図中エア供給配管2のエアポンプ1近傍に流量センサを設けて測定された流量)に基づいて可変開度弁4の開度を制御し、エア供給配管径を絞ることにより、低流量時に吸気口から発生する低周波数音(篭もり音)を抑制する。
【0027】
図3は本発明の燃料電池用吸気システムの音抑制デバイス可変型の一実施形態を示した系統図である。図3においては、エアポンプ1にはエア供給配管2が接続され、エア供給配管2にはエアクリーナー3が介装されている。そして、エアクリーナー3の上流側のエア供給配管2にはレゾネータ5が介装され、このレゾネータ5内のエア供給配管2との連結部に可変開度弁4が配置されている。この構成においても、エアポンプ1により図面右側から左側へエアが送り出される。この際、エア供給配管2を流れるエアの温度(例えば、図中エア供給配管2のAIR取入口の近傍に温度センサを設けて測定された温度)及び予め測定されたレゾネータ5の共鳴周波数に基づいて可変開度弁4の開度を制御することにより、対応周波数を良好に追従させ、吸気音の音圧を低減させる。
【0028】
図4は本発明の燃料電池用吸気システムのツイン流路型の一実施形態を示した系統図であり、図5はシングル流路型の一実施形態を示した系統図である。図4においては、エアポンプ1には2本のエア供給配管2が接続され、エア供給配管2にはエアクリーナー3が介装されている。そして、エアクリーナー3の上流側のエア供給配管2は1本に統合されている。エアクリーナー3の下流側のエア供給配管2の一方には可変開度弁4が配置され、エアクリーナー3の上流側のエア供給配管2にはレゾネータ5が介装されている。また、図5においては、エアポンプ1にはエア供給配管2が接続され、エア供給配管2にはエアクリーナー3が介装されている。そして、エアクリーナー3の下流側のエア供給配管2には可変開度弁4が配置され、エアクリーナー3の上流側にレゾネータ5が介装されている。
【0029】
これらの構成においても、エアポンプ1により図面右側から左側へエアが送り出される。この際、レゾネータ5により、吸気音の音圧を低減させるとともに、エアポンプ1の流量に基づいて可変開度弁4の開度を制御し、エア供給配管径を絞ることにより、低流量時に吸気口から発生する低周波数音(篭もり音)を抑制する。
【0030】
図6は本発明の燃料電池用吸気システムの音抑制デバイス可変型の一実施形態を示した系統図である。図6においては、エアポンプ1にはエア供給配管2が接続され、エア供給配管2にはエアクリーナー3が介装されている。そして、エアクリーナー3の下流側のエア供給配管2にはレゾネータ5が介装され、このレゾネータ5内のエア供給配管2との連結部に可変開度弁4が配置されている。この構成においても、エアポンプ1により図面右側から左側へエアが送り出される。この際、エア供給配管2を流れるエアの温度及び予め測定されたレゾネータ5の共鳴周波数に基づいて可変開度弁4の開度を制御することにより、対応周波数を良好に追従させ、吸気音の音圧を低減させる。
【0031】
図7〜9はそれぞれ本発明の燃料電池用吸気システムの音抑制デバイス可変型の一実施形態を示した系統図である。図7においては、エアポンプ1にはエア供給配管2が接続され、エア供給配管2にはエアクリーナー3が介装されている。そして、エアクリーナー3の上流側のエア供給配管2の側面からエアクリーナー3の側面にかけてレゾネータ5が介装され、このレゾネータ5内のエア供給配管2との連結部に可変開度弁4が配置されている。また、図8においては、エアポンプ1にはエア供給配管2が接続され、エア供給配管2にはエアクリーナー3が介装されている。そして、エアクリーナー3の上流側のエア供給配管2の側面からエア供給配管2と並列にレゾネータ5が介装され、このレゾネータ5内のエア供給配管2との上流側の連結部に可変開度弁4が配置されている。さらに、図9においては、エアポンプ1にはエア供給配管2が接続され、エア供給配管2にはエアクリーナー3が介装されている。そして、エアクリーナー3の側面からエアクリーナー3と並列にレゾネータ5が介装され、このレゾネータ5内のエアクリーナー3との上流側の連結部に可変開度弁4が配置されている。
【0032】
これらの構成においても、エアポンプ1により図面右側から左側へエアが送り出される。この際、エア供給配管2を流れるエアの温度及び予め測定されたレゾネータ5の共鳴周波数に基づいて可変開度弁4の開度を制御することにより、対応周波数を良好に追従させるとともに、レゾネータ5を干渉路とすることにより、吸気音の音圧を低減させる。なお、図7〜9に示した実施形態は、エアクリーナー3の上流側にレゾネータ5を設けた構成であるが、レゾネータ5をエアクリーナー3の下流側に設けた構成であっても同様な効果を得ることができる。これらのようなレゾネータ5が干渉路としても作用する構成では、特に低中周波数帯域において高い減衰量が得られる。
【0033】
図10及び11はそれぞれ本発明の燃料電池用吸気システムの音抑制デバイス可変型の一実施形態を示した系統図である。図10においては、エアポンプ1にはエア供給配管2が接続され、エア供給配管2にはエアクリーナー3が介装されている。そして、エアクリーナー3の上流側のエア供給配管2の側面からエアクリーナー3の側面にかけてサイドブランチ6が介装され、このサイドブランチ6内のエア供給配管2との連結部に可変開度弁4が配置されている。また、図11においては、エアポンプ1にはエア供給配管2が接続され、エア供給配管2にはエアクリーナー3が介装されている。そして、エアクリーナー3の上流側のエア供給配管2には可変開度弁4が配置され、さらに上流側にチャンバー7が介装されている。
【0034】
これらの構成においても、エアポンプ1により図面右側から左側へエアが送り出される。この際、図10の構成においては、エアポンプ1の流量に基づいて可変開度弁4の開度を制御し、サイドブランチ6の径を絞ることにより、低流量時に吸気口から発生する低周波数音(篭もり音)を抑制するとともに、サイドブランチ6を干渉路とすることにより、吸気音の音圧を低減させる。また、図11の構成においては、チャンバー7により、吸気音の音圧を低減させるとともに、エアポンプ1の流量に基づいて可変開度弁4の開度を制御し、チャンバー7の径を絞ることにより、低流量時に吸気口から発生する低周波数音(篭もり音)を抑制する。
【0035】
次に、本発明の燃料電池用吸気システムにおける吸気音の音抑制処理の手順について説明する。図12(a)は、本発明の燃料電池用吸気システムのエア供給配管に可変開度弁を設け、エアポンプの出力関連値に基づいた制御部によって可変開度弁の開度を制御する構成における吸気音の音抑制処理の手順を示すフロチャートである。また、図12(b)は、予め測定されたポンプの回転数(エアポンプ1の出力関連値のひとつ)、エアの温度及び可変開度弁の開度の相関を示したマップである。図示したように、エアポンプの回転数が大きいときは可変開度弁の開度を大きく、回転数が小さいときは可変開度弁の開度を小さくする傾向を備えている。なお、このマップは図示していない記憶装置に記憶されており、検出値から可変開度弁の開度を参照することができる。
【0036】
まず、ステップS1−1において、エアポンプの回転数及びエアの温度を検出する。次いで、ステップS1−2において、図12(b)に示したマップに基づき、検出されたポンプの回転数及びエアの温度から設定すべき可変開度弁の開度を参照して決定する。そして、ステップS1−3において、決定した可変開度弁の開度を信号として制御部に出力し、可変開度弁の開度を変更し、吸気音の抑制を実行する。
【0037】
その後、ステップS1−4において、エアポンプの動作状態を確認し、停止していれば音抑制処理を終了し、動作していればステップS1−1へ移行し、音抑制処理を継続する。このようにすれば、温度を検出しつつ、ポンプの回転数が大きいときは可変開度弁の開度を大きくし、ポンプの回転数が小さいときには可変開度弁の開度を小さくすることで、適切に音を抑制することができる。
【0038】
また、図13(a)は、本発明の燃料電池用吸気システムの音抑制デバイスに可変開度弁を設け、エア供給配管を流れるエアの温度及び予め測定された音抑制デバイスの周波数特性に基づいた制御部によって可変開度弁の開度を制御する構成における吸気音の音抑制処理の手順を示すフロチャートである。また、図13(b)は、20℃において予め測定されたポンプの回転数と可変開度弁の開度との相関を示したマップである。さらに、図13(c)は、予め測定されたエアの温度と可変開度弁の開度の補正値との相関を示したマップである。なお、これらのマップは図示していない記憶装置に記憶されており、検出値から可変開度弁の開度を参照することができる。
【0039】
この構成においては、まず、ステップS2−1において、エアポンプの回転数を検出する。次いで、ステップS2−2において、図13(b)に示したマップに基づき、検出されたポンプの回転数から設定すべき可変開度弁の開度を参照して決定する。そして、ステップS2−3において、決定した可変開度弁の開度を信号として制御部に出力し、可変開度弁の開度を変更し、吸気音の抑制を実行する。ここで、本実施形態においては、上記のエアポンプの回転数に代えて、エアポンプの周波数を用いることもできる。
【0040】
このように音抑制処理を実行した後のエア供給配管内の音圧を音センサ等により検出する(ステップS2−4)。そして、検出された音圧の値が設定された音抑制後の値と比較し(ステップS2−5)、検出値が設定値よりも小さくなっていればステップS2−6へ移行し、エアポンプの動作状態を確認し、停止していれば音抑制処理を終了し、動作していればステップS2−1へ移行し、音抑制処理を継続する。一方、検出値が設定値よりも大きい場合にはステップS2−7へ移行し、エアの温度を検出する。次いで、ステップS2−8において、図13(c)に示したマップを参照して、検出されたエアの温度から設定すべき可変開度弁の開度を補正した後、ステップS2−2へ移行し、可変開度弁の開度を変更し、音抑制処理を継続する。
【0041】
さらに、より細やかな音抑制制御を行いたい場合には、図14(a)に示すように、図12(a)の各ステップにステップS3−5〜S3−7を加えた吸気音の音抑制処理の手順としても好適である。すなわち、ステップS3−3にて吸気音の抑制を実行した後、エア供給配管内の音圧を音センサ等により検出する(ステップS3−4)。そして、検出された音圧の値が設定された音抑制後の値と比較し(ステップS3−5)、検出値が設定値よりも小さくなっていればステップS3−6へ移行する。ステップS3−6において、エアポンプの動作状態を確認し、停止していれば音抑制処理を終了し、動作していればステップS3−1へ移行し、音抑制処理を継続する。一方、検出値が設定値よりも大きい場合にはステップS3−7へ移行し、図14(b)に示したポンプの回転数と可変開度弁の開度との相関関係における温度ラインを一段上のものとみなした後、ステップS3−2へ移行し、可変開度弁の開度を変更し、音抑制処理を継続する。
【0042】
なお、図14(a)は、本発明の燃料電池用吸気システムのエア供給配管に可変開度弁を設け、エアポンプの出力関連値に基づいた制御部によって可変開度弁の開度を制御する構成における吸気音の音抑制処理の手順を示すフロチャートである。また、図14(b)は、予め測定されたポンプの回転数(エアポンプ1の出力関連値のひとつ)、エアの温度及び可変開度弁の開度の相関を示したマップである。なお、図示したように、エアポンプの回転数が大きいときは可変開度弁の開度を大きく、回転数が小さいときは可変開度弁の開度を小さくする傾向を備えている。また、このマップは図示していない記憶装置に記憶されており、検出値から可変開度弁の開度を参照することができる。
【符号の説明】
【0043】
1…エアポンプ、2…エア供給配管、3…エアクリーナー、4…可変開度弁、
5…レゾネータ、6…サイドブランチ、7…チャンバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種類の反応ガスが供給されて発電を行う燃料電池の吸気システムにおいて、
反応ガスを燃料電池に送り出す反応ガス供給ポンプと、
前記反応ガス供給ポンプに接続され、反応ガスを通流させる反応ガス供給経路と、
前記反応ガス供給経路に設けられ、反応ガスの供給の際に発生する音を抑制する音抑制デバイスと、
反応ガス供給経路に設けられ、開度の調整可能な可変開度弁と、
反応ガス供給ポンプの出力関連値に基づいて可変開度弁の開度を制御する制御部とを備えたことを特徴とする燃料電池車用吸気システム。
【請求項2】
前記制御部は、反応ガス供給ポンプの出力関連値とともに、反応ガス供給経路を流れる反応ガスの温度に基づいて可変開度弁の開度を制御することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池車用吸気システム。
【請求項3】
前記可変開度弁の開度は、前記出力関連値が小さい場合には小さくし、前記出力関連値が大きい場合には大きくすることを特徴とする請求項1または2に記載の燃料電池車用吸気システム。
【請求項4】
2種類の反応ガスが供給されて発電を行う燃料電池の吸気システムにおいて、
反応ガスを燃料電池に送り出す反応ガス供給ポンプと、
前記反応ガス供給ポンプに接続され、反応ガスを通流させる反応ガス供給経路と、
前記反応ガス供給経路に設けられ、反応ガスの供給の際に発生する音を抑制する音抑制デバイスと、
音抑制デバイスに設けられ、開度の調整可能な可変開度弁と、
反応ガス供給経路を流れる反応ガスの温度及び予め測定された音抑制デバイスの周波数特性に基づいて可変開度弁の開度を制御する制御部とを備えることを特徴とする燃料電池車用吸気システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−78176(P2011−78176A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−225194(P2009−225194)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】