説明

燃料電池電源システム及びその運転方法

【課題】簡略な方法で燃料電池電源システムの発電部分における必要以上の発熱を抑制し、安定な発電を実現すること。
【解決手段】燃料電池スタックと、所定の燃料濃度の燃料溶液を貯蔵する燃料タンクと、その燃料タンクから前記燃料電池スタックに前記燃料溶液を供給する燃料供給ポンプと、前記燃料電池スタックに空気を供給する空気供給手段と、前記燃料電池スタックの温度を検出する温度検出素子及び前記燃料電池スタックの出力電圧を検出する電圧検出素子の少なくとも1つと、検出した温度及び/又は電圧から燃料溶液の燃料濃度を求める手段と、求めた燃料濃度を参照して前記燃料ポンプ及び/又は前記空気供給手段を制御する制御装置を備える燃料電池電源システム。また、上記燃料電池電源システムの運転方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体燃料溶液を燃料とする燃料電池電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
次世代の電源システムとして、燃料電池が注目されている。燃料電池は、化学エネルギーを直接的に電気エネルギーに変換できることから、高効率な電源システムとして期待されている。従来においては、移動体用や定置用の燃料電池として、水素を燃料とするPEFC(固体高分子形燃料電池)を中心に、各方面でその実用化開発が進められている。
【0003】
一方、メタノールを燃料とする燃料電池であるDMFC(ダイレクトメタノール型燃料電池)は、燃料の取り扱い性の容易さから携帯機器用燃料電池として、その実用化が望まれている。また、燃料電池の性質上、従来の二次電池を用いた電源システムとは異なって充電が不要であり、発電機として分類されることから、可搬型電源としての用途が考えられる。
【0004】
DMFCは、固体高分子膜に触媒を塗布し電極部を形成した発電部分への燃料や空気の供給方式により、大きくパッシブ型とアクティブ型の2つに分類することが出来る。すなわち、パッシブ型DMFCは、発電部分であるMEA(膜電極接合体)へ燃料であるメタノール、及び酸素を含む空気をそれぞれ燃料供給ポンプや空気供給ファンなどの補機を使用しないで、自然拡散などの方法で供給するものである。ポンプやファンなどの補機を使用しないことから、燃料電池電源システムの小型軽量化が可能となり、携帯機器用電源として開発が進められている。
【0005】
一方、アクティブ型DMFCは、ポンプやファンなどの補機を使用してMEAに強制的に燃料及び空気を供給するものである。燃料及び空気を強制的に供給することにより、MEAでの燃料や空気の拡散供給を促進することが出来るため、また、電池反応によって発生する二酸化炭素や反応生成水をMEA外部に排出可能であることにより、高電流領域まで安定的に発電を実現することが出来る。これらのことから、電源システムとして機器構成は複雑になるものの高出力の燃料電池電源システムが実現できる。
【0006】
このようなアクティブ型DMFCに関わる従来技術として、直接メタノール燃料電池システム(YFC−100)の電池特性(非特許文献1)に詳細に示されている。この従来技術においては、燃料であるメタノール水溶液の濃度を検出し、発電部分であるMEAへ供給するメタノール濃度を調整する。これにより、燃料電池電源システムの発電部分における不必要な発熱を抑制し、安定な発電を実現している。
【0007】
直接型メタノール燃料電池において、燃料電池スタックの温度や出力電圧を測定することは、通常行われていることである。例えば、特許文献1では、燃料電池の起動にあたり、起電部における電圧を測定し、それが所定電圧以上に上昇したとき、メタノール及び空気を起電部の出力を利用して行うことが開示されている。
【0008】
又、特許文献2では、電池温度を検出して、その温度が所定の温度異常に上昇したとき、メタノール及び空気の流量制御を起電部の出力を利用して行うことが開示されている。
【0009】
更に、特許文献3においては、燃料電池の温度を測定し、その温度が閾値以下である場合には、燃料取込・放出部材から燃料を供給する。温度が閾値を超えた場合には、燃料濃度検出手段によって検出された濃度に基づいて、燃料溶液の濃度を調節することが開示されている。
【0010】
これらの文献においては温度又は電圧を測定するがそれを液体燃料の濃度として変換するのではなく、燃料濃度は別途設けた電気化学的センサによって検出している。この電気化学的センサは一般にまだ高価であるため、電源システムも高価となることが懸念される。
【0011】
【特許文献1】特開2003−331890号公報
【特許文献2】特開2003−282108号公報
【特許文献3】特開2007−214048号公報
【非特許文献1】(P12−P16、YUASA−JIHO NO.95 OCTOBER 2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
可搬型燃料電池電源システムにおいて、燃料であるメタノール水溶液の濃度を検出し、発電部分であるMEAへ供給するメタノール濃度を調整する。これにより、燃料電池電源システムの発電部分における発熱を抑制し、安定な発電を実現している。一般に、このメタノール水溶液の濃度検出計は高価なため、簡略な方法で燃料電池電源システムの発電部分における必要以上の発熱を抑制し、安定な発電を実現する方法が望まれる。
【0013】
従来技術として示したアクティブ型DMFCは、可搬型燃料電池電源システムとして有用である。燃料電池電源システムは、外部及び内部燃料タンク、スタック、燃料供給ポンプ、空気供給ファンから構成される。このような電源システム構成において、スタックに対して強制的に燃料及び空気を供給して発電するものである。
【0014】
更に、この従来技術の燃料電池電源システムでは、水回収用冷却ラジエータ、水供給ポンプ、及び水回収タンクを有している。すなわち、スタックに使用する電解質膜の性質によっては、電解質膜を燃料極から空気極へ移動する水素原子(プロトン)に随伴する水が空気極に多量に発生する。また、電解質膜を移動した水素原子と空気中の酸素が電池反応して空気極で水を生成する。これらの随伴水や生成水を含むスタック排気側の空気を水回収用冷却ラジエータで冷却し、水回収タンクで回収する。回収した水は、必要に応じて水供給ポンプで再び内部の燃料タンクへ戻すものである。
【0015】
電源システムとして安定的に発電するために、燃料タンクのオーバフローや燃料不足を検出する液位検出器、スタックの異常高温を検出する温度検出器、及びスタックヘ供給する燃料の濃度を適正化するための燃料濃度検出器を有している。
【0016】
DMFCは燃料にメタノールを用いることから、スタックの電解質膜ではメタノールクロスオーバ(電解質膜透過メタノール)が発生する。メタノールクロスオーバは、空気極で触媒により酸化されるがその時に熱を発生する。このメタノールクロスオーバによる過度な発熱は、スタックの電解質膜に損傷を与える可能性がある。また、同時に電源システムの機器表面温度を過度に上昇させることになる。従って、メタノール濃度計によりスタックへ供給する燃料濃度を検出して適性濃度に制御し、安定な発電を実現するとともにスタックが異常高温となることを防止する電源システム構成が必要となる。
【0017】
直接メタノール型燃料電池は、燃料であるメタノール濃度を適正に調整しないと、燃料電池スタックに使用する電解質膜のメタノールクロスオーバのために過度に発熱し、燃料電池スタックの電解質膜を熱的に損傷させてしまう恐れがある。従って、燃料電池スタックの温度を燃料電池発電システムの定常運転中においても、電解質膜の温度制限以内に押さえる必要がある。
【0018】
メタノール濃度を検出するメタノール濃度計には、メタノール水溶液中の音波の伝播時間を測定する方法、メタノール水溶液の屈折率変化を測定する方法、などがある。また、燃料電池スタックを構成しているセルの開回路電圧変化を測定する方法もある。いずれも、メタノール水溶液温度が測定精度に大きく影響を与えるため、メタノール濃度の測定にはメタノール水溶液温度を同時に測定して温度補償する必要がある。これらのメタノール濃度計は、低濃度領域での測定精度の確保や連続的な燃料濃度の測定に技術的な課題がある。さらに、メタノール水溶液中に置かれた共振器の共振周波数変化を検出する方法もある。この共振周波数変化を検出するメタノール濃度計は、微細加工を必要とするため、他の検出方法に比較して検出感度が高いが、高価であるという問題がある。
【0019】
従って、スタック温度の影響を比較的受けることなく、電源システムの運用方法を簡素化するためには、連続的なメタノール濃度を測定することを必要としない、あるいは簡易的なメタノール濃度検出方法及び低価格のメタノール濃度計測手段を用いた燃料電池電源システムの提供が望まれる。
【0020】
本発明の目的は、簡略な方法で燃料電池電源システムの発電部分における必要以上の発熱を抑制し、安定な発電を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、燃料電池スタックと、所定の燃料濃度の燃料溶液を貯蔵する燃料タンクと、その燃料タンクから前記燃料電池スタックに前記燃料溶液を供給する燃料供給ポンプと、前記燃料電池スタックに空気を供給する空気供給手段と、前記燃料電池スタックの温度を検出する温度検出素子及び前記燃料電池スタックの出力電圧を検出する電圧検出素子の少なくとも1つと、検出した温度及び/又は電圧から燃料溶液の燃料濃度を求める手段と、求めた燃料濃度を参照して前記燃料タンクから前記燃料電池スタックへの燃料溶液の供給を制御する制御装置を備えることを特徴とする燃料電池電源システムを提供するものである。
【0022】
燃料電池スタックとは、電解質膜、アノード、カソード、集電体及びセパレータを基本要素とする電池ユニットを必要数積層したものである。積層は電池ユニットを直列又は直列意図並列の組み合わせにより、必要な電圧と容量を得ることができる。
【0023】
所定の燃料濃度とは、予めその燃料電池の出力と負荷との関係で求めた燃料濃度(メタノール直接発電の場合はメタノール水溶液濃度)である。空気供給手段としてはファンが適している。燃料電池スタックの温度は、燃料電池スタックの中間部温度、燃料電池スタックの出口などの温度或いはそれらと燃料電池スタックの入り口温度の組み合わせでも良い。特に燃料電池中間部の温度を検出することは、燃料電池スタックの外的な要因に影響されることが少ないため、有効である。
【0024】
出力電圧は、燃料濃度に対し、通常使用される燃料濃度範囲では、温度変化に対応する燃料濃度ほど大きく変化しない。従って、出力電圧は、燃料濃度の検出に単独で用いるよりも、燃料電池スタックの検出温度との組み合わせによって、燃料濃度を正確に把握するために使用されるのが好ましい。もちろん、出力電圧の変化を正確に検出しその変化に対応して燃料濃度を検出することができれば、出力電圧単独で濃度検出に用いることもできる。
【0025】
本発明は、燃料電池スタックの温度及び/又は出力電圧と燃料溶液濃度が比較的直線的な比例、反比例関係にあることを見出し、それを燃料溶液の燃料濃度の測定に利用したものである。従って、従来の燃料濃度センサなどの特別に高価な装置ではなく、温度計及び電圧計の機能を有する素子によって燃料濃度を知ることができるので、簡単かつ安価な燃料電池電源システムを構築することができる。
【0026】
上記において、求めた燃料濃度及び/又は出力電圧を参照するとは、燃料濃度及び/又は出力電圧に基づいて燃料溶液濃度を演算しても良いし、他のパラメータをも考慮して燃料溶液濃度を求めても良いということである。
【0027】
燃料溶液濃度と燃料電池スタックの温度/又は出力電圧との関係は、設計された燃料電池スタック固有の特性であるので、当該燃料電池スタックの予め温度−濃度及び/又は電圧−濃度の関係を求めておくのが好ましい。この場合、燃料電池スタックの設置される環境、運転状況なども考慮し、できる限り実際の運転状況に近い状況でスタックの温度や出力電圧を求めることが望まれる。
【0028】
燃料電池スタックの温度と出力電圧の両者を用いて液体燃料溶液の濃度を求め、両者と燃料溶液濃度の関連付けを予め明確にしておけば、より正確な液体燃料濃度を求めることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、燃料電池の運転に際して、燃料溶液の濃度を調整する必要が無く、簡単な燃料電池電源システムを提供することができる。また、高価な各種センサ等を使用する必要がなくなるので、燃料電池電源システムのコストを低減することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明の実施の形態を列挙すれば以下のとおりである。なお、以下の形態はあくまでも例示であって、本発明の実施形態がこれに限定されるものではない。
【0031】
(1)燃料電池スタックと、所定の燃料濃度の燃料溶液を貯蔵する燃料タンクと、前記所定の燃料溶液よりも高濃度の燃料を貯蔵する高濃度燃料タンクと、前記高濃度の燃料と前記所定の燃料溶液又は希釈液とを混合して、前記所定の濃度の燃料溶液を調整・貯蔵する混合タンクと、前記高濃度燃料を前記混合タンクに供給する高濃度燃料供給ポンプと、前記低濃度の燃料溶液及び/又は希釈液を前記混合タンクに供給する希釈液供給手段と、前記混合タンクから前記燃料電池スタックに前記所定の濃度の燃料溶液を供給する燃料供給ポンプと、前記燃料電池スタックに空気を供給する空気供給手段と、前記燃料電池スタックの温度を検出する温度検出素子及び/又は前記燃料電池スタックの出力電圧を検出する電圧検出素子の少なくとも1つと、検出した温度及び/又は電圧から燃料溶液の燃料濃度を求める手段と、求めた燃料濃度を参照して前記燃料供給ポンプ、前記高濃度燃料供給ポンプ及び/又は前記希釈液供給手段を制御する制御装置を備える燃料電池電源システム。
【0032】
上記において、希釈液とはネンリョウ溶液がメタノール水溶液の場合は、水である。その他、用いる燃料によって、その燃料の溶媒がこれに該当する。希釈液は、燃料電池で生成する水の場合は、これを混合タンクに供給する系統をとれば、特に希釈液のためのタンクを設置しなくとも良い。上記において、高濃度燃料とは燃料そのもの及びある程度希釈した燃料溶液を含む意味である。
【0033】
(2)燃料電池スタックと、所定の燃料濃度の燃料溶液を貯蔵する混合タンクと、前記所定の燃料溶液よりも高濃度の燃料を貯蔵する高濃度燃料タンクと、前記所定の濃度よりも低濃度の燃料溶液又は希釈液を貯蔵する希釈液タンクと、前記所定の燃料濃度の燃料溶液を前記燃料電池スタックに供給する燃料溶液ポンプと、前記低濃度の燃料溶液及び/又は希釈液を前記混合タンクに供給する希釈液ポンプと、前記高濃度燃料を前記混合タンクに供給する高濃度燃料供給ポンプと、前記燃料電池スタックに空気を供給する空気供給手段と、前記燃料電池スタックの温度を検出する温度検出素子及び/又は前記燃料電池スタックの出力電圧を検出する電圧検出素子の少なくとも1つと、検出した温度及び/又は電圧から燃料溶液の燃料濃度を求める手段と、求めた燃料濃度を参照して前記燃料供給ポンプ、前記高濃度燃料供給ポンプ、前記希釈液ポンプ及び/又は前記空気供給手段を制御する制御装置を備える燃料電池電源システム。
【0034】
上記実施形態(1)、(2)においては、燃料電池スタックに供給される燃料溶液濃度よりも高い濃度の高濃度燃料又はその溶液を蓄える高濃度燃料溶液タンクを設置し、その高濃度燃料溶液タンクから前記混合タンクに高濃度燃料溶液又は低濃度燃料溶液を供給する。又、必要に応じて希釈液をも供給して、所定の濃度の燃料溶液を調整する。なお、混合タンク及び燃料タンクは所定の濃度の燃料溶液を貯蔵すると移転で機能は同じであり、本明細書では同じ意味で用いている。
【0035】
(3)前記燃料電池で使用された燃料溶液を前記燃料タンクに戻す配管を備える前記燃料電池電源システム。このシステムによれば、燃料を無駄にすることなく又環境に対する負荷を少なくするために、燃料電池スタックを通過した燃料溶液を、燃料タンク又は混合タンクに戻す。
【0036】
(4)料電池電源システムは前記燃料電池スタックの温度検出器と、その温度信号によって前記空気供給手段による供給空気流量を変えるための空気供給量調節器を設けた前記燃料電池電源システム。燃料スタックの温度検出法としては、燃料電池スタックの中間部内部における温度を検出することがもっとも好ましい。スタックの入り口及び出口は外部の影響及び放熱のために、必ずしも正確な燃料電池スタックの温度を検出することに繋がらない。もっとも、上記の諸々の影響要因も含めて、予め当該燃料電池スタックの使用環境下における温度と燃料濃度との関係を求めておくならば、スタックの入り口や出口温度でも使用することができる子とは言うまでもない。
【0037】
(5)燃料タンク又は混合タンク内の液位を検出する手段を有する前記燃料電池電源システム。燃料タンク又は混合タンク内の燃料溶液の残量を計測し、その信号をシステムの制御に利用する。もし、燃料溶液を使い切り型にする場合には、前記液位が所定の値に達したならば、燃料電池の運転を停止し、新しく濃度を調整した燃料溶液を燃料タンクに収容し、或いは新たに所定濃度の燃料溶液を含む燃料タンクと交換する。
【0038】
(6)燃料電池スタックの温度検出器と、その温度信号によって前記空気供給ポンプにより供給空気流量を変えるための空気供給量調節器と、前記燃料電池スタックの電圧検出器と、その電圧信号によって前記空気供給手段例えばファンにより高濃度燃料供給ポンプの起動スイッチを操作する手段を設けた前記燃料電池電源システム。
【0039】
(7)燃料電池スタックの温度検出器からの温度信号及び/又は前記燃料電池スタックの電圧検出器からの電圧信号によって前記高濃度燃料供給ポンプの起動スイッチを操作する構成とした前記燃料電池電源システム。
【0040】
燃料電池スタックの出力電圧と液体燃料溶液に濃度との相関関係も図4に示すとおりである。出力電圧と燃料溶液濃度の相関関係も、燃料電池の定常運転時の濃度範囲では図4に示すようなやや反比例の関係を有する。従って、出力電圧も燃料溶液の濃度検出に利用することができる。また、燃料電池スタック温度と出力電圧を組み合わせて燃料溶液の濃度検出に用いることもできる。
【0041】
(8)前記高濃度燃料溶液タンクから高濃度燃料及び前記所定の濃度よりも低濃度の燃料溶液又は希釈液を前記燃料タンクへ供給して、前記燃料タンクにおいて前記高濃度燃料と低濃度燃料及び/又は前記希釈液を混合する前記燃料電池電源システム。
【0042】
(9)燃料電池スタックと、所定の負荷を所定の時間駆動するのに必要な燃料量を含む所定の燃料濃度の燃料溶液を貯蔵する燃料タンクと、その燃料タンクから前記燃料電池スタックに燃料を供給する燃料供給ポンプと、前記燃料電池スタックに空気を供給する空気供給ファンと、前記燃料タンク内の燃料溶液の液位を検出する手段と、前記燃料電池スタックの温度及び電圧の少なくとも1つを検出する手段と、前記燃料電池スタックで使用した燃料溶液を前記燃料容器に戻す配管と、前記検出温度及び/又は検出電圧に基づいて前記燃料供給ポンプと前記空気供給ポンプを制御する制御装置と、前記燃料タンク内の燃料溶液の残量が所定のレベル以下のとき前記燃料電池スタックを停止する信号を発生する手段とを備える燃料電池電源システム。
【0043】
(10)燃料電池スタックと、燃料電池スタックで使用する燃料溶液よりも高濃度の燃料溶液を貯蔵する高濃度燃料タンクと、所定の負荷を所定の時間駆動するのに必要な燃料量を含む所定の燃料濃度の燃料溶液を貯蔵する燃料タンクと、前記所定の濃度の燃料溶液を調整するための混合タンクと、前記高濃度燃料タンクから高濃度燃料及び溶媒を前記混合タンクに供給する配管と、前記混合タンクから前記燃料電池スタックに燃料溶液を供給する燃料供給ポンプと、前記燃料電池スタックに空気を供給する空気供給ファンと、前記混合タンク内の燃料溶液の液位を検出する手段と、前記燃料電池スタックの温度及び電圧の少なくとも1つを検出する手段と、前記燃料電池スタックで使用した燃料溶液を前記燃料容器に戻す配管と、前記検出温度及び/又は検出電圧に基づいて前記燃料供給ポンプと前記空気供給ポンプを制御する制御装置と、前記燃料タンク内の燃料溶液の液位を検出する手段とを備える燃料電池電源システム。
【0044】
(11)燃料電池スタックと、所定の負荷を所定の時間駆動するのに必要な燃料量を含む所定の燃料濃度の燃料溶液を貯蔵する燃料タンクと、その燃料タンクから前記燃料電池スタックに燃料を供給する燃料供給ポンプと、前記燃料電池スタックに空気を供給する空気供給手段と、前記燃料電池の起動後、前記燃料電池スタックの温度を検出する温度検出素子及び/又は前記燃料電池スタックの出力電圧を検出する電圧検出素子の少なくとも1つと、検出した温度及び/又は電圧から燃料溶液の燃料濃度を求める手段と、求めた燃料濃度を参照して前記燃料タンク内の燃料溶液の残量が所定のレベル以下であると判定する手段と、前記判定手段の信号により前記燃料電池スタックを停止する手段を備える燃料電池電源システム。
【0045】
メタノールを燃料とする燃料電池電源システムにおいて、電源システムの運用方法を簡素化するために、メタノール濃度計を必要としない、あるいはメタノール濃度を検出するメタノール濃度計を簡易化した燃料電池電源システムとすることが本発明の狙いである。そのため、まず、燃料電池スタックの出口温度又はスタックの中間部温度或いは入り口温度と出口温度又は中間部温度と燃料溶液の濃度がどのような相関関係にあるのかを調べる必要がある。本発明で使用した燃料電池スタックの中間部温度と燃料溶液の濃度とは、図4に示すような関係を持つことがわかった。燃料濃度が低い領域及び高い領域においては、中間部温度との比例関係は直線的でないが、通常燃料電池が定常運転状態にあるときの濃度領域と温度との関係は比較的直線的な比例関係にあるため、燃料電池スタックの中間部温度を燃料溶液の濃度検出に使用可能であることがわかる。燃料電池の中間部温度だけでなく、出口温度も液体燃料濃度の検出に使用可能である。
【0046】
(12)燃料電池スタックと、所定の負荷を所定の時間駆動するのに必要な燃料量を含む所定の燃料濃度の燃料溶液を貯蔵する燃料タンクと、その燃料タンクから前記燃料電池スタックに燃料を供給する燃料供給ポンプと、前記燃料電池スタックに空気を供給する空気供給手段と、前記燃料電池スタックの温度を検出する温度検出素子及び/又は前記燃料電池スタックの出力電圧を検出する電圧検出素子の少なくとも1つと、検出した温度及び/又は電圧から燃料溶液の燃料濃度を求める手段及び電池電源システムを制御する制御装置を備えた燃料電池電源システム、前記燃料電池スタックに燃料及び空気を供給して、前記検出した温度及び/又は電圧から前記燃料溶液の濃度を求め、求めた燃料濃度を参照して前記燃料ポンプ及び空気供給手段を制御する燃料電池電源システムの運転方法。
【0047】
(13)前記燃料電池電源システムの起動前に、予め前記燃料タンクに所定濃度の液体燃料溶液を貯蔵する前記燃料電池電源システムの運転方法。
【0048】
(14)前記燃料電池電源システムは更に、高濃度燃料を彫像する高濃度燃料タンクと、前記所定の燃料濃度よりも低い濃度の燃料溶液及び/又は希釈液を貯蔵する希釈液タンクと、高濃度燃料を前記混合タンクに供給する高濃度燃料供給ポンプと、前記希釈液を混合タンクに供給する希釈液ポンプとを有し、前記求めた燃料濃度を参照して前記前記燃料ポンプ及び空気供給手段並びに前記高濃度燃料供給ポンプ及び前記希釈液ポンプを制御する前記燃料電池電源システムの運転方法。
【0049】
燃料である所定濃度のメタノール水溶液を燃料電池電源システムの燃料タンクに充填し、燃料タンクからは燃料供給ポンプで燃料濃度を調整することなくスタックへ燃料を供給する。スタック内部を通過後にスタックから排出されたメタノール水溶液は、再び燃料タンクへ戻すものとする。従って、燃料であるメタノール水溶液は燃料タンクとスタックとを循環する構成とする。燃料電池電源システムによる発電の進行に伴い、メタノール水溶液中のメタノール及び水は発電に使用されて減少する。その結果、燃料のメタノール濃度が減少し、連続発電限界濃度以下となった時点で燃料電池電源システムの発電は停止する。発電を継続あるいは再開するためには、燃料タンクに所定濃度のメタノール水溶液を追加充填することで実現できる。
【0050】
燃料電池電源システムの燃料電池スタックが、このようなシステム構成において許容温度を超えて上昇した場合には、燃料電池スタックヘの空気供給量を増加させて供給空気による除熱量を増やして冷却するものとする。また、燃料電池スタックヘ供給されるメタノール濃度を調節して、メタノールクロスオーバ起因の燃料電池スタックの温度上昇を抑制するものである。
【0051】
燃料電池電源システムで長時間の連続発電を実現するためには、発電初期には高濃度のメタノール水溶液を燃料タンクに充填する必要がある。このとき、スタックに使用している電解質膜の性質によっては、メタノールクロスオーバが多いことに起因したスタックの発熱が問題となる。すなわち、メタノールクロスオーバが多いと電解質膜の耐熱温度を越えてしまい、電解質膜が破損してしまう場合がある。このメタノールクロスオーバを抑制するために、ここでは炭化水素系電解質膜を適用するとより効果的である。この炭化水素系電解質膜は、従来の燃料電池電源システムで使用されているフッ素系電解質膜と比較して、メタノールクロスオーバが少ないことが特徴である。
【0052】
燃料電池電源システムの長時間連続発電運転を実現するためには、高濃度のメタノール水溶液の燃料タンクを用意し、この燃料タンクから高濃度燃料を適時混合タンクへ供給する電源システム構成とする。この混合タンクのメタノール水溶液は、前述した電源システムと同様に、スタックへ発電のために供給される。この時、高濃度メタノールの混合タンクへの供給により混合タンク内におけるメタノール濃度が上昇する。このメタノール濃度の上昇は、メタノール濃度に関するON/OFF的な動作のメタノール検出計により検出することも可能である。このメタノール濃度のON/OFF検出目的のメタノール濃度計は、検出原理が簡単であることから比較的安価である。本発明では、このON/OFF検出目的のメタノール濃度計に代わって、燃料電池スタックの温度を検出する構成としたものである。
【0053】
燃料電池電源システムにおいて、スタック温度の変化を検出して燃料電池スタックヘ供給する燃料濃度を間接的に調整するものであり、簡略な方法で燃料電池電源システムの発電部分における必要以上の発熱を抑制し、安定な発電を実現するものである。すなわち、連続的なメタノール濃度を測定することを必要としない、あるいは簡易的なメタノール濃度検出方法及び低価格のメタノール濃度計に頼ることがなく、燃料電池スタック温度の検出による運用方法によって燃料電池電源システムの安定発電が実現できる。
【0054】
本実施の形態に用いられるメタノールを燃料とする燃料電池では、以下に示す電気化学反応でメタノールの持っている化学エネルギーが直接電気エネルギーに変換される形で発電される。アノード側では供給されたメタノール水溶液が(1)式にしたがって反応して炭酸ガスと水素イオンと電子に解離する。
CHOH+HO→CO+6H+6e …(1)
生成された水素イオンは電解質膜中をアノードからカソード側に移動し、カソード電極上で空気中から拡散してきた酸素ガスと電極上の電子と(2)式に従って反応して水を生成する。
6H+3/2O+6e→3HO …(2)
従って発電に伴う全化学反応は(3)式に示すようにメタノールが酸素によって酸化されて炭酸ガスと水とを生成し、化学反応式はメタノールの火炎燃焼と同じになる。
CHOH+3/2O→CO+3HO …(3)
単位電池の開路電圧は1.2Vで燃料が電解質膜を浸透する影響で実質的には0.85〜1.0Vであり、特に限定されるものではないが実用的な負荷運転の下での電圧は0.2〜0.6V程度の領域が選ばれる。従って実際に電源として用いる場合には負荷機器の要求にしたがって所定の電圧が得られるように単位電池を直列接続して用いられる。単電池の出力電流密度は電極触媒,電極構造その他の影響で変化するが、実効的に単電池の発電部面積を選択して所定の電流が得られるように設計される。また、適宜、並列に接続することで電池容量を調整することが可能である。
【0055】
以下に本発明に係る実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。図1に本実施例にかかる燃料電池電源システムの構成を示す。燃料電池電源システムは、所定濃度のメタノール水溶液を保有する燃料タンク1から燃料供給ポンプ3によって燃料電池スタック2へ燃料であるメタノール水溶液が供給される。燃料電池スタック2で電池反応に基づいた発電に供されたメタノール水溶液は、再び燃料タンク1に戻される。従って、燃料は、燃料タンク1と燃料電池スタック2との間を循環することになり、発電時間の経過とともにメタノール水溶液のメタノール濃度は低下していく。また、燃料電池の電池反応に必要な空気は空気供給ファン4で燃料電池スタック2に供給される。燃料電池スタック2で電池反応に基づいた発電に供された空気は、図には示してはいないが大気中に放出される。
【0056】
燃料電池スタック2の電池反応で発電された電気は、主DC/DC変換回路5によって燃料電池電源システムの電気的な負荷に応じて出力調整され、逆流防止の整流器6を介して負荷に負荷端から供給される。
【0057】
燃料電池電源システムは、電気を発電する発電機であるが、発電に必要な燃料や空気を供給するための燃料供給ポンプ3や空気供給ファン4の初期起動のための電力供給は、他から受ける必要がある。2次電池(LIB)7は、この燃料電池電源システムの起動のための補助電源である。すなわち、2次電池7の電力は、整流器8,9およびスイッチ12を介して燃料電池電源システムの補機駆動用DC/DC回路10に入力される。その後、補機駆動用DC/DC回路10で電圧調整されて燃料供給ポンプ3、及び空気供給ファン4へ電力が供給される。これらの電力供給配線の途中にはスイッチ18,19が設けられている。また、制御装置16についても、2次電池7からの電力が整流器14及び制御装置用DC/DC回路15を介して供給されることになる。
【0058】
このような構成において、制御装置15に対して燃料電池電源システムの起動操作(ON操作)17が行われると、燃料供給ポンプ3及び空気供給ファン4に2次電池7より電力が供給されて起動し、燃料電池スタック2に燃料及び空気が供給される。これにより、燃料電池スタック2は電池反応が始まり発電が開始される。
【0059】
燃料電池スタック2が発電を開始すると、その電力は主DC/DC変換回路5で2次電池7への充電電圧相当に電圧変換される。燃料電池電源システムに接続されている負荷にもよるが、負荷に対して余剰に発電できておりさらに2次電池7が満充電で無い場合には、二次電池7の充電が開始される。同時に、これまで2次電池7から電力を供給されていた燃料電池電源システムの補機駆動用DC/DC回路10、及び制御装置用DC/DC回路16は、燃料電池スタック2からの電力で駆動されるようになる。スイッチ18,19は、この2次電池からの電力供給と燃料電池スタックからの電力供給を切り替える目的で設置されている。
【0060】
燃料電池スタック2は、その電池反応の中心となる電解質膜ではメタノールのクロスオーバが発生する。このメタノールクロスオーバは、スタックの燃料極から空気極へ電解質膜をメタノールが透過するものであり、透過したメタノールは空気極で酸化し発熱する。メタノールクロスオーバは、また、燃料であるメタノール水のメタノール濃度にも大きく依存するため、ある所定の濃度以上のメタノール水を燃料として用いると、クロスオーバによる発熱のために電解質膜の許容温度を超えてしまう場合がある。従い、燃料タンク1の初期のメタノール濃度には制限が発生する。本実施例の場合には、燃料であるメタノール水は循環式であるため、発電の進行に伴って燃料タンク1のメタノールは電池反応で消費され、従い、メタノール濃度も順次低下していくことになる。最終的には、燃料電池スタック2の発電限界以下のメタノール濃度となった時点で、発電の継続が出来なくなり燃料電池電源システムとしては停止する。この燃料電池電源システムを再起動するには、再び燃料タンク1に所定濃度のメタノール水を補充し、燃料電池電源システムの起動操作であるON操作17を制御装置16に対して行うことが必要である。
【0061】
本実施例における燃料電池電源システムの構成において、燃料電池スタック2の出力は以下のように制御されることになる。燃料電池電源システムの制御装置のON操作17により、発電が開始する。発電に伴う出力の増加によって、燃料電池スタック2は電気的なジュール発熱が発生するとともに、前述したメタノールクロスオーバによる発熱が発生する。これらは、燃料電池スタック2の温度を上昇させるとともに、電池反応の活性化により燃料電池出力電圧も高くなっていく。
【0062】
燃料電池スタックの温度上昇は、燃料電池スタック2に取り付けられた燃料電池スタックの出口に設けられた温度検出器20、燃料電池スタックの中間部に設けられた温度検出器20’、或いは燃料電池スタックの入り口に設けられた温度検出器20”、更には20又は20’と20”との組み合わせにより検出される。この点は図2、図3においても同様である。また、燃料電池スタック2の電圧は電圧検出器21にて検出され、それぞれ制御装置16に入力される。燃料電池スタック2の温度上昇が、予め定めた燃料電池スタック2の電解質の制限温度近くまで上昇した場合には、電解質膜の熱的保護のために燃料電池スタック2の除熱を行う。具体的には、燃料電池スタック2に空気を供給している空気供給ファン4の回転数を回転数切り替え器11にて切り替えて、空気供給ファン4をより高回転数にて駆動し、供給空気量を変えることで燃料電池スタック2が許容温度以上になることを防止する。
【0063】
図2に本発明にかかる燃料電池電源システムのその他の実施例を示す。図1と異なる点は、以下の点である。
【0064】
すなわち燃料タンクに関して、高濃度の燃料タンク22と高濃度燃料タンク22からの燃料の供給を受けて混合する混合タンク23を設けた構成である。混合タンク23への高濃度燃料の供給は、高濃度供給ポンプ24で行う。混合タンク23の燃料であるメタノール水は、燃料供給ポンプ3で燃料電池スタック2に供給され、図1と同様に、燃料電池スタック2での電池反応に供された後に混合タンク23に戻る構成である。燃料電池スタック2への空気供給は、空気供給ファン4で行う。
【0065】
このような燃料電池電源システムにおいて、混合タンク23のメタノール濃度は、予め求めておいた燃料電池スタック2の発熱が許容温度以下となるメタノール濃度を初期濃度とする。高濃度燃料供給ポンプ24は初期的には停止している。このような燃料電池電源システムの状態において、発電の進行に伴い混合タンク23のメタノール水濃度は低下し、また、燃料電池スタック2の出力電圧も低下する。この燃料電池スタック2の電圧低下を電圧検出器21にて検出し、制御装置16から高濃度燃料供給ポンプ24のスイッチ25を入れる。これにより、高濃度燃料供給ポンプ24が起動し、高濃度燃料タンク22から混合タンク23へ高濃度燃料が所定量だけ供給されることになる。それに伴い混合タンク23の燃料濃度も高くなり、その結果として燃料電池スタック2の電圧の上昇と温度上昇が観測される。特に、この燃料電池スタック2の温度上昇を温度検出器20にて検出して、制御装置16は高濃度燃料供給ポンプ24の運転を停止することになる。
【0066】
燃料電池スタック2へ供給される燃料濃度と燃料電池スタック2の温度との関係について、代表的に燃料電池スタック2の中央部セル温度を図4に示す。燃料濃度が高いとメタノールクロスオーバのために燃料電池セル温度、すなわちスタック温度が上昇することがわかる。従い、この燃料電池セル温度を温度検出器20で検出し、燃料電池スタック2の電解質膜の許容温度を超えない程度に、燃料電池スタックヘの燃料供給を行う。具体的には、高濃度燃料供給ポンプ24のON/OFF操作で高濃度タンク22から混合タンク23への高濃度燃料の供給量を調整することになる。この場合は、燃料電池スタック2ヘ供給する燃料の最大濃度を電解質膜の許容温度以下とするように制御することになる。
【0067】
また、燃料電池スタックへ供給される燃料濃度と燃料電池スタックを構成しているセル電圧との関係について、同様に図4に示す。燃料濃度が低いと燃料電池スタック2で十分な電池反応が起こらないため燃料電池セル電圧、すなわちスタック電圧2が減少することが分かる。従い、この燃料電池セル電圧を電圧検出器21で検出し、所定のセル電圧以上となるように燃料電池スタック2へ燃料供給を行う。この場合は、燃料電池スタックヘ供給する燃料の最低濃度を制御することに相当する。
【0068】
このような構成にすることで、混合タンク23の燃料濃度を検出することなく、燃料電池スタック2の許容温度以下に維持することが可能となる。
【0069】
このような構成にすることで、燃料タンク1の燃料濃度を検出することなく、燃料電池スタック2の許容温度以下に維持することが可能となる。
【0070】
このような構成にすることで、混合タンク23の燃料濃度を検出することなく、燃料電池スタック2の許容温度以下に維持することが可能となる。
【0071】
図3に本発明にかかる燃料電池電源システムのその他の実施例を示す。図2と異なる点は、以下である。すなわち燃料タンクに関して、高濃度の燃料タンク30及び低濃度タンク31からの高濃度燃料及び低濃度燃料の供給を受けて混合する混合タンク23を設けた構成である。混合タンク23への高濃度燃料及び低濃度燃料の供給は、高濃度供給ポンプ29及び低濃度供給ポンプ28で行う。混合タンク内の燃料であるメタノール水は、燃料供給ポンプ3で燃料電池スタック2に供給され、図1および図2と同様に、燃料電池スタック2での電池反応に供された後に混合タンク23に戻る構成である。燃料電池スタック2への空気供給は、空気供給ファン4で行う。
【0072】
このような燃料電池電源システムにおいて、混合タンク23のメタノール濃度は、予め求めておいた燃料電池スタック2の発熱が許容温度以下となるメタノール濃度を初期濃度とする。高濃度燃料供給ポンプ29及び低濃度燃料供給ポンプ28は停止している。このような燃料電池電源システムの状態において、発電の進行に伴い混合タンク23のメタノール水濃度は低下し、また、燃料電池スタック2の出力電圧も低下する。この燃料電池スタック2の電圧低下を電圧検出器21にて検出し、制御装置16から高濃度燃料供給ポンプ29のスイッチ27を入れる。これにより、高濃度燃料供給ポンプ29が起動し、高濃度燃料タンク30から混合タンク23へ高濃度燃料が所定量だけ供給されることになる。それに伴い混合タンク23の燃料濃度も高くなり、その結果として燃料電池スタック2の電圧の上昇と温度上昇が観測される。特に、この燃料電池スタック2の温度上昇を温度検出器20にて検出して、制御装置16は高濃度燃料供給ポンプ29の運転を停止することになる。燃料電池スタック2の温度上昇は、燃料電池電源システムの環境温度によっては想定した速度以上となることもある。このような場合には、やはり燃料電池スタック2の温度上昇を抑制するために、低濃度燃料供給ポンプ28を所定時間起動して混合タンク23のメタノール濃度を減少させることになる。
【0073】
このような構成にすることで、混合タンク23の燃料濃度を検出することなく、燃料電池スタック2の許容温度以下に維持することが可能となる。
【0074】
直接メタノール型燃料電池において、燃料電池スタックの温度を電解質膜の制限値内に抑える方法を提供する。燃料電池スタックの発熱は、電解質膜のクロスオーバ起因であるため燃料であるメタノール濃度を検出し濃度調整する方法があるが、本発明では燃料電池スタック温度を検出して空気供給量を制御し除熱量を調整する構成とした。このような構成にすることで、燃料タンクの燃料濃度を検出することなく、燃料電池スタックの許容温度以下に維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の第1の実施形態による燃料電池電源システムの線図である。
【図2】本発明の第2の実施形態による燃料電池電源システムの線図である。
【図3】本発明の第3の実施形態による燃料電池電源システムの線図である。
【図4】燃料電池スタックの中間部温度及び出力電圧とメタノール水溶液濃度と関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0076】
1…燃料タンク、2…燃料電池スタック、3…燃料供給ポンプ、4…空気供給ファン、5…主DC/DC回路、6、8、9,14…整流器、7…2次電池、10…補機駆動用DC/DC回路、11…回転数切り替え器、15…制御装置用DC/DC回路、16…制御装置、18…スイッチ、19…切り替えスイッチ、20…温度検出器、21…電圧検出器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池スタックと、所定の燃料濃度の燃料溶液を貯蔵する燃料タンクと、その燃料タンクから前記燃料電池スタックに前記燃料溶液を供給する燃料供給ポンプと、前記燃料電池スタックに空気を供給する空気供給手段と、前記燃料電池スタックの温度を検出する温度検出素子及び前記燃料電池スタックの出力電圧を検出する電圧検出素子の少なくとも1つと、検出した温度及び/又は電圧から燃料溶液の燃料濃度を求める手段と、求めた燃料濃度を参照して前記燃料ポンプ及び/又は前記空気供給手段を制御する制御装置を備えることを特徴とする燃料電池電源システム。
【請求項2】
燃料電池スタックと、所定の燃料濃度の燃料溶液を貯蔵する燃料タンクと、前記所定の燃料溶液よりも高濃度の燃料を貯蔵する高濃度燃料タンクと、前記高濃度の燃料と前記所定の燃料溶液又は希釈液とを混合して、前記所定の濃度の燃料溶液を調整・貯蔵する混合タンクと、前記高濃度燃料を前記混合タンクに供給する高濃度燃料供給ポンプと、前記低濃度の燃料溶液及び/又は希釈液を前記混合タンクに供給する希釈液供給手段と、前記混合タンクから前記燃料電池スタックに前記所定の濃度の燃料溶液を供給する燃料供給ポンプと、前記燃料電池スタックに空気を供給する空気供給手段と、前記燃料電池スタックの温度を検出する温度検出素子及び/又は前記燃料電池スタックの出力電圧を検出する電圧検出素子の少なくとも1つと、検出した温度及び/又は電圧から燃料溶液の燃料濃度を求める手段と、求めた燃料濃度を参照して前記燃料供給ポンプ、前記高濃度燃料供給ポンプ及び/又は前記希釈液供給手段を制御する制御装置を備えることを特徴とする燃料電池電源システム。
【請求項3】
燃料電池スタックと、所定の燃料濃度の燃料溶液を貯蔵する混合タンクと、前記所定の燃料溶液よりも高濃度の燃料を貯蔵する高濃度燃料タンクと、前記所定の濃度よりも低濃度の燃料溶液又は希釈液を貯蔵する希釈液タンクと、前記所定の燃料濃度の燃料溶液を前記燃料電池スタックに供給する燃料溶液ポンプと、前記低濃度の燃料溶液及び/又は希釈液を前記混合タンクに供給する希釈液ポンプと、前記高濃度燃料を前記混合タンクに供給する高濃度燃料供給ポンプと、前記燃料電池スタックに空気を供給する空気供給手段と、前記燃料電池スタックの温度を検出する温度検出素子及び/又は前記燃料電池スタックの出力電圧を検出する電圧検出素子の少なくとも1つと、検出した温度及び/又は電圧から燃料溶液の燃料濃度を求める手段と、求めた燃料濃度を参照して前記燃料供給ポンプ、前記高濃度燃料供給ポンプ、前記希釈液ポンプ及び/又は前記空気供給手段を制御する制御装置を備えることを特徴とする燃料電池電源システム。
【請求項4】
前記燃料電池で使用された燃料溶液を前記燃料タンクに戻す配管を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の燃料電池電源システム。
【請求項5】
更に、前記燃料タンクの液位を検出する手段を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の燃料電池電源システム。
【請求項6】
前記温度信号によって前記空気供給手段の供給空気流量を制御することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の燃料電池電源システム。
【請求項7】
前記燃料電池スタックの検出温度信号によって前記空気供給手段により供給空気流量を制御し、かつ前記温度信号によって高濃度燃料供給ポンプの起動スイッチを操作する手段を設けたことを特徴とする請求項2又は3に記載の燃料電池電源システム。
【請求項8】
前記燃料電池スタックの温度検出器からの温度信号及び/又は前記燃料電池スタックの電圧検出器からの電圧信号によって前記高濃度燃料供給ポンプの起動スイッチを操作する手段を有することを特徴とする請求項2又は3に記載の燃料電池電源システム。
【請求項9】
前記高濃度燃料溶液タンクから高濃度燃料及び前記所定の濃度よりも低濃度の燃料溶液又は希釈液を前記燃料タンクへ供給して、前記燃料タンクにおいて前記高濃度燃料と低濃度燃料及び/又は前記希釈液を混合することを特徴とする請求項2又は3に記載の燃料電池電源システム。
【請求項10】
燃料電池スタックと、所定の負荷を所定の時間駆動するのに必要な燃料量を含む所定の燃料濃度の燃料溶液を貯蔵する燃料タンクと、その燃料タンクから前記燃料電池スタックに燃料を供給する燃料供給ポンプと、前記燃料電池スタックに空気を供給する空気供給手段と、前記燃料タンク内の燃料溶液の液位を検出する手段と、前記燃料電池スタックの温度及び電圧の少なくとも1つを検出する手段と、前記燃料電池スタックで使用した燃料溶液を前記燃料タンクに戻す配管と、検出温度及び/又は検出電圧に基づいて前記燃料供給ポンプと前記空気供給手段を制御する制御装置と、前記燃料タンク内の燃料溶液の液位を検出する手段とを備えることを特徴とする燃料電池電源システム。
【請求項11】
燃料電池スタックと、所定の燃料濃度の燃料溶液を貯蔵する混合タンクと、前記所定の燃料溶液よりも高濃度の燃料を貯蔵する高濃度燃料タンクと、前記高濃度燃料タンクから高濃度燃料を前記混合タンクに供給するポンプと、前記混合タンクに前記所定の燃料のどよりも低濃度の燃料又は希釈液を前記混合タンクに供給するポンプと、前記混合タンクから前記燃料電池スタックに燃料溶液を供給する燃料供給ポンプと、前記燃料電池スタックに空気を供給する空気供給手段と、前記燃料電池スタックの温度及び電圧の少なくとも1つを検出する手段と、前記燃料電池スタックで使用した燃料溶液を前記燃料タンクに戻す配管と、検出温度及び/又は検出電圧に基づいて前記燃料供給ポンプと前記空気供給手段を制御する制御装置とを備えることを特徴とする燃料電池電源システム。
【請求項12】
燃料電池スタックと、所定の負荷を所定の時間駆動するのに必要な燃料量を含む所定の燃料濃度の燃料溶液を貯蔵する燃料タンクと、その燃料タンクから前記燃料電池スタックに燃料を供給する燃料供給ポンプと、前記燃料電池スタックに空気を供給する空気供給手段と、前記燃料電池スタックの温度を検出する温度検出素子及び/又は前記燃料電池スタックの出力電圧を検出する電圧検出素子の少なくとも1つと、検出した温度及び/又は電圧から燃料溶液の燃料濃度を求める手段及び電池電源システムを制御する制御装置を備えた燃料電池電源システム、前記燃料電池スタックに燃料及び空気を供給して、前記検出した温度及び/又は電圧から前記燃料溶液の濃度を求め、求めた燃料濃度を参照して前記燃料ポンプ及び空気供給手段を制御することを特徴とする燃料電池電源システムの運転方法。
【請求項13】
前記燃料電池電源システムの起動前に、予め前記燃料タンクに所定濃度の液体燃料溶液を貯蔵することを特徴とする請求項12記載の燃料電池電源システムの運転方法。
【請求項14】
前記燃料電池電源システムは更に、高濃度燃料を彫像する高濃度燃料タンクと、前記所定の燃料濃度よりも低い濃度の燃料溶液及び/又は希釈液を貯蔵する希釈液タンクと、高濃度燃料を前記混合タンクに供給する高濃度燃料供給ポンプと、前記希釈液を混合タンクに供給する希釈液ポンプとを有し、前記求めた燃料濃度を参照して前記前記燃料ポンプ及び空気供給手段並びに前記高濃度燃料供給ポンプ及び前記希釈液ポンプを制御することを特徴とする請求項12記載の燃料電池電源システムの運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−123383(P2009−123383A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−293330(P2007−293330)
【出願日】平成19年11月12日(2007.11.12)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】