説明

燃焼タービンエンジンのロータブレードで材料欠陥を検出する方法、システム及び装置

【課題】燃焼タービンエンジンのロータブレードにおいて欠陥を検出するシステムを提供すること
【解決手段】本システムは、絶縁皮膜を含むタービンロータブレードと、タービンロータブレードに電気的に接続された第1の電極と、タービンロータブレードに近接して位置する第2の電極と、第1の電極及び第2の電極の両端に電圧を誘起する手段と、第1の電極及び第2の電極間に流れる電流を検出する手段とを含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、全体的に、工業生産プロセス、エンジンなどのシステムにおいて生じる可能性がある欠陥(表面欠陥を含む)を検出する方法、システム、及び装置に関する。より具体的には、限定ではないが、本出願は、燃焼タービンエンジンの高温ガス経路に曝される、タービンロータブレードのような部品上で形成される欠陥の検出に関連する方法、システム及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
作動時には、一般に、燃焼タービンエンジンは、圧縮機により供給される加圧空気と共に燃料を燃焼させることができる。本明細書で使用する場合、特に別途記載のない限り、燃焼タービンエンジンとは、ガスタービンエンジン、航空機エンジン、その他を含む、全てのタイプのタービン又は回転燃焼エンジンを含むことを意味する。結果として得られる高温ガスの流れは、一般的には作動流体と呼ばれ、エンジンのタービンセクションを通って膨張される。作動流体とタービンセクションのロータブレードとの相互作用によって、タービンシャフトの回転が誘起される。このようにして、燃料中に含まれるエネルギーは回転シャフトの機械エネルギーに変換され、例えば、この機械エネルギーを用いて圧縮機のロータブレードを回転させて、燃焼に必要とされる供給加圧空気が生成されるようにし、また、発電機のコイルを回転させて電力が発生するようにすることができる。作動中、高温ガス経路に曝される部品は、過度の機械的及び熱的負荷によって高応力が加わることは理解されるであろう。これは、作動流体の過酷な温度及び速度、並びにタービンの回転速度に起因する。燃焼温度が高いほど熱機関の効率が高くなるので、科学技術では、これらの用途において使用される材料の限界に常に挑戦し続けている。
【0003】
過度の温度、機械的負荷、又はこれらの組み合わせの何れに起因するかによらず、部品の故障は、依然として燃焼タービンエンジンにおける大きな関心事である。故障の大部分の原因を辿ると材料疲労に端を発する場合が多く、通常は、亀裂進展の開始により事前に警報される。より具体的には、材料疲労によって生じる亀裂の形成は、部品が有効寿命の限界に達したことの1次徴候であり、故障に陥ろうとしている可能性が高い。これは、タービンロータブレードなどの回転部品に特に当てはまる。その結果、亀裂形成を検出する能力は、特に、タービンロータブレードのような単一の部品の故障が引き起こす重大損傷を考慮すると依然として重要な産業上の目的である。このような故障事象は、下流側のシステム及び部品を破壊する連鎖反応を引き起こし、高価な補修及び長期にわたる運転停止が必要となる。
【0004】
高温ガス経路部品の有効寿命を延ばすことができる1つの手法は、遮熱コーティングのような保護皮膜を利用することである。一般に、露出表面はこれらの皮膜により覆われ、該皮膜が高温ガス経路の最も過酷な温度から部品を隔離する。しかしながら、当業者であれば理解されるように、これらのタイプの皮膜は、使用中に摩耗又は分断され、これは通常「皮膜剥離」又は「剥離」と呼ばれるプロセスである。剥離は、影響を受ける部品の表面上の離散領域又はパッチにおいて非皮膜又は露出領域の形成及び成長を生じる可能性がある。これらの非保護領域は高温を受け、従って、疲労亀裂及び他の欠陥の早期形成を含む、より急激な劣化を生じやすい。燃焼タービンエンジンにおいて、皮膜剥離は、移行部品のような、タービンロータブレード及び燃焼器内の部品における特定の懸念事項である。皮膜剥離を早期に検出することにより、増大した熱歪みから部品が完全に損傷を受ける前にオペレータが修正措置をとることができる。
【0005】
燃焼タービンエンジンのオペレータは、運転中に故障する危険のある摩滅した又は損傷を受けた部品の使用を避けなければならないが、有効寿命の尽きるまでは部品を早期に交換しないことに関する相反した関心を持っている。すなわち、オペレータは、各部品の有効寿命を使い果たし、これにより部品交換を行うためのエンジン停止の頻度を低減しながら、部品コストを最小限にしようとする。従って、エンジン部品における正確な亀裂及び/又は皮膜剥離を検出することは、産業上有意に必要なことである。しかしながら、従来の方法は、一般に、部品の定期的な目視検査を必要とする。目視検査は、有用ではあるが、時間がかかると同時に、長い時間期間にわたってエンジンをシャットダウンする必要がある。
【0006】
亀裂の形成及び保護皮膜の剥離に関してエンジン運転中に高温ガス中の部品を監視できることは、長年にわたり尚も必要とされている。必要なことは、エンジンが作動している間の亀裂形成及び剥離を監視し、故障事象が生じる前又は重大な部品の損傷がもたらされる前に必要な措置をとることができるようにするシステムである。このようなシステムはまた、部品交換の必要性は、予想される摩耗ではなく実際の測定された摩耗に基づくことができるので、部品の寿命を延ばすこともできる。加えて、このようなシステムは、目視検査のようなエンジンシャットダウンを必要とする評価実施の必要性又は頻度を低減する。これらの目標をコスト効果のある手法で達成できる範囲内において、効率が向上し産業上の需要が高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7123031号明細書
【発明の概要】
【0008】
従って、本発明は、エンジンの運転中に燃焼タービンエンジンのタービンロータブレードにおける欠陥を検出するためのシステムを記載している。一実施形態では、本システムは、絶縁皮膜を含むタービンロータブレードと、タービンロータブレードに電気的に接続された第1の電極と、タービンロータブレードに近接して位置する第2の電極と、第1の電極及び第2の電極の両端に電圧を誘起する手段と、第1の電極及び第2の電極間に流れる電流を検出する手段とを含む。
【0009】
本発明は更に、燃焼タービンエンジンの運転中に該燃焼タービンエンジンのタービンロータブレードにおける欠陥を検出するための方法を記載している。一実施形態では、本方法は、タービンロータブレードに電気的に接続された第1の電極を提供するステップと、タービンロータブレードに近接して位置する第2の電極を提供するステップと、第1の電極及び第2の電極の両端に電圧を印加するステップと、第1の電極及び第2の電極間に流れる電流を検出するステップとを含む。
【0010】
本出願のこれら及び他の特徴は、図面及び請求項を参照しながら以下の好ましい実施形態の詳細な説明を精査することによって明らかになるであろう。
【0011】
本発明のこれら及び他の特徴は、添付図面を参照しながら、本発明の例示的な実施形態の以下の詳細な説明を詳細に検討することによって完全に理解され認識されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本出願の実施形態を用いることができる例示的な燃焼タービンエンジンの概略図。
【図2】図1のガスタービンエンジンで用いることができる例示的な圧縮機の断面図。
【図3】図1の燃焼タービンエンジンで用いることができる例示的なタービンの断面図。
【図4】本出願の例示的な実施形態による例示的なタービン及びシステムの断面図。
【図5】本出願の例示的な実施形態による、材料欠陥を監視するための例示的なタービン及びシステムの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ここで図面を参照すると、図1は、本発明の実施形態を利用することができる燃焼又はガスタービンエンジン100の概略図である。一般に、ガスタービンエンジンは、加圧空気のストリーム中にて燃料の燃焼によって生成される高温ガスの加圧流からエネルギーを抽出することにより作動する。図1に示すように、ガスタービンエンジン100は、共通のシャフト又はロータにより下流側タービンセクション又はタービン110に機械的に結合される軸流圧縮機106と燃焼システム112とを備えて構成することができ、該燃焼システム112は、図示のように、圧縮機106とタービン110との間に位置付けられる缶型燃焼器である。
【0014】
図2は、ガスタービンエンジン100で用いることができる軸流圧縮機106の図を示す。図示のように、圧縮機106は複数の段を含むことができる。各段は、圧縮機ロータブレード120の列と、これに続く圧縮機ステータブレード122の列とを含むことができる。すなわち、第1の段は、中央シャフトの周りを回転する圧縮機ロータブレード120の列と、これに続いて、運転中に固定を維持する圧縮機ステータブレード122の列とを含むことができる。圧縮機ステータブレード122は、全体的に、互いに円周方向に間隔を置いて配置され、回転軸の周りに固定される。圧縮機ロータブレード120は、ロータの軸線の周りに円周方向に間隔を置いて配置され、運転中にシャフトの周りを回転する。当業者には理解されるように、圧縮機ロータブレード120は、シャフトの周りを回転するときに圧縮機106を介して流れる空気又は作動流体に運動エネルギーを与えるように構成される。当業者には理解されるように、圧縮機106は、図2に示す段を上回る他の多くの段を有することができる。付加された各段は、複数の円周方向に間隔を置いて配置された圧縮機ロータブレード120と、これに続いて複数の円周方向に間隔を置いて配置された圧縮機ステータブレード122とを含むことができる。
【0015】
図3は、ガスタービンエンジン100で使用することができる例示的なタービンセクション又はタービン110の部分図を示す。タービン110は複数の段を含むことができる。3つの例示的な段が示されているが、これよりも多い又は少ない段をタービン110に設けてもよい。第1の段は、運転中にシャフトの周りを回転する複数のタービンバケット又はタービンロータブレード126と、運転中に固定状態を維持する複数のノズル又はタービンステータブレード128とを含む。タービンステータブレード128は、全体的に、互いに円周方向に間隔を置いて配置され、回転軸の周りに固定される。タービンロータブレード126は、シャフトの周りを回転するようタービンホイール130(図4に示す)上に取り付けることができる。タービン110の第2の段もまた図示されている。同様に第2の段は、複数の円周方向に間隔を置いて配置されたタービンステータブレード128と、これに続いて、回転のため同様にタービンホイール上に取り付けられる複数の円周方向に間隔を置いて配置されたタービンロータブレード126とを含む。第3の段もまた図示されており、同様に、複数の円周方向に間隔を置いて配置されたタービンステータブレード128と、タービンロータブレード126とを含む。タービンステータブレード128及びタービンロータブレード126は、タービン110の高温ガス経路内にあることは理解されるであろう。高温ガス経路を通る高温ガスの流れ方向が矢印で示されている。当業者には理解されるように、タービン110は、図3に示す段を上回る他の多くの段を有することができる。付加された各段は、複数の円周方向に間隔を置いて配置されたタービンステータブレード128と、これに続いて複数の円周方向に間隔を置いて配置されたタービンロータブレード126とを含むことができる。
【0016】
上述のガスタービンエンジンの性質は、以下のように動作することができる。軸流圧縮機106内の圧縮機ロータブレード120の回転により空気流が加圧される。燃焼器112において、以下でより詳細に説明するように、加圧空気が燃料と混合されて点火されたときにエネルギーが放出される。次いで、燃焼器112からの結果として生じる高温ガスの流れは、タービンロータブレード126の上に配向され、これによりタービンロータブレード126のシャフトの周りの回転を誘起し、従って、ガスの高温流のエネルギーを回転シャフトの機械エネルギーに変換することができる。次に、シャフトの機械エネルギーを利用して、圧縮機ロータブレード120の回転を駆動することができ、加圧空気の必要な供給量が生成され、更に、例えば発電機が電気を発生するようにする。
【0017】
次に進む前に、本発明を明確に理解するために、タービンエンジン及び関連するシステムの特定の部品又は機械部品に言及し且つ説明する用語の選択が必要となる点は理解されるであろう。当業界の用語は、可能な限り、一般に受け入れられる意味と適合するように使用及び利用される。しかしながら、このことは、このようなあらゆる用語は広義の意味が与えられ、本明細書で意図する意味及び添付の請求項の範囲が不当に制限されるように狭義に解釈されるものではないものとする。当業者であれば、特定の部品が複数の異なる用語で呼ばれる場合が多いことは理解されるであろう。加えて、本明細書で単一の要素として説明できる事柄は、別の状況では複数の部品を含み、又は複数の部品からなるものとして言及することができ、或いは、本明細書で複数の部品を含むものとして説明できる事柄は、単一要素に構築され、場合によっては単一の要素として言及することができる。従って、本明細書で記載される本発明の範囲を理解する際に、提供される用語及び説明にのみ留意するのではなく、本明細書で記載される部品の構造、構成、機能、及び/又は使用に対しても留意すべきである。
【0018】
加えて、複数の記述上の用語を本明細書で定常的に使用する場合があり、この点についてこれらの用語を定義することが有用とすることができる。本明細書で使用するこれらの用語及びその定義は、次の通りである。特に別途指定のない限り、「ロータブレード」という用語は、圧縮機又はタービンの何れかの回転ブレードを意味する表現であり、この回転ブレードには、圧縮機ロータブレード及びタービンロータブレードの両方が含まれる。特に別途指定のない限り、「ステータブレード」という用語は、圧縮機又はタービンの何れかの固定ブレードを意味する表現であり、この固定ブレードには、圧縮機ステータブレード及びタービンステータブレードの両方が含まれる。本明細書では、「ブレード」という用語は、何れかのタイプのブレードを意味するのに使用する。従って、特に別途指定のない限り、「ブレード」という用語は、圧縮機ロータブレード、圧縮機ステータブレード、タービンロータブレード及びタービンステータブレードを含む、全てのタイプのタービンエンジンブレードを包含する。更に、本明細書で使用する場合、「下流側」及び「上流側」とは、タービンを通る作動流体のような、流体の流れに対する方向を示す用語である。従って、「下流側」という用語は、一般的に作動流体の流れの方向に対応する方向を意味し、「上流側」という用語は一般的に、作動流体の流れの方向の反対方向を意味する。「前方」又は「リーディング(前)」及び「後方」又は「トレーリング(後)」という用語は一般的に、タービンエンジンの前方端及び後方端を基準とした相対位置を意味している(すなわち、圧縮機はエンジンの前方端にあり、タービンを有する端部は後方端である)。場合によっては、本明細書を考慮して明確になるように、「リーディング(前)」及び「トレーリング(後)」という用語は、回転部品の回転方向を意味することがある。これが当てはまる場合、回転部品の「リーディングエッジ(前縁)」は、回転の先頭にある縁部であり、「トレーリングエッジ(後縁)」は、後方の縁部である。
【0019】
「半径方向」という用語は、軸線に対して垂直方向の移動又は位置を意味する。「半径方向」という用語は、軸線に関して異なる半径方向位置にある要素を記述するために必要となることが多い。このようなケースでは、第1の部品が第2の部品よりも軸線に対してより近接して存在する場合には、本明細書では、第1の部品が、第2の部品の「半径方向内向き」又は「内寄り」にあると記述することができる。これに対して、第1の部品が第2の部品よりも軸線から更に遠くに存在する場合には、本明細書では、第1の部品が、第2の部品の「半径方向外向き」又は「外側寄り」にあると記述することができる。「軸方向」という用語は、軸線に平行な移動又は位置を意味する。最後に、「円周方向」又は「角度位置」という用語は、軸線周りの移動又は位置を意味する。
【0020】
図4及び図5を参照すると、本発明の例示的な実施形態が提供される。本発明の例示的な実施形態によれば、タービンロータブレード126は、絶縁皮膜129で被覆することができる。幾つかの実施形態では、絶縁皮膜129は、遮熱コーティングを含むことができる。詳細には、ジルコニア酸化物遮熱コーティングは、特定の好ましい環境において用いることができる。しかしながら、本発明は、このタイプの皮膜に限定されるものではない。タービン環境で用いるのに好適であり且つロータブレード126の下層構造として導電性が低いことが分かっているあらゆる皮膜を用いることができる。
【0021】
タービン110の流路の外周は、図示のように、タービンケーシング又はケーシング132により密閉することができる。第1の電極134は、タービンロータブレードの列に電気的に接続することができる。例えば、この接続は、従来のスリップリングを介してロータホイールなどの部品に、又は直接的に支持面などの固定部品に対して形成することができる。第2の電極135は、第1の電極134が取り付けられるタービンロータブレード126の列に近接して固定構造体上に位置付けることができる。第2の電極135は、少なくとも部分的には、高温ガス流路内に位置付けることができる。例示的な実施形態では、図示のように、第2の電極135は、ロータブレード126の直ぐ下流側のケーシング132に取り付けられる。第2の電極135は、過酷な高温ガス流路に耐えることのできる材料から構成することができる。例えば、第2の電極135は、銅、銀、マンガン、ケイ素、又は他の好適な材料を含むことができる。第1の電極134及び第2の電極135は、図4に示すように、コントロールユニット136に接続することができる。コントロールユニット136は、2つの電極134、135の両端に電圧を印加するよう構成された電源を含むことができる。電源は、電圧源を有するあらゆる従来のシステムを含むことができる。コントロールユニット136は、2つの電極134、135間に電流が流れているかどうか、及び/又は2つの電極134、135間に流れる電流のレベルを求めるための電流計又は同様の計測器を含むことができる。
【0022】
通常運転中、コントロールユニット136は、2つの電極134、135間に流れる電流を全く又はほとんど観測することがない点は理解されるであろう。これは、ロータブレード126を覆って電気的に絶縁する絶縁皮膜129に起因する。しかしながら、ロータブレード126上の何れかの場所で亀裂が発生した場合には、絶縁皮膜129を徐々に傷つけ、最終的には皮膜内に脆弱部を生じて、欠陥138が形成され、タービンロータブレード126の金属表面のパッチ又は一部を高温ガス流路の高温ガスに曝す可能性がある。高温ガスは導電性であり、これを通じて回路141を形成することができる点は当業者には理解されるであろう。従って、コントロールユニット136又は電流計は、2つの電極134、135間に電流が流れていること、及び電気回路141が形成されたことを検出する。例示的な実施形態では、回路141の検出により、システムは、欠陥138が存在する可能性があること及び/又は修正措置をとる必要がある旨のワーニング通知を提供するようにすることができる。システムの感度は、異なる電圧を用いて、又はワーニング通知が送出される前に満足すべき特定の所定電流閾値を要求することによって調整することができる。このような電流閾値は、特定のサイズの欠陥と一致するよう構成することができる(すなわち、ロータブレードの導電性のより高い表面領域の特定量の曝露)点は理解されるであろう。
【0023】
代替の実施形態では、通常運転中に2つの電極134、135間を流れる電流を観測することができ、該電流は欠陥が検出されるときに上昇する。これは、特定のタイプの保護絶縁皮膜が導電性である(或いは、少なくとも、他のタイプの皮膜よりも導電性がある)ことに起因することができる。従って、この場合、通常運転中に2つの電極134、135間でコントロールユニット136により観測されるあるレベルの電流が存在する点は理解されるであろう。しかしながら、タービンロータブレード126のより導電性の高い表面のパッチ又は一部を流路の高温ガスに曝す亀裂が生成されると、コントロールユニット136により、2つの電極134、135間に増大したレベルの電流が流れるのが観測される。この実施形態では、電流の増大が観測されることにより、欠陥138についてのワーニング信号が提供される。前述と同様に、回路141を流れる電流の増大が検出されることで、システムは、欠陥138が存在する可能性があること及び/又は修正措置をとる必要がある旨のワーニング通知を提供するようにすることができる。システムの感度は、異なる電圧を用いて、又はワーニング通知が送出される前に満足すべき特定の電流閾値すなわち特定のレベルの電流変化を示す閾値を要求することによって調整することができる。
【0024】
幾つかの実施形態では、流路の高温ガスの導電率は、燃料を導電性材料でドープすることによって、又は導電性媒体を加圧空気の流路内に噴射することによって有意に高めることができる。幾つかの実施形態では、これは、欠陥(すなわち、亀裂形成又は皮膜剥離)試験が実施される試験サイクル中に定期的に実施することができる。加えて、欠陥138のサイズは、印加電圧及び以前の欠陥サイズ並びに他の関連条件(すなわち、ドープ剤が存在するか否か、その他)が与えられると、形成された電気回路141を通る電流フローの大きさでシステムを較正することにより決定付けることができる。例えば、電流レベルが高いほどより大きな欠陥サイズを示す。また、閾値電流レベルを超えることのない低い電流レベルは、ロータブレードが実質的に欠陥のないことを示すことができる。
【0025】
亀裂形成がない場合、電気絶縁皮膜の浸食又は剥離はまた、ロータブレード126の金属表面を流路の高温ガスに曝す欠陥138を生じる可能性がある。これはまた、2つの電極134、135間の電気回路の形成を生じさせ、コントロールユニット136による指示電流の検出をもたらすことができる。剥離は、ロータブレード126の絶縁皮膜の摩滅又は浸食によって引き起こされる可能性がある。この場合、システムは、修正措置を行うことなく、ロータブレード126に対しより大きな熱応力を引き起こす皮膜剥離をワーニングすることによって、亀裂の形成(並びにロータブレードの酸化)を阻止することができる。
【0026】
エンジンの作動中に亀裂形成及び皮膜剥離を監視することにより、定期的な目視検査の必要性を低減することができ、また、エンジン停止時間も短縮することができる点は理解されるであろう。加えて、エンジンの作動中に監視することにより、他の場合には次に予定されている検査までは気付かれなかったであろう重大な欠陥の形成を検出することができる。この場合、壊滅的な故障事象を回避することができる。
【0027】
当業者であれば理解されるように、幾つかの例示的な実施形態に関して上述された多くの様々な特徴及び構成は、本発明の他の実施可能な実施形態を形成するn、各々の可能な繰り返しは本明細書で詳細には述べていないが、添付の複数の請求項によって包含される全ての組み合わせ及び可能な実施形態は、本出願の一部をなすものとする。加えて、本発明の複数の例示的な実施形態の上記の説明から、当業者であれば改善、変更、及び修正が理解されるであろう。当該技術分野の範囲内にあるこのような改善、変更、及び修正はまた、添付の請求項によって保護されるものとする。更に、上記のことは、本出願の好ましい実施形態にのみに関連しているが、添付の請求項及びその均等物によって定められる本出願の精神及び範囲から逸脱することなく、当業者によって多くの変更及び修正を本明細書において行うことができる点を理解されたい。
【符号の説明】
【0028】
110 タービン
126 タービンロータブレード
128 タービンステータブレード
130 タービンホイール
132 ケーシング
134 第1の電極
135 第2の電極
136 コントロールユニット
141 回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼タービンエンジンの運転中に該燃焼タービンエンジンのタービンロータブレード内の欠陥を検出するシステムであって、
絶縁皮膜を含むタービンロータブレードと、
前記タービンロータブレードに電気的に接続された第1の電極と、
前記タービンロータブレードに近接して位置する第2の電極と、
前記第1の電極及び第2の電極の両端に電圧を誘起する手段と、
前記第1の電極及び第2の電極間に流れる電流を検出する手段と、
を備える、システム。
【請求項2】
前記第1の電極は、前記タービンロータブレードが取り付けられるロータホイールに接続され、前記ロータホイールへの前記第1の電極の接続は、a)回転部品へのスリップリング接続、及びb)非回転支持面への接続のうちの第1の一方を含み、前記第2の電極がタービンケーシングに接続される、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記第2の電極は、前記タービンロータブレードが含まれるタービンブレードの列の直ぐ下流側の固定構造体に接続され、前記第2の電極は、前記燃焼タービンエンジンの高温ガス流路に曝され、前記絶縁皮膜が遮熱コーティングを含む、請求項1記載のシステム。
【請求項4】
コントロールユニットを更に備え、前記コントロールユニットが、前記第1の電極及び第2の電極の両端に所定レベルの電圧を印加するよう構成された電圧源を含み、前記コントロールユニットが、前記第1の電極及び第2の電極の間に流れる電流を検出するよう構成された電流計を含む、請求項1記載のシステム。
【請求項5】
前記コントロールユニットが、前記第1の電極及び第2の電極の間に流れる所定レベルの電流を検出するよう構成された電流計を含み、前記コントロールユニットが、前記第1の電極及び第2の電極の間の検出された電流レベルが閾値電流レベルを超えるかどうかを判定するよう構成される、請求項4記載のシステム。
【請求項6】
前記第1の電極、前記第2の電極、及び前記コントロールユニットは、前記絶縁皮膜が前記タービンロータブレードの表面を覆う所望レベルの被覆範囲を有するときに、前記第1の電極及び第2の電極の両端に印加される所定電圧レベルによって、前記第1の電極及び第2の電極間で検出された電流レベルが閾値電流レベルを超えるように誘起させることができないように構成される、請求項5記載のシステム。
【請求項7】
前記第1の電極、前記第2の電極、及び前記コントロールユニットは、
第1の作動条件の間、前記第1の電極及び第2の電極間で検出された電流レベルが前記閾値電流レベルを超えず、
第2の作動条件の間、前記第1の電極及び第2の電極間で検出された電流レベルが前記閾値電流レベルを超える、
ように構成されており、前記第2の作動条件は、前記絶縁皮膜内に欠陥が存在する作動条件を含む、請求項5記載のシステム。
【請求項8】
前記欠陥が、前記タービンロータブレード上の所定サイズの露出領域を含み、該露出領域が前記絶縁皮膜によって実質的に覆われていない領域を含み、前記所定サイズの露出した領域が、前記所定電圧レベルにより前記検出された電流レベルが前記閾値電流レベルを超える露出領域に相当する、請求項7記載のシステム。
【請求項9】
前記欠陥が、前記タービンロータブレード内の絶縁皮膜の剥離及び亀裂形成のうちの1つを含む、請求項7記載のシステム。
【請求項10】
前記第1の作動条件は、前記燃焼タービンエンジンの高温ガス流路に曝される前記タービンロータブレードの表面の所望の部分が前記絶縁皮膜によって覆われる作動条件を含み、前記コントロールユニットは、前記第2の作動条件が生じたときにワーニング通知を送出するよう構成される、請求項7記載のシステム。
【請求項11】
前記絶縁皮膜が、前記タービンロータブレードの導電率よりも小さい導電率を有し、前記絶縁皮膜が、前記タービンロータブレードと前記第2の電極との間で作動中の前記高温ガス流路の近似導電率よりも小さい導電率を有し、前記所望の部分が前記燃焼タービンエンジンの高温ガス流路に曝される前記タービンロータブレードの表面部分の実質的に全てを含む、請求項10記載のシステム。
【請求項12】
作動中、前記燃焼タービンエンジンの高温ガス流路が、導電性ドープ剤を含み、該導電性ドープ剤が、所定試験間隔で前記高温ガス流路内に噴射される、請求項1記載のシステム。
【請求項13】
燃焼タービンエンジンの運転中に該燃焼タービンエンジンのタービンロータブレードにおける欠陥を検出する方法であって、
前記タービンロータブレードに電気的に接続された第1の電極を提供するステップと、
前記タービンロータブレードに近接して位置する第2の電極を提供するステップと、
前記第1の電極及び第2の電極の両端に電圧を印加するステップと、
前記第1の電極及び第2の電極間に流れる電流を検出するステップと、
を含む、方法。
【請求項14】
前記タービンロータブレードを絶縁皮膜で被覆するステップを更に含み、前記絶縁皮膜が、前記タービンロータブレードの導電率よりも小さい導電率を有し、前記絶縁皮膜が、前記燃焼タービンエンジンの作動中に前記タービンロータブレードと前記第2の電極との間で前記高温ガス流路の近似導電率よりも小さい導電率を有する、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記第2の電極は、前記タービンロータブレードが含まれるタービンブレードの列の直ぐ下流側の固定構造体に接続され、前記第2の電極は、前記燃焼タービンエンジンの運転中に前記高温ガス流路の燃焼ガスに曝されるように位置付けられる、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記第1の電極及び第2の電極間に流れる電流レベルを検出するステップと、
前記検出された電流レベルが閾値電流レベルを超えるかどうかを判定するステップと、
を更に含む、請求項14記載の方法。
【請求項17】
前記閾値電流レベルは、検出された電流レベルがそれを上回ると前記絶縁皮膜内の欠陥によって引き起こされる高い確率を有する閾値に相当する、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記欠陥が、前記タービンロータブレード上の所定サイズの露出領域を含み、前記露出領域が前記絶縁皮膜によって実質的に覆われていない領域を含み、前記所定サイズの露出した領域が、前記所定電圧レベルにより前記検出された電流レベルが前記閾値電流レベルを超えるサイズに相当する、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記閾値レベルを超えない検出電流レベルは、前記高温ガス流路の燃焼ガスに曝されるはずの前記タービンロータブレードの表面領域の所望の部分が前記絶縁皮膜によって依然として覆われているときに生じる電流レベルに相当し、前記方法が、
前記検出された電流レベルが前記閾値電流レベルを超えたときにワーニング通知を送出するステップを更に含む、請求項17記載の方法。
【請求項20】
前記タービンロータブレードの上流側にある前記高温ガス流路内の位置において導電性ドープ剤を前記高温ガス流路内に噴射するステップを更に含む、請求項13記載の方法。
【請求項21】
前記導電性ドープ剤が、前記燃焼タービンエンジンの運転中に前記高温ガス流路を通って流れる前記燃焼ガスの導電率を高めるよう構成される、請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記導電性ドープ剤が、所望の試験スケジュールに対応する噴射周期で定期的に噴射される、請求項21記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−145107(P2012−145107A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−860(P2012−860)
【出願日】平成24年1月6日(2012.1.6)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】