説明

燃焼炉装置及び燃焼方法

【課題】 燃焼炉での火炎位置を安定化させることのできる燃焼炉装置及び燃焼方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 燃焼室内の上下方向での温度分布を検出して主燃焼領域の位置を検出する主燃焼領域検出手段11と、ノズルから噴出される酸素含有ガスの酸素濃度を調整する酸素濃度調整手段16と、可燃ガス供給管2へ酸素含有ガスを混合する部分予混合手段13と、制御手段12とを有し、該制御手段12は、主燃焼領域検出手段で検出された主燃焼領域が所定位置よりも上方に移動しているときに、酸素濃度調整手段16によりノズルから噴出される酸素含有ガスの酸素濃度を低下させ、部分予混合手段により可燃ガス供給管への酸素含有ガス供給量を増大せしめる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃焼炉装置及び燃焼方法に関し、特に、廃棄物の焼却や溶融の過程で発生した一次燃焼排ガスを、安定かつ低公害で二次燃焼処理するための燃焼炉装置及び燃焼方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置としては、特許文献1に開示されているものが知られている。この特許文献1の装置は、縦型の燃焼室へ上流側たる下部でメインバーナから、廃棄物溶融炉で発生した可燃ガスを一次空気と共に送り込んで二次燃焼させ、下流側たる上部で排気管から排ガスとして排出する。上記メインバーナと排気管との間の位置では、希釈・混合用の二次空気を吹き込む複数のノズルが接線方向に設けられていて、この二次空気によって燃焼室内に旋回流が生ずる。この旋回流により、可燃ガスは空気との撹拌が良好になされ燃焼性が向上される。
【特許文献1】特開2005−003285
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1の装置にあっては、一次燃焼排ガスの状況の変動によって二次燃焼が不安定になることがあり、その改善が望まれている。
【0004】
二次燃焼のための燃焼炉は、一次燃焼の燃焼炉あるいは溶融炉と直結されていて、発生した一次燃焼排ガスが可燃ガスとしてそのまま受け入れることが多い。
【0005】
したがって、上記燃焼炉あるいは溶融炉への廃棄物の投入量あるいはその性状等の変動により、発生する一次燃焼排ガスの排出量、そして温度や成分も変動する。しかし、上記特許文献1の装置にあっては、これらの変動に対し二次燃焼において何ら対処する手段を有していない。
【0006】
その結果、一次燃焼排ガスの上記変動によって、二次燃焼としての上記燃焼炉における燃焼が不安定となり、火炎が上方へ移動して炉上部が異常高温となって炉内壁を損傷したり、炉の寿命を短くしたりする。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑み、一次燃焼排ガスの発生量そして成分が変動しても、これを可燃ガスとして二次燃焼を行なう燃焼炉での燃焼の火炎位置を安定化し、かつ燃焼炉自体を長寿命で使用できる、燃焼炉装置そして燃焼方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る燃焼炉装置は、内部空間を燃焼室とする炉本体に、上流側たる下部で可燃ガス供給管がそして下流側たる上部で排気管がそして中間部で酸素含有ガスを噴出して燃焼室内に旋回流を形成するためのノズルがそれぞれ接続されている。
【0009】
かかる燃焼炉装置において、本発明では、燃焼室内の上下方向での温度分布を検出する主燃焼領域検出手段を備えていることを特徴としている。
【0010】
このような構成の本発明では、一次燃焼から得られる排ガスを可燃ガスとして燃焼室内で二次燃焼させる際、上記可燃ガスの供給量・成分が変動して、正規燃焼しなくなって、火炎が所定位置から上昇してしまったとき、上記主燃焼領域検出手段がその検出温度分布
からこれを知ることができる。しかる場合、例えば、旋回流を形成するための酸素含有ガスの酸素濃度を低下させて、炉内周縁部での火炎伝播速度を低下させた後、上記旋回流よりも下方位置で供給される可燃ガスへ酸素含有ガスを混合させることで、火炎を下方の炉内中央部へ引き戻す。
【0011】
本発明において、主燃焼領域検出手段は、炉本体に上下方向複数位置で設けられた温度センサを有しているようにすることができる。これら複数の温度センサの検出温度により温度分布を知り、所定の温度分布と対比して火炎が上方へ移動して異常燃焼していると判断される。
【0012】
本発明では、上記主燃焼領域検出手段に加え、ノズルから噴出される酸素含有ガスの酸素濃度を調整する酸素濃度調整手段と、可燃ガス供給管へ酸素含有ガスを混合する部分予混合手段と、制御手段とを有することとし、該制御手段が、主燃焼領域検出手段で検出された温度分布から検出した主燃焼領域が所定位置よりも上方に移動しているときに、酸素濃度調整手段によりノズルから噴出される酸素含有ガスの酸素濃度を低下させ、炉内周縁部での火炎伝播速度を低下させた後、部分予混合手段により可燃ガス供給管への酸素含有ガス供給量を増大せしめ、炉中央部での火炎伝播速度を高めるようにする。こうして、異常に上昇した火炎が所定位置へ引き戻される。ここで、可燃ガスを燃焼するのに必要な酸素は、燃焼室に旋回流を形成するためのノズルから酸素含有ガスを噴出することと、供給する可燃ガスへ酸素含有ガスを予混合することにより供給されている。
【0013】
あるいは、本発明では上記主燃焼領域検出手段に加え、上下方向で炉中央部へ高温ガスを吹き込む高温ガス吹込手段と、制御手段とを有することとし、該制御手段が、主燃焼領域検出手段で検出された温度分布から検出した主燃焼領域が所定位置よりも上方に移動しているときに、酸素濃度調整手段によりノズルから噴出される酸素含有ガスの酸素濃度を低下させ、高温ガス吹込手段から高温ガスを吹き込むようにすることもできる。こうすることによっても、火炎は所定位置へ引き戻される。
【0014】
本発明は、内部空間を燃焼室とする炉本体に、上流側たる下部で可燃ガス供給管がそして下流側たる上部で排気管がそして中間部で酸素含有ガスを噴出して燃焼室内に旋回流を形成するためのノズルがそれぞれ接続されている燃焼炉装置による燃焼方法にも関しており、燃焼室内の上下方向温度分布を検出して主燃焼領域の位置を検出し、検出された主燃焼領域が所定位置よりも上方に移動しているときに、ノズルから噴出される酸素含有ガスの酸素濃度を低下させた後、可燃ガス供給管からの可燃ガスに酸素含有ガスを部分予混合するか、又は炉中央部上向きに高温ガスを吹き込むことにより、炉中央部に火炎を引き戻し、その後、ノズルから噴出される酸素含有ガスの酸素濃度を増加させて主燃焼領域を所定位置に引き戻す。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、以上のように燃焼室内での上下方向での温度分布を検出することにより、火炎が所定位置から上方へ移動していることを知り、炉内周縁部での燃焼を抑制しかつ炉中央部での燃焼を促進することによって、急激な炉内圧力上昇を回避しつつ、火炎を所定位置に引き戻し、燃焼を安定かつ正常なものとする。その結果、異常燃焼による炉の損傷を回避でき補修費が低下すると共に、低公害での燃焼を可能とする。また、本発明では、火炎位置の異常の発見そして引き戻しを自動化することが可能であり、自動化により装置の監視業務が簡単化される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付図面の図1にもとづき、本発明の実施の形態を説明する。
【0017】
図1において、符号1は内部に燃焼室を形成する縦型の二次燃焼炉であり、該二次燃焼炉1は、下部に設けられた可燃ガス供給管2から、例えば廃棄物焼却炉等の一次燃焼炉3で発生した排ガスを可燃ガスとして受ける。
【0018】
上記二次燃焼炉1は下部にダスト排出部4が設けられ、このダスト排出部4はダスト処理装置5に接続されている。上記二次燃焼炉1の上部は排気部6となっており、排気管6Aにより排ガス処理装置7、ファン等の排煙装置8を経て煙突9に接続されている。
【0019】
上記二次燃焼炉1には、その側壁に、上流側たる下端側から下流側たる上端側に向けて、適宜間隔で、複数の温度センサ10A〜10Hが設けられておりこれらの温度センサ10A〜10Hは検出信号が主燃焼領域検出装置11に送られるように接続されており、該主燃焼領域検出装置11では、上記検出信号から燃焼室内での上下方向の温度分布を得て主燃焼領域の位置を検出するようになっている。この主燃焼領域検出装置11は、制御装置12に接続されており、所定条件での主燃焼領域と検出主燃焼領域位置とを比較して、上記制御装置12が後述の諸装置へ制御信号を発するようになっている。
【0020】
上記二次燃焼炉1の中間部には、混合器13が接続されていて、酸化剤としての空気と排ガスとがこの混合器13で混合され、その混合ガスが上記二次燃焼炉1内へ噴射されるようになっている。この混合器13からの混合ガスは接線方向ノズルから噴射され、燃焼室内で旋回流を形成する。
【0021】
上記混合器13への空気は、ブロワ14によって外気から取り入れられるが、その際、流量計15で空気流量が計測され酸素濃度調整手段としての調整弁16でその流量が調整される。
【0022】
一方、混合器13への排ガスは、上記排煙装置8の出口側から分枝された流路を経て、排ガスの一部がブロワ17によって上記混合器13へ送られる。その際、排ガスは流量計18で排ガス流量が計測され調整弁19でその流量が調整される。この調整は上記制御装置12の指令信号にもとづきなされる。
【0023】
このような混合器13への空気取入そして排ガス取入のための諸部材は、図1で一点鎖線でまとめて示されるように酸素濃度調整装置20を形成する。
【0024】
このような構成の本実施形態の二次燃焼装置では、燃焼室内での燃焼、特に火炎の位置の制御は次のようにして行なわれる。
【0025】
(1)一次燃焼炉3で、廃棄物等の焼却により発生した、可燃物含有排ガスが可燃ガス供給管2から燃焼室内へ供給される。
【0026】
(2)一方、混合器13からは、酸化剤として外気から取り入れられた空気そして排気管から排ガスの一部が混合されて、上記燃焼室内へ噴出される。この噴出排ガスは、燃焼室内で旋回流を形成する。
【0027】
(3)燃焼室内へ供給された可燃ガスは、上記旋回流と混合され、主として燃焼室下部で燃焼する。この正規の燃焼状態では、主燃焼領域は燃焼室下部に位置しており、上下方向ではこの領域が最も高温となる温度分布を形成する。
【0028】
(4)一次燃焼炉3での燃焼が変動して、二次燃焼炉1へ可燃ガスとして供給される一次燃焼炉3からの排ガスの量そして成分が変動すると、上記二次燃焼炉1での燃焼が不安定となることがあり、その場合、火炎が上方に、すなわち主燃焼領域が上方へ移動する。
その結果、上記可燃ガスの燃焼が不安定となり、失火の危険性が高まると共に、排ガス中のCOやHCの濃度が増加する。
【0029】
(5)このような主燃焼領域の移動のもとでの燃焼室内における上下方向の温度分布は、複数の温度センサ10A〜10Hからの検出信号のもとで、主燃焼領域検出装置11で知ることができる。この温度センサ10A〜10Hの検出信号は主燃焼領域検出装置11で温度分布を作成し主燃焼領域の位置を検出し、この主燃焼領域の位置が制御装置12にて設定されている所定の位置と比較され、その結果にもとづき該制御装置12から指令信号が発せられる。検出された主燃焼領域の位置が所定位置に対して、上方に移動しているときには、制御装置12は調整弁19の開度を大きくして、混合器13への排ガス量を多くすることにより、該混合器13からのガスの酸素濃度を低下させ、炉内周縁部での火炎の伝播速度を低下させ、その結果、炉内圧力の急激な上昇を回避しつつ火炎の主燃焼領域を所定の位置に引き戻す。この制御は制御装置12によらずとも、作業員の操作によって行なうこととしてもよい。
【0030】
本発明は、図示の例に限定されず、種々変更できる。例えば、火炎の主燃焼領域が所定位置よりも上方にある場合、上述のごとく、調整弁19の開度を大きくして、混合器13を経て燃焼室へ供給される排ガスの量を多くするが、これと共に、可燃ガス供給管2からの可燃ガスと一緒に燃焼室へ送り込まれる酸素含有ガスの酸素(空気)量を多くして火炎を所定位置に引き戻すこととしてもよい。例えば、混合器13へ送られる空気の一部を、図1の二点鎖線でみられるごとく、流量計21そして調整弁22を経て、部分予混合手段としての二重管ノズル23へもたらし、ここで一次燃焼炉3からの排ガスに混入させて燃焼室へ供給することができる。かくして、火炎は下方へ引き戻される。この調整弁22の開度は、同図で二点鎖線により示されているごとく、制御装置12により制御される。
【0031】
さらには、上記可燃ガス供給管2への酸素量の増大による制御に代え、高温ガス吹込手段を有していて、燃焼室下部へ高温ガスを吹き込むこととしてもよい。例えば、図1にて、破線で示されるごとく、制御装置12により制御される高温ガス吹込手段としての加熱器24とノズル25を有し、ガスを該加熱器24で予熱し、これをノズル25から燃焼室下部中央に向け噴射する。この高温ガスにより燃焼室下部中央付近での、炉内圧力の急激な上昇を回避しつつ火炎を所定位置に引き戻すことができる。なお、加熱器24としては炉本体1から排出される排ガスから熱交換するものでもよく、燃料を燃焼して熱交換するものなど、種々用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態装置の概要構成図である。
【符号の説明】
【0033】
1 炉本体
2 可燃ガス供給管(二重管ノズル)
6A 排気管
10A〜10H 温度センサ
11 主燃焼領域検出装置(手段)
12 制御手段
13 部分予混合手段
16 酸素濃度調整手段(調整弁)
24 高温ガス吹込手段(加熱器)
25 高温ガス吹込手段(ノズル)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間を燃焼室とする炉本体に、上流側たる下部で可燃ガス供給管がそして下流側たる上部で排気管がそして中間部で酸素含有ガスを噴出して燃焼室内に旋回流を形成するためのノズルがそれぞれ接続されている燃焼炉装置において、燃焼室内の上下方向での温度分布を検出して主燃焼領域の位置を検出する主燃焼領域検出手段と、ノズルから噴出される酸素含有ガスの酸素濃度を調整する酸素濃度調整手段と、可燃ガス供給管へ酸素含有ガスを混合する部分予混合手段と、制御手段とを有し、該制御手段は、主燃焼領域検出手段で検出された主燃焼領域が所定位置よりも上方に移動しているときに、酸素濃度調整手段によりノズルから噴出される酸素含有ガスの酸素濃度を低下させ、部分予混合手段により可燃ガス供給管への酸素含有ガス供給量を増大せしめるように設定されていることを特徴とする燃焼炉装置。
【請求項2】
内部空間を燃焼室とする炉本体に、上流側たる下部で可燃ガス供給管がそして下流側たる上部で排気管がそして中間部で酸素含有ガスを噴出して燃焼室内に旋回流を形成するためのノズルがそれぞれ接続されている燃焼炉装置において、燃焼室内の上下方向での温度分布を検出して主燃焼領域の位置を検出する主燃焼領域検出手段と、ノズルから噴出される酸素含有ガスの酸素濃度を調整する酸素濃度調整手段と、炉中央部へ上向きに高温ガスを吹き込む高温ガス吹込手段と、制御手段とを有し、該制御手段は、主燃焼領域検出手段で検出された主燃焼領域が所定位置よりも上方に移動しているときに、酸素濃度調整手段によりノズルから噴出される酸素含有ガスの酸素濃度を低下させ、高温ガス吹込手段から高温ガスを吹き込むように設定されていることを特徴とする燃焼炉装置。
【請求項3】
内部空間を燃焼室とする炉本体に、上流側たる下部で可燃ガス供給管がそして下流側たる上部で排気管がそして中間部で酸素含有ガスを噴出して燃焼室内に旋回流を形成するためのノズルがそれぞれ接続されている燃焼炉装置による燃焼方法において、燃焼室内の上下方向温度分布を検出して主燃焼領域の位置を検出し、検出された主燃焼領域が所定位置よりも上方に移動しているときに、ノズルから噴出される酸素含有ガスの酸素濃度を低下させた後、可燃ガス供給管からの可燃ガスに酸素含有ガスを部分予混合するか、又は炉中央部へ上向きに高温ガスを吹き込むことにより、炉中央部に火炎を引き戻し、その後、ノズルから噴出される酸素含有ガスの酸素濃度を増加させて主燃焼領域を所定位置に戻すことを特徴とする燃焼方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−329480(P2006−329480A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−151397(P2005−151397)
【出願日】平成17年5月24日(2005.5.24)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【Fターム(参考)】