説明

燃焼装置

【課題】 燃焼排ガス中におけるNOxの量を簡単な構成で低減できると共に安定した燃焼が行える燃焼装置を提供する。
【解決手段】 本発明の燃焼装置は、燃料ガスを供給する燃料ガス供給管13の外周に燃焼用空気供給路14が設けられ、この燃焼用空気供給路における燃料ガス供給管の先端部に保炎板15が設けられると共に燃料ガス供給管の先端における燃料ガス噴出口13a,13bの近傍に着火手段16が設けられてなる燃焼筒10と、この燃焼筒の外周側で燃焼筒よりも噴出方向前方に突出すると共にこの燃焼筒先端の噴出口の近傍に燃焼排ガスを導く排ガス導入口21が設けられてなる外管20とを備えるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は燃焼装置に係り、特に、燃焼排ガス中におけるNOxの量を簡単な構成で低減できると共に安定した燃焼が行えるようにした点に特徴を有するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から環境保護のために、燃焼装置によって燃料ガスを燃焼させた後の燃焼排ガス中に存在するNOxの量を少なくする方法が検討されている。
【0003】
ここで、燃焼排ガス中におけるNOxの量は、燃焼時に空気が十分に供給されて火炎温度が高くなるに従って増加することが知られている。
【0004】
そして、燃焼排ガス中におけるNOxの量を少なくする方法の一つとして、燃焼排ガスを循環させて、この燃焼排ガスを燃焼用空気に混入させ、このように燃焼排ガスが混入された燃焼用空気と燃料ガスとを混合させて燃焼させるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
【0005】
しかし、このように燃焼排ガスを循環させて、この燃焼排ガスを燃焼用空気に混入させる場合には、燃焼排ガスを循環させて燃焼用空気に導く流路を確保する必要があり、装置が大型化して設備コストが高くつくという問題があり、また燃焼排ガスが混入された燃焼用空気と燃料ガスとを混合させて燃焼させる場合、安定した燃焼が行えなくなるという問題もあった。
【特許文献1】実公昭57−36883号公報
【特許文献2】特開昭61−240008号公報
【特許文献3】特開2000−283423号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、従来の燃焼装置における上記のような問題を解決することを課題とするものであり、燃焼排ガス中におけるNOxの量を簡単な構成で低減できると共に安定した燃焼が行えるようにすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明における燃焼装置においては、上記のような課題を解決するため、燃料ガスを供給する燃料ガス供給管の外周に燃焼用空気供給路が設けられ、この燃焼用空気供給路における燃料ガス供給管の先端部に保炎板が設けられると共に上記の燃料ガス供給管の先端における燃料ガス噴出口の近傍に着火手段が設けられてなる燃焼筒と、この燃焼筒の外周側で燃焼筒よりも噴出方向前方に突出すると共に上記の燃焼筒先端の噴出口の近傍に排ガスを導く排ガス導入口が設けられてなる外管とを備えるようにした。
【0008】
ここで、この発明における燃焼装置においては、上記の燃焼筒の先端部を噴出口に向けて収縮した形状に形成すると共に、上記の外管をベンチュリ管状に形成し、この外管の径が小さくなったスロート部を上記の排ガス導入口及び燃焼筒先端の噴出口よりも噴出方向前方に位置させることが好ましい。
【0009】
また、この発明における燃焼装置においては、上記の燃焼筒の内径をD、上記の燃料ガス供給管の先端から燃焼筒先端の噴出口までの距離をLとした場合に、L/Dの値が0.5〜2.7の範囲になるようにすることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
この発明における燃焼装置においては、燃料ガス供給管の外周に設けられた燃焼用空気供給路を通して導かれた燃焼用空気を上記の保炎板により分散させて燃料ガス供給管の先端部に導き、この燃焼用空気と燃料ガス供給管の先端部における燃料ガス噴出口から噴出される燃料ガスとを混合させると共に上記の着火手段により着火させて、この燃焼用空気と燃料ガスとを上記の燃焼筒内においてある程度燃焼させ、この燃焼火炎を燃焼筒先端の噴出口から噴出させると共に、上記の外管に設けられた排ガス導入口を通して燃焼筒先端の噴出口の近傍に導かれた燃焼排ガスを、上記の燃焼筒の噴出口から噴出された燃焼火炎中に混合させて、この外管内においてさらに燃料ガスを燃焼させるようにする。
【0011】
ここで、上記のように燃焼用空気と燃料ガスとを燃焼筒内においてある程度燃焼させた後、この燃焼筒先端の噴出口から噴出された燃焼火炎に対して燃焼排ガスを混合させて外管内においてさらに燃料ガスを燃焼させるようにすると、火炎の温度が大きく上昇するのが抑制されて、燃焼排ガス中におけるNOxの量が低減されるようになる。また、燃焼排ガスを循環させて、この燃焼排ガスを燃焼用空気に混入させる従来の燃焼装置のように、燃焼排ガスを循環させて燃焼用空気に導く流路を確保する必要がなく、装置が大型化してコストが高くつくということがなくなると共に、燃焼排ガスが混入された燃焼用空気を燃料ガスと混合させて燃焼させる場合のように燃焼が不安定になるということもなく、安定した燃焼が行えるようになる。
【0012】
また、この発明における燃焼装置において、上記の燃焼筒の先端部を噴出口に向けて収縮した形状に形成すると共に、上記の外管をベンチュリ管状に形成し、この外管の径が小さくなったスロート部を上記の排ガス導入口及び燃焼筒先端の噴出口よりも噴出方向前方に位置させると、上記の燃焼筒の噴出口から噴出された燃焼火炎の速度が速まると共に、上記の外管におけるベンチュリ効果により、加熱炉内における燃焼排ガスが外管に設けられた排ガス導入口を通して燃焼筒先端の噴出口の近傍に効率よく導かれるようになり、十分な量の燃焼排ガスが燃焼火炎に供給されるようになる。
【0013】
また、この発明における燃焼装置において、上記の燃焼筒の内径をD、上記の燃料ガス供給管の先端から燃焼筒先端の噴出口までの距離をLとした場合に、L/Dの値が小さすぎると、燃焼筒内において燃焼用空気と燃料ガスとが適切に燃焼されなくなってリフト燃焼などが発生して燃焼が不安定になる一方、L/Dの値が大きくなりすぎると、燃焼筒内において燃焼用空気と燃料ガスとが十分に燃焼されて、この燃焼筒内において既にNOxが発生してしまい、その後、上記のように燃焼排ガスを混合させても、NOxの発生量を十分に低減させることができなくなる。これに対して、前記のようにL/Dの値を0.5〜2.7の範囲にすると、燃焼が不安定になることなく、NOxの発生量を十分に低減させることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明の実施形態に係る燃焼装置を添付図面に基づいて具体的に説明する。なお、この発明に係る燃焼装置は下記の実施形態に示したものに限定されず、発明の要旨を変更しない範囲において、適宜変更して実施できるものである。
【0015】
この実施形態における燃焼装置においては、図1に示すように、燃焼筒10の後部側に燃焼用空気を燃焼筒10内に供給する燃焼用空気供給口11が設けられると共に、この燃焼筒10の先端部がテーパー状に収縮され、このように収縮された燃焼筒10の先端に噴出口12が設けられている。
【0016】
そして、この燃焼筒10の内部に燃料ガスを導く燃料ガス供給管13が設けられ、この燃料ガス供給管13の外周と燃焼筒10の内周との間に、上記の燃焼用空気供給口11から燃焼筒10内に供給された燃焼用空気を導く燃焼用空気供給路14が形成されている。ここで、上記の燃料ガス供給管13においては、図1及び図2に示すように、その先端及び先端部の外周に燃料ガスを噴出する燃料ガス噴出口13a,13bが設けられている。
【0017】
また、上記の燃焼用空気供給路14における燃料ガス供給管13の先端側の部分には、複数の空気通過口15aを有する保炎板15が設けられると共に、この保炎板15の前方において、スパークプラグ又はパイロットバーナ等の着火手段16が、上記の燃料ガス供給管13の先端部の外周に設けられた燃料ガス噴出口13bの近傍に設けられている。
【0018】
そして、上記の燃焼筒10の外周側において、この燃焼筒10先端の噴出口12より噴出方向前方に突出するようにしてベンチュリ管状になった外管20が設けられると共に、上記の燃焼筒10先端の噴出口12の近傍において、この外管20に排ガス導入口21が周方向に沿って複数設けられている。
【0019】
また、上記のようにベンチュリ管状になった外管20において、径が小さくなったスロート部22が上記の排ガス導入口21及び燃焼筒10先端の噴出口12よりも噴出方向前方に位置され、このスロート部22から噴出方向先端部がテーパー状に広がった形状になっている。
【0020】
そして、この実施形態においては、前記の図1に示すように、上記の燃焼装置をバーナタイル30に設けられた取付部31に取り付けると共に、この燃焼装置の先端側を上記のバーナタイル30の取付部31から前方に向けてテーパー状に広がったバーナタイル30の口部32内に突出させるようにし、この状態で、燃焼装置が取り付けられたバーナタイル30を、加熱炉40の所定位置に取り付けるようにしている。
【0021】
ここで、この実施形態における燃焼装置により燃料ガスを燃焼させるにあたっては、上記の燃料ガス供給管13を通して燃料ガスをその先端及び先端部の外周に設けられた燃料ガス噴出口13a,13bに導き、各燃料ガス噴出口13a,13bから燃料ガスを燃焼筒10内に噴出させると共に、上記の燃焼用空気供給口11から燃焼筒10内に供給された燃焼用空気を、燃焼用空気供給路14を通して保炎板15に導き、この保炎板15に設けられた空気通過口15aを通して上記の燃焼用空気を分散させながら燃料ガス供給管13の先端部に導き、上記の燃料ガスと混合させるようにする。
【0022】
そして、このように燃焼用空気と混合された燃料ガスを上記の着火手段16によって着火させ、燃焼用空気と混合された燃料ガスを上記の燃焼筒10内においてある程度燃焼させ、この燃焼火炎を上記のように収縮された燃焼筒10先端の噴出口12から上記の外管20内に噴出させると共に、加熱炉40内における燃焼排ガスをバーナタイル30の口部32から外管20に設けられた上記の排ガス導入口21を通してこの外管20内に導き、このように導かれた燃焼排ガスを上記の燃焼火炎に供給しながら、この外管20内においてさらに燃料ガスを燃焼させて、加熱炉40内に噴出させるようにする。
【0023】
ここで、上記のように燃焼用空気と混合された燃料ガスを燃焼筒10内においてある程度燃焼させて、この燃焼火炎を外管20内に噴出させると、上記の外管20の径が小さくなったスロート部22において燃焼火炎の速度が速まり、これによるベンチュリ効果によって、加熱炉40内における燃焼排ガスがバーナタイル30の口部32から上記の排ガス導入口21を通して外管20内に十分に導かれ、十分な量の燃焼排ガスが燃焼火炎に供給されるようになる。この結果、燃焼火炎の温度が大きく上昇するのが抑制され、燃焼排ガス中におけるNOxの量が低減されるようになる。
【0024】
ここで、上記の燃焼装置において、上記の燃焼筒10の内径Dや、上記の燃料ガス供給管13の先端から燃焼筒10先端の噴出口12までの距離Lを変更させて、L/Dの値を変化させた場合において、上記の排ガス導入口21を通して外管20内に導かれる燃焼排ガスの導入率及び燃焼排ガス中におけるNOx生成率がどのように変化するかを調べ、燃焼排ガス導入率が変化する状態を図3に、燃焼排ガス中におけるNOx生成率が変化する状態を図4に示した。
【0025】
この結果、図3に示すように、上記のL/Dの値が大きくなるに従い、燃焼排ガス導入率が大きくなり、上記の排ガス導入口21を通して外管20内に導かれる燃焼排ガスの量が増加した。
【0026】
一方、燃焼排ガス中におけるNOx生成率は、図4に示すように、上記のL/Dの値が1.5付近において最小になっており、L/Dの値が0.5〜2.7の範囲ではNOx生成率の増加が低くなっていた。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明の一実施形態に係る燃焼装置を、バーナタイルを介して加熱炉に取り付けた状態を示した概略断面説明図である。
【図2】同実施形態に係る燃焼装置において、燃料ガス供給管の先端部の状態を示した断面説明図である。
【図3】同実施形態に係る燃焼装置において、燃焼筒の内径Dと、燃料ガス供給管の先端から燃焼筒先端の噴出口までの距離Lとを変更させて、L/Dの値を変化させた場合に排ガス導入口を通して外管内に導かれる燃焼排ガスの導入率が変化する状態を示した模式図である。
【図4】同実施形態に係る燃焼装置において、燃焼筒の内径Dと、燃料ガス供給管の先端から燃焼筒先端の噴出口までの距離Lとを変更させて、L/Dの値を変化させた場合に燃焼排ガス中におけるNOx生成率が変化する状態を示した模式図である。
【符号の説明】
【0028】
10 燃焼筒
11 燃焼用空気供給口
12 噴出口
13 燃料ガス供給管
13a,13b 燃料ガス噴出口
14 燃焼用空気供給路
15 保炎板
15a 空気通過口
16 着火手段
20 外管
21 排ガス導入口
22 スロート部
30 バーナタイル
31 取付部
32 口部
40 加熱炉
D 燃焼筒の内径
L 燃料ガス供給管の先端から燃焼筒先端の噴出口までの距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスを供給する燃料ガス供給管の外周に燃焼用空気供給路が設けられ、この燃焼用空気供給路における燃料ガス供給管の先端部に保炎板が設けられると共に上記の燃料ガス供給管の先端における燃料ガス噴出口の近傍に着火手段が設けられてなる燃焼筒と、この燃焼筒の外周側で燃焼筒よりも噴出方向前方に突出すると共に上記の燃焼筒先端の噴出口の近傍に排ガスを導く排ガス導入口が設けられてなる外管とを備えたことを特徴とする燃焼装置。
【請求項2】
請求項1に記載した燃焼装置において、上記の燃焼筒の先端部が噴出口に向けて収縮した形状に形成されると共に、上記の外管がベンチュリ管状になっており、この外管の径が小さくなったスロート部が上記の排ガス導入口及び燃焼筒先端の噴出口よりも噴出方向前方に位置していることを特徴とする燃焼装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載した燃焼装置において、上記の燃焼筒の内径をD、上記の燃料ガス供給管の先端から燃焼筒先端の噴出口までの距離をLとした場合、L/Dの値が0.5〜2.7の範囲であることを特徴とする燃焼装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−85567(P2007−85567A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−271324(P2005−271324)
【出願日】平成17年9月20日(2005.9.20)
【出願人】(000211123)中外炉工業株式会社 (170)
【Fターム(参考)】