説明

燐光体又はシンチレータ材料の形成方法及びそのために使用される蒸着装置

【課題】燐光体又はシンチレータ原材料の支持体への成膜における高歩留まりの蒸着方法を提供する。
【解決手段】るつぼユニットは底部及び周囲側壁を持ち原材料容器としてのるつぼと、穿孔を有する内部蓋5と、煙突と、及び溶融され液化された燐光体原材料が減圧下で蒸発された形でるつぼユニットから逃避して支持体上に燐光体層として蒸着するスリットをさらに含み、煙突2の一つの加熱手段がスリット及びスロット出口3′を有する遮熱材3の下に位置され、遮熱材3はるつぼユニットをカバーし、かつ煙突2の一部を作る。燐光体原材料の蒸気雲がスロット出口3′と支持体の間を通りかつ支持体と平行にとったどのような断面から燐光体プレート又はパネル上に投影されても、蒸気雲の最長半径のそれに垂直な半径に対する比率が少なくとも1.3である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蒸着工程による貯蔵燐光体又はシンチレータプレートの製造方法に関する。特に、本発明は前記装置に装着された支持体上への蒸着を実施しながら蒸気雲の操縦を最適化するための蒸着装置における専用のるつぼユニットからの蒸着に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸着装置で実施される蒸着工程において、前記装置における以下の構成が従来技術から知られている。
【0003】
WO 90/12485に記載されているように、物理蒸着工程に使用するための装置は独立した温度で各蒸発器を維持するための手段を有する少なくとも二つの蒸発器、温度制御された収集器、蒸発器を包含する又は蒸発器と連通する容器(前記容器は蒸着支持体に面する放出開口を有する蒸気混合室をその中に規定する)、及びより熱い又は最も熱い蒸発器と少なくとも同じ温度で蒸気混合室を画成する部分において容器壁を維持するための手段を含み、それによって室壁上の蒸気の凝縮を抑制しながら各蒸気流の混合を増強する。蒸発器は蒸着支持体の位置に対して異なる高さに位置され、従って揮発性に劣る成分を含有する蒸発器は最も揮発する成分を有する他の蒸発器と蒸着支持体の間の高さにある。即ち、煙突壁と煙突スロット出口(3′)により近い。
【0004】
別の構成は揮発性に劣る成分を有するるつぼが中央に位置されたるつぼとしてWO 92/07103及びUS−A 5348703に記載されており、前記揮発性に劣る成分は蒸発されるために電子線照射され、前記中央に位置されたるつぼは揮発性に優れる成分で充填されたるつぼによって包囲され、放射加熱器によって加熱され、揮発性に優れる成分の蒸気流は支持体上に一緒に蒸着されるために電子線蒸発された揮発性に劣る成分の蒸気流中にノズルを通して導かれる。
【0005】
最近発行されたUS−A 6875990では放射線像貯蔵パネルの製造方法が記載され、前記方法は刺激性CsBr:Eu燐光体の燐光体層の支持体上の調製を含み、前記方法はマザー成分を含む一つ以上の蒸発源及びユウロピウム元素を含む一つ以上の蒸発源を蒸発させることを含み、マザー成分源の蒸発はユウロピウム元素源の蒸発から独立して制御され、支持体上に貯蔵燐光体層を形成し、それによってコンピュータ放射線写真に使用するために好適な光刺激性燐光体スクリーン又はパネルを与える。
【0006】
かかる燐光体又はUS−A 2005/0000448に記載されたシンチレータ材料のオンライン蒸着のために特に開発された蒸着装置は原材料の混合物を含有するるつぼ、前記るつぼと通じる少なくとも一つの出口及び線状スロット出口を有する煙突、前記煙突内に含まれる一つ以上の線状加熱要素、前記るつぼを包囲するオーブンを含み、前記オーブンは加熱要素、遮蔽要素及び冷却要素を含む。
【0007】
さらに最近のUS出願2005/0160979では大きな面積の支持体上に多結晶フィルムを蒸着するためのフィルム蒸着システムが開示されている。そのシステムは一組の壁から形成された室を含み、その組の壁は室内に少なくとも三つの温度領域を規定する。壁の各々は室を形成する他の壁から断熱されている。そのシステムはさらに、真空源、一組の熱源、及びその組の壁内の壁の温度を検出するための複数の温度検出器を含む。温度制御モジュールは温度領域の各々において温度を監視し、制御する。温度制御モジュールは寄生損失によって失われたフィルム形成材料の全質量が大きな面積の支持体上に蒸着されたフィルム質量より小さいように壁において予め決定された温度を維持する。多結晶フィルムを蒸着するための方法も記載されている。この方法のさらに他の実施態様では、形成工程は第一、第二及び第三温度領域を形成することを含み、そこでは壁の温度はそれぞれ予め決められた温度T,T、及びTに維持され、第二温度領域はフィルム形成材料の蒸気の凝縮速度が材料の蒸発速度より大きい領域であり、準備及び位置決め工程は次の工程をさらに含む:
− 第一温度領域においてフィルム形成材料を位置決めし、そこではその温度は相変化が起こりかつ材料が蒸発されるように第一の予め決められた温度Tで制御され、
− 第二温度領域において支持体を位置決めし、そこではその温度は第二の予め決められた温度Tで制御され、Tは凝縮速度がフィルム形成材料の蒸発速度を越える温度であり、
− 第三温度領域は支持体とフィルム形成材料の間に位置され、第三の予め決められた温度Tは蒸発されたフィルム形成材料が実質的に室の他の部分に寄生蒸着することなく室を通って蒸着のための支持体に向かって移動するときに実質的に蒸気として維持されるように制御される。T,T及びTの間の関係はT≧T>T、又はT>T及びT≦T>Tのいずれかであるようにすることができる。
【0008】
US出願2004/0219289において、極めて大きいスクリーン、シート、プレート又はパネル表面領域にわたって燐光体又はシンチレータ材料の均一な蒸着を得るために表面をできるだけ多く被覆する方法の適用が利用可能になった。前記方法はそこに述べられた蒸着被覆装置において極めて多くの構成を可能とする。さらに、ローラ形態で供給された移動する可撓性支持体を使用することによって、燐光体層で蒸着された莫大な領域が利用可能である。これらの層から望むような正しいフォーマットを切断して硬い支持体に対して積層することができる。
【0009】
US−A 7070658では蒸着の均一性をさらに改良する目的を達成するために、蒸着ユニットの特定部分、特に加熱システムに対してさらなる情報が与えられている。煙突の壁上へのシンチレータ又は燐光体材料の凝縮を避けるようなレベルにるつぼ内の温度を維持するための手段は蒸気を通過させるためのスリットを有する遮熱材の存在を含む。実施例では0.5mmの厚さを有する「タンタル」から構成された1mの長さ及び4cmの幅を有する細長いボートの形のるつぼは三つの集積部分(るつぼ容器、内部加熱煙突及び制御可能出口)で説明されている。そこの煙突は赤外線に加えてそれより短い波長の放射線を放出する11mmの直径を有する三つの線状放射線ヒータを与えられている。好ましくは前記放射線ヒータは煙突を加熱するために及び蒸発した材料の凝縮を克服するために存在する石英ハロゲンヒータである。さらに、煙突ヒータは支持体上への溶融又は蒸発された材料の制御されずかつ限定されない態様での飛び散りを克服するためにそらされた方法で位置される。制御可能な出口としての5mmのリップ開口が使用されている。スリット開口を有する遮熱材はさらに、制御された均一な方法で連続的に移動する支持体上への蒸気逃避及び付着を起こすために要求される熱の逃避及びエネルギーの損失を避けるために熱を遮蔽する。真空室(1)へのアルゴン又は窒素のような不活性ガスの連続流入によって維持された真空圧力(2×10−3mbarに等しい2×10−1Paの圧力)下で、かつ煙突及び蒸気源(760℃)の十分に高い温度で、得られた蒸気は移動するシート支持体の方に向けられ、前記支持体が蒸気流に沿って移動している間、連続的にその上に蒸着される。蒸気源の前記温度は、前記るつぼの外側に存在しかつ前記るつぼの底の下で押されている熱電対、及びるつぼ及び煙突に存在するタンタル保護された熱電対によって測定される。
【0010】
対流部材及び約120℃の支持体温度、好ましくは、支持体がかかる支持体温度まで輻射加熱される連続蒸着装置に対して少なくとも160℃の支持体温度についての表示を有する特定のるつぼ構成を別として、US−A 2005/0103273にはるつぼ温度についての表示は全く見出すことができない。
【0011】
US出願2005/0186329においてるつぼの温度に関する特別に詳細にした情報はいずれもるつぼの温度を与えていない。Tmelt−100℃からTmelt+100℃の温度T内でCsX:Eu燐光体を支持体上に蒸着する工程によって結合剤のない燐光体スクリーン又はパネルを製造する方法を与えることを別として、るつぼ内の温度又は所望の温度変化についての表示又は詳細は全く与えられていない。溶融温度Tmeltは所望の燐光体の溶融温度を表す。この文献では製造されたCsBr:Euスクリーン又はパネルの湿分に対する耐性の改良は蒸着工程を実施するための出発成分として選択された安定したCsEuX′x+αy錯体を使用することによって与えられる。
【0012】
US出願2007/0098880では蒸着によって支持体上に貯蔵燐光体層を製造する方法は燐光体プリカーサ原材料としてマトリックス成分及び活性化剤成分又はそのプリカーサ成分を加熱することによってるつぼユニットを使用し、前記るつぼユニットは液体の形でるつぼに存在する燐光体プリカーサ原材料のためのるつぼとして少なくとも底部及び周囲側壁を含み、前記るつぼユニットはさらに、るつぼユニットの一部としての煙突、及び燐光体プリカーサ原材料が蒸発された形で前記るつぼユニットから逃避して前記支持体上に燐光体層としてそれを蒸着されることができるスリットを含み、前記プリカーサ原材料をるつぼにおいて液体の形で加熱する工程は温度T1まで行なわれ、前記プリカーサ原材料を蒸発された形で前記煙突において加熱する工程は温度T2まで行なわれ、そこでは正の温度差[T−T]が維持される。
【0013】
るつぼから支持体又は蒸着装置壁上に飛び散り又は飛び跳ねる燐光体又はシンチレータ原材料の損失を避けるために、蒸着装置は有利には、蒸発集成体としてボート又はるつぼの形の容器、及び前記容器に存在する原材料から燐光体又はシンチレータ材料を上に蒸着するための支持体を含み、前記ボート又はるつぼは二つの穿孔されたカバー又は蓋の集成体を含み、その一つは前記支持体に近い方の外部蓋(第一蓋とも称される)であり、他のカバーは前記るつぼの底部に近い方の内部蓋(第二蓋とも称される)であり、前記外部蓋に存在する穿孔は前記るつぼの底部に近い方の前記内部蓋に存在する穿孔の全表面積を越える全表面積を有し、前記蒸着装置では前記原材料又は前記るつぼの底部は前記支持体のいかなる場所からも前記穿孔を通して直接見ることができず、それによって前記蒸着装置において結合剤のない針状貯蔵燐光体層の蒸着を確実にするためにアルカリ金属ハロゲン化物塩及びランタノイドドーパント塩又はその組み合わせの原材料の蒸着工程によって支持体上に放射線像貯蔵燐光体層の製造を与え、かくしてるつぼの底部に近い方の前記内部蓋における穿孔の全表面積と支持体に近い方の前記外部蓋における穿孔の全表面積の間の比率が1.0以下である(USシリアルNo.11/871272に開示)。
【0014】
しかしながら、これらの文献のいずれも、燐光体層が蒸着されるべき支持体の直接加熱が避けられるべきである、蒸着工程においてるつぼユニットから逃避する蒸気雲の操縦をさらに改良するための手段をさらに与える特に好適なるつぼ構成に特別に言及していない。前記蒸気雲の操縦を改良することはさらに、蒸着工程の歩留りの見地から望まれるだろう。なぜならば50%までの範囲の量の前記支持体上に蒸着されない原材料の損失が今まで一般に達成されているからである。例えば蒸着装置の壁に蒸着されたかかる多量の原材料はさらに、高価な原材料の高コストの回収を要求する。
【発明の開示】
【0015】
それゆえ、本発明の目的は貯蔵燐光体又はシンチレータの支持体上への原材料の蒸着の歩留りを改良することである。
【0016】
上述の有利な効果は請求項1に述べられた特別な特徴を有する方法によって実現される。
【0017】
本発明の好ましい実施態様に対する特別な特徴は従属請求項に述べられる。
【0018】
本発明のさらなる利点及び実施態様は以下の記載及び図面から明らかになるだろう。
【0019】
図面の簡単な記述
図1は煙突加熱要素(1)、内部加熱された煙突(2)、スリット(又は一次元のスリットの配列)を有する遮熱材(3)、スロット出口(3′)及びるつぼ、トレー又はボート(4)、穿孔を有する内部蓋(5)、るつぼと煙突の間の分離手段(6)、及びるつぼ及び煙突を互いに適合させるための「省略」又は「縮小」部分(7)を示し、そこでは一つのランプが(追加の)煙突加熱要素(1)として存在する。前記遮熱材(3)によってスロット出口(3′)の上の支持体から遮蔽されたランプの形の煙突加熱要素(1)の位置とともに煙突とるつぼの間の層又はリングの形の前記分離手段(6)は本発明の目的を達成するために極めて重要である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
狭いスリットを通って逃げるときの蒸気の膨張は蒸気の冷却を起こすことが知られている。結果として、狭いスリット上への凝縮が起こり、飛び跳ねや不均一な蒸着が燐光体又はシンチレータプレート上への不均一なスポットの生成及び感受性に劣り再現不可能で不安定なプレートに導く危険がある。
【0021】
本発明によれば、燐光体又はシンチレータプリカーサ原材料としてマトリックス成分及び活性化剤成分又はそのプリカーサ成分を加熱しながら、蒸着装置におけるるつぼユニットから蒸着することによって支持体上に貯蔵燐光体又はシンチレータ層を製造する方法であって、前記るつぼユニットが前記るつぼに存在する前記燐光体又はシンチレータプリカーサ原材料のための容器として底部及び周囲側壁を含み、前記るつぼが穿孔を有する内部蓋(5)を与えられ、前記るつぼユニットが前記るつぼユニットの一部としての煙突、及び溶融され液化された燐光体又はシンチレータプリカーサ原材料が減圧下で蒸発された形で前記るつぼユニットから逃避して前記支持体上に燐光体又はシンチレータ層として蒸着されることができるスリットをさらに含み、煙突(2)における少なくとも一つの加熱手段(1)がスリット及びスロット出口(3′)を有する遮熱材(3)の下に位置され、前記遮熱材(3)がそれによってるつぼユニットをカバーし、かつ前記煙突(2)の一部を作り、かくして前記加熱手段(1)が前記蒸着装置において蒸着ターゲットとして存在する前記支持体の面のあらゆる位置から前記スロット出口(3′)を通して蒸着ユニット中を見るときに観察されることができず、前記燐光体又はシンチレータプリカーサ原材料を蒸発している間、蒸気雲が前記スロット出口(3′)から前記支持体の方向に逃避し、かくしてスロット出口(3′)と支持体の間の前記蒸気雲を通りかつ前記支持体と平行にとったどのような断面から燐光体又はシンチレータプレート又はパネル上に投影されても、前記蒸気雲の最長半径のそれに垂直な半径に対する比率が少なくとも1.3である方法を適用することによって解決が図られる。
【0022】
本発明による方法の適用によって前記支持体の直接加熱は避けられる。なぜならば例えばランプのような追加の加熱手段は従来技術に記載されるように支持体上への飛び散りを避けるために通常使用されるそらせ板としてもはや使用されないからである。しかし、スリットを有する遮熱材は蒸発ユニットをカバーし、加熱手段(例えばランプ)はるつぼユニットとして煙突を有するるつぼの外側の蒸着装置中へのいかなる場所からもスロット出口を通して蒸着ユニット中を見るときに見られることができない。
【0023】
本発明によるさらなる実施態様では、前記煙突(2)と前記るつぼ(4)の間に分離手段(6)が存在する。前記分離手段(6)は本発明による一つの実施態様では分離リング又は層の形で存在する。特に、前記分離リング又は層は分離材料としてAl,SiO,石英、ガラス、セラミックス及びそれらの組み合わせからなる群から選択される酸化物を含む。
【0024】
本発明の方法による特別な実施態様では、前記プリカーサ原材料を液体の形でるつぼにおいて加熱する工程は温度T1まで行なわれ、前記プリカーサ原材料を蒸発された形で前記煙突(2)において加熱する工程は煙突(2)における前記少なくとも一つの加熱手段(1)によって温度T2まで行なわれ、そこでは正の温度差[T−T]が維持される。
【0025】
本発明の方法によれば、前記温度T1及びT2は輻射加熱、誘導加熱、抵抗加熱又はそれらの組み合わせによって達成される。蒸発開始前に予備加熱しながら又は蒸発を実施しながら適用される前記加熱方法は抵抗加熱、誘導加熱、輻射加熱又はそれらの組み合わせによって、即ち例えば石英ランプ又は赤外ランプのようなランプによって行なわれる。例えば煙突(2)における少なくとも一つの加熱手段(1)に対しては石英ハロゲンランプが好ましい。
【0026】
例えば蒸着装置に装着された支持体のためのさらなる追加の加熱器に関して、抵抗加熱器並びに輻射加熱器を適用してもよい。抵抗加熱器は目に見えない赤外線、即ち700nm以上の長い波長範囲の放射線を与えるものとしてここに規定されるが、例えば煙突(2)における少なくとも一つの加熱手段(1)のためのランプの形の輻射加熱器は700nm以上の長い波長範囲の赤外放射線に加えて700nm未満のスペクトル波長範囲の可視放射線も放出する。
【0027】
本発明による方法では、前述の前記温度T1及びT2は輻射加熱、抵抗加熱、又は輻射加熱と抵抗加熱の組み合わせによって達成されることが有利である。特別な実施態様では、前記温度T1及びT2は赤外線に加えて700nm未満の波長を有する放射線を放出する輻射加熱器によって達成され、(電気)抵抗加熱に加えて石英ハロゲンランプが推奨される。るつぼ容器は抵抗加熱によって通常加熱されるが、煙突温度は前記輻射加熱器によって高められることが有利である。しかし、それに限定されない。
【0028】
本発明によれば、さらなる実施態様では、前記るつぼ(4)と前記煙突(2)を互いに適合させるためにるつぼ(4)と煙突(2)の間に「省略」又は「縮小」部分(7)が与えられる。
【0029】
飛び散りを避けるために、小さな穿孔を有する内部蓋(5)は第一バリヤを形成し、スロット出口(3′)に対する前記「省略」又は「縮小」部分(7)の位置はさらに、蒸着装置における構成において燐光体又はシンチレータプレートの液化された原材料表面からの材料の飛び散りに対して追加のバリヤを形成し、そこではるつぼ(4)の前記内部蓋(5)に垂直ないかなる軸も、前記軸に平行で「省略」又は「縮小」部分(7)を通過するいかなる軸も、前記スロット出口(3′)を一緒に同時に通過しない。
【0030】
るつぼの寸法(即ち、幅と長さ)が煙突の寸法に匹敵しないとき、分離手段(6)と接触して位置される前記「縮小」部分は寸法の不適合性を克服し、従って分離手段(6)によってるつぼ(4)と煙突(2)の間に完全な適合が与えられる。
【0031】
「アダプタ」としてるつぼを煙突に適合する「省略」又は「縮小」部分としてのその機能に加えて、前記「省略」又は「縮小」部分はパネル支持体上へのスロット出口(3′)を通してのるつぼ中の溶融された原材料の表面から及びそれに垂直な直接飛び散りを避けることを助ける。
【0032】
本発明による方法の一実施態様では、CsXはマトリックス成分であり、EuX,EuX,EuOX又はそれらの混合物は活性化剤成分であり、XはCl,Br,I又はそれらの組み合わせを表す。
【0033】
本発明による方法の別の実施態様では、CsEuX′(x+αy)は活性化剤プリカーサ材料であり、x,y及びαは整数であり、x/yは0.25より大きく、αは少なくとも2であり、X′はF,Cl,Br,I又はそれらの組み合わせを表す。
【0034】
本発明による方法のさらに別の実施態様では、CsX′はマトリックス成分であり、TlX′又はTlX′又はその混合物は活性化剤成分であり、X′はF,Cl,Br,I又はそれらの組み合わせを表す。
【0035】
本発明の方法によれば、前記貯蔵燐光体はCsBr:Euであるが、シンチレータ材料を製造する場合には、前記シンチレータはCsI:Tlである。
【0036】
本発明による方法の一実施態様では、前記蒸着はバッチ法で行なわれる。
【0037】
本発明による方法の別の実施態様では、前記蒸着は連続法で行なわれる。
【0038】
本発明による蒸着装置は有利には、るつぼ(4)及び煙突(2)からなるるつぼユニットを含み、前記るつぼは穿孔を有する内部蓋(5)を与えられ、前記煙突(2)はスリット及びスロット出口(3′)を有する遮熱材(3)でカバーされ、前記煙突(2)は前記穿孔を有する内部蓋の中心に垂直な軸に対して非対称的に位置された少なくとも一つの煙突加熱要素(1)を含み、前記煙突加熱要素は前記スロット出口(3′)の外側のいかなる場所からも観察されない。
【0039】
一つの特別な実施態様では、本発明による蒸着装置は前記煙突(2)と前記るつぼ(4)の間に存在する分離手段(6)を与えられる。
【0040】
別の特別な実施態様では、本発明による蒸着装置は前記煙突(2)と前記るつぼ(4)の間の適合手段として存在する「省略」又は「縮小」部分(7)を与えられる。
【0041】
最も有利には、飛び散りを避けるために、本発明による蒸着装置は、るつぼ(4)の前記内部蓋(5)に垂直ないかなる軸も、前記軸に平行でかつ「省略」又は「縮小」部分(7)を通過するいかなる軸も、前記スロット出口(3′)を一緒に通過しないように構成される。
【0042】
本発明によって解決される問題は、小さな蒸発ユニットに有利であるが、連続オンライン蒸発のための装置のような大容量を有する蒸着装置に適用されることが有利であり、そこでは一つ以上のローラに取り付けられた支持体はUS−A 2004/0219289及び2004/0224084のようにるつぼユニットのスリット開口に沿って連続的に移動する。
【0043】
小さな蒸着装置におけるパネル支持体の加熱の問題のための解決策として、支持体温度が連続的に制御され、より好ましくは反結合機構(back−coupling mechanism)に沿って操縦されるように、るつぼの外側のるつぼユニットの近くに装着された冷却ユニットを与えられてもよい。それでもなお、このような蒸発雲の操縦は前述のようにるつぼ及び煙突からなる蒸発ユニットの構成によって支配されたままであり、蒸発工程の歩留まりの増大(即ち、るつぼに最初に存在する原材料の量に対して蒸着された燐光体又はシンチレータ材料の増大した量又は百分率)の有利な効果を生じる。
【0044】
本発明による蒸着装置における蒸発の有利な結果として、前記装置において蒸発ユニットから逃避する蒸発雲は「非対称」であり(即ち、燐光体又はシンチレータ層の燐光体又はシンチレータ支持体上への蒸着は円形蒸着の形ではなく、変形された円、例えば楕円の形で行なわれ)、従って蒸着の最長半径のそれに垂直な半径に対する比率は、スロット出口(3′)と支持体の間の前記蒸気雲を通りかつ前記支持体と平行にとったどのような断面から燐光体又はシンチレータプレート又はパネル上に投影されても、前記断面と前記支持体の間のどのような高さから燐光体又はシンチレータプレート又はパネル上に投影されても、少なくとも1.3である。
【0045】
本発明の有利な予期せぬ効果として、本発明に従って変更された蒸発工程における同じ被覆量の燐光体又はシンチレータについて、揮発性の強い及び弱い原材料成分又はプリカーサが前に開示されたような構成を有する一つの同じるつぼユニットから蒸発される工程に対して増大した燐光体又はシンチレータスピードが測定されることがさらに見出された。
【0046】
本発明による方法を実施するために使用される蒸着装置は、好ましい実施態様では、「非対称」蒸気雲として前記スロット出口(3′)を通って逃避するための前記原材料からの蒸発された粒子のための直接的な経路がないように位置されかつ前記スロット出口(3′)に対して装着された少なくとも一つの煙突加熱要素(煙突加熱器)(1)を有する。かかる配置では、小さな穿孔(5)を与えられた内部蓋又はカバーの存在は特に飛び散りを避けるために要求され、そこでは内部蓋又はカバーはそらせ板として作用する。内部蓋(5)としての穿孔された耐火プレート(例えばタンタルプレート)は内部加熱された煙突(2)に存在する煙突加熱器(1)の下のるつぼの内部に装着される。前記るつぼ及び前記穿孔された耐火プレートは燐光体又はシンチレータ材料の均一な蒸着のために熱伝導性集成体全体にわたるさらなる均一な加熱を与えるために電極対の間にさらに装着される。本発明による蒸着装置では、前記(制御可能な)スロット出口(3′)は矩形のスロット出口である。スロット出口(3′)は煙突(2)の高さと比較してあまり高くすべきでなく、好ましくはその50%以下にすべきである。
【0047】
本発明による方法を実施するために好適な蒸着装置における特別な実施態様では、前記煙突加熱要素(1)は上方又は下方位置で可動である。
【0048】
シンチレータ又は燐光体又はシンチレータ材料が本発明による方法に使用される蒸着装置において蒸着される支持体材料は、ガラス、セラミック材料、ポリマー材料、金属又はそれらの組み合わせから構成される。より好ましくは、ガラス、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、炭素繊維補強プラスチックシート、アルミニウム、Pyrex(登録商標)、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、サファイア、セレン化亜鉛、Zerodur(登録商標)、セラミック層、及びアルミニウム、鋼、真ちゅう、チタン及び銅の群から選択された金属又は合金をそのために適用することができる。原則としてそれらに限定されるべきではなく、本発明の被覆工程で一般に適用されるような程度までエネルギーを付与した後に例えば溶融による不可逆性の変形に耐えるいかなる金属又は合成材料も使用のために好適である。本発明の方法において可撓性支持体として特に好ましいものは支持体全体にわたって完全に均一な温度を可能とする極めて良好な熱伝導性材料としてのアルミニウムである。特に有用なアルミニウム支持体として、限定されないが、増白された陽極酸化アルミニウム、アルミニウム鏡及び酸化物パッケージ及び所望によりパリレン層を有する陽極酸化アルミニウム、銀鏡及び酸化物パッケージ及び所望によりパリレン層を有する陽極酸化アルミニウム(ALANOD,ドイツから入手可能)が推奨される。好ましい可撓性支持体として保護箔でカバーされた陽極酸化アルミニウム支持体層が推奨される。かかる陽極酸化アルミニウム支持体層は50〜500μmの範囲、より好ましくは200〜300μmの範囲の厚さを有してもよい。かかる陽極酸化アルミニウム支持体は蒸着された燐光体又はシンチレータに関する接着特性に対して特に好ましいことが示され、500μm〜1000μmの厚さを有するシンチレータ層で被覆された可撓性アルミニウム支持体の曲げであってもシンチレータ又は燐光体「フレーク」の「クラック」又は変形を起こさない。本発明の蒸着装置で作られるとき望ましくないクラックの発生に関して問題に遭遇することは全くない。
【0049】
蒸着が行なわれている間、前記可撓性支持体の温度は、約200℃のターゲット温度を考えて、調節可能な輻射加熱器によって150℃〜300℃の範囲、より好ましくは150℃〜250℃、さらにより好ましくは180℃〜220℃の範囲で維持される。支持体に沿ってアドレス可能な冷却ユニットを設置してもよい。特に、連続蒸着工程の場合にはローラ支持体上の均一な被覆プロファイルのために、アルミニウムによって良好な熱吸収を与えるハロゲン石英ランプが使用され、そこでは前記ハロゲン石英ランプは回転支持体に対して平行に配置される。前記個々の石英ランプを二列からなる水平に配置された配列で配置することが有利であり、それらの列の各々は重なるランプ位置を形成し、隣接する配列によって覆われない。それらの測定及び補間された計算に基づいて、加熱石英ランプは反結合機構によって操縦される:加熱/非加熱反結合機構によって連続的に通過する支持体の温度を操縦する個々の温度プロファイルはそれによって被覆されるウェブ支持体の幅方向の被覆厚さプロファイルを均一にする。例えばタンタルスクリーンとして反射する、例えば放物線状のスクリーンを両ランプ配列の各ランプの背後に与えてもよい。十分に高い一定の支持体温度を与えるために蒸着システム内の全ての熱を保持することが重要であり、しかも熱損失がおそらく支持体境界の近くに、即ちローラ支持された支持体の中心から離れて出現するので、前記熱損失を補償するためにその近くに補助的な石英ランプが設置される。
【0050】
それゆえ、分離したるつぼと煙突を得るために二つの方向に向けられるるつぼユニットを提供することが推奨され、そこではエネルギーの損失は最小化される。蒸着された層の厚さの均一性に関連するそれらの手段を別として、るつぼユニットの(幅方向の)長さにわたって開口するスリットの操縦された変動はさらに有用でありうる。スリット開口の全長にわたってチタンブロックがそのために有利に配置され、そこでは離れた各ブロックに対する抵抗加熱によるエネルギーの付加は特に必要な部位で可逆的に圧縮することによってスリット開口を減少させるために前記ブロックの膨張を可能にする。蒸着された材料の層厚さ及び層厚さプロファイルを制御するための手段は、前記厚さを操縦するために、及び所望の厚さが達成されるときに蒸着工程を制御及び停止するために設置されることが有利である。従って、蒸着領域にはキャパシタンス測定に基づいた厚さ測定システムが設置され、それによって前記シンチレータ又は燐光体層を蒸着しながら厚さを決定する。別の実施態様では、その場合に輻射線吸収測定に基づいた厚さ測定を与える例えばガンマ線源のような放射性源を使用してもよい。
【0051】
本発明による方法に使用される蒸着装置の容器(るつぼ)における原材料の組成が所望の最終組成又は被覆組成を与えるために選択され、前記組成が存在する原材料の比率によって決定されることは明らかである。原材料の比率は蒸発された原材料の蒸着後に所望の化学燐光体又はシンチレータ組成を与えるために選択される。固体粉末、粒子又は顆粒の形で、又は移動する支持体材料上に被覆された所望の燐光体又はシンチレータを与えるために所望の比率の原材料に対応する組成を有するトローチ錠として、るつぼにおいて均一な原料混合物を得るために原材料を混合することが望ましい。微粉砕法が、蒸着装置の前、外側、内側で行なわれるかどうかにかかわらず、蒸発前に高度の均一性を与えるために好ましく、従って推奨される。蒸着装置の内側の微粉砕の場合には、前記微粉砕工程はるつぼユニットの内側又は外側で実施されてもよい。異なる成分を既に前に提案したように直列又は並列又は組み合わされた配置で配置された異なるるつぼから蒸発させてもよい。但し、均一な蒸気雲が蒸気流を介して可撓性支持体に与えられ、前記支持体上への凝縮によって付着されることが条件である。別の実施態様では、もし均一な被覆プロファイルを与えるなら、ボートの形のるつぼは支持体の移動方向に垂直な一つの軸又はそれより多くの軸上に並列に配置されてもよい。但し、重なり合う蒸気雲は再び、前記燐光体又はシンチレータの均一な厚さ、組成及び被覆量を有する燐光体又はシンチレータ層において支持体上に蒸着する蒸気流を与えることが条件である。一つより多いるつぼの存在は単位時間あたりに蒸着される燐光体又はシンチレータ材料のより多い量を供給する能力に有利であり、可撓性支持体が支持体の極めて高い温度増加を避けるために十分に高い速度で蒸気流を通過すべきであるときはより一層そうである。支持体が容器を通過する速度は十分な冷却手段が凝縮のために存在しない限り、蒸着を不可能にする支持体の望ましくない局所的な加熱に照らして遅すぎないようにすべきである。それゆえ自己支持又は被支持の支持体は、所望の最適な特性を有する蒸着された燐光体又はシンチレータ層を得るために120℃〜300℃、好ましくは150℃〜250℃の温度を有することが好ましい。
【0052】
エネルギーはるつぼ、トレー又はボートとしても知られる一つ以上の容器に供給され、そこに存在する原材料の蒸気流(流れ)を起こし、それを封止された真空領域で蒸発させるべきであることは明らかである。エネルギーは熱、電気、又は電磁エネルギー源によってそれに与えられる。電磁エネルギー源の一例として、ダイオード、カソードアーク、レーザビーム、電子ビーム、イオンビーム、磁気放射線又は無線周波数を使用してもよく、それはパルス化されてもされなくてもよい。また、それらに限定されない。電気エネルギーは一般に抵抗加熱によって与えられ、それは熱エネルギーに変換するための構成で容器又はるつぼのまわりに巻かれた抵抗コイルを使用し、それによって蒸発されるべき原材料を充填された容器又はるつぼへの熱伝達を与える。容器又はるつぼを550℃〜900℃の範囲の温度まで加熱する程度のエネルギー供給が特に望ましい。それらの温度では、容器は腐食抵抗性を有するべきであることは明らかであり、従って耐火容器が好ましい。好ましい容器又はるつぼ材料はタングステン、タンタル、モリブデン及び他の好適な耐火金属である。前述のようなエネルギー供給源はるつぼ中の原材料の混合物を450℃以上、好ましくは550℃以上、さらにより好ましくは550℃〜900℃、例えば約700℃に加熱する。
【0053】
上記から、考えられるような均一な被覆プロファイルを得るために、均一性が液化原材料に与えられるとき(即ち、混合された固体−液体相から液体相への移行が現れるある臨界的な時間の後)に均一な雲が実現されうるにすぎないことは明らかである。結果として、容器に対して供給されたエネルギーの均一な分布は厳しい要求である。好ましい実施態様では、均一性のために、るつぼは前記るつぼ上を移動する可撓性支持体の幅に相当する最大寸法を有する単一の細長い「ボート」の形であり、従ってその表面領域の各点において瞬間的な速度の大きさは一定である。もし蒸着工程中又は後に必要なら、酸素をガス入口を介して酸素ガスの形で真空蒸着室中に導入することができる。あるいは、乾燥空気をガス入口から入れてもよい。特に、二つの蒸着工程間又は燐光体もしくはシンチレータ蒸着の終わりに実施されるアニール工程は有用でありうる。本発明の蒸着装置において支持体上で得られる被覆プロファイルに関する重要な要因は容器と移動する支持体の間の距離である。前記距離は可撓性支持体の位置の蒸気雲のプロファイルを決定するからである。るつぼと支持体の間の最短距離の平均値は大容量蒸着装置における連続工程では5〜10cmの範囲であることが好ましく、前記平均距離は小容量蒸着装置で実施されるときバッチ工程では10〜20cm、好ましくは約15cmであってもよい。距離が大きすぎると、材料の損失の増加及び工程の歩留りの低下に導き、一方距離が小さすぎると、支持体の高すぎる温度に導くだろう。特にバッチ工程で使用される蒸着装置の小さい蒸着室ではそうである。
【0054】
本発明による方法を実施するために使用される蒸着装置では、前記燐光体又はシンチレータ組成物の蒸着は一つ以上のるつぼからの原材料の蒸気流によって開始され、前記蒸気流は熱、電気、又は電磁エネルギー又はそれらの組み合わせによって前記原材料及び前記容器にエネルギーを加えることによって発生される。前記燐光体又はシンチレータ組成物の蒸着は物理蒸着、化学蒸着又は物理蒸着と化学蒸着の組み合わせによって行なうことが有利である。
【0055】
蒸着のときに、本発明による方法を実施するために使用される蒸着装置で作られる好ましい刺激性燐光体又はシンチレータ層は結合剤のない層である。これは十分に理解することができる。なぜならば、それらの高い温度では、容器中の燐光体又はシンチレータ原材料に加えて追加の結合剤の存在は実際的でないからである。しかしながら、例えば支持体と燐光体又はシンチレータ層の間で層で存在する結合剤材料又はカラー材料として又は被覆層における好ましい燐光体又はシンチレータ針状結晶の間で間隙又はクラックの形で現れる間隙を部分的に又は全体的に満たす充填剤として作用するために蒸発(例えば昇華)される能力を示すポリマー又は染料を使用することは除外されない。さらに、ポリマー層を蒸着された層上に積層するとき、ポリマー材料がそれらの針状結晶間の間隙を少なくとも部分的に満たすことは除外されない。もし間隙が10%未満、より好ましくは5%未満の深さの減少まで満たされるなら、針状結晶間のクロストークが避けられる。さらに、燐光体又はシンチレータシート又はパネルに所望のフォーマットに切断する前又は切断した後に、耐湿性層を与え、湿分感受性の燐光体又はシンチレータ層を劣化から保護することは除外されない。特に好ましい層は例えばUS−A 6710356に記載されたようにパリレン(p−キシリレン)層であり、それはUS出願2004/0164251に記載されたようにシラザン又はシロキサザン型ポリマー化合物又はそれらの混合物の透明有機層で上塗りされてもされなくてもよい。保護パリレン層を燐光体又はシンチレータ被覆に「パリレン層」として適用する方法では、ハロゲン含有層が好ましい。より好ましくは、前記「パリレン層」はパリレンD、パリレンC及びパリレンHT層からなる群から選択される。特別な場合において、架橋ポリマー層は燐光体又はシンチレータスクリーン材料上に形成されることが有利であり、前記ポリマー材料層は少なくとも一つの成分の反応によって形成され、それによって自己縮合ポリマーを形成する。反応性モノマーは支持体上に所望の縮合ポリマーを形成するために加熱された蒸気の形で与えられ、前記縮合ポリマーは燐光体又はシンチレータスクリーン支持体上のp−キシリレン又は「パリレン」層の形である。これらの「パリレン」層の例はポリ−p−キシリレン(パリレン−N)、ポリモノクロロ−p−キシリレン(パリレン−C)及びポリジクロロ−p−キシリレン(パリレン−D)である。もし望むなら、顔料をJP−A 62−135520に記載されたようにポリ−p−キシリレンの薄膜に一体化させることができる。
【0056】
光刺激性燐光体又はシンチレータ層を別として、即発ルミネセント燐光体を本発明による方法に使用される蒸着装置において被覆することができる。かかるルミネセント燐光体は例えばスクリーン/フィルム放射線写真に使用される増感スクリーンに使用するために好適である。
【0057】
CR及びDRと関連した特定の用途に関して、画像品質、特にシャープネスに照らして、前述のような結合剤のない燐光体又はシンチレータ層が好ましいことは明らかである。それに関して、所望のシンチレータ又は燐光体層を形成するために、本発明による方法を実施するために使用される蒸着装置における原材料の蒸発が好ましい技術であることは明らかである。但し、本発明の方法によれば、層は可撓性支持体上に蒸着されることが条件であり、そこでは特定のCR及びDR用途のために適した、すぐ使用できる平坦なシート又はパネルを得るために可撓性支持体を変形することが考えられる。本発明の方法に従って有利に製造される好ましいCsBr:Eu燐光体に加えて他の吸湿性燐光体又はシンチレータ層は例えば増感スクリーンに使用されるBaFCl:Eu,BaFBr:Eu及びGdOBr:Tm、例えばBaFBr:Eu,BaFI:Eu,(Ba,Sr)F(Br,I):Eu,RbBr:Tl,CsBr:Eu,CsCl:Eu及びRbBr:Euのようなコンピュータ放射線写真(CR)に使用するために好適なシンチレータパネル及び貯蔵燐光体に適用されるCsI:Na、又はUS出願2004/0262536及び2005/0002490のそれぞれに開示されるようなDRカセットに使用するために特に好適であるCsI:Tl,LuS:xM及びLuSi:xM(式中、MはEu,Pr及びSmからなる希土類元素からなる群から選択され、xは0.0001〜0.2である)である。
【実施例】
【0058】
本発明はその好ましい実施態様と関連して以下に記載されるが、本発明をそれらの実施態様に限定することを意図しないことが理解されるだろう。
【0059】
るつぼは10cmの長さ、35mmの幅及び47.5mmの高さを有するボートの形であり、それは0.25mmの厚さを有する「タンタル」から構成され、七つの集積部品:るつぼ容器(4)、内部加熱される煙突(2)、スリット及びスロット出口(3′)を有する遮熱材(3)、2mmの直径を有する小さな円形の穿孔を有する内部蓋(5)、るつぼと煙突の間の分離体としてのセラミックリング(6)、及びるつぼ(4)を煙突(2)に適合するための「省略」又は「縮小」部分から構成された。
【0060】
長手方向の部分は漏れを克服するために一つの連続的なタンタルベースプレートから折り曲げられ、ヘッド部分は溶接された。煙突は蒸発された材料の凝縮を克服するために煙突を加熱するための10mmの直径を有する一つの線状赤外ヒータ(石英ランプ)(1)を与えられた。さらに、煙突ヒータ(1)は、スリット及びスロット出口(3′)を有する遮熱材(3)の存在及び位置のおかげで、支持体の直接加熱が全く起こらないように位置された。制御可能な出口(3′)として12mmの蓋開口が遮熱部材におけるスリット開口の上で使用された。スリット開口を有する遮熱材は、制御されかつ均一な方法で支持体上への蒸気の逃避及び付着を起こすために必要なエネルギーの損失及び熱の逃避を避けるために熱を遮蔽した。小さな穿孔を有する内部蓋(5)は、制限されずかつ限定されない方法で溶融及び/又は蒸発された原材料の支持体上への飛び跳ねを回避した。
【0061】
分離手段としてセラミックリングが使用され、るつぼと煙突の寸法の間の完全な適合はさらに、縮小部分によって、るつぼ、分離セラミックリング及び煙突の間で実現された。
【0062】
CsBrは200gの量でるつぼに添加され、Eu−ドーパントプリカーサとして0.5重量%のEuOBrがそれに添加され、蒸発された原材料を蒸着し、CsBr:Eu貯蔵燐光体スクリーン又はパネルを作った。
【0063】
真空室へのアルゴンガスの連続流入によって維持された真空圧力(2×10−3mbarに等価な2×10−1Paの減圧)下で、そして蒸気源(760℃)及び煙突の十分に高い温度で、かくして得られた蒸気は蒸着装置のスロット出口を通って支持体に逃げ、前記支持体が蒸気流上で回転している間にその上に付着された。蒸気源の前記温度は、前記るつぼの底部の下で押されかつその外側に存在する熱電対、及びるつぼ及び煙突に存在するタンタル保護された熱電対によって測定された。
【0064】
表1には、パネル支持体上への燐光体の異なる厚さの蒸着後に測定された蒸気雲の寸法がまとめられている。寸法は、るつぼに存在する原材料を消費している間、前記蒸気雲が、遮熱材(3)におけるスリット開口として60mmの長さ及び11mmの幅を有する、本発明による煙突を有するるつぼからなるるつぼユニットから逃げるときに測定された。

【0065】
表2には、パネル支持体上への燐光体の異なる厚さの蒸着後に測定された蒸気雲の寸法がまとめられている。寸法は、再びるつぼに存在する原材料を消費している間、前記蒸気雲が煙突のないるつぼ(従って、本発明とは異なる比較例の蒸着装置を表す)から逃げるとき、そして各々が6mmの寸法を有する24個の穴(前記穴は125mm×50mmのカバー表面積にわたって分配されている)からなる、煙突のないるつぼ上にカバーを有している間に、測定された。

【0066】
(本発明の)表1の結果から明らかなように、前記原材料を蒸発している間にるつぼ中の原材料の消費の程度がどのようなものであっても、蒸気雲の長さと幅(長さ方向に対して垂直)の間の比率は本発明の蒸着ユニットでは1.3より高く、それは「非対称」蒸着雲の外観を示す。
【0067】
それに対して、(比較例の)表2の結果は、前記原材料を蒸発している間にるつぼ中の原材料のあらゆる消費の程度に対しても、蒸気雲の長さと幅(長さ方向に対して垂直)の間の比率が穿孔されたカバーを有するるつぼからの比較例の蒸発を適用するときに1.3より低いことを明らかに示す。これはかかる比較例の蒸着方法を実施している間のより「対称的な」蒸着雲の外観を示す。
【0068】
表3には、「比較例」の針状結晶像プレート(NIP CB24204&25502)及び「本発明」の針状結晶像プレート(NIP CB25406&25504)の製造に適用される蒸着ユニットの構成の特性が、煙突の存在(又は不存在)、加熱要素の位置に対する煙突の対称性(又は非対称性)、煙突(存在時)における出口開口の位置、煙突における加熱要素としてのランプの位置、及びるつぼを完全に消費したときのパネル支持体上に得られる被覆重量の観点から、まとめられている。以下の表3で表される被覆重量について得られた結果は、本発明のNIPについて得られたように、高い歩留り、低い材料損失を明らかに示す。煙突が存在するときであっても、ランプの及び出口開口の「対称的な」位置は、「非対称的な」煙突を生じる、出口開口及び内部加熱ランプの「非対称的な」位置によって指向されるような「非対称的な」蒸気雲から形成された本発明のNIPと比較すると、十分な歩留りを与えない。

【0069】
本発明による方法を適用することによってかくして達成された重要な結果として、本発明例における歩留り(即ち、蒸着された燐光体材料の量)は、蒸発が煙突を与えられた比較例の装置に適用されるときの蒸着された燐光体材料の量を少なくとも25%越え、前記歩留りは蒸発が煙突のない比較例の装置に適用されるときの蒸着された燐光体材料の量を少なくとも100%超える。このことは、まとめられた表3に与えられた結果から明らかである。
【0070】
本発明の好ましい実施態様を詳細に記載したが、添付の特許請求の範囲に規定された本発明の範囲から逸脱せずに多数の変更をなしうることは当業者に明らかであるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】煙突加熱要素(1)、内部加熱された煙突(2)、スリット(又は一次元のスリットの配列)を有する遮熱材(3)、スロット出口(3′)及びるつぼ、トレー又はボート(4)、穿孔を有する内部蓋(5)、るつぼと煙突の間の分離手段(6)、及びるつぼ及び煙突を互いに適合させるための「省略」又は「縮小」部分(7)を示す。
【符号の説明】
【0072】
(1)煙突加熱要素
(2)内部加熱される煙突
(3)スリット(又は一次元のスリットの配列)及びスロット出口(3′)を有する遮熱材
(4)るつぼ、トレー又はボート
(5)穿孔を有する内部蓋
(6)るつぼと煙突の間の分離手段
(7)るつぼ(4)を煙突(2)に適合するための「省略」又は「縮小」部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燐光体又はシンチレータプリカーサ原材料としてマトリックス成分及び活性化剤成分又はそのプリカーサ成分を加熱しながら、蒸着装置におけるるつぼユニットから蒸着することによって支持体上に貯蔵燐光体又はシンチレータ層を製造する方法であって、前記るつぼユニットが前記るつぼに存在する前記燐光体又はシンチレータプリカーサ原材料のための容器として底部及び周囲側壁を含み、前記るつぼが穿孔を有する内部蓋(5)を与えられ、前記るつぼユニットが前記るつぼユニットの一部としての煙突、及び溶融され液化された燐光体又はシンチレータプリカーサ原材料が減圧下で蒸発された形で前記るつぼユニットから逃避して前記支持体上に燐光体又はシンチレータ層として蒸着されることができるスリットをさらに含み、煙突(2)における少なくとも一つの加熱手段(1)がスリット及びスロット出口(3′)を有する遮熱材(3)の下に位置され、前記遮熱材(3)がそれによってるつぼユニットをカバーし、かつ前記煙突(2)の一部を作り、かくして前記加熱手段(1)が前記蒸着装置において蒸着ターゲットとして存在する前記支持体の面のあらゆる位置から前記スロット出口(3′)を通して蒸着ユニット中を見るときに観察されることができず、前記燐光体又はシンチレータプリカーサ原材料を蒸発している間、蒸気雲が前記スロット出口(3′)から前記支持体の方向に逃避し、かくしてスロット出口(3′)と支持体の間の前記蒸気雲を通りかつ前記支持体と平行にとったどのような断面から燐光体又はシンチレータプレート又はパネル上に投影されても、前記蒸気雲の最長半径のそれに垂直な半径に対する比率が少なくとも1.3である、方法。
【請求項2】
前記煙突(2)と前記るつぼ(4)の間の分離手段(6)が存在する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記るつぼ(4)と前記煙突(2)を互いに適合させるためにるつぼ(4)と煙突(2)の間に「省略」又は「縮小」部分(7)が与えられる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
るつぼ(4)及び煙突(2)からなるるつぼユニットを含む蒸着装置であって、前記るつぼが穿孔を有する内部蓋(5)を与えられ、前記煙突(2)がスリット及びスロット出口(3′)を有する遮熱材(3)でカバーされ、前記煙突(2)が前記穿孔を有する内部蓋(5)の中心に垂直な軸に対して非対称的に位置された少なくとも一つの煙突加熱要素(1)を含み、前記煙突加熱要素が前記スロット出口(3′)の外側のいかなる場所からも観察されない、蒸着装置。
【請求項5】
前記煙突(2)と前記るつぼ(4)の間に分離手段(6)が存在する、請求項4に記載の蒸着装置。
【請求項6】
前記るつぼ(4)と前記煙突(2)の間の適合手段として「省略」又は「縮小」部分(7)が存在する、請求項4又は5に記載の蒸着装置。
【請求項7】
るつぼ(4)の前記内部蓋(5)に垂直ないかなる軸も、前記軸に平行でかつ「省略」又は「縮小」部分(7)を通過するいかなる軸も、前記スロット出口(3′)を一緒に通過しない、請求項4〜6のいずれかに記載の蒸着装置。

【図1】
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【公開番号】特開2009−144231(P2009−144231A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−325852(P2007−325852)
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【出願人】(307010203)アグファ・ヘルスケア・エヌヴィ (10)
【Fターム(参考)】