物体姿勢検出システム及びこれを備えた移動体並びに無線タグラベル及び無線タグ情報読み取り装置
【課題】物体の姿勢を検出することができる物体姿勢検出システム及びこれを備えた移動体並びに無線タグラベル及び無線タグ情報読み取り装置を提供する。
【解決手段】検出対象の荷物4〜7と、この荷物4〜7に所定の配置で複数設けた無線タグ回路素子Toと、これら複数の無線タグ回路素子Toと無線通信を行うRF通信制御部140及びアンテナ101−1〜4と、このRF通信制御部140及びアンテナ101−1〜4による通信結果に基づき、荷物4〜7の姿勢を検出する制御装置103のCPU121とを有する。
【解決手段】検出対象の荷物4〜7と、この荷物4〜7に所定の配置で複数設けた無線タグ回路素子Toと、これら複数の無線タグ回路素子Toと無線通信を行うRF通信制御部140及びアンテナ101−1〜4と、このRF通信制御部140及びアンテナ101−1〜4による通信結果に基づき、荷物4〜7の姿勢を検出する制御装置103のCPU121とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の姿勢を検出することが可能な物体姿勢検出システム及びこれを備えた移動体並びに無線タグラベル及び無線タグ情報読み取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
小型の無線タグとリーダ(読み取り装置)/ライタ(書き込み装置)との間で非接触で情報の読み取り/書き込みを行うRFID(Radio Frequency Identification)システムが知られている。無線タグに備えられた無線タグ回路素子は、所定の無線タグ情報を記憶するIC回路部とこのIC回路部に接続されて情報の送受信を行うアンテナとを備えており、無線タグが汚れている場合や見えない位置に配置されている場合であっても、リーダ/ライタ側よりIC回路部の無線タグ情報に対してアクセス(情報の読み取り/書き込み)が可能であり、商品管理や検査工程等の様々な分野において実用が期待されている。
【0003】
この無線タグを物流システムに応用した例として、例えば特許文献1に記載のものがある。この従来技術は、トラックで荷物を配送する場合において運転手が実行する荷物の積み卸しの管理に応用したものである。すなわち、トラックに積載される各荷物に無線タグ回路素子(無線ICタグ)が備えられるとともに、トラックの荷物積み卸し口の周囲にリーダ(アンテナ)を設けておき、積み下ろし時に荷物が通過する際に、各荷物の無線タグ回路素子からその荷物の送り先、内容物等の荷物情報を取得し、あらかじめ物流情報センタのサーバーから取得した荷物情報と比較してチェックを行う。これにより、予定通り荷物の積み卸しがされているか否かの自動的なチェック作業を可能としている。
【特許文献1】特開2001−19167号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、技術の進歩・向上により、大容量ハードディスク等の精密機械が物流する機会が激増している。このような精密機械は、例えば運搬中の荷崩れや積み下ろし時の不注意等により横倒しになったりすると、その衝撃で故障する可能性がある。また、陶器・ガラス等の脆性を有する品の場合、横倒しになったときの衝撃で破損する可能性がある。一方で、物流する荷物の中には、例えば冷蔵庫等、その機能上運搬時の姿勢が問題となる品もある。したがって、物流サービスには、荷物の正確な配送に加え、各荷物を正常な姿勢で運搬することが要求される。
【0005】
しかしながら、上記従来技術では、荷物が予定通り積み卸しされているかどうかを照合確認するだけである。このため、配送中に例えば荷物が荷崩れによって横倒しとなったりひっくり返ったりしても、その荷物の姿勢状態を検出することはできない。すなわち、荷物の正確な配送は可能であるが、荷物が正常な姿勢で運搬されているか否かをチェックすることはできない。この結果、配送中に荷物の内容物に故障や破損を生じたり機能低下を招く可能性があり、物流サービスのサービス性が低下する畏れがあった。また3次元加速度センサーを用いてハードディスクなどの落下状態などを検出することが行われているものの非常に高価でありまた電源などを必要としていた。また、荷物に対してその姿勢の検出を行うのは困難であった。
【0006】
本発明の目的は、物体の姿勢を検出することができる物体姿勢検出システム及びこれを備えた移動体並びに無線タグラベル及び無線タグ情報読み取り装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1の発明は、検出対象の物体と、この物体に所定の配置で複数設けた無線タグ回路素子と、これら複数の無線タグ回路素子と無線通信を行う通信手段と、この通信手段による通信結果に基づき、前記物体の姿勢を検出する姿勢検出手段とを有することを特徴とする。
【0008】
本願第1発明の物体姿勢検出システムにおいては、検出対象の物体に複数の無線タグ回路素子が設けられており、通信手段がそれら複数の無線タグ回路素子と無線通信を行い、その通信結果に基づき、姿勢検出手段によって当該物体の姿勢が検出される。このように遠隔にて非接触で物体の姿勢を検出することにより、物体の姿勢の良否や、姿勢の変化又は回転の向き等を識別することが可能となる。
【0009】
第2の発明は、上記第1発明において、前記姿勢検出手段は、前記通信手段からの前記複数の無線タグ回路素子の配置方向を検出する方向検出手段を備えることを特徴とする。
【0010】
方向検出手段で複数の無線タグ回路素子の配置方向を検出することにより、例えば、検出した複数の無線タグ回路素子の方向が、物体が通常の姿勢である場合に検出されるべき方向と大きく異なっていた場合、非接触で物体が異常姿勢であると認定することが可能となる。
【0011】
第3の発明は、上記第2発明において、前記姿勢検出手段は、前記通信手段からの前記複数の無線タグ回路素子までの距離を検出する距離検出手段を備えることを特徴とする。
【0012】
方向検出手段による方向検出と距離検出手段の距離検出とを併せることで無線タグ回路素子の位置検出を正確に行うことができるので、物体の姿勢検出を更に高精度に行うことができる。また、この高精度の姿勢検出を時間を追って行うことで、物体の姿勢の変化や回転の向き等を高精度に識別することができる。
【0013】
第4の発明は、上記第1乃至第3発明のいずれかにおいて、前記複数の無線タグ回路素子のそれぞれは、共通の前記物体に配置されたことを表す配置物体情報を記憶保持することを特徴とする。
【0014】
これにより、通信範囲内に複数の物体が存在しそれら複数の物体の無線タグ回路素子から通信手段で一度に情報が読み取られた場合でも、それら多数の情報を配置物体情報を用いて容易に各物体毎に仕分けし、整理することが可能となる。
【0015】
第5の発明は、上記第4発明において、前記姿勢検出手段は、前記通信手段による通信結果に基づき、前記配置物体情報を取得する配置物体情報取得手段を備えることを特徴とする。
【0016】
通信範囲内に複数の物体が存在しそれら複数の物体の無線タグ回路素子から通信手段で一度に情報が読み取られた場合でも、それら多数の情報を、配置物体情報取得手段で取得した配置物体情報を用いて容易に各物体毎に仕分けし、整理することができる。
【0017】
第6の発明は、上記第1乃至第5発明のいずれかにおいて、前記複数の無線タグ回路素子は、前記所定の配置として、対応する前記物体の所定の姿勢において高さ方向位置が互いに異なるように当該物体に配置された2つの無線タグ回路素子を含むことを特徴とする。
【0018】
これにより、例えば物体が上下逆に配置された場合には当該2つの無線タグ回路素子の位置関係が逆となり、姿勢の異常を確実に識別することができる。
【0019】
第7の発明は、上記第1乃至第5発明のいずれかにおいて、前記複数の無線タグ回路素子は、前記所定の配置として、対応する前記物体のうち、同一平面上に位置しない4箇所にそれぞれ配置された4つの無線タグ回路素子を含むことを特徴とする。
【0020】
これにより、検出時に仮に3つの無線タグ回路素子が同一平面上に存在したとしても、残りの1つは当該平面上に位置していないことから、当該物体の姿勢及びその変化を確実に検出することができる。
【0021】
第8の発明は、上記第7発明において、前記4つの無線タグ回路素子のうち、比較する姿勢から最も移動量の大きい3つの無線タグ回路素子を選択して解析を行うことを特徴とする。
【0022】
これにより、無線タグ回路素子の座標検出における誤差の影響を最も小さくすることができる。
【0023】
第9の発明は、上記第7発明において、前記4つの無線タグ回路素子は、前記物体に仮想正四面体を配置しその4つの頂点位置に配置されていることを特徴とする。
【0024】
6つの各辺長さが等しい正四面体形状の頂点に4つの無線タグ回路素子を配置することにより、それら無線タグ回路素子に対し適宜の座標を設定し位置検出計算を行うときの演算処理を簡素化し、処理速度を向上することが可能となる。
【0025】
第10の発明は、上記第9発明において、前記仮想正四面体の重心位置を、前記物体の重心位置と略一致させたことを特徴とする。
【0026】
重心どうしを一致させることにより、物体の姿勢変化や回転等の運動を演算にて解析するとき、その解析処理を簡素化し、処理速度を向上することが可能となる。
【0027】
第11の発明は、上記第1乃至第10発明のいずれかにおいて、前記物体に関し予め定めた基準姿勢と、前記姿勢検出手段で検出した前記物体の姿勢との差が所定の許容範囲を超えていた場合、その旨を報知手段で報知するための信号を出力する報知制御信号出力手段を有することを特徴とする。
【0028】
これにより、基準姿勢から許容範囲を超えて逸脱した姿勢となった場合に、そのような異常姿勢であることを操作者に確実に認識させることができる。
【0029】
第12の発明は、上記第1乃至第11発明のいずれかにおいて、前記姿勢検出手段は、異なるタイミングにおける前記姿勢検出手段の検出結果に基づき、前記物体の姿勢変化を検出する運動検出手段を備えることを特徴とする。
【0030】
運動検出手段で物体の姿勢変化を検出することにより、物体の姿勢の変化や回転の向き等を識別することができる。
【0031】
第13の発明は、上記第12発明において、前記物体は、球技に使用される球体であり、前記運動検出手段は、前記球体の回転方向を検出することを特徴とする。
【0032】
これにより、例えば、野球やソフトボールにおける投手が投じる変化球の球種や、テニスのラリーにおけるスピン方向、サッカーやバレー、ボウリング、卓球等において競技者が意図的に付与したボールの回転方向等を検出することができる。
【0033】
第14の発明は、上記第13発明において、前記運動検出手段で検出した前記球体の回転方向に基づき、対応する球種情報を表示手段で表示するための信号を出力する表示制御信号出力手段を有することを特徴とする。
【0034】
これにより、例えば従来人間の目視で行っている、野球やソフトボールの投手の投球球種判定、テニスのラリーにおけるスピン方向判定等を、人手によらずに自動でかつ高精度短時間に行うことができる。また、ゲームセンターのピッチングシミュレーターで遊技者が投じた球が確かに意図する変化球となっていたことを表示して認定したり、投球の回転軌跡等を表示して遊技者を楽しませることも可能となる。
【0035】
上記目的を達成するために、第15の発明は、検出対象の物体に所定の配置で複数設けた無線タグ回路素子と無線通信を行う通信手段と、この通信手段による通信結果に基づき、前記物体の姿勢を検出する姿勢検出手段とを有することを特徴とする。
【0036】
本願第15発明の無線タグ情報読み取り装置においては、姿勢検出対象の物体に複数の無線タグ回路素子が設けられており、通信手段がそれら複数の無線タグ回路素子と無線通信を行い、その通信結果に基づき、姿勢検出手段によって当該物体の姿勢が検出される。このように遠隔にて非接触で物体の姿勢を検出することにより、物体の姿勢の良否や、姿勢の変化又は回転の向き等を識別することが可能となる。
【0037】
第16の発明は、上記第15発明において、前記通信手段は、複数のアンテナ素子からなるアンテナと、このアンテナの指向性方向を変化させる指向性制御手段とを備えることを特徴とする。
【0038】
指向性制御手段でアンテナの指向性方向を変化させつつ通信手段が複数の無線タグ回路素子と通信を行うことで、広範囲における管理対象物体の姿勢及び姿勢変化挙動を検出することができる。
【0039】
第17の発明は、上記第16発明において、前記指向性制御手段は、前記アンテナ偏波を円偏波とすることを特徴とする。
【0040】
円偏波を用いることにより、例えば無線タグ回路素子が設けられた物体が通常の状態から横倒しに倒れた等の場合であっても、その状態の無線タグ回路素子と確実に通信を行うことができる。
【0041】
上記目的を達成するために、第18の発明は、検出対象の物体の姿勢を検出するために当該物体に添付される無線タグラベルであって、情報を記憶するIC回路部とこのIC回路部に接続されるアンテナとをそれぞれ備え、前記物体の通常の姿勢に対応した所定の配置で設けられた複数の無線タグ回路素子と、前記物体の前記通常の姿勢に対応した所定の表記がなされた表記部とを有することを特徴とする。
【0042】
物体の通常の姿勢に対応した表記部が設けられていることにより、複数の無線タグ回路素子を備えた無線タグラベルを、その表記部に従って容易に正しく物体に貼り付けることができる。このようにして正しく貼り付けられた無線タグラベルに備えられた複数の無線タグ回路素子に対し通信手段が無線通信を行うことで、その通信結果に基づき物体の姿勢を検出し、物体の姿勢の良否を識別することが可能となる。
【0043】
第19の発明は、上記第18発明において、前記複数の無線タグ回路素子は、前記物体の前記通常の姿勢における上方側に対応した位置に配置された上方用無線タグ回路素子と、前記物体の前記通常の姿勢における下方側に対応した位置に配置された下方用無線タグ回路素子とを含むことを特徴とする。
【0044】
これにより、例えば物体が上下逆に配置された場合には本来上方にあるべき上方用無線タグ回路素子が下方に位置し、本来下方にあるべき下方用無線タグ回路素子が上方に位置して、2つの無線タグ回路素子の位置関係が逆となるので、姿勢の異常を確実に識別することができる。
【0045】
第20の発明は、上記第18又は第19発明において、前記複数の無線タグ回路素子のそれぞれは、共通の前記物体に配置されたことを表す配置物体情報を記憶保持することを特徴とする。
【0046】
これにより、通信範囲内に複数の物体が存在し、それら複数の物体に設けた複数の無線タグラベルの無線タグ回路素子から、一度に装置側へ情報が読み取られた場合でも、それら多数の情報を配置物体情報を用いて容易に各物体毎に仕分けし、整理することが可能となる。
【0047】
上記目的を達成するために、第21の発明は、上記第1乃至第14発明のいずれかの物体姿勢検出システムを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0048】
本発明によれば、物体の姿勢を検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。本実施形態は、例えばトラックで荷物を配送する物流サービスに本発明を適用した例である。
【0050】
図1は、本発明の物体姿勢検出システムの一実施形態である物品姿勢検出システムを備えた配送トラックの全体構造を表す斜視図である。
【0051】
図1において、配送トラック1(移動体)は運転室2と荷物室3とを有しており、荷物室3には物品姿勢検出システム100が設けられている。この物品姿勢検出システム100は、荷物室3内に積み込まれた各荷物に備えられる無線タグ回路素子Toを検出するための複数(この例では4つ)のアンテナ101−1,101−2,101−3,101−4(通信手段)と、荷物が荷崩れを起こした場合等(詳細は後述)に警告音を発する警報装置102(報知手段)と、これらアンテナ101−1〜101−4及び警報装置102にケーブル104等を介して接続された制御装置103とを備えている。各アンテナ101−1〜101−4からは各荷物の無線タグ回路素子Toについての検出信号が制御装置103へと出力される。
【0052】
アンテナ101−1〜101−4はいわゆるフェイズドアレイ制御により各荷物に備えられた無線タグ回路素子Toの仰角を検出するフェイズドアレイアンテナであり(詳細は後述)、荷物室3の積み下ろし口3A(後述の図2参照)近傍の上下左右4箇所に設置されている。なお、本実施形態では4箇所に設けるようにしたが、積み下ろし口3Aの上部分の左右2箇所にのみ設けるようにしてもよい。
【0053】
制御装置103は、CPU121及びROM、RAM等からなるメモリ123を備えている(後述の図6参照)。この制御装置103は、各アンテナ101−1〜101−4を介して検出された各荷物の無線タグ回路素子Toの検出信号に基づき、各無線タグ回路素子ToのID及び各無線タグ回路素子Toの仰角をそれぞれ検出する。そして、これら無線タグ回路素子ToのID及び仰角に基づいて、その無線タグ回路素子Toが備えられた荷物の姿勢が正常であるか否かを判定する(詳細は後述)。荷物の姿勢が異常であると判定した場合には、警報装置102に制御信号を送信し、警報装置102から警報を出力させる。
【0054】
警報装置102は、例えばブザー等の警告音を発する装置であり、その出力される警報が運転室2、荷物室3及びその周囲に聞こえるように設置されている。なお、警告音だけに限らず、例えば警告表示を行う表示手段(液晶等)を有する警報装置を用いてもよい。
【0055】
図2は、荷物室3の内部を積み下ろし口3A側から見た図である。
【0056】
この図2において、荷物室3には、4つの荷物4,5,6,7(物体)が積み込まれている。なお、ここでは荷物4,5,6は正常な状態で積み上げられているが、荷物7が横倒しになった例を示している。各荷物4〜7には、表面に「天地」の文字が印字されたタグラベルT(各荷物4,5,6,7に対応するタグラベルをそれぞれT4,T5,T6,T7とする)が、その天地文字が各荷物4〜7の上下方向にそれぞれ対応するように貼り付けられている。
【0057】
図3は、タグラベルT(無線タグラベル)の概略全体構造を表す荷物4の側面図である。なお、ここでは荷物4に貼り付けたタグラベルT4を例にとって図示しているが、他の荷物に貼り付けられたタグラベルTも同様の構造である。
【0058】
この図3に示すように、タグラベルTは複数(本実施形態では長手方向両端に2つ)の無線タグ回路素子To、すなわち上側に無線タグ回路素子To4−1(上方用無線タグ回路素子)、下側に無線タグ回路素子To4−2(下方用無線タグ回路素子)をそれぞれ有しており、その表面には上記したように「天地」の文字が印字された表記部T4aが設けられている。このタグラベルTを荷物に貼り付ける際には、荷物を正常な姿勢とした状態で「天」の字が上方向に、「地」の字が下方向となるように貼り付ける。なお、ここではタグラベルTに「天地」の文字を印字するようにしたが、例えば「UP
DOWN」や「上下」のように上下方向の位置関係のわかる他の表現を印字してもよいし、また記号や動物の絵などを印字するようにしてもよい。さらに、印字に限らず、タグラベルTの表記部T4aに刻印を行ったり、写真等を貼り付けるようにしてもよい。
【0059】
図4は、上述した各荷物4〜7に添付されたタグラベルT4〜T7に備えられた無線タグ回路素子Toの機能的構成の一例を表すブロック図である。
【0060】
図4において、無線タグ回路素子Toは、制御装置103に接続されたアンテナ100−1〜100−4と例えばUHF帯等の高周波を用いて非接触で信号の送受信を行うアンテナ151(タグ側アンテナ)と、このアンテナ151に接続されたIC回路部150とを有している。
【0061】
IC回路部150は、アンテナ151により受信された搬送波を整流する整流部152と、この整流部152により整流された搬送波のエネルギを蓄積しIC回路部150の駆動電源とするための電源部153と、上記アンテナ151により受信された搬送波からクロック信号を抽出して制御部(後述)157に供給するクロック抽出部154と、所定の情報信号を記憶し得る情報記憶部として機能するメモリ部155と、上記アンテナ151に接続された変復調部156と、上記整流部152、クロック抽出部154、及び変復調部156等を介して無線タグ回路素子Toの作動を制御するための制御部157とを備えている。
【0062】
変復調部156は、アンテナ151により受信されたアンテナ100−1〜100−4からの通信信号の復調を行うと共に、上記制御部157からの返信信号に基づき、アンテナ100−1〜100−4より受信された搬送波を反射変調する。
【0063】
制御部157は、上記変復調部156により復調された受信信号を解釈し、上記メモリ部155において記憶された情報信号に基づいて返信信号を生成し、上記変復調部156により返信する制御等の基本的な制御を実行する。
【0064】
図5は、各無線タグ回路素子Toのメモリ部155に記憶されるIDの一例を示す図である。
【0065】
この図5において、メモリ部155に記憶されたIDは、共通部と独立部から構成されている。共通部にはその無線タグ回路素子Toを有するタグラベルTが貼り付けられる荷物の荷物情報(例えば内容物や配送先情報等)が格納されており(ここでは32ビットの例を図示)、同一の荷物に取り付けられる(すなわち同一のタグラベルTに備えられる)無線タグ回路素子ToのIDの共通部は同一である。独立部には上下方向の位置関係を表す位置情報が格納されており、本実施形態では、この独立部に格納される数字が小さい方が上下位置が下側となるようになっている。後述する説明の都合上、独立部を4ビットで表現しているが、1ビットとしても良い。
【0066】
図6は、上記制御装置103の機能的構成の詳細を表す機能ブロック図である。
【0067】
図6において、制御装置103は、CPU(中央演算装置)121と、例えばRAMやROM等からなるメモリ123と、上記警報装置102に対する各種制御を行う警報装置制御部124(報知制御信号出力手段)と、アンテナ101−1〜101−4を介しタグラベルTに備えられた無線タグ回路素子Toのアンテナ151と通信制御を行うRF通信制御部140(通信手段)とを備えている。
【0068】
図7は、上記RF通信制御部140及びアンテナ101−1〜101−4の詳細構成を表す機能ブロック図である。
【0069】
図7において、アンテナ101−1〜101−4は、1つの送信アンテナ(アンテナ素子)10と、複数(この例では8つ)の受信アンテナ(アンテナ素子)11A,11B,11C,11D,11E,11F,11G,11H(但し煩雑防止のため一部図示省略、以下同様)とから構成されている。
【0070】
RF通信制御部140は、上記送信アンテナ10及び受信アンテナ11A,11B,11C,11D,11E,11F,11G,11Hを介し上記無線タグ回路素子ToのIC回路部150の情報(無線タグ情報)へアクセスするための送信部212及び受信部213(=高周波回路)と、受信アンテナ11A,11B,11C,11D,11E,11F,11G,11Hにそれぞれ係わる位相制御ユニット203A,203B,203C,203D,203E,203F,203G,203H(指向性制御手段)と、これら位相制御ユニット203A〜203Hからの出力を加算する加算器205とを有し、無線タグ回路素子ToのIC回路部150から読み取られた信号を処理して情報を読み出すとともに無線タグ回路素子ToのIC回路部150へアクセスするためのアクセス情報を生成する機能を含む上記CPU121と接続されている。
【0071】
位相制御ユニット203A,203B,203C,203D,203E,203F,203G,203Hは、CPU121からの位相制御信号を入力しこれに応じて受信アンテナ11A,11B,11C,11D,11E,11F,11G,11Hにおける受信電波信号の位相をそれぞれ可変に設定する移相器206A,206B,206C,206D,206E,206F,206G,206Hと、CPU121からの信号を入力しこれに応じて移相器206A,206B,206C,206D,206E,206F,206G,206Hから入力した信号を可変に増幅し上記加算器205に出力する可変ゲインアンプ(増幅率可変アンプ)208A,208B,208C,208D,208E,208F,208G,208Hとを備えている。
【0072】
送信部212は、送信アンテナ10を介し無線タグ回路素子Toに対して信号を送信するものであり、無線タグ回路素子ToのIC回路部150の無線タグ情報にアクセスするための搬送波を発生させる水晶発振回路215、PLL(Phase
Locked Loop)213、及びVCO(Voltage Controlled Oscillator)214と、上記CPU121から供給される信号に基づいて上記搬送波発生部により発生させられた搬送波を変調(この例ではCPU121からの「TX_ASK」信号に基づく振幅変調)する送信乗算回路216(但し「TX_ASK信号」の場合は増幅率可変アンプ等を用いてもよい)と、その送信乗算回路216により変調された変調波を増幅(この例ではCPU121からの「TX_PWR」信号によって増幅率を決定される増幅)する送信アンプ217とを備えている。そして、上記搬送波発生部により発生される搬送波は、好適には周波数300MHz以上とされ、望ましくは900MHz近傍あるいは2.45GHz近傍とされ、上記送信アンプ217の出力は、送信アンテナ10に伝達されて無線タグ回路素子ToのIC回路部150に供給される。
【0073】
受信部213は、受信アンテナ11A,11B,11C,11D,11E,11F,11G,11Hで受信され上記位相制御ユニット203A,203B,203C,203D,203E,203F,203G,203Hを経て加算器205で合算された無線タグ回路素子Toからの反射波と上記搬送波発生部により発生させられた搬送波とを掛け合わせる受信第1乗算回路218と、その受信第1乗算回路218の出力から必要な帯域の信号のみを取り出すための第1バンドパスフィルタ219と、この第1バンドパスフィルタ219の出力を増幅する受信第1アンプ221と、この受信第1アンプ221の出力をさらに増幅してデジタル信号に変換する第1リミッタ220と、上記受信アンテナ11A〜11Hで受信され上記位相制御ユニット203A〜203Hを経て加算器205で合算された無線タグ回路素子Toからの反射波と上記搬送波発生部により発生された後に位相を90°遅らせた搬送波とを掛け合わせる受信第2乗算回路222と、その受信第2乗算回路222の出力から必要な帯域の信号のみを取り出すための第2バンドパスフィルタ223と、この第2バンドパスフィルタ223の出力を増幅する受信第2アンプ225と、この受信第2アンプ225の出力をさらに増幅してデジタル信号に変換する第2リミッタ224とを備えている。そして、上記第1リミッタ220から出力される信号「RXS−I」及び第2リミッタ224から出力される信号「RXS−Q」は、上記CPU121に入力されて処理される。
【0074】
また、受信第1アンプ221及び受信第2アンプ225の出力は、RSSI(Received Signal Strength Indicator)回路226にも入力され、それらの信号の強度を示す信号「RSSI」がCPU121に入力される。このようにして、本実施形態の制御装置103のRF通信制御部140では、I−Q直交復調によって無線タグ回路素子Toからの反射波の復調が行われる。
【0075】
CPU121は、いわゆるマイクロコンピュータであり、詳細な図示を省略するが、上記メモリ123の一時記憶機能を利用しつつ予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うようになっている。このCPU121は、上述した高周波回路受信部213からの受信信号等を入力した後所定の演算処理を行い、上述した高周波回路送信部212への増幅制御信号及び変調制御信号、位相制御ユニット203A〜203Hへの位相制御信号等を出力する。
【0076】
以上のような構成である本実施形態の物品姿勢検出システム100では、制御装置103(正確にはCPU121)が、各アンテナ101−1〜101−4から入力された各荷物の無線タグ回路素子Toの検出信号に基づき、各無線タグ回路素子ToのID及び各無線タグ回路素子Toの仰角をそれぞれ検出し、これら無線タグ回路素子ToのID及び仰角に基づいてその無線タグ回路素子Toが備えられた荷物の姿勢が正常であるか否かを判定する姿勢判定制御を行う。
【0077】
図8は、制御装置103のCPU121によって行われる上記姿勢判定制御の制御手順を表すフローチャートである。
【0078】
この図8において、制御装置103の電源がONされると、このフローが開始される。
【0079】
まず、ステップS51において、制御装置103の電源がONとなった後(又は前回の周期T1経過時の後)周期T1が経過したかどうかを判定する。この周期T1は、本実施形態の物品姿勢検出システム100が姿勢判定を行う処理周期であり、例えば10〜30秒程度に設定されている。周期T1が経過した場合には判定が満たされて次のステップS300に移る。
【0080】
ステップS300では、荷物室3内に積み込まれた全荷物(本実施形態では荷物4〜7)に貼り付けられたタグラベルT(T4〜T7)の各無線タグ回路素子To(To−1,To−2)のIDを検知するID検知処理を行う(詳細は後述)。なお、このID検知処理は、各アンテナ101−1〜101−4を介してそれぞれ独立に行われる。
【0081】
次のステップS400では、上記ステップS300で検知した各無線タグ回路素子ToのIDの中から同一の荷物(同一のタグラベルT)に備えられている無線タグ回路素子To同士のIDを抽出する関連ID抽出処理を行う(詳細は後述)。なお、この関連ID抽出処理も、上記ID検知処理で各アンテナ101−1〜101−4を介して検知されたIDごとにそれぞれ行われる。
【0082】
次のステップS500では、上記ステップS400で抽出した関連IDに係る無線タグ回路素子Toが備えられた物体の姿勢を検出し、その姿勢が正常であるか否かを判定する姿勢検出処理を行う(詳細は後述)。なお、この姿勢検出処理も、各アンテナ101−1〜101−4を介して検知し抽出された関連IDごとにそれぞれ行われる。
【0083】
次のステップS52では、上記ステップS500で荷物の姿勢が異常であると判定したかどうかを判定する。全アンテナ101−1〜101−4を介して正常姿勢が検出された場合(言い換えれば、各アンテナ101−1〜101−4を介して検知し抽出した関連IDの全てについて姿勢が正常であると判定された場合)には、判定が満たされずにステップS51に戻る。一方、各アンテナ101−1〜101−4のうち1つでも異常姿勢を検出している場合(言い換えれば、各アンテナ101−1〜101−4のうち少なくとも1つのアンテナを介して検知し抽出した関連IDについて姿勢が異常であると判定された場合)には、判定が満たされて次のステップS53に移る。
【0084】
ステップS53では、警報装置制御部124を介して警報装置102に対して制御信号を出力し、警報装置102から警報を発生させる。この警報装置102の警報は、前述したように運転室2、荷物室3及びその周囲に聞こえるようになっており、例えば運転中に荷物が倒れた場合でも運転手にその旨の注意を促すことができ、また例えば荷物の積み下ろし作業中に荷物が倒れた場合にも積み下ろし作業を行う作業者にその旨の注意を促すことができるようになっている。その後、ステップS51に戻る。
【0085】
図9は、上記ステップS300のID検知処理の詳細手順を表すフローチャートである。このID検知処理では、各アンテナ101−1〜101−4の受信アンテナ11A〜11Hのメインローブの方向(=受信指向性の方向)を単一方向に保持しつつその方向を変化させるいわゆるフェイズドアレイ制御を行う。その際、ある基準位置(本実施形態ではアンテナ101−1〜101−4から見て略水平方向を0°)からのメインローブ方向の角度(以下適宜、メインローブ方向角という)をθとして、このメインローブ方向角θを所定刻みθSTEPごとに変化させることとなる。
【0086】
ステップS310では、上記フェイズドアレイ制御開始にあたり、そのメインローブ方向を示すメインローブ方向角θの初期値をθaに設定する。本実施形態では、上記したようにθa=0°(略水平方向)である。
【0087】
次のステップS320では、メインローブ方向角θの値に応じ、受信アンテナ11A,11B,11C,11D,11E,11F,11G,11Hに係る位相を決定し、これに対応した位相制御信号を位相制御ユニット203A,203B,203C,203D,203E,203F,203G,203Hに出力する。
【0088】
具体的には、一般に、受信電波の隣接するアンテナ素子間での受信信号の位相差は、隣接する受信アンテナ素子の間隔をd、受信電波の波長をλ、メインローブ方向角をθとして(2・π・d・cosθ)/λで表されることから、対応する位相差が位相制御ユニット203A〜203Hにそれぞれ与えられる。
【0089】
その後、ステップS330で、上記のように受信アンテナ11A〜11Hの位相を設定した(言いかえればメインローブ方向角θを設定した)条件のもと、送信アンテナ10より無線タグ回路素子Toに対し問い合わせ信号を出力させる。詳細には、「TX_ASK」信号を生成して送信乗算回路216に出力し、送信乗算回路216で対応する上記振幅変調が行われアクセス情報としての問い合わせ信号となる。この問い合わせ信号としては、例えば「Scroll
ALL ID」信号や階層的に複数回送信を行う「PING」信号等を用いる。一方、CPU121は「TX_PWR」信号を生成して送信アンプ217に出力し、送信アンプ217でその「TX_PWR」信号に基づく増幅率で信号増幅が行われ、最終的に送信アンテナ10を介し送信され、各荷物に貼り付けられたタグラベルTの無線タグ回路素子Toからの返信を促す。
【0090】
次のステップS340では、上記問い合わせ信号に対応して各荷物のタグラベルTの無線タグ回路素子Toから送信された返答信号(=リプライ信号;タグ識別ID情報等の無線タグ情報)を受信アンテナ11A〜11Hより受信し、位相制御ユニット203A〜203Hでその位相を制御し、加算器205及び受信部213を介し取り込む。このときのRSSI回路226からの受信信号強度信号「RSSI」が入力され、その値が次のステップS350でメモリ123に記憶される。
【0091】
そしてステップS360で、θが、予めメインローブ方向角θを順次変化させるときの最終値として設定されたθEND(例えばアンテナ101−1,101−2では−90°、アンテナ101−3,101−4では90°等)に等しくなったかどうかを判定する。最初はθ=θaであるから判定が満たされず、ステップS365で予め定められたθSTEP(例えばアンテナ101−1,101−2ではθSTEP=−5°、アンテナ101−3,101−4ではθSTEP=5°)だけ加え、ステップS320に戻り、同様の手順を繰り返す。
【0092】
こうしてステップS320〜ステップS365を繰り返してθの値にθSTEPを小刻みに加え、全受信アンテナ11A〜11Hによって生じるメインローブ(指向性)の方向を単一方向に保持しつつそのメインローブ方向角θを徐々に変化させながら、信号送信及び受信を繰り返しその都度受信信号を記憶していく。そしてθ=θENDになったらステップS360の判定が満たされ、ステップS370に移る。
【0093】
ステップS370では、上記ステップS340で返答信号を受信した全無線タグ回路素子Toについて、そのタグ識別ID情報を例えばID表としてメモリ123に記憶させる(後述の図13参照)。
【0094】
ステップS380では、上記ステップS320〜ステップS365の繰り返しの間にステップS350で記憶した信号強度に基づき、上記ステップS370で記憶した各タグIDについて、その無線タグ回路素子Toの存在する指向性方向(各アンテナ101−1〜101−4から見た仰角)θTを決定する(例えば最も信号強度が大きかったメインローブ方向角方向とする)。
【0095】
次のステップS390では、上記ステップS380で決定した各無線タグ回路素子Toの仰角θTを、上記ステップS370で記憶した各タグIDに対応させて例えばID表としてメモリ123に記憶させ(後述の図13参照)、このフローを終了する。
【0096】
なお、各アンテナ101−1〜101−4から出力される問い合わせ信号は、その水平方向(言い換えれば荷物室3の奥行き方向)にある程度の広がりをもって出力されるため、本実施形態のようにメインローブ方向角θを上下方向のみ変化させるようにしても、荷物室3内をほぼ全部スキャンできるようになっている。但し、より確実に荷物室3内をスキャンできるように、例えばメインローブ方向角θを水平方向(荷物室3の奥行き方向)についても変化させるようにしてもよい。また、本実施形態ではアンテナ101−1〜101−4を荷物室3の積み下ろし口3A近傍にのみ設けるようにしたが、例えば荷物室3の奥行き方向に複数列に設けるようにしてもよい。
【0097】
図10は、上記図8のステップS400の関連ID抽出処理の詳細手順を表すフローチャートである。
【0098】
まずステップS405では、上記図9で説明したID検知処理のステップS370及びステップS390でメモリ123に記憶されたID表にタグIDと仰角が書き込まれているかどうか、すなわち、ID検知処理によって無線タグ回路素子Toが検知されたかどうかを判定する。ID検知処理により無線タグ回路素子Toが検知されず、ID表が空であれば、判定が満たされて本フローを終了する。一方、ID検知処理により無線タグ回路素子Toが検知され、ID表が空でなければ、判定が満たされずにステップS410に移る。
【0099】
ステップS410では、ID表に書き込まれたタグIDのうち1つのID(例えば先頭行のID。以下「ID1」と記載)を取得する。
【0100】
次のステップS415では、上記ステップS410で取得したID1の共通部(図5参照。以下「C1」と記載)を取得する。
【0101】
次のステップS420では、ID表に書き込まれたタグIDのうちの次のID(例えばID1の次の行のID。以下「ID2」と記載)を取得する。
【0102】
次のステップS425では、上記ステップS420で取得したID2の共通部(以下「C2」と記載)を取得する。
【0103】
次のステップS430では、上記取得したID1の共通部C1とID2の共通部C2とが一致するかどうかを判定する。一致する場合には判定が満たされて次のステップS435に移る。
【0104】
ステップS435では、共通部C1と一致する共通部C2を有するID2を一時的にメモリ123に記憶させる。そして次のステップS440に移る。なお、上記のステップS430で共通部C1と共通部C2とが一致せずに判定が満たされない場合には、直接次のステップS440に移る。
【0105】
ステップS440では、ID表に書き込まれた全タグIDについて取得したかどうかを判定する。全タグIDを取得していない場合には判定が満たされずに先のステップS420に移る。このステップS420〜ステップS440を繰り返すことにより、ID1の共通部C1と、ID1以外のID表に書き込まれた全IDの共通部とが一致するかどうかをそれぞれ比較し、一致するIDを全てメモリ123に記憶させることになる。全タグIDを取得した場合には、判定が満たされて次のステップS445に移る。
【0106】
ステップS445では、上記ステップS435でID2がメモリ123に一時記憶されているかどうかを判定する。記憶されている場合には、判定が満たされて次のステップS450に移る。
【0107】
ステップS450では、ID1と全ID2とを例えばIDセット表としてメモリ123に記憶させる(後述の図14参照)。
【0108】
次のステップS455では、上記ステップS435で一時記憶された全ID2をID表から削除し、次のステップS460に移る。なお、先のステップS445において、ID2がメモリ123に一時記憶されていない場合には判定が満たされずに次のステップS460に直接移る。なお、ID2が一時記憶されていない場合とは、例えば荷物に貼り付けられたタグラベルTが有する2つの無線タグ回路素子To−1,To−2のうち何らかの理由により一方しか検知できなかった場合などである。このような場合には、その荷物の姿勢検出をすることが不可能であるので、直接下記のステップS460に移り、そのタグID1をID表から削除する。
【0109】
ステップS460では、ID1をID表から削除し、ステップS405に戻る。
【0110】
以上のように、関連ID抽出処理ではステップS405〜ステップS460をID表が空となるまで繰り返す。これによって、共通部が一致するタグID、すなわち同一の荷物(タグラベルT)に備えられた無線タグ回路素子ToのIDが抽出される。
【0111】
図11は、上記図8のステップS500の姿勢検出処理の詳細手順を表すフローチャートである。
【0112】
まずステップS510では、上記関連ID検出処理のステップS450でメモリ123にIDセット表が記憶されたかどうかを判定する。IDセット表が記憶されていなければ姿勢検出できないので、判定が満たされずに本フローを終了する。一方、メモリ123にIDセット表が記憶されている場合には、判定が満たされて次のステップS520に移る。
【0113】
ステップS520では、IDセット表内に書き込まれた複数(本実施形態では2つ)のIDの独立部を取得する。
【0114】
次のステップS530では、上記ステップS520で取得した2つのIDの独立部を用いて、IDを昇順(独立部の数字が小さい順)に整列する。
【0115】
次のステップS540では、上記ステップS530で独立部を用いて昇順に整列した2つのIDの仰角をその順番に取得する。
【0116】
次のステップS550では、上記ステップS540で取得した仰角が、小さい順に並んでいるかどうかを判定する。小さい順に並んでいる場合(本実施形態では両仰角が等しい場合を含む)には、判定が満たされてステップS560に移り、これらのIDに係る無線タグ回路素子Toを備えた荷物の姿勢が正常であると判定して本フローを終了する。一方、仰角が小さい順に並んでいない場合には、判定が満たされずにステップS570に移り、荷物の姿勢が異常であると判定して本フローを終了する。
【0117】
なお、本実施形態では、上記ステップS540で取得した仰角が同一である場合には正常と判定するようにしたが、これに限らず、例えばθSTEPが十分に小さく仰角の検出精度が細かい場合には、仰角が同一である場合を異常と判定するようにしてもよい。また、本実施形態では、仰角の順番のみで姿勢を判定するようにしたが、例えば正常時の仰角との差を算出し、その仰角の差が予め定めた許容範囲を超えた場合に異常と判定するようにしてもよい。このようにすることで、より正確に姿勢の異常を判定することができ、かつ仰角の検出誤差等の影響を低減することができる。
【0118】
図12〜図15は、以上説明してきた本実施形態の物品姿勢検出システム100により行われる荷物の姿勢判定処理を説明するための図であり、図12は荷物4,7に備えられる各無線タグ回路素子Toについて各アンテナ101−1〜101−4を介して検出される仰角θ1〜θ4との関係を説明するための図、図13はメモリ123に記憶されるID表の一例を示す図、図14はメモリ123に記憶されるIDセット表の一例を示す図、図15は整列後のIDセット表の一例を示す図である。
【0119】
図12(a)において、θ1〜θ4は、荷物4のタグラベルT4の無線タグ回路素子To4−1,To4−2のそれぞれについて各アンテナ101−1〜101−4を介して検出される仰角である。同様に、図12(b)において、θ1〜θ4は、荷物7のタグラベルT7の無線タグ回路素子To7−1,To7−2のそれぞれについて各アンテナ101−1〜101−4を介して検出される仰角である。なお、以下では説明を容易とするために、荷物室3内に正常な姿勢の荷物4と横倒しとなった荷物7のみがある場合に関して説明する。
【0120】
図13に示すように、ここではID検知処理により荷物室3内の荷物4,7の無線タグ回路素子To4−1,To4−2,To7−1,To7−2のIDと仰角がそれぞれ検出され、ID表に書き込まれている(図9のステップS370,S390参照)。なお、実際にはIDと仰角のみが書き込まれるが、ここでは分かり易くするために対応するタグを左端に示している。各タグのIDは、前述したように荷物情報を有する共通部と上下方向の位置情報を有する独立部とを有している。
【0121】
上記図13のID表から、前述した関連ID抽出処理(図10参照)によって同一のID共通部を有するものが抽出される。図14(a)は、このうちID共通部が「0x1234567」であるものが抽出された場合であり、荷物4(タグラベルT4)に係るIDセット表1を示している。また図14(b)は、ID共通部が「0x9876543」であるものが抽出された場合であり、荷物7(タグラベルT7)に係るIDセット表2を示している(図10のステップS450参照)。
【0122】
次に、上記図14のIDセット表1,2のそれぞれについて、前述した姿勢検出処理(図11参照)によってID独立部を用いて昇順に並べ替えられる。図15(a)は荷物4に係るIDセット表1について並べ替えを行ったものであるが、もともとID独立部の昇順に並んでいるため、順番は変わっていない。図15(b)は荷物7に係るIDセット表2について並べ替えを行ったものであり、整列前と比べIDの順番が反対になっている。
【0123】
この状態で、荷物4,7について姿勢判定が行われる(図11のステップS540〜ステップS570)。すなわち、前述したように、各タグラベルTにはIDの独立部に格納される数字が小さい方の無線タグ回路素子Toが上下方向位置が下となるように設けられているため、整列後のIDセット表1,2においては、全仰角θ1〜θ4について上側の仰角が下側の仰角より小さくなっている必要がある。図15(a)に示すIDセット表1(整列後)では、全仰角θ1〜θ4について上側の仰角が下側の仰角より小さくなっているので、IDセット表1に係る荷物4の姿勢は正常であると判定される。一方、図15(b)に示すIDセット表2(整列後)では、仰角θ2については上側の仰角が下側の仰角より大きくなっているので、IDセット表1に係る荷物7の姿勢は異常であると判定される。このようにして、横倒しとなった荷物7の姿勢異常が検出され、警報装置102により運転手等に報知される。
【0124】
以上において、制御装置103のCPU121(詳細には図8に示す関連ID抽出処理及び姿勢検出処理)が、特許請求の範囲各項記載の物体の姿勢を検出する姿勢検出手段を構成するとともに、CPU121(詳細には図9に示すID検知処理のステップS310〜ステップS380の手順)が無線タグ回路素子の配置方向を検出する方向検出手段を構成する。また、制御装置103のCPU121とRF通信制御部140及びアンテナ101−1,101−2,101−3,101−4とが、無線タグ情報読み取り装置を構成する。また、各無線タグ回路素子Toのメモリ部155に記憶されるIDの共通部は、共通の物体に配置されたことを表す配置物品情報に相当し、CPU121(詳細には図10に示す関連ID抽出処理のステップS440の手順)が、配置物品情報を取得する配置物品情報取得手段を構成する。
【0125】
また、アンテナ101−1,101−2,101−3,101−4及びRF通信制御部140と、CPU121(詳細には図8に示す関連ID抽出処理及び姿勢検出処理)とが、請求項15記載の無線タグ情報読み取り装置を構成する。
【0126】
以上のように構成した本実施形態においては、各荷物に備えられる複数(本実施形態では2つ)の無線タグ回路素子Toの検出信号に基づき、それら無線タグ回路素子Toが備えられた荷物の姿勢が正常であるか否かを検出する。これにより、遠隔にて非接触で荷物の姿勢を検出し、荷物の姿勢の良否を識別することができる。その結果、配送中に荷物が荷崩れによって横倒しとなったりひっくり返ったりしても、その荷物の姿勢状態を即座に検出でき、運転手がすぐにトラックを停車させて荷物の姿勢を正すことができる。また、荷物の積み下ろし作業中に作業者の不注意等によって荷物が倒れたような場合にも、その荷物の姿勢状態を即座に検出でき、作業者はすぐに荷物の姿勢を正すことができる。以上から、配送中又は荷物の積み下ろし作業中等に荷物が異常姿勢となり内容物に故障や破損を生じたり機能低下を招くおそれを低減することができる。
【0127】
また本実施形態では特に、各無線タグ回路素子Toの仰角をそれぞれ検出し、この仰角に基づいて荷物の姿勢が正常であるか否かを判定する。これにより、仰角が大きい順(又は小さい順)となるように各無線タグ回路素子Toの情報を整列し、その上で各無線タグ回路素子Toの仰角が大きい順(又は小さい順)となっているかどうかを判定するのみで、荷物の姿勢の良否を判定することができる。これにより、荷物が正常な姿勢である場合の仰角の値との差異を算出してその差異が所定の基準値より大きいかどうかを判定することによって荷物の姿勢を判定するような場合に比べ、荷物の姿勢判定の手順を単純化することができ、演算を複雑にすることなく容易に姿勢判定を行うことができる。
【0128】
また本実施形態では特に、無線タグ回路素子Toのメモリ部155に書き込まれたID情報に配置物品情報としての共通部を含めるようにし、通信時にこれを読み込む。これにより、本実施形態のように通信範囲内(すなわち荷物室3内)に複数の荷物が存在する場合でも、それら複数の荷物の無線タグ回路素子ToのID及び仰角を一度に読み取り、その後ID共通部を用いて各荷物ごとのIDの抽出処理を行うことによって、それら多数の情報を容易に各荷物毎に仕分けし、整理することができる。
【0129】
また本実施形態では特に、両端2箇所に無線タグ回路素子Toを有するタグラベルTを荷物の上下方向に対応させて貼り付けることにより、各荷物に対し無線タグ回路素子Toを高さ方向位置が互いに異なるように設ける。これにより、荷物が横倒しとなった場合には当該2つの無線タグ回路素子Toの位置関係が同一となり、また荷物が上下逆に配置された場合には当該2つの無線タグ回路素子Toの位置関係が逆となるため、姿勢異常を確実に識別することができる。
【0130】
また本実施形態では特に、荷物の姿勢が異常であると判定した場合に、その旨を警報装置102で報知する。これにより、荷物が異常姿勢となったことを運転手等に確実に報知することができる。さらに、警報装置102はその警報が運転室2、荷物室3及びその周囲に聞こえるように設けられている。これにより、配送トラック1の運転中に荷崩れ等により荷物が倒れた場合であっても運転手に確実に報知することができ、また荷物室3の荷物の積み下ろし作業中に作業者の不注意等により荷物が倒れたような場合であっても作業者に確実に報知することができる。
【0131】
また本実施形態では特に、各荷物に備えられる無線タグ回路素子Toと無線通信をするためのアンテナを上下左右に複数(本実施形態では4つ)設ける。これにより、単一のアンテナによっては検出しにくい荷物の姿勢の変化であっても、確実に検出することができる。
【0132】
また本実施形態では特に、タグラベルTに複数(本実施形態では2つ)の無線タグ回路素子Toを設け、そのタグラベルTを荷物に貼り付けることによって、各荷物に姿勢を検出するための複数の無線タグ回路素子Toを設けるようにする。これにより、各荷物自体に複数の無線タグ回路素子Toを設けるような場合に比べ、容易且つ手軽に各荷物に複数の無線タグ回路素子Toを設けることができる。さらに、アンテナの設置状況や荷物の積み上げ状況等に応じ、読み取りやすい位置にタグラベルTを貼るといったことが可能である。
【0133】
また本実施形態では特に、タグラベルTの表面に、このタグラベルTが貼り付けられる荷物の通常の姿勢に対応した表記(本実施形態では「天地」)がなされた表記部Taを設ける。これにより、タグラベルTを、その表記部Taに従って容易に正しい方向に荷物に対して貼り付けることができる。このようにタグラベルTを正しい方向に貼り付けることで、タグラベルTが有する複数の無線タグ回路素子Toの位置関係も正しくなり、その結果、荷物の姿勢を精度よく検出することができる。
【0134】
なお、上記実施形態では特にアンテナの偏波面方向について触れなかったが、アンテナ101―1,2,3,4の偏波面方向と無線タグ回路素子Toのアンテナ151の偏波面方向との対応関係によっては、荷物が倒れたときに通信しにくくなる可能性がある。このような事態に備え、アンテナ101―1,2,3,4として偏波方向が円偏波であるアンテナを用いるようにしてもよい。これにより、荷物が倒れたときにもより確実に通信を行うことができる。
【0135】
また、反対にアンテナ101―1,2,3,4の偏波面方向を一定の方向に特定しておき、この偏波面の性質を利用して荷物の姿勢を検出するようにしてもよい。すなわち、例えばアンテナの偏波面方向を正常姿勢時の荷物の無線タグ回路素子Toのアンテナの偏波面方向に対応させておき、無線タグ回路素子Toを検出できなくなった場合に荷物の姿勢が異常となったと判定するようにしてもよいし、例えばアンテナの偏波面方向を異常姿勢時(例えば横倒し時)の荷物の無線タグ回路素子Toのアンテナの偏波面方向に対応させておき、無線タグ回路素子Toを検出した場合に荷物の姿勢が異常となったと判定するようにしてもよい。
【0136】
また、上記実施形態では、配送トラック1に物品姿勢検出システム100以外の無線通信システムを設けなかったが、例えば配送センタのサーバとMCA通信等により無線通信を行う無線通信システムをさらに設けておき、配送中の荷物の荷物情報(内容物、配送先情報等)を送信・受信したり、物品姿勢検出システム100で検出した荷物の姿勢情報を配送センターのサーバに送信したりするようにしてもよい。
【0137】
また、上記実施形態では、物体姿勢検出システムを配送トラックに適用した例を説明したが、これに限らない。すなわち、トラック以外にも、例えばトレーラー、乗用車、バイク、フォークリフト等、荷物の運搬に用いられる自動車全般に用いることが可能である。また自動車に限らず、例えば(動力を有しない)台車、列車、航空機、船舶、さらにはベルトコンベア、運搬ロボット等、荷物の運搬に用いられる移動体全般に対して適用可能である。さらに、例えばクレーン等の荷物を吊り下げる機械に適用し、荷物が正しい姿勢で吊り下げられているかどうかを検出するのも効果的である。
【0138】
なお、上記実施形態では前述したように2つの無線タグ回路素子Toを有するタグラベルTを用いているが、この無線タグラベルTを製造する無線タグ製造装置300としては、例えば図16に示す装置が用いられる。
【0139】
図16において、このタグラベル作成装置300(無線タグ情報書き込み装置)は、所定間隔で無線タグ回路素子Toが備えられたタグテープ303を巻回したタグテープロール304と、このタグテープロール304から繰り出されたタグテープ303のうち各無線タグ回路素子Toに対応した領域に所定の印字を行う印字ヘッド305と、無線タグ回路素子Toとの間で無線通信により情報の送受信を行うアンテナ306(書き込み装置側アンテナ)と、高周波回路301及び制御回路302と、タグテープ303への印字(ここでは「天地」)及び無線タグ回路素子Toへの上記情報書き込みが終了したタグテープ303を所定の長さに(ここでは無線タグ回路素子Toがラベル両端に位置するように)切断して上記無線タグラベルTとするカッタ307とを有する。
【0140】
高周波回路301及び制御回路302は、詳細な説明を省略するが、上記制御装置103のRF通信制御部140の送受信部212,213及びCPU121とほぼ同等の機能を備えるものであり、無線タグ回路素子ToのIC回路部150へのアクセス情報(前述したような位置情報や荷物情報等)を生成し、装置側アンテナ306を介して無線タグ回路素子Toへ送信し、無線タグ回路素子ToのIC回路部150へ情報書き込みを行う。また制御回路302は有線又は無線の通信回線(ネットワーク)を介して他のコンピュータ、サーバ、端末等と接続されており、それらと情報の送受が可能となっている。
【0141】
次に、本発明の他の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。本実施形態は、例えば野球等の球技に用いられる球体(ボール)の回転方向の検出に本発明を適用した例である。
【0142】
図17は、本発明の物体姿勢検出システムの他の実施形態である球種検出システムを備えた野球場のスコアボードの概略構造を表す正面図である。
【0143】
図17において、野球場60(後述の図19(a)参照)に備えられるスコアボード61は、チーム名及び各回のスコアが表示されるスコア表示部62と、ストライク・ボール・アウト数やヒット・エラー等の判定表示を行う判定表示部63と、球速(km/h)の表示を行う球速表示部64と、ストレート・カーブ・シュート等の球種の表示を行う球種表示部605(表示手段)とを有している。
【0144】
本実施形態の最大の特徴は、球種検出システム600(物体姿勢検出システム)によりピッチャーが投げたボールの球種を自動的に検出して上記スコアボード61の球種表示部605に表示を行うことである。以下、この詳細について説明する。
【0145】
図18は、野球場60で使用されるボール66(物体、球体)の概略内部構造を説明するための図である。
【0146】
この図18に示すように、ボール66の内部には、複数(本実施形態では4つ)の無線タグ回路素子To1〜To4が仮想正四面体67の各頂点67−1〜67−4に位置するように内蔵されている。仮想正四面体67は、ボール66の重心Gと各頂点67−1〜67−4との距離が全てLである仮想的な正四面体であり、この仮想正四面体67の重心位置は上記ボール66の重心Gの位置と一致している。
【0147】
図19は、野球場60に備えられた球種検出システム600の全体概略構成を表す構成図である。
【0148】
図19(a)において、野球場60に備えられる球種検出システム600は、フィールド68外に設けられ方位角を検知可能なアンテナ601―1,601−2と、これらアンテナ601−1,601−2の中間に設けられ仰角を検知可能なアンテナ601−3と、これらアンテナ601−1,601−2,601−3及び上記スコアボード61の球種表示部605とケーブル602等を介して接続された制御装置603とを有している。各アンテナ601−1〜601−3からはボール66の無線タグ回路素子Toについての検出信号が制御装置103へと出力される。
【0149】
アンテナ601−1,601−2はいわゆるフェイズドアレイ制御によりボール66に備えられた各無線タグ回路素子Toの方位角を検出するフェイズドアレイアンテナであり、X軸(後述)上における原点O(後述)を挟んでほぼ等距離の位置に設置されている。上記アンテナ601−1はX軸(正方向側)からの方位角θnを検知し、アンテナ601−2はX軸(正方向側)からの方位角Φnを検知する。また、アンテナ601−3は、いわゆるフェイズドアレイ制御によりボール66に備えられた各無線タグ回路素子Toの仰角Ψn(ここではX軸と直交するY軸の正方向側からの仰角)を検知する(図19(b)参照)。これらアンテナ601−1,601−2,601−3のフェイズドアレイ制御による角度検出手順は、前述した図9のステップS310〜ステップS380と同様である。
【0150】
図20は、上記制御装置603の機能的構成の詳細を表す機能ブロック図である。
【0151】
図20において、制御装置603は、CPU(中央演算装置)621と、例えばRAMやROM等からなるメモリ623と、上記球種表示部605に対する各種制御を行う表示制御部624(表示制御信号出力手段)と、アンテナ601−1〜601−3を介しボール66に備えられた無線タグ回路素子To1〜To4のアンテナ151と通信制御を行うRF通信制御部640(通信手段)とを備えている。なお、本実施形態の無線タグ回路素子To1〜To4の機能構成は、前述の一実施形態において図4に示した無線タグ回路素子Toの構成と同様である。
【0152】
上記制御装置603は、各アンテナ601−1〜601−3を介して検出されたボール66の無線タグ回路素子To1〜To4の検出信号に基づき、ボール66の姿勢及び運動をそれぞれ解析する。そして、これらの解析結果に基づいて、ボール66の球種を判定する(詳細は後述)。その後、この判定結果に応じた制御信号を表示制御部624から球種表示部605に送信し、球種表示部605に球種を表示させる。
【0153】
図21は、制御装置603のCPU621によって行われる上記球種判定処理の制御手順を表すフローチャートである。
【0154】
この図21において、制御装置603の電源がONされると、このフローが開始される。
【0155】
まず、ステップS71では、マウンド上のピッチャーがボール66を投球したかどうかを判定する。具体的には、測定開始信号が入力されたかどうかを判定する。この測定開始信号は、例えば操作者がピッチャーの投球開始を見ることにより図示しないスイッチ等の操作手段を用いて入力するようにしてもよいし、適宜のセンサー等を用いて自動で投球開始を検出し、そのセンサーから入力されるようにしてもよい。ボール66が投球され測定開始信号が入力された場合には、判定が満たされて次のステップS700に移る。
【0156】
ステップS700では、ボール66が有する無線タグ回路素子To1〜To4の座標(すなわち仮想正四面体67の各頂点67−1〜67−4の座標)を測定する測定処理を行う(詳細は後述)。
【0157】
次のステップS800では、上記ステップS700で測定した座標に基づいてボール66の姿勢及び運動の解析処理を行う(詳細は後述)。
【0158】
次のステップS72では、上記ステップS800の解析結果に基づき、球種の判定を行う。判定の詳細についての説明は省略するがボール66に発生するマグナス力の大きさや方向により球種を判定する。判定される球種の種類としては、例えばストレート、カーブ、シュート、フォーク等である。
【0159】
次のステップS73では、上記ステップS72で判定した球種に応じ、表示制御部624を介して球種表示部605に対して制御信号を出力し、球種を表示させる。なお、前述の図17には球種をカーブと判定した場合の表示の一例を図示している。そして、ステップS71に戻る。
【0160】
図22は、上記ステップS700の測定処理の詳細手順を表すフローチャートである。
【0161】
ステップS710では、投球されたボール66が有する無線タグ回路素子To1〜To4の座標(すなわち仮想正四面体67の各頂点67−1〜67−4の座標)の測定を行う。以下、この詳細について説明する。
【0162】
前述の図19に示すように、野球場60のフィールド68外のX軸上に、方位角検知用のアンテナ601−1とアンテナ601−2、原点O上に仰角検知用のアンテナ601−3を設置する。アンテナ601−1,601−2の向きは零度が同じ方向、同じ向きとなるように設置する。仰角の零度は水平方向とする。これらのアンテナ601−1,601−2,601−3を介してボール66の各無線タグ回路素子To1〜To4に対し、所定のサンプリング周期(周期T2。後述のステップS740参照)ごとに問い合わせ信号を送信し、各無線タグ回路素子To1〜To4からの返答信号を解析して、各無線タグ回路素子To1〜To4の位置を特定する。
【0163】
解析のために、座標系及び仮想正四面体67の基準姿勢を定義する。まず、ピッチャーマウンドとホームベースを結ぶ直線上にY軸を取り、このY軸とフィールド68の外にある原点Oで直交し、1塁と3塁を結ぶ直線と略平行な軸をX軸とする。また、原点Oから鉛直上方向にZ軸をとる。これらX軸,Y軸,Z軸からなる座標系を座標系1とする。また、前述の図19(b)に示すように、頂点67−1が上方向にあり、頂点67−2,3,4で形成される三角形が水平面上にあり、頂点67−2と頂点67−3を結ぶ辺がX軸と平行な状態にある場合を仮想正四面体67の基準姿勢とする。なお、X,Y,Z軸は、仮想正四面体67を上記基準姿勢で重心Gが原点O上となるように置いた場合に、頂点67−1のZ成分が正、頂点67−3のX成分が正、頂点67−4のY成分が正となるように向きを定める。
【0164】
アンテナ601−1とアンテナ601−2の距離をDとする(図19(b)参照)。また、仮想正四面体67の各頂点67−n(n=1,2,3、4)の時刻T(t)における座標をX軸、Y軸、Z軸についてそれぞれNx(n,t)、Ny(n,t)、Nz(n,t)と表記する。なおこのとき、tは負でない整数であり、T(t+1)=T(t)+T2(T2はサンプリング周期。後述のステップS740参照)となる。また、仮想正四面体67の各頂点67−nについて、アンテナ601−1で検知した方位角をθn、アンテナ601−2で検知した方位角をΦn、アンテナ601−3で検知した仰角をΨnと表記する(n=1,2,3、4)。
【0165】
次に、仮想正四面体67の各頂点67−nの方位角と仰角をそれぞれ検出する。次式(1)を用いて、θ1及びΦ1から頂点67−1のフィールド68上での水平位置(Nx(1,t),Ny(1,t))、水平位置までの距離及びψ1から頂点67−1の垂直位置Nz(1,t)を計算する。頂点67−2〜頂点67−4についても同様に計算する。
【0166】
【数1】
【0167】
次のステップS720では、上記ステップS710で算出した仮想正四面体67の各頂点67−nの座標をメモリ623に記憶させる。
【0168】
次のステップS730では、仮想正四面体67の各頂点67−nの座標の測定を終了するかどうかを判定する。具体的には、測定終了信号が入力されたかどうかを判定する。この測定終了信号は、例えば操作者がキャッチャーの捕球を見ることにより図示しないスイッチ等の操作手段を用いて入力するようにしてもよいし、適宜のセンサー等を用いて自動でキャッチャーによる捕球を検出し、そのセンサーから入力されるようにしてもよい。ボール66がキャッチャーにより捕球され測定終了信号が入力された場合には、本フローを終了する。一方、ボール66が投球された後であってキャッチャーが捕球する前である場合には、判定が満たされずに次のステップS740に移る。
【0169】
ステップS740では、上記ステップS710及びステップS720で仮想正四面体67の各頂点67−nの座標を測定し記録した後、周期T2が経過したかどうかを判定する。この周期T2は、本実施形態の球種検出システム600が上記した座標測定を行う周期であり、例えば1ミリ秒程度に設定されている。この場合、ボール66が投球されてから捕球されるまでの間に1ミリ秒ごとに各頂点67−nの座標がサンプリングされる。周期T2が経過していない場合には、判定が満たされずにステップS730に戻る。一方、周期T2が経過した場合には判定が満たされて先のステップS710に戻る。
【0170】
以上のステップS710〜ステップS740を繰り返すことにより、ボール66が投球された後捕球されるまでの間において、周期T2ごとの仮想正四面体67の各頂点67−nの座標の時系列データがメモリ623に記録される。
【0171】
図23は、前述の図21中ステップS800の解析処理の詳細手順を表すフローチャートである。
【0172】
まずステップS810では、上記図22で説明した測定処理においてメモリ623に記録した仮想正四面体67の各頂点67−nの座標から重心Gの座標を算出する。以下、この詳細について説明する。
【0173】
時刻T(t)における各頂点67−nの重心位置をG(t)とする。この重心位置G(t)のX軸、Y軸、Z軸座標をそれぞれ、Gx(t),Gy(t),Gz(t)とすると、重心位置G(t)は次式(2)で算出される。
【0174】
【数2】
【0175】
次のステップS820では、上記ステップS810で算出した重心位置G(t)を時系列データとしてメモリ623に記憶させる。この重心Gの時系列データが座標系1上におけるボール66の移動軌跡を表わす。
【0176】
次のステップS830では、後述の姿勢解析処理及び運動解析処理を行うために、重心Gが原点になるように座標系1を平行移動して座標変換を行う。この座標系を座標系2とする。
【0177】
次のステップS900では、上記座標系2上で、仮想正四面体67の基本姿勢に対する傾きを表す回転軸ベクトル及び回転角を算出する姿勢解析処理を行う(詳細は後述)。
【0178】
次のステップS840では、上記ステップS900の姿勢解析処理により算出した回転軸及び回転角の時系列データを、メモリ623に記録させる。
【0179】
次のステップS1000では、座標系2上で、仮想正四面体67の直前の姿勢に対する回転運動を表す回転軸ベクトル、回転角及び回転角速度を算出する運動解析処理を行う(詳細は後述)。
【0180】
次のステップS850では、上記ステップS1000の運動解析処理により算出した回転軸ベクトル、回転角及び回転角速度の時系列データを、メモリ623に記録させる。
【0181】
次のステップS860では、図22で説明した測定処理によってメモリ623に記録された仮想正四面体67の各頂点67−nの座標が時系列データの全てについて重心位置、基準姿勢からの傾き、及び直前姿勢からの回転運動の算出及びメモリ623への記録が終了したかどうかを判定する。終了していない場合にはステップS810に戻る。終了した場合には、本フローを終了する。
【0182】
以上のステップS810〜ステップS860を繰り返すことにより、ボール66の投球から捕球までの間において、周期T2ごとの仮想正四面体67の重心位置、基準姿勢からの傾き、及び直前姿勢からの回転運動の時系列データがメモリ623に記録される。この時系列データにより、正四面体(すなわちボール66)の移動と姿勢変化が追跡できるようになっている。
【0183】
図24は、図23中ステップS900の姿勢解析処理の詳細手順を表すフローチャートである。
【0184】
まずステップS910では、仮想正四面体67の各頂点67−nの座標の基準姿勢に対する変位を算出する。以下、この詳細について説明する。
【0185】
上記座標系2上で、基準姿勢における頂点67−nの座標をX軸、Y軸、Z軸についてそれぞれSx(n),Sy(n),Sz(n)(n=1,2,3,4)とすると、基準姿勢における頂点67−nの位置ベクトルS(n)は次式(3)で表せる。
【0186】
【数3】
【0187】
仮想正四面体67は、前述したようにその重心Gと各頂点67−1〜67−4との距離が全てLであるので、上式(3)は次式(4)で表される。
【0188】
【数4】
【0189】
座標系2上で時刻T(t)における頂点67−nの座標をX軸、Y軸、Z軸についてそれぞれ、Rx(n,t)、Ry(n,t)、Rz(n,t)(n=1,2,3,4)とすると、時刻T(t)における頂点67−nの位置ベクトルR(n,t)は次式(10)で表せる。
【0190】
【数5】
【0191】
上記式(10)で仮想正四面体67の各頂点67−nの変位を算出したら、次のステップS920に移る。
【0192】
ステップS920では、上記ステップS910で算出した変位に基づき、仮想正四面体67の4つの頂点67−1〜67−4から変位の大きい3点を抽出する。具体的な方法を以下に説明する。
【0193】
まず、時刻T(t)において、仮想正四面体67の4頂点67−1〜67−4のうち基準姿勢からの変位の大きい3頂点を抽出する。このとき、各頂点の基準姿勢からの変位を次式(6)で算出する。
【0194】
【数6】
【0195】
上式(6)の算出結果に基づき、変位ls(n,t)が大きい順に並べた各頂点67−nを67−n1,67−n2,67−n3,67−n4と表記すると、3頂点67−n1,67−n2,67−n3を抽出して、次のステップS930に移る。なお、変位の大きさが同じものの順序は問わず、任意の順に決めてよい。
【0196】
ステップS930では、仮想正四面体67の基準姿勢からの姿勢変化を表す回転行列を算出する。以下、この詳細について説明する。
【0197】
仮想正四面体67の基準姿勢から時刻T(t)経過後の姿勢への姿勢変化を表す回転行列をQとすると、回転行列は次式(7)で表せる。
【0198】
【数7】
【0199】
次に、頂点67−n1,67−n2,67−n3の回転行列Qによる回転を式に表すと次式(8)のようになる。
【0200】
【数8】
【0201】
上記式(8)において、S(n1,t)S(n2,t)S(n3,t)は図形的特徴から線形独立であるので、逆行列が存在する。したがって、上式(8)は次式(9)となる。
【0202】
【数9】
【0203】
なお、上記S(n1,t)S(n2,t)S(n3,t)の逆行列は、3×3の正方行列Aの逆行列を表す次式(10)により求められる。
【0204】
【数10】
【0205】
次のステップS940では、上記ステップS930において式(14)により求めた回転行列Qから回転軸とこの回転軸周りの回転角を算出し、本フローを終了する。以下、この詳細について説明する。
【0206】
回転軸方向の単位ベクトルをKs(t)、この回転軸周りの回転角をθs(t)とすると、これらは次式(11)(12)により算出される。
【0207】
【数11】
【数12】
【0208】
ただし、(q32−q23)2+(q13−q31)2+(q21−q12)2である場合、上記式(11)(12)の計算は行わず、仮想正四面体67の姿勢は基準姿勢とする。この場合の基準姿勢を示す回転軸方向の単位ベクトルKと回転角θは、下式(13)(14)で表される。
【0209】
【数13】
【数14】
【0210】
以上の式(11)〜(14)の算出結果により、仮想正四面体67の基本姿勢に対する傾きが検出できる。
【0211】
図25は、図23中ステップS1000の運動解析処理の詳細手順を表すフローチャートである。本運動解析処理は、時刻T(t0)から時刻T(t1)までの姿勢変化について回転軸と回転角を以下の計算に基づいて算出し、運動の解析を行うものである。なお、ここではT(t1)−T(t0)=T2(周期)に相当し、またt1=0の場合については運動解析は行わず、静止していたものとして扱う。
【0212】
まずステップS1010では、仮想正四面体67の各頂点67−nの座標の直前の姿勢(言い換えれば1周期T2前の姿勢)に対する変位を算出する。以下、この詳細について説明する。
【0213】
まず、二つの姿勢間での各頂点の変位を次式(15)で算出する。
【0214】
【数15】
【0215】
ステップS1020では、上式(15)の算出結果に基づき、変位l(n,t)が大きい順に並べた各頂点67−nを67−n1,67−n2,67−n3,67−n4と表記すると、3頂点67−n1,67−n2,67−n3を抽出して、次のステップS1030に移る。なお、変位の大きさが同じものの順序は問わず、任意の順に決めてよい。
【0216】
ステップS1030では、仮想正四面体67の直前姿勢からの姿勢変化を表す回転行列を算出する。以下、この詳細について説明する。
【0217】
時刻T(t0)から時刻T(t1)までの姿勢変化を表す回転行列をPとすると、回転行列Pは次式(16)で表せる。
【0218】
【数16】
【0219】
次に、頂点67−n1,67−n2,67−n3の回転行列Qによる回転を式に表すと次式(17)のようになる。
【0220】
【数17】
【0221】
上記式(17)において、R(n1,t0)R(n2,t0)R(n3,t0)は図形的特徴から線形独立であるので、逆行列が存在する。したがって、上式(17)は次式(18)となる。
【0222】
【数18】
【0223】
次のステップS1040では、上記ステップS1030において式(18)により求めた回転行列Pから回転軸とこの回転軸周りの回転角を算出する。以下、この詳細について説明する。
【0224】
回転軸方向の単位ベクトルをK(t1)、この回転軸周りの回転角をθ(t1)とすると、これらは次式(19)(20)により算出される。
【0225】
【数19】
【数20】
【0226】
なお、(p32−p23)2+(p13−p31)2+(p21−p12)2の場合、上記式(19)(20)の計算は行わず、運動状態は静止状態であるとみなす。この場合の回転軸方向の単位ベクトルKと回転角θは、次式(21)(22)で表される。
【0227】
【数21】
【数22】
【0228】
次のステップS1050では、さらに回転軸周りの回転角速度を次式(23)を用いて算出し、本フローを終了する。
【0229】
【数23】
【0230】
上記式(19)〜(23)の算出結果により、仮想正四面体67の直前姿勢に対する運動が検出できる。
【0231】
以上説明した姿勢解析及び運動解析の結果に基づき、投球されたボール66(仮想正四面体67)の球種が判定される。
【0232】
図26はこの球種の判定基準の一例を表す図である。例えば運動解析の結果、ボール66が図26(a)に示すようにボール進行方向に対して略直角かつ略水平方向の回転軸70に対し進行方向側においてボール66が下から上に向かって回転運動をしていることが検出された場合には、ストレートと判定する。反対に、図26(b)に示すように回転軸70に対し進行方向側においてボール66が上から下に向かって回転運動をしていることが検出された場合には、フォークと判定する。
【0233】
一方、ボール66が図26(c)に示すように略上下方向の回転軸71に対し上側から見て反時計回り方向に回転運動をしていることが検出された場合には、カーブと判定する。反対に、図26(d)に示すように回転軸71に対し上側から見て時計回り方向に回転運動をしていることが検出された場合には、シュートと判定する。
【0234】
なお、ここではストレート、フォーク、カーブ、シュートの4種類の球種を判定するようにしたが、さらに細かい球種(スライダー、ナックル等)を判定するようにしてもよい。この場合、例えばカーブとスライダーとは回転方向はほぼ同一であるが、上記式(23)で算出する回転角速度が所定の値より大きい場合にカーブ、小さい場合にスライダーと判定するようにすればよい。また例えば、どの方向の軸に対しても回転角速度が所定の値より小さいような場合に、ナックルと判定するようにすればよい。
【0235】
また、以上の球種の判定基準は右投手が投げる場合を例にとって説明したが、左投手が投げる場合には判定基準が変更されるようになっている。例えば左投手の場合には、上記図26(c)に示すカーブと図26(d)に示すシュートの判定基準が反対となる。この場合の投手の種類の入力は、例えば操作者によって行われるようにしてもよいし、適宜の検出器又は信号を用いて自動的に行うようにしてもよい。
【0236】
以上において、制御装置603のCPU621(詳細には図23に示す解析処理)が、特許請求の範囲各項記載の物体の姿勢を検出する姿勢検出手段を構成するとともに、CPU621(詳細には図22に示す測定処理のステップS710の手順)が、通信手段から複数の無線タグ回路素子までの距離を検出する距離検出手段を構成する。また、CPU621(詳細には図25に示す運動解析処理)は、物品の姿勢変化を検出する運動検出手段をも構成する。また、制御装置603のCPU621とRF通信制御部640及びアンテナ601−1,601−2,601−3とが、無線タグ情報読み取り装置を構成する。
【0237】
以上のように構成した本実施形態においては、ボール66に備えられる複数(本実施形態では4つ)の無線タグ回路素子Toの検出信号に基づき、姿勢解析及び運動解析を行う。これにより、遠隔にて非接触でボール66の姿勢の変化及び回転運動の向きや角速度を識別することができ、投球されたボール66の球種判定を自動的に正確に行うことができる。したがって、アンパイアの目視による判断に頼らざるを得なかった従来に比べ、球種判定を自動で短時間に行うことができる。
【0238】
また本実施形態では特に、ボール66に対し無線タグ回路素子To1〜To4を正四面体状に位置するように設ける。このように、無線タグ回路素子Toを同一平面上に位置しない4箇所にそれぞれ配置することにより、4つの無線タグ回路素子Toで構成される立体図形の重心と任意の3つの無線タグ回路素子Toが同一平面状に位置することがないことから、ボール66の姿勢変化及び運動を確実に検出することができる。特に本実施形態のように、無線タグ回路素子To1〜To4を6つの各辺長さが等しい仮想正四面体67の各頂点67−1〜67−4に位置するように設けることにより、どのように3つの無線タグ回路素子Toを選択しても同じ演算方式を用いて解析処理を行うことが可能になるので、演算処理を簡素化し、処理速度を向上することができる。さらに本実施形態では、ボール66の重心Gと仮想正四面体67の重心とを略一致させる。これによっても、解析処理を行うとこの演算処理を簡素化し、処理速度を向上する効果が得られる。
【0239】
また本実施形態では特に、ボール66に設けた4つの無線タグ回路素子Toのうち、基準姿勢に対する変位が最も大きい3つの無線タグ回路素子Toを選択して解析を行う。これにより、座標検出誤差を要因とする無線タグ回路素子Toの微小な変位を無視し、真に変位した無線タグ回路素子Toのみを検出することができるので、無線タグ回路素子Toの座標検出における誤差の影響を最も小さくすることができる。
【0240】
また本実施形態では特に、スコアボード61に球種表示部605を設け、投球ごとに球種を表示する。これにより、観客は単なる球速やストライク判定等以外の情報を得ることができるため、試合をさらに楽しく観戦することができる。
【0241】
なお、上記本発明の他の実施形態では球種検出システムを野球に適用した例を説明したが、これに限らない。すなわち、サッカー、テニス、ソフトボール、バレーボール、ボウリング、卓球等、球体を使用する球技であれば多様なスポーツに適用可能である。
【0242】
また、上記実施形態では球種検出システムを野球場に設ける例を説明したが、球種検出システムの適用場所はこれに限らない。すなわち、例えばゲームセンター等の遊技場にも適用可能である。
【0243】
図27は、球種検出システムをゲームセンターのピッチングシミュレーターに適用した例を説明するための図である。この図27に示すように、本変形例のピッチングシミュレーター72には遊技者が投じた球種と球速が表示される表示装置73が設けられている。これにより、遊技者が投じた球が確かに意図する変化球となっていたことを表示して認定したり、投球の回転軌跡等を表示して遊技者を喜ばせること等もできる。なお、上記ピッチングシミュレーターに限らず、例えばテニスシミュレーターに適用し、トップスピン等の球種を表示するようにしてもよい。
【0244】
また、上記実施形態では、ボール66の内部に正四面体67を仮想的に配置し、その頂点位置に無線タグ回路素子Toを設けるようにしたが、例えば実際に4つの無線タグ回路素子Toを正四面体形状に組み立てた姿勢検出ユニットを用意しておき、この姿勢検出ユニットを各種ボール等の内部に設けることで、上記実施形態と同様の効果を得られるようにしてもよい。
【0245】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0246】
【図1】本発明の物体姿勢検出システムの一実施形態である物品姿勢検出システムを備えた配送トラックの全体構造を表す斜視図である。
【図2】配送トラックの荷物室の内部を積み下ろし口側から見た図である。
【図3】タグラベルの概略全体構造を表す荷物の側面図である。
【図4】各荷物に添付されたタグラベルに備えられた無線タグ回路素子の機能的構成の一例を表すブロック図である。
【図5】各無線タグ回路素子のメモリ部に記憶されるIDの一例を示す図である。
【図6】制御装置の機能的構成の詳細を表す機能ブロック図である。
【図7】RF通信制御部及びアンテナの詳細構成を表す機能ブロック図である。
【図8】制御装置のCPUによって行われる上記姿勢判定処理の制御手順を表すフローチャートである。
【図9】ID検知処理の詳細手順を表すフローチャートである。
【図10】関連ID抽出処理の詳細手順を表すフローチャートである。
【図11】姿勢検出処理の詳細手順を表すフローチャートである。
【図12】荷物に備えられる各無線タグ回路素子について各アンテナを介して検出される仰角との関係を説明するための図である。
【図13】メモリに記憶されるID表の一例を示す図である。
【図14】メモリに記憶されるIDセット表の一例を示す図である。
【図15】整列後のIDセット表の一例を示す図である。
【図16】2つの無線タグ回路素子を有する無線タグラベルを製造する無線タグ製造装置の概略構成を表す概略構成図である。
【図17】本発明の物体姿勢検出システムの他の実施形態である球種検出システムを備えた野球場のスコアボードの概略構造を表す正面図である。
【図18】野球場で使用されるボールの概略内部構造を説明するための図である。
【図19】野球場に備えられた球種検出システムの全体概略構成を表す構成図である。
【図20】制御装置の機能的構成の詳細を表す機能ブロック図である。
【図21】制御装置のCPUによって行われる球種判定処理の制御手順を表すフローチャートである。
【図22】測定処理の詳細手順を表すフローチャートである。
【図23】解析処理の詳細手順を表すフローチャートである。
【図24】姿勢解析処理の詳細手順を表すフローチャートである。
【図25】運動解析処理の詳細手順を表すフローチャートである。
【図26】球種の判定基準の一例を表す図である。
【図27】球種検出システムをゲームセンターのピッチングシミュレーターに適用した変形例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0247】
1 配送トラック(移動体)
4〜7 荷物(物体)
10 送信アンテナ(アンテナ素子)
11A〜11H 受信アンテナ(アンテナ素子)
66 ボール(物体、球体)
67 仮想正四面体
100 物品姿勢検出システム
101−1〜4 アンテナ(通信手段、無線タグ情報読み取り装置)
102 警報装置(報知手段)
121 CPU(姿勢検出手段、方向検出手段、配置物品情報取得手段、無線タグ情報読み取り装置)
124 警報装置制御部(報知制御信号出力手段)
140 RF通信制御部(通信手段、無線タグ情報読み取り装置)
150 IC回路部
151 アンテナ
203A〜H 位相制御ユニット(指向性制御手段)
601−1〜3 アンテナ(通信手段、無線タグ情報読み取り装置)
605 球種表示部(表示手段)
621 CPU(姿勢検出手段、距離検出手段、運動検出手段、無線タグ情報読み取り装置)
624 表示制御部(表示制御信号出力手段)
640 RF通信制御部(通信手段、無線タグ情報読み取り装置)
G 重心
To 無線タグ回路素子
To4−1 無線タグ回路素子(上方用無線タグ回路素子)
To4−2 無線タグ回路素子(下方用無線タグ回路素子)
T タグラベルT(無線タグラベル)
T4a 表記部
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の姿勢を検出することが可能な物体姿勢検出システム及びこれを備えた移動体並びに無線タグラベル及び無線タグ情報読み取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
小型の無線タグとリーダ(読み取り装置)/ライタ(書き込み装置)との間で非接触で情報の読み取り/書き込みを行うRFID(Radio Frequency Identification)システムが知られている。無線タグに備えられた無線タグ回路素子は、所定の無線タグ情報を記憶するIC回路部とこのIC回路部に接続されて情報の送受信を行うアンテナとを備えており、無線タグが汚れている場合や見えない位置に配置されている場合であっても、リーダ/ライタ側よりIC回路部の無線タグ情報に対してアクセス(情報の読み取り/書き込み)が可能であり、商品管理や検査工程等の様々な分野において実用が期待されている。
【0003】
この無線タグを物流システムに応用した例として、例えば特許文献1に記載のものがある。この従来技術は、トラックで荷物を配送する場合において運転手が実行する荷物の積み卸しの管理に応用したものである。すなわち、トラックに積載される各荷物に無線タグ回路素子(無線ICタグ)が備えられるとともに、トラックの荷物積み卸し口の周囲にリーダ(アンテナ)を設けておき、積み下ろし時に荷物が通過する際に、各荷物の無線タグ回路素子からその荷物の送り先、内容物等の荷物情報を取得し、あらかじめ物流情報センタのサーバーから取得した荷物情報と比較してチェックを行う。これにより、予定通り荷物の積み卸しがされているか否かの自動的なチェック作業を可能としている。
【特許文献1】特開2001−19167号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、技術の進歩・向上により、大容量ハードディスク等の精密機械が物流する機会が激増している。このような精密機械は、例えば運搬中の荷崩れや積み下ろし時の不注意等により横倒しになったりすると、その衝撃で故障する可能性がある。また、陶器・ガラス等の脆性を有する品の場合、横倒しになったときの衝撃で破損する可能性がある。一方で、物流する荷物の中には、例えば冷蔵庫等、その機能上運搬時の姿勢が問題となる品もある。したがって、物流サービスには、荷物の正確な配送に加え、各荷物を正常な姿勢で運搬することが要求される。
【0005】
しかしながら、上記従来技術では、荷物が予定通り積み卸しされているかどうかを照合確認するだけである。このため、配送中に例えば荷物が荷崩れによって横倒しとなったりひっくり返ったりしても、その荷物の姿勢状態を検出することはできない。すなわち、荷物の正確な配送は可能であるが、荷物が正常な姿勢で運搬されているか否かをチェックすることはできない。この結果、配送中に荷物の内容物に故障や破損を生じたり機能低下を招く可能性があり、物流サービスのサービス性が低下する畏れがあった。また3次元加速度センサーを用いてハードディスクなどの落下状態などを検出することが行われているものの非常に高価でありまた電源などを必要としていた。また、荷物に対してその姿勢の検出を行うのは困難であった。
【0006】
本発明の目的は、物体の姿勢を検出することができる物体姿勢検出システム及びこれを備えた移動体並びに無線タグラベル及び無線タグ情報読み取り装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1の発明は、検出対象の物体と、この物体に所定の配置で複数設けた無線タグ回路素子と、これら複数の無線タグ回路素子と無線通信を行う通信手段と、この通信手段による通信結果に基づき、前記物体の姿勢を検出する姿勢検出手段とを有することを特徴とする。
【0008】
本願第1発明の物体姿勢検出システムにおいては、検出対象の物体に複数の無線タグ回路素子が設けられており、通信手段がそれら複数の無線タグ回路素子と無線通信を行い、その通信結果に基づき、姿勢検出手段によって当該物体の姿勢が検出される。このように遠隔にて非接触で物体の姿勢を検出することにより、物体の姿勢の良否や、姿勢の変化又は回転の向き等を識別することが可能となる。
【0009】
第2の発明は、上記第1発明において、前記姿勢検出手段は、前記通信手段からの前記複数の無線タグ回路素子の配置方向を検出する方向検出手段を備えることを特徴とする。
【0010】
方向検出手段で複数の無線タグ回路素子の配置方向を検出することにより、例えば、検出した複数の無線タグ回路素子の方向が、物体が通常の姿勢である場合に検出されるべき方向と大きく異なっていた場合、非接触で物体が異常姿勢であると認定することが可能となる。
【0011】
第3の発明は、上記第2発明において、前記姿勢検出手段は、前記通信手段からの前記複数の無線タグ回路素子までの距離を検出する距離検出手段を備えることを特徴とする。
【0012】
方向検出手段による方向検出と距離検出手段の距離検出とを併せることで無線タグ回路素子の位置検出を正確に行うことができるので、物体の姿勢検出を更に高精度に行うことができる。また、この高精度の姿勢検出を時間を追って行うことで、物体の姿勢の変化や回転の向き等を高精度に識別することができる。
【0013】
第4の発明は、上記第1乃至第3発明のいずれかにおいて、前記複数の無線タグ回路素子のそれぞれは、共通の前記物体に配置されたことを表す配置物体情報を記憶保持することを特徴とする。
【0014】
これにより、通信範囲内に複数の物体が存在しそれら複数の物体の無線タグ回路素子から通信手段で一度に情報が読み取られた場合でも、それら多数の情報を配置物体情報を用いて容易に各物体毎に仕分けし、整理することが可能となる。
【0015】
第5の発明は、上記第4発明において、前記姿勢検出手段は、前記通信手段による通信結果に基づき、前記配置物体情報を取得する配置物体情報取得手段を備えることを特徴とする。
【0016】
通信範囲内に複数の物体が存在しそれら複数の物体の無線タグ回路素子から通信手段で一度に情報が読み取られた場合でも、それら多数の情報を、配置物体情報取得手段で取得した配置物体情報を用いて容易に各物体毎に仕分けし、整理することができる。
【0017】
第6の発明は、上記第1乃至第5発明のいずれかにおいて、前記複数の無線タグ回路素子は、前記所定の配置として、対応する前記物体の所定の姿勢において高さ方向位置が互いに異なるように当該物体に配置された2つの無線タグ回路素子を含むことを特徴とする。
【0018】
これにより、例えば物体が上下逆に配置された場合には当該2つの無線タグ回路素子の位置関係が逆となり、姿勢の異常を確実に識別することができる。
【0019】
第7の発明は、上記第1乃至第5発明のいずれかにおいて、前記複数の無線タグ回路素子は、前記所定の配置として、対応する前記物体のうち、同一平面上に位置しない4箇所にそれぞれ配置された4つの無線タグ回路素子を含むことを特徴とする。
【0020】
これにより、検出時に仮に3つの無線タグ回路素子が同一平面上に存在したとしても、残りの1つは当該平面上に位置していないことから、当該物体の姿勢及びその変化を確実に検出することができる。
【0021】
第8の発明は、上記第7発明において、前記4つの無線タグ回路素子のうち、比較する姿勢から最も移動量の大きい3つの無線タグ回路素子を選択して解析を行うことを特徴とする。
【0022】
これにより、無線タグ回路素子の座標検出における誤差の影響を最も小さくすることができる。
【0023】
第9の発明は、上記第7発明において、前記4つの無線タグ回路素子は、前記物体に仮想正四面体を配置しその4つの頂点位置に配置されていることを特徴とする。
【0024】
6つの各辺長さが等しい正四面体形状の頂点に4つの無線タグ回路素子を配置することにより、それら無線タグ回路素子に対し適宜の座標を設定し位置検出計算を行うときの演算処理を簡素化し、処理速度を向上することが可能となる。
【0025】
第10の発明は、上記第9発明において、前記仮想正四面体の重心位置を、前記物体の重心位置と略一致させたことを特徴とする。
【0026】
重心どうしを一致させることにより、物体の姿勢変化や回転等の運動を演算にて解析するとき、その解析処理を簡素化し、処理速度を向上することが可能となる。
【0027】
第11の発明は、上記第1乃至第10発明のいずれかにおいて、前記物体に関し予め定めた基準姿勢と、前記姿勢検出手段で検出した前記物体の姿勢との差が所定の許容範囲を超えていた場合、その旨を報知手段で報知するための信号を出力する報知制御信号出力手段を有することを特徴とする。
【0028】
これにより、基準姿勢から許容範囲を超えて逸脱した姿勢となった場合に、そのような異常姿勢であることを操作者に確実に認識させることができる。
【0029】
第12の発明は、上記第1乃至第11発明のいずれかにおいて、前記姿勢検出手段は、異なるタイミングにおける前記姿勢検出手段の検出結果に基づき、前記物体の姿勢変化を検出する運動検出手段を備えることを特徴とする。
【0030】
運動検出手段で物体の姿勢変化を検出することにより、物体の姿勢の変化や回転の向き等を識別することができる。
【0031】
第13の発明は、上記第12発明において、前記物体は、球技に使用される球体であり、前記運動検出手段は、前記球体の回転方向を検出することを特徴とする。
【0032】
これにより、例えば、野球やソフトボールにおける投手が投じる変化球の球種や、テニスのラリーにおけるスピン方向、サッカーやバレー、ボウリング、卓球等において競技者が意図的に付与したボールの回転方向等を検出することができる。
【0033】
第14の発明は、上記第13発明において、前記運動検出手段で検出した前記球体の回転方向に基づき、対応する球種情報を表示手段で表示するための信号を出力する表示制御信号出力手段を有することを特徴とする。
【0034】
これにより、例えば従来人間の目視で行っている、野球やソフトボールの投手の投球球種判定、テニスのラリーにおけるスピン方向判定等を、人手によらずに自動でかつ高精度短時間に行うことができる。また、ゲームセンターのピッチングシミュレーターで遊技者が投じた球が確かに意図する変化球となっていたことを表示して認定したり、投球の回転軌跡等を表示して遊技者を楽しませることも可能となる。
【0035】
上記目的を達成するために、第15の発明は、検出対象の物体に所定の配置で複数設けた無線タグ回路素子と無線通信を行う通信手段と、この通信手段による通信結果に基づき、前記物体の姿勢を検出する姿勢検出手段とを有することを特徴とする。
【0036】
本願第15発明の無線タグ情報読み取り装置においては、姿勢検出対象の物体に複数の無線タグ回路素子が設けられており、通信手段がそれら複数の無線タグ回路素子と無線通信を行い、その通信結果に基づき、姿勢検出手段によって当該物体の姿勢が検出される。このように遠隔にて非接触で物体の姿勢を検出することにより、物体の姿勢の良否や、姿勢の変化又は回転の向き等を識別することが可能となる。
【0037】
第16の発明は、上記第15発明において、前記通信手段は、複数のアンテナ素子からなるアンテナと、このアンテナの指向性方向を変化させる指向性制御手段とを備えることを特徴とする。
【0038】
指向性制御手段でアンテナの指向性方向を変化させつつ通信手段が複数の無線タグ回路素子と通信を行うことで、広範囲における管理対象物体の姿勢及び姿勢変化挙動を検出することができる。
【0039】
第17の発明は、上記第16発明において、前記指向性制御手段は、前記アンテナ偏波を円偏波とすることを特徴とする。
【0040】
円偏波を用いることにより、例えば無線タグ回路素子が設けられた物体が通常の状態から横倒しに倒れた等の場合であっても、その状態の無線タグ回路素子と確実に通信を行うことができる。
【0041】
上記目的を達成するために、第18の発明は、検出対象の物体の姿勢を検出するために当該物体に添付される無線タグラベルであって、情報を記憶するIC回路部とこのIC回路部に接続されるアンテナとをそれぞれ備え、前記物体の通常の姿勢に対応した所定の配置で設けられた複数の無線タグ回路素子と、前記物体の前記通常の姿勢に対応した所定の表記がなされた表記部とを有することを特徴とする。
【0042】
物体の通常の姿勢に対応した表記部が設けられていることにより、複数の無線タグ回路素子を備えた無線タグラベルを、その表記部に従って容易に正しく物体に貼り付けることができる。このようにして正しく貼り付けられた無線タグラベルに備えられた複数の無線タグ回路素子に対し通信手段が無線通信を行うことで、その通信結果に基づき物体の姿勢を検出し、物体の姿勢の良否を識別することが可能となる。
【0043】
第19の発明は、上記第18発明において、前記複数の無線タグ回路素子は、前記物体の前記通常の姿勢における上方側に対応した位置に配置された上方用無線タグ回路素子と、前記物体の前記通常の姿勢における下方側に対応した位置に配置された下方用無線タグ回路素子とを含むことを特徴とする。
【0044】
これにより、例えば物体が上下逆に配置された場合には本来上方にあるべき上方用無線タグ回路素子が下方に位置し、本来下方にあるべき下方用無線タグ回路素子が上方に位置して、2つの無線タグ回路素子の位置関係が逆となるので、姿勢の異常を確実に識別することができる。
【0045】
第20の発明は、上記第18又は第19発明において、前記複数の無線タグ回路素子のそれぞれは、共通の前記物体に配置されたことを表す配置物体情報を記憶保持することを特徴とする。
【0046】
これにより、通信範囲内に複数の物体が存在し、それら複数の物体に設けた複数の無線タグラベルの無線タグ回路素子から、一度に装置側へ情報が読み取られた場合でも、それら多数の情報を配置物体情報を用いて容易に各物体毎に仕分けし、整理することが可能となる。
【0047】
上記目的を達成するために、第21の発明は、上記第1乃至第14発明のいずれかの物体姿勢検出システムを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0048】
本発明によれば、物体の姿勢を検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。本実施形態は、例えばトラックで荷物を配送する物流サービスに本発明を適用した例である。
【0050】
図1は、本発明の物体姿勢検出システムの一実施形態である物品姿勢検出システムを備えた配送トラックの全体構造を表す斜視図である。
【0051】
図1において、配送トラック1(移動体)は運転室2と荷物室3とを有しており、荷物室3には物品姿勢検出システム100が設けられている。この物品姿勢検出システム100は、荷物室3内に積み込まれた各荷物に備えられる無線タグ回路素子Toを検出するための複数(この例では4つ)のアンテナ101−1,101−2,101−3,101−4(通信手段)と、荷物が荷崩れを起こした場合等(詳細は後述)に警告音を発する警報装置102(報知手段)と、これらアンテナ101−1〜101−4及び警報装置102にケーブル104等を介して接続された制御装置103とを備えている。各アンテナ101−1〜101−4からは各荷物の無線タグ回路素子Toについての検出信号が制御装置103へと出力される。
【0052】
アンテナ101−1〜101−4はいわゆるフェイズドアレイ制御により各荷物に備えられた無線タグ回路素子Toの仰角を検出するフェイズドアレイアンテナであり(詳細は後述)、荷物室3の積み下ろし口3A(後述の図2参照)近傍の上下左右4箇所に設置されている。なお、本実施形態では4箇所に設けるようにしたが、積み下ろし口3Aの上部分の左右2箇所にのみ設けるようにしてもよい。
【0053】
制御装置103は、CPU121及びROM、RAM等からなるメモリ123を備えている(後述の図6参照)。この制御装置103は、各アンテナ101−1〜101−4を介して検出された各荷物の無線タグ回路素子Toの検出信号に基づき、各無線タグ回路素子ToのID及び各無線タグ回路素子Toの仰角をそれぞれ検出する。そして、これら無線タグ回路素子ToのID及び仰角に基づいて、その無線タグ回路素子Toが備えられた荷物の姿勢が正常であるか否かを判定する(詳細は後述)。荷物の姿勢が異常であると判定した場合には、警報装置102に制御信号を送信し、警報装置102から警報を出力させる。
【0054】
警報装置102は、例えばブザー等の警告音を発する装置であり、その出力される警報が運転室2、荷物室3及びその周囲に聞こえるように設置されている。なお、警告音だけに限らず、例えば警告表示を行う表示手段(液晶等)を有する警報装置を用いてもよい。
【0055】
図2は、荷物室3の内部を積み下ろし口3A側から見た図である。
【0056】
この図2において、荷物室3には、4つの荷物4,5,6,7(物体)が積み込まれている。なお、ここでは荷物4,5,6は正常な状態で積み上げられているが、荷物7が横倒しになった例を示している。各荷物4〜7には、表面に「天地」の文字が印字されたタグラベルT(各荷物4,5,6,7に対応するタグラベルをそれぞれT4,T5,T6,T7とする)が、その天地文字が各荷物4〜7の上下方向にそれぞれ対応するように貼り付けられている。
【0057】
図3は、タグラベルT(無線タグラベル)の概略全体構造を表す荷物4の側面図である。なお、ここでは荷物4に貼り付けたタグラベルT4を例にとって図示しているが、他の荷物に貼り付けられたタグラベルTも同様の構造である。
【0058】
この図3に示すように、タグラベルTは複数(本実施形態では長手方向両端に2つ)の無線タグ回路素子To、すなわち上側に無線タグ回路素子To4−1(上方用無線タグ回路素子)、下側に無線タグ回路素子To4−2(下方用無線タグ回路素子)をそれぞれ有しており、その表面には上記したように「天地」の文字が印字された表記部T4aが設けられている。このタグラベルTを荷物に貼り付ける際には、荷物を正常な姿勢とした状態で「天」の字が上方向に、「地」の字が下方向となるように貼り付ける。なお、ここではタグラベルTに「天地」の文字を印字するようにしたが、例えば「UP
DOWN」や「上下」のように上下方向の位置関係のわかる他の表現を印字してもよいし、また記号や動物の絵などを印字するようにしてもよい。さらに、印字に限らず、タグラベルTの表記部T4aに刻印を行ったり、写真等を貼り付けるようにしてもよい。
【0059】
図4は、上述した各荷物4〜7に添付されたタグラベルT4〜T7に備えられた無線タグ回路素子Toの機能的構成の一例を表すブロック図である。
【0060】
図4において、無線タグ回路素子Toは、制御装置103に接続されたアンテナ100−1〜100−4と例えばUHF帯等の高周波を用いて非接触で信号の送受信を行うアンテナ151(タグ側アンテナ)と、このアンテナ151に接続されたIC回路部150とを有している。
【0061】
IC回路部150は、アンテナ151により受信された搬送波を整流する整流部152と、この整流部152により整流された搬送波のエネルギを蓄積しIC回路部150の駆動電源とするための電源部153と、上記アンテナ151により受信された搬送波からクロック信号を抽出して制御部(後述)157に供給するクロック抽出部154と、所定の情報信号を記憶し得る情報記憶部として機能するメモリ部155と、上記アンテナ151に接続された変復調部156と、上記整流部152、クロック抽出部154、及び変復調部156等を介して無線タグ回路素子Toの作動を制御するための制御部157とを備えている。
【0062】
変復調部156は、アンテナ151により受信されたアンテナ100−1〜100−4からの通信信号の復調を行うと共に、上記制御部157からの返信信号に基づき、アンテナ100−1〜100−4より受信された搬送波を反射変調する。
【0063】
制御部157は、上記変復調部156により復調された受信信号を解釈し、上記メモリ部155において記憶された情報信号に基づいて返信信号を生成し、上記変復調部156により返信する制御等の基本的な制御を実行する。
【0064】
図5は、各無線タグ回路素子Toのメモリ部155に記憶されるIDの一例を示す図である。
【0065】
この図5において、メモリ部155に記憶されたIDは、共通部と独立部から構成されている。共通部にはその無線タグ回路素子Toを有するタグラベルTが貼り付けられる荷物の荷物情報(例えば内容物や配送先情報等)が格納されており(ここでは32ビットの例を図示)、同一の荷物に取り付けられる(すなわち同一のタグラベルTに備えられる)無線タグ回路素子ToのIDの共通部は同一である。独立部には上下方向の位置関係を表す位置情報が格納されており、本実施形態では、この独立部に格納される数字が小さい方が上下位置が下側となるようになっている。後述する説明の都合上、独立部を4ビットで表現しているが、1ビットとしても良い。
【0066】
図6は、上記制御装置103の機能的構成の詳細を表す機能ブロック図である。
【0067】
図6において、制御装置103は、CPU(中央演算装置)121と、例えばRAMやROM等からなるメモリ123と、上記警報装置102に対する各種制御を行う警報装置制御部124(報知制御信号出力手段)と、アンテナ101−1〜101−4を介しタグラベルTに備えられた無線タグ回路素子Toのアンテナ151と通信制御を行うRF通信制御部140(通信手段)とを備えている。
【0068】
図7は、上記RF通信制御部140及びアンテナ101−1〜101−4の詳細構成を表す機能ブロック図である。
【0069】
図7において、アンテナ101−1〜101−4は、1つの送信アンテナ(アンテナ素子)10と、複数(この例では8つ)の受信アンテナ(アンテナ素子)11A,11B,11C,11D,11E,11F,11G,11H(但し煩雑防止のため一部図示省略、以下同様)とから構成されている。
【0070】
RF通信制御部140は、上記送信アンテナ10及び受信アンテナ11A,11B,11C,11D,11E,11F,11G,11Hを介し上記無線タグ回路素子ToのIC回路部150の情報(無線タグ情報)へアクセスするための送信部212及び受信部213(=高周波回路)と、受信アンテナ11A,11B,11C,11D,11E,11F,11G,11Hにそれぞれ係わる位相制御ユニット203A,203B,203C,203D,203E,203F,203G,203H(指向性制御手段)と、これら位相制御ユニット203A〜203Hからの出力を加算する加算器205とを有し、無線タグ回路素子ToのIC回路部150から読み取られた信号を処理して情報を読み出すとともに無線タグ回路素子ToのIC回路部150へアクセスするためのアクセス情報を生成する機能を含む上記CPU121と接続されている。
【0071】
位相制御ユニット203A,203B,203C,203D,203E,203F,203G,203Hは、CPU121からの位相制御信号を入力しこれに応じて受信アンテナ11A,11B,11C,11D,11E,11F,11G,11Hにおける受信電波信号の位相をそれぞれ可変に設定する移相器206A,206B,206C,206D,206E,206F,206G,206Hと、CPU121からの信号を入力しこれに応じて移相器206A,206B,206C,206D,206E,206F,206G,206Hから入力した信号を可変に増幅し上記加算器205に出力する可変ゲインアンプ(増幅率可変アンプ)208A,208B,208C,208D,208E,208F,208G,208Hとを備えている。
【0072】
送信部212は、送信アンテナ10を介し無線タグ回路素子Toに対して信号を送信するものであり、無線タグ回路素子ToのIC回路部150の無線タグ情報にアクセスするための搬送波を発生させる水晶発振回路215、PLL(Phase
Locked Loop)213、及びVCO(Voltage Controlled Oscillator)214と、上記CPU121から供給される信号に基づいて上記搬送波発生部により発生させられた搬送波を変調(この例ではCPU121からの「TX_ASK」信号に基づく振幅変調)する送信乗算回路216(但し「TX_ASK信号」の場合は増幅率可変アンプ等を用いてもよい)と、その送信乗算回路216により変調された変調波を増幅(この例ではCPU121からの「TX_PWR」信号によって増幅率を決定される増幅)する送信アンプ217とを備えている。そして、上記搬送波発生部により発生される搬送波は、好適には周波数300MHz以上とされ、望ましくは900MHz近傍あるいは2.45GHz近傍とされ、上記送信アンプ217の出力は、送信アンテナ10に伝達されて無線タグ回路素子ToのIC回路部150に供給される。
【0073】
受信部213は、受信アンテナ11A,11B,11C,11D,11E,11F,11G,11Hで受信され上記位相制御ユニット203A,203B,203C,203D,203E,203F,203G,203Hを経て加算器205で合算された無線タグ回路素子Toからの反射波と上記搬送波発生部により発生させられた搬送波とを掛け合わせる受信第1乗算回路218と、その受信第1乗算回路218の出力から必要な帯域の信号のみを取り出すための第1バンドパスフィルタ219と、この第1バンドパスフィルタ219の出力を増幅する受信第1アンプ221と、この受信第1アンプ221の出力をさらに増幅してデジタル信号に変換する第1リミッタ220と、上記受信アンテナ11A〜11Hで受信され上記位相制御ユニット203A〜203Hを経て加算器205で合算された無線タグ回路素子Toからの反射波と上記搬送波発生部により発生された後に位相を90°遅らせた搬送波とを掛け合わせる受信第2乗算回路222と、その受信第2乗算回路222の出力から必要な帯域の信号のみを取り出すための第2バンドパスフィルタ223と、この第2バンドパスフィルタ223の出力を増幅する受信第2アンプ225と、この受信第2アンプ225の出力をさらに増幅してデジタル信号に変換する第2リミッタ224とを備えている。そして、上記第1リミッタ220から出力される信号「RXS−I」及び第2リミッタ224から出力される信号「RXS−Q」は、上記CPU121に入力されて処理される。
【0074】
また、受信第1アンプ221及び受信第2アンプ225の出力は、RSSI(Received Signal Strength Indicator)回路226にも入力され、それらの信号の強度を示す信号「RSSI」がCPU121に入力される。このようにして、本実施形態の制御装置103のRF通信制御部140では、I−Q直交復調によって無線タグ回路素子Toからの反射波の復調が行われる。
【0075】
CPU121は、いわゆるマイクロコンピュータであり、詳細な図示を省略するが、上記メモリ123の一時記憶機能を利用しつつ予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うようになっている。このCPU121は、上述した高周波回路受信部213からの受信信号等を入力した後所定の演算処理を行い、上述した高周波回路送信部212への増幅制御信号及び変調制御信号、位相制御ユニット203A〜203Hへの位相制御信号等を出力する。
【0076】
以上のような構成である本実施形態の物品姿勢検出システム100では、制御装置103(正確にはCPU121)が、各アンテナ101−1〜101−4から入力された各荷物の無線タグ回路素子Toの検出信号に基づき、各無線タグ回路素子ToのID及び各無線タグ回路素子Toの仰角をそれぞれ検出し、これら無線タグ回路素子ToのID及び仰角に基づいてその無線タグ回路素子Toが備えられた荷物の姿勢が正常であるか否かを判定する姿勢判定制御を行う。
【0077】
図8は、制御装置103のCPU121によって行われる上記姿勢判定制御の制御手順を表すフローチャートである。
【0078】
この図8において、制御装置103の電源がONされると、このフローが開始される。
【0079】
まず、ステップS51において、制御装置103の電源がONとなった後(又は前回の周期T1経過時の後)周期T1が経過したかどうかを判定する。この周期T1は、本実施形態の物品姿勢検出システム100が姿勢判定を行う処理周期であり、例えば10〜30秒程度に設定されている。周期T1が経過した場合には判定が満たされて次のステップS300に移る。
【0080】
ステップS300では、荷物室3内に積み込まれた全荷物(本実施形態では荷物4〜7)に貼り付けられたタグラベルT(T4〜T7)の各無線タグ回路素子To(To−1,To−2)のIDを検知するID検知処理を行う(詳細は後述)。なお、このID検知処理は、各アンテナ101−1〜101−4を介してそれぞれ独立に行われる。
【0081】
次のステップS400では、上記ステップS300で検知した各無線タグ回路素子ToのIDの中から同一の荷物(同一のタグラベルT)に備えられている無線タグ回路素子To同士のIDを抽出する関連ID抽出処理を行う(詳細は後述)。なお、この関連ID抽出処理も、上記ID検知処理で各アンテナ101−1〜101−4を介して検知されたIDごとにそれぞれ行われる。
【0082】
次のステップS500では、上記ステップS400で抽出した関連IDに係る無線タグ回路素子Toが備えられた物体の姿勢を検出し、その姿勢が正常であるか否かを判定する姿勢検出処理を行う(詳細は後述)。なお、この姿勢検出処理も、各アンテナ101−1〜101−4を介して検知し抽出された関連IDごとにそれぞれ行われる。
【0083】
次のステップS52では、上記ステップS500で荷物の姿勢が異常であると判定したかどうかを判定する。全アンテナ101−1〜101−4を介して正常姿勢が検出された場合(言い換えれば、各アンテナ101−1〜101−4を介して検知し抽出した関連IDの全てについて姿勢が正常であると判定された場合)には、判定が満たされずにステップS51に戻る。一方、各アンテナ101−1〜101−4のうち1つでも異常姿勢を検出している場合(言い換えれば、各アンテナ101−1〜101−4のうち少なくとも1つのアンテナを介して検知し抽出した関連IDについて姿勢が異常であると判定された場合)には、判定が満たされて次のステップS53に移る。
【0084】
ステップS53では、警報装置制御部124を介して警報装置102に対して制御信号を出力し、警報装置102から警報を発生させる。この警報装置102の警報は、前述したように運転室2、荷物室3及びその周囲に聞こえるようになっており、例えば運転中に荷物が倒れた場合でも運転手にその旨の注意を促すことができ、また例えば荷物の積み下ろし作業中に荷物が倒れた場合にも積み下ろし作業を行う作業者にその旨の注意を促すことができるようになっている。その後、ステップS51に戻る。
【0085】
図9は、上記ステップS300のID検知処理の詳細手順を表すフローチャートである。このID検知処理では、各アンテナ101−1〜101−4の受信アンテナ11A〜11Hのメインローブの方向(=受信指向性の方向)を単一方向に保持しつつその方向を変化させるいわゆるフェイズドアレイ制御を行う。その際、ある基準位置(本実施形態ではアンテナ101−1〜101−4から見て略水平方向を0°)からのメインローブ方向の角度(以下適宜、メインローブ方向角という)をθとして、このメインローブ方向角θを所定刻みθSTEPごとに変化させることとなる。
【0086】
ステップS310では、上記フェイズドアレイ制御開始にあたり、そのメインローブ方向を示すメインローブ方向角θの初期値をθaに設定する。本実施形態では、上記したようにθa=0°(略水平方向)である。
【0087】
次のステップS320では、メインローブ方向角θの値に応じ、受信アンテナ11A,11B,11C,11D,11E,11F,11G,11Hに係る位相を決定し、これに対応した位相制御信号を位相制御ユニット203A,203B,203C,203D,203E,203F,203G,203Hに出力する。
【0088】
具体的には、一般に、受信電波の隣接するアンテナ素子間での受信信号の位相差は、隣接する受信アンテナ素子の間隔をd、受信電波の波長をλ、メインローブ方向角をθとして(2・π・d・cosθ)/λで表されることから、対応する位相差が位相制御ユニット203A〜203Hにそれぞれ与えられる。
【0089】
その後、ステップS330で、上記のように受信アンテナ11A〜11Hの位相を設定した(言いかえればメインローブ方向角θを設定した)条件のもと、送信アンテナ10より無線タグ回路素子Toに対し問い合わせ信号を出力させる。詳細には、「TX_ASK」信号を生成して送信乗算回路216に出力し、送信乗算回路216で対応する上記振幅変調が行われアクセス情報としての問い合わせ信号となる。この問い合わせ信号としては、例えば「Scroll
ALL ID」信号や階層的に複数回送信を行う「PING」信号等を用いる。一方、CPU121は「TX_PWR」信号を生成して送信アンプ217に出力し、送信アンプ217でその「TX_PWR」信号に基づく増幅率で信号増幅が行われ、最終的に送信アンテナ10を介し送信され、各荷物に貼り付けられたタグラベルTの無線タグ回路素子Toからの返信を促す。
【0090】
次のステップS340では、上記問い合わせ信号に対応して各荷物のタグラベルTの無線タグ回路素子Toから送信された返答信号(=リプライ信号;タグ識別ID情報等の無線タグ情報)を受信アンテナ11A〜11Hより受信し、位相制御ユニット203A〜203Hでその位相を制御し、加算器205及び受信部213を介し取り込む。このときのRSSI回路226からの受信信号強度信号「RSSI」が入力され、その値が次のステップS350でメモリ123に記憶される。
【0091】
そしてステップS360で、θが、予めメインローブ方向角θを順次変化させるときの最終値として設定されたθEND(例えばアンテナ101−1,101−2では−90°、アンテナ101−3,101−4では90°等)に等しくなったかどうかを判定する。最初はθ=θaであるから判定が満たされず、ステップS365で予め定められたθSTEP(例えばアンテナ101−1,101−2ではθSTEP=−5°、アンテナ101−3,101−4ではθSTEP=5°)だけ加え、ステップS320に戻り、同様の手順を繰り返す。
【0092】
こうしてステップS320〜ステップS365を繰り返してθの値にθSTEPを小刻みに加え、全受信アンテナ11A〜11Hによって生じるメインローブ(指向性)の方向を単一方向に保持しつつそのメインローブ方向角θを徐々に変化させながら、信号送信及び受信を繰り返しその都度受信信号を記憶していく。そしてθ=θENDになったらステップS360の判定が満たされ、ステップS370に移る。
【0093】
ステップS370では、上記ステップS340で返答信号を受信した全無線タグ回路素子Toについて、そのタグ識別ID情報を例えばID表としてメモリ123に記憶させる(後述の図13参照)。
【0094】
ステップS380では、上記ステップS320〜ステップS365の繰り返しの間にステップS350で記憶した信号強度に基づき、上記ステップS370で記憶した各タグIDについて、その無線タグ回路素子Toの存在する指向性方向(各アンテナ101−1〜101−4から見た仰角)θTを決定する(例えば最も信号強度が大きかったメインローブ方向角方向とする)。
【0095】
次のステップS390では、上記ステップS380で決定した各無線タグ回路素子Toの仰角θTを、上記ステップS370で記憶した各タグIDに対応させて例えばID表としてメモリ123に記憶させ(後述の図13参照)、このフローを終了する。
【0096】
なお、各アンテナ101−1〜101−4から出力される問い合わせ信号は、その水平方向(言い換えれば荷物室3の奥行き方向)にある程度の広がりをもって出力されるため、本実施形態のようにメインローブ方向角θを上下方向のみ変化させるようにしても、荷物室3内をほぼ全部スキャンできるようになっている。但し、より確実に荷物室3内をスキャンできるように、例えばメインローブ方向角θを水平方向(荷物室3の奥行き方向)についても変化させるようにしてもよい。また、本実施形態ではアンテナ101−1〜101−4を荷物室3の積み下ろし口3A近傍にのみ設けるようにしたが、例えば荷物室3の奥行き方向に複数列に設けるようにしてもよい。
【0097】
図10は、上記図8のステップS400の関連ID抽出処理の詳細手順を表すフローチャートである。
【0098】
まずステップS405では、上記図9で説明したID検知処理のステップS370及びステップS390でメモリ123に記憶されたID表にタグIDと仰角が書き込まれているかどうか、すなわち、ID検知処理によって無線タグ回路素子Toが検知されたかどうかを判定する。ID検知処理により無線タグ回路素子Toが検知されず、ID表が空であれば、判定が満たされて本フローを終了する。一方、ID検知処理により無線タグ回路素子Toが検知され、ID表が空でなければ、判定が満たされずにステップS410に移る。
【0099】
ステップS410では、ID表に書き込まれたタグIDのうち1つのID(例えば先頭行のID。以下「ID1」と記載)を取得する。
【0100】
次のステップS415では、上記ステップS410で取得したID1の共通部(図5参照。以下「C1」と記載)を取得する。
【0101】
次のステップS420では、ID表に書き込まれたタグIDのうちの次のID(例えばID1の次の行のID。以下「ID2」と記載)を取得する。
【0102】
次のステップS425では、上記ステップS420で取得したID2の共通部(以下「C2」と記載)を取得する。
【0103】
次のステップS430では、上記取得したID1の共通部C1とID2の共通部C2とが一致するかどうかを判定する。一致する場合には判定が満たされて次のステップS435に移る。
【0104】
ステップS435では、共通部C1と一致する共通部C2を有するID2を一時的にメモリ123に記憶させる。そして次のステップS440に移る。なお、上記のステップS430で共通部C1と共通部C2とが一致せずに判定が満たされない場合には、直接次のステップS440に移る。
【0105】
ステップS440では、ID表に書き込まれた全タグIDについて取得したかどうかを判定する。全タグIDを取得していない場合には判定が満たされずに先のステップS420に移る。このステップS420〜ステップS440を繰り返すことにより、ID1の共通部C1と、ID1以外のID表に書き込まれた全IDの共通部とが一致するかどうかをそれぞれ比較し、一致するIDを全てメモリ123に記憶させることになる。全タグIDを取得した場合には、判定が満たされて次のステップS445に移る。
【0106】
ステップS445では、上記ステップS435でID2がメモリ123に一時記憶されているかどうかを判定する。記憶されている場合には、判定が満たされて次のステップS450に移る。
【0107】
ステップS450では、ID1と全ID2とを例えばIDセット表としてメモリ123に記憶させる(後述の図14参照)。
【0108】
次のステップS455では、上記ステップS435で一時記憶された全ID2をID表から削除し、次のステップS460に移る。なお、先のステップS445において、ID2がメモリ123に一時記憶されていない場合には判定が満たされずに次のステップS460に直接移る。なお、ID2が一時記憶されていない場合とは、例えば荷物に貼り付けられたタグラベルTが有する2つの無線タグ回路素子To−1,To−2のうち何らかの理由により一方しか検知できなかった場合などである。このような場合には、その荷物の姿勢検出をすることが不可能であるので、直接下記のステップS460に移り、そのタグID1をID表から削除する。
【0109】
ステップS460では、ID1をID表から削除し、ステップS405に戻る。
【0110】
以上のように、関連ID抽出処理ではステップS405〜ステップS460をID表が空となるまで繰り返す。これによって、共通部が一致するタグID、すなわち同一の荷物(タグラベルT)に備えられた無線タグ回路素子ToのIDが抽出される。
【0111】
図11は、上記図8のステップS500の姿勢検出処理の詳細手順を表すフローチャートである。
【0112】
まずステップS510では、上記関連ID検出処理のステップS450でメモリ123にIDセット表が記憶されたかどうかを判定する。IDセット表が記憶されていなければ姿勢検出できないので、判定が満たされずに本フローを終了する。一方、メモリ123にIDセット表が記憶されている場合には、判定が満たされて次のステップS520に移る。
【0113】
ステップS520では、IDセット表内に書き込まれた複数(本実施形態では2つ)のIDの独立部を取得する。
【0114】
次のステップS530では、上記ステップS520で取得した2つのIDの独立部を用いて、IDを昇順(独立部の数字が小さい順)に整列する。
【0115】
次のステップS540では、上記ステップS530で独立部を用いて昇順に整列した2つのIDの仰角をその順番に取得する。
【0116】
次のステップS550では、上記ステップS540で取得した仰角が、小さい順に並んでいるかどうかを判定する。小さい順に並んでいる場合(本実施形態では両仰角が等しい場合を含む)には、判定が満たされてステップS560に移り、これらのIDに係る無線タグ回路素子Toを備えた荷物の姿勢が正常であると判定して本フローを終了する。一方、仰角が小さい順に並んでいない場合には、判定が満たされずにステップS570に移り、荷物の姿勢が異常であると判定して本フローを終了する。
【0117】
なお、本実施形態では、上記ステップS540で取得した仰角が同一である場合には正常と判定するようにしたが、これに限らず、例えばθSTEPが十分に小さく仰角の検出精度が細かい場合には、仰角が同一である場合を異常と判定するようにしてもよい。また、本実施形態では、仰角の順番のみで姿勢を判定するようにしたが、例えば正常時の仰角との差を算出し、その仰角の差が予め定めた許容範囲を超えた場合に異常と判定するようにしてもよい。このようにすることで、より正確に姿勢の異常を判定することができ、かつ仰角の検出誤差等の影響を低減することができる。
【0118】
図12〜図15は、以上説明してきた本実施形態の物品姿勢検出システム100により行われる荷物の姿勢判定処理を説明するための図であり、図12は荷物4,7に備えられる各無線タグ回路素子Toについて各アンテナ101−1〜101−4を介して検出される仰角θ1〜θ4との関係を説明するための図、図13はメモリ123に記憶されるID表の一例を示す図、図14はメモリ123に記憶されるIDセット表の一例を示す図、図15は整列後のIDセット表の一例を示す図である。
【0119】
図12(a)において、θ1〜θ4は、荷物4のタグラベルT4の無線タグ回路素子To4−1,To4−2のそれぞれについて各アンテナ101−1〜101−4を介して検出される仰角である。同様に、図12(b)において、θ1〜θ4は、荷物7のタグラベルT7の無線タグ回路素子To7−1,To7−2のそれぞれについて各アンテナ101−1〜101−4を介して検出される仰角である。なお、以下では説明を容易とするために、荷物室3内に正常な姿勢の荷物4と横倒しとなった荷物7のみがある場合に関して説明する。
【0120】
図13に示すように、ここではID検知処理により荷物室3内の荷物4,7の無線タグ回路素子To4−1,To4−2,To7−1,To7−2のIDと仰角がそれぞれ検出され、ID表に書き込まれている(図9のステップS370,S390参照)。なお、実際にはIDと仰角のみが書き込まれるが、ここでは分かり易くするために対応するタグを左端に示している。各タグのIDは、前述したように荷物情報を有する共通部と上下方向の位置情報を有する独立部とを有している。
【0121】
上記図13のID表から、前述した関連ID抽出処理(図10参照)によって同一のID共通部を有するものが抽出される。図14(a)は、このうちID共通部が「0x1234567」であるものが抽出された場合であり、荷物4(タグラベルT4)に係るIDセット表1を示している。また図14(b)は、ID共通部が「0x9876543」であるものが抽出された場合であり、荷物7(タグラベルT7)に係るIDセット表2を示している(図10のステップS450参照)。
【0122】
次に、上記図14のIDセット表1,2のそれぞれについて、前述した姿勢検出処理(図11参照)によってID独立部を用いて昇順に並べ替えられる。図15(a)は荷物4に係るIDセット表1について並べ替えを行ったものであるが、もともとID独立部の昇順に並んでいるため、順番は変わっていない。図15(b)は荷物7に係るIDセット表2について並べ替えを行ったものであり、整列前と比べIDの順番が反対になっている。
【0123】
この状態で、荷物4,7について姿勢判定が行われる(図11のステップS540〜ステップS570)。すなわち、前述したように、各タグラベルTにはIDの独立部に格納される数字が小さい方の無線タグ回路素子Toが上下方向位置が下となるように設けられているため、整列後のIDセット表1,2においては、全仰角θ1〜θ4について上側の仰角が下側の仰角より小さくなっている必要がある。図15(a)に示すIDセット表1(整列後)では、全仰角θ1〜θ4について上側の仰角が下側の仰角より小さくなっているので、IDセット表1に係る荷物4の姿勢は正常であると判定される。一方、図15(b)に示すIDセット表2(整列後)では、仰角θ2については上側の仰角が下側の仰角より大きくなっているので、IDセット表1に係る荷物7の姿勢は異常であると判定される。このようにして、横倒しとなった荷物7の姿勢異常が検出され、警報装置102により運転手等に報知される。
【0124】
以上において、制御装置103のCPU121(詳細には図8に示す関連ID抽出処理及び姿勢検出処理)が、特許請求の範囲各項記載の物体の姿勢を検出する姿勢検出手段を構成するとともに、CPU121(詳細には図9に示すID検知処理のステップS310〜ステップS380の手順)が無線タグ回路素子の配置方向を検出する方向検出手段を構成する。また、制御装置103のCPU121とRF通信制御部140及びアンテナ101−1,101−2,101−3,101−4とが、無線タグ情報読み取り装置を構成する。また、各無線タグ回路素子Toのメモリ部155に記憶されるIDの共通部は、共通の物体に配置されたことを表す配置物品情報に相当し、CPU121(詳細には図10に示す関連ID抽出処理のステップS440の手順)が、配置物品情報を取得する配置物品情報取得手段を構成する。
【0125】
また、アンテナ101−1,101−2,101−3,101−4及びRF通信制御部140と、CPU121(詳細には図8に示す関連ID抽出処理及び姿勢検出処理)とが、請求項15記載の無線タグ情報読み取り装置を構成する。
【0126】
以上のように構成した本実施形態においては、各荷物に備えられる複数(本実施形態では2つ)の無線タグ回路素子Toの検出信号に基づき、それら無線タグ回路素子Toが備えられた荷物の姿勢が正常であるか否かを検出する。これにより、遠隔にて非接触で荷物の姿勢を検出し、荷物の姿勢の良否を識別することができる。その結果、配送中に荷物が荷崩れによって横倒しとなったりひっくり返ったりしても、その荷物の姿勢状態を即座に検出でき、運転手がすぐにトラックを停車させて荷物の姿勢を正すことができる。また、荷物の積み下ろし作業中に作業者の不注意等によって荷物が倒れたような場合にも、その荷物の姿勢状態を即座に検出でき、作業者はすぐに荷物の姿勢を正すことができる。以上から、配送中又は荷物の積み下ろし作業中等に荷物が異常姿勢となり内容物に故障や破損を生じたり機能低下を招くおそれを低減することができる。
【0127】
また本実施形態では特に、各無線タグ回路素子Toの仰角をそれぞれ検出し、この仰角に基づいて荷物の姿勢が正常であるか否かを判定する。これにより、仰角が大きい順(又は小さい順)となるように各無線タグ回路素子Toの情報を整列し、その上で各無線タグ回路素子Toの仰角が大きい順(又は小さい順)となっているかどうかを判定するのみで、荷物の姿勢の良否を判定することができる。これにより、荷物が正常な姿勢である場合の仰角の値との差異を算出してその差異が所定の基準値より大きいかどうかを判定することによって荷物の姿勢を判定するような場合に比べ、荷物の姿勢判定の手順を単純化することができ、演算を複雑にすることなく容易に姿勢判定を行うことができる。
【0128】
また本実施形態では特に、無線タグ回路素子Toのメモリ部155に書き込まれたID情報に配置物品情報としての共通部を含めるようにし、通信時にこれを読み込む。これにより、本実施形態のように通信範囲内(すなわち荷物室3内)に複数の荷物が存在する場合でも、それら複数の荷物の無線タグ回路素子ToのID及び仰角を一度に読み取り、その後ID共通部を用いて各荷物ごとのIDの抽出処理を行うことによって、それら多数の情報を容易に各荷物毎に仕分けし、整理することができる。
【0129】
また本実施形態では特に、両端2箇所に無線タグ回路素子Toを有するタグラベルTを荷物の上下方向に対応させて貼り付けることにより、各荷物に対し無線タグ回路素子Toを高さ方向位置が互いに異なるように設ける。これにより、荷物が横倒しとなった場合には当該2つの無線タグ回路素子Toの位置関係が同一となり、また荷物が上下逆に配置された場合には当該2つの無線タグ回路素子Toの位置関係が逆となるため、姿勢異常を確実に識別することができる。
【0130】
また本実施形態では特に、荷物の姿勢が異常であると判定した場合に、その旨を警報装置102で報知する。これにより、荷物が異常姿勢となったことを運転手等に確実に報知することができる。さらに、警報装置102はその警報が運転室2、荷物室3及びその周囲に聞こえるように設けられている。これにより、配送トラック1の運転中に荷崩れ等により荷物が倒れた場合であっても運転手に確実に報知することができ、また荷物室3の荷物の積み下ろし作業中に作業者の不注意等により荷物が倒れたような場合であっても作業者に確実に報知することができる。
【0131】
また本実施形態では特に、各荷物に備えられる無線タグ回路素子Toと無線通信をするためのアンテナを上下左右に複数(本実施形態では4つ)設ける。これにより、単一のアンテナによっては検出しにくい荷物の姿勢の変化であっても、確実に検出することができる。
【0132】
また本実施形態では特に、タグラベルTに複数(本実施形態では2つ)の無線タグ回路素子Toを設け、そのタグラベルTを荷物に貼り付けることによって、各荷物に姿勢を検出するための複数の無線タグ回路素子Toを設けるようにする。これにより、各荷物自体に複数の無線タグ回路素子Toを設けるような場合に比べ、容易且つ手軽に各荷物に複数の無線タグ回路素子Toを設けることができる。さらに、アンテナの設置状況や荷物の積み上げ状況等に応じ、読み取りやすい位置にタグラベルTを貼るといったことが可能である。
【0133】
また本実施形態では特に、タグラベルTの表面に、このタグラベルTが貼り付けられる荷物の通常の姿勢に対応した表記(本実施形態では「天地」)がなされた表記部Taを設ける。これにより、タグラベルTを、その表記部Taに従って容易に正しい方向に荷物に対して貼り付けることができる。このようにタグラベルTを正しい方向に貼り付けることで、タグラベルTが有する複数の無線タグ回路素子Toの位置関係も正しくなり、その結果、荷物の姿勢を精度よく検出することができる。
【0134】
なお、上記実施形態では特にアンテナの偏波面方向について触れなかったが、アンテナ101―1,2,3,4の偏波面方向と無線タグ回路素子Toのアンテナ151の偏波面方向との対応関係によっては、荷物が倒れたときに通信しにくくなる可能性がある。このような事態に備え、アンテナ101―1,2,3,4として偏波方向が円偏波であるアンテナを用いるようにしてもよい。これにより、荷物が倒れたときにもより確実に通信を行うことができる。
【0135】
また、反対にアンテナ101―1,2,3,4の偏波面方向を一定の方向に特定しておき、この偏波面の性質を利用して荷物の姿勢を検出するようにしてもよい。すなわち、例えばアンテナの偏波面方向を正常姿勢時の荷物の無線タグ回路素子Toのアンテナの偏波面方向に対応させておき、無線タグ回路素子Toを検出できなくなった場合に荷物の姿勢が異常となったと判定するようにしてもよいし、例えばアンテナの偏波面方向を異常姿勢時(例えば横倒し時)の荷物の無線タグ回路素子Toのアンテナの偏波面方向に対応させておき、無線タグ回路素子Toを検出した場合に荷物の姿勢が異常となったと判定するようにしてもよい。
【0136】
また、上記実施形態では、配送トラック1に物品姿勢検出システム100以外の無線通信システムを設けなかったが、例えば配送センタのサーバとMCA通信等により無線通信を行う無線通信システムをさらに設けておき、配送中の荷物の荷物情報(内容物、配送先情報等)を送信・受信したり、物品姿勢検出システム100で検出した荷物の姿勢情報を配送センターのサーバに送信したりするようにしてもよい。
【0137】
また、上記実施形態では、物体姿勢検出システムを配送トラックに適用した例を説明したが、これに限らない。すなわち、トラック以外にも、例えばトレーラー、乗用車、バイク、フォークリフト等、荷物の運搬に用いられる自動車全般に用いることが可能である。また自動車に限らず、例えば(動力を有しない)台車、列車、航空機、船舶、さらにはベルトコンベア、運搬ロボット等、荷物の運搬に用いられる移動体全般に対して適用可能である。さらに、例えばクレーン等の荷物を吊り下げる機械に適用し、荷物が正しい姿勢で吊り下げられているかどうかを検出するのも効果的である。
【0138】
なお、上記実施形態では前述したように2つの無線タグ回路素子Toを有するタグラベルTを用いているが、この無線タグラベルTを製造する無線タグ製造装置300としては、例えば図16に示す装置が用いられる。
【0139】
図16において、このタグラベル作成装置300(無線タグ情報書き込み装置)は、所定間隔で無線タグ回路素子Toが備えられたタグテープ303を巻回したタグテープロール304と、このタグテープロール304から繰り出されたタグテープ303のうち各無線タグ回路素子Toに対応した領域に所定の印字を行う印字ヘッド305と、無線タグ回路素子Toとの間で無線通信により情報の送受信を行うアンテナ306(書き込み装置側アンテナ)と、高周波回路301及び制御回路302と、タグテープ303への印字(ここでは「天地」)及び無線タグ回路素子Toへの上記情報書き込みが終了したタグテープ303を所定の長さに(ここでは無線タグ回路素子Toがラベル両端に位置するように)切断して上記無線タグラベルTとするカッタ307とを有する。
【0140】
高周波回路301及び制御回路302は、詳細な説明を省略するが、上記制御装置103のRF通信制御部140の送受信部212,213及びCPU121とほぼ同等の機能を備えるものであり、無線タグ回路素子ToのIC回路部150へのアクセス情報(前述したような位置情報や荷物情報等)を生成し、装置側アンテナ306を介して無線タグ回路素子Toへ送信し、無線タグ回路素子ToのIC回路部150へ情報書き込みを行う。また制御回路302は有線又は無線の通信回線(ネットワーク)を介して他のコンピュータ、サーバ、端末等と接続されており、それらと情報の送受が可能となっている。
【0141】
次に、本発明の他の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。本実施形態は、例えば野球等の球技に用いられる球体(ボール)の回転方向の検出に本発明を適用した例である。
【0142】
図17は、本発明の物体姿勢検出システムの他の実施形態である球種検出システムを備えた野球場のスコアボードの概略構造を表す正面図である。
【0143】
図17において、野球場60(後述の図19(a)参照)に備えられるスコアボード61は、チーム名及び各回のスコアが表示されるスコア表示部62と、ストライク・ボール・アウト数やヒット・エラー等の判定表示を行う判定表示部63と、球速(km/h)の表示を行う球速表示部64と、ストレート・カーブ・シュート等の球種の表示を行う球種表示部605(表示手段)とを有している。
【0144】
本実施形態の最大の特徴は、球種検出システム600(物体姿勢検出システム)によりピッチャーが投げたボールの球種を自動的に検出して上記スコアボード61の球種表示部605に表示を行うことである。以下、この詳細について説明する。
【0145】
図18は、野球場60で使用されるボール66(物体、球体)の概略内部構造を説明するための図である。
【0146】
この図18に示すように、ボール66の内部には、複数(本実施形態では4つ)の無線タグ回路素子To1〜To4が仮想正四面体67の各頂点67−1〜67−4に位置するように内蔵されている。仮想正四面体67は、ボール66の重心Gと各頂点67−1〜67−4との距離が全てLである仮想的な正四面体であり、この仮想正四面体67の重心位置は上記ボール66の重心Gの位置と一致している。
【0147】
図19は、野球場60に備えられた球種検出システム600の全体概略構成を表す構成図である。
【0148】
図19(a)において、野球場60に備えられる球種検出システム600は、フィールド68外に設けられ方位角を検知可能なアンテナ601―1,601−2と、これらアンテナ601−1,601−2の中間に設けられ仰角を検知可能なアンテナ601−3と、これらアンテナ601−1,601−2,601−3及び上記スコアボード61の球種表示部605とケーブル602等を介して接続された制御装置603とを有している。各アンテナ601−1〜601−3からはボール66の無線タグ回路素子Toについての検出信号が制御装置103へと出力される。
【0149】
アンテナ601−1,601−2はいわゆるフェイズドアレイ制御によりボール66に備えられた各無線タグ回路素子Toの方位角を検出するフェイズドアレイアンテナであり、X軸(後述)上における原点O(後述)を挟んでほぼ等距離の位置に設置されている。上記アンテナ601−1はX軸(正方向側)からの方位角θnを検知し、アンテナ601−2はX軸(正方向側)からの方位角Φnを検知する。また、アンテナ601−3は、いわゆるフェイズドアレイ制御によりボール66に備えられた各無線タグ回路素子Toの仰角Ψn(ここではX軸と直交するY軸の正方向側からの仰角)を検知する(図19(b)参照)。これらアンテナ601−1,601−2,601−3のフェイズドアレイ制御による角度検出手順は、前述した図9のステップS310〜ステップS380と同様である。
【0150】
図20は、上記制御装置603の機能的構成の詳細を表す機能ブロック図である。
【0151】
図20において、制御装置603は、CPU(中央演算装置)621と、例えばRAMやROM等からなるメモリ623と、上記球種表示部605に対する各種制御を行う表示制御部624(表示制御信号出力手段)と、アンテナ601−1〜601−3を介しボール66に備えられた無線タグ回路素子To1〜To4のアンテナ151と通信制御を行うRF通信制御部640(通信手段)とを備えている。なお、本実施形態の無線タグ回路素子To1〜To4の機能構成は、前述の一実施形態において図4に示した無線タグ回路素子Toの構成と同様である。
【0152】
上記制御装置603は、各アンテナ601−1〜601−3を介して検出されたボール66の無線タグ回路素子To1〜To4の検出信号に基づき、ボール66の姿勢及び運動をそれぞれ解析する。そして、これらの解析結果に基づいて、ボール66の球種を判定する(詳細は後述)。その後、この判定結果に応じた制御信号を表示制御部624から球種表示部605に送信し、球種表示部605に球種を表示させる。
【0153】
図21は、制御装置603のCPU621によって行われる上記球種判定処理の制御手順を表すフローチャートである。
【0154】
この図21において、制御装置603の電源がONされると、このフローが開始される。
【0155】
まず、ステップS71では、マウンド上のピッチャーがボール66を投球したかどうかを判定する。具体的には、測定開始信号が入力されたかどうかを判定する。この測定開始信号は、例えば操作者がピッチャーの投球開始を見ることにより図示しないスイッチ等の操作手段を用いて入力するようにしてもよいし、適宜のセンサー等を用いて自動で投球開始を検出し、そのセンサーから入力されるようにしてもよい。ボール66が投球され測定開始信号が入力された場合には、判定が満たされて次のステップS700に移る。
【0156】
ステップS700では、ボール66が有する無線タグ回路素子To1〜To4の座標(すなわち仮想正四面体67の各頂点67−1〜67−4の座標)を測定する測定処理を行う(詳細は後述)。
【0157】
次のステップS800では、上記ステップS700で測定した座標に基づいてボール66の姿勢及び運動の解析処理を行う(詳細は後述)。
【0158】
次のステップS72では、上記ステップS800の解析結果に基づき、球種の判定を行う。判定の詳細についての説明は省略するがボール66に発生するマグナス力の大きさや方向により球種を判定する。判定される球種の種類としては、例えばストレート、カーブ、シュート、フォーク等である。
【0159】
次のステップS73では、上記ステップS72で判定した球種に応じ、表示制御部624を介して球種表示部605に対して制御信号を出力し、球種を表示させる。なお、前述の図17には球種をカーブと判定した場合の表示の一例を図示している。そして、ステップS71に戻る。
【0160】
図22は、上記ステップS700の測定処理の詳細手順を表すフローチャートである。
【0161】
ステップS710では、投球されたボール66が有する無線タグ回路素子To1〜To4の座標(すなわち仮想正四面体67の各頂点67−1〜67−4の座標)の測定を行う。以下、この詳細について説明する。
【0162】
前述の図19に示すように、野球場60のフィールド68外のX軸上に、方位角検知用のアンテナ601−1とアンテナ601−2、原点O上に仰角検知用のアンテナ601−3を設置する。アンテナ601−1,601−2の向きは零度が同じ方向、同じ向きとなるように設置する。仰角の零度は水平方向とする。これらのアンテナ601−1,601−2,601−3を介してボール66の各無線タグ回路素子To1〜To4に対し、所定のサンプリング周期(周期T2。後述のステップS740参照)ごとに問い合わせ信号を送信し、各無線タグ回路素子To1〜To4からの返答信号を解析して、各無線タグ回路素子To1〜To4の位置を特定する。
【0163】
解析のために、座標系及び仮想正四面体67の基準姿勢を定義する。まず、ピッチャーマウンドとホームベースを結ぶ直線上にY軸を取り、このY軸とフィールド68の外にある原点Oで直交し、1塁と3塁を結ぶ直線と略平行な軸をX軸とする。また、原点Oから鉛直上方向にZ軸をとる。これらX軸,Y軸,Z軸からなる座標系を座標系1とする。また、前述の図19(b)に示すように、頂点67−1が上方向にあり、頂点67−2,3,4で形成される三角形が水平面上にあり、頂点67−2と頂点67−3を結ぶ辺がX軸と平行な状態にある場合を仮想正四面体67の基準姿勢とする。なお、X,Y,Z軸は、仮想正四面体67を上記基準姿勢で重心Gが原点O上となるように置いた場合に、頂点67−1のZ成分が正、頂点67−3のX成分が正、頂点67−4のY成分が正となるように向きを定める。
【0164】
アンテナ601−1とアンテナ601−2の距離をDとする(図19(b)参照)。また、仮想正四面体67の各頂点67−n(n=1,2,3、4)の時刻T(t)における座標をX軸、Y軸、Z軸についてそれぞれNx(n,t)、Ny(n,t)、Nz(n,t)と表記する。なおこのとき、tは負でない整数であり、T(t+1)=T(t)+T2(T2はサンプリング周期。後述のステップS740参照)となる。また、仮想正四面体67の各頂点67−nについて、アンテナ601−1で検知した方位角をθn、アンテナ601−2で検知した方位角をΦn、アンテナ601−3で検知した仰角をΨnと表記する(n=1,2,3、4)。
【0165】
次に、仮想正四面体67の各頂点67−nの方位角と仰角をそれぞれ検出する。次式(1)を用いて、θ1及びΦ1から頂点67−1のフィールド68上での水平位置(Nx(1,t),Ny(1,t))、水平位置までの距離及びψ1から頂点67−1の垂直位置Nz(1,t)を計算する。頂点67−2〜頂点67−4についても同様に計算する。
【0166】
【数1】
【0167】
次のステップS720では、上記ステップS710で算出した仮想正四面体67の各頂点67−nの座標をメモリ623に記憶させる。
【0168】
次のステップS730では、仮想正四面体67の各頂点67−nの座標の測定を終了するかどうかを判定する。具体的には、測定終了信号が入力されたかどうかを判定する。この測定終了信号は、例えば操作者がキャッチャーの捕球を見ることにより図示しないスイッチ等の操作手段を用いて入力するようにしてもよいし、適宜のセンサー等を用いて自動でキャッチャーによる捕球を検出し、そのセンサーから入力されるようにしてもよい。ボール66がキャッチャーにより捕球され測定終了信号が入力された場合には、本フローを終了する。一方、ボール66が投球された後であってキャッチャーが捕球する前である場合には、判定が満たされずに次のステップS740に移る。
【0169】
ステップS740では、上記ステップS710及びステップS720で仮想正四面体67の各頂点67−nの座標を測定し記録した後、周期T2が経過したかどうかを判定する。この周期T2は、本実施形態の球種検出システム600が上記した座標測定を行う周期であり、例えば1ミリ秒程度に設定されている。この場合、ボール66が投球されてから捕球されるまでの間に1ミリ秒ごとに各頂点67−nの座標がサンプリングされる。周期T2が経過していない場合には、判定が満たされずにステップS730に戻る。一方、周期T2が経過した場合には判定が満たされて先のステップS710に戻る。
【0170】
以上のステップS710〜ステップS740を繰り返すことにより、ボール66が投球された後捕球されるまでの間において、周期T2ごとの仮想正四面体67の各頂点67−nの座標の時系列データがメモリ623に記録される。
【0171】
図23は、前述の図21中ステップS800の解析処理の詳細手順を表すフローチャートである。
【0172】
まずステップS810では、上記図22で説明した測定処理においてメモリ623に記録した仮想正四面体67の各頂点67−nの座標から重心Gの座標を算出する。以下、この詳細について説明する。
【0173】
時刻T(t)における各頂点67−nの重心位置をG(t)とする。この重心位置G(t)のX軸、Y軸、Z軸座標をそれぞれ、Gx(t),Gy(t),Gz(t)とすると、重心位置G(t)は次式(2)で算出される。
【0174】
【数2】
【0175】
次のステップS820では、上記ステップS810で算出した重心位置G(t)を時系列データとしてメモリ623に記憶させる。この重心Gの時系列データが座標系1上におけるボール66の移動軌跡を表わす。
【0176】
次のステップS830では、後述の姿勢解析処理及び運動解析処理を行うために、重心Gが原点になるように座標系1を平行移動して座標変換を行う。この座標系を座標系2とする。
【0177】
次のステップS900では、上記座標系2上で、仮想正四面体67の基本姿勢に対する傾きを表す回転軸ベクトル及び回転角を算出する姿勢解析処理を行う(詳細は後述)。
【0178】
次のステップS840では、上記ステップS900の姿勢解析処理により算出した回転軸及び回転角の時系列データを、メモリ623に記録させる。
【0179】
次のステップS1000では、座標系2上で、仮想正四面体67の直前の姿勢に対する回転運動を表す回転軸ベクトル、回転角及び回転角速度を算出する運動解析処理を行う(詳細は後述)。
【0180】
次のステップS850では、上記ステップS1000の運動解析処理により算出した回転軸ベクトル、回転角及び回転角速度の時系列データを、メモリ623に記録させる。
【0181】
次のステップS860では、図22で説明した測定処理によってメモリ623に記録された仮想正四面体67の各頂点67−nの座標が時系列データの全てについて重心位置、基準姿勢からの傾き、及び直前姿勢からの回転運動の算出及びメモリ623への記録が終了したかどうかを判定する。終了していない場合にはステップS810に戻る。終了した場合には、本フローを終了する。
【0182】
以上のステップS810〜ステップS860を繰り返すことにより、ボール66の投球から捕球までの間において、周期T2ごとの仮想正四面体67の重心位置、基準姿勢からの傾き、及び直前姿勢からの回転運動の時系列データがメモリ623に記録される。この時系列データにより、正四面体(すなわちボール66)の移動と姿勢変化が追跡できるようになっている。
【0183】
図24は、図23中ステップS900の姿勢解析処理の詳細手順を表すフローチャートである。
【0184】
まずステップS910では、仮想正四面体67の各頂点67−nの座標の基準姿勢に対する変位を算出する。以下、この詳細について説明する。
【0185】
上記座標系2上で、基準姿勢における頂点67−nの座標をX軸、Y軸、Z軸についてそれぞれSx(n),Sy(n),Sz(n)(n=1,2,3,4)とすると、基準姿勢における頂点67−nの位置ベクトルS(n)は次式(3)で表せる。
【0186】
【数3】
【0187】
仮想正四面体67は、前述したようにその重心Gと各頂点67−1〜67−4との距離が全てLであるので、上式(3)は次式(4)で表される。
【0188】
【数4】
【0189】
座標系2上で時刻T(t)における頂点67−nの座標をX軸、Y軸、Z軸についてそれぞれ、Rx(n,t)、Ry(n,t)、Rz(n,t)(n=1,2,3,4)とすると、時刻T(t)における頂点67−nの位置ベクトルR(n,t)は次式(10)で表せる。
【0190】
【数5】
【0191】
上記式(10)で仮想正四面体67の各頂点67−nの変位を算出したら、次のステップS920に移る。
【0192】
ステップS920では、上記ステップS910で算出した変位に基づき、仮想正四面体67の4つの頂点67−1〜67−4から変位の大きい3点を抽出する。具体的な方法を以下に説明する。
【0193】
まず、時刻T(t)において、仮想正四面体67の4頂点67−1〜67−4のうち基準姿勢からの変位の大きい3頂点を抽出する。このとき、各頂点の基準姿勢からの変位を次式(6)で算出する。
【0194】
【数6】
【0195】
上式(6)の算出結果に基づき、変位ls(n,t)が大きい順に並べた各頂点67−nを67−n1,67−n2,67−n3,67−n4と表記すると、3頂点67−n1,67−n2,67−n3を抽出して、次のステップS930に移る。なお、変位の大きさが同じものの順序は問わず、任意の順に決めてよい。
【0196】
ステップS930では、仮想正四面体67の基準姿勢からの姿勢変化を表す回転行列を算出する。以下、この詳細について説明する。
【0197】
仮想正四面体67の基準姿勢から時刻T(t)経過後の姿勢への姿勢変化を表す回転行列をQとすると、回転行列は次式(7)で表せる。
【0198】
【数7】
【0199】
次に、頂点67−n1,67−n2,67−n3の回転行列Qによる回転を式に表すと次式(8)のようになる。
【0200】
【数8】
【0201】
上記式(8)において、S(n1,t)S(n2,t)S(n3,t)は図形的特徴から線形独立であるので、逆行列が存在する。したがって、上式(8)は次式(9)となる。
【0202】
【数9】
【0203】
なお、上記S(n1,t)S(n2,t)S(n3,t)の逆行列は、3×3の正方行列Aの逆行列を表す次式(10)により求められる。
【0204】
【数10】
【0205】
次のステップS940では、上記ステップS930において式(14)により求めた回転行列Qから回転軸とこの回転軸周りの回転角を算出し、本フローを終了する。以下、この詳細について説明する。
【0206】
回転軸方向の単位ベクトルをKs(t)、この回転軸周りの回転角をθs(t)とすると、これらは次式(11)(12)により算出される。
【0207】
【数11】
【数12】
【0208】
ただし、(q32−q23)2+(q13−q31)2+(q21−q12)2である場合、上記式(11)(12)の計算は行わず、仮想正四面体67の姿勢は基準姿勢とする。この場合の基準姿勢を示す回転軸方向の単位ベクトルKと回転角θは、下式(13)(14)で表される。
【0209】
【数13】
【数14】
【0210】
以上の式(11)〜(14)の算出結果により、仮想正四面体67の基本姿勢に対する傾きが検出できる。
【0211】
図25は、図23中ステップS1000の運動解析処理の詳細手順を表すフローチャートである。本運動解析処理は、時刻T(t0)から時刻T(t1)までの姿勢変化について回転軸と回転角を以下の計算に基づいて算出し、運動の解析を行うものである。なお、ここではT(t1)−T(t0)=T2(周期)に相当し、またt1=0の場合については運動解析は行わず、静止していたものとして扱う。
【0212】
まずステップS1010では、仮想正四面体67の各頂点67−nの座標の直前の姿勢(言い換えれば1周期T2前の姿勢)に対する変位を算出する。以下、この詳細について説明する。
【0213】
まず、二つの姿勢間での各頂点の変位を次式(15)で算出する。
【0214】
【数15】
【0215】
ステップS1020では、上式(15)の算出結果に基づき、変位l(n,t)が大きい順に並べた各頂点67−nを67−n1,67−n2,67−n3,67−n4と表記すると、3頂点67−n1,67−n2,67−n3を抽出して、次のステップS1030に移る。なお、変位の大きさが同じものの順序は問わず、任意の順に決めてよい。
【0216】
ステップS1030では、仮想正四面体67の直前姿勢からの姿勢変化を表す回転行列を算出する。以下、この詳細について説明する。
【0217】
時刻T(t0)から時刻T(t1)までの姿勢変化を表す回転行列をPとすると、回転行列Pは次式(16)で表せる。
【0218】
【数16】
【0219】
次に、頂点67−n1,67−n2,67−n3の回転行列Qによる回転を式に表すと次式(17)のようになる。
【0220】
【数17】
【0221】
上記式(17)において、R(n1,t0)R(n2,t0)R(n3,t0)は図形的特徴から線形独立であるので、逆行列が存在する。したがって、上式(17)は次式(18)となる。
【0222】
【数18】
【0223】
次のステップS1040では、上記ステップS1030において式(18)により求めた回転行列Pから回転軸とこの回転軸周りの回転角を算出する。以下、この詳細について説明する。
【0224】
回転軸方向の単位ベクトルをK(t1)、この回転軸周りの回転角をθ(t1)とすると、これらは次式(19)(20)により算出される。
【0225】
【数19】
【数20】
【0226】
なお、(p32−p23)2+(p13−p31)2+(p21−p12)2の場合、上記式(19)(20)の計算は行わず、運動状態は静止状態であるとみなす。この場合の回転軸方向の単位ベクトルKと回転角θは、次式(21)(22)で表される。
【0227】
【数21】
【数22】
【0228】
次のステップS1050では、さらに回転軸周りの回転角速度を次式(23)を用いて算出し、本フローを終了する。
【0229】
【数23】
【0230】
上記式(19)〜(23)の算出結果により、仮想正四面体67の直前姿勢に対する運動が検出できる。
【0231】
以上説明した姿勢解析及び運動解析の結果に基づき、投球されたボール66(仮想正四面体67)の球種が判定される。
【0232】
図26はこの球種の判定基準の一例を表す図である。例えば運動解析の結果、ボール66が図26(a)に示すようにボール進行方向に対して略直角かつ略水平方向の回転軸70に対し進行方向側においてボール66が下から上に向かって回転運動をしていることが検出された場合には、ストレートと判定する。反対に、図26(b)に示すように回転軸70に対し進行方向側においてボール66が上から下に向かって回転運動をしていることが検出された場合には、フォークと判定する。
【0233】
一方、ボール66が図26(c)に示すように略上下方向の回転軸71に対し上側から見て反時計回り方向に回転運動をしていることが検出された場合には、カーブと判定する。反対に、図26(d)に示すように回転軸71に対し上側から見て時計回り方向に回転運動をしていることが検出された場合には、シュートと判定する。
【0234】
なお、ここではストレート、フォーク、カーブ、シュートの4種類の球種を判定するようにしたが、さらに細かい球種(スライダー、ナックル等)を判定するようにしてもよい。この場合、例えばカーブとスライダーとは回転方向はほぼ同一であるが、上記式(23)で算出する回転角速度が所定の値より大きい場合にカーブ、小さい場合にスライダーと判定するようにすればよい。また例えば、どの方向の軸に対しても回転角速度が所定の値より小さいような場合に、ナックルと判定するようにすればよい。
【0235】
また、以上の球種の判定基準は右投手が投げる場合を例にとって説明したが、左投手が投げる場合には判定基準が変更されるようになっている。例えば左投手の場合には、上記図26(c)に示すカーブと図26(d)に示すシュートの判定基準が反対となる。この場合の投手の種類の入力は、例えば操作者によって行われるようにしてもよいし、適宜の検出器又は信号を用いて自動的に行うようにしてもよい。
【0236】
以上において、制御装置603のCPU621(詳細には図23に示す解析処理)が、特許請求の範囲各項記載の物体の姿勢を検出する姿勢検出手段を構成するとともに、CPU621(詳細には図22に示す測定処理のステップS710の手順)が、通信手段から複数の無線タグ回路素子までの距離を検出する距離検出手段を構成する。また、CPU621(詳細には図25に示す運動解析処理)は、物品の姿勢変化を検出する運動検出手段をも構成する。また、制御装置603のCPU621とRF通信制御部640及びアンテナ601−1,601−2,601−3とが、無線タグ情報読み取り装置を構成する。
【0237】
以上のように構成した本実施形態においては、ボール66に備えられる複数(本実施形態では4つ)の無線タグ回路素子Toの検出信号に基づき、姿勢解析及び運動解析を行う。これにより、遠隔にて非接触でボール66の姿勢の変化及び回転運動の向きや角速度を識別することができ、投球されたボール66の球種判定を自動的に正確に行うことができる。したがって、アンパイアの目視による判断に頼らざるを得なかった従来に比べ、球種判定を自動で短時間に行うことができる。
【0238】
また本実施形態では特に、ボール66に対し無線タグ回路素子To1〜To4を正四面体状に位置するように設ける。このように、無線タグ回路素子Toを同一平面上に位置しない4箇所にそれぞれ配置することにより、4つの無線タグ回路素子Toで構成される立体図形の重心と任意の3つの無線タグ回路素子Toが同一平面状に位置することがないことから、ボール66の姿勢変化及び運動を確実に検出することができる。特に本実施形態のように、無線タグ回路素子To1〜To4を6つの各辺長さが等しい仮想正四面体67の各頂点67−1〜67−4に位置するように設けることにより、どのように3つの無線タグ回路素子Toを選択しても同じ演算方式を用いて解析処理を行うことが可能になるので、演算処理を簡素化し、処理速度を向上することができる。さらに本実施形態では、ボール66の重心Gと仮想正四面体67の重心とを略一致させる。これによっても、解析処理を行うとこの演算処理を簡素化し、処理速度を向上する効果が得られる。
【0239】
また本実施形態では特に、ボール66に設けた4つの無線タグ回路素子Toのうち、基準姿勢に対する変位が最も大きい3つの無線タグ回路素子Toを選択して解析を行う。これにより、座標検出誤差を要因とする無線タグ回路素子Toの微小な変位を無視し、真に変位した無線タグ回路素子Toのみを検出することができるので、無線タグ回路素子Toの座標検出における誤差の影響を最も小さくすることができる。
【0240】
また本実施形態では特に、スコアボード61に球種表示部605を設け、投球ごとに球種を表示する。これにより、観客は単なる球速やストライク判定等以外の情報を得ることができるため、試合をさらに楽しく観戦することができる。
【0241】
なお、上記本発明の他の実施形態では球種検出システムを野球に適用した例を説明したが、これに限らない。すなわち、サッカー、テニス、ソフトボール、バレーボール、ボウリング、卓球等、球体を使用する球技であれば多様なスポーツに適用可能である。
【0242】
また、上記実施形態では球種検出システムを野球場に設ける例を説明したが、球種検出システムの適用場所はこれに限らない。すなわち、例えばゲームセンター等の遊技場にも適用可能である。
【0243】
図27は、球種検出システムをゲームセンターのピッチングシミュレーターに適用した例を説明するための図である。この図27に示すように、本変形例のピッチングシミュレーター72には遊技者が投じた球種と球速が表示される表示装置73が設けられている。これにより、遊技者が投じた球が確かに意図する変化球となっていたことを表示して認定したり、投球の回転軌跡等を表示して遊技者を喜ばせること等もできる。なお、上記ピッチングシミュレーターに限らず、例えばテニスシミュレーターに適用し、トップスピン等の球種を表示するようにしてもよい。
【0244】
また、上記実施形態では、ボール66の内部に正四面体67を仮想的に配置し、その頂点位置に無線タグ回路素子Toを設けるようにしたが、例えば実際に4つの無線タグ回路素子Toを正四面体形状に組み立てた姿勢検出ユニットを用意しておき、この姿勢検出ユニットを各種ボール等の内部に設けることで、上記実施形態と同様の効果を得られるようにしてもよい。
【0245】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0246】
【図1】本発明の物体姿勢検出システムの一実施形態である物品姿勢検出システムを備えた配送トラックの全体構造を表す斜視図である。
【図2】配送トラックの荷物室の内部を積み下ろし口側から見た図である。
【図3】タグラベルの概略全体構造を表す荷物の側面図である。
【図4】各荷物に添付されたタグラベルに備えられた無線タグ回路素子の機能的構成の一例を表すブロック図である。
【図5】各無線タグ回路素子のメモリ部に記憶されるIDの一例を示す図である。
【図6】制御装置の機能的構成の詳細を表す機能ブロック図である。
【図7】RF通信制御部及びアンテナの詳細構成を表す機能ブロック図である。
【図8】制御装置のCPUによって行われる上記姿勢判定処理の制御手順を表すフローチャートである。
【図9】ID検知処理の詳細手順を表すフローチャートである。
【図10】関連ID抽出処理の詳細手順を表すフローチャートである。
【図11】姿勢検出処理の詳細手順を表すフローチャートである。
【図12】荷物に備えられる各無線タグ回路素子について各アンテナを介して検出される仰角との関係を説明するための図である。
【図13】メモリに記憶されるID表の一例を示す図である。
【図14】メモリに記憶されるIDセット表の一例を示す図である。
【図15】整列後のIDセット表の一例を示す図である。
【図16】2つの無線タグ回路素子を有する無線タグラベルを製造する無線タグ製造装置の概略構成を表す概略構成図である。
【図17】本発明の物体姿勢検出システムの他の実施形態である球種検出システムを備えた野球場のスコアボードの概略構造を表す正面図である。
【図18】野球場で使用されるボールの概略内部構造を説明するための図である。
【図19】野球場に備えられた球種検出システムの全体概略構成を表す構成図である。
【図20】制御装置の機能的構成の詳細を表す機能ブロック図である。
【図21】制御装置のCPUによって行われる球種判定処理の制御手順を表すフローチャートである。
【図22】測定処理の詳細手順を表すフローチャートである。
【図23】解析処理の詳細手順を表すフローチャートである。
【図24】姿勢解析処理の詳細手順を表すフローチャートである。
【図25】運動解析処理の詳細手順を表すフローチャートである。
【図26】球種の判定基準の一例を表す図である。
【図27】球種検出システムをゲームセンターのピッチングシミュレーターに適用した変形例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0247】
1 配送トラック(移動体)
4〜7 荷物(物体)
10 送信アンテナ(アンテナ素子)
11A〜11H 受信アンテナ(アンテナ素子)
66 ボール(物体、球体)
67 仮想正四面体
100 物品姿勢検出システム
101−1〜4 アンテナ(通信手段、無線タグ情報読み取り装置)
102 警報装置(報知手段)
121 CPU(姿勢検出手段、方向検出手段、配置物品情報取得手段、無線タグ情報読み取り装置)
124 警報装置制御部(報知制御信号出力手段)
140 RF通信制御部(通信手段、無線タグ情報読み取り装置)
150 IC回路部
151 アンテナ
203A〜H 位相制御ユニット(指向性制御手段)
601−1〜3 アンテナ(通信手段、無線タグ情報読み取り装置)
605 球種表示部(表示手段)
621 CPU(姿勢検出手段、距離検出手段、運動検出手段、無線タグ情報読み取り装置)
624 表示制御部(表示制御信号出力手段)
640 RF通信制御部(通信手段、無線タグ情報読み取り装置)
G 重心
To 無線タグ回路素子
To4−1 無線タグ回路素子(上方用無線タグ回路素子)
To4−2 無線タグ回路素子(下方用無線タグ回路素子)
T タグラベルT(無線タグラベル)
T4a 表記部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象の物体と、
この物体に所定の配置で複数設けた無線タグ回路素子と、
これら複数の無線タグ回路素子と無線通信を行う通信手段と、
この通信手段による通信結果に基づき、前記物体の姿勢を検出する姿勢検出手段と
を有することを特徴とする物体姿勢検出システム。
【請求項2】
請求項1記載の物体姿勢検出システムにおいて、
前記姿勢検出手段は、前記通信手段からの前記複数の無線タグ回路素子の配置方向を検出する方向検出手段を備えることを特徴とする物体姿勢検出システム。
【請求項3】
請求項2記載の物体姿勢検出システムにおいて、
前記姿勢検出手段は、前記通信手段からの前記複数の無線タグ回路素子までの距離を検出する距離検出手段を備えることを特徴とする物体姿勢検出システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項記載の物体姿勢検出システムにおいて、
前記複数の無線タグ回路素子のそれぞれは、共通の前記物体に配置されたことを表す配置物体情報を記憶保持することを特徴とする物体姿勢検出システム。
【請求項5】
請求項4記載の物体姿勢検出システムにおいて、
前記姿勢検出手段は、前記通信手段による通信結果に基づき、前記配置物体情報を取得する配置物体情報取得手段を備えることを特徴とする物体姿勢検出システム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項記載の物体姿勢検出システムにおいて、
前記複数の無線タグ回路素子は、前記所定の配置として、対応する前記物体の所定の姿勢において高さ方向位置が互いに異なるように当該物体に配置された2つの無線タグ回路素子を含むことを特徴とする物体姿勢検出システム。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか1項記載の物体姿勢検出システムにおいて、
前記複数の無線タグ回路素子は、前記所定の配置として、対応する前記物体のうち、同一平面上に位置しない4箇所にそれぞれ配置された4つの無線タグ回路素子を含むことを特徴とする物体姿勢検出システム。
【請求項8】
請求項7記載の物体姿勢検出システムにおいて、
前記4つの無線タグ回路素子のうち、比較する姿勢から最も移動量の大きい3つの無線タグ回路素子を選択して解析を行うことを特徴とする物体姿勢検出システム。
【請求項9】
請求項7記載の物体姿勢検出システムにおいて、
前記4つの無線タグ回路素子は、前記物体に仮想的に正四面体を配置し、その4つの頂点位置に配置されていることを特徴とする物体姿勢検出システム。
【請求項10】
請求項9記載の物体姿勢検出システムにおいて、
前記仮想正四面体の重心位置を、前記物体の重心位置と略一致させたことを特徴とする物体姿勢検出システム。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項記載の物体姿勢検出システムにおいて、
前記物体に関し予め定めた基準姿勢と、前記姿勢検出手段で検出した前記物体の姿勢との差が所定の許容範囲を超えていた場合、その旨を報知手段で報知するための信号を出力する報知制御信号出力手段を有することを特徴とする物体姿勢検出システム。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1項記載の物体姿勢検出システムにおいて、
前記姿勢検出手段は、異なるタイミングにおける前記姿勢検出手段の検出結果に基づき、前記物体の姿勢変化を検出する運動検出手段を備えることを特徴とする物体姿勢検出システム。
【請求項13】
請求項12記載の物体姿勢検出システムにおいて、
前記物体は、球技に使用される球体であり、
前記運動検出手段は、前記球体の回転方向を検出することを特徴とする物体姿勢検出システム。
【請求項14】
請求項13記載の物体姿勢検出システムにおいて、
前記運動検出手段で検出した前記球体の回転方向に基づき、対応する球種情報を表示手段で表示するための信号を出力する表示制御信号出力手段を有することを特徴とする物体姿勢検出システム。
【請求項15】
検出対象の物体に所定の配置で複数設けた無線タグ回路素子と無線通信を行う通信手段と、
この通信手段による通信結果に基づき、前記物体の姿勢を検出する姿勢検出手段と
を有することを特徴とする無線タグ情報読み取り装置。
【請求項16】
請求項15記載の無線タグ情報読み取り装置において、
前記通信手段は、複数のアンテナ素子からなるアンテナと、このアンテナの指向性方向を変化させる指向性制御手段とを備えることを特徴とする無線タグ情報読み取り装置。
【請求項17】
請求項16記載の無線タグ情報読み取り装置において、
前記指向性制御手段は、前記アンテナの偏波を円偏波とすることを特徴とする無線タグ情報読み取り装置。
【請求項18】
検出対象の物体の姿勢を検出するために当該物体に貼付される無線タグラベルであって、
情報を記憶するIC回路部とこのIC回路部に接続されるアンテナとをそれぞれ備え、前記物体の通常の姿勢に対応した所定の配置で設けられた複数の無線タグ回路素子と、
前記物体の前記通常の姿勢に対応した所定の表記がなされた表記部と
を有することを特徴とする無線タグラベル。
【請求項19】
請求項18記載の無線タグラベルにおいて、
前記複数の無線タグ回路素子は、前記物体の前記通常の姿勢における上方側に対応した位置に配置された上方用無線タグ回路素子と、前記物体の前記通常の姿勢における下方側に対応した位置に配置された下方用無線タグ回路素子とを含むことを特徴とする無線タグラベル。
【請求項20】
請求項18又は19記載の無線タグラベルにおいて、
前記複数の無線タグ回路素子のそれぞれは、共通の前記物体に配置されたことを表す配置物体情報を記憶保持することを特徴とする無線タグラベル。
【請求項21】
請求項1乃至請求項14のいずれかに記載の物体姿勢検出システムを備えることを特徴とする移動体。
【請求項1】
検出対象の物体と、
この物体に所定の配置で複数設けた無線タグ回路素子と、
これら複数の無線タグ回路素子と無線通信を行う通信手段と、
この通信手段による通信結果に基づき、前記物体の姿勢を検出する姿勢検出手段と
を有することを特徴とする物体姿勢検出システム。
【請求項2】
請求項1記載の物体姿勢検出システムにおいて、
前記姿勢検出手段は、前記通信手段からの前記複数の無線タグ回路素子の配置方向を検出する方向検出手段を備えることを特徴とする物体姿勢検出システム。
【請求項3】
請求項2記載の物体姿勢検出システムにおいて、
前記姿勢検出手段は、前記通信手段からの前記複数の無線タグ回路素子までの距離を検出する距離検出手段を備えることを特徴とする物体姿勢検出システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項記載の物体姿勢検出システムにおいて、
前記複数の無線タグ回路素子のそれぞれは、共通の前記物体に配置されたことを表す配置物体情報を記憶保持することを特徴とする物体姿勢検出システム。
【請求項5】
請求項4記載の物体姿勢検出システムにおいて、
前記姿勢検出手段は、前記通信手段による通信結果に基づき、前記配置物体情報を取得する配置物体情報取得手段を備えることを特徴とする物体姿勢検出システム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項記載の物体姿勢検出システムにおいて、
前記複数の無線タグ回路素子は、前記所定の配置として、対応する前記物体の所定の姿勢において高さ方向位置が互いに異なるように当該物体に配置された2つの無線タグ回路素子を含むことを特徴とする物体姿勢検出システム。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか1項記載の物体姿勢検出システムにおいて、
前記複数の無線タグ回路素子は、前記所定の配置として、対応する前記物体のうち、同一平面上に位置しない4箇所にそれぞれ配置された4つの無線タグ回路素子を含むことを特徴とする物体姿勢検出システム。
【請求項8】
請求項7記載の物体姿勢検出システムにおいて、
前記4つの無線タグ回路素子のうち、比較する姿勢から最も移動量の大きい3つの無線タグ回路素子を選択して解析を行うことを特徴とする物体姿勢検出システム。
【請求項9】
請求項7記載の物体姿勢検出システムにおいて、
前記4つの無線タグ回路素子は、前記物体に仮想的に正四面体を配置し、その4つの頂点位置に配置されていることを特徴とする物体姿勢検出システム。
【請求項10】
請求項9記載の物体姿勢検出システムにおいて、
前記仮想正四面体の重心位置を、前記物体の重心位置と略一致させたことを特徴とする物体姿勢検出システム。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項記載の物体姿勢検出システムにおいて、
前記物体に関し予め定めた基準姿勢と、前記姿勢検出手段で検出した前記物体の姿勢との差が所定の許容範囲を超えていた場合、その旨を報知手段で報知するための信号を出力する報知制御信号出力手段を有することを特徴とする物体姿勢検出システム。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1項記載の物体姿勢検出システムにおいて、
前記姿勢検出手段は、異なるタイミングにおける前記姿勢検出手段の検出結果に基づき、前記物体の姿勢変化を検出する運動検出手段を備えることを特徴とする物体姿勢検出システム。
【請求項13】
請求項12記載の物体姿勢検出システムにおいて、
前記物体は、球技に使用される球体であり、
前記運動検出手段は、前記球体の回転方向を検出することを特徴とする物体姿勢検出システム。
【請求項14】
請求項13記載の物体姿勢検出システムにおいて、
前記運動検出手段で検出した前記球体の回転方向に基づき、対応する球種情報を表示手段で表示するための信号を出力する表示制御信号出力手段を有することを特徴とする物体姿勢検出システム。
【請求項15】
検出対象の物体に所定の配置で複数設けた無線タグ回路素子と無線通信を行う通信手段と、
この通信手段による通信結果に基づき、前記物体の姿勢を検出する姿勢検出手段と
を有することを特徴とする無線タグ情報読み取り装置。
【請求項16】
請求項15記載の無線タグ情報読み取り装置において、
前記通信手段は、複数のアンテナ素子からなるアンテナと、このアンテナの指向性方向を変化させる指向性制御手段とを備えることを特徴とする無線タグ情報読み取り装置。
【請求項17】
請求項16記載の無線タグ情報読み取り装置において、
前記指向性制御手段は、前記アンテナの偏波を円偏波とすることを特徴とする無線タグ情報読み取り装置。
【請求項18】
検出対象の物体の姿勢を検出するために当該物体に貼付される無線タグラベルであって、
情報を記憶するIC回路部とこのIC回路部に接続されるアンテナとをそれぞれ備え、前記物体の通常の姿勢に対応した所定の配置で設けられた複数の無線タグ回路素子と、
前記物体の前記通常の姿勢に対応した所定の表記がなされた表記部と
を有することを特徴とする無線タグラベル。
【請求項19】
請求項18記載の無線タグラベルにおいて、
前記複数の無線タグ回路素子は、前記物体の前記通常の姿勢における上方側に対応した位置に配置された上方用無線タグ回路素子と、前記物体の前記通常の姿勢における下方側に対応した位置に配置された下方用無線タグ回路素子とを含むことを特徴とする無線タグラベル。
【請求項20】
請求項18又は19記載の無線タグラベルにおいて、
前記複数の無線タグ回路素子のそれぞれは、共通の前記物体に配置されたことを表す配置物体情報を記憶保持することを特徴とする無線タグラベル。
【請求項21】
請求項1乃至請求項14のいずれかに記載の物体姿勢検出システムを備えることを特徴とする移動体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公開番号】特開2007−80102(P2007−80102A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−269186(P2005−269186)
【出願日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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