説明

物体検出

物体測距システムが、所定の確率表に従って、局所的な周波数頂点及び底点をランダムに選択する結果として、ランダムに分布する勾配を有する交互に上下する周波数掃引を送信し、送信される信号と物体からのその反射波とを合成するときに得られるビート周波数を求めることによって動作する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、(たとえば、マイクロ波レーダの搬送波周波数を変調することによって)物体検出及び測距において用いるのに適している波形を生成する、方法及び装置に関する。本発明は高レベルの雑音及び干渉を有する環境において動作するシステムの場合に特に適しており、限定はしないが、マルチユーザのシナリオにおいて動作することを目的とする自動車FMCWレーダに特に適用することができる。
【背景技術】
【0002】
[発明の背景]
自律的クルーズコントロール及び衝突警報/回避システムの需要が伸びたことが、周波数変調連続波(FMCW)自動車レーダを開発する契機になった。開発中のこれらのレーダの大部分は77GHz帯において動作し、その帯域はこれらの用途のために予約されている。
【0003】
FMCWレーダの機能ブロック図が図1に示される。そのシステムは、三角波形発生器WFGと、アップコンバータとしての役割も果たす電圧制御発振器VCOと、結合器CPLと、シングルアンテナ動作を提供するサーキュレータCIRと、送信−受信アンテナTRAと、混合器MXRと、ローパスフィルタ/増幅器LPAと、デジタルシグナルプロセッサDSPとを備える。
【0004】
三角波形発生器WFGは、三角形を成すように電圧制御発振器VCOの周波数を変更する制御信号CVを生成する。結果として生成され、アンテナTRAによって送信される波形TWは、一定の振幅を有するが、図2a)に概略的に示されるように、その周波数は各掃引区間TS中に帯域Δfにわたって掃引される。
【0005】
距離Lにある障害物OBSからのエコーRWは、送信波形TWの減衰したコピーになり、τ=2L/cだけ時間的に遅延している。ただし、cは光速である。エコーRWは、混合器MXRにおいて、結合器CPLによって供給される送信波形TWの一部と混合される。混合器MXRの出力信号は、ローパスフィルタ/増幅器LPAにおいて増幅され、フィルタリングされて、ビート信号BFが生成される。ビート信号BFの周波数fLは障害物距離に正比例する。
L=2LΔf/(cTS
又は、
L=2LSFM/c
ただし、SFM=Δf/TSは周波数掃引の勾配である。距離を求めるために、勾配SFMの正確な値がわからなければならないことを指摘しておく。
【0006】
図2a)は、送信・受信波形両方の線形な周波数変化を概略的に示しており、結果として生成されるビート周波数も示す。図に示されるように、ビート周波数fLは、掃引の極値の場所を除いて一定である(この影響は実際には無視することができる)。
【0007】
レーダと障害物が速度Vで相対的に動くとき、ビート周波数fL上に、ドップラ周波数シフト
V=2VfC/c
が重ね合わせられる。ただし、fCはレーダ搬送波周波数である。通常、搬送波周波数fCは、周波数掃引の帯域Δfよりもはるかに高い。それゆえ、実際には、ドップラシフトfVは、周波数変調によって影響を及ぼされない。
【0008】
図2b)は、送信される波形に対して受信される波形が遅延し、ドップラシフトする場合を示す。障害物が速度Vでレーダに近づいてくる場合、ドップラシフトfVは、周波数上り掃引中に、観測されるビート周波数を下げるのに対して、周波数下り掃引中に、観測されるビート周波数は上がる。
【0009】
デジタルシグナルプロセッサDSPは上り掃引及び下り掃引ビート周波数を合成し、障害物の距離L及び相対速度Vの両方を求める。距離L及び速度Vの推定値が、プロセッサDSPの出力LVにおいて生成される。正確な動作のために、シグナルプロセッサDSPは、波形発生器WFGから、各周波数掃引の開始及び方向を示す同期用パルスSCを受信する。
【0010】
自動車レーダの分野では、要求される機能及び潜在的な性能をハードウエアで実証することに、研究開発の努力の大部分を集中してきた。しかしながら、相互干渉に対する耐性に関する重要な問題が幾分無視されてきたように思われる。
【0011】
いくつかの研究(David Richardson著「An FMCW radar sensor for collision avoidance」(IEEE Conference on Intelligent Transportation System, ITSC-97, 平成9年11月9日〜12日, pp. 427-432))によって、全て又は大部分の車がレーダを搭載しているときに、高速道路の交通条件において1600台までの自動車レーダが動作している可能性があり、それらのレーダが相互干渉体としての役割を演じる場合もあることがわかっている。それゆえ、マルチユーザ干渉への耐性の問題が解決されるまで、自動車レーダは、大規模な商業的成功には至らない。
【0012】
Graham M. Brooker著「Mutual Interference of Millimeter-Wave Radar Systems」(IEEE Transactions on Electromagnetic Compatibility, EC-49, 平成19年2月, pp. 170-181)において提示される解析は、一般的に用いられる変調方式は全てマルチユーザ干渉を受けやすいものであると結論付けている。さらに、干渉の形態によっては特定し、抑圧することができるものもあるが、他の干渉は制御不能であり、結果として、障害物検出が劣化し、その距離及び速度の推定が不十分になる。
【0013】
米国特許第5,923,280号明細書は、初期開始時刻、初期開始周波数及び繰返し放射される周波数シーケンスの順序を決定するためのランダム化手順を用いる自動車レーダシステムを開示している。反射され受信される信号におけるドップラシフトは、近い周波数成分のスペクトル解析を実行することによって推定され、その後、受信信号から除去される。その後、受信された信号は、直線的な順序に並べ替えられて、送信信号が同じように並べ替えられたイメージと比較され、目標物への距離が求められる。
【0014】
米国特許出願公開第2004/0130482号明細書は、生成される信号が、開始周波数から上方に掃引され、その後、下方に掃引されて開始周波数に戻る周波数を有するFMCWレーダシステムを開示している。ランダムに生成された可変の時間遅延が掃引区間の間に挿入され、異なるシステム間の干渉を低減する。ビート周波数を或る特定の範囲に保持するために、ピーク周波数(それゆえ、掃引勾配)が、検出されたビート周波数に応じて決定論的に調整される。開示される装置は、結果として、送信帯域を非効率的に使用することになる。
【0015】
米国特許第5,345,470号明細書に開示されるFMCWレーダシステムは、連続的な周波数変位(frequency excursion)からなる波形を出力する。各周波数変位は、それぞれ、正であるが異なる周波数/時間変調勾配を有し、且つ異なる中央周波数を有する。干渉を低減するために、隣接する勾配及び中心周波数を確率的に得ることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
マルチユーザ干渉への耐性を改善することになる、FMCW波形を設計及び生成する方法及び装置(特に自動車FMCWレーダにおけるもの)を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0017】
[発明のサマリー]
本発明の態様が添付の特許請求の範囲において述べられる。
【0018】
本発明の別の態様によれば、物体測距システムが、所定の確率表に従って、局所的な周波数頂点及び底点をランダムに選択する結果として、ランダムに分布する勾配を有する周波数掃引(それは、交互に上下することが好ましい)を送信し、送信される信号と物体からのその反射波とを合成するときに得られるビート周波数を求めることによって動作する。
【0019】
本発明のさらなる好ましい態様によれば、自動車用の周波数変調連続波(FMCW)レーダシステムにおいて用いられる送信機の周波数が、断片的には線形であるが、依然として非決定論的で、且つ不規則な「ジグザグ」状となるように、時間的に変更され、利用可能な、又は割り当てられる周波数帯域ΔFの最大の広がりを利用するように配置される。
【0020】
そのような配置は、他のユーザが同じ領域において動作し、同じ周波数帯域ΔFを共用することによって引き起こされる帯域内相互干渉に対する耐性を高めるのを確実にする。以下に述べられる説明から明らかになるように、これは、複数のユーザが近い周波数を同時に出していることになる確率が低いためである。処理回路、(たとえば図1のローパスフィルタ/増幅器LPA)の帯域幅が制限されるため、著しく異なる周波数は阻止される。2つの送信機が、交差する周波数/時間勾配を生成する場合であっても、相互干渉は非常に短く、且つ非反復的になり、それゆえ、問題が生じてもわずかである。2つの送信機が同時に同じ周波数/時間勾配を有する信号を生成しているという、起こりそうもない事象では、それらの勾配の開始時刻が概ね同じ場合にのみ著しい干渉が生じることになるが、それはさらにはるかに起こりえない。さらに、この起こりえない事象であっても、非反復的な干渉が生じるのは、勾配の長さにわたって続く短い期間に限られる。上記の一時的な干渉の影響はいずれも、1つの勾配、又は好ましくは複数の勾配にわたって、距離推定値を、(たとえばスライディングウインドウ技法を用いて)積分することによって緩和することができる。
【0021】
上記の利点は、自動車レーダの基本機能に、すなわち障害物距離及び速度の決定に影響を及ぼすことなく成し遂げることができる。
【0022】
図3は、マルチユーザ自動車FMCWレーダシステムにおいて用いられる搬送波を変調するのに適している周波数変化の、発明されたパターンの一例である。変調用信号は、極大値(頂点)及び極小値(底点)を含む極値を有する周波数/時間パターンを有する。隣接する極値間の信号の部分は、それぞれの信号部分と見なすことができ、好ましい実施の形態では、各信号部分は、直前の信号部分の終了周波数に等しい開始周波数を有する。
【0023】
確率論的な用語によれば、図3において例示されるような、時間と共に周波数が変化する好ましいパターンは、周波数ランダムウォークと見なすことができ、これは、特別に構成されたマルコフ連鎖(MC)に従う。
【0024】
周波数値が所定の帯域ΔF内に留まらなければならないので、そのウォークの周波数は制限される。さらに、観測時間区間TDは常に限られるので、実際の測定には、その都度ウォークの有限の1セグメントだけが用いられる。
【0025】
FMCW自動車システムに適している断片的な線形周波数変化を有する、MCベースの周波数ウォークは、以下のように構成することができる。最初に、離散時間パラメータnが、所定の時間区間TGだけ分離された、連続した時刻によって規定される。必須ではないが、区間TGとして一定の値を用いることが好都合である。
【0026】
不均一且つ/又は可変の時間区間TGを利用することによって、帯域内相互干渉に対する耐性が改善されるようにも見える。しかしながら、独立したシステムのマスタークロックは互いに同期しないので(クロック回路が量産されることがある場合であっても、各システムが任意の時刻に開始されるので)、必ずしもそのように複雑にする必要があるとは限らない。したがって、その結果として生成される非同期のモードでは、異なるユーザの時間区間TGが一致することはほとんどなく、互いに時間的にシフトされ続けるように見える。
【0027】
第二に、K個の異なる周波数値が、最大限利用可能な周波数帯域ΔF内で選択される。F1及びFKがそれぞれ、最小及び最大周波数値を表すものとすると、ΔF=FK−F1であり、周波数は、F1<F2<...<Fk<...<FKのように選択することができる。必須ではないが、極値F1とFKとの間に均一に周波数を分散させることが好都合な場合がある。それらの選択された周波数(F1及びFKを含む)はそれぞれ、MCベースの周波数ウォークの「状態」と見なすことができる。
【0028】
各時間区間TG中に、時刻nにおける現在の状態(周波数)Fiから、時刻(n+1)における次の状態(周波数)Fjまで遷移が行なわれなければならない。ただし、F1≦Fi,Fj≦FKである。各遷移は、周波数を単調に(たとえば線形に)、個々の状態間で、すなわち周波数Fiから周波数Fjまで、上向き又は下向きに変化させることによって成し遂げられる。障害物の距離及び速度を効率的に求めるために、隣接する時間区間TGにおいて周波数変化の方向(上下)を交互に入れ替えることが好都合である。
【0029】
周波数の変化率(勾配)の最大値及び最小値はいずれも、或る所定の値に制限されることが好ましい。最も急な勾配は、そのシステムによって利用される発生器において物理的に達成可能である最も速い周波数掃引を超えるべきではない。一方、最小の許容可能な勾配の値(又は少なくとも、信号部分の開始周波数と終了周波数との間の差)は、距離測定の要求される分解能によって決定される。
【0030】
たとえば、利用可能な周波数帯域ΔFの最大の広がりが320MHzであり、時間区間TGが4msに等しい場合には、時間区間TG中の最小の周波数変位は、少なくとも80MHzに等しくなり、最大の周波数変位は、たとえば、240MHzに制限される場合がある。
【0031】
本発明をより包括的に理解するために、含まれるK個の周波数(状態)をK個の「トーン」と見なすことが役に立つ場合がある。その際、音楽用語を用いて、各状態遷移をグリッサンド(glissando)、すなわち2つの連続したトーンの間で周波数を上方又は下方に連続的にスライドさせることと見なすことができる。
【0032】
本発明の好ましい実施の形態によれば、時刻nにおけるその時点のトーンFi毎に、時刻(n+1)における次のトーンFjが、許容されるトーンの集合{Fj}から非決定論的に選択される。選択メカニズムは以下のように構成される。
(a)結果として生成される周波数ウォーク値を、割り当てられた周波数範囲(F1,FK)内に保持する。
(b)選択ごとに、周波数/時間勾配の符号を入れ替える。
(c)勾配の絶対値の大きさが所定の範囲内に保持されるのを確実にする。
【0033】
したがって、その時点のトーンFi毎に、次のトーンの「許容される」部分集合が2つ必要とされる。一方の部分集合は、周波数が増加している場合に必要とされ、他方の部分集合は、周波数が減少している場合に必要とされる。それゆえ、アップグリッサンドGijを適用することによって、次のより高いトーンFj(ただし、j>i)に達する。同様に、ダウングリッサンドGijを適用することによって、次のより低いトーンFj(ただし、j<i)に達する。
【0034】
例示するために、図4は、或る選択されたトーンに対して許容される次のトーン(複数)の一例を概略的に示す。
【0035】
選択過程の制約によって許容される各グリッサンド(アップ又はダウン)Gijは、所定の確率Pijで選択され、この確率は、現在のトーンFiから次のトーンFjまでの遷移の確率である。アップグリッサンドの場合に、j>iであり、ダウングリッサンドの場合に、j<iであることが明らかである。周波数は、連続する時刻nと(n+1)との間で変化しなければならないので、関係j=iは許容されないことを指摘しておく。
【0036】
図5の流れ図は、その基本的な形態において本発明を実施するために必要とされる動作のタイプ及び順序を示す。その手順の開始後に、周波数/時間勾配の方向の変化をカウントするカウンタnが1に設定される。変数DIR(これは、上り勾配を示すために値+1をとり、下り勾配を表すために値−1をとる)の初期値が、たとえば、+1に設定される。変数Fi(勾配開始周波数を表す)の初期値が、中間周波数Fmに設定される。
【0037】
次のステップでは、可能な次の状態のリスト{Fj}が(すなわち、生成される周波数−時間勾配における可能な終了周波数のリストが)決定される。このリストは、Fi及びDIRの現在状態に依存する。
【0038】
次のステップでは、たとえばルックアップテーブルから、可能な次の状態{Fj}のそれぞれを選択する確率が求められる。これらの確率{Pij}は、現在の状態Fi、変数DIR(これは、2つのルックアップテーブルのどちらかを選択するために用いられる場合がある)及びそれぞれの次の状態Fjに依存する。
【0039】
次のステップでは、次の状態Fjがランダムに、確率の集合{Pij}に基づいて選択される。
【0040】
その後、次の信号部分を生成するために、値n、Fi、Fjが出力される。
【0041】
続いて、次の勾配を出力するのに備えて、開始周波数Fiが、以前に求められている終了周波数Fjに設定され、勾配符号指示子DIRの符号が反転し、カウンタnがインクリメントされる。その後、Fi及びDIRの現在の状態に対して許容される次の状態{Fj}を決定することから始めて、上記の手順を用いて、次の信号部分が求められる。
【0042】
[実施例]
本発明による周波数ウォークの設計に含まれるステップを理解するのを容易にするために、適切かつ簡単な設計を説明する実施例が以下に提示される。
【0043】
隣接する時刻n間の時間区間TGが等しく、且つ5つの選択されたトーン
F1<F2<F3<F4<F5
が均一に広がっており、隣接するトーン間の周波数差が以下のように等しいものと仮定する。
(F5−F1)/4=ΔF/4
【0044】
また、3つの勾配:ΔF/(4TG)、ΔF/(2TG)または3ΔF/(4TG)を有するグリッサンド(アップ又はダウン)のみが許容されるものと仮定する。たとえば、ΔF=320MHzかつTG=4msである場合には、許容される勾配は20MHz/ms、40MHz/ms及び60MHz/msである。
【0045】
図6は、周波数ウォークを設計するために用いることができる、許容されるアップグリッサンドGij(ただしj>i)及びダウングリッサンドGij(ただしj<i)を示す。さらに、特定のグリッサンドGijが選択される確率Pijも示される。
【0046】
現在のトーンFiのそれぞれに対する、許容される次のトーン{Fj}が以下の表に記載される。
【0047】
【表1】

【0048】
図7の2つの表は、許容されるアップグリッサンド及びダウングリッサンドが選択される確率Pijを行列の形で示す。各周波数は確率の集合を有し、2つの表(アップグリッサンド及びダウングリッサンドにそれぞれ関連付けられる)のそれぞれに1つの部分集合を有する。現在の選択に用いられる確率は、現在の周波数と、意図する勾配の符号(これは直前の勾配の符号によって決定される)とに依存する(そして、それだけに依存することが好ましい)。信号帯域幅を良好に利用するという利点を得るために、少なくともいくつか、好ましくは全ての周波数が、それぞれの確率集合内に少なくとも2つの0でない確率を有し、少なくともいくつかの周波数が、特定の勾配符号に関連付けられる確率部分集合内に少なくとも2つの0でない確率を有する。
【0049】
図に示されるように、いかなる所与の状態についても、そこから生じる許容されるグリッサンドすべての確率の和は1に等しくなければならない。たとえば、
P12+P13+P14=1
さらに、許容されるグリッサンドが1つしか存在しない場合、たとえば、トーンF4からトーンF5へのアップグリッサンドG45しか存在しない場合には、そのようなグリッサンドが生じる確率は1でなければならない(決定論的な選択)。
【0050】
本発明のさらに別の態様によれば次のようになる。「類似の」グリッサンドが等しい確率で選択され、「鏡面対称の」グリッサンドが等しい確率で選択される場合には、全ての5つのトーンの対称な分布、すなわちP(T1)=P(T5)及びP(T2)=P(T4)を得ることができる。それゆえ、以下の式が成り立つ。
P12=P54=a, P13=P53=b, P14=P52=1−a−b
P23=P43=a, P24=P42=b, P25=P41=1−a−b
P34=P32=c, P35=P31=1−c
【0051】
したがって、2つの確率行列(アップグリッサンドのために1つ、ダウングリッサンドのためにあと1つ)を完全に指定するために、3つの確率a、b及びcしか選択する必要がない。上記の仮定は、周波数ウォークの設計手順を非常に簡単にし、スペクトルをより有効に利用することにも繋がる。
【0052】
図8の2つの表は、グリッサンドが対称であるという仮定から生じる簡略化された確率行列を示す。
【0053】
本発明のさらに別の態様によれば、システムの動作中に、グリッサンド確率Pijを全て異なる1組の値に変更することができる。そのような変更は、ランダムに(好ましくは非決定論的に)選択される時刻において(複数の信号部分の持続時間よりも長い間隔において)行われる場合がある。この付加的な「行列切替」のランダムメカニズムによって、本発明に従って構成される自動車FMCWレーダは、帯域内マルチユーザ干渉に対する耐性がさらに高くなる。
【0054】
そのシステムの全体的な予測不可能性を最大にするために、「行列切替」の間の時間区間は、指数関数分布に従うことができる。たとえば、選択された区間持続時間TG=4msに対して、指数関数分布の平均値は、100TGよりも長くなるように(たとえば1秒に)選択される場合がある。指数関数分布の確率変数を生成するハードウエア及びソフトウエアの両方の方法が、当業者によく知られている。
【0055】
本発明において所定の確率表に従って勾配終了周波数をランダムに選択する使用によって、好ましい構成において、交互に入れ替わる上り/下り勾配を使用すること、及びただ1つのランダムに選択されたパラメータのみを使用してより簡単に実現することができるようにすることに起因する他の利点を提供しながら、(たとえば米国特許第5,345,470号明細書のような構成よりも)周波数/時間空間を良好に利用することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】従来技術のFMCW自動車レーダシステムの簡略化された機能ブロック図である。
【図2】a)は、図1のシステムにおいて用いられる送信及び受信波形の線形な周波数変化と、結果として生成されるビート周波数とを概略的に示す。b)は、受信波形が送信波形に対して遅延しドップラシフトする場合の、送信及び受信波形の線形な周波数変化と、結果として生成されるビート周波数とを概略的に示す。
【図3】本発明の技法を用いて導出され、マルチユーザ自動車FMCWレーダシステムに適している周波数変化のパターンの一例である。
【図4】本発明による方法を用いる場合に、いくつかの選択されたトーンに対して許容される次のトーンを求める方法を概略的に示す。
【図5】本発明の方法においてトーンのシーケンスを導出するために用いられる動作のタイプおよび順序を示す流れ図である。
【図6】本発明による周波数ウォークを設計するために用いることができる、許容されるアップグリッサンド及びダウングリッサンドを、対応する確率と共に示す。
【図7】許容されるアップグリッサンド及びダウングリッサンドが選択される確率を行列の形で示す。
【図8】グリッサンド対称の仮定から生じる簡略化された確率行列を示す。
【図9】本発明に従って構成されるデジタルグリッサンドコントローラGTRの機能ブロック図である。
【図10】異なるしきい値集合について得られるトーン及び勾配の経験的なヒストグラムを概略的に示す。
【図11】本発明に従って構成される周波数ウォークの軌跡の例を示す。
【図12】自動車マルチユーザFMCWレーダシステムに対して、本発明に従って構成されるデジタルグリッサンドコントローラGTRを適用する一例である。
【図13】本発明の技法を用いて導出される周波数変化のパターンのさらに別の例(非線形の周波数/時間勾配を有する信号部分を含む)を示す。
【図14】本発明の技法を用いて導出される周波数変化のパターンのさらに別の例(非線形の周波数/時間勾配を有する信号部分を含む)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0057】
[好適な実施形態の詳細な説明]
図9は、本発明に従って構成されるデジタルグリッサンドコントローラGTRの機能ブロック図である。コントローラGTRは、以下のブロック及び回路を含む。
−タイミング/制御ユニットTCU
−ランダム事象発生器EVG
−6ビット乱数発生器RNG
−3つのコンパレータC21、C31及びC32
−確率行列メモリPMM
−しきい値バッファTHB
−状態レジスタSTR及び次状態レジスタNSR
−「トグル」フリップフロップTG
−グリッサンド論理回路GLC
−組み合わせ論理ユニットCLU
−加算器IAI
【0058】
コントローラGTRによって用いられる6ビット乱数発生器RNGは、米国特許第6,751,639号明細書において開示されている種類から成る場合があるか、又は任意の他の適切な種類から成る場合がある。
【0059】
グリッサンドコントローラGTRは以下のように動作する。タイミング/制御ユニットTCUによって供給されるクロックパルスCKのそれぞれに応答して、乱数発生器RNGによって6ビット乱数RNが生成される。各乱数RNは3つのコンパレータC21、C31及びC32において、3つの所定のしきい値T21、T31及びT32と比較される。結果として、各コンパレータは、乱数RNがそれぞれのしきい値を超えているか否かを示す2値(ベルヌーイ)確率変数を生成する。
【0060】
その後、そのようにして得られた2値確率変数B21、B31及びB32を、組み合わせ論理ユニットCLUにおいて用いて、許容されるグリッサンドのうちのいずれが現在のトーンから次のトーンまでの遷移を行なうために用いられるかが判断される。たとえば、現在のトーンがF2である場合には、許容されるグリッサンドは以下のようになる。
−F2からトーンF1への遷移に対応する、勾配1を有する1つのダウングリッサンド。
−トーンF2からトーンF3、トーンF4又はトーンF5のいずれかへの遷移にそれぞれ対応する、勾配1、2又は3をそれぞれ有する3つのアップグリッサンド。
【0061】
グリッサンド方向(アップ又はダウン)は、直前のグリッサンドの方向とは常に反対であるので、要求されるジグザグに見える信号を生成することができるようになる。トーン毎に、許容されるグリッサンドの数(1、2又は3)は、2つの2値入力G1及びG2によって供給され、グリッサンド方向は、2値入力DIによって与えられる。
【0062】
グリッサンドは、許容される集合からランダムに選択される。しかしながら、許容されるグリッサンドが1つしか存在しない場合(たとえば、トーンF2からトーンF1に移行する場合)には、ランダムメカニズムは関与しない(すなわち、その遷移は確率1で生じなければならない)。勾配1又は勾配2を有する、2つのグリッサンドが許容される場合には、選択される勾配は次の条件に依存し、
RN>T21である場合には、勾配2が選択され、
そうでない場合には、勾配1が選択される。
【0063】
勾配1、又は勾配2、又は勾配3を有する、3つのグリッサンドが許容される場合には、選択される勾配は次の条件に依存し、
RN≦T31である場合には、勾配1が選択され、
そうではなく、T31<RN≦T32である場合には、勾配2が選択され、
RN>T32である場合には、勾配3が選択される。
【0064】
図に示されるように、しきい値T21、T31及びT32の選択された値に応じて、異なる勾配が異なる確率で現れる。選択された勾配SL、その値及び方向は、組み合わせ論理ユニットCLUの出力(S1、S2、S3)において供給される。その後、この選択された勾配は、加算器IAIにおいて、現在の状態(I1、I2、I3)に加算され、次の状態(J1、J2、J3)が生成される。さらに、勾配パラメータは、適切なデジタルシグナルプロセッサにおいて利用される出力SLにおいて入手可能である。
【0065】
トーン毎に、グリッサンド論理回路GLCによって、許容されるグリッサンドの数(1、2又は3)が決定される。その回路は、現在のトーンに関する情報(出力(I1、I2、I3)において状態レジスタSTRによって与えられる)を、要求されるグリッサンド方向(アップ又はダウン。出力UDにおいて「トグル」フリップフロップTGによって与えられる)に関する情報と組み合わせる。
【0066】
タイミング/制御ユニットTCUによって供給される信号LNに応答して、次のトーン(V1、V2、V3)がロードされ、その後、次状態レジスタNSR内に保持される。グリッサンドコントローラGTRは連続的に動作するので、次のトーンは現在のトーンになり、したがって、クロックパルスCLに応答して、状態レジスタSTRにロードされる。これと同じクロックパルスが、「トグル」フリップフロップTGの状態を反転させる。
【0067】
適切なデジタルシグナルプロセッサにおいて同期用パルスとして利用される信号LNも、出力LNにおいて入手可能である。
【0068】
グリッサンドコントローラGTRの動作は、入力ISを介して、状態レジスタSTRに初期状態をロードすることによって開始される。ロードされた初期状態が2、3、又は4のいずれかである場合には、コントローラGTRは自動的に始動する(これは、方向(アップ又はダウン)のうちのいずれかを用いることができるためである)。
【0069】
上記の構成の結果は、開始周波数及び勾配方向と、勾配の大きさをランダムに選択することとを組み合わせて、終了周波数を求める動作となる。それゆえ、所与の終了周波数が選択される確率は、開始周波数及び勾配方向に、そして、しきい値T21、T31及びT32に依存する。
【0070】
上記の説明から、要するに、グリッサンドコントローラ設計の重要な要素は、3つのしきい値T21、T31及びT32を賢明に選択することである。いくつかの設計基準を考慮に入れてもよい。たとえば、3つの勾配が等しい確率1/3で生じることが要求される場合や、用いられる5つのトーンに対して同じ確率1/5を維持することが重要である場合等がある。
【0071】
しきい値の集合{(T21、T31、T32)}として異なる複数のものが、確率行列メモリPPM内に格納される。任意の利用可能な集合(T21、T31、T32)が、入力MSを介して、タイミング/制御ユニットTCUによって選択される。この集合は、タイミング/制御ユニットTCUによって供給されるLT信号に応答して、しきい値バッファTHBにロードされる。
【0072】
グリッサンドコントローラGTRは、動作中、帯域内マルチユーザ干渉に対する耐性を高めるために、しきい値の集合{(T21、T31、T32)}として異なるものを用いることができる。このために、タイミング/制御ユニットTCUは、事象発生器EVGを用いて、出力EVにおいて、タイムマーク(決定論的な時間間隔において生じてもよく、非決定論的な時間間隔において生じてもよい)を得る。
【0073】
確率的な考慮から、結果として、事象間の時間間隔は、ポアソン点過程をエミュレートするために好ましくは指数関数分布を有するべきである。1つの実用的な解決策は、擬似ランダム特性を有する線形フィードバックシフトレジスタを利用し、生成された2値波形の各状態遷移を1つの事象として用いることであろう。適切なランダム又は擬似ランダム事象を生成する他の技法も、当業者によく知られている。
【0074】
説明のための例として、ここで、本発明に従って構成されるグリッサンドコントローラGTRの達成された特性と共に、しきい値の集合{(T21、T31、T32)}が3つ提示される。
【0075】
[事例A]
最初に、3つの勾配が、互いに等しい1/3の確率で生じることが望ましいものと仮定する。
【0076】
6ビットの乱数RNが、等しい確率1/64を有する64個の整数値0≦RN≦63をそれぞれ有すると仮定することができる。しきい値がT21=24、T31=14及びT32=33と選択されるとき、3つの勾配はそれぞれ、同じ確率1/3で生じる。しかしながら、各トーンの確率は異なる。P(F1)=P(F5)=0.18、P(F2)=P(F4)=0.22及びP(F3)=0.2。
【0077】
[事例B]
ここでは、5つの各トーンについて等しい確率1/5が要求されるものと仮定する。この場合、しきい値は、T21=12、T31=22及びT32=39と選択されるべきである。この場合、トーン確率は等しいが、勾配確率は全て異なる。P(SL=1)=0.42、P(SL=2)=0.33及びP(SL=3)=0.25。
【0078】
[事例C]
用途によっては、勾配のうちの1つの発生確率を低減することを要求される場合もある。たとえば、T21=59、T31=20及びT32=21としきい値を選択する結果として、以下の勾配確率が生じる:P(SL=1)=P(SL=3)=0.49及びP(SL=2)=0.02。この場合、トーン確率は以下のようになる。P(F1)=P(F5)=0.19、P(F2)=P(F4)=0.25及びP(F3)=0.12。
【0079】
図10は、上記の各事例に対して得られるトーン及び勾配の経験的なヒストグラムを概略的に示しており、図11は、対応する周波数ウォークの軌跡の例を示す。例示するために、トーンの周波数及び時間区間が、実用的に有用な単位において表される。図に示されるように、トーン及び勾配確率の値が異なる結果として、現れる軌跡が異なることになる。
【0080】
図12は、本発明に従って構成されるデジタルグリッサンドコントローラGTRを自動車FMCWレーダに適用する一例である。図示される例では、図1の波形発生器が、グリッサンド発生器GTR及びダイレクトデジタルシンセサイザDDSを含むサブシステムによって置き換えられている。出力V1、V2及びV3においてグリッサンド発生器GTRによって供給される連続したトーンに応答して、シンセサイザDDSは、電圧制御発振器VCOを駆動する、対応する信号CVを生成する。また、グリッサンドコントローラGTRは、デジタルシグナルプロセッサDSPに、同期用信号LNと、勾配の値及び方向を示す信号SLとを供給する。
【0081】
デジタルシグナルプロセッサDSPは、図1に示される従来技術のシグナルプロセッサDSPと同じように動作することができるが、距離がビート周波数と(可変)勾配との比に比例するように計算されることが異なる(勾配が一定であり、単にビート周波数に比例する従来技術の構成の場合とは異なる)。勾配の大きさは信号SLによって示される。また、出力LVとして生成される距離L及び速度Vの推定値は、複数の信号勾配にわたって受信される信号を積分することによって求められる。これはたとえば、同期用信号パルスLNをカウントする(結果として、図5との関連で上記のカウントに対応するカウントnが生成される)ことによって動作するスライディング窓構成を用いてなされる。
【0082】
好ましい実施形態において、物体速度は受信された信号内のドップラ周波数を求めることによって計算されるが、これは本発明にとって不可欠ではないことに留意されたい。
【0083】
文脈によって異なるように指示される場合を除いて、特許請求の範囲を含む本明細書全体を通して、用語「ランダム」は、純粋にランダムに非決定論的に生成される信号だけでなく、擬似ランダム信号(擬似ランダム2値信号を生成するために、従来技術において用いられるようなフィードバック回路が設けられたシフトレジスタ構成の出力のようなもの。見掛け上ランダムであるが、決定論的な手段によって再生可能である)およびカオス的信号も包含することを意図している。
【0084】
本発明の好ましい実施形態のこれまでの説明は、例示し、説明するために提示されてきた。包括的であること、又は本発明を開示される形態と全く同じ形態に限定することは意図していない。これまでの説明に鑑みて、数多くの改変、変更及び変形を行なうことによって、当業者が、意図される特定の用途に合わせて本発明を種々の実施形態において利用することができるようになることは明らかである。
【0085】
たとえば、上記の実施形態において、各勾配は、直前の部分のランダムに選択された終了周波数に等しくなるように開始周波数を選択し、その終了周波数を新たにランダムに選択することによって、ランダムに選択された。しかしながら、以下のように、種々の代替形態が可能である。
(i)各信号部分の開始周波数は、直前の信号部分の終了周波数に等しくなることが好ましいが、これは不可欠ではない。代わりに、ある部分の終了周波数と次の部分の開始周波数との間に離散的な飛び(上方向又は下方向)が存在してもよく、それにより不連続の信号を生成してもよい。周波数の飛びは、一定にしてもよく、所定のパターンに従って可変にしてもよく、又は或る特定の限度内でランダムにしてもよい。それゆえ、開始周波数は、(直前の終了周波数に依存する値を有することになるという点で)直前の終了周波数に従って決定されることになるが、必ずしも終了周波数に等しいとは限らない。新たな周波数を設定するために回路が有限の時間を要することになるので、隣接する信号部分間にギャップを構成することが望ましい場合がある。干渉に対する耐性をさらに高めるために、ランダムに選択された長さのギャップを与えることが多少有利である場合がある。
(ii)上記の実施形態は、信号部分が送信される順序において信号部分のパラメータを逐次的に決定することにも留意されたい。これは好ましいが、不可欠ではない。たとえば、どの信号部分が送信されるよりも前に、すべての信号部分を予め構成することができ、その場合には、各信号の終了周波数が次に送信される信号部分の開始周波数に等しくなるように計算されるように、それらの信号部分を逆の順序において設計することができる。それゆえ、本明細書及び特許請求の範囲において用いられるときの用語「開始周波数」及び「終了周波数」は、信号構成の(時間的な)方向に関するものと解釈されるべきであり、信号送信の(時間的な)方向は同じであっても反対であってもよい。
(iii)一般的に、信号周波数の変位を、それらが用いられることになる時点に先立って決定することができるように、バッファを用いることが好ましい。場合によっては、ある特定の条件(たとえば、高速で繰り返される周波数極値のパターン)に関して局所的な頂点及び底点のシーケンスを調査し、それに応じて、計算されたシーケンスを変更する(たとえば、その一部を除去する)ための仕組みを設けることが望ましいことがある。
(iv)図13に示される、蛇行する(正弦曲線のような)パターン(meandering, sinusoidal-like pattern)、又は、図14の曲線のような、対数関数又は指数関数の周波数/時間曲線のような非線形の信号部分を用いてもよい。また、単調な周波数変化を示す断片的な線形曲線を用いてもよく、又はたとえば、周波数が一定となる期間を含む階段状の周波数/時間曲線を用いてもよい。
(v)干渉をさらに低減するために、選択可能な所定の周波数を変更することによって、又は異なる確率表を用いることによって、周波数極値のパターンを(複数の信号部分の持続時間よりも長い、場合によってはランダムな間隔で)繰返し上下にシフトすることができる。
【0086】
本発明は、全く異なる周波数帯域を使用するレーダを含む、上記のレーダ以外のタイプのレーダにも適用することができる。本発明は、送信が繰返し中断されるレーダシステム(FMICW)にも適用可能である。また、本発明は、種々の信号パラメータを適切に換算及び選択すれば、電磁放射を送信するシステム以外のタイプのシステム(たとえば音響又は超音波画像形成用途)にも適用可能であるが、本発明は、ソナーシステムのような、本発明の改善された干渉排除動作を利用することができる用途において用いられるときに特に有益である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体を検出する方法であって、
前記方法は、
周波数が変化する信号を送信することと、
前記物体からの前記信号の反射を検出することと、
前記送信された信号の周波数と、前記反射の周波数との間の差から前記物体の距離を求めることと
を含み、
前記信号は連続する複数の部分を含み、
前記部分のそれぞれは、局所的な周波数頂点と局所的な周波数底点との間に延在する周波数をそれぞれ有し、
周波数が増加する信号部分と、周波数が減少する信号部分とが交互に入れ替わり、
前記各信号部分は、直前の信号部分の終了周波数に従って選択される開始周波数から、所定の周波数の集合からランダムに選択された終了周波数まで延在し、前記所定の周波数はそれぞれ、対応する確率の集合を有し、
前記周波数毎の前記選択確率は、前記開始周波数と、前記直前の信号部分の勾配方向とに依存する、物体を検出する方法。
【請求項2】
前記所定の周波数の集合は、対応する選択確率を有する周波数を含み、
前記選択確率は、前記直前の信号部分の所与の勾配方向について、前記開始周波数に応じて異なる0でない値の内で変化する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記各信号部分は、前記直前の信号部分の前記終了周波数に等しい開始周波数を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記周波数毎の前記確率は、前記開始周波数と、前記直前の信号部分の前記勾配方向とにのみ依存し、それにより、前記信号の局所的な周波数頂点及び底点はマルコフ連鎖を形成する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ランダムな選択は、前記信号の前記局所的な周波数頂点及び底点が所定の範囲から外れないように制限される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ランダムな選択は、前記各信号部分が有する勾配の大きさが所定の値を超えないように制限される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記各信号部分の前記局所的な頂点と前記局所的な底点との間の差の大きさの絶対値が、さらなる所定の値よりも常に大きいように構成される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記確率の集合は、所定の周波数のそれぞれが、平均して、等しい確率で選択されるようにする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記確率の集合は、前記信号部分の前記周波数範囲の大きさが異なるものが、平均して、等しい確率で選択されるようにする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記確率の集合は、前記信号部分の前記周波数範囲の大きさが異なるものが、平均して、互いに所定の関係を有する等しくない確率で選択されるようにする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
複数の信号部分の持続時間を超える間隔で、前記集合の各確率を決定する値を繰返し変更するステップを含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記値を変更するステップは、ランダムな間隔で実行される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
複数の信号部分の持続時間を超える間隔で、前記所定の周波数の集合を繰返し変更するステップを含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記信号部分は線形の周波数/時間勾配を有する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記信号部分は非線形の周波数/時間勾配を有する、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記信号部分は断片的な線形周波数/時間勾配を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記信号部分は階段状の周波数/時間勾配を有する、請求項15又は16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記信号部分は均一の持続時間を有する、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記信号部分は変化する持続時間を有する、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
結果として生成されたドップラ周波数から前記物体の速度を求めるステップを含む、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれか一項に記載の方法に従って動作するように構成される装置。
【請求項22】
乱数発生器と、
前記乱数発生器の出力を、複数の所定のしきい値と比較するように構成されるコンパレータと、
前記乱数発生器出力と前記しきい値との間の関係に基づいて信号部分の終了周波数を選択するセレクタと
を備える、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記しきい値を変更する手段をさらに備える、請求項22に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2010−529472(P2010−529472A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−511715(P2010−511715)
【出願日】平成20年6月10日(2008.6.10)
【国際出願番号】PCT/GB2008/001980
【国際公開番号】WO2008/152373
【国際公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(501253316)ミツビシ・エレクトリック・アールアンドディー・センター・ヨーロッパ・ビーヴィ (77)
【氏名又は名称原語表記】MITSUBISHI ELECTRIC R&D CENTRE EUROPE B.V.
【住所又は居所原語表記】20 Frederick Sanger Road, The Surrey Research Park, Guildford, Surrey GU2 5YD, Great Britain
【Fターム(参考)】