説明

物体検知装置

【課題】広範囲に存在する物体を検知し、複数の物体間の距離を求めることが可能な、物体検知装置1を提供する。
【解決手段】電磁波を走査し物体からの反射波を受信して物体を検知するレーダ10と、レーダ10の向きを変化させるモータ10aと、画像を撮影するカメラ20と、カメラ20で撮影した画像を表示するディスプレイ30と、ディスプレイ30により表示された画像上でレーダ10の走査範囲を設定するタッチパネル30aと、設定された走査範囲に基づいてレーダ10を走査する制御手段40と、を備える構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両にレーダを搭載して周囲の物体を検知する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平6−294870号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
車両に搭載されたレーダを使用して、複数の物体間の距離を測定し、自車両の通り抜けが可能か判断する技術の開発が望まれている。
しかしながら、車両に搭載されるレーザレーダやミリ波レーダは一般に走査範囲が狭く、そのレーダを使用して広範囲で物体を検知することは不可能であった。
なお、走査範囲が広いレーダを使用すると、全範囲の走査に時間がかかるため、物体を検知するまでの時間が長くなる。また狭角および広角の2種類のレーダを装備するのは、コスト面から困難である。
【0004】
また、レーザ自体の走査に加え、レーザを回動させることにより、広角走査を実現することが考えられる。この場合には、目的の走査範囲の中心位置までレーザを回動する必要がある。しかしながら、レーザの走査位置を直接目視することができないため、走査範囲の中心位置まで手動でレーザを回動するのは困難である。
そこで本発明は、任意の範囲で物体を検知し、複数の物体間の距離を求めることが可能な、物体検知装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、電磁波を走査し物体からの反射波を受信して物体を検知する物体検知手段(例えば、実施形態におけるレーダ10)と、前記物体検知手段の向きを変化させる回動手段(例えば、実施形態におけるモータ10a)と、画像を撮影する撮像手段(例えば、実施形態におけるカメラ20)と、前記撮像手段で撮影した画像を表示する表示手段(例えば、実施形態におけるディスプレイ30)と、前記表示手段により表示された画像上で前記物体検知手段の走査範囲を設定する設定手段(例えば、実施形態におけるタッチパネル30a)と、設定された走査範囲に基づいて前記物体検知手段を走査させる制御手段(例えば、実施形態における制御手段40)と、を備えたことを特徴とする。
【0006】
請求項2に係る発明は、前記物体検知手段の検知結果に基づいて、前記撮像手段から所定距離の地点における前記反射波の反射点を複数検出する反射点検出手段(例えば、実施形態における反射点検出手段44)と、複数の前記反射点の距離を算出する反射点間距離算出手段(例えば、実施形態における反射点間距離算出手段46)と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に係る発明によれば、物体検知手段の向きを変化させる回動手段を備えているので、走査範囲の狭い物体検知手段を採用した場合でも、任意の範囲で物体を検知することができる。また、表示された画像上で物体検知手段の走査範囲を設定する設定手段を備えているので、設定者の意思に応じて走査範囲を簡単に設定することができる。さらに、設定された走査範囲に基づいて物体検知手段を走査する制御手段を備えているので、物体検知手段の走査位置を目視できなくても、設定された走査範囲に対して自動的に物体検知手段を回動し、走査を行うことができる。
【0008】
請求項2に係る発明によれば、複数の反射点間の距離を算出して、複数の物体間の距離を求めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態につき図面を参照して説明する。
(物体検知装置)
図1は、本実施形態に係る物体検知装置の概略構成図である。本実施形態に係る物体検知装置1は車両5に搭載され、電磁波を走査し物体からの反射波を受信して物体を検知するレーダ(物体検知手段)10と、画像を撮影するカメラ(撮像手段)20と、カメラ20で撮影した画像を表示するディスプレイ(表示手段)30と、ディスプレイ30により表示された画像上でレーダ10の走査範囲を設定するタッチパネル(設定手段)30aと、設定された走査範囲に基づいてレーダ10を走査する制御手段40と、を備えている。
【0010】
車両5の前部には、レーザレーダやミリ波レーダ等のレーダ10が搭載されている。レーダ10は、電磁波を送信する送信部および反射波を受信する受信部を備えている。送信部は、前方に向かって電磁波を送信しつつ、所定の角度範囲(−α2〜+α1)を走査しうるようになっている。受信部は、送信部から送信され物体で反射された反射波を受信するようになっている。
【0011】
そのレーダ10は、モータ10aに装着されている。モータ10aはステッピングモータ等で構成され、その回動軸は垂直方向に配置されている。その回動軸に装着されたモータ10aは、水平面内を回動しうるようになっている。図1では、レーダ10が車両前方(Rz0方向)から回動角度θだけ回動してRz1方向を向いている。そして、そのRz1方向を中心に走査角度−α2〜+α1の範囲で電磁波を走査しうるようになっている。
【0012】
車両5の前部には、CCDカメラ等のカメラ20が搭載されている。カメラ20は、車両前方の画像を撮影するものである。
車両5の室内には、カメラ20で撮影した画像を表示するディスプレイ30が搭載されている。そのディスプレイ30の表面には、押圧位置を認識しうる透明なタッチパネル30aが配置されている。これにより、ディスプレイ30に表示された画像上で、走査したい範囲を押圧することにより、レーダ10の走査範囲を設定しうるようになっている。
【0013】
上述した構成部材の動作を制御するため、車載コンピュータ等に制御手段40が構築されている。制御手段40は、設定されたレーダ10の走査範囲に基づいて、レーダ10の回動角度θおよび走査角度−α2〜+α1を算出する。具体的には、走査範囲の中心点の座標からレーダ10の回動角度θを算出し、走査範囲の両端点の座標からレーダ10の走査角度−α2〜+α1を算出する。そして、算出された回動角度θだけレーダ10を回動するとともに、走査角度−α2〜+α1の範囲で電磁波を走査する。
【0014】
また制御手段40は、レーダ10の検知結果に基づいて、カメラ20から所定距離の地点における反射波の反射点を検出する反射点検出手段44を備えている。この反射点検出手段44は、カメラ20から所定距離に存在する複数の反射点を検出する。
また制御手段40は、複数の反射点の距離を算出する反射点間距離算出手段46を備えている。複数の反射点間の距離は、車両前方に存在する複数の物体間の隙間に相当する。
【0015】
また制御手段40は、算出された反射点間の距離と、予め登録された自車両の車幅とを比較し、自車両が物体間を通り抜けられるか判断する。そして制御手段40は、算出した物体間の距離および通り抜け可否の判断結果を、ディスプレイ30に表示する。また制御手段40は、上述した所定距離を、物体までの距離としてディスプレイ30に表示する。
【0016】
(物体検知方法)
次に、本実施形態に係る物体検知装置を使用した物体検知方法について説明する。
まず、カメラ20により車両前方の画像を撮影し、撮影した画像をディスプレイ30に表示する。
【0017】
図2(a)は、表示手段に表示された画像の例である。ディスプレイ30の画像の隅部には、車両通過検知範囲の指示ボタン31が設定されている。車両の搭乗者は、この指示ボタン31を押して、車両の通り抜け可否の検知範囲(すなわち、レーダ10の走査範囲)を指示する。検知範囲の指示は、搭乗者が指で画像上の検知範囲を押圧することによって行う。上述したようにディスプレイ30の表面には透明なタッチパネル30aが配置されているので、このタッチパネル30aを押圧することにより検知範囲が設定される。なお、検知範囲の始点34および終点36のみを押圧してもよく、始点34から終点36までを線状に押圧してもよい。図2(a)の例では、路面8の左側にある壁34aを始点34とし、右側にある電柱36aを終点36として、両者間の路面8を車両の通り抜け可否の検知範囲に指示している。
【0018】
次に制御手段40が、検知範囲の中心点35の画面上における座標(以下「画面座標」という。)を算出する。中心点35の画面座標は、検知範囲の始点34および終点36の画面座標から算出することが可能である。次に制御手段40は、カメラ20から検知範囲の中心点35までの距離を算出する。
図3は、検知範囲の中心点までの距離の算出方法の説明図であり、車両前方の側面図である。車両に固定されたカメラ20で路面8を撮影したとき、そのカメラ20から、画像の下端点32に対応する路面上の地点22までの距離Aは一定になる。このように、路面画像上の特定点の画面座標と、その画面座標に対応する路面上の地点22までの距離は、一対一に対応する。したがって、中心点35の画面座標が分かれば、中心点35に対応する路面上の地点25までの距離Bを求めることができる。
【0019】
次に制御手段40は、図2(a)に示す検知範囲の中心点35の画面座標から、レーダ10の回動角度θを算出する(なお図2(a)の例ではθ=0である。)。カメラ20は車両に固定されているので、画面上の中心座標の方向が図1のRz0方向になり、検知範囲の中心点35の画面座標の方向が図1のRz1方向になる。この両者間の角度として、レーダ10の回動角度を算出することができる。
次に制御手段40は、図2(a)に示す検知範囲の始点34および終点36の画面座標から、レーダ10の走査角度−α2〜+α1を決定する。具体的には、検知範囲の中心点35の画面座標の方向と始点34の画面座標の方向とのなす角度α1、および検知範囲の中心点35の画面座標の方向と終点36の画面座標の方向とのなす角度α2を求める。
【0020】
そして制御手段40がモータ10aを駆動し、算出した回動角度θに基づいてレーダ10を回動する。次に、制御手段40がレーダ10を駆動する。レーダ10は、路面と平行に電磁波を送信し、物体からの反射波を受信する。その送信から受信までの時間に基づいて、物体までの距離を検出する。さらに制御手段40は、算出した走査角度−α2〜+α1に基づいてレーダ10を走査する。
【0021】
図2(b)は、レーダによる物体検知結果の平面図である。なお図2(b)では、走査角度−α2〜+α1より広い範囲につき、物体が検知された位置を破線で示している。レーダ10を走査することにより、図2(b)に示すように、左側の壁14a、中央奥の壁15aおよび右側の電柱16aが所定の位置に検出される。
【0022】
次に、図1に示す反射点検出手段44は、レーダ10の検知結果に基づいて、カメラ20から所定距離Bの地点における反射波の反射点を複数検出する。本実施形態では、カメラ20およびレーダ10が同等の位置に設置されているので、レーダ10から所定距離Bの地点における反射点を検出する。所定距離Bとはレーダ10から検知範囲までの距離であり、代表的に検知範囲の中心点までの距離を採用することが可能である。そこで図2(b)の例では、レーダ10から車両前方に距離Bだけ離れた反射点として、壁14aを構成する反射点14と、電柱16aを構成する反射点16とを検出する。
【0023】
次に、図1に示す反射点間距離算出手段46は、複数の反射点の距離を算出する。図2(b)の例では、壁14aの反射点14と、電柱16aの反射点16との距離Cを算出する。両者間の距離Cが、壁14aと電柱16aとの距離に相当する。
次に、図1に示す制御手段40が、反射点間距離算出手段46により算出された反射点間の距離Cと、予め登録された自車両の車幅とを比較し、自車両による物体間の通り抜け可否を判断する。反射点間の距離Cが車幅より広ければ通り抜け可能と判断し、車幅より狭ければ通り抜け不能と判断する。
【0024】
次に制御手段40は、通り抜け可否の判断結果等を表示手段に表示する。
図4は、判断結果等を表示した画面の例である。図4の画面の隅部には、制御手段40による判断結果等の表示部51が設けられている。この表示部51には、物体間の距離、通り抜け可否の判断結果、および物体までの距離が表示されている。具体的には、壁34aと電柱36aとの距離が「距離1.92m」と表示され、自車両の通り抜け可否の判断結果が「(OK)」と表示され、カメラから検知範囲の中心点までの距離が「距離9m」と表示されている。
【0025】
また図4の画像には、搭乗者により指示された通り抜け可否の検知範囲が枠状または帯状に表示されたハイライト表示部55が設けられている。これにより、物体間の距離、通り抜け可否の判断結果、および物体までの距離の表示が、どの部分に関してなされているのか、一目で判断しうるようになっている。また通り抜け可否の検知範囲から画面下端部にかけて車幅相当のラインが表示された、ライン表示部58が設けられている。これにより、物体間の幅と車幅との割合を一目で判断することが可能になり、通り抜けの難易度を推定することができる。
【0026】
以上に詳述したように、本実施形態に係る物体検知装置1は、電磁波を走査し物体からの反射波を受信して物体を検知するレーダ10と、レーダ10の向きを変化させるモータ10aと、画像を撮影するカメラ20と、カメラ20で撮影した画像を表示するディスプレイ30と、ディスプレイ30により表示された画像上でレーダ10の走査範囲を設定するタッチパネル30aと、設定された走査範囲に基づいてレーダ10を走査する制御手段40と、を備える構成とした。
【0027】
この構成によれば、レーダ10の向きを変化させるモータを備えているので、走査範囲の狭いレーダ10を採用した場合でも、任意の範囲で物体を検知することができる。また、表示された画像上でレーダ10の走査範囲を設定するタッチパネル30aを備えているので、搭乗者の意思に応じて走査範囲を簡単に設定することができる。さらに、設定された走査範囲に基づいてレーダ10を走査する制御手段40を備えているので、レーザの走査位置を目視できなくても、設定された走査範囲に対して自動的にレーダ10を回動し、走査を行うことができる。
【0028】
またレーダ10の検知結果に基づいて、カメラ20から所定距離の地点における反射波の反射点を複数検出する反射点検出手段44と、複数の反射点間の距離を算出する反射点間距離算出手段46とを備える構成とした。
この構成によれば、複数の反射点間の距離を算出して、複数の物体間の距離を求めることが可能になる。これにより、自車両による物体間の通り抜け可否を判断することができる。
【0029】
なお、この発明は上述した実施形態に限られるものではない。
例えば、物体までの距離、物体間の幅および通り抜け可否の判断結果の表示は、ディスプレイの画面上への表示に限られず、他の場所に表示してもよいし、音声により呈示してもよい。また、上記表示項目は一例であり、一部の表示項目を除外してもよく、他の表示項目を追加してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施形態に係る物体検知装置の概略構成図である。
【図2】(a)は表示手段に表示された画像の例であり、(b)はレーダによる物体検知結果の平面図である。
【図3】検知範囲の中心点までの距離の算出方法の説明図である。
【図4】判断結果等を表示した画面の例である。
【符号の説明】
【0031】
1…物体検知装置 10…レーダ(物体検知手段) 10a…モータ(回動手段) 20…カメラ(撮像手段) 30…ディスプレイ(表示手段) 30a…タッチパネル(設定手段) 40…制御手段 44…反射点検出手段 46…反射点間距離算出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波を走査し物体からの反射波を受信して物体を検知する物体検知手段と、
前記物体検知手段の向きを変化させる回動手段と、
画像を撮影する撮像手段と、
前記撮像手段で撮影した画像を表示する表示手段と、
前記表示手段により表示された画像上で前記物体検知手段の走査範囲を設定する設定手段と、
設定された走査範囲に基づいて前記物体検知手段を走査する制御手段と、
を備えたことを特徴とする物体検知装置。
【請求項2】
前記物体検知手段の検知結果に基づいて、前記撮像手段から所定距離の地点における前記反射波の反射点を複数検出する反射点検出手段と、
複数の前記反射点の距離を算出する反射点間距離算出手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の物体検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−241304(P2008−241304A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−78790(P2007−78790)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】