説明

物品、ラミネート及び関連方法

【課題】二次暴露に対する防護性を有する選択透過膜を有する防護系の製造。
【解決手段】物品10は、細孔を有する膜11及び該膜によって支持された選択透過性コーティング12を含んでいる。選択透過性コーティングは、化学薬剤又は微生物因子と化学的に反応して化学薬剤又は微生物因子の生物学的活性を低下させ、或いは未反応の生物学的に活性な微生物因子の実質的な量が物品を通過する時間を延長するのに十分な量で抗菌剤を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、選択透過性コーティングを支持する多孔質膜を含んでなる物品並びにかかる物品を含んでなるラミネート及びかかる物品の製造方法及び使用方法に関する実施形態を含んでいる。
【背景技術】
【0002】
高い多孔度、耐薬品性並びに化学薬剤又は生物学的因子に対して選択透過性を有する膜は、化学薬剤及び生物学的因子に対する防護をもたらす衣服の製造のような高性能用途において有用である。防護性を有することに加え、かかる衣服は様々な環境において様々な活動を行いながら快適に着用し得ることも望ましい。
【0003】
延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)は、耐薬品性及び/又は耐熱性並びに膜を通しての高い通気度が所望又は要求される用途において選択透過膜として使用されてきた。しかし、現在商業的に入手できるePTFEに基づく選択透過防護系は、通例は二次暴露(即ち、化学薬剤又は生物学的因子を系中に捕捉しても、それを中和又は不活性化しない場合に起こり得る暴露)に対する防護を与えないことがある。さらに、これらのePTFEに基づく従来防護系は、通例は低い水蒸気透過速度(MVTR)を有し、したがって高温湿潤環境中で使用するには快適でない。加えて、これらの多くは、防護性をもった衣服を生み出すための材料又は材料層で処理されており、その結果としてバルキーになったり或いは水蒸気に対して完全に不透過性となり、これが着用に伴う快適さをさらに低下させることがある。
【0004】
したがって、現在入手できるものより一層広範囲の起こり得る暴露現場に対して有効であるばかりでなく、一層快適に使用し得る極めて有効な防護物品、特に数多くの有利な特性から見てePTFEに基づく防護物品を提供することは望ましいであろう。現在入手できるものとは異なる製造方法もまた、かかる物品の提供を容易にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4659474号明細書
【特許文献2】米国特許第5084173号明細書
【特許文献3】米国特許第5391426号明細書
【特許文献4】米国特許第5987955号明細書
【特許文献5】米国特許第6045694号明細書
【特許文献6】米国特許第6395383号明細書
【特許文献7】米国特許第6565748号明細書
【特許文献8】米国特許第6854603号明細書
【特許文献9】米国特許第6969769号明細書
【特許文献10】米国特許出願公開第2004/0259446号明細書
【特許文献11】米国特許出願公開第2005/0266228号明細書
【特許文献12】欧州特許第0061782号明細書
【特許文献13】国際公開第00/70975号パンフレット
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Williams et al., "Antimicrobial Functionality of Healthcare Textiles: Current Needs, Options, and Characterization of N Halamine-Based Finishes", Research Journal of Textile and Apparel, 2006, pp.1-11, Vol.10, No.4.
【発明の概要】
【0007】
一実施形態では、物品が提供される。かかる物品は、細孔を有する膜及び該膜によって支持された選択透過性コーティングを含んでいる。選択透過性コーティングは、化学薬剤又は微生物因子を不活性化するか又はその活性を低下させ、或いは物品を通しての化学薬剤又は微生物因子の移動を減速させるのに十分な量で1種以上の抗菌剤を含んでいる。
【0008】
別の実施形態では、物品が提供される。かかる物品は、細孔を有する膜を含んでいる。この膜によって選択透過性コーティングが支持されており、これは1種以上の抗菌剤の有効量及びアミン又はイミン含有ポリマーを含んでいる。
【0009】
さらに別の実施形態では、ラミネートが提供される。かかるラミネートは物品を含み、物品はさらに細孔を有する膜及び該膜によって支持された選択透過性コーティングを含んでいる。選択透過性コーティングは、化学薬剤又は微生物因子を不活性化するか又はその活性を低下させ、或いは物品を通しての化学薬剤又は微生物因子の移動を減速させるのに十分な量で1種以上の抗菌剤を含んでいる。かかるラミネートはさらに疎油性膜を含み、物品は疎油性膜上に支持されている。
【0010】
さらに別の実施形態では、方法が提供される。かかる方法は多孔質膜に選択透過性コーティングを適用することを含み、選択透過性コーティングは、化学薬剤又は微生物因子を不活性化するか又はその活性を低下させ、或いは物品を通しての化学薬剤又は微生物因子の移動を減速させるのに十分な量で1種以上の抗菌剤を含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明の上記その他の特徴、態様及び利点は、添付の図面を参照しながら以下の詳細な説明を読んだ場合に一層よく理解されよう。添付の図面中では、図面全体を通じて類似の部分は同一の符号で表されている。
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る物品の横断面を示している。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に係る物品の横断面を示している。
【図3】図3は、本発明の一実施形態に係る物品の横断面を示している。
【図4】図4は、本発明の一実施形態に係るラミネートの横断面を示している。
【図5】図5は、本発明の一実施形態に係るラミネートの横断面を示している。
【図6】図6は、本発明の一実施形態に係るラミネートの横断面を示している。
【図7】図7は、本発明の一実施形態に係るラミネートの横断面を示している。
【図8】図8は、本発明の一実施形態に係るラミネートの横断面を示している。
【図9】図9は、本発明の一実施形態に係るラミネートの横断面を示している。
【図10】図10は、本発明の一実施形態に係るラミネートの横断面を示している。
【図11】図11は、本発明の一実施形態に係るラミネートの横断面を示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、選択透過性コーティングを支持する多孔質膜を含んでなる物品並びにかかる物品を含んでなるラミネート及びかかる物品の製造方法及び使用方法に関する実施形態を含んでいる。
【0013】
本明細書及び後記特許請求の範囲中では多くの用語を用いるが、これらは以下の意味を有している。“a”、“an”“the”を伴う単数形で記載したものであっても、前後関係から明らかでない限り、複数の場合も含めて意味する。明細書及び特許請求の範囲全体にわたって使用される概略表現用語は、それが関係する基本機能の変化を生じることなしに変動することが許される任意の数量表現を修飾するために適用できる。したがって、「約」のような用語で修飾された値は明記された厳密な値に限定されない。場合によっては、概略表現用語は値を測定するための計器の精度に対応することがある。同様に、ある用語と組み合わせて「がない」が使用されることがあるが、これは微小な数又は微少な量を含みながらも修飾された用語は存在しないと見なすことがある。
【0014】
本明細書中で使用される「し得る」及び「あり得る」という用語は、1組の状況の範囲内である出来事が起こる可能性を表し、明記された性質、特性又は機能の所有を表し、及び/又は修飾された動詞に関連する力量、能力又は可能性を表現することで別の動詞を修飾する。したがって、「し得る」及び「あり得る」の使用は、ある状況の下では修飾された用語が時には適切、有能又は好適でないことも考慮に入れながら、修飾された用語が表示された能力、機能又は使用にとって見掛け上適切、有能又は好適であることを表す。例えば、ある状況下ではある事象又は能力が期待できるが、他の状況下ではかかる事象又は能力が起こり得ない場合、このような違いが「し得る」及び「あり得る」という用語によって表現される。
【0015】
一実施形態では、物品が提供される。かかる物品は、細孔を有する膜及び該膜によって支持された選択透過性コーティングを含んでいる。選択透過性コーティングは、化学薬剤又は微生物因子を不活性化するか又はその活性を低下させ、或いは物品を通しての化学薬剤又は微生物因子の移動を減速させるのに十分な量で1種以上の抗菌剤を含んでいる。
【0016】
好適な膜は、ポリアルキレン、ポリアリーレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリアクリル酸、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリアリーレート、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリシロキサン、ポリフェニレンオキシド、セルロース系ポリマー及びこれらの置換誘導体の1種以上を含み得る。若干の実施形態では、膜は、脂肪族ポリエステル、ポリペプチド及び他の天然ポリマーのような生体適合性材料又は生物分解性材料を含んでいる。
【0017】
一実施形態では、膜はフッ素化ポリマーからなり得る。本明細書中で使用される「フッ素化ポリマー」という用語は、水素原子の一部又は全部がフッ素で置き換えられたポリマーをいう。一実施形態では、膜はフッ素化ポリオレフィンからなり得る。本明細書中で使用される「フッ素化ポリオレフィン」という用語は、エチレン性不飽和結合を含む1種以上のフッ素化ポリマー前駆体から導かれるフッ素化ポリマーをいう。好適なフッ素化ポリマー前駆体は、他の置換基(例えば、塩素又は水素)を含むことができる部分フッ素化オレフィンであり得る。好適なフッ素化ポリマー前駆体は、末端エチレン性二重結合を有する直鎖又は枝分れ化合物であり得る。一実施形態では、好適なポリマー前駆体は、ヘキサフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン及びペルフルオロアルキルビニルエーテル(例えば、ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)又は(プロピルビニルエーテル))の1種以上を含み得る。
【0018】
一実施形態では、フッ素化ポリオレフィンは本質的にポリフッ化ビニリデン及びポリテトラフルオロエチレンの一方又は両方を含んでいる。一実施形態では、フッ素化ポリオレフィンは本質的に延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)を含んでいる。好適なePTFE膜には、General Electric Energy社(カンザスシティ、米国ミズーリ州)から商業的に入手できるものがある。
【0019】
一実施形態では、膜は微粉末粒子及び潤滑剤の混合物を押し出すことで製造できる。続いて、押出物にカレンダー掛けを施すことができる。カレンダー掛け後の押出物を1以上の方向に「延伸」又は膨張することで、ノードを連結するフィブリルを形成して三次元マトリックス又は格子型の構造を画成することができる。「延伸させる」とは、材料の弾性限界を超えて延伸することでフィブリルに永久ひずみ又は伸びを導入することを意味する。膜材料の一部を結晶質状態から非晶質状態に変化させることで膜中の残留応力を低減又は最小化するため、膜を加熱又は「焼結」することができる。一実施形態では、膜の想定される最終用途に適するか否かに応じて膜を焼結しないか或いは部分的に焼結してもよい。一実施形態では、膜は、膜の相対する主面に隣接した環境と流体流通可能に連絡する多数の相互連結細孔を画成し得る。
【0020】
開放細孔構造を有する膜を製造するために他の材料及び方法を使用することもできる。膜は、例えば、ベース膜の穴あけ、延伸、膨張、バブリング、析出及び抽出の1以上によって透過性にすることができる。膜を製造するための好適な方法には、任意の好適な材料のフォーミング、スカイビング又はキャスティングがある。別の実施形態では、膜は織布又は不織布から形成される。
【0021】
ある種の実施形態では、膜には比較的連続した細孔を設けることができる。比較的連続したもの及び/又は実質的に不連続のもののいずれであれ、膜の好適な多孔度は約10体積%を超える範囲内にあり得る。一実施形態では、多孔度は約10〜約20体積%、約20〜約30体積%、約30〜約40体積%、約40〜約50体積%、約50〜約60体積%、約60〜約70体積%、約70〜約80体積%、約80〜約90体積%又は約90体積%を超える範囲内にあり得る。ここを含めた明細書及び特許請求の範囲全体において、範囲の限界は結合及び/又は交換が可能である。かかる範囲は範囲の限界によって確定され、その間に存在するすべての部分範囲を含む。
【0022】
膜中の細孔の細孔径は細孔間で均一であってよく、及び/又は細孔は所定のパターンを画定し得る。別法として、細孔径は細孔間で異なっていてもよく、及び/又は細孔は不規則なパターンを画定し得る。好適な細孔径は約500μm未満であり得る。一実施形態では、平均細孔径は約1〜約10μm、約10〜約50μm、約50〜約100μm、約100〜約250μm又は約250〜約500μmの範囲内にあり得る。一実施形態では、平均細孔径は約1nm未満、約1〜約50nm、約50nm〜約0.1μm、約0.1〜約0.5μm又は約0.5〜約1μmの範囲内にあり得る。一実施形態では、平均細孔径は約1nm未満であり得る。一実施形態では、細孔は本質的に約10nm〜約10μmの範囲内の平均細孔径を有し得る。
【0023】
膜中の細孔の平均有効細孔サイズはμm範囲内であり得る。他の実施形態では、膜中の細孔の平均有効細孔サイズはnm範囲内であり得る。膜中の細孔の好適な平均有効細孔サイズは、約0.01〜約0.1μm、約0.1〜約5μm、約5〜約10μm又は約10μmを超える範囲内にあり得る。
【0024】
一実施形態では、膜は複数のフィブリルによって相互連結された複数のノードを含む三次元マトリックスであり得るか、或いは格子型の構造を有し得る。ノード及びフィブリルの表面は、膜中に複数の細孔を画成し得る。フィブリルのサイズは、フィブリルの長軸に対して垂直な方向に沿って見た直径として約0.05〜約0.5μmの範囲内にあり得る。膜の比表面積は、膜材料1グラム当たり約9〜約110平方メートルの範囲内にあり得る。
【0025】
本発明の実施形態に係る膜は様々に異なる寸法を有することができ、その一部は用途に特有の基準を参考にして選択される。一実施形態では、膜は流体流れの方向に沿って約10μm未満の厚さを有し得る。別の実施形態では、膜は流体流れの方向に沿って約10μmを超える厚さ、例えば、約10〜約100μm、約100μm〜約1mm、約1〜約5mm又は約5mmを超える範囲内の厚さを有し得る。一実施形態では、膜は約0.0005インチ(12.7μm)〜約0.005インチ(127μm)の範囲内の平均厚さを有し得る。一実施形態では、膜は同一の厚さ又は相異なる厚さを有する複数の層から形成できる。
【0026】
流体流れの方向に対して垂直に、膜は約10mmを超える幅を有し得る。一実施形態では、膜は約10〜約45mm、約45〜約50mm、約50mm〜約10cm、約10〜約100cm、約100〜約500cm、約500cm〜約1m又は約1mを超える範囲内の幅を有し得る。幅は円形領域の直径であってもよいし、或いは多角形領域の最も近い周縁までの距離であってもよい。一実施形態では、膜はメートル範囲内の幅及び不定の長さを有する長方形であり得る。即ち、膜はロール状に形成することができ、長さは連続形成操作中に所定の間隔で膜を切断することで決定される。
【0027】
一実施形態では、膜は約0.05oz/yd2未満の範囲内の単位平均重量を有し得る。一実施形態では、膜は約0.05〜約0.1oz/yd2、約0.1〜約0.5oz/yd2、約0.5〜約1oz/yd2、約1〜約2oz/yd2又は約2〜約3oz/yd2の範囲内の単位平均重量を有し得る。
【0028】
所望される膜は、選択透過性コーティングを支持するものである。本明細書中で使用される「選択透過性」とは、所望されない化学浸透物(例えば、ケムバイオ因子や微生物因子)に比べ、所望される化学浸透物(例えば、水蒸気)に対して顕著に異なる透過度を有するコーティングをいう。若干の実施形態では、選択透過性コーティングは、ケムバイオ因子や微生物因子に対する透過度に比べて水蒸気に対する透過度が5倍を超え、或いは約5〜約10倍、約10〜約50倍、約50〜約100倍、約100〜約500倍又は約500〜約1000倍の範囲内にあるような透過性を基礎膜に付与することができる。望ましくは、水蒸気に対する透過度は化学薬剤又は微生物因子に対する透過度よりこの程度に高いが、後者自体は望ましくはゼロであるので、上記の倍率はほぼ無限大になる。
【0029】
選択透過性コーティングは、1種以上の抗菌剤の有効量を含んでいる。抗菌剤は、ケムバイオ因子又は微生物因子の活性或いはケムバイオ因子又は微生物因子が抗菌剤を含む物品を通って移動する能力を低減又は排除する任意の薬剤であり得る。これらの抗菌剤には、特に限定されないが、ハラミン、塩化アルキルベンジルジメチルベンザルコニウムのような第四級アンモニウム化合物、銀イオン含有化合物、N−クロロ−4−メチル−ベンゼンスルホンアミドナトリウム塩のようなスルホンアミド、ピリチオン亜鉛や2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛塩や硫酸亜鉛のような亜鉛イオン含有化合物、酸化銅やチオシアン酸銅や硫酸銅のような銅イオン含有化合物、次亜塩素酸塩のような塩素放出化合物、ジクロロ−s−トリアジントリオンナトリウム、トリクロロ−s−トリアジントリオン又はこれらの組合せがある。
【0030】
ケムバイオ因子に対して活性を示し得る他の特定の抗菌剤には、特に限定されないが、(1,1’−ビフェニル)−2−オール、1H−ベンゾイミダゾール−2−イルカルバミン酸メチルエステル、1−ヒドロキシ−2(1H)−ピリジンチオン亜鉛塩、エチルジラム(Ethyl Ziram)、チオシアン酸(2−ベンゾチアゾイルチオ)メチルエステル、テトラヒドロ−3,5−ジメチル−2H−1,3,5−チアジアジン−2−チオン、チオシアン酸(2−ベンゾチアゾリルチオ)メチルエステル、ジメチル−カルバモジチオ酸カリウム塩、ジメチル−カルバモジチオ酸ナトリウム塩、チオシアン酸メチレンエステル、チオシアン酸(2−ベンゾチアゾリルチオ)メチルエステル、K−N−ヒドロキシメチル−N−メチルジチオカーボネート、2(3H)−ベンゾチアゾールチオンナトリウム塩、[1−((ブチルアミノ)カルボニル)−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル]−カルバミン酸メチルエステル、1−[(ジヨードメチル)スルホニル]−4−メチル−ベンゼン、2−オクチル−3(2H)−イソチアゾロン、ホルムアルデヒド、チオペルオキシ二炭酸ジアミド、ジメチル−カルバモジチオ酸ナトリウム塩、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラメチル−チオペルオキシ二炭酸ジアミド([(H2N)C(S)]22)、ビス(ジメチルカルバモジチオアト−S,S’)亜鉛、2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛塩、2(3H)−ベンゾチアゾールチオン、酸化亜鉛、2(3H)−ベンゾチアゾールチオンナトリウム塩、ホルムアルデヒド、チオペルオキシ二炭酸ジアミド、2−メチル−3(2H)−イソチアゾロン、1−ヒドロキシ−2(1H)−ピリジンチオン亜鉛塩、5−クロロ−2−メチル−3(2H)−イソチアゾロン、ホウ砂十水和物、硫酸二アンモニウム塩、ホウ酸、リン酸アンモニウム、硫酸アンモニウム及びこれらの組合せがある。
【0031】
一実施形態では、抗菌剤は下記の構造(1)〜(10)のいずれかを有するハラミンからなり得る。
【0032】
【化1】

【0033】
【化2】

上記の構造(1)〜(8)に関しては、R1、R2及びR3はC1〜C4アルキル、アリール、C1〜C4アルコキシ、ヒドロキシル、クロロ及びC1〜C4エステル基から独立に選択されるが、R1、R2及びR3の少なくとも1つはC1〜C4アルコキシ、ヒドロキシル、クロロ又はC1〜C4エステル基であり、m=0、1又は2であり、構造(1)、(3)、(7)及び(8)に関してはm=1、2又は3であり、p=1、2又は3であり、m+n+p=4であり、Rは下記に定義される。
【0034】
Lは、RをSi部分に結合するために使用できるリンカー基である。ある種の実施形態では、Lは1〜13の炭素原子及び0〜3の窒素又は酸素原子を有するアルキレン、アミン又はエーテル基であり、他の実施形態では、Lは1〜13の炭素原子及びカルバメート、チオカルバメート又は尿素官能基を有するアルキレン基である。
【0035】
上記の構造(1)、(2)、(5)、(7)及び(9)にとって好適なR基は、下記の構造(11)〜(21)を有する。
【0036】
【化3】

式中、R4及びR5はC1〜C4アルキル、アリール及びヒドロキシメチル基から独立に選択され、Xは塩素又は臭素である。Xはまた、化合物が構造(5)で表されるシロキサン又は構造(9)で表される修飾基質であれば、水素でもあり得る。
【0037】
【化4】

式中、R4及びR5はC1〜C4アルキル、アリール及びヒドロキシメチル基から独立に選択され、Xは水素、塩素又は臭素である。
【0038】
Rが基(11)又は(12)からなる構造(1)、(2)、(5)、(7)及び(9)の代表的な化合物は、R1、R2及びR3がメチル、エチル、フェニル、メトキシ、エトキシ及びヒドロキシ基から独立に選択され、R4及びR5がメチル、エチル、ヒドロキシメチル及びフェニル基から独立に選択されるものである。
【0039】
【化5】

式中、R4、R5、R6及びR7はC1〜C4アルキル、アリール及びヒドロキシメチル基から独立に選択され、Xは水素、塩素又は臭素である。
【0040】
Rが基(13)、(14)又は(15)からなる構造(1)、(2)、(5)、(7)及び(9)の代表的な化合物は、R1、R2及びR3がメトキシ、エトキシ及びヒドロキシ基から独立に選択され、R4、R5、R6及びR7がメチル基であり、Lが1〜4の炭素原子及び0〜1の窒素又は酸素原子を有するアルキレン、アミン又はエーテル基であるか、或いは他の実施形態ではLが1〜4の炭素原子及びカルバメート、チオカルバメート又は尿素官能基を有するアルキレン基であるようなものである。
【0041】
【化6】

式中、R4はC1〜C4アルキル、アリール及びヒドロキシメチル基の1種以上であり、Xは水素、塩素又は臭素である。
【0042】
Rが基(16)からなる構造(1)、(2)、(5)、(7)及び(9)の代表的な化合物は、R1、R2及びR3がメトキシ、エトキシ及びヒドロキシ基から独立に選択され、R4がメチル、エチル又はヒドロキシメチル基であり、Lが1〜3の炭素原子を有するアルキレンであるか、或いはLが1〜3の炭素原子及びカルバメート、チオカルバメート又は尿素官能基を有するアルキレン基であるようなものである。
【0043】
【化7】

式中、R4及びR5はC1〜C4アルキル、アリール及びヒドロキシメチル基から独立に選択され、Xは水素、塩素、臭素及びヒドロキシメチルから独立に選択され、少なくとも1つのXは水素、塩素又は臭素である。
【0044】
Rが基(17)からなる構造(1)、(2)、(5)、(7)及び(9)の代表的な化合物は、R1、R2及びR3がメトキシ、エトキシ及びヒドロキシ基から独立に選択され、R4がメチル、エチル又はヒドロキシメチル基であり、Lが1〜3の炭素原子を有するアルキレンであるか、或いはLが1〜3の炭素原子及びカルバメート、チオカルバメート又は尿素官能基を有するアルキレン基であるようなものである。
【0045】
【化8】

式中、Xは水素、塩素、臭素及びヒドロキシメチルから独立に選択され、少なくとも1つのXは水素、塩素又は臭素である。
【0046】
Rが基(18)又は(19)からなる構造(1)、(2)、(5)、(7)及び(9)の代表的な化合物は、R1、R2及びR3がメトキシ、エトキシ及びヒドロキシ基から独立に選択され、Lが1〜4の炭素原子及び0〜1の窒素又は酸素原子を有するアルキレン、アミン又はエーテル基であるか、或いはLが1〜4の炭素原子及びカルバメート、チオカルバメート又は尿素官能基を有するアルキレン基であるようなものである。
【0047】
【化9】

式中、R4及びR5はC1〜C4アルキル、アリール及びヒドロキシメチル基から独立に選択され、Xは水素、塩素、臭素及びヒドロキシメチルから独立に選択され、少なくとも1つのXは水素、塩素又は臭素である。
【0048】
Rが基(20)からなる構造(1)、(2)、(5)、(7)及び(9)の代表的な化合物は、R1、R2及びR3がメトキシ、エトキシ及びヒドロキシ基から独立に選択され、R4及びR5がメチル基であり、Lが1〜4の炭素原子及び0〜1の窒素又は酸素原子を有するアルキレン、アミン又はエーテル基であるか、或いはLが1〜4の炭素原子及びカルバメート、チオカルバメート又は尿素官能基を有するアルキレン基であるようなものである。
【0049】
【化10】

式中、R4、R5、R6及びR7はC1〜C4アルキル、アリール及びヒドロキシメチル基から独立に選択され、Xは構造(1)又は(2)上にある場合には塩素又は臭素であるが、構造(5)、(7)又は(9)上にある場合には水素、塩素又は臭素である。
【0050】
Rが基(21)からなる構造(1)、(2)、(5)、(7)及び(9)の代表的な化合物は、R1、R2及びR3がメトキシ、エトキシ及びヒドロキシ基から独立に選択され、R4、R5、R6及びR7がメチル基であり、Lが1〜4の炭素原子及び0〜1の窒素又は酸素原子を有するアルキレン、アミン又はエーテル基であるか、或いはLが1〜4の炭素原子及びカルバメート、チオカルバメート又は尿素官能基を有するアルキレン基であるようなものである。
【0051】
構造(3)、(4)、(6)、(8)及び(10)にとって好適なR基は、1以上のN−クロロ又はN−ブロモ基を含むアミノアルキレン又はポリアミノアルキレン基である。構造(3)、(4)、(6)、(8)及び(10)用の代表的な基の1つはアミノプロピル基である。
【0052】
構造(5)、(6)、(9)、(10)に関しては、nは繰返し単位の数であり、nがSi上のR部分の数である構造(1)、(3)、(6)及び(7)中のnと混同すべきでない。繰返し単位の数nは2以上であるが、nは500以上にもなり得る。好適なハラミン及びその誘導体は、Vanson Halosource,Incorporated(レッドモンド、米国ワシントン州)から商業的に入手できる。
【0053】
本発明の他の実施形態では、抗菌剤は1種以上の第四級アンモニウム塩からなり得る。これらの多くは公知及び/又は商業的に入手可能であり、抗菌剤として作用し得る任意のものが本発明の選択透過性コーティング中で使用するのに適している。これらのうち、下記の式(22)を有するもののようなケイ素含有第四級アンモニウム塩が、本発明のある種の実施形態において抗菌剤として望ましく使用できる。
(22) R3+0nSiX4-n-
式中、各R及び各R0は独立に非加水分解性有機基であり、各Xは独立に加水分解基であり、nは0〜3の整数であり、Y-は式Iの化合物の塩を生成するのに適した陰イオン部分である。Y-は、若干の実施形態ではハライドであり得る。若干の実施形態では、2つのRはメチルであり、1つのRはオクタデシルであり得る。一実施形態では、R0はプロペニルであり、各Xはメトキシであり、nは1であり、Yはクロリドであり得る。式(22)に係る1つの例示的なケイ素含有第四級アンモニウム塩モノマーは、3−(トリメトキシシリル)プロピルジメチルオクタデシルアンモニウムクロリドである。
【0054】
かかるケイ素含有第四級アンモニウム抗菌剤は、通例は溶媒(例えば、メタノール)中で製造して供給することができる。かかる溶媒の使用は、ケイ素含有第四級アンモニウム塩を膜に吸着させることでその細孔の内部に相互侵入ネットワークを形成することを可能にする。
【0055】
本発明の追加の実施形態では、式(22)のケイ素含有第四級アンモニウム塩モノマーを用いることで、下記式(23)の繰返し単位を含む抗菌ポリマーを製造することができる。
(23) R3+0nSiX14-n-
式中、各R及び各R0は独立に、特に限定されないが炭素原子数1〜約22のアルキル基又はアリール基(例えば、フェニル)のような非加水分解性有機基であり、各X1は−OR1(式中、R1は炭素原子数1〜約22のアルキル基又は炭素原子数6のアリール基である。)、−OH又は−O−Siであり、nは0〜3の整数であり、Yは式(23)の繰返し単位の塩を生成するのに適した陰イオン部分、例えばハライド、ヒドロキシル、アセテート、SO4-2、CO3-2又はPO4-2対イオンである。若干の実施形態では、Yはハライドである。若干の実施形態では、各々のR基は独立にメチル、エチル、プロピル、ブチル、オクチル、ドデシル、テトラデシル又はオクタデシルであり、各々のR0基は独立にメチレニル、エチレニル、プロピレニル、ブチレニル、オクチレニル、ドデシレニル、テトラデシレニル又はオクタデシレニルであり、各X1は−OR1(式中、R1はメチル、エチル、プロピル又はブチルである。)である。
【0056】
第四級アンモニウム塩モノマーは、若干の実施形態では下記の式(24)及び(25)を有するものであり得る。
(24) (R13SiR2+(R3)(R4)(R5)Y-
(25) (R13SiR2N(R3)(R4
式中、各R1は独立にハロゲン又はR6Oである。式中のR6は、H、炭素原子数1〜約22のアルキル、アセチル、アセトキシ、アシル、プロピレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコールであるか、エチレン及びプロピレングリコールとプロピレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコールの炭素原子数1〜約22のアルキルモノエーテルとのブロックポリマー又はコポリマーであるか、エチレン及びプロピレングリコール又は炭素原子数1〜約22の炭酸モノエステルとプロピレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコールとのブロックポリマー又はコポリマーであるか、或いはエチレン及びプロピレングリコールとオクチルフェノール、ノニルフェノール又はソルビタンエーテルとのブロックポリマー又はコポリマーである。
【0057】
2はベンジル、ビニル又は炭素原子数1〜約22のアルキルである。
【0058】
3及びR4は独立に炭素原子数1〜約6の低級アルキルアルコール、炭素原子数1〜約6の低級アルコキシ、又は炭素原子数1〜約22のアルキルであるか、或いはR3及びR4は一緒になってモルホリン環又は下記式(26)を有する環式若しくは複素環式の不飽和若しくは飽和五員乃至七員環を形成し得る。
(26) −R3−(R7k−R4
式中、kは0〜2の整数である。
【0059】
式中、環が飽和の場合にR7はCH2、O、S、NH、NH2+、NCH2CH2NH2、NCH2CH2NH3+、NCH2CH2N(R8)(R9)、NCH2CH2+(R8)(R9)(R10)、N(アルキル)、N(アリール)又はN(ベンジル)(式中、R8、R9及びR10は各々独立にベンジル、ポリエーテル、炭素原子数1〜4の低級アルキルアルコール、炭素原子数1〜4の低級アルコキシ、又は炭素原子数1〜約22のアルキルである。)であり、環が不飽和の場合にR7はCH、N、N+H、N+(アルキル)、N+(アリール)、N+(ベンジル)、NCH2N、N+HCH2N、N+(アルキル)CH2N、N+(アリール)CH2N又はN+(ベンジル)CH2Nである。
【0060】
ここで、環は置換されていないか、或いは炭素原子数1〜22のアルキル、エステル、アルデヒド、カルボキシレート、アミド、チオアミド、ニトロ、アミン又はハライドで置換されている。
【0061】
5は炭素原子数1〜6の低級アルキルアルコール、CH265、ポリエーテル、アルキル、アルコキシ、ペルフルオロアルキル、ペルフルオロアルキルスルホネート又はペルフルオロアルキルカルボキシレート(ここで、アルキル、アルコキシ、ペルフルオロアルキル、ペルフルオロアルキルスルホネート又はペルフルオロアルキルカルボキシレートは炭素原子数1〜約22のものである)であるか、或いは上述したような式Vの五員乃至七員環である。
【0062】
-は式(24)又は(25)の化合物の塩を生成するのに適した陰イオン部分であり、好ましくはクロリド、ブロミド又はヨージドである。
【0063】
ケイ素含有第四級アンモニウム塩繰返し単位の具体例には、2つのRがメチル、1つのRがオクタデシル、R0がプロペニル、nが1、Yがクロリドであるようなものがあり、その結果としてポリマーは3−(トリメトキシシリル)プロピルジメチルオクタデシルアンモニウムクロリドのポリマーである。有用なケイ素含有第四級アンモニウム塩ポリマーの別の例は、オクタデシルアミノジメチルトリメトキシシリルプロピルアンモニウムクロリドのポリマーである。本発明のある種の実施形態で抗菌剤として有用な上記その他の第四級アンモニウム塩は、BIOSAFE,Inc.(ピッツバーグ、米国ペンシルヴェニア州)から商業的に入手できる。
【0064】
ケイ素含有第四級アンモニウムポリマーを製造するための1つの方法は、熱及び/又は触媒(例えば、鉱酸又は有機酸或いは塩基)と共にケイ素含有モノマーを過剰の溶媒(例えば、水)に撹拌しながら添加し、それによって重合プロセスを開始せさることを含んでいる。得られたポリマーは沈殿又は溶媒除去によって回収される。
【0065】
抗菌剤が何であれ、それは有効量で存在するのが望ましい。抗菌剤の有効量とは、化学薬剤又は微生物因子を不活性化するか又はその活性を低下させ、或いは物品を通しての化学薬剤又は微生物因子の移動を減速させるのに十分な抗菌剤の量をいう。望ましくは、抗菌剤の使用量は、基礎膜及び/又は物品が最終用途の性能要件を満たすことも可能にする。一実施形態では、抗菌剤は膜及び選択透過性コーティングの合計重量の約0.1重量%未満の量で存在し得る。
【0066】
一実施形態では、抗菌剤は膜及び選択透過性コーティングの合計重量の約0.1〜約1重量%、約1〜約2重量%、約2〜約5重量%又は約5〜約10重量%の範囲内の量で存在し得る。一実施形態では、抗菌剤は膜及び選択透過性コーティングの合計重量の約10〜約20重量%、約20〜約30重量%、約30〜約40重量%又は約40〜約50重量%の範囲内の量で存在し得る。一実施形態では、抗菌剤は膜及び選択透過性コーティングの合計重量の約50重量%を超える量で存在し得る。一実施形態では、抗菌剤は膜及び選択透過性コーティングの合計重量の約0.1〜約20重量%の範囲内の量で存在し得る。
【0067】
一実施形態では、抗菌剤は約0.1〜約0.5mg/cm2、約0.5〜約1mg/cm2、約1〜約2mg/cm2、約2〜約5mg/cm2、約5〜約10mg/cm2、約10〜約25mg/cm2、約25〜約50mg/cm2又は約50〜約100mg/cm2の範囲内の量で物品中に存在し得る。
【0068】
選択透過性コーティングはさらに、膜に適用して(必要ならば)硬化させた場合、膜の細孔に連結することでコーティングを膜に機械的に結合し得る相互侵入ネットワーク又は架橋ポリマー構造を形成するようなポリマー成分を含むことができる。かかる実施形態では、選択透過性コーティングは不可逆的な架橋又は重合プロセスによって膜に機械的に固定できる。他の実施形態では、選択透過性コーティングの抗菌剤又は他の成分が膜に対して化学的親和性を有するか、或いは膜と相互作用することで選択透過性コーティングを膜に結合できる官能基を有すればよい。
【0069】
一実施形態では、選択透過性コーティングは、例えばヒドロキシアルキル置換ポリアルキレンイミン又はポリビニルアルコール−コアミンのようなアミン又はイミン含有ポリマーを含み得る。有利には、ヒドロキシアルキル置換ポリアルキレンイミンはケムバイオ因子に対して作用すると共にポリマー成分として作用し得る。かかる実施形態では、ヒドロキシアルキル置換ポリアルキレンイミンは下記の式(I)を有する構造単位を含み得る。
【0070】
【化11】

式中、「m」は1〜100の整数であり、「n」は0〜100の整数であり、「p」は1〜100の整数であり、「q」は0〜100の整数であり、
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8は各々独立に脂肪族基であり、
9は水素、脂肪族基又は下記の式(II)を有する基である。
【0071】
【化12】

式中、R10、R11及びR12は各々独立に脂肪族基である。脂肪族基は下記に定義する通りである。
【0072】
脂肪族基は1以上の炭素原子及び1以上の原子価を有する有機基であり、線状又は枝分れ原子配列であり得る。脂肪族基は窒素、硫黄、ケイ素、セレン及び酸素のようなヘテロ原子を含んでいてもよく、或いは炭素及び水素のみから構成されていてもよい。脂肪族基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、共役ジエニル基、アルコール基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボン酸基、アシル基(例えば、エステルやアミドのようなカルボン酸誘導体)、アミン基、ニトロ基などの広範囲の官能基を含むことができる。例えば、4−メチルペント−1−イル基はメチル基を含むC6脂肪族基であり、メチル基がアルキル基である官能基である。同様に、4−ニトロブト−1−イル基はニトロ基を含むC4脂肪族基であり、ニトロ基が官能基である。脂肪族基は、同一又は相異なるものであってよい1以上のハロゲン原子を含むハロアルキル基であり得る。ハロゲン原子には、例えば、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素がある。1以上のハロゲン原子を含む脂肪族基には、ハロゲン化アルキルであるトリフルオロメチル、ブロモジフルオロメチル、クロロジフルオロメチル、ヘキサフルオロイソプロピリデン、クロロメチル、ジフルオロビニリデン、トリクロロメチル、ブロモジクロロメチル、ブロモエチル、2−ブロモトリメチレン(例えば、−CH2CHBrCH2−)などがある。脂肪族基のさらに他の例には、アリル、アミノカルボニル(−CONH2)、カルボニル、ジシアノイソプロピリデン(−CH2C(CN)2CH2−)、メチル(−CH3)、メチレン(−CH2−)、エチル、エチレン、ホルミル(−CHO)、ヘキシル、ヘキサメチレン、ヒドロキシメチル(−CH2OH)、メルカプトメチル(−CH2SH)、メチルチオ(−SCH3)、メチルチオメチル(−CH2SCH3)、メトキシ、メトキシカルボニル(CH3OCO−)、ニトロメチル(−CH2NO2)、チオカルボニル、トリメチルシリル((CH33Si−)、t−ブチルジメチルシリル、3−トリメトキシシリルプロピル((CH3O)3SiCH2CH2CH2−)、ビニル、ビニリデンなどがある。さらに他の例としては、「C1〜C30脂肪族基」は1以上で30以下の炭素原子を含む。メチル基(CH3−)はC1脂肪族基の例である。デシル基(CH3(CH29−)はC10脂肪族基の例である。
【0073】
一実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8の1以上がエチル基を含み得る。一実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8がエチル基を含み得る。一実施形態では、ヒドロキシアルキル置換ポリアルキレンイミンはヒドロキシエチル置換ポリエチレンイミンを含み得る。
【0074】
ポリアルキレンイミンは、ヒドロキシル基数によって特徴づけることができる。一実施形態では、ヒドロキシアルキル置換ポリアルキレンイミンの繰返し単位当たりの平均ヒドロキシル基数は約0.5〜約3の範囲内にあり得る。一実施形態では、ヒドロキシアルキル置換ポリアルキレンイミンの繰返し単位当たりの平均ヒドロキシル基数は約1〜約3の範囲内にあり得る。一実施形態では、ヒドロキシアルキル置換ポリアルキレンイミンの繰返し単位当たりの平均ヒドロキシル基数は3を超える範囲内にあり得る。
【0075】
ポリアルキレンイミンは、重量平均分子量によって特徴づけることができる。一実施形態では、ヒドロキシアルキル置換ポリアルキレンイミンは、約1000グラム/モルを超える範囲内の重量平均分子量を有し得る。一実施形態では、ヒドロキシアルキル置換ポリアルキレンイミンは、約1000〜約2000グラム/モル、約2000〜約4000グラム/モル、約4000〜約8000グラム/モル、約8000〜約10000グラム/モル又は約10000〜約25000グラム/モルの範囲内の重量平均分子量を有し得る。一実施形態では、ヒドロキシアルキル置換ポリアルキレンイミンは、約1000グラム/モルを超える範囲内の重量平均分子量を有し得る。一実施形態では、ヒドロキシアルキル置換ポリアルキレンイミンは、約25000〜約50000グラム/モル、約50000〜約75000グラム/モル、約75000〜約100000グラム/モル、約100000〜約200000グラム/モル又は約200000〜約250000グラム/モルの範囲内の重量平均分子量を有し得る。
【0076】
ヒドロキシアルキル置換ポリアルキレンイミンが望ましくはケムバイオ因子に対して活性を示す実施形態では、それは有効量で存在し得る。ヒドロキシアルキル置換ポリアルキレンイミンの有効量とは、最終用途の性能要件を満たすのに十分な官能基を与えるために必要なヒドロキシアルキル置換ポリアルキレンイミンの量をいう。一実施形態では、ヒドロキシアルキル置換ポリアルキレンイミンは、膜及び選択透過性コーティングの合計重量の約0.1重量%未満の量で存在し得る。一実施形態では、ヒドロキシアルキル置換ポリアルキレンイミンは、膜及び選択透過性コーティングの合計重量の約0.1〜約1重量%、約1〜約2重量%、約2〜約5重量%又は約5〜約10重量%の範囲内の量で存在し得る。一実施形態では、ヒドロキシアルキル置換ポリアルキレンイミンは、膜及び選択透過性コーティングの合計重量の約10〜約20重量%、約20〜約30重量%、約30〜約40重量%又は約40〜約50重量%の範囲内の量で存在し得る。一実施形態では、ヒドロキシアルキル置換ポリアルキレンイミンは、膜及び選択透過性コーティングの合計重量の約50重量%を超える量で存在し得る。一実施形態では、ヒドロキシアルキル置換ポリアルキレンイミンは、膜及び選択透過性コーティングの合計重量の約0.1〜約20重量%の範囲内の量で存在し得る。
【0077】
一実施形態では、ヒドロキシアルキル置換ポリアルキレンイミンは、約0.5〜約1mg/cm2、約1〜約2mg/cm2、約2〜約5mg/cm2、約5〜約10mg/cm2、約10〜約25mg/cm2又は約25〜約50mg/cm2の範囲内の量で物品中に存在し得る。
【0078】
他の実施形態では、ポリマー成分は有利にはポリビニルアルコール−コアミンからなり得る。ポリビニルアルコール−コアミンポリマーは、例えば、Celanese社からErkol(登録商標)の商品名で商業的に入手できる。
【0079】
選択透過性コーティング中に含まれる任意のポリマー成分は、硬化の可能な反応性基を含み得る。反応性基は、熱エネルギー、電磁放射、湿分硬化、UV硬化又は化学試薬の1以上に暴露された場合に化学反応に参加し得る。硬化とは、選択透過性コーティングの重合、架橋又は重合及び架橋の両方をもたらす反応をいう。
【0080】
選択透過性コーティングが硬化の可能な反応性基を含むポリマー成分を含んでいる実施形態では、選択透過性コーティングは硬化剤を含み得る。硬化剤はポリマー成分の硬化反応を触媒(促進)し得る。一実施形態では、硬化剤はエポキシド、酸塩化物及びクロロギ酸エステルの1種以上を含み得る。一実施形態では、硬化剤は反応性トリアジンを含み得る。反応性トリアジンは、少なくとも選択透過性コーティングのポリマー成分中の反応性基と反応することができる1以上の反応性基を含み得る。一実施形態では、硬化剤は選択透過性コーティングのポリマー成分(存在する場合)と膜との間の化学反応を開始させることができる。
【0081】
一実施形態では、反応性トリアジンは下記の式(III)を有する構造単位を含み得る。
【0082】
【化13】

式中、R13、R14及びR15は少なくともヒドロキシアルキル置換ポリアルキレンイミンと反応し得る反応性基を含んでいる。一実施形態では、反応性トリアジンはトリス(アルコキシカルボニルアミノ)トリアジンを含み得る。
【0083】
一実施形態では、硬化剤は選択透過性コーティングの約0.1〜約2重量%、約2〜約5重量%、約5〜約10重量%、約10〜約15重量%、約15〜約20重量%、約20〜約25重量%又は約25〜約30重量%の範囲内の量で存在し得る。
【0084】
一実施形態では、選択透過性コーティングを硬化させることができる。硬化とは、ポリマー成分の反応性基の約5%超が反応したポリマー成分を含む選択透過性コーティングをいい、或いは別法として約5%を超える範囲内の転化率をいう。転化率とは、反応性基の総数に対する反応した基の総数の百分率をいう。一実施形態では、選択透過性コーティングが膜に対して化学的又は機械的に結合し得るように選択透過性コーティングを硬化させることができる。ヒドロキシアルキル置換ポリアルキレンイミンを使用する本発明の実施形態では、ヒドロキシアルキル置換ポリアルキレンイミン中における実質的な分率のヒドロキシル基が実質的に影響を受けないように選択透過性コーティングを硬化させることができる。
【0085】
ヒドロキシアルキル置換ポリアルキレンイミンを含む本発明の実施形態では、選択透過性コーティングはさらにポリアルキルアミンを含み得る。ポリアルキルアミンとは、複数のアミン基及びアルキルを基材とするポリマー主鎖を含んでいる。好適なポリアルキルアミンはホモポリマー、コポリマー又はその誘導体であり得る。好適な誘導体は、第一アミン基ではなく1以上の第二アミン基を含み得る。一実施形態では、ポリアルキルアミンは選択透過性コーティングに追加の機能性(例えば、MVTR、通気性、化学薬剤又は微生物因子収着性など)を与えることができる。
【0086】
かかる実施形態では、ポリアルキルアミンは、選択透過性膜の約0.5〜約1重量%、約1〜約2重量%、約2〜約5重量%、約5〜約10重量%、約10〜約20重量%、約20〜約30重量%、約30〜約40重量%又は約40〜約50重量%の範囲内の量で存在し得る。
【0087】
一実施形態では、選択透過性コーティングはヒドロキシアルキル置換ポリアルキレンイミン及びポリビニルアミンを含み得る。ポリビニルアミンとは、ビニルアミン系ポリマー前駆体から導かれるポリマーをいう。一実施形態では、選択透過性コーティングはポリビニルアルコール−ビニルアミンコポリマー及びヒドロキシアルキル置換ポリアルキレンイミンを含み得る。好適なポリビニルアミン及びその誘導体は、BASF Corporation(マウントオリーブ、米国ニュージャージー州)から商業的に入手できる。
【0088】
かかる実施形態では、ポリビニルアミンは、選択透過性膜の約0.5〜約1重量%、約1〜約2重量%、約2〜約5重量%、約5〜約10重量%、約10〜約20重量%、約20〜約30重量%、約30〜約40重量%又は約40〜約50重量%の範囲内の量で存在し得る。
【0089】
一実施形態では、ポリアルキレンイミン用の硬化剤はポリアルキルアミン及び/又はポリビニルアミンも硬化させることができる。別の実施形態では、選択透過性コーティングは、ポリアルキルアミン及び/又はポリビニルアミンの硬化反応を開始させることができる反応性トリアジンとは異なる硬化剤を含むこともできる。一実施形態では、硬化した選択透過性コーティングは、ポリアルキレンイミン並びにポリアルキルアミン及び/又はポリビニルアミンの硬化反応生成物を含み得る。
【0090】
選択透過性コーティングは、膜の表面上、細孔の内部、或いは膜の表面上及び細孔の内部の両方に存在し得る。一実施形態では、選択透過性コーティングは細孔の内面を実質的に被覆し得る。一実施形態では、コーティングは膜中に細孔を画成するノード及びフィブリルを包囲しかつそれに付着し得る。一実施形態では、コーティングは膜中に細孔を画成するノード及びフィブリルの表面に順応し得る。かかる実施形態では、選択透過性コーティングは本質的にほぼゼロの厚さを有し得る。即ち、選択透過性コーティングは膜の細孔の内面を被覆するだけである。
【0091】
他の実施形態では、コーティングは膜の細孔を閉塞することなしに膜上に堆積し得る。或いは、コーティングはボイド及び/又は「ピンホール」を含むことなしに連続コーティングを形成し得る。さらに他の実施形態では、コーティングは不連続部分を有し得る。コーティングは均一な厚さを有していてもよいし、或いは領域間で異なる厚さを有していてもよい。
【0092】
一実施形態では、選択透過性コーティングは約20〜約40μm、約40〜約60μm、約60〜約120μm、約120〜約160μm、約160〜約200μm、約200〜約240μm、約240〜約280μm、約280〜約320μm、約320〜約360μm又は約360〜約400μmの範囲内の厚さを有し得る。一実施形態では、選択透過性コーティングは約400〜約600μm、約600〜約800μm又は約800〜約1000μmの範囲内の厚さを有し得る。
【0093】
一実施形態では、選択透過性コーティング12は、図1に示すように膜11上に支持されて物品10を形成する単一の層を含むことができる。選択透過性コーティングは、上述したような範囲内の厚さ及び/又は重量を有し得る。別の実施形態では、選択透過性コーティングは、上述したような範囲内の総合厚さ及び/又は重量を有する2以上の層を含むことができる。選択透過性コーティング中の1以上の層が抗菌剤を含み得る。
【0094】
別の実施形態では、選択透過性コーティング22は、図2に示すように複数の層を含んでいて、1以上の層が1種以上の抗菌剤を含み、1以上の層が非官能化ePTFE膜23を含むことができる。抗菌剤24は非官能化ePTFE膜23とePTFE膜21との間にサンドイッチされて物品20を形成することができる。一実施形態では、選択透過性コーティングは抗菌剤を含む層が2枚のePTFE膜の間にサンドイッチされた1以上のサンドイッチ構造体を含み、膜上に支持されて物品を形成することができる。一実施形態では、選択透過性コーティングは、抗菌剤と異なる化学薬剤又は微生物因子防護物質を有する1以上の層を含むことができる。
【0095】
一実施形態では、選択透過性コーティングは単一の厚い層の代わりに複数の薄い層を含み、複数の層中の各層が抗菌剤を含むことができる。図3は膜31上に支持された選択透過性コーティング32を有する物品30を示しており、選択透過性コーティングはそれぞれが1種以上の抗菌剤を有する3つの層33、34及び35を含んでいる。一実施形態では、選択透過性コーティングは同じ厚さを有する複数の薄い層を含み得る。別の実施形態では、選択透過性コーティングは、最終用途及び膜上に選択透過性コーティングを堆積させるために使用する方法に応じて一定範囲の厚さ及び/又は重量を有する複数の薄い層を含み得る。
【0096】
一実施形態では、物品は選択透過性コーティングに加えて機能性を付与するための1以上の層を含むことができる。一実施形態では、物品は膜上に支持された1以上の親水性コーティングを含み得る。親水性コーティングは、膜の材料との適合性を有すると共に、膜に親水性を付与するものであればよい。適合性とは、コーティング材料が膜の表面を「ウェットアウト(wet−out)する」ことを意味する。
【0097】
一実施形態では、図4に示すように膜41と選択透過性コーティング42との間に親水性コーティング44を配設して物品40を形成することができる。別の実施形態では、親水性コーティングは膜の表面と選択透過性コーティング42との間に少なくとも部分的に配設される。上述の通り、選択透過性コーティングは単一の層又は複数の層を含むことができ、複数の層中の1以上の層が抗菌剤を含み得る。
【0098】
一実施形態では、親水性コーティングは、ポリビニル求核性ポリマー並びにブロックドイソシアネート及びウレタンの一方又は両方を含むことができる。ブロックドイソシアネート又はウレタンは、ポリビニル求核性ポリマー用の硬化剤として機能し得る。一実施形態では、ポリビニル求核性ポリマーはポリビニルアルコール及びポリビニルアミンの一方又は両方を含み得る。一実施形態では、ポリビニル求核性ポリマーは本質的にポリビニルアミンを含み得る。
【0099】
好適なポリビニル求核性ポリマーは、所定のモノマー単位数範囲内の分子量を有するポリビニル求核性ポリマーを包含し得る。一実施形態では、ポリビニル求核性ポリマーの分子量は2500未満であり得る。一実施形態では、ポリビニル求核性ポリマーの分子量は2500を超え得る。一実施形態では、ポリビニル求核性ポリマーの分子量は約2500〜約31000、約31000〜約50000、約50000〜約100000、約100000〜約200000又は約200000を超える範囲内にあり得る。
【0100】
好適なブロックドイソシアネートは、ブロッキング剤と、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート及び脂環式ポリイソシアネートの1種以上とを含み得る。一実施形態では、ポリイソシアネートには、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、ナフタレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、m−テトラメチルキシレンジイソシアネート及びジメチルm−イソプロペニルベンジルイソシアネートの1種以上がある。
【0101】
好適なブロックドイソシアネートは商業的に入手できるか、或いは例えばイソシアネートをブロッキング剤(例えば、マロン酸エステル)と反応させることで生成できる。他の好適なブロッキング剤には、ジイソプロピルアミン(DIPA)及びt−ブチルベンジルアミン(BEBA)のようなアミンの1種以上がある。さらに他の好適なブロッキング剤には、3,5−ジメチルピラゾール、メチルエチルケトキシム、カプロラクタム及びアルキル化フェノールの1種以上がある。
【0102】
若干のブロッキング剤は、加熱に応答してブロック解除できる。例えば、3,5−ジメチルピラゾールは110℃でブロック解除でき、メチルエチルケトキシムは150℃でブロック解除でき、マロン酸エステルは90℃でブロック解除でき、カプロラクタムは160℃でブロック解除でき、アルキル化フェノールは110℃超でブロック解除できる。任意の促進剤(存在する場合)は、ブロック解除温度をほぼ室温にまで低下させることができる。
【0103】
一実施形態では、ブロックドイソシアネートはヘキサメチレンジイソシアネート又はメチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)を含み得る。一実施形態では、ブロックドイソシアネートはブロッキング剤及びヘキサメチレンジイソシアネートからなり得る。一実施形態では、ブロックドイソシアネートはブロッキング剤及びメチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)からなり得る。別の好適なイソシアネートは、1以上のイソシアネート官能基を有する反応性トリアジンを含み得る。
【0104】
好適なウレタンは、ウレタン物質及びブロックドイソシアネートの一方又は両方を含み得る。一実施形態では、ウレタンは1以上のウレタン官能基を有するトリアジンを含み得る。ウレタンの硬化を促進するためにアンモニウム塩又はアミン(例えば、4−ジメチルアミノピリジン)を使用できるが、さもなければウレタンの硬化は例えば約100〜約110℃で実施できる。一実施形態では、加水分解安全性及び/又は硬さを向上させるために約0.5重量%のドデシルベンゼンスルホン酸を添加できる。
【0105】
ブロックドイソシアネート又はウレタンの好適な量は、親水性コーティングの約1重量%を超え得る。一実施形態では、存在するブロックドイソシアネート又はウレタンの量は、親水性コーティングの総重量を基準にして約1〜約5重量%、約5〜約10重量%、約10〜約15重量%、約15〜約20重量%、約20〜約25重量%、約25〜約30重量%、約30〜約40重量%、約40〜約50重量%、約50〜約60重量%、約60〜約75重量%又は約75重量%を超える範囲内にあり得る。
【0106】
一実施形態では、抗菌剤は微生物因子と反応又は相互作用することで微生物因子を不活性化できる。本明細書中で使用される「微生物因子を不活性化する」という用語は、微生物因子の生物学的活性を低下させること及び未反応の生物学的に活性な微生物因子の実質的な量が物品を通過する時間を延長することの一方又は両方を含み得る。本明細書中で使用される「微生物因子を不活性化する」という用語は、微生物因子と反応することで、未反応微生物因子の生物学的活性より低い生物学的活性を有し得る修飾微生物因子を形成することを含み得る。一実施形態では、修飾微生物因子は、未反応の化学薬剤又は微生物因子の生物学的活性より80%以上低い生物学的活性を有し得る。
【0107】
望ましくはヒドロキシアルキル置換ポリアルキレンイミンを含む実施形態では、これはケムバイオ因子と反応又は相互作用することでケムバイオ因子を不活性化できる。本明細書中で使用される「ケムバイオ因子を不活性化する」という用語は、ケムバイオ因子の生物学的活性を低下させること及び未反応の生物学的に活性なケムバイオ因子の実質的な量が物品を通過する時間を延長することの一方又は両方を含み得る。本明細書中で使用される「ケムバイオ因子を不活性化する」という用語は、ケムバイオ因子と反応することで、未反応ケムバイオ因子の生物学的活性より低い生物学的活性を有し得る修飾ケムバイオ因子を形成することを含み得る。一実施形態では、修飾ケムバイオ因子は、未反応ケムバイオ因子の生物学的活性より80%以上低い生物学的活性を有し得る。
【0108】
一実施形態では、ヒドロキシアルキル置換ポリアルキレンイミンはケムバイオ因子と化学反応してケムバイオ因子を不活性化することができる。一実施形態では、ポリアルキレンイミン中のヒドロキシル基がケムバイオ因子と化学反応してケムバイオ因子を不活性化することができる。化学反応は、例えば、加水分解反応又は求核置換反応を含み得る。
【0109】
本明細書中で使用される「ケムバイオ因子」という用語は、化学薬剤、生物学的因子、微生物因子、並びに1種以上の化学薬剤、生物学的因子及び/又は微生物因子の組合せを包含する。化学薬剤は、毒性を有する非生存状態の化学物質であり得る。化学薬剤は、生物によって産生される非生存状態の毒性生成物(例えば、毒素)を含み得る。生物学的因子は、毒性を有する生存状態又は準生存状態の物質(例えば、プリオン)であり得る。微生物因子は、微生物、特に病原性微生物を含んでいる。微生物の主な種類には、細菌、カビのような真菌、酵母及び藻類がある。
【0110】
一実施形態では、ケムバイオ因子は化学兵器を含み得る。好適な化学兵器には、無能力化剤、催涙剤、発疱剤、水疱形成剤、神経剤、肺剤、血液剤又は悪臭物質の1以上がある。
【0111】
好適な無能力化剤は、神経系作用剤、催吐剤、窒息剤、幻覚剤、鎮静剤、麻酔剤、抑制剤など、及びこれらの2種以上の組合せを含み得る。一実施形態では、無能力化剤には、例えばコリンを含むプローブと反応し得る抗コリン作動剤である3−キヌクリジニルベンジレート(QNB、BZ)がある。別の神経系作用剤には、商業的に入手できる店頭販売用(OTC)又は調剤用の医薬品組成物がある。一実施形態では、無能力化剤にはクラーレ或いはクラーレ類似体又は誘導体がある。
【0112】
好適な催涙剤には、o−クロロベンジルマロノニトリル、クロロギ酸クロロメチル、塩化第二スズ、sym−ジクロロメチルエーテル、臭化ベンジル、臭化キシリル、クロロスルホン酸メチル、ヨード酢酸エチル、ブロモアセトン、ブロモメチル−エチルケトン、アクロレイン(2−プロペナール)、カプサイシン、これらの類似体及び/又は誘導体などの1種以上がある。
【0113】
好適な発疱剤には、硫黄マスタード、窒素マスタード、及びルイサイトのようなヒ素化合物の1種以上を含み得る。好適な硫黄マスタードには、2−クロロエチルクロロメチルスルフィド、ビス(2−クロロエチル)スルフィド、ジクロロエチルジスルフィド、ビス(2−クロロエチルチオ)メタン、1,2−ビス(2−クロロエチルチオ)エタン、1,3−ビス(2−クロロエチルチオ)−n−プロパン、1,4−ビス(2−クロロエチルチオ)−n−ブタン、1,5−ビス(2−クロロエチルチオ)−n−ペンタン、ビス(2−クロロエチルチオメチル)エーテル及びビス(2−クロロエチルチオエチル)エーテルの1種以上がある。好適な窒素マスタードには、ビス(2−クロロエチル)エチルアミン、ビス(2−クロロエチル)メチルアミン及びトリス(2−クロロエチル)アミンの1種以上がある。好適なルイサイトには、2−クロロビニルジクロロアルシン、ビス(2−クロロビニル)クロロアルシン及びトリス(2−クロロビニル)アルシンの1種以上がある。
【0114】
好適な神経剤はコリンエステラーゼ阻害剤を含み得る。一実施形態では、コリンエステラーゼ阻害剤には、o−イソプロピルメチルホスホノフルオリデート(サリン)やo−ピナコリルメチルホスホノフルオリデート(ソマン)のようなo−アルキル(Me、Et、n−Pr又はi−Pr)ホスホノフルオリデート、o−エチルN,N−ジメチルホスホルアミドシアニデート(タブン)のようなo−アルキルN,N−ジアルキル(Me、Et、n−Pr又はi−Pr)ホスホルアミドシアニデート、並びにo−エチルS−2−ジイソプロピルアミノエチルメチルホスホノチオレートのようなo−アルキルS−2−ジアルキル(Me、Et、n−Pr又はi−Pr)−アミノエチルアルキル(Me、Et、n−Pr又はi−Pr)ホスホノチオレート及び対応するアルキル化又はプロトン付加塩の1種以上がある。
【0115】
好適な肺剤には、ホスゲン(塩化カルボニル)及びペルフルオロイソブチレンの一方又は両方がある。好適な化学毒素には、パリトキシン、リシン、サキシトキシン及びポツリヌムトキシンの1種以上がある。
【0116】
好適な血液剤は、塩のような形態のシアン化物並びにシアン化物塩の類似体及び誘導体を含み得る。好適な固体塩のシアン化物には、シアン化ナトリウム、シアン化カリウム及び/又はシアン化カルシウムがある。好適な揮発性液体形態のシアン化物には、シアン化水素及び/又は塩化シアンがある。
【0117】
一実施形態では、ケムバイオ因子は1種以上の毒性工業薬品(TIC)を含み得る。一実施形態では、化学薬剤又は微生物因子は1種以上の毒性工業材料(TIM)を含み得る。毒性工業材料には、アンモニア、アルシン、三塩化ホウ素、三フッ化ホウ素、二硫化炭素、塩素、ジボラン、エチレンオキシド、ホルムアルデヒド、ホスゲン、三塩化リン、二酸化硫黄、硫酸、塩化シアン、臭化水素、塩化水素、フッ化水素、硫化水素及びシアン化水素の1種以上がある。
【0118】
一実施形態では、ケムバイオ因子は1種以上の生物学的因子を含み得る。好適な生物学的因子には病原体がある。病原体は、宿主(動物又は植物)に疾患又は病気を引き起こすことがある感染因子である。生物学的因子は、プリオン、微生物(ウイルス、細菌及び真菌)、ある種の単細胞及び多細胞真核生物(例えば、寄生体)並びにその関連毒素を含み得る。若干の実施形態では、病原体には細菌、原生動物、真菌、寄生体及び胞子の1以上がある。若干の実施形態では、病原体にはウイルス又はプリオンがある。
【0119】
細菌生物学的因子(及びそれによって引き起こされる病気又は効果)の若干の例には、Escerichia coli(腹膜炎、食中毒)、Mycobacterium tuberculosis(結核)、Bacillus anthracis(炭疽)、Salmonella(食中毒)、Staphylococcus aureus(トキシックショック症候群)、Streptococcus pneumoniae(肺炎)、Streptococcus pyogenes(敗血性咽頭炎)、Helicobacter pyroli(胃潰瘍)及びFrancisella tularensis(野兎病)の1以上がある。
【0120】
ウイルス(及びそれによって引き起こされる病気又は効果)の若干の例には、A型、B型、C型、D型及びE型肝炎ウイルス(肝臓病)、インフルエンザウイルス(インフルエンザ、トリインフルエンザ)、SARSコロナウイルス(重症急性呼吸器症候群)、単純ヘルペスウイルス(ヘルペス)、伝染性軟属腫ウイルス(発疹)並びにヒト免疫不全ウイルス(AIDS)の1以上がある。
【0121】
原生動物(及びそれによって引き起こされる病気又は効果)の若干の例には、Cryptosporidium(クリプトスポリジウム症)、Giardia lamblia
(ジアルジア鞭毛虫症)、Plasmodium(マラリア)及びTrypanosoma cruzi(シャーガス病)の1以上がある。真菌(及びそれによって引き起こされる病気又は効果)の若干の例には、Pneumocystis jiroveci(日和見肺炎)、Tinea(白癬)及びCandida(カンジダ症)の1以上がある。
【0122】
寄生体の若干の例には、回虫、疥癬虫、サナダムシ及び扁虫の1以上がある。タンパク質系病原体の若干の例には、プリオン(一般に狂牛病又は変異型クロイツフェルト−ヤコブ病(vCJD)として知られるウシ海綿状脳症(BSE))がある。
【0123】
毒素とは、身体組織との接触又は吸収に際して生物学的高分子と相互作用して病気を引き起こすことができるタンパク質を含み、生物兵器として使用されることがある。好適な毒素には、リシン、SEB、ボツリスムトキシン、サキシトキシン及び多くのマイコトキシンがある。
【0124】
生物学的因子によって引き起こされる病気の若干の他の例には、炭疽、エボラ、腺ペスト、コレラ、野兎病、ブルセラ症、Q熱、マチュポ(Machupo)、コクシジオイデス真菌症、鼻疽、類鼻疽、赤痢、ロッキー山紅斑熱、発疹チフス、オウム病、黄熱病、日本脳炎、リフトバレー熱及び痘瘡がある。
【0125】
本明細書中に記載されるような物品は、快適さと防護バリヤー性との組合せによって特徴づけることができる。快適さ及び防護バリヤー性は、物品の厚さ、単位平均重量、通気度、水蒸気透過速度(MVTR)或いは化学薬剤又は微生物因子透過度の1以上によって特徴づけることができる。一実施形態では、物品は約300〜約400μm、約400〜約500μm、約500〜約600μm、約600〜約700μm、約700〜約800μm、約800〜約900μm、約900〜約1000μm又は約1000〜約10000μmの範囲内の厚さを有し得る。
【0126】
一実施形態では、物品は約5〜約30mg/cm2、約30〜約40mg/cm2、約40〜約50mg/cm2、約50〜約60mg/cm2、約60〜約70mg/cm2、約70〜約80mg/cm2、約80〜約90mg/cm2又は約90〜約200mg/cm2の範囲内の単位平均重量を有し得る。
【0127】
一実施形態では、膜は0.5インチH2Oで約6cfm未満の通気度を有し得る。一実施形態では、膜は約0.01〜約0.1cfm、約0.1〜約0.5cfm、約0.5〜約1cfm、約1〜約2cfm、約2〜約3cfm、約3〜約4cfm、約4〜約5cfm又は約5〜約6cfmの範囲内の通気度を有し得る。本明細書中に記載される通気度は、本明細書中に記載される試験条件を用いて測定できる。本明細書中で使用されるcfm/ftとは、立方フィート/分である。
【0128】
一実施形態では、物品は約500g/m2/日を超える水蒸気透過速度(MVTR)を有し得る。一実施形態では、物品は約500〜約600g/m2/日、約600〜約800g/m2/日、約800〜約1000g/m2/日、約1000〜約1500g/m2/日又は約1500〜約2000g/m2/日の範囲内の水蒸気透過速度を有し得る。一実施形態では、物品は約2000g/m2/日を超える水蒸気透過速度(MVTR)を有し得る。
【0129】
一実施形態では、物品は約4000g/m2/日を超える水蒸気透過速度(MVTR)を有し得る。一実施形態では、物品は約4000〜約5000g/m2/日、約5000〜約6000g/m2/日、約6000〜約7000g/m2/日、約7000〜約8000g/m2/日又は約8000〜約10000g/m2/日の範囲内の水蒸気透過速度を有し得る。一実施形態では、物品は約10000〜約15000g/m2/日、約15000〜約20000g/m2/日、約20000〜約25000g/m2/日、約25000〜約30000g/m2/日又は約30000〜約40000g/m2/日の範囲内の水蒸気透過速度を有し得る。一実施形態では、物品は約40000g/m2/日を超える水蒸気透過速度(MVTR)を有し得る。
【0130】
一実施形態では、物品は約50μg/24時間未満のDFP(サリン模倣体)透過度を有し得る。一実施形態では、物品は約1〜約5μg/24時間、約5〜約10μg/24時間、約10〜約20μg/24時間、約20〜約30μg/24時間、約30〜約40μg/24時間又は約40〜約50μg/24時間の範囲内のDFP(サリン模倣体)透過度を有し得る。一実施形態では、物品は約1μg/24時間未満のDFP(サリン模倣体)透過度を有し得る。一実施形態では、物品は特定の化学薬剤又は微生物因子に関する毒性レベル未満の化学薬剤又は微生物因子透過度を有し得る。
【0131】
選択透過性コーティングの性能特性はまた、化学薬剤又は微生物因子不活性化速度の1以上によって特徴づけることもできる。一実施形態では、選択透過性コーティングは化学薬剤又は微生物因子に関して約2g/hr/m2の範囲内の不活性化速度を示し得る。一実施形態では、選択透過性コーティングは化学薬剤又は微生物因子に関して約2〜約3g/hr/m2、約3〜約4g/hr/m2又は約4〜約5g/hr/m2の範囲内の不活性化速度を示し得る。一実施形態では、選択透過性コーティングは化学薬剤又は微生物因子に関して約5g/hr/m2を超える範囲内の不活性化速度を示し得る。
【0132】
一実施形態では、10g/m2の用量レベルで、選択透過性コーティングは24時間後に約5%を超える不活性化率を示し得る。一実施形態では、10g/m2の用量レベルで、選択透過性コーティングは24時間後に約5〜約10%、約10〜約20%、約20〜約30%、約30〜約40%、約40〜約50%、約50〜約60%、約60〜約70%、約70〜約80%、約80〜約90%又は約90〜約95%の範囲内の不活性化率を示し得る。一実施形態では、10g/m2の用量レベルで、選択透過性コーティングは24時間後に約100%の不活性化率を示し得る。
【0133】
一実施形態では、選択透過性コーティングは未反応の化学薬剤及び微生物因子に対して約30分を超える範囲内の突破時間を示し得る。一実施形態では、選択透過性コーティングは未反応の化学薬剤及び微生物因子に対して約30分〜約1時間、約1〜約2時間、約2〜約3時間、約3〜約4時間、約4〜約6時間、約6〜約7時間、約7〜約8時間、約8〜約9時間又は約9〜約10時間の範囲内の突破時間を示し得る。一実施形態では、選択透過性コーティングは未反応の化学薬剤及び微生物因子に対して約10時間を超える範囲内の突破時間を示し得る。
【0134】
一実施形態では、ラミネートが提供される。かかるラミネートは、上述したような物品及び疎油性膜を含んでいる。物品は疎油性膜上に支持することができる。一実施形態では、疎油性膜とは、油、グリース又は体液(例えば、汗やある種の他の汚染剤)を吸収又は吸着することで耐汚染性を示す膜をいう。一実施形態では、疎油性膜は気体透過性及び耐液体透過性を有し得ると共に、70000g/m2/日以上の速度で水蒸気を透過できる。
【0135】
一実施形態では、疎油性膜は膜を通って延在する複数の相互連絡細孔を含むことができ、油及びある種の汚染界面活性剤を吸収するために役立つ材料(例えば、ePTFE)から製造できる。ノード及びフィブリルの表面上にコーティングを配設して、膜中に相互連絡通路を画成することもできる。コーティングは、ノード及びフィブリルの表面上に融合させた疎油性フルオロポリマー固体を含むことで、膜中の細孔を完全に閉塞することなしに得られる疎油性膜に耐油性及び耐界面活性剤性を付与することができる。
【0136】
好適な疎油性フルオロポリマー固体は、フルオロカーボン側鎖を有するアクリル系ポリマーと比較的少量の水、水溶性助溶媒及びグリコールとを含み得る。一実施形態では、好適な疎油性フルオロポリマー固体は、(CIBA Specialty Chemicals社から入手できる)Zonyl系列のフッ素含有ポリマーを含み得る。別の実施形態では、好適な疎油性フルオロポリマー固体は、(DuPont社から)TLF−8868、TLF−9312、TLF−9404A及びTLF−9494Bの商品名で商業的に入手できるフルオロポリマーを含み得る。
【0137】
一実施形態では、疎油性膜は細孔の表面を疎油性フルオロポリマー固体の希釈されかつ安定化された分散液で濡らすことで形成できる。その場合、分散液中の疎油性フルオロポリマー固体は、膜中に細孔を画成する表面上に融合し得る。一実施形態では、疎油性膜は(BHA Technologies社(米国ミズーリ州)から)eVENTの商品名で商業的に入手できる。
【0138】
一実施形態では、選択透過性コーティング52を膜51上に支持して選択透過性膜を形成し、これを図5に示すように疎油性膜53上に支持してラミネート50を形成することができる。選択透過性コーティングはただ1つの層を含んでいてもよいし、或いは複数の層を含んでいてもよく、複数の層中の少なくとも1つの層はヒドロキシアルキル置換ポリエチレンイミンを含み得る。前述の通り、ラミネートは1以上の追加層(例えば、親水性コーティング)を含むことができる。図5はただ1つの選択透過性膜を示しているが、ラミネート構造50中には複数層の選択透過性膜が存在可能である。ここを含めた明細書及び特許請求の範囲全体において、ラミネート構造の様々な図示は単に例示的なものであって、本発明の可能な実施形態のすべてを示してはいない。
【0139】
図6は、親水性コーティング64上に支持された選択透過性コーティング62を含むラミネート60を示している。親水性コーティング64は膜61上に支持され、後者は疎油性膜63上に支持されている。選択透過性コーティングはただ1つの層を含んでいてもよいし、或いは複数の層を含んでいてもよく、複数の層中の少なくとも1つの層は抗菌剤を含み得る。図6はただ1つの選択透過性膜を示しているが、ラミネート構造60中には複数層の選択透過性膜が存在可能である。
【0140】
一実施形態では、ラミネートは、織物、膜及びフィルムの1以上から選択されるシェル層を含むことができる。一実施形態では、疎油性膜は第1の表面及び第2の表面を有していて、物品を疎油性膜の第1の表面上に支持し、シェル層を疎油性膜の第2の表面上に支持することができる。図7は、膜71上に支持された選択透過性コーティング72を含むと共に、膜71が疎油性膜73の第1の表面上に支持されたラミネート70を示している。疎油性膜73の第2の表面上にシェル層75が支持されている。若干の実施形態では、選択透過性コーティング72と膜71との間に追加の親水性コーティング74(任意)を配設することができる。図7はただ1つの選択透過性膜を示しているが、ラミネート構造70中には複数層の選択透過性コーティングが存在可能である。
【0141】
一実施形態では、シェル層は1以上の織物層を含み得る。一実施形態では、織物層は、衣服、テント、寝袋、カジュアルバッグなどの衣料品又は包囲体で使用するのに十分な柔軟性、たわみ性及び耐久性を有し得る。
【0142】
一実施形態では、1以上の織物層は、ポリ(脂肪族アミド)、ポリ(芳香族アミド)、ポリエステル、ポリオレフィン、羊毛、木綿やレーヨンやリネンや酢酸セルロースや他の改質セルロースのようなセルロース系繊維、ポリウレタン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、及び上述したもののいずれかを含むブレンドから選択されたポリマーを含み得る。一実施形態では、1以上の織物層は木綿、ポリ(脂肪族アミド)、ポリ(芳香族アミド)、ポリエステル、ポリウレタン又はこれらのブレンドを含み得る。
【0143】
若干の実施形態では、1以上の織物層は織布から形成できる。別の実施形態では、1以上の布層は不織布から形成できる。不織布はメリヤス、ブレード、タフト又はフェルトであり得る。
【0144】
一実施形態では、ラミネートは本明細書中に記載したような物品、疎油性膜及び少なくとも2つの布層を含み得る。2つの布層は同一の布材料を含んでいてもよいし、或いは相異なる布層を含んでいてもよい。一実施形態では、ラミネート80は図8に示すように外部布層85及び内部布層86を含むことができる。選択透過性コーティング82は膜81上に支持され、後者は疎油性膜83上に支持され、こうして得られる構造体が外部布層85と内部布層86との間にサンドイッチされている。若干の実施形態では、選択透過性コーティング82と膜81との間に追加の親水性コーティング74(任意)を配設することができる。上述した通り、選択透過性コーティングは1つの層又は複数の層を含むことができ、複数の層中の少なくとも1つの層は抗菌剤を含み得る。図8はただ1つの選択透過性膜を示しているが、ラミネート構造80中には複数層の選択透過性膜が存在可能である。
【0145】
外部布層は、風雨にさらされるラミネートの最外層である。一実施形態では、外部布層は、ポリ(脂肪族アミド)、ポリ(芳香族アミド)、ポリエステル、アクリル樹脂、木綿、羊毛などから製造された織布であり得る。一実施形態では、外部布層は疎水性又は疎油性となるように処理できる。一実施形態では、内部布はメリヤス、織布又は不織布であり得ると共に、水分吸上性を向上させ或いは疎水性又は疎油性を付与するように処理することができる。
【0146】
若干の実施形態では、布層は、耐炎性、帯電防止性、耐紫外線性、制御赤外線(I.R.)反射率、迷彩色などの性質を付与するように適当な材料で処理することができる。
【0147】
一実施形態では、ラミネートは1以上の追加層(例えば、親水性膜層、疎油性膜層及び多孔質膜層の1以上)を含むことができる。図9は、本発明の一実施形態に係るラミネート90を示している。選択透過性コーティング92は膜91上に支持され、後者は疎油性膜93上に支持され、こうして得られる構造体が外部布層95と内部布層96との間にサンドイッチされている。
【0148】
選択透過性コーティング92と内部布層96との間には第1の追加層97が存在している。第1の追加層97は親水性膜、疎油性膜又は多孔質膜であり得る。別の実施形態では、疎油性膜93と外部布層95との間に第2の追加層98が存在し得る。追加層98は親水性膜、疎油性膜又は多孔質膜であり得る。若干の実施形態では、選択透過性コーティング92と膜91との間に追加の親水性コーティング94(任意)を配設することができる。上述した通り、選択透過性コーティングは1つの層又は複数の層を含むことができ、複数の層中の少なくとも1つの層は1種以上の抗菌剤を含み得る。図9はただ1つの選択透過性膜を示しているが、ラミネート構造90中には複数層の選択透過性膜が存在可能である。
【0149】
若干の実施形態では、ラミネートを他の防護層と組み合わせて追加の特徴を達成することができる。例えば、図10に示すようなラミネート中のどこかに第2の選択透過性層を挿入できる。図10のラミネート100では、第1の選択透過性コーティング102及び第2の選択透過性コーティング109が使用されている。第1の選択透過性コーティング102は膜101上に支持され、後者は疎油性膜103上に支持され、こうして得られる構造体が外部布層105と内部布層106との間にサンドイッチされている。第2の選択透過性コーティング109は、選択透過性コーティング102と内部布層106との間に存在している。若干の実施形態では、第2の選択透過性コーティング109は、抗菌剤と異なる選択透過性材料を含み得る。上述した通り、選択透過性コーティングは1つの層又は複数の層を含むことができ、複数の層中の少なくとも1つの層は1種以上の抗菌剤を含み得る。
【0150】
図11は、少なくとも2つの多孔質膜を含むラミネート110を示している。図11のラミネート110では、第1の選択透過性コーティング112及び第2の選択透過性コーティング119が使用されている。第1の選択透過性コーティング112は第1の多孔質膜111上に支持され、後者は疎油性膜113上に支持されている。第2の選択透過性コーティング119は第2の多孔質膜118上に支持され、選択透過性コーティング112と内部布層116との間に存在している。こうして得られる構造体が外部布層115と内部布層116との間にサンドイッチされている。若干の実施形態では、第2の選択透過性層は、抗菌剤と異なる選択透過性材料を含み得る。上述した通り、選択透過性コーティングは1つの層又は複数の層を含むことができ、複数の層中の少なくとも1つの層は1種以上の抗菌剤を含み得る。
【0151】
一実施形態では、ラミネート中の少なくとも1つの層が酵素活性物質、触媒活性物質及び化学収着物質の1種以上を含み得る。酵素活性物質、触媒活性物質又は化学収着物質は、ラミネート構造の任意の層中に存在し得る。例えば、酵素活性物質、触媒活性物質又は化学収着物質は、選択透過性コーティング、親水性膜、疎油性膜、外部布層、内部布層及びその他適当な層の1以上の中に存在し得る。若干の実施形態では、ラミネート中の相異なる層が酵素活性物質、触媒活性物質又は化学収着物質を独立に含み得る。例えば、外部布層が酵素活性物質を含み、内部布層が化学収着物質を含み、選択透過性コーティングが触媒活性粒子を含むことができる。
【0152】
若干の実施形態では、選択透過性コーティングが酵素活性物質、触媒活性物質及び化学収着物質の1種以上を含み得る。若干の実施形態では、外部布層が酵素活性物質、触媒活性物質及び化学収着物質の1種以上を含み得る。若干の実施形態では、内部布層が酵素活性物質、触媒活性物質及び化学収着物質の1種以上を含み得る。若干の実施形態では、追加膜層が酵素活性物質、触媒活性物質及び化学収着物質の1種以上を含み得る。
【0153】
酵素活性物質は、化学物質又は微生物因子の化学反応を触媒し得る酵素を含み得る。酵素活性物質には、有機リンヒドロラーゼ、ジイソプロピルフルオロホスファターゼ、有機リン酸アンヒドロラーゼ、ホスホトリエステラーゼ、ハロアミン及び第四級アンモニウム塩の1種以上がある。一実施形態では、酵素活性物質にはLybradyn−OPH、BioCatalysts DFPase又はGenencor Defenzがある。
【0154】
本明細書中で使用される触媒活性物質は、活性化学種を有する粒子、又は刺激(例えば、紫外線)に応答して活性化学種を生成できる粒子を含む。活性化学種は、化学薬剤又は微生物因子と反応又は相互作用してその活性を低下させ、膜を通してのその浸透時間を延長し、或いはそれを無害の副生物又は最終生成物に転化させることができる。本明細書中で使用されるナノ粒子とは、ナノスケールの平均粒度を有する粒子をいう。
【0155】
ナノ粒子は、約1〜約1000nmの範囲内の最大寸法(例えば、直径又は長さ)を有し得る。本明細書中で使用されるナノ粒子は、単一のナノ粒子、複数のナノ粒子、又は互いに会合した複数のナノ粒子をいうことがある。会合とは、金属ナノ粒子が1以上の他の金属ナノ粒子と接触していることをいう。一実施形態では、会合とは金属ナノ粒子が1以上の他種粒子と接触していることをいう。
【0156】
触媒活性物質には、銀、銅、酸化マグネシウム、酸化チタン及び酸化アルミニウムからなる群から選択される複数のナノ粒子がある。化学収着物質には活性炭素がある。
【0157】
一実施形態では、物品は化学薬剤又は微生物因子防護衣料品を含み得る。一実施形態では、上述したように、膜を1以上の布層上に支持してケムバイオ因子防護衣料品を形成することができる。一実施形態では、化学薬剤又は微生物因子防護衣料品は水蒸気を透過し得ると共に、有害な化学薬剤又は微生物因子に対する個人の暴露を低減させ得る。一実施形態では、化学薬剤又は微生物因子防護衣料品は、化学薬剤又は微生物因子の生物学的活性を低下させ、或いは未反応の生物学的に活性な化学薬剤又は微生物因子の実質的な量が化学薬剤又は微生物因子防護衣料品衣料品を通過する時間を延長することで、有害な化学薬剤又は微生物因子に対する個人の暴露を低減させ得る。
【0158】
一実施形態では、化学薬剤又は微生物因子防護衣料品は上着のような衣服を含み得る。一実施形態では、化学薬剤又は微生物因子防護衣料品は、耐摩擦性を示し得る外面を有する上着を含み得る。上着には、ジャケット、トップス、シャツ、パンツ、フード、手袋、仕事着などの1以上がある。一実施形態では、化学薬剤又は微生物因子防護衣料品は、靴下、靴、ブーツなどを含めた履物を含み得る。
【0159】
一実施形態では、化学薬剤又は微生物因子防護衣料品は、露出した皮膚に接して着用し得る下着又は履物を含み得る。一実施形態では、化学薬剤又は微生物因子防護衣料品は、皮膚と流体流通可能に着用し得る下着を含み得る。一実施形態では、化学薬剤又は微生物因子防護衣料品は除染スーツを含み得る。一実施形態では、上述した物品は、テント、寝袋、カジュアルバッグ、シェルターなどの防護包囲体において使用できる。
【0160】
一実施形態では、方法が提供される。本方法は、多孔質膜に選択透過性コーティングを適用することを含んでいる。選択透過性コーティングは抗菌剤を含んでいる。抗菌剤は、化学薬剤又は微生物因子と化学反応して化学薬剤又は微生物因子の生物学的活性を低下させ、或いは未反応の生物学的に活性な化学薬剤又は微生物因子の実質的な量が物品を通過する時間を延長するのに十分な量で存在している。
【0161】
一実施形態では、選択透過性コーティングは、例えば漬け塗り、スロットダイコーティングなどのコーティング技法によって膜に適用できる。一実施形態では、選択透過性コーティングは、膜製造プロセスに抗菌剤の溶液を添加することで多孔質膜中に組み込むことができる。組み合わされて選択透過性コーティングを形成する複数の層を含む実施形態では、相異なる層を膜に順次に適用してもよいし、或いは選択透過性コーティングを形成し、次いで膜に貼り合わせてもよい。
【0162】
若干の実施形態では、選択透過性コーティングは、本明細書中に開示された方法を用いて多孔質膜を被覆又はカバーし、本質的に表面上に位置するように形成できる。別の実施形態では、選択透過性コーティングはさらに膜の厚さを通して膜中に侵入するように形成することもできる。かかる侵入は、極めてわずかな程度であってもよいし、或いは選択透過性コーティングが膜の厚さ全体にわたって膜中の細孔を実質的に被覆するような程度であってもよい。若干の実施形態では、選択透過性コーティングが完全に膜の細孔の内部に位置するようにしてもよいし、或いは選択透過性コーティングの一部のみが細孔の内部に位置するようにしてもよい
一実施形態では、選択透過性コーティングの溶液を膜に適用できる。好適な溶媒は、特定の溶媒中での抗菌剤の溶解度に応じて水性又は非水性であり得る。好適な溶媒は、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、水素結合受容能力を有する化合物、及び水と混和できる溶媒を含み得る。好適な脂肪族及び芳香族炭化水素化合物にはヘキサン、シクロヘキサン及びベンゼンの1種以上があり、これらは1〜4の炭素原子を含む1以上のアルキル基で置換されていてもよい。水素結合受容能力を有する好適な化合物には、下記の官能基、即ちヒドロキシ基、アミノ基、エーテル基、カルボニル基、カルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、ウレイド基、スルホキシド基、スルホニル基、チオエーテル基及びニトリル基の1以上がある。好適な溶媒には、1種以上のアルコール、アミン、エーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、アミド、尿素、ウレタン、スルホキシド、スルホン、スルホンアミド、硫酸エステル、チオエーテル、ホスフィン、亜リン酸エステル及びリン酸エステルがある。好適な非水性溶媒の若干の他の例には、トルエン、ヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、アセトフェノン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ベンジルアルコール、フルフリルアルコール、グリセロール、シクロヘキサノール、ピリジン、ピペリジン、モルホリン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジブチルエタノール、2−メトキシエチルエーテル、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、p−ジオキサン、アニソール、酢酸エチル、エチレングリコールジアセテート、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトン、安息香酸エチル、N−メチルピロリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、1,1,3,3−テトラメチル尿素、チオフェン、テトラヒドロチオフェン、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、メタンスルホンアミド、硫酸ジエチル、亜リン酸トリエチル、リン酸トリエチル、2,2’−チオジエタノール、アセトニトリル及びベンゾニトリルがある。一実施形態では、本方法は、空気乾燥、真空乾燥、熱乾燥又はこれらの組合せによって膜から残留溶媒を除去することを含み得る。
【0163】
一実施形態では、本方法は、例えば化学物質又は微生物因子防護物品中で使用できるラミネートを製造することを含み得る。一実施形態では、膜、フィルム又は衣料品用布の1以上の層に選択透過性膜を貼り合わせることができる。一実施形態では、親水性膜、疎油性膜、外層用布又は内層用布の1以上の層に選択透過性膜を貼り合わせることができる。一実施形態では、貼合せは、熱接着、熱ロール貼合せ、超音波貼合せ、接着剤貼合せ、強制熱風貼合せ、又はステッチのような機械的結合によって達成できる。
【0164】
一実施形態では、継ぎ合せ技法を用いてラミネートを製造できる。継ぎ合せ技法は、接合すべき縁端をステッチ又はヒートシールし、次いで継ぎ目をラミネートの内側にヒートシールすることを含み得る。一実施形態では、ラミネートは接着剤又はステッチングを用いて製造できる。ステッチングを使用するならば、それはキルティング又は点結合不織材料のように層全体にわたり存在していてもよいし、或いは例えば衣服、手袋及び他の衣料品において継ぎ目又はカフスの位置にのみ存在していてもよい。
【0165】
一実施形態では、本方法は物品を化学薬剤又は微生物因子に接触させることを含んでいる。一実施形態では、生物学的に活性な化学薬剤又は微生物因子に対する個人の暴露を低減させる方法が提供される。本方法は、細孔を有する膜及び選択透過性コーティングに化学薬剤又は微生物因子を暴露することを含み得る。本方法は、化学薬剤又は微生物因子を細孔中に浸透させ、化学薬剤又は微生物因子を抗菌剤と反応させることを含み得る。
【0166】
一実施形態では、本方法は、化学薬剤又は微生物因子の生物学的活性を低下させること及び未反応の生物学的に活性な化学薬剤又は微生物因子の実質的な量が物品を通過する時間を延長することの一方又は両方を含み得る。一実施形態では、本方法は化学薬剤又は微生物因子の生物学的活性を80%以上低下させることを含み得る。一実施形態では、本方法は、未反応の生物学的に活性な化学薬剤又は微生物因子の実質的な量が物品を通過する時間を1時間延長することを含み得る。
【0167】
一実施形態では、本方法は、化学薬剤又は微生物因子に比べて水蒸気に対し優先的な透過性を有する膜を含む化学薬剤又は微生物因子防護衣料品を個人と化学薬剤又は微生物因子との間に配置することを含み得る。
【実施例】
【0168】
以下の実施例は本発明に係る方法及び実施形態を例示するためのものにすぎず、したがって特許請求の範囲に制限を課するものと解すべきでない。
【0169】
試験方法
水蒸気透過速度(MVTR)は、特記しない限り、ASTM E99方法を用いて測定される。通気度は、特記しない限り、ASTM 737方法を用いて測定される。化学薬剤又は微生物因子透過度は、特記しない限り、米国陸軍試験作業プロトコル(TOP 8−2−501方法)又はASTM F739方法を用いて測定される。TOP 8−2−501方法は、化学薬剤又は模倣剤に関する通気性、半透過性及び不透過性材料の透過度及び浸透度試験方法(スウォッチ試験)である。それはU.S. Army Dugway Proving Ground West Desert Test Center(ダグウェイ、米国ユタ州)によって公表されている。膜の単位平均重量は、特記しない限り、ASTM D3776方法を用いて測定される。IPA泡立ち点は、特記しない限り、ASTM M F316方法を用いて決定される。
【実施例1】
【0170】
PTFE膜上への抗菌剤のコーティング
抗菌剤BA−1をHaloSource,Inc.(レッドモンド、米国ワシントン州)から入手する。平均約0.2ミクロン及び最大0.5ミクロンの平均細孔径を有するePTFE(グレードQM012)をGE Energy社(カンザスシティ)から入手する。
【0171】
5.0グラムのBA−1及び95.0グラムのイソプロパノール(IPA)を混合して100グラムの5%BA−1(w/w)溶液を得る。PTFE膜を5%BA−1溶液中に15分間浸し、溶液をパラフィルムで覆って蒸発を防止する。溶液から膜を取り出し、金属ラックに移して硬化前にコーティング溶液を蒸発させる。膜が元の非湿潤色に戻ったとき、膜は乾燥したと見なす。膜を約100℃に予熱されたオーブンに移し、60分間硬化させる。次いで、オーブンから膜を取り出し、室温で放冷する。次いで、膜を50mLのIPA中に入れ、1分間撹拌することで未結合BA−1を除去する。次いで、膜を再び空気乾燥する。
【0172】
30mLのClorox標準漂白剤を270mLの水道水と混合し、漂白剤溶液のpHをクエン酸で7.0〜7.5に調整する。試料を漂白剤溶液中に撹拌しながら30分間浸すことで、試料と漂白剤溶液との接触を確実に最大化する。次いで、試料を漂白剤溶液から取り出して空気乾燥し、或いは約65℃のオーブン内で2時間乾燥してもよい。
【0173】
試料に付与された塩素官能基のレベルを決定するため、0.50グラムの試料を切り出し、三角フラスコ内に配置する。35mLのエタノール及び10滴の20%酢酸をフラスコに添加し、次いで0.30グラムのヨウ化カリウム(KI)を添加する。試料をパラフィンで覆い、渦動させて成分を混合すると共に確実に接触させ、次いで20分間静置する。その間に、液は黄色に変わるはずである。次いで、試料が無色になるまで試料を0.002Nチオ硫酸塩で滴定する。試料を覆い、30分間静置した後、無色の終点までもう一度滴定する。下記の式を適用することで、試料に付与された塩素官能基のレベルは約519ppmと計算された。
【0174】
【数1】

【実施例2】
【0175】
大腸菌に対するBA−1被覆PTFE膜の抗菌効力
BA−1をHaloSource,Inc.(レッドモンド、米国ワシントン州)から入手する。平均約0.2ミクロン及び最大0.5ミクロンの平均細孔径を有するePTFE(グレードQM012)をGE Energy社(カンザスシティ)から入手する。実施例1に記載した方法に従ってePTFE膜をBA−1で被覆する。
【0176】
BA−1被覆ePTFE膜の1インチ×1インチスウォッチ4枚をキャリヤーとして使用し、無菌ペトリ皿内に配置する。2枚のスウォッチに10μlの1:50洗浄大腸菌懸濁液を接種した。キャリヤー中への接種物の吸収を助けるため、少量の洗浄剤(例えば、Triton X−100)を添加した。次いで、残り2枚のスウォッチを25gの重りと共に上に載せた。
【0177】
タイマーを1時間及び4時間にセットした。次いで、ペトリプレートを室温の調湿チャンバー内に所望の接触時間だけ配置した。感染菌数を得るためには、10μlの接種物を10mLの0.02Nチオ硫酸ナトリウムに添加し、1分間渦動させた。10-3及び10-5希釈液をTSA上に接種し、37℃で24時間インキュベートした。特定の接触時間後、キャリヤーを10mLの0.02Nチオ硫酸ナトリウムで中和し、1分間渦動させた。活性化試料に関しては、10-2及び10-4希釈液をTSA上に接種した。すべての平板を37℃で一晩インキュベートした。翌朝、コロニーカウントを実施した。結果を下記表1に示す。
【0178】
【表1】

表1に示すように、5%BA−1膜は4時間の接触時間後に5対数値の大腸菌を殺すことができた。
【0179】
物質、成分又は配合成分については、本開示に従って1種以上の他の物質、成分又は配合成分と最初に接触、現場生成、ブレンド又は混合される直前の時点で存在しているものが言及されている。反応生成物、得られる混合物などとして特定される物質、成分又は配合成分は、常識及び当業者(例えば、化学者)の通常の技術を適用しながら本開示に従って実施される接触、現場生成、ブレンディング又は混合作業の経過中に化学反応又は変換を通して本性、性質又は特性を獲得できる。化学反応物又は出発原料から化学生成物又は最終物質への変換は、それが起こる速度には関係なく、絶えず進展しているプロセスである。このように、かかる変換プロセスは進行中であるので、出発原料及び最終物質と中間化学種との混合物が存在することがある。かかる中間化学種は、その動力学的寿命に応じ、当業者にとって公知の現行分析技法で検出するのは容易又は困難であり得る。
【0180】
本明細書又は特許請求の範囲中に化学名又は化学式によって言及される反応物及び成分は、単数形又は複数形のいずれで言及されるにせよ、化学名又は化学的タイプによって言及される他の物質(例えば、他の反応物又は溶媒)と接触する前に存在するものとして特定できる。こうして得られる混合物や溶液や反応媒質中で起こる予備的及び/又は過渡的な化学変化、変換又は反応があるとすれば、それは中間化学種、マスターバッチなどとして特定でき、反応生成物又は最終物質の有用性とは異なる有用性を有し得る。本開示に従って要求される条件下で指定の反応物及び/又は成分を一緒に合わせることから、他の後続の変化、変換又は反応が起こり得る。これらの他の後続の変化、変換又は反応では、一緒に合わせるべき反応物、配合成分又は成分は反応生成物又は最終物質を特定又は表示することができる。
【0181】
上記の実施例は、本発明の若干の特徴を例示するものである。後述の特許請求の範囲は考えられる限り広い範囲で本発明を特許請求するものであり、本明細書に記載した実施例は多種多様なすべての可能な実施形態から選択された実施形態を例示している。したがって、後述の特許請求の範囲は利用する実施例を選択することによって本発明の例示された特徴に限定されることはないというのが出願人の意図するところである。特許請求の範囲で使用される「含む」という用語及びその文法的変形語は、論理的に言って、例えば特に限定されないが「から本質的になる」及び「からなる」のような様々に定義範囲の異なる語句も含めて意味する。必要な場合には範囲が示されているが、これらの範囲はその中に入るすべての部分範囲を包含する。これらの範囲内での変動は当業者には自明であろうし、また未だ公表されていなくても後続の特許請求の範囲はこれらの変動をカバーすべきであると予想できる。科学及び技術の進歩により、言語の不正確さのために現在では想定されていない同等例及び置換例が可能になることもあるが、これらの変形例も後述の特許請求の範囲によってカバーされるべきである。
【符号の説明】
【0182】
10 物品
11 膜
12 選択透過性コーティング
50 ラミネート
53 疎油性膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細孔を有する膜(11)及び該膜によって支持された選択透過性コーティング(12)を含んでなる物品(10)であって、選択透過性コーティングが1種以上の抗菌剤の有効量を含む物品(10)。
【請求項2】
膜がフッ素化ポリマーからなる、請求項1記載の物品。
【請求項3】
フッ素化ポリマーが延伸ポリテトラフルオロエチレンからなる、請求項2記載の物品。
【請求項4】
1種以上の抗菌剤が、1種以上のハラミン、第四級アンモニウム化合物、銀イオン含有化合物、スルホンアミド、N−クロロ−4−メチル−、ナトリウム塩、亜鉛イオン含有化合物、銅イオン含有化合物、塩素放出化合物、ジクロロ−s−トリアジントリオンナトリウム、トリクロロ−s−トリアジントリオン又はこれらの組合せからなる、請求項1記載の物品。
【請求項5】
1種以上の抗菌剤が1種以上のハラミンからなる、請求項4記載の物品。
【請求項6】
抗菌剤が、下記の式を有する繰返し単位をさらに含む1種以上の重合性ケイ素含有第四級アンモニウム化合物からなる、請求項4記載の物品。
3+0nSiX14-n-
(式中、各R及び各R0は独立に非加水分解性有機基であり、各X1は−OR1(式中、R1は炭素原子数1〜約22のアルキル基又は炭素原子数6のアリール基である。)、−OH又は−O−Siであり、nは0〜3の整数であり、Yはハライド、ヒドロキシル、アセテート、SO4-2、CO3-2又はPO4-2である。)
【請求項7】
細孔を有する膜(11)及び該膜によって支持された選択透過性コーティング(12)を含んでなる物品(10)であって、選択透過性コーティングが1種以上の抗菌剤の有効量及びアミン又はイミン含有ポリマーを含む物品(10)。
【請求項8】
アミン又はイミン含有ポリマーが、1種以上のヒドロキシアルキル置換ポリアルキレンイミン、ポリビニルアルコール−コアミン又はこれらの組合せからなる、請求項7記載の物品。
【請求項9】
請求項1記載の物品(10)及び疎油性膜を含んでなるラミネート(50)であって、物品が疎油性膜上に支持されているラミネート(50)。
【請求項10】
抗菌剤が、1種以上のハラミン、第四級アンモニウム化合物、銀イオン含有化合物、スルホンアミド、N−クロロ−4−メチル−、ナトリウム塩、亜鉛イオン含有化合物、銅イオン含有化合物、塩素放出化合物、ジクロロ−s−トリアジントリオンナトリウム、トリクロロ−s−トリアジントリオン又はこれらの組合せを含む複数のナノ粒子からなる、請求項9記載のラミネート。
【請求項11】
請求項9記載のラミネートを含んでなる衣料品であって、耐摩擦性を示し得る外面を有する上着からなる衣料品。
【請求項12】
請求項9記載のラミネートを含んでなる衣料品であって、露出した皮膚に接して着用し得る下着又は履物からなる衣料品。
【請求項13】
多孔質膜に選択透過性コーティングを適用することを含んでなる方法であって、選択透過性コーティングが有効量の抗菌剤を含む方法。
【請求項14】
選択透過性コーティングがさらにポリマー成分を含み、当該方法がさらにポリマー成分を硬化させることを含む、請求項13記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−179649(P2010−179649A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−230051(P2009−230051)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】