説明

物品の分解方法

【課題】ねじによる締結が可能で、かつ、所定の温度以上に加熱すると該ねじによる締結が無効となる易分解締結部によって組み立てられた物品の分解方法において、少量の処理であってもエネルギーの無駄がなく、また、不必要な部分への熱の供給が少なく、かつ、小さい易分解締結部を有する物品に対する作業効率が高い物品の分解方法を提供する。
【解決手段】ねじによる締結が可能で、かつ、所定の温度以上に加熱すると該ねじによる締結が無効となる易分解締結部によって組み立てられた物品の分解方法において、上記加熱を、上記易分解締結部及びその周辺にのみ過熱蒸気を供給して行う物品の分解方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピューターや家電製品などの電気製品をはじめとする各種機器(物品)などにおいて、ねじによる締結が可能で、かつ、所定の温度以上に加熱すると該ねじによる締結が無効となる易分解締結部によって組み立てられた物品の分解方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピューターや家電製品などの電気製品をはじめとする物品の多くはねじを用いて組み立てられている。
【0003】
このような、ねじによって組み立てられた物品を廃棄する場合、その容積を減らし、あるいは、この物品の部材を有効に再利用するためにねじを緩め、はずして分解する。
【0004】
しかしながら、このような分解は、ねじによる締結箇所が多いとき、あるいは、多量の物品を分解するには、非常に煩わしい作業となる。
【0005】
ここで、本発明者等は、特開2005−16713公報(特許文献1)により、本体に締結される締結部材の周囲において該締結部材の頭部と被締結部材との間に挟まれ、該締結部材の締付力により該被締結部材を押圧するねじ付属品であって、形状復元する材料で形成され、前記締結部材の頭部から抜けるように半径方向に開く一対の腕部を有し、該一対の腕部の先端側に、加熱されることにより軟化する接合材で連結された接合部を設けたねじ付属品や、本体に締結される締結部材の周囲において該締結部材の頭部と被締結部材との間に挟まれ、該締結部材の締付力により該被締結部材を押圧するねじ付属品であって、形状復元する材料で形成され、加熱されること又は外力を受けることにより、前記締結部材の頭部から抜けるように半径方向に開く一対の腕部を有するねじ付属品を提案し、このようなねじ付属品を組み立て時にワッシャとして用いる易分解締結部によって、所定の温度以上に加熱するだけで容易にねじによる締結を無効とすることができる技術について提案を行っている。
【0006】
このような易分解締結部によって組み立てられた物品は、例えばベルトコンベアシステムを備えた加熱炉に導入することにより、きわめて容易に分解することができ、またこのとき、大量の物品の分解処理にも対応が可能である。
【0007】
しかし、このような加熱炉による分解には、分解目的の物品のほぼ全体を加熱する必要があり、加熱炉自体も大型化するとともに、エネルギーコストも大きく、また、少量の物品を処理するときにも、加熱炉全体を所定の温度以上に熱する必要があるので、エネルギーロスが大きくなる。
【0008】
また、加熱炉の代わりに、易分解締結部によって組み立てられた物品を所定の温度以上に熱せられた温水、油などの液体の中に導入することでも同様に目的の物品の分解をおこなうことができるが、この場合も上記同様のエネルギーのロスの問題が生じるほか、廃水、廃油の処理や、回収された部品の水分や油分の除去が必要となるほか、回収部品の汚染などの問題も生じる可能性があり、その後のリサイクルに障害を引き起こす可能性があり、さらには物品内部のコンデンサやバッテリーの残留電気エネルギーによるショートによる発火・爆発などの可能性も考えられる。
【0009】
さらに、これらでは、分解に必要な温度(形状記憶合金を用いる場合には一般に100℃以上、また、ウッドメタルなどの易溶融金属を用いた場合にも約70℃以上)により、物品の一部が、変色、変形、変質、破壊などの障害が発生し、それらのリサイクルに障害を引き起こすおそれがあった。
【特許文献1】特開2005−16713公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここで、本発明者等は、はんだごてのような、手などで操作可能な加熱源を操作して、要分解物品の易分解締結部に接触させて、易分解締結部を所定の温度以上に加熱すると云う作業を試みた。
【0011】
しかしながら、このとき、小型の易分解締結部、例えば、用いるねじの頭の径が2mm以下などの易分解締結部への処理は、細かい作業となるので、効率が悪く、また、易分解締結部ではなく、分解対象の物品の易分解締結部以外の箇所を誤って加熱してしまうこと、また、易分解締結部近接部分が樹脂からなる場合、その部分を間違って加熱することにより、易分解締結部の動作が不完全となって分解できなくなる恐れもあった。
【0012】
ここで、本発明はこのような問題を解決する、即ち、ねじによる締結が可能で、かつ、所定の温度以上に加熱すると該ねじによる締結が無効となる易分解締結部によって組み立てられた物品の分解方法において、少量の処理であってもエネルギーの無駄がなく、また、不必要な部分への熱の供給が少なく、かつ、小さい易分解締結部を有する物品に対する作業効率が高い物品の分解方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の物品の分解方法は上記課題を解決するため、請求項1に記載の通り、ねじによる締結が可能で、かつ、所定の温度以上に加熱すると該ねじによる締結が無効となる無効となる易分解締結部によって組み立てられた物品の分解方法において、上記加熱を、上記易分解締結部及びその周辺に過熱蒸気を供給して行うことを特徴とする物品の分解方法である。
【0014】
また、本発明の物品の分解方法は、上記請求項1に記載の物品の分解方法において、請求項2に記載のように、上記物品が、その易分解締結部付近に該易分解締結部の存在を示す標識がある物品であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の物品の分解方法は、上記請求項1または請求項2に記載の物品の分解方法において、請求項3に記載のように、集束された過熱蒸気の気流を用いることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の物品の分解方法は、上記請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の物品の分解方法において、請求項4に記載のように、上記易分解締結部が、上記物品を構成する部材に一体化した雌ねじ部、雄ねじ、及び、該雄ねじの雄ねじ部の外径よりも大きく、かつ、該雄ねじの頭部の最大径よりも小さい内径を有し、所定の温度以上に温度に加熱されると変形して該内径が該雄ねじの頭部の最大径と同等または該頭部の最大径より大きくなるワッシャとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の物品の分解方法によれば、ねじによる締結が可能で、かつ、所定の温度以上に加熱するとそのねじによる締結が無効となる易分解締結部によって組み立てられた物品の分解方法において、少量の処理であってもエネルギーの無駄がなく、また、不必要な部分への熱の供給が少なく、かつ、小さい易分解締結部を有する物品に対する作業効率が高い。
【0018】
さらに、請求項2に係る本発明の物品の分解方法によれば、易分解締結部以外の箇所を目指して加熱することができるので、加熱によって障害を引き起こす可能性がある箇所への加熱を防止することができる。
【0019】
さらに、請求項3に係る本発明の物品の分解方法によれば、比較的遠距離からの操作で、分解作業を行うことができるので、作業効率がより高くなる。
【0020】
さらに、請求項4に係る本発明の物品の分解方法によれば、過熱蒸気による分解が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明において、易分解締結部とは、ねじによる締結が可能で、かつ、所定の温度以上に加熱すると該ねじによる締結が無効となる易分解締結部であることが必要である。このような易分解締結部によれば、組み立て時にはねじを用いて組み立てる物品と同様の組み立て方法、設備によって組み立てることができる。
【0022】
このような、易分解締結部としては例えば、特開2005−16713公報(特許文献1)により開示された易分解締結部が挙げられる。
【0023】
すなわち、本体に締結される締結部材の周囲において該締結部材の頭部と被締結部材との間に挟まれ、該締結部材の締付力により該被締結部材を押圧するねじ付属品であって、形状復元する材料で形成され、前記締結部材の頭部から抜けるように半径方向に開く一対の腕部を有し、該一対の腕部の先端側に、加熱されることにより軟化する接合材で連結された接合部を設けたねじ付属品を用いる易分解締結部である。このような軟化する接合材としては、低融点金属、熱可塑性プラスチックなどが挙げられる。
【0024】
あるいは、本体に締結される締結部材の周囲において該締結部材の頭部と被締結部材との間に挟まれ、該締結部材の締付力により該被締結部材を押圧するねじ付属品であって、形状復元する材料で形成され、加熱されることにより前記締結部材の頭部から抜けるように半径方向に開く一対の腕部を有するねじ付属品を用いる易分解締結部である。このようなねじ付属品は、形状記憶合金や形状記憶プラスチックから構成することができる。
【0025】
このような、ねじ付属品を利用する易分解締結部の例について、図面を用いて説明する。
【0026】
図1には、形状記憶合金からなる易解体用のスプリングワッシャ(ねじ付属品)10を用いた締結体構造の一例として、液晶テレビ20の易分解締結部付近の部分拡大断面図が示されている。また、図2には図1のAを付して示された部分の拡大部分断面図を示す。
【0027】
液晶テレビ20は、筐体としてのプラスチックシャーシ21、液晶パネル本体23、ランプ類(図示せず)、シート類など(図示せず)から構成されている。プラスチックシャーシ21は、開口部を有するパネルケース(本体)25と、開口部を覆うパネルカバー(被締結部材)22とから構成されている。液晶パネル本体23は、前後一対の板ガラス、液晶、偏光板、反射板、電子回路ユニットなどから構成されており、プラスチックシャーシ21の内側に収容され、パネルケース25とパネルカバー22とに挟まれる状態で固定されている。
【0028】
ここで、形状記憶合金とは、例えばTi−Ni合金(両者の分子存在比はほぼ等しい)、Cu−Zn−Al合金などの所定の温度に加熱されることで記憶された形状に復元する性質(形状記憶特性)を有する合金である。
【0029】
形状記憶合金に形状を記憶させるための形状記憶処理は、合金組成、用途などにより異なるものであるが、大気中、真空中、不活性ガス中のいずれかの雰囲気において、例えば400〜800℃の処理温度で、5〜60分保持することにより行われている。ここで用いられたスプリングワッシャは、大気中において、750℃の処理温度で、10分間保持することにより、記憶処理が行われている。
【0030】
成形された形状記憶合金が、相変態により記憶形状に復元する逆変態開始温度は、合金元素、合金組成により大きく異なるものであるが、ここで用いられたスプリングワッシャの逆変態開始温度は、約100℃(本実施例での所定の温度)である。
【0031】
本実施形態の形状記憶合金からなるスプリングワッシャ10は、一般的なスプリングワッシャ形状をしており、雄ねじ(平皿ねじ)17の頭部17bの最大径よりも小さい内径を有しており、ねじ17の締結に用いられるときには通常のスプリングワッシャとして用いられ、この例では、スプリングワッシャ10は雄ねじ17の頭部17bのねじ側傾斜面(座面)17cと円環状の円環座金15との間に固定されて、通常のスプリングワッシャとして機能して、ねじのゆるみ防止機能を果たしている。
【0032】
円環座金15は、スプリングワッシャ10のいわゆる、「座り」を改善するとともに、スプリングワッシャ10のパネルカバー22への食い込みを防止して、スプリングワッシャ10が所定の温度以上に加熱されたときの動作を確実にする。
【0033】
また円環座金15には、鍔15aが垂設されていて、この鍔15aが挿通孔22aの孔縁に係止されることで、円環座金15の位置ずれが防止されている。
【0034】
次に、プラスチックシャーシ21(液晶テレビ20)の組み立てと解体について、順に説明する。パネルケース25の取付部25aに圧縮コイルばね27を外挿させ、パネルケース25とパネルカバー22とを対向させるとともに、液晶パネル本体23をパネルケース25の収容空間24に収め、圧縮コイルばね27を縮めながらパネルカバー22をパネルケース25の開口部にあてがい、取付部25aの小径部25bをパネルケース25の挿通孔22aに嵌合させる。そして、円環座金15をパネルケース25の挿通孔22aに嵌め、円環座金15の上にスプリングワッシャ10を載せ、円環座金15とスペーサ10に雄ねじ17を挿通させ、雄ねじ17の雄ねじ部17aをパネルケース25の取付部25aに形成された雌ねじ部25cに螺合させて、所定のトルクで雄ねじ17を締め付ける。雄ねじ17は、実際の組立工程において管理されている所定のトルクで締め付けられるようになっている。
【0035】
雄ねじ17を締め付けると、ねじ17の座面17cとスプリングワッシャ10とが当接することとなるが、スプリングワッシャは所定の温度に加熱されるまでは、最終的に加工された形状、即ち、その内径がねじ17の頭部17bの外径より小さい状態を保つ。
【0036】
ねじ17の締付力は、スペーサ10と円環座金15を介してパネルカバー22を押圧して、プラスチックシャーシ21が組み立てられるようになっている。
【0037】
ここで、スプリングワッシャ10の正面図及び側面図を図4(a)及び図4(b)に示す。スプリングワッシャ10は正面から見ると全体が、切れ目が一箇所設けられている円環状に形成されており、側面からみるとスプリングワッシャ10が螺旋状になっていることが判る。ここで、スプリングワッシャ10を構成する線材は断面が、スプリングワッシャ10の正面及び裏面側がともに曲率の小さい楕円形であり、”座り”が改善されている。なお、スプリングワッシャを構成する線材が楕円以外にスプリングワッシャ正面及び裏面が平らな長円形であっても(そのような一例10’を図4(c)に示す)良い。ここでは”座り”の良い例について示したが、そのような効果が不要な場合には断面が円形の線材からなるスプリングワッシャであってもよい。
【0038】
これら形状記憶合金からなるスプリングワッシャは、物品本体に締結される締結部材の周囲において該締結部材の頭部と被締結部材との間に挟まれ、該締結部材の締付力により該被締結部材を押圧するねじ付属品であって、形状復元する材料で形成され、加熱されることにより前記締結部材の頭部から抜けるように半径方向に開く一対の腕部を有するねじ付属品である。
【0039】
また、この例ではスプリングワッシャを示したが、切れ目を有しないドーナツ状のワッシャであって、雄ねじ10のねじ部17aの外径(最大径)よりも大きく、かつ、雄ねじ17の頭部17bの外径(最大径)よりも小さい内径を有し、所定の温度以上に温度に加熱されると拡径して内径が雄ねじ17の頭部17bの最大径と同等または頭部17bの最大径よりも大きくなるワッシャを用いてもよい。
【0040】
また、特開2005−16713公報によって開示されたように、本発明の物品の分解方法が適応される物品の易分解締結部で用いられるワッシャを、加熱されることにより前記締結部材の頭部から抜けるように半径方向に開く、上記の一対の腕部に互いに係合し、かつ、所定の温度に加熱されたときにはこの係合が解除される係合部を設けた、ドーナツ状のワッシャとすることにより、所定の温度に加熱されるまでは、スプリングワッシャに比べて大きい負荷に耐えられる構造とすることができる。
【0041】
このような、所定の温度以上に加熱するとねじによる締結が無効となる易分解締結部を有する物品に対して、本発明の分解方法を実施すると、加熱により機能する部品が、易分解締結部の中でも比較的小型(従って熱容量が小さい)で、かつ、分解対象物品の表面近くに存在するワッシャであるため、比較的小さい熱量で、かつ、迅速な分解処理が可能となる。
【0042】
図3は、図2に該当する箇所の、モデル的に図示したノズルから過熱蒸気を供給することによって所定の温度以上に加熱するとねじによる締結が無効となる易分解締結部が加熱によって、ねじによる締結が無効となった状態を示す拡大部分断面図を示す。この図では、形状記憶合金からなるワッシャ10が加熱された結果、その形状記憶性により拡径してその内径が雄ねじ17頭部の17bの最外径より大きくなったため、圧縮コイルばね27の働きで、ワッシャ10、円環座金15及びパネルカバー(被締結部材)22がプラスチックシャーシ21から外れ、さらに液晶パネル本体23がプラスチックシャーシ21から離脱可能となった状態を示す。
【0043】
本発明の物品の分解方法では、分解のための加熱を、上記易分解締結部及びその周辺に、好ましくは、上記易分解締結部及びその周辺にのみ過熱蒸気を供給して行う必要がある。物品の易分解締結部以外の場所に対して加熱を行っても分解できない上、加熱された部品のリサイクル性が損なわれる場合がある。また、加熱空気、加熱窒素等と比較して、熱容量が大きい過熱蒸気を用いることにより、充分な熱量を短時間で供給することが可能となり、分解を迅速に行うことができるうえ、通常の水蒸気(100℃以下、通常高くても90〜80℃程度)を用いる場合に比べると、同じ熱量を与えるのに生じる凝固水の量が少なくて済むので、自然乾燥ないし温風乾燥で充分蒸発させることができ、このとき廃水処理が不要となる。
【0044】
このように、分解のための加熱を、上記易分解締結部及びその周辺に過熱蒸気を供給して行う場合に集束された過熱蒸気の気流を用いることができる。例えば高圧ボイラーからの過熱蒸気(100℃超の加圧蒸気)を細径のノズルから吹き出させることによって容易に行うことができる。また、一般に市販されている水蒸気調理器の過熱水蒸気製造ユニットを利用して、あるいは、同等のものを製作して利用してもよい。
【0045】
なお、分解作業を手動で行う場合には、蒸気を噴出するノズルへの過熱水蒸気の供給をオンオフするスイッチ、把持性を向上させ、やけどを防止するためのハンドル部等をそなえたノズル操作部等を備えたノズル部を用いることが望ましい。
【0046】
ここで、本発明者等は、市販の水蒸気調理器の過熱水蒸気製造ユニットを利用する過熱水蒸気発生装置に内径が4mmのノズルを接続し、ノズルへ500℃程度の過熱水蒸気を供給したところ、ノズルから8cm離れたところに直径2cm程度の収束した100℃超〜110℃程度の過熱蒸気流を供給することができ、このとき、上述した易分解締結部(分解のための所定の温度が約100℃)を2〜3秒の処理で分解することができ、そのときの易分解締結部周辺への凝結水の発生は極めて少量であり、また、易分解締結部から1.5cm以上離れた箇所の温度上昇は30℃程度以下であり、周辺部への熱による影響が小さいことが確認された。
【0047】
また、過熱水蒸気による上記の気流は、わずかに発生する湯気、及び、気流及び熱による揺らぎ等によって操作者がその方向を視認できるため、目的の易分解締結部およびその周辺のみへ過熱蒸気を供給することが容易である。
【0048】
このため、本発明の分解方法を応用するに当たり、対象の物品の、加熱によって、リサイクル性や安全が損なわれる可能性のある部分及びその周辺には、易分解締結部を設けないことが望ましい。あるいは、そのような箇所での締結が必要な場合には、従来の(通常の)ねじ止めを併用することで対応可能である。
【0049】
このとき、分解対象の物品の易分解締結部周囲には予め易分解締結部を指し示す記号を付しておくと、過熱蒸気を供給する場合に区別が付けやすく、誤操作を効果的に防止できる。さらに、易分解締結部でのみ締結されている物品であっても、その易分解締結部を同様の記号によって示しておくと易分解締結部であることを容易に認識することができるので好ましい。
【0050】
図5には、本出願人による商願2004−70002に係る商標「E−KAITO」と矢印とによって、所定の温度以上に加熱するとねじによる締結が無効となる易分解締結部α1によって組み立てられた物品αの易分解締結部α1に対して、所定の温度以上に加熱するとねじによる締結が無効となる易分解締結部であることを明示した例を示す。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の物品の分解方法は所定の温度以上に加熱するとねじによる締結が無効となる易分解締結部によって組み立てられた物品の分解に好適に応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】所定の温度以上に加熱するとねじによる締結が無効となる易分解締結部によって組み立てられた物品の一例の易分解締結部付近の部分拡大断面図である。
【図2】図1のAで示された部分のさらなる部分拡大断面図である。
【図3】図2に該当する部分の易分解締結部が加熱された結果、ねじによる締結が無効となった状態を示す部分拡大断面図である。
【図4】上記易分解締結部で用いることができる、スプリングワッシャの例10及び10’を示すモデル図である。 (a)スプリングワッシャ10の正面図である。 (b)スプリングワッシャ10の側面図である。 (c)スプリングワッシャ10’の側面図である。
【図5】分解対象の物品の所定の温度以上に加熱するとねじによる締結が無効となる易分解締結部周囲に、易分解締結部であることを示す記号を付した状態を示すモデル図である。
【符号の説明】
【0053】
10,10′ スプリングワッシャの例
15 円環座金
17 雄ねじ(締結部材)
17a ねじ部(雄ねじ部)
22 パネルカバー(被締結部材)
22a 挿通孔
25 パネルケース(本体)
25c 雌ねじ部
27 圧縮コイルばね(圧縮ばね)
α 所定の温度以上に加熱するとねじによる締結が無効となる易分解締結部を有する物品
α1 物品αの易分解締結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじによる締結が可能で、かつ、所定の温度以上に加熱すると該ねじによる締結が無効となる易分解締結部によって組み立てられた物品の分解方法において、
上記加熱を、上記易分解締結部及びその周辺に過熱蒸気を供給して行うことを特徴とする物品の分解方法。
【請求項2】
上記物品が、その易分解締結部付近に該易分解締結部の存在を示す標識がある物品であることを特徴とする請求項1に記載の物品の分解方法。
【請求項3】
集束された過熱蒸気の気流を用いることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の物品の分解方法。
【請求項4】
上記易分解締結部が、上記物品を構成する部材に一体化した雌ねじ部、雄ねじ、及び、該雄ねじの雄ねじ部の外径よりも大きく、かつ、該雄ねじの頭部の最大径よりも小さい内径を有し、所定の温度以上に温度に加熱されると変形して該内径が該雄ねじの頭部の最大径と同等または該頭部の最大径より大きくなるワッシャとを有することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の物品の分解方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−21339(P2007−21339A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−205601(P2005−205601)
【出願日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(500465444)株式会社ユニオン精密 (30)
【出願人】(000125369)学校法人東海大学 (352)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】