説明

物品の情報管理装置及び情報管理方法

【課題】本発明は、物品の情報管理を行なうにあたり、予め物品側に個別情報を付与しても、物品計測時にはこの付与した個別情報が悪影響を及ぼさないようにする物品の情報管理装置及び情報管理方法を提供することを主な目的とする。
【解決手段】各計測部の計測器221a、222a、223aは、透明インクで付与されたバーコード情報BDを検出せず、各々計測を行なう。すなわち、物品Wをなんら情報を付与していない天然の状態と認識して、物品の計測を行なう。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば蜜柑、林檎、柿、梨、桃、メロン等の果菜物や農作物、魚介類等、物品の所定項目を計測し個々に選別を行なう、物品の個有情報及び選別情報等の情報管理装置及び情報管理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、果菜物や農作物、魚介類等の物品は、生産地から消費地までの搬送経路の途中で、所定項目が計測され、その計測結果により選別が行われる。この選別は、一般に選別装置で行われ、選別装置に設定した計測器等によって、所定項目ごとに個々の物品が計測され、その計測結果に基づき物品が選別される。
【0003】こうした選別作業では、通常、複数の項目で計測が行われるため、複数の計測結果を各物品に対応させて管理する必要がある。よって、従来は、物品を搬送する選別装置側の搬送コンベアや搬送トレイに固有番地を設定して、この固有番地に対応させて各物品の選別情報を管理していた(特許第2763177号公報等)。
【0004】しかし、このような情報管理を行なった場合、物品が固有番地を有する搬送コンベアや搬送トレイから降ろされ、固有番地と関連がなくなった時(例えば市場でのセリ時や販売店での販売時)等には、選別情報などの情報を有効に情報管理できなくなるという問題があった。
【0005】よって、選別装置側に固有番地を設定することなく、物品側に個有情報を付与して、選別装置の搬送コンベアや搬送トレイとは関係なく、物品側で情報管理を行なうことが考えられる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】この点、物品側に個有情報を付与する方法として、予め物品にIDタグなどの情報記録媒体を付設し、この情報記録媒体に個々の個有情報を付与することが考えられる。
【0007】しかし、物品に情報記録媒体を付設して物品の計測を行なう場合には、例えば外観計測の場合に、情報記録媒体を付設した物品の外表面が必然的に情報記録媒体で覆われるため、その部分の外観情報を得ることができず、充分な外観計測ができないという問題が生じたり、また重量測定の場合に、情報記録媒体自体に重量があり且つ均一重量でないため、物品の重量計測で誤差が生じてしまい、充分な重量計測ができないという問題が生じたりする恐れがあった。
【0008】本発明は、以上のような問題点に鑑み発明されたもので、物品の情報管理を行なうにあたり、予め物品側に個別情報を付与しても、物品計測時にはこの付与した個別情報が悪影響を及ぼさないようにする物品の情報管理装置及び情報管理方法を提供することを主な目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1記載の発明は、物品の情報を管理する物品の情報管理装置において、物品自体に直接個有情報を付与する個有情報付与手段と、個有情報を付与した物品を計測し、物品の選別情報を得る選別情報検出手段と、個有情報に対応させて、選別情報を物品自体に付与する選別情報付与手段と、物品自体に付与された情報を検出し、物品の情報を管理する情報管理手段とを備えるものである。
【0010】本発明の請求項2記載の発明は、請求項1記載の物品の情報管理装置において、前記個有情報付与手段が、所定液体を直接物品に付着させて情報付与を行なうものである。
【0011】本発明の請求項3記載の発明は、請求項2記載の物品の情報管理装置において、前記所定液体が透明インクであるものである。
【0012】本発明の請求項4記載の発明は、請求項2記載の物品の情報管理装置において、前記所定液体が磁気インクであるものである。
【0013】本発明の請求項5記載の発明は、請求項1記載の物品の情報管理装置において、前記個有情報付与手段が、所定粉末を直接物品に噴射して情報付与を行なうものである。
【0014】本発明の請求項6記載の発明は、請求項5記載の物品の情報管理装置において、前記所定液体が磁気粉末であるものである。
【0015】本発明の請求項7記載の発明は、物品の情報を管理する物品の情報管理方法において、物品自体に直接個有情報を付与する個有情報付与ステップと、前記個有情報付与ステップで個有情報を付与した物品を計測し、物品の選別情報を得る選別情報検出ステップと、個有情報に対応させて、前記選別情報検出ステップで得た選別情報を物品自体に付与する選別情報付与ステップと、物品自体に付与された情報を検出し、物品の情報を管理する情報管理ステップとを備える物品の情報管理方法である。
【0016】
【発明の作用及び効果】請求項1記載の物品の情報管理装置によると、個有情報付与手段で物品自体に直接個有情報を付与し、選別情報検出手段で個有情報を付与した物品を計測して物品の選別情報を得て、選別情報付与手段でその選別情報を個有情報に対応させて物品自体に付与し、情報管理手段でこれら物品に付与した情報を検出して、物品の情報管理を行なうことにより、物品側である物品自体に、予め個有情報を直接付与した上で物品を計測して、選別情報を得て、この選別情報をさらに物品自体に付与して、物品の情報管理を行なうことができる。
【0017】よって、物品の情報管理を行なうにあたり、予め物品側に個別情報を付与しても、IDタグ等の情報記憶媒体を用いないため、物品計測時には個別情報が悪影響を及ぼさないようにすることができる。
【0018】請求項2記載の物品の情報管理装置によると、個有情報付与手段が、所定液体を物品に付着させて情報付与を行なうため、例えば物品の重量計測を行なう場合に、物品に付着させる所定液体の重量は、IDタグに比して極めて軽量であるため、正確な計測結果を得ることができる。
【0019】また、付与後もIDタグ等の情報記憶媒体を用いたもののように物品から離脱・剥離する恐れがなく、安定した情報管理を行なうことができる。
【0020】請求項3記載の物品の情報管理装置によると、所定液体が透明インクであるため、物品自体に直接情報を付与しても、外観上、物品に情報を付与したことは肉眼で視認することはできない。よって、例えば物品の外観計測を行なう場合に、情報付与部分も含めて物品全体を正確に計測することができるため、正確な計測結果を得ることができる。
【0021】請求項4記載の物品の情報管理装置によると、所定液体が磁気インクであるため、物品自体に直接情報を付与しても、磁気ヘッドなどで電気的に容易且つ確実に情報を検出することができる。よって物品の情報管理をより確実に行なうことができる。
【0022】請求項5記載の物品の情報管理装置によると、個有情報付与手段が、所定粉末を直接物品に噴射して情報付与を行なうため、例えば物品の重量計測を行なう場合に、物品に付着する所定粉末の重量は、IDタグに比して極めて軽量であるため、正確な計測結果を得ることができる。
【0023】また、粉末には液体のように物品への浸透性はないため、情報付与による物品の品質悪化を防ぐことができる。
【0024】請求項6記載の物品の情報管理装置によると、所定粉末が磁気粉末であるため、物品自体に直接情報を付与しても、磁気ヘッドなどで電気的に容易且つ確実に情報を検出することができる。よって物品の情報管理をより確実に行なうことができる。
【0025】請求項7記載の物品の情報管理方法によると、個有情報付与ステップで物品自体に直接個有情報を付与し、選別情報検出ステップで個有情報を付与した物品を計測して物品の選別情報を得て、選別情報付与ステップでその選別情報を個有情報に対応させて物品自体に付与し、情報管理ステップでこれら物品自体に付与した情報を検出して、物品の情報管理を行なうことにより、物品側である物品自体に、予め個有情報を直接付与した上で物品を計測して、選別情報を得て、この選別情報をさらに物品自体に付与して、物品の情報管理を行なうことができる。
【0026】よって、物品の情報管理を行なうにあたり、予め物品側に個別情報を付与しても、IDタグ等の情報記憶媒体を用いないため、物品計測時には個別情報が悪影響を及ぼさないようにすることができる。
【0027】
【実施例】本発明の実施例を以下図面に基づいて詳述する。図1に、本発明の一例である物品(果菜物)の情報管理装置Aを示す。この情報管理装置Aは、生産部10から選別部20、市場部30、販売部40、消費部50までの物品の流通(搬送)経路において、物品W自体に、直接各種情報を読書きすることで物品の情報管理を行なうものである。
【0028】具体的には、まず、生産部10で、天然の物品Wに個有情報D1を付与する。この個有情報D1は個々の物品Wごとに異なり、背番号のように各物品Wを識別する機能を有する。また同時に、生産情報D2も付与する。この生産情報D2には、物品Wの生産者や生産地、収穫時期等の情報が含まれる。
【0029】次に、選別部20で、生産部10から搬送されてきた物品Wに選別情報D3を付与する。この選別情報D3は、物品Wを後述する計測器で計測した情報(大きさ、重さ、外観及び糖酸度等の情報)に基づき算出された情報で、物品Wを選別する情報である。さらに選別部20では、物品Wに付与した個有情報D1、選別情報D3を読取り、物品Wの選別を行なう。
【0030】次に、市場部30で、選別部20から搬送されてきた物品Wから個有情報D1、選別情報D2、生産情報D3を読取り、これらの情報をセリの際の参考情報として用いる。これらの情報を参考にして物品Wはセリ落とされる。さらにセリ落とされた物品Wに、競売情報D4を付与する。この競売情報D4には、競売価格はもちろんのこと、競売日時や他の物品の平均競売価格との相対的な価格差(偏差価格)等の情報が含まれる。
【0031】次に、販売部40で、市場部30から搬送されてきた物品Wから個有情報D1、生産情報D2、選別情報D3、競売情報D4を読取る。これら情報は消費者が販売部40で物品Wを購入する際の判断情報となる。
【0032】次に、消費部50で、販売部40から搬送されてきた物品Wから個有情報D1、生産情報D2、選別情報D3、競売情報D4を読取る。これら情報により消費者は賞味日時など最適な時期を判断して物品を消費する。
【0033】このように本例の情報管理装置Aでは、物品Wに直接付与される各種情報が、物品Wを取り扱う各部に応じて有効に読書きされ、それぞれの要求に応じて様々に使用・処理される。よって、物品の搬送(流通)が迅速且つ適切に行われる。
【0034】なお、本例において特徴的であるのは、物品W自体に、直接各種情報を読書きすることで情報管理を行なうことである。この各種情報の情報管理について、さらに選別部20を具体的に示した図2により説明する。
【0035】図2に示す選別部20では、搬送コンベアを備えた選別装置200で物品Wの選別作業を行なう。この選別装置200は、物品を選別装置に供給する供給区間210と、物品の所定項目を計測して選別情報を得る計測区間220と、物品を選別情報によって個々に振分ける振分区間230と、振分けた物品を製函した箱体に収納して搬出する搬出区間240とにより構成される。
【0036】まず、供給区間210では、生産部10で個有情報D1や生産情報D2が付与された物品Wを、搬送コンベア201上に供給する。この個有情報D1や生産情報D2は、後述する情報付与ヘッドによって、物品W自体に透明インクでバーコード情報BDとして直接付与され、肉眼では、物品Wにこれら情報が付与されていることが視認できないように設定される。
【0037】なお、ここで透明インクについて説明すると、透明インクとは、例えば紫外線等の励起光を照射すると蛍光を発光する、ZnO/Znを主顔料とする蛍光インク等のことをいい、通常肉眼では視認できないが、紫外光に照射され発光した蛍光を、受光検出手段で検出することにより読取りが可能となるインクのことをいう。また、赤外光を吸収するシニアン系色素など、赤外領域に吸収域をもつ色素を含む赤外吸収インク等も、赤外光を照射した際、反射されない赤外光を受光検出手段で検出することで読取りが可能となるため、透明インクに含まれる。すなわち、透明インクとは、物品に付与した際に、直接肉眼で視認できないが、特殊の検出手段により認識できる特殊なインクのことをいう。
【0038】次に、供給区間210で選別装置200に供給された物品Wは、搬送コンベア201で計測区間に搬送される。計測区間220では、それぞれ重量計測部221、外観計測部222、糖酸度計測部223で、物品Wの重量、外観、糖酸度を計測する。
【0039】各計測部221、222、223の具体的な計測方法については詳述しないが、各計測部の計測器221a、222a、223aは、透明インクで付与されたバーコード情報BDを検出せず、各々計測を行なう。すなわち、計測器221a、222a、223aは、物品Wをなんら情報を付与していない天然の状態と認識して、物品の計測を行なう。
【0040】ただし、各計測部221、222、223で得られた計測結果は、物品Wの個有情報D1に関連させて情報処理装置C20に入力、処理しなけらばならないため、各計測部221、222、223には、別途、透明インクによるバーコード情報BDを検出し、物品の個有情報D1を読取る情報読取りヘッド221b、222b、223bが設置されている。
【0041】情報読取りヘッド221b、222b、223bは、後述のように、肉眼で視認できない透明インクのバーコード情報BDを検出し、物品の個有情報D1を読取るように構成されている。そして、それぞれの計測部の計測器221a、222a、223aと共に、情報処理装置C20に連結されている。
【0042】情報処理装置C20では、各計測部221、222、223で計測した個々の物品の計測結果に基づき選別情報を演算する。この演算の際、情報処理装置C20は、個々の個有情報D1を基に各計測結果を処理し、個々の物品の選別情報D3を算出する。
【0043】各計測部221、222、223で計測の終了した物品Wは、選別情報書込み部224に搬送される。この選別情報書込み部224では、情報処理装置C20で算出された個々の選別情報D3を、対応する物品Wに付与する。この選別情報D3の付与の際にも、選別情報書込み部224に設置した情報読取りヘッド224bで物品の個有情報D1を検出し、対応する物品であることを確認した上で、情報付与ヘッド224cで物品Wに選別情報D3を直接付与する。この選別情報D3も、個有情報D1や選別情報D2と同様に、透明インクのバーコード情報BDとして付与され、肉眼では視認できないように付与される。
【0044】このように個別情報D1、選別情報D2等が付与された物品Wは、次に、搬送コンベア201で振分区間230に搬送される。振分区間230では、搬送分岐部に設置した振分情報読取りヘッド231、232、233、234によって物品Wに付与された個別情報D1、選別情報D2を読取り、物品Wをこれら情報に応じてそれぞれの搬送路に振分ける。
【0045】なお、これらの振分情報読取りヘッド231、232、233、234も、前述の情報読取りヘッド221b、222b、223bと同様に、透明インクのバーコード情報BDを検出し、物品Wに付与された個別情報D1、選別情報D2を読取るように構成されている。
【0046】それぞれの搬送路に振分けられた物品Wは、次に搬出区間240に搬送される。搬出区間240では、物品Wをそれぞれの搬送路に設置した箱詰部241で箱体Xに収納し、選別装置200外に搬出し市場部30に出荷する。
【0047】このように選別部20では、選別装置200により物品Wの選別作業を行ない、物品Wの情報管理を行なう。
【0048】本例の物品Wの情報管理は、全ての情報が、透明インクのバーコード情報BDで物品Wに直接付与され、外観上全く肉眼で視認できない状態で行われるため、常に各種情報を物品に一致させて情報管理を行ないつつ、計測区間などで物品自体を計測する際には、物品の計測結果を正確に得ることができる。また、こうした物品Wの情報管理方法によると、物品の外表面も傷つけることもないため、物品Wの商品としての価値も充分に確保することができる。
【0049】なお、物品の個有情報D1や生産情報D2を生産部10ではなく選別部20で付与する場合は、二点鎖線で示すように、供給区間210に、別途個有情報D1や生産情報D2を付与する情報付与ヘッド221を設置してもよい。
【0050】次に、図3及び図4で、物品Wに透明インクのバーコード情報BDを付与する情報付与ヘッドH1、H2(221、224c等)の詳細構造について説明する。なお、図3、図4は、それぞれ異なったタイプの情報付与ヘッドを示している。
【0051】図3の情報付与ヘッドH1は、透明インクCIを、転動ローラ60を利用して物品Wに直接塗布するものであり、具体的には転動ローラ60を直接物品に接触させて、物品Wの外表面に透明インクC1によるバーコードパターンを転写印刷するものである。
【0052】この情報付与ヘッドH1は、ヘッドシャフト61の先端に設けた印字部62と、印字部62に透明インクCIを供給するインクタンク63によって構成され、さらに印字部62は、ヘッドシャフト61に固定した矩形状のヘッド基部64と、ヘッド基部内部でスプリング65を介してフローティング支持された板状のローラ支持部66と、板状のローラ支持部66で支持された転動ローラ60とからなる。
【0053】ヘッド基部64とローラ支持部66との間隙には、インクタンク63に連通したインク室67が設定され、転動ローラ60に常に透明インクCIを供給するように構成される。また、インク室67内の転動ローラに対向する位置には、情報処理装置(図示せず)から送信された信号Sを受け、転動ローラ60に透明インクCIをバーコードパターンで付着させる印字アクチュエータ68が設けられる。
【0054】図3の情報付与ヘッドによる物品Wへの情報の付与方法は、まず、情報処理装置(図示せず)で情報付与ヘッドH1に物品Wへの情報付与信号Sを送信すると、印字アクチュエータ68が、送信された信号により転動ローラ60のローラ面60aに、透明インクCIをバーコード情報BDのバーコードパターンで付着させる。
【0055】そして、物品Wが搬送コンベア201で情報付与ヘッドH1の位置に搬送されると、転動ローラ60が、物品Wに接触し転動しながらローラ面60aに付着されている透明インクCIのバーコードパターンを、物品Wの外表面に転写印刷する。
【0056】こうして、この情報付与ヘッドH1は、物品Wの外表面に透明インクCIのバーコードパターンを直接印刷し、外観上、肉眼では認識できないバーコード情報BDを物品Wに付与する。
【0057】なお、転動ローラ60はフローティング支持されているため、物品Wの形状が、図3のように球形であっても、また多少の凹凸であったとしても、常に安定してバーコードパターンを物品Wに転写印刷することができる。よって、物品Wの形状に限定されることなく、確実にバーコード情報BDの付与を行なうことができる。
【0058】次に、図4の情報付与ヘッドH2は、透明インクCIを物品Wに噴射して物品Wに付着させるインクジェット方式を用いたものであり、具体的には微細な多数のインク粒子CIaを物品Wに噴射して、物品Wの外表面に透明インクCIによるバーコードパターンを噴射印刷するものである。
【0059】この情報付与ヘッドH2も、ヘッドシャフト70の先端に設けた印字部71と、印字部71に透明インクCIを供給するインクタンク72から構成され、さらに印字部71はヘッドシャフト70に固定した矩形状のヘッド基部73と、ヘッド基部内に積層して設けられたインク室板74、ノズル板75、ピエゾ素子76とからなる。このうちインク室板74とノズル板75には、透明インクCIを蓄えるインク室74aや透明インクCIを放出するノズル部75aが形成される。
【0060】図4の情報付与ヘッドH2による物品Wへの情報の付与方法は、まず、情報処理装置(図示せず)で情報付与ヘッドH2に物品Wへの情報付与信号Sを送信すると、送信された情報により、ピエゾ素子76が印加電圧を受け、インク室74aを加圧する。
【0061】そして、加圧されたインク室74aから透明インクCIがノズル部75aを通過して、微細なインク粒子CIaとなって物品Wに噴射され、噴射された透明インクCIは、バーコードパターンで物品Wの外表面に付着し、物品Wに噴射印刷される。
【0062】こうして、図4の情報付与ヘッドH2でも、物品Wの外表面に透明インクCIによるバーコードパターンを印刷し、外観上、肉眼では認識できないバーコード情報BDを物品Wに付与する。
【0063】このインクジェット方式を用いた情報付与ヘッドH2は、微細なインク粒子で透明インクCIを物品Wに噴射するため、高速印刷や曲面印刷を行なうことが容易であり、情報付与を瞬時に行なう場合や、物品の形状にバラツキがあるような場合に効果を発揮する。
【0064】以上、二つの情報付与ヘッドH1、H2を説明したが、このほか文字を物品に印刷できるものであれば、これらの形式に限定されず、熱転写式やレーザー式などプリンター機器で用いられる方式を用いて情報付与ヘッドを構成してもよい。
【0065】次に、図5及び図6により、情報読取りヘッドRH(221b、222b、223b、224b等)の構造及び情報の読取り方法について説明する。
【0066】図5は、物品Wの外観を計測する外観計測部222を説明する図である。外観計測部222では、物品の外観を画像データとして検出する画像計測ヘッド(計測器)222a、透明インクのバーコード情報BDを検出する情報読取りヘッドRH(222b)、透明インクに紫外光を照射する光源Lが設けられる。
【0067】画像計測ヘッド222aは、画像処理部80、制御部81に結線され、画像計測ヘッド222aで検出した画像データを画像処理部80に送信し、デジタルデータに変換した上で、制御部81に送信するよう構成される。
【0068】画像計測ヘッド222aで検出した画像データを示した図が図6(a)である。この図から分かるように、画像計測ヘッド222aの画像データでは、物品(果菜物)Aの外観は全て検出するものの、透明インクCIによるバーコードパターンは検出しない。このため、バーコード情報BDの付与(印刷)された位置の外観も確実に計測できる。
【0069】よって、バーコード情報BDを直接物品Wに付与した場合でも、画像計測ヘッド222aで、物品Wの全ての外観情報を確実に検出することができる。
【0070】一方、情報読取りヘッドRHは、識別処理部82、制御部83に結線され、情報読取りヘッドRDで検出したバーコードパターンを、識別処理部82に送信して識別を行ない、制御部83に送信するように構成される。
【0071】情報読取りヘッドRHは、バーコードパターンを検出するため、内部に光学フィルタ84とエリアセンサ85を設けている。光学フィルタ84は、光源Lの紫外光を受け透明インクCIが発光した際に発せられる蛍光の波長の光を透光し、それ以外の光の波長を遮光するように構成され、エリアセンサ85は、その光学フィルタ84を透光してきた光を検出し、この検出結果を識別処理部82に出力するように構成される。
【0072】情報読取りヘッドRHで検出した検出データ(バーコードパターン)を示した図が図6(b)である。この図から分かるように、情報読取りヘッドRHの検出データは、画像計測ヘッド222aの画像データ(図6(a))とは逆に、物品Wに付与されたバーコードパターンのみを検出して、物品Wの外観は検出しない。このため、バーコード情報BDによって付与された情報のみを正確に検出する。
【0073】このため、物品Wに透明インクのバーコード情報BDとして付与された個有情報D1、生産情報D2等は、正確に検出される。
【0074】以上のように、外観計測部222において、画像計測ヘッド222aでは、バーコード情報BDを検出せずに、なんら情報を付与していない状態として物品Wを計測し、情報読取りヘッドRHでは、バーコード情報BDを検出することができるため、物品Wの外観計測を正確に行ないつつも、個有情報D1、生産情報D2等、各種情報を物品W自体に直接付与して情報管理することができる。
【0075】図7(a)、図7(b)は、個有情報D1、生産情報D2に加え、さらに選別情報D3、競売情報D4を物品Wにバーコード情報BDとして付与した状態の、情報読取りヘッドRHの検出データを示す図である。
【0076】これらの図から分かるように、物品Wに付与される情報は、全ての情報D1、D2、D3、D4が、バーコード情報BDとして物品Wの外表面に積重して、個別に識別できるように物品Wに付与される。よって、販売部40や消費部50など、搬送(流通)経路の後半では、全ての情報を自由に物品Wから読取ることができるため、消費者にとっては、物品の全ての情報を購入の際に知ることができ、適切な判断を行なうことができる。
【0077】なお、透明インクCIで各種情報が付与された物品Wが、消費者にそのまま食されるような食料品である場合には、透明インクCI自体を人体に無害なものにするか、または、物品の情報管理が終了した後に、物品から透明インクを洗浄して除去するのが望ましい。
【0078】次に、磁気インクMIで物品Wの情報管理を行なう他の実施例について説明をする。情報管理装置Aや、選別部20の選別装置200、情報付与ヘッドH1、H2の構造(図1、図2、図3、図4)については、透明インクCIが磁気インクMIに代わるだけで、前述の実施例と全て同様であるため、図面や詳細な説明は省略する。
【0079】ここで磁気インクMIについて説明すると、磁気インクとは、磁性材料の粒子を含んだインクのことであり、磁気インク文字読取り装置などの磁気ヘッドで、磁気インクで印字した文字を認識させると、その文字で描かれた情報を読取ることができるインクである。
【0080】通常、磁気インクMIは人間でも読めるように黒や茶色のものからなるが、本例では、特開平8−180396公報で提案されたような不可視の磁気インクを用いて情報管理を行なう。
【0081】すなわち、磁気インクMIを用いて物品Wに直接情報を付与する本例も、前述の実施例と同様に、肉眼では物品Wに情報を付与したことが視認できないため、計測器で物品を計測した場合には、なんら情報を付与していない物品を計測した場合と同様の計測結果が得られる。
【0082】なお、重量計測のみを重視するような情報管理装置においては、通常の着色された磁気インクを用いて、情報を付与してもよい。
【0083】本例では、情報読取りヘッドRHの構造及び情報読取り方法が前述の実施例と異なる。この本例の情報読取りヘッドRH1の構造及び情報読取り方法について、図8により説明する。
【0084】図8も図5と同様に物品Wの外観を計測する外観計測部1222を示した図である。この外観計測部1222は、画像計測ヘッド(計測器)1222aと、磁気インクMIのバーコード情報BDを検出する情報読取りヘッドRH1で構成される。
【0085】画像計測ヘッド(計測器)1222aは、前述の実施例と同様に、画像処理部180、制御部181に結線され、画像計測ヘッド(計測器)1222aで検出した画像データを画像処理部180に送信し、デジタルデータに変換した上で、制御部181に送信するよう構成される。
【0086】一方、情報読取りヘッドRH1は、そのまま制御部183に結線され、通常の磁気ヘッドと同様に磁気インクMIの磁化部分を検出して、物品Wに付与されたバーコードパターンを、制御部183に送信するように構成される。
【0087】このように本例でも、磁気インクMIを用いて物品Wにバーコード情報BDを付与することにより、前述の実施例と同様に、画像計測ヘッド1222aでは、バーコード情報BDを検出せずに、なんら情報を付与していない天然の状態として物品Wを計測し、一方、情報読取りヘッドRH1では、バーコード情報BDを検出するため、物品Wの計測を正確に行ないつつも、各種情報を物品W自体に直接付与して情報管理することができる。
【0088】なお、本例では磁気インクMIを用いて、物品Wに各種情報を直接付与したが、インクを媒体とするのではなく、粉末である磁気粉末を噴射式の情報付与手段を用いて、物品に直接噴射して各種情報を物品に付与することも考えられる。
【0089】この場合には、磁気粉末が物品表面から容易に飛散しないように、定着剤などを混合して、物品に噴き付ける必要があるが、液体(インク)のような浸透性はないため、物品の品質悪化の恐れをより少なくできる。
【0090】このように磁気インクや磁気粉末のような磁気を持った流体で、情報を物品に直接付与することにより、磁気ヘッドなどの情報検出手段で電気的に容易に情報を検出することができるため、前述の透明インクで情報を付与するものよりは、確実に情報管理を行なうことができる。
【0091】なお、本例の磁気インクや磁気粉末についても、物品が、消費者にそのまま食されるような食料品である場合には、物品の情報管理が終了した後に、物品から磁気インクや磁気粉末を洗浄して除去することが望ましい。
【0092】以上のように、本実施例は構成、作用することにより、以下の効果を奏する。
【0093】まず、個有情報を付与する情報付与ヘッド211で物品W自体に直接個有情報D1を付与し、計測器221a、222a、223aで個有情報D1を付与した物品Wを計測して、情報処理装置C20で選別情報D3を算出し、選別情報D3を付与する情報付与ヘッド224cでこの選別情報D3を物品W自体に付与して、情報読取りヘッド231、232、...でこれらの情報を読取り、物品Wの情報管理を行なうことにより、物品W自体に、予め個有情報D1を直接付与した上で物品を計測して、選別情報D3を得て、この選別情報D3をさらに物品W自体に付与して、物品Wの情報管理を行なうことができる。
【0094】よって、物品Wの情報管理を行なうにあたり、予め物品W側に個別情報D1を付与しても、IDタグ等の情報記憶媒体を用いないため、物品計測時には個別情報D1が悪影響を及ぼさないようにすることができる。
【0095】また、個有情報を付与する情報付与ヘッド211が、透明インクCIや磁気インクMIなどの液体を物品Wに付着させて情報付与を行なうことにより、物品Wの重量計測を行なう場合に、物品Wに付着させる液体の重量は、IDタグなどに比して極めて軽量であるため、正確な計測結果を得ることができる。
【0096】また、このような液体を物品に付着させて情報付与を行なうことにより、情報付与後もIDタグ等の情報記憶媒体を用いたもののように物品Wから離脱・剥離する恐れがなく、安定した情報管理を行なうことができる。
【0097】特に、この液体が透明インクCIの場合には、物品W自体に直接情報を付与しても、外観上、物品Wに情報を付与したことが肉眼で視認することはできないため、物品Wの外観計測を行なう場合に、情報付与部分も含めて物品全体を正確に計測することができ、正確な計測結果を得ることができる。
【0098】一方、この液体が磁気インクMIの場合には、物品W自体に直接情報を付与しても、磁気ヘッドなどで電気的に容易且つ確実に情報を検出することができるため、物品Wの情報管理をより確実に行なうことができる。
【0099】また、磁気粉末のような粉末で情報付与した場合には、粉末に液体のような物品への浸透性はないため、情報付与による物品Wの品質悪化を防ぐことができる。
【0100】なお、以上の実施例では、情報の識別方法としてバーコード方式を採用したが、この他、文字や記号等、表象形態で識別機能がある識別方法なら、どのような方法を採用しても良い。
【0101】以上、いくつかの実施例について説明したが、本発明は、これら実施例に限定されるものではなく、その他、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、適宜詳細構造を変更したものも包含するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】物品(果菜物)の情報管理装置を説明する全体図。
【図2】選別部の選別装置を説明する概略図。
【図3】情報付与ヘッドの構造断面図。
【図4】他の情報付与ヘッドの構造断面図。
【図5】外観計測部を説明する図。
【図6】画像計測ヘッドの画像データ(a)と情報読取りヘッドの検出データ(b)を示す図。
【図7】バーコード情報の検出データ(a)(b)を示す図。
【図8】磁気インクを用いた実施例の外観計測部を説明する図。
【符号の説明】
A…情報管理装置
W…物品
CI…透明インク
BD…バーコード情報
211…情報付与ヘッド(個有情報付与手段)
224c…情報付与ヘッド(選別情報付与手段)
221a,222a,223a…計測器
221b,222b,223b,224b,RH,RH1…情報読取りヘッド
231,232,233,234…振分情報読取りヘッド
H1,H2…情報付与ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】物品の情報を管理する物品の情報管理装置において、物品自体に直接個有情報を付与する個有情報付与手段と、個有情報を付与した物品を計測し、物品の選別情報を得る選別情報検出手段と、個有情報に対応させて、選別情報を物品自体に付与する選別情報付与手段と、物品自体に付与された情報を検出し、物品の情報を管理する情報管理手段とを備える、物品の情報管理装置。
【請求項2】前記個有情報付与手段が、所定液体を直接物品に付着させて情報付与を行なう、請求項1記載の物品の情報管理装置。
【請求項3】前記所定液体が透明インクである、請求項2記載の物品の情報管理装置。
【請求項4】前記所定液体が磁気インクである、請求項2記載の物品の情報管理装置。
【請求項5】前記個有情報付与手段が、所定粉末を直接物品に噴射して情報付与を行なう、請求項1記載の物品の情報管理装置。
【請求項6】前記所定液体が磁気粉末である、請求項5記載の物品の情報管理装置。
【請求項7】物品の情報を管理する物品の情報管理方法において、物品自体に直接個有情報を付与する個有情報付与ステップと、前記個有情報付与ステップで個有情報を付与した物品を計測し、物品の選別情報を得る選別情報検出ステップと、個有情報に対応させて、前記選別情報検出ステップで得た選別情報を物品自体に付与する選別情報付与ステップと、物品自体に付与された情報を検出し、物品の情報を管理する情報管理ステップを備える、物品の情報管理方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2001−347229(P2001−347229A)
【公開日】平成13年12月18日(2001.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−171459(P2000−171459)
【出願日】平成12年6月8日(2000.6.8)
【出願人】(390008305)石井工業株式会社 (39)
【Fターム(参考)】