説明

物品の検査のための方法および装置、EUVリソグラフィレチクル、リソグラフィ装置およびデバイスを製造する方法

【課題】EUVリソグラフィレチクルといった物品の汚染物質粒子を検出するための検査方法を提供する。
【解決手段】検査方法は、物品に蛍光染料物質を塗布することと、蛍光染料物質を励起するのに適した波長における放射を用いて物品を照明することと、第1の放射とは異なる波長における蛍光染料による第2の放射の放出について物品をモニタリングすることと、第2の放射を検出した場合には汚染を表す信号を生成することとを含む。一例では、低親和力コーティングといった手段がレチクルに塗布されて、染料分子に対する親和力を減少する一方で、染料分子は物理または化学吸着によって汚染物質粒子に結合する。染料は、疎水性または親水性によって高められる蛍光挙動を有するように選択されてよく、また、汚染物質表面はバッファコーティングによって適宜処理される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本発明は、物品の検査に関連し、また、例えばリソグラフィの分野においてパターン付き物品の検査に適用されうる。この例において、検査されるべき物品は例えばレチクルまたは他のパターニングデバイスでありうる。本発明は特にEUVリソグラフィに用いられるレチクルの検査に開発されたが、かかる適用に限定されない。本発明は、検査に用いる方法および装置と、かかる方法による検査に適応されたレチクルを提供する。
【背景技術】
【0002】
[0002] リソグラフィは、集積回路(IC)および他のデバイスおよび/または構造の製造における重要なステップの1つとして広く認識されている。しかしながら、リソグラフィを使用して作られるフィーチャの寸法が小さくなるにつれて、リソグラフィは小型ICまたは他のデバイスおよび/または構造を製造可能にするためのより重大な要素になりつつある。
【0003】
[0003] リソグラフィ装置は、所望のパターンを基板上、通常、基板のターゲット部分上に付与する機械である。リソグラフィ装置は、例えばICの製造に用いることができる。その場合、ICの個々の層上に形成される回路パターンを生成するために、マスクまたはレチクルとも呼ばれるパターニングデバイスを用いることができる。このパターンは、基板(例えばシリコンウェーハ)上のターゲット部分(例えば1つ以上のダイの一部を含む)に転写することができる。通常、パターンの転写は、基板上に設けられた放射感応性材料(レジスト)層上への結像によって行われる。一般には、単一の基板が、連続的にパターニングされる隣接したターゲット部分のネットワークを含んでいる。
【0004】
[0004] 最新のリソグラフィシステムは、非常に小さいマスクパターンフィーチャを投影する。レチクルの表面上に出現する埃または外来粒子は、結果として得られる製品に悪影響を及ぼしうる。リソグラフィプロセスの前または間にレチクル上に堆積する任意の粒子状物質は、基板上に投影されるパターンにおけるフィーチャを歪ませる可能性がある。したがって、フィーチャサイズが小さいほど、レチクルから除去することが重要になる粒子のサイズも小さくなる。
【0005】
[0005] 大抵の場合、ペリクルがレチクルと共に用いられる。ペリクルは、レチクルの表面の上方にあるフレームに張られうる透明薄層である。ペリクルは、レチクル表面のパターン付き面に粒子が到達することを阻止する。ペリクル表面上の粒子は、焦点面から外れており、露光されるウェーハ上に像を形成しないが、ペリクル表面を可能な限り粒子の無い状態にすることが依然として好ましい。
【0006】
[0006] パターンプリンティングの限界の理論推定値は、式(1)に示されるような解像度についてのレイリー(Rayleigh)基準によって与えることができる:
【数1】


ここで、λは用いられる放射の波長であり、NAPSはパターンのプリントに用いられる投影システムの開口数であり、kはレイリー定数とも呼ばれる、プロセス依存型調節係数であり、CDはプリントされたフィーチャのフィーチャサイズ(またはクリティカルディメンション)である。式(1)から、フィーチャの最小プリント可能サイズの縮小は、3つの方法、すなわち、露光波長λを短くすること、開口数NAPSを大きくすること、またはkの値を小さくすることによって得られることが分かる。
【0007】
[0007] 露光波長を短くする、したがって最小プリント可能なサイズを縮小するために、極端紫外線(EUV)源を使用することが提案されている。EUV放射源は、通常、例えば13.5nmまたは約13nmである約5〜20nmの放射波長を出射するように構成される。したがって、EUV放射源は、微小フィーチャプリンティングの実現に向けての重要なステップを構成する。かかる放射は、極端紫外線または軟X線と呼ばれ、可能な放射源には、例えば例えばレーザ生成プラズマ源、放電プラズマ源、または電子蓄積リングによって供給されるシンクロトロン放射に基づいた放射源が含まれる。
【0008】
[0008] しかし、EUVリソグラフィプロセスにはペリクルは用いられない。これは、ペリクルは結像放射を減衰しうるからである。レチクルが覆われない場合、レチクルは粒子によって汚染される傾向があり、この汚染はリソグラフィプロセスに欠陥を引き起こしうる。EUVレチクル上の粒子は、結像欠陥の主な原因の1つである。EUVレチクル(またはペリクルが用いられない他のレチクル)は、有機および無機粒子の汚染の影響を受ける可能性がある。約20nmほどの小さい粒径がウェーハ上の致命的な欠陥や全く生産量が得られない状態につながりうる。
【0009】
[0009] EUVレチクルを露光位置に移動させる前に、EUVレチクルを検査および洗浄することは、レチクルハンドリングプロセスにおいて重要な面となりうる。レチクルは、通常、検査の結果、汚染が疑われる場合に、または、履歴的な統計に基づいて洗浄される。
【0010】
[0010] レチクルは通常光学技術を用いて検査される。しかし、パターンは粒子と全く同様に光を散乱させる。レチクル表面のパターンは無作為であり(すなわち非周期的)、したがって、散乱光を単に分析するだけでは粒子をパターンから区別する方法はない。この光学技術では、ダイ対ダイ、または、ダイ対データベースといった基準を常に必要とする。さらに、既存の検査ツールは高価であり比較的遅い。
【発明の概要】
【0011】
[0011] したがって、高速で動作可能であり、例えば100nm以下、50nm以下、または20nm以下のサイズの小さいサイズの粒子を検出可能なオブジェクト検査システムが必要である。さらに、EUVリソグラフィ装置に用いられるレチクルといったパターニングデバイスのパターン付き面にある粒子を検出可能な技術が必要である。
【0012】
[0012] 本発明の第1の態様では、汚染物質粒子を検出するための物品、例えばリソグラフィレチクルの検査方法であって、物品に蛍光染料物質を塗布することと、蛍光染料物質を励起するのに適した波長における放射を用いて物品を照明することと、第1の放射とは異なる波長における蛍光染料による第2の放射の放出について物品をモニタリングすることと、第2の放射を検出した場合には汚染を表す信号を生成することとを含む方法が提供される。
【0013】
[0013] 蛍光染料は、汚染物質粒子に結合するように選択されてよく、また、物品は、染料に対するレチクルの親和力を低減することによってコントラストを高めるコーティングまたは他の手段によって適応されうる。架橋分子を用いてもよく、また、架橋分子は、結合の選択性を高めるようにさらに設計される。染料の結合のためにさらに役立っても役立たなくてもよいバッファ分子は、汚染物質粒子上の染料の環境を修飾することができ、それにより、蛍光を1つ以上の特性において修飾させる。例えばその環境のpH、および/または隣接分子の疎水性および親水性に敏感な特定の染料が選択されうる。あるいはまたはさらに、物品の一部は、染料がある場合でも蛍光を抑制するのに有効でありうる。(この抑制は、例えばEUVレチクルとしてのその主要機能を破壊することなく物品表面の修飾によって達成可能である。)
【0014】
[0014] 本発明の第2の態様では、リソグラフィにおいて用いられるレチクルといった物品の検査のための装置であって、検査下のパターニングデバイスのためのサポートと、放射源光学システムとを含み、放射源光学システムは、物品に蛍光染料物質を塗布するための堆積チャンバと、
[0015] 蛍光染料を励起するのに適した波長における放射を用いて物品を照明するための放射源と、第1の放射とは異なる波長における蛍光染料による第2の放射の放出について物品をモニタリングするためのセンサと、第2の放射の検出に呼応して汚染の存在を示す信号を生成するための信号プロセッサとを含む装置が提供される。
【0015】
[0016] 本発明の第3の態様では、EUVリソグラフィにおけるパターニングデバイスとして使用するためのレチクルであって、デバイスはEUV波長における対照的な光学特性の反射部分および吸収部分を有し、EUV波長における光学特性間のコントラストを著しく低減することなく、検査方法においてレチクルと汚染物質粒子間のコントラストを高めるために全体的なコーティングが塗布される、レチクルが提供される。
【0016】
[0017] 本発明の第4の態様では、コンピュータ上で実行された場合に、該コンピュータに、第1の態様の方法に用いるためのデータ分析方法を実行させる命令を含むコンピュータプログラムプロダクトが提供される。
【0017】
[0018] 本発明の更なる特徴および利点、ならびに本発明の様々な実施形態の構造および動作を、添付図面を参照して以下に詳細に説明する。本発明は、本明細書に記載した具体的な実施形態に限定されないことに留意されたい。このような実施形態は本明細書において例示目的のみに提示されている。本明細書に含まれる教示内容に基づき、当業者には追加の実施形態が明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
[0019] 本願に組み込まれ、本明細書の一部を形成する添付図面は、本発明を例示し、以下の記載と共に、本発明の原理をさらに説明しかつ当業者が本発明を行いかつ利用することを可能にするものである。本発明の実施形態は、添付図面を参照してほんの一例として説明するに過ぎない。
【図1】図1は、反射型投影光学部品を有するリソグラフィ装置を概略的に示す。
【図2】図2は、図1の装置のより詳細な図である。
【図3】図3は、図1および図2の装置用の代替の放射源コレクタモジュールSOのより詳細な図である。
【図4】図4は、EUVリソグラフィ装置の代替例を示す。
【図5】図5は、汚染粒子を有するEUVレチクルを示す。
【図6】図6は、本発明の一実施形態によるオブジェクトの検査用の装置を概略的に示し、かつ、EUVレチクルの検査プロセスの動作原理を説明する。
【図7】図7は、図6の装置を用いた検査プロセスの第1の実施形態の段階(a)〜(e)を説明する。
【図8】図8は、本発明の第2の実施形態における検査プロセスの一部を説明する。
【図9】図9は、本発明の第3の実施形態における検査プロセスの一部を説明する。
【図10】図10は、本発明の第4の実施形態における検査プロセスの一部を説明する。
【図11】図11は、本発明の第5の実施形態における検査プロセスの一部を説明する。
【図12】図12は、本発明の第5および第6の実施形態のプロセスにおいて利用できるクエンチング機構を示す。
【図13】図13は、本発明の第5の実施形態における検査プロセスの一部を説明する。
【図14】図14は、例示的な染料の蛍光スペクトルへの環境の影響を示す。
【図15】図15は、例示的な染料の蛍光スペクトルへの環境の影響を示す。
【図16】図16は、様々な染料への環境の影響を利用した本発明の更なる実施形態を示す。
【図17】図17は、様々な染料への環境の影響を利用した本発明の更なる実施形態を示す。
【図18】図18は、様々な染料への環境の影響を利用した本発明の更なる実施形態を示す。
【図19】図19は、様々な染料への環境の影響を利用した本発明の更なる実施形態を示す。
【図20】図20は、様々な染料への環境の影響を利用した本発明の更なる実施形態を示す。
【0019】
[0020] 本発明の特徴および利点は、図面とともに以下の詳細な記載からより明らかとなろう。図中、同様の参照文字は全体に亘って対応する要素を特定する。図中、同様の参照番号は、一般に、同一の、機能的に同様のおよび/または構造的に同様の要素を示す。さらに、ある要素が最初に登場した図面は、対応する参照番号の最左の数字によって示される。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[0021] 本明細書は、本発明の特徴を組み込む1つ以上の実施形態を開示する。開示された実施形態は本発明を例示するに過ぎない。本発明の範囲は開示された実施形態に限定されない。本発明は本明細書に添付される特許請求の範囲によって定義される。
【0021】
[0022] 記載された実施形態、および、明細書中における「一実施形態」、「実施形態」、「例示的な実施形態」等への言及は、記載された実施形態が特定の特徴、構造、または特性を有しうることを示すが、必ずしもすべての実施形態がその特徴、構造、または特性を含まなくてもよい。さらに、このような語句は、必ずしも同じ実施形態を指しているわけではない。また、特定の特徴、構造、または特性が一実施形態に関連して記載された場合、明示的な記載の有無に関わらず、その特徴、構造、または特性を他の実施形態に関連して作用させることは当業者の知識内であると理解される。
【0022】
[0023] 本発明の実施形態は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、またはこれらの任意の組合せで実施されてよい。本発明の実施形態は、また、1以上のプロセッサによって読出しおよび実行されうる、機械可読媒体上に記憶された命令として実施されてもよい。機械可読媒体は、機械(例えばコンピュータデバイス)によって読出し可能な形態で情報を記憶および伝送するための任意の機構を含みうる。例えば、機械可読媒体には、読出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、磁気ディスク記憶媒体、光記憶媒体、フラッシュメモリデバイス、電気、光学、音響、または他の形態の伝播信号(例えば、搬送波、赤外線信号、デジタル信号等)等が含まれる。さらに、ファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、命令が、本明細書においては、特定の動作を行うように記載される場合もある。しかし、そのような記載は便宜上に過ぎず、また、そのような動作は、実際には、コンピュータデバイス、プロセッサ、コントローラ、またはファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、命令等を実行する他のデバイスによるものであることは理解されるべきである。
【0023】
[0024] しかし、このような実施形態をより詳細に記載する前に、本発明の実施形態が実施されうる例示的な環境を述べることが有益である。
【0024】
[0025] 図1は、本発明の一実施形態による放射源コレクタモジュールSOを含むリソグラフィ装置100を概略的に示す。このリソグラフィ装置は、放射ビームB(例えばEUV放射)を調整するように構成された照明システム(イルミネータ)ILと、パターニングデバイス(例えばマスクまたはレチクル)MAを支持するように構成され、かつパターニングデバイスを正確に位置決めするように構成された第1のポジショナPMに接続されたサポート構造(例えばマスクテーブル)MTと、基板(例えばレジストコートウェーハ)Wを保持するように構成され、かつ基板を正確に位置決めするように構成された第2のポジショナPWに接続された基板テーブル(例えばウェーハテーブル)WTと、パターニングデバイスMAによって放射ビームBに付けられたパターンを基板Wのターゲット部分C(例えば1つ以上のダイを含む)上に投影するように構成された投影システム(例えば反射投影システム)PSを含む。
【0025】
[0026] 照明システムとしては、放射を誘導し、整形し、または制御するために、屈折型、反射型、磁気型、電磁型、静電型、またはその他のタイプの光コンポーネント、あるいはそれらの任意の組み合せ等の様々なタイプの光コンポーネントを含むことができる。
【0026】
[0027] サポート構造MTは、パターニングデバイスの向き、リソグラフィ装置の設計、および、パターニングデバイスが真空環境内で保持されているか否か等の他の条件に応じた態様で、パターニングデバイスMAを保持する。サポート構造は、機械式、真空式、静電式またはその他のクランプ技術を使って、パターニングデバイスを保持することができる。サポート構造は、例えば、必要に応じて固定または可動式にすることができるフレームまたはテーブルであってもよい。サポート構造は、パターニングデバイスを、例えば、投影システムに対して所望の位置に確実に置くことができる。
【0027】
[0028] 「パターニングデバイス」という用語は、基板のターゲット部分内にパターンを作り出すように、放射ビームの断面にパターンを付与するために使用できるあらゆるデバイスを指していると広く解釈されるべきである。放射ビームに付与されたパターンは、集積回路等のターゲット部分内に作り出されるデバイス内の特定の機能層に対応しうる。
【0028】
[0029] パターニングデバイスは、透過型であっても反射型であってもよい。パターニングデバイスの例としては、マスク、プログラマブルミラーアレイ、およびプログラマブルLCDパネルが含まれる。マスクは、リソグラフィでは周知であり、バイナリ、レべンソン型(alternating)位相シフト、およびハーフトーン型(attenuated)位相シフト等のマスク型、ならびに種々のハイブリッドマスク型を含む。プログラマブルミラーアレイの一例では、小型ミラーのマトリックス配列が用いられ、入射する放射ビームを様々な方向に反射させるように各小型ミラーを個別に傾斜させることができる。傾斜されたミラーは、ミラーマトリックスによって反射される放射ビームにパターンを付与する。
【0029】
[0030] 投影システムは、照明システムと同様に、使われている露光放射にまたは真空の使用といった他の要素に適切な屈折型、反射型、磁気型、電磁型、静電型、若しくはその他のタイプの光コンポーネント、またはこれらの任意の組合せ等の様々なタイプの光コンポーネントを含んでよい。EUV放射には真空を用いることが望ましい。これは、他のガスは放射を吸収し過ぎてしまうからである。したがって、真空環境が、真空壁および真空ポンプを用いることでビーム路全体に与えられうる。
【0030】
[0031] 本明細書に示されているとおり、リソグラフィ装置は、反射型のもの(例えば反射型マスクを採用しているもの)である。
【0031】
[0032] リソグラフィ装置は、2(デュアルステージ)以上の基板テーブル(および/または2以上のマスクテーブル)WTを有する型のものであってもよい。そのような「マルチステージ」機械では、追加のテーブルを並行して使うことができ、すなわち、予備工程を1以上のテーブル上で実行しつつ、別の1以上の基板テーブルを露光用に使うことができる。
【0032】
[0033] 図1を参照すると、イルミネータILは、放射源コレクタモジュールSOから極端紫外線ビームを受ける。EUV光を生成する方法には、必ずしも次に限定されないが、物質を、EUV域における1以上の輝線を有する、例えばキセノン、リチウム、またはスズといった少なくとも1つの元素を有するプラズマ状態に変換することが含まれる。多くの場合、レーザ生成プラズマ(「LPP」)と呼ばれる1つのこのような方法において、必要なプラズマは、必要な輝線を放出する元素を有する物質の小滴、ストリーム、またはクラスタといった燃料をレーザビームで照射することによって生成することができる。放射源コレクタモジュールSOは、燃料を励起するレーザビームを与える、図1には図示しないレーザを含むEUV放射システムの一部であってよい。結果として生じるプラズマは、例えばEUV放射である出力放射を放出し、出力放射は、放射源コレクタモジュール内に配置される放射コレクタを用いて集光される。レーザと放射源コレクタモジュールは、例えばCO2レーザを用いて燃料励起用のレーザビームを与える場合は、別個の構成要素であってよい。
【0033】
[0034] その場合、レーザは、リソグラフィ装置の一部を形成しているとはみなされず、また、放射ビームは、レーザから放射源コレクタモジュールへ、例えば適切な誘導ミラーおよび/またはビームエキスパンダを含むビームデリバリシステムを使って送られる。その他の場合、例えば放射源が、多くの場合、DPP源と呼ばれる放電生成プラズマEUVジェネレータである場合、放射源は放射源コレクタモジュールの一体部分とすることもできる。
【0034】
[0035] イルミネータILは、放射ビームの角強度分布を調節するアジャスタを含むことができる。一般に、イルミネータの瞳面内の強度分布の少なくとも外側および/または内側半径範囲(通常、それぞれσ-outerおよびσ-innerと呼ばれる)を調節することができる。さらに、イルミネータILは、ファセットフィールド(facetted field)デバイスおよび瞳ミラーデバイスといった様々な他のコンポーネントを含むことができる。イルミネータを使って放射ビームを調整すれば、放射ビームの断面に所望の均一性および強度分布をもたせることができる。
【0035】
[0036] 放射ビームBは、サポート構造(例えばマスクテーブル)MT上に保持されているパターニングデバイス(例えばマスク)MAに入射して、パターニングデバイスによってパターン形成される。パターニングデバイス(例えばマスク)MAから反射された後、放射ビームBは投影システムPSを通過し、投影システムPSは、基板Wのターゲット部分C上に放射ビームBの焦点を合わせる。第2のポジショナPWおよび位置センサPS2(例えば、干渉計デバイス、リニアエンコーダ、または静電容量センサ)を使い、例えば、様々なターゲット部分Cを放射ビームBの経路内に位置決めするように、基板テーブルWTを正確に動かすことができる。同様に、第1のポジショナPMおよび別の位置センサPS1を使い、パターニングデバイス(例えばマスク)MAを放射ビームBの経路に対して正確に位置決めすることもできる。パターニングデバイス(例えばマスク)MAおよび基板Wは、マスクアライメントマークM1、M2と、基板アライメントマークP1、P2を使って位置合わせされてもよい。
【0036】
[0037] 例示のリソグラフィ装置は、以下に説明するモードのうち少なくとも1つのモードで使用できる。
【0037】
[0038] 1.ステップモードでは、サポート構造(例えばマスクテーブル)MTおよび基板テーブルWTを基本的に静止状態に保ちつつ、放射ビームに付けられたパターン全体を一度にターゲット部分C上に投影する(すなわち、単一静的露光)。その後、基板テーブルWTは、Xおよび/またはY方向に移動され、それによって別のターゲット部分Cを露光することができる。
【0038】
[0039] 2.スキャンモードでは、サポート構造(例えばマスクテーブル)MTおよび基板テーブルWTを同期的にスキャンする一方で、放射ビームに付けられたパターンをターゲット部分C上に投影する(すなわち、単一動的露光)。サポート構造(例えばマスクテーブル)MTに対する基板テーブルWTの速度および方向は、投影システムPSの(縮小)拡大率および像反転特性によって決めることができる。
【0039】
[0040] 3.別のモードでは、プログラマブルパターニングデバイスを保持した状態で、サポート構造(例えばマスクテーブル)MTを基本的に静止状態に保ち、また基板テーブルWTを動かす、またはスキャンする一方で、放射ビームに付けられているパターンをターゲット部分C上に投影する。このモードでは、一般に、パルス放射源が採用され、また、プログラマブルパターニングデバイスは、基板テーブルWTの移動後ごとに、またはスキャン中の連続する放射パルスと放射パルスとの間に、必要に応じて更新される。この動作モードは、前述の型のプログラマブルミラーアレイといったプログラマブルパターニングデバイスを利用するマスクレスリソグラフィに容易に適用することができる。
【0040】
[0041] 上述の使用モードの組み合せおよび/またはバリエーション、あるいは完全に異なる使用モードもまた採用してよい。
【0041】
[0042] フォトルミネッセンス(PL)信号の有無を、欠陥の存在のインジケータとして用いることが提案されてきている。例えばJP2007−258567またはJP11−304717を参照されたい。これらは参照することにより本明細書にその全体を組み込む。しかし、これらの技術の粒子検出機能に対する改良は歓迎されるであろう。2010年7月2日に出願され、2009年8月4日に出願された米国仮出願第61/231,161号の優先権を主張する共同所有する国際特許出願PCT/EP2010/059460に、汚染物質を検出する分光学的手法が提案されている。この国際特許出願は、参照することにより本明細書にその全体を組み込む。
【0042】
[0043] 図2は、放射源コレクタモジュールSO、照明システムIL、および投影システムPSを含むリソグラフィ装置100をより詳細に示す。放射源コレクタモジュールSOは、放射源コレクタモジュールSOの囲い構造220内に真空環境が維持されるように構成される。EUV放射を放出するプラズマ210が、放電生成プラズマ源によって形成されうる。EUV放射は、例えばXeガス、Li蒸気、またはSn蒸気であるガスまたは蒸気によって生成されうる。このガスまたは蒸気中で非常に高温のプラズマ210が生成されて電磁スペクトルのEUV域における放射が放出される。非常に高温のプラズマ210は、例えば少なくとも部分的にイオン化されたプラズマを引き起こす放電によって生成される。例えば10Paの分圧にあるXe、Li、Sn蒸気または任意の他の好適なガスまたは蒸気が、放射の効率のよい発生には必要でありうる。一実施形態では、励起されたスズ(Sn)のプラズマが与えられてEUV放射が生成される。
【0043】
[0044] 高温のプラズマ210によって放出される放射は、放射源チャンバ211からコレクタチャンバ212内へと光学ガスバリアまたは汚染物質トラップ230(幾つかの場合では、汚染物質バリアまたはフォイルトラップとも呼ばれる)を介して渡される。この光学ガスバリアまたは汚染物質トラップ230は、放射源チャンバ211における開口内にまたはその背後に位置決めされる。汚染物質トラップ230はチャネル構造を含んでもよい。汚染物質トラップ230はさらに、ガスバリア、または、ガスバリアとチャネル構造の組合せを含んでもよい。汚染物質トラップまたは汚染物質バリア230はさらに、本明細書では、当技術分野において知られているようにチャネル構造を少なくとも含むものとして示される。
【0044】
[0045] コレクタチャンバ211は、いわゆるかすめ入射コレクタでありうる放射コレクタCOを含みうる。放射コレクタCOは、上流放射コレクタ面251と、下流放射コレクタ面252とを有する。コレクタCOを通過する放射は、格子スペクトルフィルタ240から反射されて仮想放射源点IF内に合焦される。仮想放射源点IFは、一般に中間集光点と呼ばれ、放射源コレクタモジュールは、この中間集光点IFが囲い構造220における開口221においてまたはその付近に位置付けられるように構成される。仮想放射源点IFは、放射を放出するプラズマ210の像である。
【0045】
[0046] 続いて、放射は照明システムILを通過し、照明システムILは、パターニングデバイスMAにおける放射ビーム21の所望の角分布と、パターニングデバイスMAにおける所望の放射強度の均一性とを与えるように構成されたファセットフィールドミラーデバイス22およびファセット瞳ミラーデバイス24を含みうる。サポート構造MTによって保持されたパターニングデバイスMAにおいて放射ビーム21が反射した後、パターン付きビーム26が形成され、このパターン付きビーム26は、投影システムPSによって、反射要素28、30を介して、ウェーハステージまたは基板テーブルWTによって保持された基板W上に結像される。
【0046】
[0047] 一般に、照明光学ユニットILおよび投影システムPS内には図示するよりも多くの要素があってよい。格子スペクトルフィルタ240は、リソグラフィ装置の型に応じて任意選択的にあってもよい。さらに、図示するものよりも多くのミラーがあってもよく、例えば、図2に示す以外に投影システムPS内には1〜6個の追加の反射要素があってよい。
【0047】
[0048] 図2に示すコレクタ光学部品COは、コレクタ(またはコレクタミラー)のほんの一例として、かすめ入射リフレクタ253、254、および255を有するネスト状のコレクタとして示される。かすめ入射リフレクタ253、254、および255は、光軸Oの周りに軸対称に配置され、このタイプのコレクタ光学部品COは、多くの場合、DPP源と呼ばれる放電生成プラズマ源と組合せて用いられる。
【0048】
[0049] あるいは、放射源コレクタモジュールSOは、図3に示すようにLPP放射システムの一部であってもよい。レーザLAは、キセノン(Xe)、スズ(Sn)、またはリチウム(Li)といった燃料内にレーザエネルギーを堆積するように構成され、それにより、数十eVの電子温度で高度にイオン化されたプラズマ210が生成される。これらのイオンの脱励起および再結合中に生成されるエネルギー放射が、プラズマから放出され、近法線入射コレクタ光学部品COによって集光され、かつ、囲い構造220における開口221上に合焦される。
【0049】
[0050] 図4は、EUVリソグラフィ装置用の代替の配置を示し、この装置内では、スペクトル純度フィルタSPFは反射型格子ではなく透過型である。この場合の放射源コレクタモジュールSOからの放射は、コレクタから中間焦点IF(仮想放射源点)へと直線経路をたどる。図示しない代替の実施形態では、スペクトル純度フィルタ11は、仮想放射源点12、または、コレクタ10と仮想放射源点12との間の任意の点に位置決めされうる。フィルタは、例えば仮想放射源点12の下流の放射経路における他の場所に配置されてもよい。複数のフィルタを配置してもよい。先の例におけるように、コレクタCOは、かすめ入射型(図2)であっても直接リフレクタ型(図3)であってもよい。
【0050】
[0051] 以下の説明では、オブジェクト上の粒子の検出を可能にするオブジェクト検査のシステムおよび方法を述べる。検査されるオブジェクトは、例えば集積回路における個々の層に形成される回路パターンを生成するためのリソグラフィパターニングデバイスであってよい。例示的なパターニングデバイスには、マスク、レチクル、またはダイナミックパターニングデバイスが含まれる。本システムを用いることが可能なレチクルには、例えば周期パターンを有するレチクルおよび非周期パターンを有するレチクルが含まれる。レチクルは、EUVリソグラフィおよびインプリントリソグラフィといった任意のリソグラフィプロセスにおける使用のためのレチクルであってもよい。
【0051】
[0052] 図5は、図1〜図4のいずれかのリソグラフィ装置におけるパターニングデバイスMAでありうる一般的なEUVレチクル500を断面で示す。レチクル500は、基板502、多層コーティング504、およびパターン層506を含む。
【0052】
[0053] 1つの例示的な実施形態では、レチクル500は、石英または別の低熱膨張材料から作られた基板502と、モリブデンとシリコンの交互層を含む反射性多層コーティング504とを含むEUVレチクルであってよい。多層コーティング504は、例えば数十の層を含んでよく、また、一実施形態では約200nmの厚さを有してよい。例えばルテニウムまたはシリコンから作られたキャッピング層508が、多層の上面に設けられてもよい。
【0053】
[0054] パターン層506は、レチクル500用のパターンを画定する。EUVレチクルの場合、パターン層506はアブソーバ層である。同様に、EUVレチクルにおける多層504は反射性である。
【0054】
[0055] EUVレチクル内のパターン層506は、例えば窒化タンタル(TaN)から作られてよい。TaNOの表面層があってもよい。アブソーバの高さは一例では約70ナノメートルであってよく、また、約100nmの幅を有してもよい(これはリソグラフィシステムのクリティカルディメンション(CD)の約4倍であり、このスケーリングはウェーハとレチクル間の縮小係数によるものである)。
【0055】
[0056] パターン層によって画定されるパターンは、基本的に無作為であり、ライン、コンタクトホール、周期的および非周期的パターンから構成されうる。
【0056】
[0057] 図は、汚染物質粒子510、512および514も示す。これらはレチクル500の一部ではないが、幾つかの状況ではレチクル500に吸着されるかまたはその上に堆積されうる。リソグラフィ装置は複雑で多くの異なる物質を用いるので、任意の種類の粒子が基本的にレチクル500上に堆積されうる。粒子は導電性であっても絶縁性であってもよく、任意の形状またはサイズであってよく、また、導電性コーティング504またはパターン層506上に堆積されうる。堆積されうる例示的な粒子の種類には、有機粒子、金属粒子、および金属酸化物粒子が含まれる。
【0057】
[0058] リソグラフィ装置において用いられるレチクルといったパターニングデバイスの表面上に集まる粒子は、一般に、パターニングデバイスが作られる物質とは異なる種類の物質である。後述の例(図6〜図11)では、この事実を利用して、1つ以上の蛍光染料物質を用いることによる汚染物質粒子の検出を助力する。さらに、汚染物質粒子とレチクルとの物質とがそれ自体でそれほど異ならない場合であっても汚染物質を検出する技術が記載される。有機蛍光染料を用いてEUVレチクルの検査を行うことが提案される。染料の明るい蛍光発光によって非常に精度が高い検査が可能となる。染料は蒸着によってレチクル上に堆積され、汚染物質に選択的に結合する。結合における選択性は、後述する様々な実施形態において説明するように様々な方法において達成されうる。選択肢には、レチクルの上面に低親和力コーティングを塗布すること、および/または、汚染物質に特に結合する官能基を染料に添加することが含まれる。レチクル上の余剰染料の追加の(選択的)除去ステップによってより高いコントラストを達成できる。
【0058】
[0059] 汚染物質に対する染料の選択的な結合によってコントラストを達成する実施形態もある一方で、選択的結合なくコントラストを達成する実施形態もある。このような実施形態では、クエンチング機構が作用して、汚染物質に結合した染料分子のみが検出される放射を放出する。続いて検査を行い、その後に洗浄を行うことができる。様々な技術を組み合わせて実用的な実施形態を成しうる。様々な技術を平行してまたは連続して適用し、異なる種類の汚染物質を検出しうる、および/または、レチクルの様々な部分(例えば導電性コーティング504/508またはパターン層506)上に存在する汚染物質を検出しうる。
【0059】
[0060] 図6は、本明細書において開示する粒子検出方法の原理を説明する。照明光学部品604を介してレチクル500を照射する放射源602を含む検査装置600が設けられている。分子606を含む蛍光染料が、汚染物質粒子510〜514に付着している。放射源602は、励起波長λexcにある照明を与える。染料分子606はこの照明により励起状態にされ、その後、異なる波長λemにある放射を放出できる。フィルタ612を含む検出光学部品610が、放出された放射を集光し、それをカメラ(画素アレイ)または単一センサ(例えば光電子増倍管(PMT))でありうるセンサ608に運ぶ。破線の外形および破線の矢印によって示されるように、スキャン動作を適用し、それにより検査装置600が完全な検査のためにレチクル500の表面を体系的に検査範囲とすることができる。
【0060】
[0061] 検査装置600は、リソグラフィ装置のレチクルハウジング内に一体にされてよく、それにより検査下のレチクルは、リソグラフィ動作時に用いられるのと同じサポート構造MT上に載せられる。あるいは、レチクル500はサポート構造MTのすぐ近くから別の検査チャンバへ移動されてもよい。この後者の選択肢は、追加の機器によるリソグラフィ装置内の過密化を回避し、さらにリソグラフィ装置自体の中では行うことが許容されないまたは行うことが好ましくないプロセスを使用できるようにする。検査チャンバは、選好に応じてリソグラフィ装置に近接して接続されていても、または、リソグラフィ装置からかなり離れていてもよい。検査チャンバ自体は、装置600が動作する検査チャンバと、染料がレチクルに塗布される準備チャンバ(図示せず)に分けられうる。
【0061】
[0062] 図7を参照するに、完全なる検査および洗浄プロセスの第1の実施形態を段階(a)〜(e)によって説明する。(a)では、汚染物質粒子510〜514を有するレチクル500が受け取られる。プロセスAが適用されて、蛍光染料分子606がレチクル上に堆積される。この堆積は通常染料蒸気が存在する雰囲気からの蒸着によるものであり、蒸気圧および蒸気ならびに基板の温度は綿密に制御される。この第1の実施形態では、染料はレチクル全体(汚染物質上およびレチクル自体上を含む)に均一に堆積される(図7(b))。
【0062】
[0063] コントラストを与えるまたは高めるために、染料除去ステップBが行われ、それにより染料は粒子510〜514に吸着されたままであるが、レチクル層560、508から除去される(図7(c))。高コントラストを達成するために、染料に対してレチクルは非常に低い親和力を有することが望ましい。例えば染料は、汚染物質に対して(強い)化学吸着を有するが、基板に対しては(弱い)物理吸着(例えばファンデルワールス結合)のみを有するように選択される。この目的のために、染料は、汚染物質に特に結合(化学吸着)するが基板には結合しない官能基を有しうる。基板を適温に加熱する間に雰囲気をフラッシングすることによって、弱い結合は壊され汚染物質粒子に化学的に結合していない染料分子は除去される。
【0063】
[0064] 染料除去プロセスB後、レチクルはプロセスCによって検査チャンバに移されるか、または、検査装置600がチャンバ内に運び込まれ、蛍光の励起および検出が行われて汚染物質粒子がレチクル上に存在するかどうかを判断する(図7(d))。必要に応じて、検出プロセスは空間分解能を用いて行われてよく、それによりレチクル上のどこに粒子があり、または、これが関心のものであるかどうかを特定する。粒子が発見されたと想定して、洗浄プロセスDが行われて粒子が除去され、クリーンなレチクルはステップEによってリソグラフィ装置または将来の使用のために格納庫に移される(図7(e))。洗浄は、非接触プロセス、例えばレチクルを水素ラジカルの雰囲気に曝すことによって行われる。
【0064】
[0065] 蛍光が検出されない場合(これは期待されることである)、レチクルはクリーンであると判断され、洗浄ステップDなしで使用または収納のために移される(E’)。レチクルは非常に高価かつ精巧な製品であるので、検査プロセスの主な目的は不必要な洗浄作業を回避することである。なお、選択的染料除去ステップBが効果的に行われたのならば、汚染物質が発見されない場合には染料を除去する必要はない。
【0065】
[0066] 図8を参照するに、本発明の第2の実施形態として、汚染物質粒子への染料の選択的な結合を達成するための代替のプロセスを説明する。ここでは、ステップAはすぐに行われず、ステップA1〜A3が次の通りに適用される。ステップA1にて、架橋分子610が選択され基板全体に堆積される。架橋分子610は、ターゲット粒子に効果的に結合するが、レチクルには結合しない第1の官能基を有する。第2の官能基が染料に効果的に結合する。ステップA1において架橋分子を準備チャンバ内に導入した後、架橋分子610のうちの幾つかは、粒子510〜514に比較的強く結合し、その一方でレチクル自体の上にある610’と示す架橋分子は比較的緩く結合している。ステップA2では、架橋分子雰囲気を排出し、適温に加熱し、Nといった不活性ガスでフラッシングする1つ以上のサイクルによって表面からこれらの緩く結合された分子610’が流される。この時点(c)において、汚染物質粒子に結合されている架橋分子のみが存在し、これらは染料分子のための受容体部位を与える。次にステップA3にて架橋分子に結合する染料分子が導入される。必要に応じて更なるフラッシング作業Bが行われて、余剰の染料分子が除去され、粒子510〜514に結合した架橋分子に結合した分子のみが残る(図8(d))。
【0066】
[0067] なお、第2の実施形態の一般的な概念内で少なくとも3つの変形が可能であることに留意されたい。図8を参照して説明したプロセスから始めるが、3つの変形には、次のものが含まれる。すなわち(1)架橋分子を塗布する、フラッシングする、染料を塗布する、必要に応じて再びフラッシングする、(2)架橋分子を塗布する、染料を塗布する、次にフラッシングする、(3)架橋分子と染料を同時に塗布する、次にフラッシングする。当業者であれば、実験によって、レチクル物質およびコーティング、汚染物質の組成、染料の組成、および架橋分子の特定の組み合わせに最も適したプロセスを考え付くことができるであろう。なお、第2の実施形態では、架橋分子および染料は、汚染物質が存在しない場合にはなく、つまりその場合はそれらを除去するための特定のステップが不要となることに留意されたい。
【0067】
[0068] 選択性に関して、染料分子/架橋分子は、ファンデルワールス相互作用を中心とする物理吸着か、または、染料と基板との間に化学結合が生じる場合には化学吸着のいずれかによって基板に結合されうる。理想的には染料は粒子に化学吸着し、基板に対しては弱い物理吸着のみを示す。すなわち、レチクルおよび粒子に対する染料の親和力における高いコントラストが望ましい。
【0068】
[0069] 上述したように、反射性部分におけるレチクルの表面の物質は、Mo/Si多層504の物質、または、Ruといったキャッピング層508でありうる。パターン層506を形成するアブソーバ物質の表面は、例えばTaNまたはTaNOであってよい。汚染物質として見受けられうる金属および金属酸化物の種類には、Al、Fe、Zn、Ti、Cu、Ni、W、Sn、Na、K、Mgが含まれる。有機汚染物質も見受けられうる。少なくとも幾つかの有機汚染物質が、染料の添加なしに自然に蛍光を発しうる。しかし、発光信号を強化するためにそれらに染料を付着させることは依然として有益である。
【0069】
[0070] 汚染物質に対して親和力が高いが、レチクル基板/コーティングに対して親和力が低い適切な染料を選択しなければならない。親和力は、単に物理的相互作用(「物理吸着」)によって達成されるか、または化学的相互作用(「化学吸着」)によっても達成されうる。物理吸着のみを考慮する場合、染料の疎水性がこの目的のために変えるべき主な特性である。例えば親水性の染料は、疎水性の基板に優先して金属酸化物粒子に付着する。物理吸着だけでは、検査される物品と汚染物質との間の結合強度に十分なコントラストを与えない場合、所与の状況では化学吸着を利用できる。汚染物質に対する化学吸着を達成するために、染料は例えば金属または半導体に特に結合する官能基を有しうる。好適には、染料は蒸着および染料の(選択的)除去を容易にするために低蒸気圧を有する。蛍光染料の選択について、以下に個別にまたは組み合わせて選択できる種類のほんの幾つかの例を示す。
クマリン系
フルオレセイン系
ナイルブルー
ペリレン系
アントラセン系
ビフェニル系
ナフタリン系
アクリジン系
オキサジン系
【0070】
[0071] 粒子と結合するために塩基性の染料分子に付着可能な官能結合基(functional binding group)の選択もある。原理上は、レチクル上または汚染粒子内の特定の物質に結合するように個別にカスタマイズされた製剤を製造できる。しかし、医用/薬剤調査のために既に市販されている官能基のうちのいずれかを使用できることが望ましい。以下の市販されている結合基のうちのいずれかを有する染料分子。
チオール
シアン化物
アミン
カルボキシル
ヒドロキシル
チオシアン化物
クロロシラン
アルコキシシラン
【0071】
[0072] 列挙したもの以外の他の官能基も利用可能でありかつ有用である。所与の状況における正しい性能は、実験によって確認されなければならない。しかし、出発点として、チオール基、(チオ)シアン化物基、およびアミン基は金属に結合する可能性が高く、その一方で、リン酸塩、ホスホン酸塩、カルボキシル、ヒドロキシル、およびシランは金属酸化物に結合する可能性がより高いことが期待されうる。様々な汚染物質への染料の付着を確実にするために、様々な結合基を有する様々な染料のセットか、または、2つ以上の結合基を担持する1つの染料を使用することを選択しうる。前者の場合、検査時のスペクトル応答によって見つかった汚染物質の種類が示されうる。この情報は、将来の改良のために汚染物質源を調査するのに有用でありうる。この情報はさらに、洗浄時間を最小限にするおよび/または基板の劣化を最小限にするために最適洗浄プロセスを設計するのに有用でありうる。染料のスペクトル応答への環境の影響について、後述する更なる実施形態において詳述する。
【0072】
[0073] 上述したように、蒸着だけではレチクルと粒子との間に十分なコントラストがもたらされない場合、レチクル上の余剰染料の選択的除去ステップを行うことができる(図7、ステップB)。これは、基板の加熱と組み合わせて、真空雰囲気の数回のフラッシングによって行うことができる。染料および実際の留意事項に依存して、このような加熱の温度は例えば約摂氏160度であってよい。その他の場合、温度は例えば約摂氏140度と低くする必要がある。ステップBにおける除去は、基板の電子またはイオン衝撃、または、プラズマ処理によってさらに高めることができる。いかなる場合でも、プロセスは選択的であるべきであることは明白であり、それにより、そのプロセスは粒子から染料を除去するのではなく、レチクルからのみ除去する。これは、レチクルと粒子間で染料の親和力に十分な差異がある場合に実現可能である。いかなる場合でも、染料の塗布および選択的除去は、除去の選択性を最適化しかつコントラストを最大限にするよう実験を通じて正確に調整されなければならないプロセスである。
【0073】
[0074] レチクルおよび汚染物質に対する染料の物理または化学親和力におけるコントラストが十分に大きくない場合、染料に対して非常に低い親和力を有する好適な物質で作られた追加のコーティングをレチクルの上面に塗布することができる。例えばコーティング802は、SiC、フッ素化シラン、BNのような低表面エネルギー物質、または貴金属であってよい。例えばGeTeまたはMoSである他の物質をコーティング802のために選択してもよい。これらの物質は、非常に疎水性であり、したがって親水性染料に対して非常に低い親和力を有するからである。疎水性または親水性の環境に対する特定の染料の感度を利用する実施形態を、以下の図14〜図20を参照して以下に説明する。
【0074】
[0075] コーティングは、強度損失を最小限に下げるために、EUVに対して適度に透過性であるべきである。このために、コーティングは2nmより薄くてよく、好適には1nmより薄い。原子層堆積(ALD)法は、ほんの数原子層の均一な厚さを有するBNで作られたコーティングを塗布する便利な方法である。コーティング802のために金属が選択される場合、これには通常のRu層508が含まれうるが、修正版レチクル800では、コーティングは反射性多層504だけでなくパターン層TaN上にも延ばされる。低親和力層としてどの物質が選択されようとも、EUV放射および水素雰囲気に対して頑強であるべきである。その物質は、EUV反射性をあまり減衰すべきではないし、また、パターン層506のアブソーバ部分内に反射性をもたらすべきでもない。このために、低親和力層は2nmより薄くてよく、好適には1nmより薄い。
【0075】
[0076] 言うまでもないことであるが、前段落では染料に対するコーティングの親和力について言及しているが、第2の実施形態では、コーティングは、選択された架橋分子に対するその低親和力のために選択されてもよい。染料および架橋分子に対する親和力は当然ながら共に関連性があり、必要な完全な選択性を達成するために物品の様々な部分における様々なコーティングが望ましい場合がありうる。
【0076】
[0077] 図9は、レチクル800が、前段落において提案されるように低親和力物質の薄層802(図9(a))で被覆されている第3の実施形態を示す。これは、コントラストを高めるためであり、したがって、ステップAにおいて染料は粒子510〜514のみに付着し、(被覆された)レチクルには付着しない(図9(b))。装置600を用いた検査が行われる前の染料除去ステップBは不要となる。
【0077】
[0078] 図10は、染料に対する親和力を高めるために検査の前に粒子が修飾される第4の実施形態を説明する。上述したように、粒子510〜514は異なる物質でありうる。図10(a)では、粒子510および512は金属粒子であって、粒子514は金属酸化物または有機粒子である。プレプロセスステップA0において、金属粒子510および512は、上述した準備チャンバ内の酸素雰囲気に暴露すること(b)によって、全体的または部分的に酸化される。これにより、粒子は全てクリーンレチクルの金属または半導体物質に対してよりも互いにより類似するので、レチクルと粒子間に適切なコントラスト挙動を有する染料を選択することを容易にすることができる。一般的に、酸化雰囲気はリソグラフィ装置自体の中には望ましくない。したがって、検査装置600用に別個の準備チャンバを有する実施形態が特に魅力的な選択肢である。さらに、酸化ステップは、Ruキャッピング層508といったレチクル自体の機能表面を酸化して劣化させないように軽度であるべきである。
【0078】
[0079] 酸化ステップA0後、レチクル500は、前の実施形態と同様に処理されて染料分子が汚染物質粒子に選択的に付着される(図10(c))。その後、前述同様に検査が進む。低親和力コーティング802および/または架橋分子610といった特徴は、必要に応じて酸化ステップと組み合わせられて適用されてよい。
【0079】
[0080] 図11は、染料が粒子に選択的に結合されるのではなく、染料粒子が、それらがレチクル上にあるのかまたは粒子上にあるのかに応じて選択的に蛍光を発する本発明の第5の実施形態を示す。具体的には、汚染物質粒子に吸着した染料分子606は通常に蛍光を発する一方で、それぞれレチクル層508および506上にある分子606’および606’’はレチクル物質へのその近接性または接触によって「クエンチング」され、それにより蛍光発光は抑制される。レチクル500の基板502および/または上部層506、508に負バイアス電圧を印加することによってクエンチングを高めるために電気バイアス源902が任意選択的に配置されうる。このクエンチングが起きるように染料および/またはレチクル物質が選択されるならば、染料除去ステップBを回避することができる。染料が粒子に選択的に結合する必要性は減少され、このことは選択する物質の範囲を潜在的に広げる。あるいは、染料除去ステップBは依然として行われてもよいが、検出仕様に見合うために必要とされる除去はそれほど綿密でなくてよい。
【0080】
[0081] 好適には、基板は、図13を参照して以下に説明する機構のうちの1つによって染料の効果的なクエンチングをもたらす。染料の選択および用いる厳密な物質に応じてレチクルの金属特性が、ある程度のクエンチングをもたらすのに十分でありうる。
【0081】
[0082] RuおよびTa物質は(これらの物質からレチクル表面は通常作られるが)、それ自体が有効なクエンチャでありうる。染料の蛍光を十分に抑制しない従来のレチクル物質の場合、レチクルの組成を適応するか、または、レチクル800におけるコーティング802(図9)と同様に従来のレチクルの上面に薄い追加のコーティングを塗布しうる。このコーティングの厚さは、例えば2nm未満、好適には1nm未満のように、レチクルのEUV光学性能を妨げないように十分に小さいべきである。このコーティングが有効なクエンチャとなるには、このコーティングは、例えば非常に低いフェルミ準位(電荷‐注入)、強力な表面プラズモンバンドまたは半導体の遷移双極子(エネルギー伝達)を有しうる。例としては、通常低フェルミ準位を有する貴金属か、または、Si、Ge、GaAs、InAs、InAs、InSb、PbSeといったEMスペクトルの可視部分において大きい双極子モーメント(直接バンドギャップ)を有する半導体がある。銅、銀、または金といった金属は、可視領域にプラズモンバンドを有し、Ti、Ru、またはCrといった金属も適切でありうる。リチウムまたはマグネシウムといった非常に高いフェルミ準位を有する金属は、染料に電荷を注入するために用いられうる。コーティング802のために選択される物質は、検査されている物品の作業環境において反応して変化しない物質であるべきである。EUVリソグラフィレチクルの場合、作業環境は、通常はEUV放射、Hガス、および場合によっては原子状水素にも暴露される近真空環境である。コーティングも、空気と反応しないまたは物品のハンドリングが複雑にならないようなコーティングであるべきである。
【0082】
[0083] なお、多くの物質の特性は、非常に薄い層(<5nm)に対しては、閉じ込め効果によって変化することに留意されたい。例えば半導体のバンドギャップおよび金属のプラズモン周波数は、薄い層に対してはより高いエネルギーにシフトする。クエンチング層にどの物質が適しているかを決定する前にこのことを考慮すべきである。すなわち、所与の物質が、そのバルク特性から思われるよりも実際にはあまり適していないまたはより適している場合がある。
【0083】
[0084] 図12は、本発明の第5の実施形態において利用しうる様々なクエンチング機構を概略的に説明する、一連のエネルギーレベル図(a)〜(d)を含む。(また、クエンチングと選択的結合は同じ実施形態において一緒に利用されうることに留意すべきである)。各図の左側に、本セクションでは基板と呼ぶレチクル材料のエネルギーレベルを表す。右側に、染料分子のHOMOエネルギーレベルおよびLUMOエネルギーレベルを示す。本文脈におけるHOMOおよびLUMOとは、それぞれ、「最高被占分子軌道」および「最低空分子軌道」の周知の頭文字である。図12は、次の機構を示す。
(a)励起された染料の半導体基板へのエネルギー移動。基板が金属(コーティング508)である場合、染料のエネルギーは、表面プラズモン遷移に移動される。
(b)励起された染料から半導体基板への電荷移動。
(c)励起された染料の、低フェルミ準位(E)を有する金属基板への電荷移動。
(d)フェルミ準位が電気バイアス(902、図11)を印加することによって増加された金属基板による未励起染料の帯電。バイアスは正であってもよく、それにより正帯電された染料(染料から金属への電子)がもたらされる。
【0084】
[0085] これらのクエンチング機構をもう少し詳細に説明すると、図12(a)では、励起された染料分子の振動双極子は、共鳴双極子周波数を有する隣接物質内に双極子を導入することによってクエンチングされうる。このプロセスはエネルギー移動と呼ばれ、例えば隣接する染料分子(共鳴双極子を本質的に有する)間で発生しうる。この目的のために(金属中の)プラズモンバンドまたは(半導体中の)励起はさらに、大きい双極子モーメントを有する共鳴遷移も有しうる。すなわち、エネルギー移動は、染料が吸着された基板へも生じうる。これは、第5の実施形態の検査プロセスの動作に望まれるクエンチング効果を与える。
【0085】
[0086] 図12(b)および図12(c)を参照するに、クエンチングの別の手段は、励起された染料分子から隣接物質への電荷移動である。この場合、電子e−または正孔hのみが隣接物質に移動される。これはさらに、染料の蛍光の有効なクエンチングを引き起こす。電荷移動は、基板の価電子帯および伝導帯のそれぞれが、染料のHOMOまたはLUMOレベルに適切に揃う場合に半導体へと生じる。例えば発明者は(カルボキシル基を介して)TiO基板に付着した励起されたルテニウム染料分子からの電荷移動は、いわゆる色素増感型(グレッツェル)太陽電池の重要な動作であることに注目している(Brian O’Regan、Michael Gratzel 1991、Nature353(6346):737−740を参照されたい。これは本願に参照することによりその全体を組み込む)。電荷移動(正孔または電子のいずれか、または両方)は、基板のフェルミ準位Eが染料のHOMOまたはLUMOレベルに適切に揃う場合(図12(b)および図12(c))に金属または半導体へまたはそこから生じうる。
【0086】
[0087] 図12(d)は、染料の蛍光をクエンチングするさらに別の方法として、励起前の染料の帯電を説明する。この場合、基板の化学ポテンシャル(フェルミ準位E)は、有機染料内に電荷を注入するために十分に低い(例えば貴金属を用いることによって)または高い(例えば外部バイアスを印加することによって)べきであり、またその逆も同じである。染料への追加の電荷によって蛍光がクエンチングされる。
【0087】
[0088] 図13は、クエンチング効果が利用され、かつ絶縁層904を塗布することによりクエンチング効果が高められて修正版レチクル900が形成される第6の実施形態を示す。上述したように、クエンチングは、バイアス電圧がレチクルの(金属)最上層(504、508)に印加されると高められうる。バイアスをレチクルに印加することによって、レチクル表面に直接付着している染料は、電界を受けることになり、これにより、上述したように染料は有効にクエンチングされる。あるいは、バイアスによって染料内に電荷(電子または正孔)が注入されうる。これも染料蛍光をクエンチングさせる有効な方法である。すなわち、レチクル材料のフェルミ準位Eは、染料が負帯電または正帯電されるような程度にまで外部バイアスによって上げられるかまたは下げられる。しかし、特に金属性汚染物質粒子の場合、バイアスは粒子内にも伝導され、それにより粒子は染料の蛍光挙動をクエンチングし、検査装置600による粒子の検出の根拠となっているコントラスト挙動を破壊してしまう。この影響に対抗するために、レチクル上に絶縁層904を設けて、汚染物質が受けるかなり低くされたバイアスを確立しうる。このようにすると、汚染物質上の染料分子は、電界または電荷注入を受けないのでその蛍光が維持される。
【0088】
[0089] 絶縁層904がバイアスを汚染物質から十分にシールドしない場合(例えば電子トンネリングによって)、振動バイアスを印加することが好ましい。バイアスの周波数が十分に高ければ、汚染物質は電界から有効にシールドされる。その場合、検査装置600は、振動バイアスと同じ周波数を有する、センサ608から受け取る光学信号の時間ゲート検出を実施するように適応されうる。
【0089】
[0090] 要するに、第6の実施形態では、レチクル500が、追加の層904を有する修正版レチクル900に取って代わられている。上述したように、絶縁層904は、図13には別々に図示していないが、金属層の最上部に塗布されうる。絶縁層904がなければ、レチクル上に存在する金属汚染物質粒子は、レチクル自体と同じクエンチング挙動に加わり、検査プロセスから隠されてしまうことがある。絶縁層は、適切な寸法にされたのならば、印加されたバイアス電圧から粒子を電気的に絶縁することができ、それにより、粒子はレチクル自体と同じクエンチング効果を引き起こさないようになる。
【0090】
[0091] 前述の実施形態と同様に、好適な染料が、直接的または架橋物質の分子を介して汚染物質に対して特定の親和力を有するように選択されなければならない。染料は、コントラストがクエンチング効果のみに依存しないように、レチクル基板/コーティングに対して低い親和力を有することが好適である。染料は、蒸着をおよび染料の除去を容易にするように低蒸気圧を有することが好適である。染料の吸収帯および発光帯は、検出を容易にするために可視領域内にあることが好適であり、また、有効なクエンチングがレチクル上で生じるが汚染物質上では生じないように最適な発光帯を選択することができる。例えばコーティング層に銀が用いられる場合、染料は、効果的にクエンチングされるように銀のプラズモンピーク(400〜500nm)において発光することが好適である。ここでは、当然ながら、汚染物質上に吸着している染料の蛍光クエンチングは比較的小さいことを想定している。染料に応じて、Fe、Al、Ti、Znおよびそれらの酸化物といった幾つかの金属粒子は、相当の蛍光クエンチングを引き起こしうる。なお、適切なレチクルコーティングおよび/または電気バイアスによって、クエンチング効率に違いを達成することができるのならば、レチクルと汚染物質との間にコントラストを達成することができ、検出が実行できる。例えば汚染物質によって蛍光効率は10倍下がるが、レチクルによって1000倍下がる場合には、感度は十分に高い。
【0091】
[0092] 上述した様々な実施形態のうち、代替手段としてまたは互いに併用されて用いることのできる技術が幾つかある。具体的には、レチクルにはコントラスト物質から作られたまたはコントラスト物質で被覆された部分があるので、様々な手段を用いて、クリーンな場合にレチクルの様々な部分における蛍光を防止しうる。例えばパターン層506には染料分子を跳ね返すように低親和力コーティングが被覆されてよく、その一方でキャッピング層508は染料分子における蛍光をクエンチングするのに有効であり、またその逆も同じである。同様に、様々な種類の汚染物質は同じ染料に対して高い親和力を有さない場合があるので、様々な染料を組み合わせて用いて、いずれかの染料であらゆる汚染粒子を覆いうる。
【0092】
[0093] 蛍光を抑止する、促進する、または修正するように染料分子と基板または汚染物質との相互作用を利用する実施形態では、染料の層厚が重要なパラメータである。具体的には、このような実施形態では、単分子層をはるかに下回る染料層厚が好ましいことが分かっている。このことは、単分子層または染料分子のより厚い層が見つかった場合に、各分子の挙動は、下にある基板、クエンチング層、汚染物質等により受ける影響と同等またはそれよりも多くの影響を隣接する染料分子によって受ける可能性があることを考えると理解できる。典型的な染料について、単分子層に対応する厚さは例えば約0.5nmでありうる。その場合、染料層厚さの最適範囲は、0.01nm〜0.1nm、すなわち単分子層の2〜20%でありうる。フルオレセイン染料の場合、1分子あたりの面積は約1nmである。厚さ0.025nm(単分子層の5%)を有する例では、20nmあたりに1つの染料分子しかない。当然ながら、分子が少ないほど蛍光信号は弱い。したがって、最適厚さは、所望のクエンチングまたは他の効果を遮らないように分子が互いから十分に離されるような厚さである。
【0093】
[0094] 上述した実施形態では、高精度分光学に基づいた検査を行うためにレチクル上での有機染料の使用を説明してきた。染料の蛍光を汚染物質からのみ見ることができるように、染料を選択的に除去するかまたは金属層によって染料を選択的にクエンチングするという選択肢がある。さらに、レチクルと染料との間に中間バッファ層を挿入してレチクルと染料との間の距離を増加する(それによりクエンチングを減少する)ことによって金属レチクルによる染料のクエンチングを減少することが提案された。
【0094】
[0095] 図14〜図20を参照して更なる実施形態を説明するが、これらの実施形態では、幾つかの蛍光染料は様々な環境において異なって反応するという事実を利用して、粒子上の染料を選択的に視覚化する。この方法で影響を受ける特性には、吸収スペクトル、発光強度、および発光ピーク波長が含まれうる。例えば幾つかの実施形態では、この特性を利用して、例えば金属粒子上での蛍光を選択的に高め、および/または、レチクル上の染料を選択的にクエンチングする。これを達成するための選択肢には、バッファ層またはレチクル上のコーティングによって染料の環境を変更することが含まれる。クエンチング効果は、幾つかの実施形態に関連して既に上述してある。蛍光を高めることには、蛍光の強度を全体的に増加することを含むだけでなく、検出装置が蛍光の非シフト波長とシフト波長を区別するように構成される場合に蛍光を異なる波長にシフトすることによって選択された波長において蛍光の強度を増加することが含まれうる。このような区別は、1つの波長のみを観察することによるものであるか、または、様々な波長における強度を比較することによるより高度な分光技術によるものでありうる。
【0095】
[0096] 幾つかの染料分子について、環境の極性(またはpH)が染料の1つ以上の光学特性に影響を及ぼし、また、汚染物質を区別するために用いることができる。その吸収スペクトルがpHに依存する蛍光染料には、ナイルブルーおよびフルオレセインが含まれる。別の例として、バッファ層、架橋分子、またはコーティングの疎水性または親水性を用いて染料の蛍光強度および/または波長を調整することができる。
【0096】
[0097] 図14は、染料フルオレセインの吸光度AのpH依存を示し、また、Margulies他による論文「Fluorescein as a model molecular calculator with reset capability」(Nature Materials4、768(2005))からの抜粋である。分子の荷電状態、したがって様々な波長λに及ぶその吸収スペクトルは、pHによって調整することができる。(発光強度も荷電状態に依存する。)図14を参照するに、フルオレセイン分子は4状態分子スイッチとして説明することができる。フルオレセインの4つの電離状態は、カチオンF(+1)、ニュートラルF(0)、アニオン(−1)およびジアニオンF(−2)であり、グラフにラベル付けされて示すように、それぞれ一意の吸収スペクトルを有する。490nmにおけるモル吸光係数は、ジアニオンF(−2)については76,900M−1cm−1であると想定される。6μMのフルオレセインを水性酢酸溶液(0.015M、pH=3.3)中に溶解することによって、異なるスペクトルを有する中性の形態F(0)が形成される。HCl(0.013M)またはNaOH(0.013M)溶液を用いた選択的な電離によって、完全に可逆な分子スイッチがもたらされ、このスイッチでは4つの電離の形態の各々を得ることができる。
【0097】
[0098] フルオレセインまたは他の染料への別の環境影響は、環境の疎水性または親水性である。親水性染料は親水性環境において(すなわち親水性バッファ上で)より高い蛍光強度を有する一方で、疎水性染料は疎水性環境においてより高い蛍光強度を有することができる。
【0098】
[0099] ガラス、および、オクタデシルホスホン酸(ODPA)の層で修飾されたガラス上にフルオレセインの薄層(0.2nm)を堆積させて実験が行われた。ODPAは、ガラス表面を疎水性にし、フルオレセインの挙動に影響を及ぼす。ODPAによる修飾はフルオレセインの強度を著しく抑制した。フルオレセイン染料はポリスチレン(PS)で修飾されたシリコンウェーハ上に堆積された。疎水性PS層も、ガラス上の染料に比べて蛍光強度を抑制する。親水性の影響を確認するために、UV−オゾン処理済みPS上に染料を堆積させることによって別の試料が用意された。UV処理によってPS表面はより親水性となり(または活性化され)、これは、フルオレセイン染料の蛍光強度を増加させた。結論として、OHおよびカルボキシル基を有するフルオレセインを、親水性表面上に堆積させることによって蛍光強度が高くなり、また、疎水性表面上に堆積させることによって強度が低くなる。したがって、pHと同様に、疎水性をフルオレセインの調整方法として用いることができる。
【0099】
[00100] 様々な染料が疎水性/親水性の様々な度合いに対して異なって反応しうるが、疎水性/親水性の度合いは接触角によって測定することができる。「疎水性」および「親水性」は相対的な用語であって、本文脈においてこれらの用語を用いることによって接触角の任意の絶対閾値が暗示されるものではない。本文脈における疎水性表面は、90度より大きい接触角を有する表面に限定される必要はなく、80度より大きいまたは70度より大きい接触角を有する表面を含んでよい。上述した実験では、未修飾のガラス基板は、接触角30を有し(親水性)、ODPAで修飾されたガラス基板は、接触角102を有した(疎水性)。PSで修飾されたシリコンは接触角85を有し(疎水性)、その一方でUV−オゾン処理されたPS修飾シリコンは接触角58を有した(親水性)。
【0100】
[00101] 図15では、ガラス上の様々な厚さにあるフルオレセインの吸収スペクトルを確認できる。厚さが大きい場合(T1=88nm)、スペクトルは、図14に示すF(0)状態と同様になる。上述したように、このように厚い層では、染料の分子は、下にある物質によって受ける影響よりも多くの影響を互いから受ける。厚さが減少されると(T1>T2>T3>T4>T5)、F(−1)状態に到達することが確認できる。これは、フルオレセインの荷電状態がその環境に対して敏感であることを示す。これにより、染料の荷電状態(したがって光学特性)は環境の極性によって調整できることが認められる。染料が薄い場合、ガラス‐染料界面が優勢であるが、染料層が厚い場合、環境はバルク染料自体によって支配される。この効果を利用するための染料層の厚さは、20nm未満であってよく、より好適には10nm未満である。
【0101】
[00102] フルオレセインの代替として、ナイルブルーを用いてもよい。ナイルブルーの吸収および発光最大値は、表に示すようにpHと用いられた溶媒に強く依存する(出典:http://en.wikipedia.org/wiki/Nile_blue)。蛍光は、高い量子収量を有する非極性溶媒において特に示される。フルオレセインとは対照的に、ナイルブルーは、疎水性表面上で高い強度を示すことができ、親水性表面上で低い強度を示すことができる。したがって、疎水性をナイルブルーの強度を調整するために用いることができる。
【表1】

【0102】
[00103] 図16〜図20は、疎水性によって調整可能な染料が選択された幾つかの実施形態を示す。pHに依存する染料フルオレセインおよびナイルブルーは適切な候補である。他の染料も当然ながら特定されてその特定の特性に対して用いられてよい。環境の極性による蛍光の調整可能性を用いて、汚染物質とレチクルとのコントラストを達成する選択肢が幾つかある。以下の説明における汚染物質は、簡単にするために金属と想定する。この技術は、上述した実施形態にて説明したように、他の種類の汚染物質に適応することができる。
【0103】
[00104] 図16は、レチクル上の疎水性コーティング802’が粒子に対して蛍光強度に高いコントラストを生じさせ、染料としてフルオレセインを用いる例を示す。レチクルは、金属フッ化物または金属窒化物といった疎水性コーティングによって修飾されうる。金属汚染物質は、修飾されたレチクルの残りと比べて本質的により親水性である。図16に概略的に示すように、金属粒子上のフルオレセイン染料は強く蛍光を発し、その一方で他の領域における染料は低い強度を有する。
【0104】
[00105] 図17は、染料堆積の前に分子1700の親水性の終端バッファ層を塗布することによってフルオレセインの性能がさらに向上された例を示す。金属粒子への親和力を有する11−ホスホノウンデカン酸といったバッファ層は、図17に示すようにフルオレセインの強度を増加する。
【0105】
[00106] 図18は、ナイルブルーの特性を利用した例を示す。レチクルは親水性コーティング802’’によって修飾されうる。金属汚染物質は、修飾されたレチクルの残りと比べてより疎水性である。概略的に示すように、金属粒子上のナイルブルー染料からの蛍光発光の強度は、親水性レチクルに比べてより高くなる。
【0106】
[00107] 図19は、ナイルブルー染料を用いた別の例を示す。ここでもレチクル上の親水性コーティング802’’によって粒子に対して蛍光強度に高いコントラストが生じる。さらに、疎水性バッファ層(分子1900)が、汚染物質粒子上のナイルブルー染料の効率を向上させる。オクタデシルホスホン酸(ODPA)は金属粒子への親和力を有し、また、そのメチル(CH)終端によって疎水性環境を提供する。このようなバッファ層は、図19に示すように染料堆積の前に塗布されてナイルブルーの強度を増加することができる。
【0107】
[00108] 図20は、疎水性バッファ層(分子1900)と共にナイルブルー染料を用いて粒子とレチクルの残りとのコントラストを高める例を示す。ここでも、ODPAといった疎水性バッファ層を、染料堆積の前に塗布することができる。金属粒子への親和力を有するこのような層では、親水性コーティング802’’は不要となり、図20では省略している。
【0108】
[00109] 上述したように、架橋分子を用いて、染料分子の汚染物質への結合を促進しうる。親水性または疎水性バッファ層分子1700、1900は、架橋分子として作用するように選択されることも可能である。親水性バッファ分子1700は、例えばその末端基によって染料への強力で選択的な共有結合をなしうる。親水性バッファ分子は、金属汚染物質への特定の結合のための先端基を既に有している。その観点から、バッファ分子(の幾つか)は原則的に架橋分子としても用いることができる。
【0109】
[00110] 光学システム、検査チャンバ、および任意の必要な準備チャンバの設計は当業者にとっては比較的簡単である。上述した国際特許出願PCT/EP2010/059460に記載されるように幾つかの設計手段を採用することができる。例えば上述の出願には複数の角度から汚染物質および染料分子を照射してパターニング層506によるシャドーイングを回避する様々な手段が記載される。
【0110】
[00111] 本明細書にその全体を参照することによって組み込む国際特許出願PCT/EP2010/059460に記載されかつ本技術に適用することのできる別の手段は、装置600が一度にレチクルの所与の領域における蛍光しか検出できない場合に汚染物質をスキャンし検索することに関連する。スキャンプロセスを行ってオブジェクト全体を検索範囲とする。1つの好適な実施形態では、試験下のオブジェクトは、照射エネルギー範囲内では顕著なスペクトル反応は有さないことがある。これは、リソグラフィレチクルが放射源602としてUVレーザまたはランプによって検査される場合に該当する。汚染物質粒子に付着した染料の信号(したがって信号対雑音比)は基本的に集光領域とは無関係である。この理由から、集光領域がおおきいほど、検査の総時間は短くなる。しかし位置精度も領域が大きくなるほど減少する。
【0111】
[00112] 検査時間を不当に長くすることなく検出の精度を上げるために、次の通りにスキャンストラテジを採用することができる。第一に、オブジェクトの第1の領域がスキャンされる。1つ以上の粒子が検出された場合、その第1の領域は2つ以上の部分に分割される。これらの部分は別々にスキャンされ、分割された部分のそれぞれにおいて粒子の存在を検出することができる。検出プロセスをここで止めるか、または、更なる分割およびスキャンプロセスを行うこともできる。これは所定精度での粒子検出を得るために必要な回数繰り返されてよい。このことも国際特許出願PCT/EP2010/059460に記載され、この内容はその全体を参照することによって本明細書に組み込む。
【0112】
[00113] 本発明の実施形態は幾つかの利点を提供する。蛍光染料の高効率によって非常に明るい信号が生成され、また、粒子自体を直接観察することに比べて粒子を検出する能力を向上させる。
【0113】
[00114] 本開示の方法および装置の実施形態はさらに、パターン自体の分解を必要とすることなく、また、信号を基準信号と比較することなくパターン形成されたレチクル上の粒子を検出することを可能にする。これにより、「単一ダイ」レチクルの検査が可能となる。これは、複雑なダイ対データベース検査が不要となるからである。さらに、2つの基準オブジェクトの比較を回避することによって、関連する像の位置合わせ問題が回避される。
【0114】
[00115] 本開示の方法および装置の実施形態は、EUVリソグラフィパターニングデバイスだけではなく、原則的に任意のタイプのパターン若しくはマスク、または任意のオブジェクトの検査に用いることができる。方法は、例えば100ナノメートル未満、50ナノメートル未満、またはさらには20ナノメートル未満の小さい粒子を検出するために用いることができ、また、EUVレチクルといった基板のパターン形成面上のこれらの粒子の検出に用いることができる。蛍光染料によって出された放射を集光しかつ検出する光学システムは、個々の粒子を分解するパワーを有する必要はない。蛍光発光波長における放射の存在が、所与の領域における汚染物質の十分な証拠である。
【0115】
[00116] 上述したように、検査装置600はインツールデバイスとして、すなわち、リソグラフィシステム内に設けられてもまたは別個の装置として設けられもよい。別個の装置としては、検査装置は、レチクル検査(例えば出荷前)に用いることができる。インツールデバイスとしては、検査装置は、リソグラフィプロセスにレチクルを使用する前のレチクルのクイック検査を行うことができる。検査装置は、例えばN回の露光毎にレチクルがまだきれいであるか否かを確認するために、リソグラフィプロセス間に検査を行うのに特に有用でありうる。
【0116】
[00117] 上述したように、センサ608は単一の大面積センサまたは画素アレイであってよい。画素アレイは、レチクルのある領域(この領域が関心の領域である場合)内の汚染物質の位置を特定するためにその領域を結像することを可能にする。結像は、励起放射が検査領域全体を体系的にスキャンされ、放出された放射が時間分解される場合に大面積センサ(例えばPMT)を用いても行われてもよい。フィルタ606は様々な染料に適するように交換可能であってよい。センサからの信号の処理は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、またはそれらの任意の組み合わせにおいて実施されうる。本発明の様々なコンポーネント部分の本発明の実施形態も、1つ以上のプロセッサによって読み出されて実行されうる、機械可読媒体上に記憶された命令として実施されうる。機械可読媒体には、機械(例えばコンピュータデバイス)によって可読な形態で情報を記憶または伝送する任意の機構を含んでよい。例えば、機械可読媒体は、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、磁気ディスク記憶媒体、光学記憶媒体、フラッシュメモリデバイス、電気的、光学的、音響的、または他の形態の伝播信号(例えば搬送波、赤外線信号、デジタル信号等)を含みうる。さらに、ファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、または命令は、特定の作用を実行するものとして本明細書において説明している。しかし、このような説明は便宜に過ぎず、そのような作用は実際にはコンピュータデバイス、プロセッサ、コントローラ、またはファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、命令等を実行する他のデバイスからもたらされること理解すべきである。
【0117】
[00118] 発明の概要および要約の項目は、発明者が想定するような本発明の1つまたは複数の例示的実施形態について述べることができるが、全部の例示的実施形態を述べることはできず、したがって本発明および請求の範囲をいかなる意味でも制限しないものとする。
【0118】
[00119] 本発明の実施形態は、特定の機能の実施とそれらの関係を示す機能的構成要素を用いて上に説明された。これらの機能的構成要素の境界は、説明の便宜上任意に定義されている。特定の機能およびそれらの関係が適切に行われる限り別の境界が定義されてもよい。
【0119】
[00120] 特定の実施形態の上記の説明は、本発明の一般的性質を十分に明らかにし、それにより、当業者の知識を適用することによって、他の人が、必要以上の実験を行うことなく、本発明の一般的な概念から逸脱することなく、特定の実施形態の様々な適用を容易に修正および/または適応することができるようにする。したがって、このような適応および修正は、本明細書に提示する教示および指導内容に基づいて、開示された実施形態の等価物の異議および範囲内であることを意図するものである。なお、本明細書における表現および用語は、説明のためであって限定を目的とせず、したがって、本明細書の用語および表現は教示および指導内容を鑑みて当業者によって解釈されるべきであることを理解すべきである。
【0120】
[00121] 本発明の範囲は、上述した例示的な実施形態のいずれにも限定されるべきではなく、以下の特許請求の範囲およびその等価物に応じてのみ定義されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚染物質粒子を検出するための物品の検査方法であって、
前記物品に蛍光染料物質を塗布することと、
前記蛍光染料物質を励起するのに適した波長における放射を用いて前記物品を照明することと、
前記第1の放射とは異なる波長における前記蛍光染料による第2の放射の放出について前記物品をモニタリングすることと、
前記第2の放射を検出した場合には汚染を表す信号を生成することと、
を含む方法。
【請求項2】
前記蛍光染料および物品物質は、互いに化学的に結合しないように選択される一方で、前記染料は少なくとも1種類の汚染物質に化学的に結合し、汚染物質の種類は例えば金属酸化物、または、Al、Sn、およびFeといった非貴金属である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記蛍光染料は、親水性であるように選択される一方で、前記物品物質の少なくとも一部は、前記染料が前記物品物質よりも少なくとも1種類の汚染物質に物理吸着によってより強く結合するように疎水性である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
汚染物質への暴露の前に、前記物品に、前記少なくとも1種類の汚染物質に対するよりも低い親和力を前記染料物質に対して有するコーティングが与えられ、前記低親和力コーティングは、SiC、フッ素化シラン、オクタデシルホスホン酸(ODPA)、GeTe、MoS、BNのような疎水性および/または低表面エネルギー物質、またはルテニウムといった貴金属から選択される、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記染料物質は、少なくとも1種類の汚染物質に対して高い親和力を有する第1の官能基と前記染料物質に結合するようにされた第2の官能基とを有する分子を含む架橋物質と併せて塗布される、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記染料物質は、少なくとも1種類の汚染物質に対して高い親和力を有する第1の官能基と前記染料物質の蛍光応答を高めるのに有効な第2の官能基とを有する分子を含むバッファ物質と併せて塗布される、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記第2の官能基は、前記汚染物質だけよりも前記染料分子に対してより親水性の環境を作り、前記染料物質は例えばフルオレセインである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の官能基は、前記汚染物質だけよりも前記染料分子に対してより疎水性の環境を作り、前記染料物質は例えばナイルブルーである、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記染料は、1単分子層未満、例えば0.3単分子層未満に対応する量で堆積される、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記物品が汚染物質に暴露される前に、物品に、前記染料と接触した場合に蛍光をクエンチングするコーティングが与えられ、前記コーティングは任意選択的に金属または半導体であり、前記クエンチングは、前記物品と接触して存在している場合に前記染料の蛍光の抑制を促進するように前記物品に電気的にバイアスをかけることによって任意選択的に促進される、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記染料物質は蒸着によって塗布される、請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記検査された物品は、EUVリソグラフィレチクルを含む、請求項1から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記レチクルはEUV波長における対照的な光学特性の反射部分および吸収部分を有し、前記染料物質および任意の架橋物質およびバッファ物質は、前記物品上に汚染がない場合、染料物質が前記部分のうちの一方にあるが蛍光は抑制される一方で、染料物質は前記部分のうちのもう一方には、当該もう一方における前記物品物質の低親和力特性によって、実質的にないように選択される、請求項1から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
デバイスを製造する方法であって、請求項1から13のいずれかに記載する検査方法によってパターニングデバイスが汚染物質粒子について検査され、前記検査の結果に応じて前記パターニングデバイスは洗浄されまたは洗浄されず、前記パターニングデバイスは、リソグラフィ装置においてデバイス基板上にデバイスパターンを与えるように用いられる、方法。
【請求項15】
EUVリソグラフィにおけるパターニングデバイスとして使用するためのレチクルであって、前記デバイスはEUV波長における対照的な光学特性の反射部分および吸収部分を有し、EUV波長における前記光学特性間のコントラストを著しく低減することなく、検査方法において前記レチクルと汚染物質粒子間のコントラストを高めるために全体的なコーティングが塗布される、レチクル。
【請求項16】
前記全体的なコーティングは、厚さが2nm未満、例えば1nm未満である、請求項15に記載のレチクル。
【請求項17】
前記全体的なコーティングは、SiC、フッ素化シラン、オクタデシルホスホン酸(ODPA)、GeTe、MoS、BNのような疎水性および/または低親和力物質、またはルテニウムといった貴金属を含む、請求項15または16に記載のレチクル。
【請求項18】
物品の検査のための装置であって、
前記物品に蛍光染料物質を塗布するための堆積チャンバと、
前記蛍光染料を励起するのに適した波長における放射を用いて前記物品を照明するための放射源と、
前記第1の放射とは異なる波長における前記蛍光染料による第2の放射の放出について前記物品をモニタリングするためのセンサと、
前記第2の放射の検出に呼応して汚染の存在を示す信号を生成するための信号プロセッサと、
を含む装置。
【請求項19】
前記センサに、前記第1の放射を排除するための光学フィルタが与えられる、請求項20に記載の装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2012−33929(P2012−33929A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−163028(P2011−163028)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(504151804)エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ. (1,856)
【Fターム(参考)】