説明

物品位置検出システム

【課題】 測定範囲内の電波環境による影響を抑えてRFIDの添付された物品の位置を測定可能な物品位置検出システムを提供すること。
【解決手段】 物品に添付されたRFID201〜209と、該RFIDを囲むように配置されたアンテナ101〜116と、該アンテナに接続された送信回路および受信回路と送信信号の出力可変手段および受信信号強度の測定手段とを含む少なくとも1つのリーダライタ制御部とからなり、前記送信信号の出力可変手段によって測定された前記各アンテナの前記RFIDとの通信可能な最小送信信号出力と、前記アンテナ相互間の通信を行うことによって測定されたアンテナ間の通信環境とに基づき、前記RFIDが添付された物品の位置を検出することを特徴とする物品位置検出システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFIDを用いて倉庫などで物品の保管を行う場合に、目的のRFIDが取り付けられた物品の保管されている位置を調べる物品位置検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、商品管理などのための個体識別に際し、その商品の管理情報を記憶し、非接触でデータの書込みおよび読出しを行うICタグ、無線タグ、RFID(Radio Frequency Identification)、またはデータキャリアと呼称される通信媒体が普及しつつある。
【0003】
これらを物品に取り付け、その物品に関する情報を書き込むことにより、物品の管理を効率的に行うことができる。このような技術の利用は物品の保管、検索、流通等だけでなくさまざまな用途で提案され、実施されており、いくつかの例が下記の特許文献1から3に示されている。
【0004】
また、無線技術であることを用いて特許文献4のようにサッカーコート上のボールの位置の検出を行いゲームに利用する方法や、特許文献5のように特定のRFIDの位置を2次元情報として得る方法が提案されている。
【0005】
このようにRFIDのようなタグの添付により物品の位置を検出する技術により、多様な製品や部品などを保管した倉庫内で目的とする製品や部品を短時間で見つけることや、大規模店舗などで顧客に商品の場所を即時に示すことなどが可能となる。
【0006】
【特許文献1】特開2001−114405号公報
【特許文献2】特開2005−96909号公報
【特許文献3】特開2005−71193号公報
【特許文献4】特開平7−56990号公報
【特許文献5】特開2001−116583号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような通常の物品の位置検出では、アンテナからの一定の送信電波強度においてRFIDからアンテナに届く受信信号の強さや送信電波強度と通信可能距離の関係をもとにそのおおよその位置を検出している。
【0008】
しかし、複数のRFIDが測定範囲内に存在する場合、各RFIDは内部にアンテナを有するため、送信アンテナからの出力信号強度が同じでも途中に存在する他のRFIDの周囲の電波環境に及ぼす影響によって対象とするRFIDの通信可能距離が変化してしまう。
【0009】
また磁場や電場を乱す要因が測定範囲内に存在した場合も同様に、アンテナからの出力信号が同じでもRFIDの通信可能距離が低下してしまう。
【0010】
上記の要因により従来のシステムではその範囲内に存在するRFIDの個数やその他の電波環境の影響によって、物品の位置検出に大きな測定誤差を生ずる恐れがあった。
【0011】
そこで、本発明の課題は、測定範囲内の電波環境による影響を抑えてRFIDの添付された物品の位置を測定可能な物品位置検出システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の物品位置検出システムは、物品に添付されたRFIDと、該RFIDを囲むように配置された少なくとも3個のアンテナと、該アンテナに接続された送信回路および受信回路と受信信号強度の測定手段とを含む少なくとも1つのリーダライタ制御部とからなり、前記アンテナによって受信された前記RFIDからの受信信号強度と前記アンテナ相互間の通信を行うことによって測定されたアンテナ間の通信環境とに基づき、前記RFIDが添付された物品の位置を検出する。
【0013】
また、本発明の物品位置検出システムは、物品に添付されたRFIDと、該RFIDを囲むように配置された少なくとも3個のアンテナと、該アンテナに接続された送信回路および受信回路と送信信号の出力可変手段および受信信号強度の測定手段とを含む少なくとも1つのリーダライタ制御部とからなり、前記送信信号の出力可変手段によって測定された前記各アンテナの前記RFIDとの通信可能な最小送信信号出力と、前記アンテナ相互間の通信を行うことによって測定されたアンテナ間の通信環境とに基づき、前記RFIDが添付された物品の位置を検出することができる。
【0014】
さらに本発明では、前記リーダライタ制御部は前記アンテナと前記送信回路の接続を切り替えるスイッチング手段を具備してもよい。
【0015】
また、前記リーダライタ制御部は前記アンテナと前記受信回路の接続を切り替えるスイッチング手段を具備してもよい。
【0016】
また、前記リーダライタ制御部は前記スイッチング手段により複数のアンテナと接続され、検出すべき位置に応じて接続されるアンテナおよびその数を変更することができるものであってもよい。
【0017】
ここで、上記の通信環境とは、その領域の電波環境によって決定されるアンテナ間の信号電波の伝搬特性やアンテナからの信号電波の放射特性、アンテナの信号電波の受信特性などを総合的に含むものであり、その場の状態における送信アンテナへの信号の供給電力と、その信号を受信した受信アンテナから得られる受信電力の関係を示すものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、上述のように、複数のアンテナ間での信号の送受の特性を測定してアンテナ間の通信環境を測定し、その結果をもとにアンテナからの送信出力と受信出力の関係を補正してより正確なRFIDのアンテナからの距離を把握することにより、測定範囲内の電波環境による影響を抑えてRFIDの添付された物品の位置を測定可能な物品位置検出システムが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は、本発明による物品位置検出システムの実施例1に用いるアンテナおよびリーダライタ制御部の構成の一例を示すブロック図である。複数のアンテナ1,2,3と、スイッチング機能付きの送信回路4及び出力可変回路6とスイッチング機能付きの受信回路5及び受信強度測定回路7、そして信号出力の調整や信号の変調復調を行うCPU8から構成されるリーダライタ制御部9からなる。
【0021】
図1において、送信回路4、受信回路5は、内蔵されたスイッチング機能により必要に応じてアンテナ1,2,3に接続可能であり、また、送信信号出力は出力可変回路6により調整され、受信信号強度は受信強度測定回路7によって測定される。
【0022】
図2は、本実施例の物品位置検出システムの検出方法の一例を説明するための図であり、被測定対象である複数の物品に添付されたRFIDの位置およびそれらのRFIDを囲むように配置された複数のアンテナの位置を示している。
【0023】
図2において、被測定領域100の中に被測定対象である複数の物品に添付されたRFID201〜209が置かれ、それらを囲むように格子状にアンテナ101〜116が配置されている。図には示されていないが各アンテナは図1に示したようなリーダライタ制御部に接続されている。その構成方法としては、すべてのアンテナを1つのリーダライタ制御部に接続してそのリーダライタに内蔵されたスイッチング機能によりアンテナとの接続を切り替えて使用することや、アンテナをいくつかのブロックに分割しそのブロックごとにリーダライタ制御部を設置してそのブロック内のアンテナと接続すること、各アンテナごとにリーダライタ制御部を設置して接続するなどの方法をとることができる。
【0024】
ここでは、検出対象となる物品に添付されたRFIDをRFID201として、その位置検出方法を以下に説明する。
【0025】
第1ステップとして、すべてのアンテナから検出対象のRFID201との通信を行い、送信信号出力を変化させて通信が可能な最小の送信信号出力Pmを測定する。
【0026】
第2ステップとして、各アンテナのPmを比較し、Pmが最も小さいアンテナを抽出しそのアンテナ(ここではアンテナ107とする)を暫定的に最近接アンテナとする。
【0027】
第3ステップとして、上記最近接アンテナ(107)より検出対象のRFID201に一定の送信信号を出力し、その周囲のアンテナ(ここでは102,103,104,106,108,110,111,112)で対象RFID201からの返信信号を受信する。
【0028】
第4ステップとして、上記の受信信号強度を比較し、その強度が大きい順に3つのアンテナを抽出する。ここではアンテナ107,111,108が抽出されたとする。対象物品は、ほぼ上記3つのアンテナに囲まれた領域に存在することになる。
【0029】
第5ステップとして、上記3つのアンテナ間で相互の通信環境を測定する。その結果より対向する2つのアンテナ間での送受信強度に対する補正値を算出する。
【0030】
第6ステップとして、上記第1ステップで求めた検出対象のRFID201とそれを囲むアンテナ107,111,108との通信が可能な最小の送信信号出力Pmを上記補正値によって補正し、上記各アンテナからの距離を算出し検出対象のRFID201の位置を決定する。
【0031】
図3は、上記第6ステップの位置決定のプロセスの一例を説明する図である。図3において、アンテナ107とRFID201との通信が可能な最小の送信信号出力Pmから算出したアンテナ107とRFID201との距離aを、アンテナ108との間の通信環境による補正値をもとに補正した値をa1とし、同様にアンテナ111との間の通信環境による補正値をもとに補正した値をa2とすると、RFID201はアンテナ107から108に向かう直線上の距離a1の位置とアンテナ107から111に向かう直線上の距離a2の位置を結ぶ楕円上のいずれかにあると推定できる。
【0032】
同様に、アンテナ111のRFID201に対するPmの値およびアンテナ107との間の補正値をもとに算出した距離をb1、アンテナ108との間の補正値をもとに算出した距離をb2とすると、RFID201はアンテナ111から107に向かう直線上の距離b1の位置とアンテナ111から108に向かう直線上の距離b2の位置を結ぶ楕円上のいずれかにあると推定できる。
【0033】
アンテナ108についても同様に算出し、RFID201はアンテナ108から111に向かう直線上の距離c1の位置とアンテナ108から107に向かう直線上の距離c2の位置を結ぶ楕円上のいずれかにあると推定できる。
【0034】
以上の結果より、上記3本の楕円が交わった領域付近に検出対象とするRFID201が存在すると推定することができる。
【0035】
図4は、本実施例の上記第1ステップから第6ステップまでの検出方法を示すフローチャート図である。
【実施例2】
【0036】
図5は、本発明による物品位置検出システムの実施例2の検出方法を示すフローチャート図である。本実施例に使用するリーダライタ制御部、アンテナ、RFIDはすべて実施例1と同じである。
【0037】
本実施例の第1ステップは、実施例1と同様に、すべてのアンテナから検出対象のRFID201との通信を行い、送信信号出力を変化させて通信が可能な最小の送信信号出力Pmを測定する。
【0038】
ただし、本実施例においては実施例1の第2〜4ステップの代わりに第2ステップとして、上記Pmの値の小さい方から順に3つのアンテナを抽出しそれを近傍アンテナとして実施例1の第5ステップ以降と同様なプロセスである第3ステップ、第4ステップに進む。
【0039】
本実施例では実施例1に比べて位置検出のプロセスが簡易化され検出速度を早くできる。
【実施例3】
【0040】
図6は、本発明による物品位置検出システムの実施例3に用いるアンテナおよびリーダライタ制御部の構成の一例をしめすブロック図である。図1と異なるのは、出力可変回路6がないことであり、他は図1と同様、複数のアンテナ1,2,3と、スイッチング機能付きの送信回路4とスイッチング機能付き受信回路5及び受信強度測定回路7、そして信号出力の調整や信号の変調復調を行うCPU8から構成されるリーダライタ制御部10からなる。
【0041】
図7は、本実施例の検出方法を示すフローチャート図である。第1ステップとして、すべてのアンテナから検出対象のRFID201と一定の送信信号出力で通信を行い、受信信号強度Psを測定する。
【0042】
第2ステップとして、各アンテナのPsを比較し、Psが大きい順に3つのアンテナを抽出しそのアンテナを近傍アンテナとする。対象物品はほぼ上記3つのアンテナに囲まれた領域に存在すると推定する。
【0043】
第3ステップとして、上記3つのアンテナ間で相互の通信環境を測定する。その結果より対向する2つのアンテナ間での送受信強度に対する補正値を算出する。
【0044】
第4ステップとして、上記第1ステップで求めた検出対象のRFID201と上記3つの近傍アンテナでの受信信号強度Psを上記補正値によって補正し、その補正値によって上記各アンテナからの距離を算出し検出対象のRFID201の位置を決定する。
【0045】
本実施例では、実施例1に比べてリーダライタ制御部の構成が簡単になり、また、検出プロセスも簡単にできるので検出速度を早くできる。
【0046】
なお、上記実施例1から3において使用する、通信が可能な最小の送信信号出力とRFIDとの距離の関係、および一定の送信信号出力に対する受信信号強度とRFIDとの距離の関係は、あらかじめ通信環境に対する負荷がない状態で上記の関係を実際の測定により求めておくことにより、または計算により求めておくことにより得られる。
【0047】
また、上記実施例1から3では、測定対象のRFIDを囲むアンテナとして3個を抽出してその測定値を位置検出に使用したが、RFIDを囲むアンテナの数、すなわち実施例1の第4ステップ、実施例2の第2ステップ、実施例3の第2ステップで抽出するアンテナの数を4個として、その後のステップを同様に進めることにより、位置検出精度を向上することができる。
【0048】
また、本発明の目的を達成するためには、アンテナを図2のように必ずしも規則的に配置をする必要は無いが、規則的に配置する方がその後の位置の計算などが簡単になる。通信環境の影響がわかっており、検出がしやすいアンテナの設置位置がわかっている場合には、アンテナをその位置に意図的におくことにより、RFIDの位置を検出しやすくなる。
【0049】
また、アンテナの設置パターンは、図2の格子状以外にも、図8のように、アンテナ121〜138を1つのアンテナの周りに6つのアンテナが囲むようなパターンで配置する方法も有効と考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明による物品位置検出システムの実施例1に用いるアンテナおよびリーダライタ制御部の構成の一例を示すブロック図。
【図2】実施例1の物品位置検出システムの検出方法の一例の説明図。
【図3】実施例1の第6ステップの位置決定のプロセスの一例の説明図。
【図4】実施例1の検出方法を示すフローチャート図。
【図5】本発明による物品位置検出システムの実施例2の検出方法を示すフローチャート図。
【図6】本発明による物品位置検出システムの実施例3に用いるアンテナおよびリーダライタ制御部の構成の一例を示すブロック図。
【図7】実施例3の検出方法を示すフローチャート図。
【図8】1つのアンテナの周りに6つのアンテナを配置するアンテナの設置パターンの図。
【符号の説明】
【0051】
1,2,3,101〜116,121〜138 アンテナ
4 送信回路
5 受信回路
6 出力可変回路
7 受信強度測定回路
8 CPU
9,10 リーダライタ制御部
100 被測定領域
201〜209 RFID

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品に添付されたRFIDと、該RFIDを囲むように配置された少なくとも3個のアンテナと、該アンテナに接続される送信回路および受信回路と受信信号強度の測定手段とを含む少なくとも1つのリーダライタ制御部とからなり、前記アンテナによって受信された前記RFIDからの受信信号強度と前記アンテナ相互間の通信を行うことによって測定されたアンテナ間の通信環境とに基づき、前記RFIDが添付された物品の位置を検出することを特徴とする物品位置検出システム。
【請求項2】
物品に添付されたRFIDと、該RFIDを囲むように配置された少なくとも3個のアンテナと、該アンテナに接続される送信回路および受信回路と送信信号の出力可変手段および受信信号強度の測定手段とを含む少なくとも1つのリーダライタ制御部とからなり、前記送信信号の出力可変手段を用いて測定された前記各アンテナの前記RFIDとの通信可能な最小送信信号出力と、前記アンテナ相互間の通信を行うことによって測定されたアンテナ間の通信環境とに基づき、前記RFIDが添付された物品の位置を検出することを特徴とする物品位置検出システム。
【請求項3】
前記リーダライタ制御部は前記アンテナを選択して前記送信回路の接続を切り替えるスイッチング手段を具備していることを特徴とする請求項1または2記載の物品位置検出システム。
【請求項4】
前記リーダライタ制御部は前記アンテナを選択して前記受信回路の接続を切り替えるスイッチング手段を具備していることを特徴とする請求項1、2または3記載の物品位置検出システム。
【請求項5】
前記リーダライタ制御部は前記スイッチング手段により複数のアンテナと接続され、検出すべき位置に応じて接続されるアンテナおよびその数を変更することができることを特徴とする請求項3または4記載の物品位置検出システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−121014(P2007−121014A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−311084(P2005−311084)
【出願日】平成17年10月26日(2005.10.26)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【Fターム(参考)】