説明

物標検出装置および物標検出方法

【課題】本来の検出感度を維持しつつ、物標の検出領域を広角化することが可能な物標検出装置および物標検出方法を提供する。
【解決手段】信号波を送信し、この送信した信号波の反射波を受信することによって物標を検出する際、前記信号波の強度が第1の閾値以上のときに第1検出領域に存在する物標を検出し、前記信号波の強度が前記第1の閾値よりも小さい第2の閾値以上のときに前記第1検出領域よりも広く前記第1検出領域を含む第2検出領域に存在する物標を検出する検出手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波を用いて物標を検出する物標検出装置および物標検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、四輪自動車等の車両の制御技術として、レーダを用いて物標を検出する技術が知られている。この技術では、利得が大きいメインローブを用いて物標を検出することが一般的である。しかしながら、メインローブのみを用いて物標の検出を行うと、ブラインド領域が発生してしまうという問題があった。
【0003】
そこで、ブラインド領域を発生させず、かつ不要な物標を検出しない技術として、メインローブに加えてサイドローブを用いた物標検出技術が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平6−18657号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、メインローブ領域に対して設定した通常の閾値レベルを利得が低いサイドローブ領域やメインローブの利得が低い領域に適用すると、利得が低すぎるために物標のピーク周波数をほとんど検出することができない場合があった。
【0006】
これに対して、メインローブの所定領域に対して設定した通常の閾値レベルを、サイドローブ領域やメインローブの利得の低い領域に合わせて単純に下げてしまうと、メインローブのうち本体検出すべき領域で不要な物標を多く検出してしまうことになった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、本来の検出感度を維持しつつ、物標の検出領域を広角化することができる物標検出装置および物標検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1記載の発明は、信号波を送信し、この送信した信号波の反射波を受信することによって物標を検出する物標検出装置であって、前記信号波の強度が第1の閾値以上のときに第1検出領域に存在する物標を検出し、前記信号波の強度が前記第1の閾値よりも小さい第2の閾値以上のときに前記第1検出領域よりも広く前記第1検出領域を含む第2検出領域に存在する物標を検出する検出手段を備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記第1検出領域は、前記信号波の送信方向を中心として設定され、前記第2検出領域は前記第1検出領域よりも送信する信号の強度が小さい領域であることを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、前記物標で反射した反射波の強度のピーク値と前記第1および第2の閾値との大小関係に基づいて、前記物標の前記第1検出領域から前記第2検出領域への移動を追尾する第1物標追尾処理手段をさらに備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項記載の発明において、前記第2検出領域を含む第3検出領域で画像を撮像し、この撮像した画像を用いて前記第3検出領域に存在する物標を画像物標として検出する画像検出手段をさらに備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明において、前記物標で反射した反射波の強度のピーク値と前記第1および第2の閾値との大小関係、ならびに前記物標と前記画像検出手段で検出した画像物標の物標検出幅との関係に基づいて、前記物標の前記第2検出領域から前記第1検出領域への移動を追尾する第2物標追尾処理手段をさらに備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項6記載の発明は、信号波を送信し、この送信した信号波の反射波を受信することによって物標を検出する物標検出方法であって、前記信号波の強度が第1の閾値以上のときに第1検出領域に存在する物標を検出し、前記信号波の強度が前記第1の閾値よりも小さい第2の閾値以上のときに前記第1検出領域よりも広く前記第1検出領域を含む第2検出領域に存在する物標を検出することを特徴とする。
【0014】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の発明において、前記第1検出領域は、前記信号波の送信方向を中心として設定され、前記第2検出領域は前記第1検出領域よりも送信する信号の強度が小さい領域であることを特徴とする。
【0015】
請求項8記載の発明は、請求項6または7記載の発明において、前記物標で反射した反射波の強度のピーク値と前記第1および第2の閾値との大小関係に基づいて、前記物標の前記第1検出領域から前記第2検出領域への移動を追尾することを特徴とする。
【0016】
請求項9記載の発明は、請求項6〜8のいずれか一項記載の発明において、前記第2検出領域を含む第3検出領域で画像を撮像し、この撮像した画像を用いて前記第3検出領域に存在する物標を画像物標として検出することを特徴とする。
【0017】
請求項10記載の発明は、請求項9記載の発明において、前記物標で反射した反射波の強度のピーク値と前記第1および第2の閾値との大小関係、ならびに前記物標と前記画像物標の物標検出幅との関係に基づいて、前記物標の前記第2検出領域から前記第1検出領域への移動を追尾することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、信号波を送信し、この送信した信号波の反射波を受信することによって物標を検出する際、前記信号波の強度が第1の閾値以上のときに第1検出領域に存在する物標を検出し、前記信号波の強度が前記第1の閾値よりも小さい第2の閾値以上のときに前記第1検出領域よりも広く前記第1検出領域を含む第2検出領域に存在する物標を検出する検出手段を備えたことにより、本来の検出感度を維持しつつ、物標の検出領域を広角化することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための最良の形態(以後、「実施の形態」と称する)を説明する。
【0020】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る物標検出装置の機能構成を示すブロック図である。同図に示す物標検出装置1は、四輪自動車等の車両に搭載され、車両の周囲の所定の範囲に存在する物体を検出する装置である。物標検出装置1は、ミリ波を用いて所定の範囲の物標を検出するミリ波レーダ2と、ミリ波レーダ2から出力される信号を用いて物標を検出するための演算を行う演算部3と、演算部3における演算結果や各種設定情報を記憶する記憶部4と、を備える。
【0021】
ミリ波レーダ2は、所定の範囲にミリ波を送信アンテナから送出する一方、物標からの反射波を受信アンテナ(送信アンテナと同じで場合もある)によって受信し、この受信した反射波のフィルタリングやA/D変換などの信号処理を行う。かかるミリ波レーダ2としては、FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式などの通常用いられる方式を適用することができる。
【0022】
演算部3は、ミリ波レーダ2で受信した信号を用いて物標を検出する検出部31と、検出部31の検出結果に基づいて所定の領域内に存在する物標を追尾する物標追尾処理部32(第1物標追尾処理手段)とを備える。かかる演算部3は、CPU(Central Processing Unit)等を用いて実現され、各種演算処理プログラムを記憶部4から読み出すことにより、その読み出したプログラムに対応する処理を実行する。
【0023】
記憶部4は、演算処理プログラムが記録されたROM(Read Only Memory)および各種パラメータやデータ等を記憶するRAM(Random Access Memory)を用いて実現される。
【0024】
物標検出装置1で検出した物標情報は、車両制御装置5に出力される。車両制御装置5では、物標検出装置1からの出力に応じて車間距離制御や自動ブレーキ制御等の制御を行う。このように、物標検出装置1および車両制御装置5は、全体としてACC(自動車間
制御装)、PBA(プリクラッシュブレーキアシスト)、PSB(プリクラッシュシートベルト)等のシステムを構成する。この意味で、物標検出装置1は、センサとしての機能を有している。
【0025】
図2は、ミリ波レーダ2の受信レベルと方位の関係を模式的に示す図である。。同図の上方に示されている曲線Lは、縦軸Pを受信レベル、横軸θを方位としたときのミリ波レーダ2が備えるアンテナ(指向性アンテナ)の指向性を模式的に示したものである。また、図の下方では、物標検出装置1を搭載した車両C0と、この車両C0の検出領域を示している。本実施の形態1では、メインローブLmの端部を含まないような受信レベルP1が従来と同じ通常閾値(第1の閾値)であるが、この閾値P1に加えてメインローブLmのうちサイドローブLSとの境界付近の領域を含む受信レベルP2(<P1)を低閾値(第2の閾値)として設定している。
【0026】
通常閾値P1での検出領域D1(第1検出領域)は方位角がΔθ1の範囲であるのに対して、低閾値P2での検出領域D2(第2検出領域)は方位角がΔθ2(>Δθ1)である。したがって、通常閾値P1よりも低い閾値を設定し、かかる低閾値P2のレベルまでミリ波の受信を可能とすることにより、ハードウェアを変更することなく、ソフトウェアの設定変更処理のみによって検出領域を広角化することができる。
【0027】
図3は、以上の構成を有する物標検出装置1が行う処理のうち、物標(例えば図2に示す先行車両C1)が検出領域から検出不可能な領域へと物標が離脱していく場合、その物標を追尾(トラッキング)していく離脱物標追尾処理の概要を示すフローチャートである。同3に示すフローチャートは、一つの検出サイクルで行われる処理の流れを示している。すなわち、実際の物標検出処理においては、図3に示す一連の処理を所定の周期で繰り返し実行することによって物標の検出を行っている。
【0028】
まず、通常閾値P1で物標を検出しない場合(ステップS1でNo)、通常閾値P1での外挿処理回数が所定回数以上であるか否かを判定する(ステップS2)。外挿処理回数が所定回数以上であれば(ステップS2でYes)、物標はロスト扱いとなる。その際、ロスト扱いとなった物標のピーク値が低閾値P2以上であるか否かを判定する(ステップS3)。この判定の結果、物標のピーク値が低閾値以上であれば(ステップS3でYes)、低閾値物標検出フラグをONする(ステップS4)。その後、低閾値物標として該当する物標を追尾する(ステップS5)。この際の外挿処理は、通常閾値P1における外挿処理と同じである。また、物標ロスト扱いとなる外挿回数は任意に設定可能である。
【0029】
なお、ステップS1で物標を検出した場合(ステップS1でYes)、ステップS2で外挿処理回数が所定回数に達していない場合(ステップS2でNo)、および物標のピーク値が低閾値未満である場合(ステップS3でNo)には、当該サイクルにおける処理を終了する。
【0030】
図4は、以上説明した離脱物標追尾処理の一例を示す図であり、具体的には、先行車両C1が通常閾値P1での検出領域D1から低閾値P2での検出領域D2へと離脱していく状況を模式的に示す図である。図4に破線で示す先行車両C1の位置は、物標a1に対応する位置である。また、図5は、図4に示す先行車両C1の離脱追尾処理を時系列で並べた図である。これらの図に示す場合、通常閾値P1および低閾値P2ともに物標ロスト扱いとなるまでの外挿回数が2回の場合を示している。すなわち、通常閾値物標(丸で表示)および低閾値物標(四角で表示)ともに白抜きのものが外挿によって得られた物標を表している。
【0031】
各サイクルごとに説明する。1サイクル目では、通常閾値物標a1が検出されている(ステップS1)、2〜3サイクル目では通常閾値物標a2およびa3が外挿されている。3サイクル目修了時点で、通常閾値物標の外挿回数が所定値2に達しているため、追尾対象の物標はロスト扱いとなる(ステップS2)。その後、ピーク値が低閾値P2以上であったため(ステップS3)、低閾値物標検出フラグがONとなり(ステップS4)、低閾値物標追尾処理が始まる。なお、図5にも示すように、通常閾値P1の検出領域D1は、低閾値P2の検出領域D2よりも狭いため、通常閾値物標が検出される場合には、必ず低閾値物標も検出される。
【0032】
4〜8サイクル目は、低閾値物標の検出処理である(ステップS5)。図4および図5に示す場合、4〜6サイクルで低閾値物標b4、b5、b6を順次検出する一方が、7サイクル目から低閾値物標b7およびb8が外挿された後の物標はない。これは、先行車両C1が、低閾値物標の検出領域D2よりも外に移動したからである。
【0033】
従来、ミリ波レーダ2が有する指向性アンテナのサイドローブ領域やメインローブのうちで利得の低い領域で検出した物標については、従来よりも閾値が低い低閾値で物標を検出しているため、不要な物標や誤った物標を検出してしまうことがあり、信頼度が低かった。これに対して本実施の形態1では、離脱していく車両について、通常閾値検出領域で物標を追尾することにより、物標検出精度を落とすことなく、確実に広角エリアまで物標を検出することができる。この結果、検出領域D1から離脱していく車両をロストすることなく追尾することができ、応答性が高く高精度な車両制御を実現することができる。
【0034】
また、サイドローブ領域やメインローブのうちで利得の低い領域に対する検知エリアでは、従来設定している通常閾値P1とは別に通常閾値P1よりも低い低閾値P2を設定して物標を検索することにより、アンテナ等のハードウェア構成を変更することなく、ソフトウェアの変更のみでミリ波レーダ2の検知領域を広角化することができる。
【0035】
以上説明した本発明の実施の形態1によれば、信号波を送信し、この送信した信号波の反射波を受信することによって物標を検出する際、前記信号波の強度が第1の閾値以上のときに第1検出領域に存在する物標を検出し、前記信号波の強度が前記第1の閾値よりも小さい第2の閾値以上のときに前記第1検出領域よりも広く前記第1検出領域を含む第2検出領域に存在する物標を検出する検出手段を備えたことにより、本来の検出感度を維持しつつ、物標の検出領域を広角化することが可能となる。
【0036】
(実施の形態2)
図6は、本発明の実施の形態2に係る物標検出装置の機能構成を示すブロック図である。同図に示す物標検出装置11は、上記実施の形態1に係る物標検出装置1と同じ構成を有するミリ波レーダ2と、所定の視野内の画像を撮像し、この撮像した画像を用いて画像物標を検出する画像検出手段である画像センサ6と、ミリ波レーダ物標と画像物標とをフュージョンすることによってフュージョン物標を生成し、このフュージョン物標を用いて物標追尾処理を行う演算部7と、記憶部4とを備える。
【0037】
演算部7は、フュージョン処理を行ってフュージョン物標を生成するフュージョン処理部71と、フュージョン物標を用いて所定の領域内に存在する物標を追尾する物標追尾処理部72(第2物標追尾処理手段)とを有する。
【0038】
図7は、ミリ波レーダ2と画像センサ6の検出領域を模式的に示す図である。同図に示すように画像センサ6の検出領域D3(第3検出領域)は、ミリ波レーダ2の低閾値レベルの検出領域D2と一致するか、またはその検出領域D2よりも広い(図7では後者の場合を示している)。
【0039】
図8は、道路を走行中の車両の前方に先行車両が割り込んでくる場合の割込物標検出処理の概要を示すフローチャートである。同図に示すフローチャートは、一つの検出サイクルで行われる処理の流れを示しており、実際の処理においては、図8に示す一連の処理を所定の周期で繰り返している。まず、低閾値P2で物標を検出した場合(ステップS11でYes)、画像物標検出幅の範囲内にミリ波低閾値物標が存在するか否かを検出する(ステップS12)。図9−1〜図9−3は、ステップS12の処理において、画像物標検出幅の範囲内にミリ波低閾値物標が存在する場合(ステップS12でYes)を例示する図である。これらの図において、H型の領域IP1〜IP3が画像物標検出幅をそれぞれ表し、正方形領域MPがミリ波物標を示している。
【0040】
図9−1〜図9−3に示すように、画像物標検出幅の範囲内にミリ波物標が存在する場合(ステップS12でYes)、画像フラグをONとする(ステップS13)。この場合には、その後、割込フラグをONとして(ステップS15)、低閾値物標を割込物標(割込フラグがONである物標)として登録する(ステップS16)。これに対して、画像物標検出幅の範囲内にミリ波物標が存在しない場合(ステップS12でNo)には、画像フラグをOFFとし(ステップS14)、割込フラグをONとする(ステップS15)。その後、低閾値物標として割込物標を登録する(ステップS16)。
【0041】
ところで、以上説明した割込物標検出処理では、画像フラグがON/OFFによらずに割込フラグをONとしているが、割込物標情報に基づいて車両制御装置5が制御を行う際には、画像フラグのON/OFFに応じて低閾値物標に対する信頼度が異なるという前提にたった処理を行うように設定しておく。換言すれば、低閾値物標は単独としては信頼度が低い物標であるが、画像フラグが立つ(ON)ことによって信頼度が向上するという前提のもとで制御を行うような設定とすればよい。
【0042】
図10は、割込物標検出処理で検出した割込物標を追尾する割込物標追尾処理の概要を示すフローチャートである。この図10も、図8と同様に一つの検出サイクルで行われる処理の流れを示しており、実際の処理においては、図10に示す一連の処理を所定の周期で繰り返している。まず、ステップS21でミリ波低閾値を割込物標として検出しているか否かを判定し、割込物標として検出中である場合(ステップS21でYes)には、ミリ波低閾値物標のピーク値が通常閾値以上であるか否かを判定する(ステップS22)。この判定の結果、ミリ波低閾値物標のピーク値が通常閾値以上である場合(ステップS22でYes)は、通常閾値領域に車両が進入したことを意味するので、割込みフラグをOFFし(ステップS23)、検出した物標を通常閾値物標として登録する(ステップS24)。これに対して、ミリ波低閾値を割込み物標として検出しない場合(ステップS21でNo)やミリ波低閾値物標のピーク値が通常閾値以下である場合(ステップS22でNo)には、処理を終了する。
【0043】
図11は、以上説明した割込物標検出処理から割込物標追尾処理に至る処理の一例を示す図であり、具体的には、先行車両C1が画像センサ6の検出領域D3の外部から検出領域D2を介して検出領域D1の内部(車両C0の略前方)に割り込んでくる状況を示す図である。図11に破線で示す先行車両C1の位置は、物標c1を検出したときの位置である。また、図12は、図11に示す先行車両C1の割込追尾処理を時系列で並べた図である。
【0044】
各サイクルごとに説明する。1サイクル目では、上述した割込物標検出処理にしたがって低閾値物標の検出領域D2で低閾値物標が検知され、割込物標として登録される。その後、4サイクル目までは低閾値物標として検出される(割込フラグON)。この間、画像センサ6で検出した画像物標検出幅の中に低閾値物標が存在していれば(図9−1〜図9−3を参照)、画像フラグをONとする。
【0045】
5サイクル目において、物標は通常閾値の検出領域D1内部に進入してくる。この結果、割込フラグがOFFとなり、通常閾値物標d5として登録される。以後、8サイクル目まで通常閾値物標d6、d7、d8と順次登録される(9サイクル目以降は省略)。
【0046】
このようにして、検出領域D3の外部から割り込んでくる物標に対しては、画像センサ6の情報を加えたセンサフュージョン処理の結果に基づいて物標を検出、判定することにより、割込物標を早期に検出することが可能となる。これにより、応答性が高く、より高精度かつスムーズな車両制御が実現可能となり、例えば衝突しそうな車両に対してより早い段階から警報を発したり、シートベルト制御、ブレーキ制御等を適確なタイミングで起動することができるようになる。
【0047】
なお、離脱追尾処理については、上述した実施の形態1と同様に行えばよい。この意味で、物標追尾処理部72は、第1物標追尾処理手段としての機能も具備している。
【0048】
以上説明した本発明の実施の形態2によれば、信号波を送信し、この送信した信号波の反射波を受信することによって物標を検出する際、前記信号波の強度が第1の閾値以上のときに第1検出領域に存在する物標を検出し、前記信号波の強度が前記第1の閾値よりも小さい第2の閾値以上のときに前記第1検出領域よりも広く前記第1検出領域を含む第2検出領域に存在する物標を検出する検出手段を備えたことにより、上記実施の形態1と同様、本来の検出感度を維持しつつ、物標の検出領域を広角化することが可能となる。
【0049】
また、本実施の形態2によれば、画像センサの情報を加えたセンサフュージョン処理を行うことにより、ミリ波レーダの検出領域外部から割り込んでくる車両を早期に検出することが可能となり、一段と安全な走行を支援するシステムを実現することができる。
【0050】
(その他の実施の形態)
ここまで、本発明を実施するための最良の形態として、実施の形態1および2を詳述してきたが、本発明はそれら2つの実施の形態によってのみ限定されるべきものではない。例えば、検出手段としてミリ波レーダを二つ設けてもよい。この場合には、一方を遠距離狭角DBF方式によるミリ波レーダとし、他方を近距離モノパルス方式のミリ波レーダとすることにより、互いに補完しあいながらより精度の高い物標検出を実現することができる。
【0051】
また、検出手段を2つ用いる場合の組み合わせは、必ずしも上述したミリ波レーダの組み合わせに限定されるわけではなく、一方が高解像度のレーダであり、2つのレーダの検出領域が異なっていれば如何なる形式のレーダを適用しても構わない。
【0052】
このように、本発明は、ここでは記載していないさまざまな実施の形態等を含みうるものであり、特許請求の範囲により特定される技術的思想を逸脱しない範囲内において種々の設計変更等を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施の形態1に係る物標検出装置の機能構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る物標検出装置が備えるミリ波レーダの受信レベルと方位の関係を模式的に示す図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る物標検出装置が行う離脱物標追尾処理の概要を示すフローチャートである。
【図4】離脱物標追尾処理の具体例を示す図である。
【図5】図4に示す離脱追尾処理を時系列で並べた図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係る物標検出装置の機能構成を示すブロック図である。
【図7】ミリ波レーダと画像センサの検出領域を模式的に示す図である。
【図8】本発明の実施の形態2に係る物標検出装置が行う割込物標検出処理の概要を示すフローチャートである。
【図9−1】画像物標検出幅の範囲内にミリ波低閾値物標が存在する場合の例(第1例)を示す図である。
【図9−2】画像物標検出幅の範囲内にミリ波低閾値物標が存在する場合の例(第2例)を示す図である。
【図9−3】画像物標検出幅の範囲内にミリ波低閾値物標が存在する場合の例(第3例)を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態2に係る物標検出装置が行う割込物標追尾処理の概要を示すフローチャートである。
【図11】割込物標検出処理から割込物標追尾処理に至る処理の一例を示す図である。
【図12】図11に示す割込検出処理から割込追尾処理までを時系列で並べた図である。
【符号の説明】
【0054】
1、11 物標検出装置
2 ミリ波レーダ
3、7 演算部
4 記憶部
5 車両制御装置
6 画像センサ
31 検出部
32、72 物標追尾処理部
71 フュージョン処理部
0 車両
1 先行車両
1、D2、D3 検出領域
L 曲線
m メインローブ
S サイドローブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号波を送信し、この送信した信号波の反射波を受信することによって物標を検出する物標検出装置であって、
前記信号波の強度が第1の閾値以上のときに第1検出領域に存在する物標を検出し、前記信号波の強度が前記第1の閾値よりも小さい第2の閾値以上のときに前記第1検出領域よりも広く前記第1検出領域を含む第2検出領域に存在する物標を検出する検出手段を備えたことを特徴とする物標検出装置。
【請求項2】
前記第1検出領域は、前記信号波の送信方向を中心として設定され、前記第2検出領域は前記第1検出領域よりも送信する信号の強度が小さい領域であることを特徴とする請求項1記載の物標検出装置。
【請求項3】
前記物標で反射した反射波の強度のピーク値と前記第1および第2の閾値との大小関係に基づいて、前記物標の前記第1検出領域から前記第2検出領域への移動を追尾する第1物標追尾処理手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1または2記載の物標検出装置。
【請求項4】
前記第2検出領域を含む第3検出領域で画像を撮像し、この撮像した画像を用いて前記第3検出領域に存在する物標を画像物標として検出する画像検出手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の物標検出装置。
【請求項5】
前記物標で反射した反射波の強度のピーク値と前記第1および第2の閾値との大小関係、ならびに前記物標と前記画像検出手段で検出した画像物標の物標検出幅との関係に基づいて、前記物標の前記第2検出領域から前記第1検出領域への移動を追尾する第2物標追尾処理手段をさらに備えたことを特徴とする請求項4記載の物標検出装置。
【請求項6】
信号波を送信し、この送信した信号波の反射波を受信することによって物標を検出する物標検出方法であって、
前記信号波の強度が第1の閾値以上のときに第1検出領域に存在する物標を検出し、前記信号波の強度が前記第1の閾値よりも小さい第2の閾値以上のときに前記第1検出領域よりも広く前記第1検出領域を含む第2検出領域に存在する物標を検出することを特徴とする物標検出方法。
【請求項7】
前記第1検出領域は、前記信号波の送信方向を中心として設定され、前記第2検出領域は前記第1検出領域よりも送信する信号の強度が小さい領域であることを特徴とする請求項6記載の物標検出方法。
【請求項8】
前記物標で反射した反射波の強度のピーク値と前記第1および第2の閾値との大小関係に基づいて、前記物標の前記第1検出領域から前記第2検出領域への移動を追尾することを特徴とする請求項6または7記載の物標検出方法。
【請求項9】
前記第2検出領域を含む第3検出領域で画像を撮像し、この撮像した画像を用いて前記第3検出領域に存在する物標を画像物標として検出することを特徴とする請求項6〜8のいずれか一項記載の物標検出方法。
【請求項10】
前記物標で反射した反射波の強度のピーク値と前記第1および第2の閾値との大小関係、ならびに前記物標と前記画像物標の物標検出幅との関係に基づいて、前記物標の前記第2検出領域から前記第1検出領域への移動を追尾することを特徴とする請求項9記載の物標検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図9−3】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−232409(P2007−232409A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−51268(P2006−51268)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】