説明

物理量センサ

【課題】広範囲なレンジで物理量検出が行え、かつ、微小な物理量変化も検出できる物理量センサを提供する。
【解決手段】第1センサ部が圧力の変化に対してセンサ出力を変化させられる第1圧力レンジと第2センサ部が圧力の変化に対してセンサ出力を変化させられる第2圧力レンジとを異ならせると共に、第1圧力レンジと第2圧力レンジとを連続させ、第1圧力レンジおよび第2圧力レンジにて圧力を検出したいレンジ全域をカバーする。このような圧力センサによれば、第1センサ部および第2センサ部のそれぞれで検出したい圧力レンジ全域をカバーしつつ、各圧力レンジにおいて高い感度で圧力検出が行える。したがって、広範囲な圧力検出が行えると共に微小な圧力変化も検出することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ部の出力のレンジを大きくでき、測定対象となる物理量の小さな変化も検出できる物理量センサに関するもので、特に歪ゲージで構成したセンサ部を備える圧力センサに用いて好適である。
【背景技術】
【0002】
従来、圧力センサでは、冗長性を持たせるために2つのセンサ部を備え、一方のセンサ部が故障してももう一方のセンサ部のセンサ出力に基づいて圧力検出が行えるようにしたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この圧力センサでは、基本的に一方のセンサ部が故障しても他のセンサ部で圧力検出を保証するものであるため、各センサ部の圧力−電圧特性は基本的には同様となっており、例えば、図8に示すような特性となっている。なお、各センサ部の製造誤差などに起因するセンサ出力のズレがあるため、この図ではセンサ出力が若干ずれているものが記載してあるが、圧力変化に対する出力電圧の変化勾配、つまり感度は基本的に2つのセンサ部共に同じものとされている。
【特許文献1】特開2001−272293号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のように2つのセンサ部を備えた圧力センサが提案されているものの、2つのセンサ部で検出できる圧力範囲は同じであるため、圧力検出可能なレンジを広げれば、各センサ部の感度は共に低くなり、微小な圧力変化を検出することができない。逆に、2つのセンサ部の感度を高くすれば、圧力検出可能なレンジが狭まり、測定対象となる圧力媒体の変化をカバーできる圧力検出が行えなくなる。
【0004】
なお、ここでは物理量センサとして圧力センサを例に挙げて説明したが、他のセンサに関しても上記と同様のことが言える。
【0005】
本発明は上記点に鑑みて、広範囲なレンジで物理量検出が行え、かつ、微小な物理量変化も検出できる物理量センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明では、第1センサ部(1、3)が物理量の変化に対してセンサ出力を変化させられる第1物理量レンジと第2センサ部(2、4)が物理量の変化に対してセンサ出力を変化させられる第2物理量レンジとが異なっており、第1物理量レンジと第2物理量レンジは共に物理量を検出したいレンジ全域に対して一部とされており、第1物理量レンジと第2物理量レンジとが連続していることにより、第1物理量レンジおよび第2物理量レンジにて物理量を検出したいレンジ全域とされていることを第1の特徴としている。
【0007】
このような物理量センサによれば、第1センサ部(1、3)および第2センサ部(2、4)のそれぞれで検出したい物理量レンジ全域をカバーしつつ、各物理量レンジにおいて高い感度で物理量検出が行える。したがって、広範囲な物理量検出が行えると共に微小な物理量変化も検出することが可能になる。
【0008】
この場合、第1物理量レンジと第2物理量レンジを部分的にオーバラップさせるようにすれば、第1センサ部(1、3)および第2センサ部(2、4)で検出できる物理量レンジに冗長性を持たせることにより、第1センサ部(1、3)および第2センサ部(2、4)で検出できる物理量レンジが製造誤差などによってずれたとしても、それを許容することが可能となる等の効果も得られる。
【0009】
また、本発明では、第1センサ部(1、3)が物理量の変化に対してセンサ出力を変化させられる第1物理量レンジと第2センサ部(2、4)が物理量の変化に対してセンサ出力を変化させられる第2物理量レンジとが異なっていると共に、第1センサ部(1、3)における物理量変化に対するセンサ出力特性を示す直線の勾配が第2センサ部(2、4)における物理量変化に対するセンサ出力特性を示す直線の勾配と比べて大きくされており、第1物理量レンジは物理量を検出したいレンジ全域に対して一部とされ、第2物理量レンジは物理量を検出したいレンジ全域とされていることを第2の特徴としている。
【0010】
このような物理量センサによれば、第2センサ部(2、4)で検出したい物理量レンジ全域をカバーしつつ、第1センサ部(1、3)で感度の高い物理量検出を行うことができる。したがって、広範囲な物理量検出が行えると共に微小な物理量変化も検出することが可能になる。
【0011】
また、本発明では、第1センサ部(1、3)が物理量の変化に対してセンサ出力を変化させられる第1物理量レンジは物理量を検出したいレンジ全域もしくはその一部とされ、第2センサ部(2、4)が物理量の変化に対してセンサ出力を変化させられる第2物理量レンジは物理量を検出したいレンジ全域とされており、第1センサ部(1、3)は第1物理量レンジにおいて複数段に物理量に対するセンサ出力の特性を切替え、複数段それぞれにおいて第1センサ部(1、3)における物理量変化に対するセンサ出力特性を示す直線の勾配が第2センサ部(2、4)における物理量変化に対するセンサ出力特性を示す直線の勾配よりも大きくされていることを第3の特徴としている。
【0012】
このような物理量センサによれば、第2センサ部(2、4)で検出したい物理量レンジ全域をカバーしつつ、第1センサ部(1、3)で感度の高い物理量検出を行うことができる。したがって、広範囲な物理量検出が行えると共に微小な物理量変化も検出することが可能になる。
【0013】
以上説明した本発明の第1〜第3の特徴を有する物理量センサとして、例えば、測定対象となる物理量を圧力とする圧力センサを挙げることができる。このような圧力センサにおいては、第1センサ部(1、3)および第2センサ部(2、4)における感度およびオフセットを補正することにより、第1センサ部(1、3)における物理量変化に対するセンサ出力特性を示す直線の勾配および切片と、第2センサ部(2、4)における物理量変化に対するセンサ出力特性を示す直線の勾配および切片を設定することが可能である。
【0014】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0016】
(第1実施形態)
図1に、本発明の一実施形態を適用した圧力センサの回路構成を示す。以下、図1に基づき圧力センサの構成について説明する。
【0017】
本実施形態に示す圧力センサにおいては、測定対象となる媒体の圧力に応じた出力を発生させる第1、第2圧力検出用回路1、2と、第1圧力検出用回路1または第2圧力検出用回路2の出力を増幅する第1、第2差動増幅回路3、4とが備えられている。これらのうち、第1圧力検出用回路1および第1差動増幅回路3が第1センサ部を構成し、第2圧力検出用回路2および第2差動増幅回路4が第2センサ部を構成している。そして、第1、第2差動増幅回路3、4の出力が第1、第2センサ部のセンサ出力として用いられる。
【0018】
第1圧力検出用回路1には、4つの拡散抵抗(歪ゲージ)5a〜5dで構成されたブリッジ回路からなる第1センシング部10と、第1センシング部10に対して所望の定電流を流す第1定電流回路11と、感度やオフセットおよびオフセット温度特性に応じたデータを出力する第1データ出力部12と、第1データ出力部12から出力されるデジタルデータをアナログ値に変換して第1定電流回路11に出力する第1D/A変換部13とが備えられている。
【0019】
これらにより、圧力検出時においては、第1センシング部10から印加圧力に応じた出力が発生させられるようになっている。そして、これらの構成により、第1データ出力部12が出力したデータに基づいて第1定電流回路11から定電流が流され、第1センシング部10に印加される電圧が調整されて、感度やオフセットおよびオフセット温度特性の補正が行われるようになっている。
【0020】
そして、第1差動増幅回路3によって第1センシング部10の出力、具体的には、ブリッジ回路における中点電位の電位差が第1差動増幅回路3にて増幅され、この増幅後の出力が第1センサ出力として用いられる。
【0021】
第2圧力検出用回路2も第1圧力検出用回路1と同様の構成とされている。具体的には、4つの拡散抵抗(歪ゲージ)6a〜6dで構成されたブリッジ回路からなる第2センシング部20と、第2センシング部20に対して所望の定電流を流す第2定電流回路21と、感度やオフセットおよびオフセット温度特性に応じたデータ等を出力する第2データ出力部22と、第2データ出力部22が出力したデジタルデータをアナログ値に変換して第2定電流回路21に出力する第2D/A変換部23とが備えられている。
【0022】
これらにより、圧力検出時においては、第2センシング部20から印加圧力に応じた出力が発生させられるようになっている。そして、これらの構成により、第2データ出力部22が出力したデータに基づいて第2定電流回路21から定電流が流され、第2センシング部20に印加される電圧が調整されて、感度やオフセットおよびオフセット温度特性の補正が行われるようになっている。
【0023】
そして、第2差動増幅回路4によって第2センシング部20の出力、具体的には、ブリッジ回路における中点電位の電位差が第2差動増幅回路3にて増幅され、この増幅後の出力が第2センサ出力として用いられる。
【0024】
次に、上記のように構成された圧力センサにおける圧力と第1、第2センサ出力の関係について説明する。図2は、第1、第2センシング部10、20に対して圧力を印加した場合の第1、第2センシング部10、20が発生させる第1、第2センサ出力の関係(圧力−出力電圧特性)を示したものである。
【0025】
この図に示されるように、圧力変化に対する第1センサ出力の変化と第2センサ出力の変化は、それぞれ変化の仕方が異なっている。具体的には、第1センサ出力が変化する第1圧力レンジと第2センサ出力が変化する第2圧力レンジとが異なり、かつ、第1センサ出力が変化する第1圧力レンジと第2センサ出力が変化する第2圧力レンジが連続したものとされている。つまり、第1圧力レンジでは第1センサ出力の変化に基づいて圧力検出が行え、第2圧力レンジでは第2センサ出力の変化に基づいて圧力検出が行えるようになっている。
【0026】
これらの圧力変化に対する第1、第2センサ出力の変化の勾配、つまり第1、第2圧力検出用回路1、2の感度は、図8に示した従来の圧力センサにおける各センサ部の感度と比べて2倍程度とされている。すなわち、従来では、検出したい圧力レンジ全域において2つのセンサ部のセンサ出力が同じように変化する形態としているが、本実施形態では、検出したい圧力レンジをニ分割し、2つの圧力検出用回路1、2のセンサ出力が異なる圧力レンジで変化する形態としている。
【0027】
このような圧力−出力電圧特性を有する第1、第2圧力検出用回路1、2は、具体的には、感度やオフセットの補正によって形成することが可能である。例えば、従来のように各センシング部の圧力−出力電圧特性が検出したい圧力レンジ全域でセンサ出力が変化するという特性であったとした場合、センシング部に流す電流値を調整することにより感度補正を行えば、圧力−出力電圧特性の直線の傾きを変更できる。また、センシング部に流す電流値を調整する等によりオフセット調整を行えば、圧力−出力電圧特性の直線の切片を変更できる。このため、感度調整やオフセット調整を行うことで、各圧力検出回路1、2の圧力−出力電圧特性を上記のような形態にできる。
【0028】
このような本実施形態の圧力センサによれば、2つの圧力検出用回路1、2それぞれで検出したい圧力レンジ全域をカバーしつつ、各圧力レンジにおいて高い感度で圧力検出が行える。したがって、広範囲な圧力検出が行えると共に微小な圧力変化も検出することが可能になる。
【0029】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態の圧力センサは、第1実施形態に対して圧力−出力電圧特性を変更したものであり、その他、例えば圧力センサの回路構成等に関しては第1実施形態と同様であるため、ここでは異なる部分についてのみ説明する。
【0030】
図3は、本実施形態の圧力センサに備えられる第1、第2センシング部10、20に対して圧力を印加した場合の第1、第2センシング部10、20が発生させる第1、第2センサ出力の関係(圧力−出力電圧特性)を示したものである。
【0031】
この図に示されるように、第1センサ出力が変化する第1圧力レンジと第2センサ出力が変化する第2圧力レンジとが異なっているが、第1圧力レンジの一部と第2圧力レンジの一部がオーバラップさせられている。つまり、第1圧力検出用回路1と第2圧力検出用回路2での検出可能な圧力レンジを部分的に重複させることで、その部分に関して冗長性を持たせるようにしている。
【0032】
このような圧力−出力電圧特性を有する第1、第2圧力検出用回路1、2も、上記第1実施形態と同様に、感度やオフセットの補正によって形成することが可能であるが、上記第1実施形態に対して感度を若干鈍くすることで、各圧力検出用回路1、2で検出可能な圧力レンジを広くする必要がある。
【0033】
このような本実施形態の圧力センサによれば、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができると共に、第1、第2圧力検出用回路1、2で検出できる圧力レンジに冗長性を持たせることにより、各圧力検出用回路1、2で検出できる圧力レンジが製造誤差などによってずれたとしても、それを許容することが可能となる等の効果も得られる。
【0034】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態の圧力センサは、第1実施形態に対して圧力−出力電圧特性を変更したものであり、その他、例えば圧力センサの回路構成等に関しては第1実施形態と同様であるため、ここでは異なる部分についてのみ説明する。
【0035】
図4は、本実施形態の圧力センサに備えられる第1、第2センシング部10、20に対して圧力を印加した場合の第1、第2センシング部10、20が発生させる第1、第2センサ出力の関係(圧力−出力電圧特性)を示したものである。
【0036】
この図に示されるように、第1センサ出力が変化する第1圧力レンジは検出したい圧力レンジの一部とされており、第2センサ出力が変化する第2圧力レンジは検出したい圧力レンジ全域とされている。つまり、第1圧力検出用回路1によって感度の高い圧力検出を可能にしつつ、第2圧力検出用回路2によって広範囲な圧力レンジでの圧力検出を可能にしている。
【0037】
このような圧力−出力電圧特性を有する第1、第2圧力検出用回路1、2も、上記第1実施形態と同様に、感度やオフセットの補正によって形成することが可能であるが、第1圧力検出用回路1の方が第2圧力検出用回路2と比べて感度を高くするような設定とすることになる。
【0038】
このような本実施形態の圧力センサによれば、第1圧力検出用回路1で検出可能な圧力レンジでないと感度の高い圧力検出が行えなくなるが、その圧力レンジをシステム上最も使用するレンジに設定することで、ほとんどの場合に感度の高い圧力検出を行うことが可能となる。このため、本実施形態の圧力センサによっても、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0039】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態について説明する。本実施形態の圧力センサは、第1実施形態に対して圧力センサの回路構成の一部と圧力−出力電圧特性を変更したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、ここでは異なる部分についてのみ説明する。
【0040】
図5は、本実施形態の圧力センサの回路構成を示した図である。この図に示されるように、第1差動増幅回路3が発生させるセンサ出力が第1データ出力部12にフィードバックされるようになっている。これに基づき、第1データ出力部12は、オフセットの補正用データを変更できるようになっている。具体的には、第1データ出力部12にセンサ出力を比較するためのしきい値が記憶させてあり、センサ出力がしきい値を超える毎にオフセットの補正用データが切替えられるようになっている。
【0041】
図6は、本実施形態の圧力センサに備えられる第1、第2センシング部10、20に対して圧力を印加した場合の第1、第2センシング部10、20が発生させる第1、第2センサ出力の関係(圧力−出力電圧特性)を示したものである。
【0042】
この図に示されるように、第3実施形態と同様に、第1センサ出力が変化する第1圧力レンジは検出したい圧力レンジ全域に設定されているが、第2センサ出力が変化する第2圧力レンジは検出したい圧力レンジ全域において三角波状(ノコギリ波状)に複数段に特性が切替えられている。これにより、第1圧力検出用回路1によって広範囲な圧力レンジでの圧力検出を可能にしつつ、第2圧力検出用回路2によって感度の高い圧力検出を可能にしている。
【0043】
このような圧力−出力電圧特性を有する第1、第2圧力検出用回路1、2も、上記第1実施形態と同様に、感度やオフセットの補正によって形成することが可能であるが、第1圧力検出用回路1と比べて第2圧力検出用回路2の感度を高くするような設定とすることになる。また、第2圧力検出用回路2の圧力−出力電圧特性に関しては、上述したように、センサ出力がしきい値を超える毎にオフセットの補正用データが切替えられることで、この特性を示す直線の切片を切替えることができ、上記のような三角波状の特性とすることが可能である。
【0044】
このような本実施形態の圧力センサにより、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0045】
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態について説明する。本実施形態の圧力センサは、第4実施形態に対して圧力−出力電圧特性を変更したものであり、その他、例えば圧力センサの回路構成等に関しては第4実施形態と同様であるため、ここでは異なる部分についてのみ説明する。
【0046】
図7は、本実施形態の圧力センサに備えられる第1、第2センシング部10、20に対して圧力を印加した場合の第1、第2センシング部10、20が発生させる第1、第2センサ出力の関係(圧力−出力電圧特性)を示したものである。
【0047】
この図に示されるように、第1センサ出力が変化する第1圧力レンジは検出したい圧力レンジの一部とされており、第2センサ出力が変化する第2圧力レンジは検出したい圧力レンジ全域とされている。つまり、上記第4実施形態では、第1センサ出力がしきい値を超える毎にオフセット補正用のデータを切替えることで、検出を行いたい圧力レンジの全域において第1圧力検出用回路1での高い感度の圧力検出が行えるようにしたが、本実施形態では、そのうちの一部のレンジにおいてのみ高い感度の圧力検出が行えるようにしている。
【0048】
このような本実施形態の圧力センサによれば、第1圧力検出用回路1で検出可能な圧力レンジでないと感度の高い圧力検出が行えなくなるが、その圧力レンジをシステム上最も使用するレンジに設定することで、ほとんどの場合に感度の高い圧力検出を行うことが可能となる。このため、本実施形態の圧力センサによっても、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0049】
(他の実施形態)
上記各実施形態では、物理量センサとして圧力センサを例に挙げて説明したが、圧力センサに限らず、電流センサ、光度センサ、トルクセンサ、荷重センサ、加速度センサ、ヨーレートセンサ、温度センサ、湿度センサなど、他の物理量の検出に用いられるセンサに対しても、上記のような物理量−出力電圧特性とすることで、上記各実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0050】
また、上記実施形態では第1、第2データ出力部12、22から感度やオフセットおよびオフセット温度特性に関するデータをデジタル信号として出力させ、それを第1、第2D/A変換部13、14でアナログ変換する形態としたが、これらを一つの構成とすることも可能である。すなわち、これら第1、第2データ出力部12、22および第1、第2D/A変換部13、14は、感度やオフセットおよびオフセット温度特性の補正指示を行う補正指示部としての役割を果たすものであり、補正指示部がどのようなブロック構成で構成されていても構わない。
【0051】
また、上記実施形態では、第1、第2定電流回路11、21が流す定電流を制御することにより、対して感度やオフセットおよびオフセット温度特性の補正を行うようにしているが、これらの補正は第1、第2差動増幅回路3、4で行われる場合も有るし、ブリッジ回路に備えられる拡散抵抗5a〜5d、6a〜6dの抵抗値を調整したり、これら各抵抗に対して並列若しくは直列的に接続されるトリム抵抗を調整したりすることで行われる場合も有る。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1実施形態における圧力センサの回路構成を示す図である。
【図2】図1に示す圧力センサに備えられる第1、第2センシング部10、20に対して圧力を印加した場合の第1、第2センシング部10、20が発生させる第1、第2センサ出力の関係を示した図である。
【図3】本発明の第2実施形態における圧力センサに備えられる第1、第2センシング部10、20に対して圧力を印加した場合の第1、第2センシング部10、20が発生させる第1、第2センサ出力の関係を示した図である。
【図4】本発明の第3実施形態における圧力センサに備えられる第1、第2センシング部10、20に対して圧力を印加した場合の第1、第2センシング部10、20が発生させる第1、第2センサ出力の関係を示した図である。
【図5】本発明の第4実施形態における圧力センサの回路構成を示す図である。
【図6】図5に示される圧力センサに備えられる第1、第2センシング部10、20に対して圧力を印加した場合の第1、第2センシング部10、20が発生させる第1、第2センサ出力の関係を示した図である。
【図7】本発明の第5実施形態における圧力センサに備えられる第1、第2センシング部10、20に対して圧力を印加した場合の第1、第2センシング部10、20が発生させる第1、第2センサ出力の関係を示した図である。
【図8】従来の圧力センサに備えられる各センサ部に対して圧力を印加した場合の各センサ出力の関係を示した図である。
【符号の説明】
【0053】
1、2…第1、第2圧力検出回路、3、14…第1、第2D/A変換部、3、4…第1、第2差動増幅回路、5a〜5d、6a〜6d…拡散抵抗、10、20…第1、第2センサ部、11、21…第1、第2定電流回路、12、22…第1、第2データ出力部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象となる物理量の変化に応じたセンサ出力を発生させる第1センサ部(1、3)および第2センサ部(2、4)を有してなる物理量センサであって、
前記第1センサ部(1、3)が物理量の変化に対してセンサ出力を変化させられる第1物理量レンジと前記第2センサ部(2、4)が物理量の変化に対してセンサ出力を変化させられる第2物理量レンジとが異なっており、前記第1物理量レンジと前記第2物理量レンジは共に物理量を検出したいレンジ全域に対して一部とされており、前記第1物理量レンジと前記第2物理量レンジとが連続していることにより、前記第1物理量レンジおよび前記第2物理量レンジにて前記物理量を検出したいレンジ全域とされていることを特徴とする物理量センサ。
【請求項2】
前記第1物理量レンジと前記第2物理量レンジが部分的にオーバラップしていることを特徴とする請求項1に記載の物理量センサ。
【請求項3】
測定対象となる物理量の変化に応じたセンサ出力を発生させる第1センサ部(1、3)および第2センサ部(2、4)を有してなる物理量センサであって、
前記第1センサ部(1、3)が物理量の変化に対してセンサ出力を変化させられる第1物理量レンジと前記第2センサ部(2、4)が物理量の変化に対してセンサ出力を変化させられる第2物理量レンジとが異なっていると共に、前記第1センサ部(1、3)における物理量変化に対するセンサ出力特性を示す直線の勾配が前記第2センサ部(2、4)における物理量変化に対するセンサ出力特性を示す直線の勾配と比べて大きくされており、前記第1物理量レンジは物理量を検出したいレンジ全域に対して一部とされ、前記第2物理量レンジは物理量を検出したいレンジ全域とされていることを特徴とする物理量センサ。
【請求項4】
測定対象となる物理量の変化に応じたセンサ出力を発生させる第1センサ部(1、3)および第2センサ部(2、4)を有してなる物理量センサであって、
前記第1センサ部(1、3)が物理量の変化に対してセンサ出力を変化させられる第1物理量レンジは物理量を検出したいレンジ全域もしくはその一部とされ、前記第2センサ部(2、4)が物理量の変化に対してセンサ出力を変化させられる第2物理量レンジは物理量を検出したいレンジ全域とされており、前記第1センサ部(1、3)は前記第1物理量レンジにおいて複数段に物理量に対するセンサ出力の特性を切替え、前記複数段それぞれにおいて前記第1センサ部(1、3)における物理量変化に対するセンサ出力特性を示す直線の勾配が前記第2センサ部(2、4)における物理量変化に対するセンサ出力特性を示す直線の勾配よりも大きくされていることを特徴とする物理量センサ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1つに記載の物理量センサが前記測定対象となる物理量を圧力とする圧力センサである場合において、前記第1センサ部(1、3)および前記第2センサ部(2、4)における感度およびオフセットを補正することにより、前記第1センサ部(1、3)における物理量変化に対するセンサ出力特性を示す直線の勾配および切片と、前記第2センサ部(2、4)における物理量変化に対するセンサ出力特性を示す直線の勾配および切片が設定されていることを特徴とする圧力センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−278725(P2007−278725A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−101931(P2006−101931)
【出願日】平成18年4月3日(2006.4.3)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】