説明

物理量検出センサーおよび電子機器

【課題】検出の精度を高めることができる物理量検出センサーを提供する。
【解決手段】自励発振回路26は、振動腕21a、21bに固定される駆動電極22a、22bを通じて、振動腕21a、21bの自励発振を引き起こす駆動信号を供給する。物理量の作用に応じて振動腕21a、21bに対して相対的に変位する相対変位片上には検出電極25a、25bが配置される。検出電極25a、25bは、駆動電極22aとの間で静電結合を生じる距離で駆動電極22aから離れる。検出回路27は、駆動信号に基づき、検出電極25a、25bからの静電容量信号を駆動信号検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は物理量検出センサーおよび電子機器等に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されるように、物理量(加速度)を検出する物理量検出センサーは一般に知られる。この物理量検出センサーは静電容量の変化を利用して加速度を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−262056号公報
【特許文献2】特開平8−35983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のような物理量検出センサーでは静電容量の変化は非常に小さい。静電容量の変化はできるだけ高い精度で検出されることが望まれる。また、物理量検出センサーはできるだけ小型化されることが望まれる。
【0005】
本発明の少なくとも1つの態様によれば、検出の精度を高めることができる物理量検出センサーを提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の一態様は、駆動電極を有する振動片と、物理量の作用に応じて前記振動片に対して相対的に変位する相対変位片と、前記駆動電極との間で静電結合を生じる距離で前記駆動電極から離れて前記相対変位片上に配置されている検出電極と、前記駆動電極を通じて前記振動片の自励発振を引き起こす駆動信号を供給する自励発振回路と、前記駆動信号、および、前記駆動電極と前記検出電極との間の静電容量に応じて前記検出電極に生じる静電容量信号に基づき、前記物理量を反映する物理量信号を検出する検出回路とを備えることを特徴とする物理量検出センサーに関する。
【0007】
自励発振の駆動信号は駆動電極と検出電極との間で静電容量の周期的変化を生み出す。したがって、検出電極の静電容量信号の周波数は駆動信号の周波数を反映する。このとき、物理量の作用に応じて振動片に対して相対的に相対変位片が変位すると、変位量に応じて静電容量は増減する。この増減は物理量の変化に相当する。こうして物理量の変化は静電容量信号の周期的変化に重畳される。その結果、駆動信号および静電容量信号に基づき物理量は高い精度で検出されることができる。
【0008】
(2)前記駆動電極は前記振動片の1壁面に配置されることができ、前記検出電極は、前記相対変位片上で、前記振動片の前記壁面に向き合う壁面に配置されることができる。こうして向き合う壁面上に駆動電極および検出電極が配置されると、駆動電極および検出電極はできる限り近接配置されることができる。その結果、駆動電極および検出電極の間で静電結合は強められることができる。
【0009】
(3)前記検出回路は、前記駆動信号と前記静電容量信号との同期検波から前記物理量信号を検出する同期検波回路を備えることができる。前述のように、物理量検出センサーでは物理量の変化は静電容量の周期的変化に重畳される。したがって、同期検波によれば、重畳された信号成分は高い精度で抽出されることができる。
【0010】
(4)物理量検出センサーは、前記駆動信号の周波数ωに基づき、前記駆動信号の周波数ωの2倍の周波数2ωの検波用信号を生成する2倍周波数生成回路をさらに備えることができ、前記検出回路は、前記2倍周波数生成回路から供給される前記検波用信号、および、前記駆動信号の周波数ωの2倍の周波数2ωで周期的に変化する前記静電容量信号に基づき前記物理量信号を検出することができる。
【0011】
振動片が周波数ωの駆動信号に基づき自励発振すると、振動片の振動は駆動電極と検出電極との間で静電容量に駆動信号の周波数ωの2倍の周波数2ωで周期的変化を生み出すことができる。したがって、検出電極の静電容量信号の周波数は2倍の周波数2ωの周期的変化を反映する。このとき、物理量の作用に応じて振動片に対して相対的に相対変位片が変位すると、変位量に応じて静電容量は増減する。この増減は物理量の変化に相当する。こうして物理量の変化は静電容量信号に重畳される。その結果、駆動信号および静電容量信号に基づき物理量は高い精度で検出されることができる。
【0012】
(5)前記検出回路は、前記検波用信号と前記静電容量信号との同期検波から前記物理量信号を検出する同期検波回路を備えることができる。前述のように、物理量検出センサーでは物理量の変化は静電容量の周期的変化に重畳される。したがって、同期検波によれば、重畳された信号成分は高い精度で抽出されることができる。
【0013】
(6)物理量検出センサーは、前記振動片の回転時にコリオリ力の作用で変形する検出振動片と、前記検出振動片に固定されて前記検出振動片の変形に応じて電気信号を出力する第2の検出電極とをさらに備えることができる。こうして物理量検出センサーは前述の物理量に加えて角速度を検出することができる。
【0014】
(7)物理量検出センサーでは、前記検出電極と前記第2の検出電極とが相互に接続されることができる。こうして検出電極と第2の検出電極とで外部接続用のパッドが共有されることができ、その結果、信号の取り出しにあたって配線は簡略化されることができる。
【0015】
(8)前記振動片の本体の材料には水晶が用いられることができる。こうした水晶の採用によれば、振動片の発振は安定する。その結果、高い精度で物理量は測定されることができる。
【0016】
(9)以上のような物理量検出センサーは電子機器に組み込まれることができる。電子機器には例えばデジタルスチルカメラやビデオカメラ、ナビゲーション装置、車両の車体姿勢検出装置、ポインティングデバイス、ゲームコントローラー、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)、携帯電話、ラジオコントロールヘリコプター、掃除ロボットが例示されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係る物理量検出センサー(加速度センサー)の構成を概略的に示す垂直断面図である。
【図2】第1実施形態に係る物理量検出センサーの振動子の構造を概略的に示す斜視図である。
【図3】第1実施形態に係る物理量検出センサーの回路構成を概略的に示すブロック図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る物理量検出センサーの振動子の構造を概略的に示す平面図である。
【図5】第2実施形態に係る物理量検出センサーの回路構成を概略的に示すブロック図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る物理量検出センサーの振動子の構造を概略的に示す透視斜視図である。
【図7】本発明の第4実施形態に係る物理量検出センサーの回路構成を概略的に示すブロック図である。
【図8】駆動信号の周波数ωの2倍の周波数2ωと静電容量との関係を示す模式図である。
【図9】本発明の第5実施形態に係る物理量検出センサーの振動子の構造を概略的に示す平面図である。
【図10】本発明の第5実施形態に係る物理量検出センサーの回路構成を概略的に示すブロック図である。
【図11】本発明の第6実施形態に係る物理量検出センサーの振動子の構造を概略的に示す平面図である。
【図12】本発明の第6実施形態に係る物理量検出センサーの回路構成を概略的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0019】
(1)第1実施形態に係る加速度センサーの構成
図1は本発明の第1実施形態に係る物理量検出センサーすなわち加速度センサー(物理量検出センサー)11の構成を概略的に示す。加速度センサー11は例えば箱形の容器12を備える。容器12は容器本体13および蓋材14を備える。容器本体13の開口は蓋材14で気密に塞がれる。容器12の内部空間は例えば真空に封止されることができる。容器12は剛体として機能する。少なくとも蓋材14は導体から形成されることができる。蓋材14が接地されれば、蓋材14は電磁波に対してシールド効果を発揮することができる。
【0020】
容器12には振動子16およびIC(集積回路)チップ17が収容される。振動子16およびICチップ17は容器12の内部空間内に配置される。振動子16は容器本体13に固定される。固定にあたって例えば接着剤が用いられることができる。ICチップ17は例えば容器本体13の底板に接着されればよい。
【0021】
図2に示されるように、振動子16は固定片19および2本の振動腕(振動片)21a、21bを備える。振動子16は固定片19で容器本体13に固定される。振動腕21a、21bは共通1個の固定片19から相互に平行に延びる。個々の振動腕21a、21bは第1駆動電極(駆動電極)22aおよび第2駆動電極(駆動電極)22bを有する。第1駆動電極21aおよび第2駆動電極21bは個々の振動腕21a、21bごとに振動腕21a、21bの本体の外表面に形成される。第1駆動電極22aおよび第2駆動電極22bは例えばクロムおよびクロムに積層される金といった導電材から形成される。第1駆動電極22aおよび第2駆動電極22bはそれぞれ個別にICチップ17に電気的に接続される。こういった接続にあたって振動子16の外表面には導電材の配線パターン(図示されず)が形成されることができる。
【0022】
振動子16は可動片(相対変位片)23を備える。可動片23は1対の梁24で固定片19に接続される。可動片23は錘として機能する。したがって、可動片23に加速度(物理量)が作用すると、可動片23は梁24の変形を通じて固定片19に対して相対的に変位することができる。その結果、可動片23は、加速度の作用に応じて振動腕21a、21bに対して相対的に変位することができる。ここでは、振動子16に直交三軸座標系xyzが設定される。振動腕21a、21bはy軸に平行に延びる。可動片23はy軸方向に変位することができる。可動片23の変位はx軸方向およびz軸方向に規制されることが望まれる。固定片19、振動腕21a、21bの本体および可動片23の材料には水晶が用いられることができる。固定片19、振動片21a、21bおよび可動片23は一体に形成されることができる。
【0023】
可動片23の外表面には検出電極25が固定される。検出電極25は例えばクロムおよびクロムに積層される金といった導電材から形成される。検出電極25は第1駆動電極22aとの間で静電結合を生じる距離で第1駆動電極22aから離れて可動片23上に配置される。すなわち、検出電極25と第1駆動電極22aとは誘電体(真空を含む)で相互に離隔される。検出電極25はICチップ17に電気的に接続される。こういった接続にあたって固定片19の外表面や可動片23の外表面には導電材の配線パターン(図示されず)が形成されることができる。第1および第2駆動電極22a、22bにICチップ17から駆動信号が供給されると、第1駆動電極22aと検出電極25との間に静電結合が生成される。静電結合の静電容量は駆動信号の周期的変化を反映する。同時に、静電結合の静電容量は可動片23のy軸方向変位を反映する。静電容量の変化はICチップ17に伝達される。ICチップ17の出力は例えば導体のピン端子(図示されず)から容器12の外側に引き出される。
【0024】
ICチップ17には、図3に示されるように、自励発振回路26および検出回路27が構築される。自励発振回路26は第1駆動電極22aおよび第2駆動電極22bから振動腕21a、21bに交流電圧を印加する。振動子16では、第1駆動電極22aに周波数ωの駆動信号が供給されると、180°の位相遅れで第2駆動電極22bから周波数ωの信号が出力される。自励発振回路26は振動腕21a、21bの固有周波数ωで振動腕21a、21bの自励発振を引き起こす。
【0025】
自励発振回路26は電流アンプ28、自動振幅制御回路(AGC)29および反転アンプ31を含む。電流アンプ28は配線で第2駆動電極22bに電気的に接続される。電流アンプ28は所定の増幅率で第2駆動電極22bの出力信号を増幅する。電流アンプ28には自動振幅制御回路29が接続される。自動振幅制御回路29には基準電圧回路32から基準電圧が供給される。自動振幅制御回路29は基準電圧に応じて出力信号の電圧振幅を一定に調整する。自動振幅制御回路29には反転アンプ31が接続される。反転アンプ31は自動振幅制御回路29の出力信号を反転する。反転アンプ31は配線で第1駆動電極22aに電気的に接続される。反転アンプ31の出力信号は第1駆動電極22aに供給される。自動振幅制御回路29は駆動電極22a、22bに与えられる電圧信号の温度変化を防ぐ。
【0026】
検出回路27はチャージアンプ34、同期検波回路37およびローパスフィルター38を含む。チャージアンプ34は配線で検出電極25に接続される。検出電極25には第1駆動電極22aとの静電結合に応じた電流が第1駆動電極22aの信号から270°の位相遅れで現れる。チャージアンプ34は検出電極25の検出信号すなわち静電容量信号を増幅する。
【0027】
チャージアンプ34には同期検波回路37が接続される。同期検波回路37は自励発振回路26の電流アンプ28の出力に基づきチャージアンプ34の出力を同期検波する。同期検波回路37には電流アンプ28の出力から360°の位相遅れで周波数ωの信号が供給される。この同期検波に応じて物理量すなわち加速度に相当する信号成分がチャージアンプ34の出力すなわち静電容量信号から抽出される。同期検波回路37にはローパスフィルター38が接続される。ローパスフィルター38は、加速度の変化よりも短い周期で変化する信号成分すなわちノイズを除去する。こうして加速度の大きさに応じてローパスフィルター38から信号(物理量信号)が出力される。
【0028】
(2)加速度センサーのキャリブレーション
加速度センサー11では、加速度が作用しなければ、可動片23は変位せず出力は「0(ゼロ)」を示す。y軸方向に加速度が作用すると、加速度の大きさに応じて可動片23は変位する。変位量に応じて静電容量は変化する。その結果、ローパスフィルター38から出力される信号の電圧値は変化する。こうして想定される計測域内で加速度と電圧値との相関関係が導き出される。その結果、検出される電圧値に基づき加速度は特定されることができる。
【0029】
(3)加速度センサーの動作
次に加速度センサー11の動作を説明する。第1駆動電極22aおよび第2駆動電極22bには周波数ωで交流電圧が印加される。振動腕21a、21bは固有周波数ωで自励発振する。駆動信号の周期的変化に応じて第1駆動電極22aと検出電極25との間で静電容量は周波数ωで周期的に変化する。すなわち、検出電極25の静電容量信号の周波数は第1駆動電極22aの駆動信号の周波数を反映する。
【0030】
同期検波回路37はチャージアンプ34の出力を同期検波する。その結果、駆動信号に相当する周波数成分は打ち消される。y軸方向に加速度が作用していなければ、可動片23は振動腕21a、21bに対してy軸方向に相対的に変位しない。可動片23の変位に基づく静電容量の変化は発生しない。その結果、検出回路27の出力は加速度=「0(ゼロ)」を特定する。
【0031】
y軸方向に加速度が作用すると、可動片23は加速度の作用に応じてy軸方向に変位する。加速度の大きさに応じて変位量は決定される。可動片のy軸方向変位は第1駆動電極22aと検出電極25との距離を変化させる。こうした距離の変化は静電容量の変化を生み出す。この静電容量の変化は、駆動信号の周期的変化を反映する周波数信号に重畳される。したがって、同期検波の働きで可動片23の変位に基づく静電容量の変化分は抽出される。同期検波は高い精度でチャージアンプ34の出力と振動子16の駆動信号との差分を抽出することから、可動片23の変位に基づく静電容量の変化分は高い精度で特定されることができる。加速度は高い精度で検出されることができる。
【0032】
加速度センサー11によれば、駆動信号すなわち交流電圧の周期的変化は、第1駆動電極22aと検出電極25との間で静電容量の周期的変化を生み出す。したがって、検出電極25の検出信号の周波数は振動子16の駆動信号の周波数ωを反映する。前述のように加速度は静電容量の周期的変化に重畳されることから、検出電極25から検出される静電容量の変化と、第1駆動電極22aおよび第2駆動電極22bに供給される駆動信号に基づき物理量すなわち加速度は高い精度で検出されることができる。特に、同期検波によれば、重畳された信号成分は高い精度で抽出されることができる。
【0033】
(4)第2実施形態に係る加速度センサーの構成
図4は第2実施形態に係る物理量検出センサーすなわち加速度センサー(物理量検出センサー)11の振動子16aを概略的に示す。この振動子16aには第1、第2および第3駆動電極42a、42b、42cが固定される。第1、第2および第3駆動電極42a、42b、42cは例えばクロムおよびクロムに積層される金といった導電材から形成される。第1駆動電極42aおよび第2駆動電極42bは一方の振動腕21aに駆動電圧を印加する。第3駆動電極42cおよび第2駆動電極42bは他方の振動腕21bに駆動電圧を印加する。
【0034】
この第2実施形態では、前述の検出電極25に代えて可動片23の外表面に第1検出電極25aおよび第2検出電極25bが固定される。第1および第2検出電極25a、25bは例えばクロムおよびクロムに積層される金といった導電材から形成される。第1検出電極25aは第1駆動電極42aとの間で静電結合を生じる距離で第1駆動電極42aから離れて配置される。第2検出電極25bは第3駆動電極42cとの間で静電結合を生じる距離で第3駆動電極42cから離れて配置される。第1検出電極25aおよび第2検出電極25bはそれぞれ個別にICチップ17に電気的に接続される。こういった接続にあたって固定片19の外表面や可動片23の外表面には導電材の配線パターン(図示されず)が形成されることができる。ここでは、第1検出電極25aおよび第2検出電極25bは、xy平面内で対応の第1駆動電極42aおよび第3駆動電極42cの中心線CL1、CL2からx軸方向に相互に反対向きにずらされて配置される。ずれ量は同等に設定されればよい。
【0035】
図5は第2実施形態に係る加速度センサー11の自励発振回路26aを概略的に示す。自励発振回路26aでは第3駆動電極42cに自動振幅制御回路29が接続される。第3駆動電極42cには自動振幅制御回路29の出力が供給される。自動振幅制御回路29および第3駆動電極42cの間にはアンプ43が接続されることができる。アンプ43は自動振幅制御回路29の出力を増幅する。こうして第1駆動電極42aおよび第3駆動電極42cには180°の位相差で駆動電圧が供給される。その結果、第1検出電極25aおよび第2検出電極25bには180°の位相差で静電容量の変化が現れる。差動アンプ36は検出信号の振幅を2倍に増幅することができる。その他の構造は第1実施形態に係る加速度センサー11のそれと同一であることができる。
【0036】
検出回路27aは、第1チャージアンプ34、第2チャージアンプ35、差動アンプ36、同期検波回路37およびローパスフィルター38を含む。第1チャージアンプ34は配線で第1検出電極25aに接続される。第1検出電極25aには第1駆動電極42aとの静電結合に応じた電流が第1駆動電極42aの信号から270°の位相遅れで現れる。第1チャージアンプ34は第1検出電極25aの検出信号を増幅する。第2チャージアンプ35は配線で第2検出電極25bに接続される。第2検出電極25bには第3駆動電極42cとの静電結合に応じた電流が第3駆動電極42cの信号から270°の位相遅れで現れる。第2チャージアンプ35は第2検出電極25bの検出信号を増幅する。第1チャージアンプ34および第2チャージアンプ35には差動アンプ36が接続される。差動アンプ36は第1チャージアンプ34の出力と第2チャージアンプ35の出力とを差動増幅する。第1チャージアンプ34および第2チャージアンプ35は270°の位相遅れを生成する。差動アンプ36に前述と同様に同期検波回路37が接続される。その他の構造は第1実施形態に係る加速度センサー11のそれと同一であることができる。第1実施形態の構成や構造と均等な機能を発揮する構成や構造には同一の参照符号が付され詳細な説明は割愛される。
【0037】
y軸方向に加速度が作用すると、可動片23は加速度の作用に応じてy軸方向に変位する。同時に、x軸方向に加速度が作用すると、可動片23は加速度の作用に応じてx軸方向にも変位する。このとき、第1検出電極25aおよび第1駆動電極42aの静電結合に応じた静電容量と、第2検出電極25bおよび第3駆動電極42cの静電結合に応じた静電容量とはx軸方向の変位に対して相互に正反対の変化を示す。したがって、差動アンプ34の出力ではx軸方向の変位に基づく静電容量の変化は相互に打ち消される。その結果、x軸方向の加速度の影響は取り除かれることができる。y軸方向の加速度が精度よく検出されることができる。
【0038】
(5)第3実施形態に係る加速度センサーの構成
図6は第3実施形態に係る物理量検出センサーすなわち加速度センサー(物理量検出センサー)11の振動子16bを概略的に示す。この振動子16bでは、固定片19から可動片23に向かってy軸に平行に振動腕21a、21bが延びる。その結果、振動腕21a、21bの先端で1壁面45a、45bは可動片23の1壁面46に向き合わせられる。ここでは、振動腕21a、21bの壁面45a、45bと可動片23の壁面46とは相互に平行に広がることができる。振動腕21a、21bの壁面45a、45bには第1駆動電極42aおよび第3駆動電極42cが形成される。可動片23の壁面46には、第1駆動電極42aに向き合う位置で第1検出電極25aが配置され、第3駆動電極42cに向き合う位置で第2検出電極25bが配置される。第1駆動電極42aおよび第3駆動電極42cに駆動電圧が供給されると、第1駆動電極42aと第1検出電極25aとの間で静電結合が確立され、第3駆動電極42cと第2検出電極25bとの間で静電結合が確立される。向き合う壁面45a、45b、46同士に第1および第3駆動電極42a、42cと第1および第2検出電極25a、25bとが近接配置されることから、静電結合は強められることができる。その他の構造は第1および第2実施形態に係る加速度センサー11のそれと同一であることができる。
【0039】
(6)第4実施形態に係る加速度センサーの構成
図7は第4実施形態に係る物理量検出センサーすなわち加速度センサー(物理量検出センサー)11の回路構成を概略的に示す。この加速度センサー11は前述の自励発振回路26aおよび検出回路27aに加えて2倍周波数生成回路48をさらに備える。2倍周波数生成回路48は第1矩形化回路49および第2矩形化回路51を備える。第1矩形化回路49および第2矩形化回路51は正弦波を矩形波に変換する。第1矩形化回路49には自励発振回路26aの電流アンプ28から直接に信号が供給される。第2矩形化回路51には90°移相器52を経由して電流アンプ28の出力が供給される。第1矩形化回路49および第2矩形化回路51には共通に排他的論理和(XOR)回路53が接続される。XOR回路53は第1矩形化回路49の出力および第2矩形化回路51の出力から排他的論理和を演算する。その結果、駆動電圧の周波数ωの2倍の周波数2ωの検波用信号がXOR回路53から出力される。XOR回路53の出力は検出回路27の同期検波回路37に供給される。こうして同期検波回路37は駆動電圧の周波数ωの2倍の周波数2ωで同期検波を実施する。その他の構成は第1〜第3実施形態に係る加速度センサー11のそれと同一であることができる。
【0040】
ここで、図8を参照しつつ、駆動信号の周波数ωの2倍の周波数2ωと静電容量との関係を簡単に説明する。いま、周波数ωの駆動信号が振動腕21a、21bに印加される場合を考える。駆動信号は正弦波で表現される。電圧が「0(ゼロ)」のとき、振動腕21a、21bは真っ直ぐに延びる。このとき、駆動電極42a、42cは対応の検出電極25a、25bに最も接近する。駆動信号が極大値に達すると、振動腕21a、21bは例えばx軸方向に正方向に湾曲する。その結果、駆動電極42a、42cは対応の検出電極25a、25bから最も遠ざかる。反対に、駆動信号が極小値に達すると、振動腕21a、21bは例えばx軸方向に負方向に湾曲する。このときも、駆動電極42a、42cは対応の検出電極25a、25bから最も遠ざかる。駆動信号が1周期で変化する間に、接近および離隔は2回繰り返される。静電容量は駆動電極42a、42cと対応の検出電極25a、25bとの距離に依存することから、振動腕21a、21bの振動に応じて静電容量は周波数2ωで周期的に変化する。こうして検出電極25a、25bの検出信号の周波数は2倍の周波数2ωの周期的変化を反映する。加速度の作用に応じて振動腕21a、21bに対して相対的に可動片23が変位すると、変位量に応じて静電容量は増減する。この増減は加速度に相当する。こうして加速度は静電容量の周期的変化に重畳される。その結果、静電容量の変化および駆動信号に基づき加速度は高い精度で検出されることができる。
【0041】
(7)第5実施形態に係る加速度センサーの構成
図9は第5実施形態に係る物理量検出センサーすなわち加速度センサー(物理量検出センサー)の振動子61を概略的に示す。振動子61は例えば水晶といった圧電材料から形成される。振動子61は中心体62を備える。中心体62は4本の梁63で固定部材(相対変位片)64に連結される。固定部材64は例えば容器本体13に固定される。梁63の変形に応じてxy平面内で中心体62の変位および回転は許容される。梁63はxy平面に直交するz軸方向に中心体62の動きを規制する。
【0042】
中心体62にはz軸に平行に回転軸65が設定される。中心体62には1対の検出振動腕(検出振動片)66が接続される。検出振動腕66はxy平面に沿ってy軸方向に中心体62から相互に離れる方向に延びる。個々の検出振動腕66の表面には角速度検出電極67が固定される。角速度検出電極67は例えばクロムおよびクロムに積層される金といった導電材から形成される。角速度検出電極67ごとに固定部材64上には外部接続用パッド68が固定される。外部接続用パッド68は例えばクロムおよびクロムに積層される金といった導電材から形成される。外部接続用パッド68は個別に対応の角速度検出電極67に接続される。こういった接続にあたって中心体62や梁63、固定部材64の表面には導電材の配線パターン69が形成される。個々の外部接続用パッド68は個別にICチップ17に接続される。例えばワイヤボンディングといった配線で外部接続用パッド68から信号は引き出されることができる。
【0043】
中心体62には1対の連結腕71を介して2対の駆動振動腕72(振動片)が接続される。連結腕71はxy平面に沿ってx軸方向に中心体62から相互に離れる方向に延びる。駆動振動腕72はxy平面に沿って検出振動腕66に平行に延びる。個々の対では駆動振動腕72は連結腕71の先端から相互に離れる方向に延びる。
【0044】
個々の駆動振動腕72には駆動電極73が固定される。駆動電極73はICチップ17に接続される。こういった接続にあたって、駆動振動腕72や連結腕71、中心体62、梁63、固定部材64には導電材の配線パターン(図示されず)が形成される。例えばワイヤボンディングといった配線で配線パターンから信号経路は引き出される。
【0045】
固定部材64の外表面には加速度検出電極(検出電極)75が固定される。加速度検出電極75は例えば銅といった導電材から形成される。加速度検出電極75は対応の駆動電極73との間で静電結合を生じる距離で対応の駆動電極73から離れて固定部材64上に配置される。加速度検出電極75ごとに固定部材64上には外部接続用パッド76が固定される。外部接続用パッド76は例えば銅といった導電材から形成される。外部接続用パッド76は個別に加速度検出電極75に接続される。こういった接続にあたって固定部材64の表面には導電材の配線パターン77が形成される。個々の外部接続用パッド76は個別にICチップ17に接続される。例えばワイヤボンディングといった配線で外部接続用パッド76から信号は引き出されることができる。
【0046】
ICチップ17には、図10に示されるように、自励発振回路26、2倍周波数生成回路48、第1検出回路27aおよび第2検出回路27bが構築される。自励発振回路26および2倍周波数生成回路48は例えば第4実施形態に係る加速度センサー11の自励発振回路26および2倍周波数生成回路48と同様に構成されることができる。自励発振回路26は1対の駆動電極73ごとに駆動電圧を印加する。第1検出回路27aは、第1実施形態に係る加速度センサー11の検出回路27と同様に、第1チャージアンプ34a、第2チャージアンプ35a、差動アンプ36a、同期検波回路37aおよびローパスフィルター38aを含むことができる。第2検出回路27bは、第4実施形態に係る加速度センサー11の検出回路27と同様に、第1チャージアンプ34b、第2チャージアンプ35b、差動アンプ36b、同期検波回路37bおよびローパスフィルター38bを含むことができる。第1検出回路27aの同期検波回路37aには2倍周波数生成回路48の第1矩形化回路49から周波数ωの検波用信号が供給される。第2検出回路27bの同期検波回路37bには2倍周波数生成回路48のXOR回路53から周波数2ωの検波用信号が供給される。
【0047】
角速度の検出にあたって個々の駆動振動腕72には駆動電極73から駆動信号が供給される。駆動振動腕72で自励振動が引き起こされる。駆動振動腕72はxy平面内でX軸方向に揺動する。駆動振動腕73は回転軸65を含むyz平面で面対称に振動することから、中心体62および検出振動腕66はほとんど振動しない。このとき、検出振動腕66はほとんど変形しない。したがって、角速度検出電極67から信号は検出されない。自励振動は維持される。
【0048】
回転軸65にz軸回りで角速度が加わると、駆動振動腕72にコリオリ力が加わる。このコリオリ力の作用で駆動振動腕72の振動はX軸方向の揺動からY軸方向の揺動へ移行する。このコリオリ力に基づく振動は回転軸65回りに中心体62の振動を励起する。この振動に応じて検出振動腕66は歪む。この歪みの圧電効果に基づき角速度検出電極67から信号が検出される。この信号は第1検出回路27aに供給される。同期検波回路37aは周波数ωの矩形波と角速度検出電極67からの信号とから角速度の信号成分を抽出する。こうして角速度は検出される。第5実施形態に係る加速度センサーは角速度センサーすなわちジャイロセンサーとしても機能する。2つの検出振動腕72からの信号が差動増幅されることができることから、加速度の成分は打ち消され、角速度だけが抽出されることができる。
【0049】
y軸方向に加速度が加わると、個々の駆動振動腕72は軸方向に変位する。したがって、駆動電極73と加速度検出電極75との距離は変化する。静電容量は変化する。駆動振動腕72はxy平面内でX軸方向に揺動することから、静電容量は駆動信号の周波数ωの2倍の周波数2ωで周期的に変化する。この静電容量の変化は加速度検出電極75から検出される。この加速度検出電極75の検出信号は第2検出回路27bに供給される。同期検波回路37bは周波数2ωの矩形波と加速度検出電極75からの検出信号とから加速度の信号成分を抽出する。こうして加速度は検出される。
【0050】
(8)第6実施形態に係る加速度センサーの構成
図11は第6実施形態に係る物理量検出センサーすなわち加速度センサー(物理量検出センサー)の振動子61aを概略的に示す。この第6実施形態では、加速度検出電極(検出電極)75は外部接続用パッド68に接続される。こういった接続にあたって固定部材64の表面には導電材の配線パターン78が形成される。その他の構成は第5実施形態に係る振動子61と同一であることができる。図12に示されるように、検出回路81は加速度検出電極68に接続される。差動増幅回路36の出力は同期検波回路37aおよび同期検波回路37bに分配される。同期検波回路37aは周波数ωの矩形波と信号とから角速度の信号成分を抽出する。こうして角速度は検出される。同期検波回路37bは周波数2ωの矩形波と信号とから加速度の信号成分を抽出する。こうして加速度は検出される。この第6実施形態では外部接続用パッド68が角速度検出電極67および加速度検出電極75で共有されることから、振動子61aおよびICチップ17の間で配線は簡素化されることができる。
【0051】
(9)電子機器
以上のような加速度センサー11は、デジタルスチルカメラやビデオカメラ、ナビゲーション装置、車両の車体姿勢検出装置、ポインティングデバイス、ゲームコントローラー、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)、携帯電話、ラジオコントロールヘリコプター、掃除ロボットなどに組み込まれて利用されることができる。ただし、加速度センサー11の用途はこれら電子機器に限定されるものではない。
【0052】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。したがって、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれる。例えば、明細書または図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語とともに記載された用語は、明細書または図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えられることができる。また、加速度センサーやジャイロセンサー等の構成および動作も本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0053】
11 物理量検出センサー(加速度センサー)、21a,21b 振動片(振動腕)、23 相対変位片(可動片)、22a 駆動電極(第1駆動電極)、22b 駆動電極(第2駆動電極)、25a 検出電極(第1検出電極)、25b 検出電極(第2検出電極)、26,26a 自励発振回路、27 検出回路、27a 検出回路(第1検出回路)、27b 検出回路(第2検出回路)、42a 駆動電極(第1駆動電極)、42c 駆動電極(第3駆動電極)、45a,45b 振動片の壁面(振動腕の壁面)、46 相対変位片の壁面(可動片の壁面)、48 2倍周波数生成回路、64 相対変位片(固定部材)、66 検出振動片(検出振動腕)、67 角速度検出電極、68 外部接続用パッド、72 振動片(駆動振動腕)、73 駆動電極、75 検出電極(加速度検出電極)、81 検出回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動電極を有する振動片と、
物理量の作用に応じて前記振動片に対して相対的に変位する相対変位片と、
前記駆動電極との間で静電結合を生じる距離で前記駆動電極から離れて前記相対変位片上に配置されている検出電極と、
前記駆動電極を通じて前記振動片の自励発振を引き起こす駆動信号を供給する自励発振回路と、
前記駆動信号、および、前記駆動電極と前記検出電極との間の静電容量に応じて前記検出電極に生じる静電容量信号に基づき、前記物理量を反映する物理量信号を検出する検出回路と
を備えることを特徴とする物理量検出センサー。
【請求項2】
請求項1に記載の物理量検出センサーにおいて、前記駆動電極は前記振動片の1壁面に配置され、前記検出電極は、前記相対変位片上で、前記振動片の前記壁面に向き合う壁面に配置されることを特徴とする物理量検出センサー。
【請求項3】
請求項1または2に記載の物理量検出センサーにおいて、前記検出回路は、前記駆動信号と前記静電容量信号との同期検波から前記物理量信号を検出する同期検波回路を備えることを特徴とする物理量検出センサー。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の物理量検出センサーにおいて、前記駆動信号の周波数ωに基づき、前記駆動信号の周波数ωの2倍の周波数2ωの検波用信号を生成する2倍周波数生成回路をさらに備え、
前記検出回路は、前記2倍周波数生成回路から供給される前記検波用信号、および、前記駆動信号の周波数ωの2倍の周波数2ωで周期的に変化する前記静電容量信号に基づき前記物理量信号を検出することを特徴とする物理量検出センサー。
【請求項5】
請求項4に記載の物理量検出センサーにおいて、前記検出回路は、前記検波用信号と前記静電容量信号との同期検波から前記物理量信号を検出する同期検波回路を備えることを特徴とする物理量検出センサー。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の物理量検出センサーにおいて、前記振動片の回転時にコリオリ力の作用で変形する検出振動片と、前記検出振動片に固定されて前記検出振動片の変形に応じて電気信号を出力する第2の検出電極とをさらに備えることを特徴とする物理量検出センサー。
【請求項7】
請求項6に記載の物理量検出センサーにおいて、前記検出電極と前記第2の検出電極とが相互に接続されていることを特徴とする物理量検出センサー。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の物理量検出センサーにおいて、前記振動片の本体の材料には水晶が用いられていることを特徴とする物理量検出センサー。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の物理量検出センサーを含むことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−57535(P2013−57535A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194814(P2011−194814)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】