説明

牽引物接続検知装置

【課題】特別な構成要素を必要とせずに、装置構成に要する費用の増大を防止しつつ、自車両と牽引物との連結の有無を適切に検知する。
【解決手段】牽引物接続検知装置10は、コーナーセンサー11aおよびバックソナー11bから出力される検出信号に基づき、車両外表面から所定距離以内に物体が存在することを検知する物体検知部21と、車両状態センサ12から出力される車両の速度および走行方向の検出結果の信号に基づき車両が所定速度以上で前進したことが検知されている状態で、物体検知部21により車両後方に物体の存在が所定時間以上に亘って検知されている場合に、牽引物が接続されていると判定する牽引物有無判定部22と、牽引物有無判定部22により牽引物が接続されていると判定された場合に、報知装置14による聴覚的報知の実行を禁止する車両制御部23とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、牽引物接続検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自車両と牽引車とを連結する連結部材に、自車両と牽引車との連結の有無を検知するための専用の各種センサあるいはスイッチなどを備え、各種センサから出力される検知信号あるいはスイッチの開閉動作などに基づき、自車両と牽引車との連結の有無を電気的あるいは機械的に検知する装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第4165294号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記従来技術に係る装置によれば、自車両と牽引車との連結の有無を検知するためだけに特別な構成要素(例えば、各種センサやスイッチなど)が必要であり、装置構成に要する費用が嵩むという問題が生じる。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、自車両と牽引物との連結の有無を、特別な構成要素を必要とせずに、かつ、装置構成に要する費用の増大を防止しつつ、適切に検知することが可能な牽引物接続検知装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明の第1態様に係る牽引物接続検知装置は、車両後方に牽引物を接続可能に設けられた牽引物接続手段(例えば、実施の形態での牽引物接続部材15)と、車両の速度に基づき走行状態を検知する走行状態検知手段(例えば、実施の形態での車両状態センサ12)と、車両後部に設けられ、車両外表面から所定距離以内に物体が存在することを検知する物体検知手段(例えば、実施の形態でのコーナーセンサー11aおよびバックソナー11bおよび物体検知部21)と、前記走行状態検知手段により車両が所定速度以上で前進したことが検知されている状態で前記物体検知手段により物体の存在が所定時間以上に亘って検知されている場合に、前記牽引物接続手段に前記牽引物が接続されていると判定する判定手段(例えば、実施の形態での牽引物有無判定部22)とを備える。
【0005】
さらに、本発明の第2態様に係る牽引物接続検知装置は、前記物体検知手段により物体の存在が検知されている期間に亘って聴覚的報知を行なう報知手段(例えば、実施の形態での車両制御部23および報知装置14)と、前記判定手段により前記牽引物が接続されていると判定された場合に、前記報知手段による前記聴覚的報知の実行を禁止する禁止手段(例えば、実施の形態での車両制御部23)とを備える。
【0006】
さらに、本発明の第3態様に係る牽引物接続検知装置は、前記物体検知手段は車両後部の車体外装部材(例えば、実施の形態でのバンパー)に複数設けられ、前記判定手段は、複数の前記物体検知手段により前記物体の存在が検知されていることに応じて前記牽引物が接続されていると判定する状態で、複数の前記物体検知手段のうちの何れかにより前記物体の存在が検知されなくなった場合であっても、前記牽引物が接続されていると判定し続ける。
【発明の効果】
【0007】
本発明の第1態様に係る牽引物接続検知装置によれば、牽引物の接続有無を検知するための特別なセンサを必要とせずに、既に車両に搭載されている各検知手段(つまり車両後部に設けられた物体検知手段および走行状態検知手段)の検知結果を用いて牽引物の接続有無を適切に判定することができる。これにより、特別なセンサを車両に搭載するために要するスペースおよび費用を削減することができる。
【0008】
さらに、本発明の第2態様に係る牽引物接続検知装置によれば、牽引物の接続時に不必要な聴覚的報知が実行されることを、禁止手段によって自動的に禁止することができる。これにより、例えば車両後部の物体検知手段の検知動作のみを禁止したり、例えば車両後部の物体検知手段の検知結果に応じた聴覚的報知の実行を禁止するなどの各種の禁止動作を、乗員による操作入力(例えば、手動操作入力や音声入力など)に応じて実行するための操作スイッチや装置などを必要とせずに、車両のスペースおよび車両構成に要する費用の増大を防止することができる。さらに、乗員による煩雑な操作入力を必要とせずに、運転操作が複雑化することを防止することができる。
【0009】
さらに、本発明の第3態様に係る牽引物接続検知装置によれば、牽引物の接続時に、例えば車両の旋回などの走行状態と複数の物体検知手段毎の検知可能領域とに応じて、複数の物体検知手段のうちの何れかにより牽引物が検知されない場合であっても、牽引物の接続を適切に判定することができる。これにより、例えば牽引物が接続されていることを示す判定が不必要に中断されてしまったり、例えば判定の中断により不必要な警報が出力されてしまうことを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態に係る牽引物接続検知装置について添付図面を参照しながら説明する。
本実施の形態による牽引物接続検知装置10は、車両後方に牽引物を接続可能に設けられた牽引物接続部材(例えば、トレーラーヒッチなど)15を備える車両に搭載され、例えば図1に示すように、複数(例えば、2個など)のコーナーセンサー11aと、複数(例えば、2個など)のバックソナー11bと、車両状態センサ12と、処理装置13と、報知装置14とを備えて構成されている。
【0011】
コーナーセンサー11aおよびバックソナー11bは、例えば超音波センサーであって、車両後方の各検出可能範囲内に存在する物体までの距離に係る検出結果の信号を出力する。
コーナーセンサー11aは、例えば車両後部のバンパーの左右の両側部に設けられ、車両後方の左右の側方において各コーナーセンサー11aから所定距離(例えば、50cmなど)以内の領域を検出可能範囲としている。また、バックソナー11bは、例えば車両後部のバンパーにおいて左右のコーナーセンサー11aよりも中央部側に設けられ、車両後方において各バックソナー11bから所定距離(例えば、2mなど)以内の領域を検出可能範囲としている。
【0012】
車両状態センサ12は、自車両の車両情報として、例えば自車両の速度を検知する車速センサや、車体に作用する加速度を検知する加速度センサや、車体の姿勢や進行方向を検知するジャイロセンサや、ヨーレート(車両重心の上下方向軸回りの回転角速度)を検知するヨーレートセンサや、例えば人工衛星を利用して自車両の位置を測定するためのGPS(Global Positioning System)信号などの測位信号を受信する受信機や、運転者による運転操作(例えば、アクセルペダルの踏み込み操作量、ブレーキペダルの踏み込み操作量、ステアリングホイールの舵角など)を検出する各センサなどを備えて構成されている。
【0013】
処理装置13は、例えば物体検知部21と、牽引物有無判定部22と、車両制御部23とを備えて構成されている。
【0014】
物体検知部21は、例えばコーナーセンサー11aおよびバックソナー11bから出力される各検出信号に基づき、車両後方のコーナーセンサー11aの検出可能範囲内あるいはバックソナー11bの検出可能範囲内での車両外表面から所定距離以内に物体が存在するか否かを検知する。さらに、各検出信号に含まれる各コーナーセンサー11aおよび各バックソナー11bから物体までの距離の情報に基づき、物体の形状を検知する。
【0015】
牽引物有無判定部22は、車両状態センサ12から出力される自車両の速度および進行方向の検出結果の信号に基づき、車両が所定速度以上で前進したか否かを判定する。そして、この判定結果が「YES」の場合において、物体検知部21により物体の存在が所定時間以上に亘って検知されているか否かを判定する。そして、この判定結果が「YES」の場合には、牽引物接続部材15に牽引物が接続されていると判定する。
【0016】
例えば図2に示す判定パターンA1,A3のように、牽引物有無判定部22は、車両状態センサ12から出力される検出結果の信号に基づき、車両1が前進あるいは停止または後退していることを検知した状態で、物体検知部21により物体の存在が所定時間以上に亘って検知されていない場合には、牽引物が接続されていないと判定する。
また、例えば図2に示す判定パターンA2のように、牽引物有無判定部22は、車両状態センサ12から出力される検出結果の信号に基づき、車両1が前進していることを検知した状態で、物体検知部21により物体の存在が所定時間以上に亘って検知されている場合には、牽引物が接続されていると判定する。
また、例えば図2に示す判定パターンA4のように、牽引物有無判定部22は、車両状態センサ12から出力される検出結果の信号に基づき、車両1が停止または後退していることを検知した状態で、物体検知部21により物体の存在が所定時間以上に亘って検知されている場合には、牽引物の接続有無の判定を保留する。
【0017】
また、牽引物有無判定部22は、車両が所定速度以上で前進したと判定した状態において、複数のコーナーセンサー11aおよびバックソナー11bから出力される各検出信号に基づき物体の存在が検知されていることに応じて牽引物が接続されていると判定する状態で、複数のコーナーセンサー11aおよびバックソナー11bのうちの何れかにより物体の存在が検知されなくなった場合であっても、牽引物が接続されていると判定し続ける。
【0018】
車両制御部23は、物体検知部21により物体の存在が検知されている期間に亘って、報知装置14による報知動作の実行を指示する制御信号を出力する。
また、車両制御部23は、牽引物有無判定部22により牽引物接続部材15に牽引物が接続されていると判定された場合には、報知装置14による報知動作の実行禁止を指示する制御信号を出力する。
【0019】
なお、報知装置14は、例えば、視覚的伝達装置と、聴覚的伝達装置とを備えて構成されている。
視覚的伝達装置は、例えば車両に搭載されたナビゲーション装置の表示装置などであって、車両制御部23から出力される制御信号に応じて、例えば表示装置に所定の文字情報を表示したり、灯体を点灯あるいは点滅させる。
聴覚的伝達装置は、例えばスピーカなどであって、車両制御部23から出力される制御信号に応じて所定の警報音や音声などを出力する。
【0020】
本実施の形態による牽引物接続検知装置10は上記構成を備えており、次に、この牽引物接続検知装置10の動作について説明する。
【0021】
先ず、例えば図3に示すステップS01においては、車両は前進したか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、後述するステップS06に進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS02に進む。
そして、ステップS02においては、車両が所定速度以上の速度で走行したか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、ステップS02の判定処理を繰り返し実行する。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS03に進む。
そして、ステップS03においては、所定時間以上に亘って車両後方に物体の存在を検知したか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、ステップS04に進み、このステップS04においては、牽引物が接続されていないと判定し、エンドに進む。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、ステップS05に進み、このステップS05においては、牽引物が接続されていると判定し、エンドに進む。
【0022】
また、ステップS06においては、所定時間以上に亘って車両後方に物体の存在を検知したか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、ステップS07に進み、このステップS07においては、牽引物が接続されていないと判定し、エンドに進む。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、エンドに進む。
【0023】
上述したように、本実施の形態による牽引物接続検知装置10によれば、牽引物の接続有無を検知するための特別なセンサを必要とせずに、既に車両に搭載されているコーナーセンサー11aおよびバックソナー11bおよび車両状態センサ12から出力される検出結果の信号を用いて牽引物の接続有無を適切に判定することができる。これにより、特別なセンサを車両に搭載するために要するスペースおよび費用を削減することができる。
【0024】
さらに、牽引物の接続時に不必要な報知動作が実行されることを自動的に禁止することができる。これにより、例えば車両後部のコーナーセンサー11aおよびバックソナー11bの検出動作のみを禁止したり、例えばコーナーセンサー11aおよびバックソナー11bの検出結果に応じた報知装置14の報知動作の実行を禁止するなどの各種の禁止動作を、乗員による操作入力(例えば、手動操作入力や音声入力など)に応じて実行するための操作スイッチや装置などを必要とせずに、車両のスペースおよび車両構成に要する費用の増大を防止することができる。さらに、乗員による煩雑な操作入力を必要とせずに、運転操作が複雑化することを防止することができる。
【0025】
さらに、牽引物の接続時に、例えば車両の旋回などの走行状態と複数のコーナーセンサー11aおよびバックソナー11bの各検出可能範囲とに応じて、複数のコーナーセンサー11aおよびバックソナー11bのうちの何れかにより牽引物が検知されない場合であっても、牽引物の接続を適切に判定することができる。これにより、例えば牽引物が接続されていることを示す判定が不必要に中断されてしまったり、例えば判定の中断により不必要な報知動作が実行されてしまうことを防止することができる。
【0026】
なお、上述した実施の形態において、牽引物有無判定部22は、車両が所定速度以上で前進し、かつ、物体検知部21により物体の存在が所定時間以上に亘って検知されている場合に、牽引物が接続されていると判定するとしたが、これに限定されず、さらに、物体検知部21により検知される物体の形状に応じて、あるいは、車両後部の外表面から物体までの距離の変動に応じて、牽引物が接続されているか否かを判定してもよい。
例えば、車両が所定速度以上で前進し、かつ、物体検知部21により牽引物に特徴的な所定形状を有する物体の存在が所定時間以上に亘って検知されている場合に、牽引物が接続されていると判定してもよい。
また、例えば、車両が所定速度以上で前進し、かつ、物体検知部21により距離の変動が所定範囲以内である物体の存在が所定時間以上に亘って検知されている場合に、牽引物が接続されていると判定してもよい。
【0027】
なお、上述した実施の形態において、車両制御部23は、物体検知部21により物体の存在が検知されている期間に亘って報知装置14による報知動作の実行を指示するとしたが、これに限定されず、さらに、車両の速度に応じて、報知装置14による報知動作の実行を制御してもよい。
例えば、車両の速度が所定速度以下である場合に、物体検知部21により物体の存在が検知されている期間に亘って報知装置14による報知動作の実行を指示してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態に係る牽引物接続検知装置の構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る自車両の車両状態と物体検知の検知結果と牽引物有無判定の判定結果との対応関係の一例を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る牽引物接続検知装置の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0029】
10 牽引物接続検知装置
11a コーナーセンサー(物体検知手段)
11b バックソナー(物体検知手段)
12 車両状態センサ(走行状態検知手段)
14 報知装置(報知手段)
15 牽引物接続部材(牽引物接続手段)
21 物体検知部(物体検知手段)
22 牽引物有無判定部(判定手段)
23 車両制御部(報知手段、禁止手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両後方に牽引物を接続可能に設けられた牽引物接続手段と、
車両の速度に基づき走行状態を検知する走行状態検知手段と、
車両後部に設けられ、車両外表面から所定距離以内に物体が存在することを検知する物体検知手段と、
前記走行状態検知手段により車両が所定速度以上で前進したことが検知されている状態で前記物体検知手段により物体の存在が所定時間以上に亘って検知されている場合に、前記牽引物接続手段に前記牽引物が接続されていると判定する判定手段と
を備えることを特徴とする牽引物接続検知装置。
【請求項2】
前記物体検知手段により物体の存在が検知されている期間に亘って聴覚的報知を行なう報知手段と、
前記判定手段により前記牽引物が接続されていると判定された場合に、前記報知手段による前記聴覚的報知の実行を禁止する禁止手段とを備えることを特徴とする請求項1に記載の牽引物接続検知装置。
【請求項3】
前記物体検知手段は車両後部の車体外装部材に複数設けられ、
前記判定手段は、複数の前記物体検知手段により前記物体の存在が検知されていることに応じて前記牽引物が接続されていると判定する状態で、複数の前記物体検知手段のうちの何れかにより前記物体の存在が検知されなくなった場合であっても、前記牽引物が接続されていると判定し続けることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の牽引物接続検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−152732(P2010−152732A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−331235(P2008−331235)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】