説明

状態判定装置、状態判定方法およびプログラム

【課題】監視エリアの様々な状態を容易に確認可能とする。
【解決手段】不特定多数の人(移動体)が往来する環境下での、通常状態での人の移動速度VRおよび移動方向θRを予め求めておく。そして、当該環境下で、人の移動速度Vおよび移動方向θを求め、これら移動速度Vおよび移動方向θと、通常状態において予め求めた移動速度VRおよび移動方向θRとを比較し、比較結果に基づき当該環境の状態が異常状態であるか否かを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視エリアの状態を判定するための状態判定装置、状態判定方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
不特定多数の人間が往来する環境において、非常事態でのパニックや暴動を検知することは、警備の観点から見て、極めて重要である。従来、このような検知は、例えば監視エリアにカメラを設置し、防災センタなどで監視員がカメラの撮影画像が映出されたモニタを監視することで行っていた。また、監視エリアに実際に警備員が立哨して、状況を監視することも行われていた。
【0003】
特許文献1には、監視エリアに設置された1のカメラで撮影された撮影画像について、複数の局所領域における輝度値の時間変化率をそれぞれ算出してヒストグラムを作成し、このヒストグラムを解析して人の移動状況や混雑度を判定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−110054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した、監視エリアに設置されたカメラからの撮影画像をモニタリングする方法では、カメラの数が多くなった場合、常に実施することが困難であるという問題点があった。また、監視エリアの全ての監視ポイントに警備員を配置することは、コストが嵩んでしまうという問題点があった。
【0006】
また、特許文献1の方法では、監視エリア内における人の移動状況や混雑度を判定することができる。しかしながら、この特許文献1の方法では、人が特定の方向に移動することが前提とされており、人が様々な方向に様々な速度で移動するなど、多様な状況に柔軟に対応させることが困難であるという問題点があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、監視エリアの様々な状態を容易に確認可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、第1の発明は、予め定められた領域内で移動体を検知する検知手段と、検知手段で検知された移動体の移動速度および移動方向をそれぞれ算出する算出手段と、算出手段で算出された、複数の移動速度の分布および複数の移動方向の分布が予め定められたパターンに適合している場合に、領域内が異常状態にあると判定する判定手段とを有することを特徴とする。
【0009】
また、第2の発明は、検知手段が、予め定められた領域内で移動体を検知する検知ステップと、算出手段が、検知ステップで検知された移動体の移動速度および移動方向をそれぞれ算出する算出ステップと、判定手段が、算出ステップで算出された、複数の移動速度の分布および複数の移動方向の分布が予め定められたパターンに適合している場合に、領域内が異常状態にあると判定する判定ステップとを有することを特徴とする。
【0010】
また、第3の発明は、予め定められた領域内で移動体を検知する検知ステップと、検知ステップで検知された移動体の移動速度および移動方向をそれぞれ算出する算出ステップと、算出ステップで算出された、複数の移動速度の分布および複数の移動方向の分布が予め定められたパターンに適合している場合に、領域内が異常状態にあると判定する判定ステップとをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0011】
また、第4の発明は、予め定められた領域内で移動体を検知する検知手段と、検知手段で検知された移動体の第1の移動速度および第1の移動方向を算出する算出手段と、算出手段で算出された、複数の第1の移動速度の分布および複数の第1の移動方向の分布と、領域内の移動体について通常状態で予め求められた、複数の第2の移動速度の分布および複数の第2の移動方向の分布とをそれぞれ比較した比較結果に基づき、領域内が異常状態にあるか否かを判定する判定手段とを有することを特徴とする。
【0012】
また、第5の発明は、検知手段が、予め定められた領域内で移動体を検知する検知ステップと、算出手段が、検知ステップで検知された移動体の第1の移動速度および第1の移動方向を算出する算出ステップと、判定手段が、算出ステップで算出された、複数の第1の移動速度の分布および複数の第1の移動方向の分布と、領域内の移動体について通常状態で予め求められた、複数の第2の移動速度の分布および複数の第2の移動方向の分布とをそれぞれ比較した比較結果に基づき、領域内が異常状態にあるか否かを判定する判定ステップとを有することを特徴とする。
【0013】
また、第6の発明は、予め定められた領域内で移動体を検知する検知ステップと、検知ステップで検知された移動体の第1の移動速度および第1の移動方向を算出する算出ステップと、算出ステップで算出された、複数の第1の移動速度の分布および複数の第1の移動方向の分布と、領域内の移動体について通常状態で予め求められた、複数の第2の移動速度の分布および複数の第2の移動方向の分布とをそれぞれ比較した比較結果に基づき、領域内が異常状態にあるか否かを判定する判定ステップとをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、監視エリアの様々な状態が容易に確認可能となるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に適用可能な状態判定装置の機能を示す一例の機能ブロック図である。
【図2】図2は、人体検知センサの設置の例を示す略線図である。
【図3】図3は、人体検知センサの設置の例を示す略線図である。
【図4】図4は、人体検知センサの検知結果から人体の移動速度および移動方向を算出する一例の方法について説明するための略線図である。
【図5】図5は、通路など通行を目的としたエリアでの移動速度Vおよび移動方向θの分布の例を示す略線図である。
【図6】図6は、ショッピングセンタなど巡回が主な行動となるエリアでの移動速度Vおよび移動方向θの分布の例を示す略線図である。
【図7】図7は、あるエリア内で異常事態が発生した場合の人の行動の例を説明するための略線図である。
【図8】図8は、あるエリア内で異常事態が発生した場合の人の行動の例を説明するための略線図である。
【図9】図9は、移動速度Vおよび移動方向θそれぞれの度数分布を示す一例のヒストグラムである。
【図10】図10は、本発明の第1の実施形態による異常事態判定処理を示す一例のフローチャートである。
【図11】図11は、本発明の第2の実施形態についてより詳細に説明するための略線図である。
【図12】図12は、始点を合わせて原点に置いた各移動ベクトルMVが指し示す点をxy座標で表した例を示す略線図である。
【図13】図13は、移動ベクトルが2つの2次元正規分布として表されることを示す略線図である。
【図14】図14は、時刻の推移に関わらず、順次算出される移動ベクトルにより略同一の2次元正規分布が順次、形成されることを説明するための略線図である。
【図15】図15は、移動速度Vおよび移動方向θからなる移動ベクトルMVに基づき、2次元正規分布を算出することを説明するための略線図である。
【図16】図16は、本発明の第3の実施形態による状態判定装置としてのコンピュータの一例の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る状態判定装置の実施形態を詳細に説明する。本発明では、不特定多数の人(移動体)が往来する環境下での、通常状態での人の移動速度VRおよび移動方向θRを予め求めておく。そして、当該環境下で、人の移動速度Vおよび移動方向θを求め、これら移動速度Vおよび移動方向θと、通常状態において予め求めた移動速度VRおよび移動方向θRとを比較し、比較結果に基づき当該環境の状態が異常状態であるか否かを判定する。これにより、不特定多数の人が往来する環境下における非常事態のパニックや暴動といった異常事態を検知することが可能となる。
【0017】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について説明する。本第1の実施形態では、監視エリアで検出された人の移動速度Vおよび移動方向θの分布のパターンが、予め設定された、異常事態発生時のパターンに適合するか否かを判定する。
【0018】
図1は、本第1の実施形態に適用可能な状態判定装置1の機能を示す一例の機能ブロック図である。状態判定装置1は、人体検知センサ10、速度および方向算出部11、通常速度および方向記憶部12、異常状態判定部13および通報部14を有する。人体検知センサ10は、監視エリア内の人の位置を検知する。人体検知センサ10としては、詳細を後述するレーザレンジセンサや監視カメラを用いることができる。
【0019】
速度および方向算出部11は、人体検知センサ10で検知された人の位置を示す情報を用いて、人の移動速度Vおよび移動方向θを求める。通常速度および方向記憶部12は、監視エリアが通常状態、すなわち、異常状態ではない状態で、予め、人体検知センサ10で検知された人体の位置に基づき速度および方向算出部11で求められた、人体の移動速度VRおよび移動方向θRを記憶する。
【0020】
異常状態判定部13は、通常速度および方向記憶部12に記憶された通常状態の移動速度VRおよび移動方向θRと、現在、人体検知センサ10で検知された人の位置に基づき速度および方向算出部11で算出された移動速度Vおよび移動方向θとに基づき、監視エリア内での異常事態の発生の有無を判定する。通報部14は、異常状態判定部13により、監視エリア内で異常事態が発生したと判定された場合に、例えば監視センタにその旨を通報する。
【0021】
なお、速度および方向算出部11、異常状態判定部13および通報部14は、例えばCPU(Central Processing Unit)上で動作するプログラムにより実現することができる。また、通常速度および方向記憶部12は、HDD(ハードディスクドライブ)や、不揮発性の半導体メモリを用いて構成することができる。
【0022】
次に、上述した状態判定装置1の各部の処理について、より詳細に説明する。先ず、人体検知センサ10による人体の検知について説明する。人体検知センサ10として、レーザレンジセンサを用いることができる。レーザレンジセンサは、対象物体にレーザー光を当て、反射される光の到着時刻を測ることによって物体までの距離を計測するセンサである。
【0023】
例えば、複数のレーザレンジセンサ(レーザセンサ)を用いて通行人の通行軌跡を求める技術が、特開2004−191095号公報(通行人軌跡抽出装置およびシステム)や、特開2005−346617号公報(通行人行動解析システム)などに開示されている。
【0024】
図2および図3は、人体検知センサ10の設置の例を示す。なお、図2および図3では、人体検知センサ10を、レーザレンジセンサによる距離センサ50として示している。距離センサ50は、垂直方向には、図2に例示されるように、人体の脚部を検知するように、例えば高さ20〜30cmの位置に、レーザ光51が地面(床面)に水平に射出されるように設置する。距離センサ50の設置高さは、この例に限らず、例えば胴体(胸部)を検知するように、高さ100cm程度の位置に設置してもよい。
【0025】
距離センサ50の設置高さを低くし、脚部の検知を行うようにすると、検知対象が細いため、例えば監視エリア内に多数の人が存在する場合に、死角になる領域が小さくて済む利点がある。一方で、片足しか検知されない場合もあり、検知対象である人体の中心位置に対する誤差が大きくなる可能性が高い。距離センサ50の設置高さを高くして胴体の検知を行うようにすると、人体の中心位置に対する誤差が小さくなる利点がある一方で、死角になる領域も増えることになる。距離センサ50を設置する監視エリアの混雑度、監視エリアに存在する人体の身長の傾向などから、適切な設置高さを設定する。
【0026】
また、水平方向には、図3に例示されるように、監視エリア60を囲むように、複数の距離センサ50、50、…を設置する。複数の距離センサ50、50、…を設置し、検知を行うことで、ある距離センサ50の近くに人体70が存在しその後方が当該距離センサ50の死角になってしまうような場合であっても、他の距離センサ50でこの死角領域の検知を行うことができる。
【0027】
各距離センサ50、50、…は、水平方向に例えば180°の範囲でレーザ光51をスキャンさせて、人体70、70、…を検知する。例えば1秒間に7回、1回のスキャンを150msec程度でレーザ光51のスキャンを行う。レーザ光51のスキャンにより、人体70は、2次元平面上の点として検知される。レーザ光51の複数回のスキャンによって検知された各点のうち、点間の距離が所定以内で連続する点を、同一の人体70による検知結果として扱う。また、複数の距離センサ50、50、…の検知結果を統合することで、上述のように、ある距離センサ50の死角をカバーできると共に、検知結果の精度を向上させることが可能となる。
【0028】
人体検知センサ10すなわち距離センサ50、50、…のスキャン毎の検知結果は、速度および方向算出部11に逐次供給される。この検知結果は、例えば2次元の座標データである。上述したように、人体検知センサ10は、人体70の位置の計測を一定時間毎に繰り返し行って、その人体70の位置変化を記憶する。この位置変化と計測間隔から、人体70の移動速度および移動方向を求める。
【0029】
図4を用いて、人体検知センサ10の検知結果から、人体70の移動速度および移動方向を算出する一例の方法について説明する。図4の例では、図中に黒丸(●)で示される物体の位置を、時刻t=0、t=1、…、t=n−1、t=nというように、一定時間間隔の測定タイミングでn回測定する。各測定タイミング毎に測定された物体の位置から求めた物体の位置変化に基づき、各測定タイミング毎に、物体の速度Vxと、1つ前の物体の位置に対する移動方向θxとを求める。そして、求められた各タイミング毎の物体の速度Vxおよび移動方向θxそれぞれについて、平均を求め、この平均の速度VAVGおよび方向θAVGを、時刻t=nにおける物体の移動速度Vおよび移動方向θとする。なお、速度および方向の平均値を求める際に、より新しい測定結果から順に重み付けをすると、好ましい。
【0030】
なお、ここでは、人体70をレーザレンジセンサにより検知するように説明したが、これはこの例に限定されない。例えば、監視エリアに対して1または複数のカメラを設置し、カメラで撮影された撮影画像を解析して、監視エリア内の物体の位置を計測してもよい。画像解析の方法としては、例えば、撮像画像から動きベクトルを検出する方法が考えられる。
【0031】
ここで、状態判定装置1は、監視エリア60内において異常事態が発生していない通常状態時に、予め人体70、70、…を検知し、それぞれの移動速度VRおよび移動方向θRを算出しておく。算出された各人体70、70、…の移動速度VRおよび移動方向θRは、通常速度および方向記憶部12に記憶しておく。また、状態判定装置1の運用時に監視エリア60内で検知された人体70、70、…それぞれの移動速度Vおよび移動方向θが、異常状態判定部13に供給される。
【0032】
異常状態判定部13は、運用時に人体検知センサ10で検知された検知結果に基づき速度および方向算出部11で算出された移動速度Vおよび移動方向θと、通常状態時に予め検知および算出され通常速度および方向記憶部12に記憶された移動速度VRおよび移動方向θRとに基づき、監視エリア60内の状態を判定する。
【0033】
異常状態判定部13は、各人体70、70、…による移動速度Vおよび移動方向θの分布に基づき、監視エリア60内の状態を判定する。監視エリア60内で検知される全ての人体70、70、…について、上述のようにして移動速度Vおよび移動方向θが計算されたら、次に、計算結果を、移動速度Vと、移動方向θとに分けて集計し、移動速度Vの分布と移動方向θの分布とをそれぞれ求める。これら移動速度Vおよび移動方向θの分布は、環境によって大きく異なる。
【0034】
移動速度Vおよび移動方向θの分布について、図5および図6を用いて説明する。図5は、通路など通行を目的としたエリアでの移動速度Vおよび移動方向θの分布の例、図6は、ショッピングセンタなど巡回が主な行動となるエリアでの移動速度Vおよび移動方向θの分布の例をそれぞれ示す。
【0035】
通路では、立ち止まることなく一定方向に移動する人が多いと考えられる。したがって、移動速度Vの分布は、図5(a)に例示されるように、人の平均的な歩行速度に近い速度v0にピークを持つ。また、移動方向θの分布は、図5(b)に例示されるように、通路の進行方向に応じ、方向θ0と、方向θ0に対して略180°異なる方向θ1とに集中する。
【0036】
一方、ショッピングセンタでは、休憩する人やウィンドショッピングをする人など行動が多彩であり、人は、様々な速度で様々な方向に移動するものと考えられる。したがって、移動速度Vの分布は、図6(a)に例示されるように、上述の速度v0よりも遅い、速度v1に緩やかなピークを持つ。また、移動方向θの分布は、図6(b)に例示されるように、方向に対する依存性が小さい。
【0037】
なお、移動速度Vおよび移動方向θの分布は、曜日や時間帯によっても大きく変化する。例えば、オフィスなどでは、勤務日と休日とで分布が異なり、さらに、勤務日であっても、出勤時間帯、勤務時間帯、退勤時間帯などで分布が異なる。そのため、移動速度Vおよび移動方向θの分布は、これら曜日や時間帯で分けて集計する必要がある。
【0038】
これは、通常速度および方向記憶部12に予め記憶される移動速度VRおよび移動方向θRについても同様である。すなわち、状態判定装置1は、通常状態の監視エリア60内において取得した移動速度VRおよび移動方向θRを、曜日や時間帯で分けて集計する。実際の異常状態の判定の際には、通常速度および方向記憶部12に予め記憶された移動速度VRおよび移動方向θRのうち、曜日および時間帯が対応するものを用いる。
【0039】
異常状態判定部13による異常事態判定処理について説明する。本第1の実施形態では、監視エリア60における人体70の検知結果に基づき算出された移動速度Vおよび移動方向θの分布のパターンが、予め設定された、異常状態の分布パターンに適合するか否かを判定することで、異常事態の発生の有無を判定する。
【0040】
異常状態判定部13による異常事態判定処理について、より具体的に説明する。あるエリア内で異常事態が発生した場合の人の行動は、異常事態の種類に応じて、幾つかのパターンが考えられる。例えば災害や傷害事件の発生といった非常時には、人は、そのエリアから避難する行動を取るものと考えられる。この場合、例えば、そのエリアの出口に向かい、多数の人が一斉に逃げ出すことが考えられる。
【0041】
すなわち、避難の場合、図7(a)に例示されるように、人が一方向に、比較的高速に移動すると考えられる。なお、図7(a)および後述する図8(a)において、矢印の向きおよび長さは、それぞれ人が移動する方向および速度を示す。図7(b)は、このときの移動速度Vの分布の例を示し、図7(c)は、移動方向θの分布の例を示す。
【0042】
図7(b)に例示されるように、移動速度Vは、そのエリアを通常状態時に人が歩く平均速度VAVGよりも高速の速度VPを平均値として、当該速度VPを中心として集中的に分布する。また、図7(c)に例示されるように、移動方向θは、ある方向θPを中心として集中的に分布する。すなわち、非常時の避難の場合、あるエリア内の状態は、通常時に対し、人の移動の平均速度が大きく、且つ、移動方向が単一となる傾向にある。
【0043】
また、あるエリア内で事件や災害などが発生した非常時において、野次馬が発生することがある。野次馬は、災害などから安全な距離まで離れたら、事態を確認するために立ち止まったり、事態を確認可能な比較的遅い速度で移動することが考えられる。
【0044】
すなわち、野次馬の場合、図8(a)に例示されるように、人がそれぞれ区々な方向に、比較的低速に移動すると考えられる。図8(b)は、このときの移動速度Vの分布の例を示し、図8(c)は、移動方向θの分布の例を示す。図8(b)に例示されるように、移動速度Vは、そのエリアを通常状態時に人の歩く平均速度VAVGよりも低速の速度VP’を平均値として、速度VP’と速度「0」との間に多くが分布する。また、図8(c)に例示されるように、移動方向θは、特定の方向に対する依存性が極めて小さい。すなわち、野次馬は、速度「0」付近に多くが集まる傾向にある。
【0045】
このように、監視エリア内で人の位置の変化を計測し、計測結果に基づき人の移動速度Vおよび移動方向θの分布を求める。そして、求めた移動速度Vおよび移動方向θの分布が、予め定めたパターンに適合する場合に、監視エリア内で異常事態が発生していると判定する。また、移動速度Vおよび移動方向θの分布がどのパターンに適合しているかで、異常事態の種類も推測できる。
【0046】
上述の例では、パターン(1)として、検出された移動速度Vの平均値が、予め求めた通常状態時の移動速度の平均速度VAVGより所定以上大きく、且つ、移動方向θの分布が一方向に集中しているパターンが定義される。そして、監視エリア60内で検出された移動速度Vおよび移動方向θの分布がこのパターン(1)に適合する場合に、監視エリア60内に居る人々が避難行動をとっており、非常事態が発生した状態となっていると推測することができる。また、パターン(2)として、検出された移動速度Vの平均値が「0」に近く、且つ、移動方向θの分布に特定の傾向が見られないパターンが定義される。そして、監視エリア60内で検出された移動速度Vおよび移動方向θの分布がこのパターン(2)に適合する場合に、監視エリア60内において野次馬が発生する状態になっていると推測することができる。
【0047】
より具体的な数値を用いて説明する。一例として、ある環境、例えば監視エリア60内で人体70、70、…の位置を検知し、検知結果に基づき、1秒毎に人体70、70、…それぞれの移動速度Vおよび移動方向θを算出する。そして、10秒間分の移動速度Vおよび移動方向θを算出して蓄積する。蓄積された移動速度Vおよび移動方向θそれぞれを、所定幅の階級に分類して各階級毎の度数(人数)をとってヒストグラムを作成する。
【0048】
図9は、こうして作成した移動速度Vおよび移動方向θそれぞれの度数分布を示すヒストグラムの例である。図9(a)は、移動速度Vの度数分布の例を示し、図9(b)は、移動方向θの度数分布の例を示す。これら図9(a)および図9(b)それぞれの度数分布を混合正規分布として、それぞれ母集団を推定する。
【0049】
図9(a)に例示される移動速度Vのヒストグラムは、平均値VAVG=101.7[cm/s]の1つの正規分布となる。また、図9(b)に例示される移動方向θのヒストグラムは、平均値θAVG1=−84.4[deg]および平均値θAVG2=99.0[deg]の2つの正規分布となる。また、人体が静止していると見做すことができる静止比率Rsは、図9(a)のヒストグラムから、速度30[cm/s]以下の比率として、略5%であることがわかる。
【0050】
ここで、この環境での通常状態での移動速度VRおよび移動方向θRの分布について、移動速度VRの平均値VpAVG[cm/s]と、移動方向θRの平均値θaAVG[deg]およびθbAVG[deg]を考える。図9に示した、現在の検知結果による移動速度Vおよび移動方向θの平均値と、通常状態で予め求めた移動速度VRおよび移動方向θRの平均値とをそれぞれ比較する。そして、比較の結果に基づき、監視エリア60内の状況を判定する。
【0051】
移動速度Vに関して、速度差Vdiff=VAVG−VpAVGが正の値の閾値Th1以上の場合には、通常時よりも人の移動速度Vが上昇していると判定する(状況:速度上昇)。また、速度差Vdiffが負の値の閾値Th2以下の場合は、通常時よりも移動速度Vが低下していると判定する(状況:速度低下)。速度差Vdiffに加え、移動速度VRおよび移動速度Vで分散値を比較してもよい。
【0052】
また、移動方向θに関して、度数分布のピーク数が、予め求めた移動方向θRの度数分布におけるピーク数よりも減った場合には移動方向がある方向に集中したと判定し(状況:方向集中)、増えた場合には移動方向が複数の方向に分散したと判定し(状況:方向分散)、ピーク位置が変化した場合には移動方向が変化したと判定する(状況:方向変化)。ピークの情報に加え、移動方向θRおよび移動方向θで分散値を比較してもよい。また、静止比率が予め定めた値を超える場合は、静止している人が増大したとして判定する(状況:静止者増大)。
【0053】
異常状態判定部13は、上述の各状況の組み合わせのパターンに、監視エリア60内における人体70の検知結果から求められた移動速度Vおよび移動方向θが適合するか否かで、監視エリア60内の異常事態の有無および状態を判別する。各状況の組み合わせと監視エリア60内の異常事態の有無および状態との関係の例として、例えば下記の2つが挙げられる。
(1)「速度上昇」且つ「方向集中」で、一方に急いでいる人が大勢いる。
(2)「静止者増大」且つ「方向分散」で、野次馬が集まっており、何か起こっている。
【0054】
異常状態判定部13は、監視エリア60内における人体70の検知結果から求めた移動速度Vおよび移動方向θが、上述したように定められた各状況の組み合わせのパターンに適合していると判定した場合に、監視エリア60内の状態が、異常事態が発生して異常状態になっていると判定する。その旨は、通報部14に通知され、通報部14は、この通知を受けて、例えば監視センタに対して、監視エリア60内の状態が異常状態になっている旨を通報する。
【0055】
なお、監視エリア60内における人体70の検知結果から求めた移動速度Vおよび移動方向θの分布が上述の各組み合わせに含まれない場合であっても、当該移動速度Vおよび移動方向θの分布が、通常状態で予め求めた移動速度VRおよび移動方向θRの分布と大きく異なる場合が考えられる。この場合、通報部14が例えば注意を促す通報を行うようにすると、好ましい。
【0056】
図10は、本第1の実施形態による異常事態判定処理を示す一例のフローチャートである。なお、通常速度および方向記憶部12には、通常状態の監視エリア60内で求めた移動速度VRおよび移動方向θRが予め記憶されているものとする。
【0057】
ステップS10で、状態判定装置1は、人体検知センサ10を用いて、監視エリア60内に存在する全ての人について、その位置を計測する。次のステップS11で、速度および方向算出部11は、計測された位置に基づき、監視エリア60内に存在する人の移動速度Vおよび移動方向θを算出する。次のステップS12で、異常状態判定部13は、ステップS11で求められた移動速度Vおよび移動方向θをそれぞれ集計し、これら移動速度Vおよび移動方向θの分布をそれぞれ求める。そして、次のステップS13で、異常状態判定部13は、通常速度および方向記憶部12に予め記憶される移動速度VRおよび移動方向θRの分布と、ステップS12で求められた移動速度Vおよび移動方向θの分布とに基づき、監視エリア60内で異常事態が発生しているか否かを判定する。
【0058】
若し、異常事態が発生していないと判定された場合、処理がステップS10に移行され、異常事態判定処理が継続される。一方、ステップS13で異常事態が発生していると判定された場合、処理がステップS14に移行され、監視エリア60内で異常事態が発生している旨が通報部14に通知される。この通知を受けた通報部14は、例えば監視エリア60を監視している監視センタに対して異常事態が発生した旨のアラートが発信される。そして、処理がステップS10に戻される。
【0059】
以上説明したように、本発明の第1の実施形態によれば、予め求められた移動速度VRおよび移動方向θRの分布が予め定めたパターンに適合している場合に、監視エリア60内の状態が異常状態となっていると判定する。そのため、移動速度VRの分布と移動方向θRの分布との組み合わせで判定を行うため、多様な異常状態を検出可能であると共に、異常状態の種類を推測することができる。
【0060】
(第1の実施形態の変形例)
次に、本発明の第1の実施形態の変形例について説明する。上述の第1の実施形態では、監視エリア60内の人体の検知結果から算出された移動速度Vおよび移動方向θの分布が、予め定めたパターンに適合している場合に、監視エリア60内の状態が異常状態となっていると判定したが、これはこの例に限定されない。本第1の実施形態の変形例では、例えば、監視エリア60内の人体の検知結果から算出された移動速度Vおよび移動方向θの分布が、通常状態の監視エリア60内から予め求められた移動速度VRおよび移動方向θRの分布と大きく異なっている場合に、監視エリア60内の状態が異常状態となっていると判定する。
【0061】
この場合、例えば、移動速度Vおよび移動方向θの分布、ならびに、移動速度VRおよび移動方向θRの分布を表す代表値をそれぞれ求め、この代表値の差分を閾値と比較することが考えられる。分布の代表値としては、平均値や分散値が考えられる。
【0062】
一例として、監視エリア60内から求められた移動速度Vの平均値VAVGと、通常状態の監視エリア60内から予め求めた移動速度VRの平均値VpAVGとの差分が、閾値よりも大きい場合に、監視エリア60内の状態が異常状態となっていると判定する。
【0063】
本第1の実施形態の変形例では、上述した第1の実施形態と比べて判定精度が劣るが、判定処理を簡便に行うことができる。
【0064】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本第2の実施形態では、監視エリア60内から求められた移動速度Vおよび移動方向θからなる移動ベクトルを求め、この移動ベクトルによる2次元正規分布に基づき、監視エリア60内の状態が異常状態であるか否かを判定する。
【0065】
本第2の実施形態について、より詳細に説明する。一例として、図11に例示されるような通路80の環境を考えた場合、この通路80内の通行者90、90、…は、多くが図中で右方向または左方向に移動すると考えられる。
【0066】
人体検知センサ10により、これらの通行者90、90、…の位置を求め、速度および方向算出部11で、通行者90、90、…それぞれの移動速度Vおよび移動方向θを算出する。算出されたこれら移動速度Vおよび移動方向θからなる、各通行者90、90、…の移動ベクトルMV0、MV1、…、MVm、…、MVnを集計し、各通行者90、90、…の位置を原点に置く。すなわち、各移動ベクトルMV0、MV1、…、MVm、…、MVnの始点を合わせて原点に置く。図12は、これら始点を合わせて原点に置いた各移動ベクトルMV0、MV1、…、MVm、…、MVnが指し示す点を、xy座標で表した例である。
【0067】
次に、これら各移動ベクトルMV0、MV1、…、MVm、…、MVnが指し示す点が含まれる分布を推定する。この例では、これら各点の分布は、図13に例示されるように、2つの2次元正規分布100aおよび100bとして表される。なお、各点の分布の構成は、その環境での動線の多様性に依存する。互いに反対方向である2方向に移動が可能な通路80の環境下では、このように、x軸方向に正負に分かれた2つの2次元正規分布100aおよび100bが形成される。
【0068】
この移動ベクトルMVによる分布は、時刻の推移に応じて刻々と変化する。その場合であっても、通路80のように移動目標が明瞭な環境下では、通行者90、90、…は、互いに類似の行動を取る。そのため、図14に例示するように、時刻の推移に関わらず、順次算出される移動ベクトルにより略同一の2次元正規分布100a1、100a2、…、ならびに、2次元正規分布100b1、100b2、…が順次、形成される。
【0069】
通路80の通常状態において、この2次元正規分布100a1、100a2、…ならびに、2次元正規分布100b1、100b2、…を予め算出しておく。そして、移動方向θが共通する2次元正規分布を全て含む分布(通常分布と呼ぶ)を算出する。図14の例では、移動方向θがx軸の正の方向である移動ベクトルMVの2次元正規分布100a1、100a2、…を全て含む通常分布101aを算出する。また、移動方向θがx軸の負の方向である移動ベクトルMVの2次元正規分布100b1、100b2、…を全て含む通常分布101bを算出する。
【0070】
なお、例えば通常分布101aは、通常分布101aに含まれる2次元正規分布100a1、100a2、…全てによる包絡線に対して若干大きく、余裕を持たせた分布とするとよい。
【0071】
状態判定装置1において、これら通常分布101aおよび101bを予め作成し、通常速度および方向記憶部12に対して記憶しておく。そして、状態判定装置1の運用時には、図15に例示されるように、速度および方向算出部11は、監視エリアである通路80において通行者90、90、…を検知することで求めた移動速度Vおよび移動方向θからなる移動ベクトルMVに基づき、2次元正規分布102aおよび102bを算出する。
【0072】
異常状態判定部13は、この算出された2次元正規分布102aおよび102bが、それぞれ、通常速度および方向記憶部12に記憶される通常分布101aおよび101bに完全に含まれるか否かを判定する。例えば、2次元正規分布102aおよび102bのうち少なくとも一方が、通常分布101aおよび101bから逸脱している場合に、監視エリアである通路80の状態が異常状態であるとして、注意報または警報を通報部14から発信する。
【0073】
なお、上述では、本第2の実施形態を、通路80のような、通行者90の移動方向が制限される環境に適用させた例として説明したが、これはこの例に限定されない。例えば、本第2の実施形態は、上述したショッピングセンタのように、人が区々の方向に移動する環境下にも適用可能である。この場合、例えば、通常状態では、原点を中心としたやや狭い範囲の2次元正規分布が形成され、非常事態が発生して人が避難を始めたような場合には、原点を外れた何れかの方向に、2次元正規分布が移動するものと考えられる。
【0074】
また、上述では、本第2の実施形態において、監視エリアから算出された2次元正規分布が、通常状態で予め求めた通常分布に完全に含まれる場合に、監視エリアの状態が異常状態であると判定しているが、これはこの例に限定されない。例えば、監視エリアから算出された2次元正規分布を示す値と通常分布を示す値とを比較して、これらの差分が閾値を超える場合に、監視エリアの状態が異常状態であると判定することも考えられる。
【0075】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。本第3の実施形態は、上述した第1の実施形態、第1の実施形態の変形例および第2の実施形態による状態判定装置1を、コンピュータで実現した例である。図16は、本第3の実施形態による状態判定装置としてのコンピュータ200の一例の構成を示す。
【0076】
コンピュータ200において、バス201に対してCPU210、ROM211、RAM212、表示制御部213およびセンサインターフェイス(I/F)214が接続される。さらに、バス201に対して、ハードディスクドライブ(HDD)215、入力I/F216、ドライブ装置217および通信I/F218が接続される。
【0077】
CPU210は、ROM211やHDD215に予め記憶されたプログラムに従い、RAM212をワークメモリとして用いて、このコンピュータ200の全体の動作を制御する。例えば、図1を用いて説明した、速度および方向算出部11、異常状態判定部13および通報部14それぞれの機能は、CPU210上で動作するプログラムによって実現される。また、通常速度および方向記憶部12は、HDD215を適用することができる。
【0078】
表示制御部213は、CPU210によりプログラムに従い生成された表示制御信号に基づき、ディスプレイ221が表示可能な表示信号を生成し、ディスプレイ221に供給する。また、入力I/F216は、キーボード216aや、マウスなどのポインティングデバイス216bが接続され、ユーザ入力を受け付け、ユーザ入力に応じた制御信号を出力し、CPU210に供給する。また、入力I/F216は、USB(Universal Serial Bus)などのデータ通信入出力216cにも対応できる。
【0079】
センサI/F214は、距離センサ50、50、…が接続され、CPU210からの制御信号を距離センサ50、50、…に対して供給すると共に、距離センサ50、50、…の出力信号を、CPU210に供給する。
【0080】
ドライブ装置217は、CD(Compact Disk)やDVD(Digital Versatile Disk)、フレキシブルディスク、不揮発性メモリなどの記憶媒体からのデータの読み出しを行う。通信I/F218は、LAN(Local Area Network)やインターネットといったネットワークに対する通信を制御する。
【0081】
距離センサ50、50、…による監視エリア60内の人体70、70、…の検知結果に基づき、上述の第1の実施形態、第1の実施形態の変形例または第2の実施形態で説明したようにして、監視エリア60内の状態が異常状態であると判定された場合、その旨を、例えば通信I/F218を介して監視センタなどに通報する。これに限らず、判定結果をディスプレイ221に表示することもできる。
【0082】
このような構成によるコンピュータ200で実行される状態判定プログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD、DVD、フレキシブルディスク、不揮発性メモリなどのコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記録されて提供される。ドライブ装置217により、この記憶媒体から状態判定プログラムを読み出し、例えばHDD215に対して所定の方法でインストールする。
【0083】
また、本第3の実施形態のコンピュータ200で実行される状態判定プログラムを、インターネットなどのネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、本実施形態のコンピュータ200で実行される状態判定プログラムを、インターネットなどのネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。
【0084】
また、本第3の実施形態のコンピュータ200で実行される状態判定プログラムを、ROM211などに予め組み込んで提供するように構成してもよい。
【0085】
本第3の実施形態のコンピュータ200で実行される状態判定プログラムは、上述した各部(速度および方向算出部11、異常状態判定部13および通報部14)を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしては、CPU210が上述の記憶媒体や、HDD215から状態判定プログラムを読み出して実行することにより、各部が主記憶装置(例えばRAM212)上にロードされ、速度および方向算出部11、異常状態判定部13および通報部14が主記憶装置上に生成されるようになっている。
【符号の説明】
【0086】
1 状態判定装置
10 人体検知センサ
11 速度および方向算出部
12 通常速度および方向記憶部
13 異常状態判定部
14 通報部
50 距離センサ
60 監視エリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定められた領域内で移動体を検知する検知手段と、
前記検知手段で検知された前記移動体の移動速度および移動方向をそれぞれ算出する算出手段と、
前記算出手段で算出された、複数の前記移動速度の分布および複数の前記移動方向の分布が予め定められたパターンに適合している場合に、前記領域内が異常状態にあると判定する判定手段と
を有する
ことを特徴とする状態判定装置。
【請求項2】
前記判定手段は、
前記算出手段で算出された複数の前記移動速度の平均値から、通常状態で複数の移動体について予め求めた移動速度の平均値を減じた値が、予め定められた値より大きく、且つ、前記算出手段で算出された複数の前記移動方向の分布のピーク数が、該通常状態で複数の移動体について予め求めた移動方向の分布のピーク数よりも減っている場合に、前記領域内が異常状態にあると判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の状態判定装置。
【請求項3】
前記判定手段は、
通常状態で複数の移動体について予め求めた移動速度の平均値から、前記算出手段で算出された複数の前記移動速度の平均値を減じた値が、予め定められた値より大きく、且つ、前記算出手段で算出された複数の前記移動方向の分布のピーク数が、該通常状態で複数の移動体について予め求めた移動方向の分布のピーク数よりも増えている場合に、前記領域内が異常状態にあると判定する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の状態判定装置。
【請求項4】
検知手段が、予め定められた領域内で移動体を検知する検知ステップと、
算出手段が、前記検知ステップで検知された前記移動体の移動速度および移動方向をそれぞれ算出する算出ステップと、
判定手段が、前記算出ステップで算出された、複数の前記移動速度の分布および複数の前記移動方向の分布が予め定められたパターンに適合している場合に、前記領域内が異常状態にあると判定する判定ステップと
を有する
ことを特徴とする状態判定方法。
【請求項5】
予め定められた領域内で移動体を検知する検知ステップと、
前記検知ステップで検知された前記移動体の移動速度および移動方向をそれぞれ算出する算出ステップと、
前記算出ステップで算出された、複数の前記移動速度の分布および複数の前記移動方向の分布が予め定められたパターンに適合している場合に、前記領域内が異常状態にあると判定する判定ステップと
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項6】
予め定められた領域内で移動体を検知する検知手段と、
前記検知手段で検知された前記移動体の第1の移動速度および第1の移動方向を算出する算出手段と、
前記算出手段で算出された、複数の前記第1の移動速度の分布および複数の前記第1の移動方向の分布と、前記領域内の移動体について通常状態で予め求められた、複数の第2の移動速度の分布および複数の第2の移動方向の分布とをそれぞれ比較した比較結果に基づき、前記領域内が異常状態にあるか否かを判定する判定手段と
を有する
ことを特徴とする状態判定装置。
【請求項7】
前記判定手段は、少なくとも、
複数の前記第1の移動速度の分布を示す値と、複数の前記第2の移動速度の分布を示す値との差分が予め定められた値を超える場合に、前記領域内が異常状態にあると判定する
ことを特徴とする請求項6に記載の状態判定装置。
【請求項8】
前記判定手段は、
前記第1の移動速度および前記第1の移動方向からなる第1のベクトルと、前記第2の移動速度および前記第2の移動方向からなる第2のベクトルとをそれぞれ求め、
複数の前記第1のベクトルの始点を合わせた該第1のベクトルそれぞれが指し示す点の第1の分布の少なくとも一部が、複数の前記第2のベクトルの始点を合わせた該第2のベクトルそれぞれが指し示す点の第2の分布に含まれていない場合に、前記領域内が異常状態にあると判定する
ことを特徴とする請求項6に記載の状態判定装置。
【請求項9】
検知手段が、予め定められた領域内で移動体を検知する検知ステップと、
算出手段が、前記検知ステップで検知された前記移動体の第1の移動速度および第1の移動方向を算出する算出ステップと、
判定手段が、前記算出ステップで算出された、複数の前記第1の移動速度の分布および複数の前記第1の移動方向の分布と、前記領域内の移動体について通常状態で予め求められた、複数の第2の移動速度の分布および複数の第2の移動方向の分布とをそれぞれ比較した比較結果に基づき、前記領域内が異常状態にあるか否かを判定する判定ステップと
を有する
ことを特徴とする状態判定方法。
【請求項10】
予め定められた領域内で移動体を検知する検知ステップと、
前記検知ステップで検知された前記移動体の第1の移動速度および第1の移動方向を算出する算出ステップと、
前記算出ステップで算出された、複数の前記第1の移動速度の分布および複数の前記第1の移動方向の分布と、前記領域内の移動体について通常状態で予め求められた、複数の第2の移動速度の分布および複数の第2の移動方向の分布とをそれぞれ比較した比較結果に基づき、前記領域内が異常状態にあるか否かを判定する判定ステップと
をコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−212407(P2012−212407A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78735(P2011−78735)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000202361)綜合警備保障株式会社 (266)
【Fターム(参考)】