説明

状態提示機能付ロボット装置

【課題】 専門知識のない人や聴覚障害のある人でも、装置の状態を容易に認識でき、安全に空間を共有できるロボット装置を提供する。
【解決手段】 本発明の状態提示機能付ロボット装置は、胴部1に設けられ物体を把持するマニプレータ部と、センサ部7と、予め記憶された音データや音合成によって人間に音で状態を通知する発音部8と、各部の動作を制御する制御部4とを備え人間と作業空間を共有して作業するもので、胴部およびマニプレータ部の表面を覆う装置カバー部2と、装置カバー部の表面に設けられた温度変色部材5とを備え、温度変色部材の変色およびセンサ部の入力情報に基づく発音部の発声により装置の状態を提示するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人間と作業空間を共有するロボット装置の内部温度、応力、外部因子などを提示し監視する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人間と作業空間を共有する装置の例として、マニピュレータと各種のセンサを備えたものにより対象物を移動させる運搬装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
これは、対象物を把持するマニピュレータを人が操作することにより人の動きに追従するように制御され、対象物の運搬を人と強調して行うものである。この装置を制御するため、位置センサ、力覚センサ、速度センサ、温度センサその他のセンサの組み合わせが用いられている。
【特許文献1】特開2005−154101号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、従来のロボット装置では、聴覚に障害のある人は内部温度や過負荷など装置の異常状態を認知できないという問題があった。また、複数のセンサを取り付け、センサでの計測値を読込み、異常を判断する場合は計測された内部温度から視覚的に内部温度異常を判断する事が難しく、表示手段を取り付けた場合には装置が大きくなり、装置を小型化したい場合の支障になるという問題もあった。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、内部の温度や作用する力または光などを音および色で提示することにより、専門知識のない人や聴覚障害のある人でも、装置の状態を容易に認識でき、安全に空間を共有できるロボット装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記問題を解決するため、本発明は次のように構成したものである。
請求項1に記載の発明は、胴部と、前記胴部に設けられ物体を把持するマニプレータ部と、センサ部と、予め記憶された音データや音合成によって人間に音で状態を通知する発音部と、前記各部の動作を制御する制御部とを備え人間と作業空間を共有して作業するロボット装置において、前記胴部および前記マニプレータ部の表面を覆う装置カバー部と、前記装置カバー部の表面に設けられた温度変色部材とを備え、前記温度変色部材の変色および前記センサ部の入力情報に基づく前記発音部の発声により装置の状態を提示するものである。
請求項2に記載の発明は、前記センサ部は各部に配置した温度センサとし、前記胴部および前記マニプレータ部の温度上昇により前記温度変色部材を変色させるとともに過熱温度を検出時には前記発音部から過熱情報を発声させるものである。
請求項3に記載の発明は、前記センサ部は光センサとし、かつ前記胴部または前記マニプレータ部に加熱手段を配置し、前記光センサからの入力情報に応じて前記加熱手段に電流を通じて加熱し、前記温度変色部材を変色させるとともに前記発音部から光度情報を発声させるものである。
請求項4に記載の発明は、前記センサ部は各部に配置した応力センサとし、かつ前記胴部または前記マニプレータ部に加熱手段を配置し、前記応力センサが設定出力を超えた場合に前記加熱手段に電流を通じて加熱し前記温度変色部材を変色させるとともに前記発音部から過負荷情報を発声させるものである。
請求項5に記載の発明は、前記センサ部は各部に配置した音声センサとし、かつ前記胴部または前記マニプレータ部に加熱手段を配置し、前記音声センサからの入力情報に応じて前記加熱手段に電流を通じて加熱し前記温度変色部材を変色させるとともに前記発音部から入力された音に応じた音を発声させるものである。
【発明の効果】
【0005】
請求項1、2に記載の発明によると、表面を温度変色部材とする事で新たなセンサを配置せずに装置内部の温度を装置表面の温度を把握することで知る事ができる。また、装置カバー部の変色と音により、専門知識のない人間でも、装置の温度を視覚から判断できる。さらに、一定のデザインである装置のカラーリングに変化を持たす事ができ、見ている人間が飽きる事が少なくなる。そして、音だけでなく視覚からも状態を察知する事ができ、新たなセンサを配置しなくても、聴覚に障害のある人とも安全に空間を共有できる。
請求項3、4、5に記載の発明によると、表面の変色で状態を表現するので、温度以外の状態に専門知識がない人間にわかるように提示することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の具体的実施例を図に基づいて説明する。
【実施例1】
【0007】
図1は、本発明の実施例1を示す状態提示機能付ロボット装置の斜視図である。
図において、1は胴部、2は装置カバー部、4は制御部、5は温度変色部材、7は温度センサ、8はスピーカーである。
制御部4は、ロボット装置を駆動させるモータ(図示せず)へ供給する電力を制御し、ロボット装置の双腕が駆動され、人間と同じ空間での作業を行わせるものである。装置カバー部2は、ロボット装置の表面を構成しており、その表面に温度変色部材5が塗布されている。温度変色部材5は温度変化によって変色するが、種々の温度のものを選べるようになっている。また、温度センサ7が装置カバー部2の内側各部に配置されている。なお、装置カバー2は、温度変色部材5その物でも良い。
つぎに、本実施例の動作について図2を用いて説明する。
図2は本発明の処理手順を示すフローチャートである。
ロボット装置の内部にある図示しないモータやセンサ、基板などが発熱し、内部温度が上昇する。そうすると、ステップ1では、装置カバー部2の温度変色部材が反応し、ロボット装置の表面の色が内部温度に応じた色に変色する。なお、内部温度が異常と判断された場合は特定の色に変色しても良い。
ステップ2では、ロボット装置の表面に配置された温度センサ7により計測された内部温度上昇に伴うロボット装置の表面温度が計測され制御部4に入力される。制御部4は、予め設定した閾値を超える温度が計測されると、制御部4に予め記憶された音データや音合成によってその温度に応じた音をスピーカー8から発音し状態提示を行う。
このように、装置カバー部2の表面に温度変色部材を設けることにより、新たなセンサを配置せずに装置内部の温度を装置表面の色の変化によって把握できる。また、専門知識のない人間でも、装置カバー部2の変色とスピーカー8からの音により、装置の温度を視聴覚で判断できる。さらに、一定のデザインである装置のカラーリングに変化を持たす事ができ、見ている人間が飽きる事が少なくなる。そして、音だけでなく視覚からも状態を察知する事ができ、新たなセンサを配置しなくても、聴覚に障害のある人でもロボット装置の状態を把握することができる。
なお、本実施例では双腕のロボット装置について述べたが、これに限られるものではなく、人間と作業空間を共有する装置、例えば医療・福祉機器、掃除機や電子レンジなどの家庭内サービス装置を含めた装置でも同様の効果が得られる。また、温度変色部材は、例えば一般的な金属への可逆性示温インクの塗布などでも良い。
【実施例2】
【0008】
図3は、本発明の実施例2を示すフローチャートである。
ステップ1では、ロボット装置への外部からの入力情報が温度(気温など)の場合は、その温度によって装置カバー部2の温度変色部材5が反応して変色する。
ステップ3では、外部からの入力情報が光の場合は、図示しない光度検出センサにて光度を検出して制御部4に入力される。そして、制御部4は図4に示す加熱手段6の通電性発熱体などの発熱装置へ流す電力を調整することにより、光度に応じた表情として装置カバー部2の温度変色部材を変色させる。
このように、外部からの入力情報に応じて制御部4が図示しない通電性発熱体へ流す電力を計測された光度に応じて調整することで発熱する温度を制御することにより、獲得された光度に応じた表情として装置カバー部2の温度変色部材を変色させる。すなわち、受動的に発生する温度上昇による変色以外に外部からの入力情報に応じて能動的に表面を変色させ、表面の変色で感情表現をすることができる。
【実施例3】
【0009】
図4は本発明の実施例3を示す状態提示機能付ロボット装置の斜視図である。
図において、6は加熱手段、9はハンド部、10はアーム部、11は指先部力センサ、12は腕部力センサ、13は胴部圧力センサである。なお、その他の符号は実施例1と同じである。
【0010】
つぎに、本実施例の動作について図5を用いて説明する。
図5は、本発明の実施例3の処理手順を示すフローチャートである。
ステップ4のロボット装置がハンド部9を備え、ハンド部9の指先に指先部力センサ11が備わっている場合には、ハンド部9の指先が過負荷状態であると指先部力センサ11からの計測値で制御部4が判断すると、「指先に過大な力がかかっています」と発話し、周囲の人間に対して注意を促す。発話と同時に、加熱手段6である通電性発熱体などの発熱装置へ流す電力を制御部4が調整することにより、指先への負荷に応じた表情として装置カバー部2の温度変色部材を変色させる。
このように、実施例2と同じく、外部からの入力情報に応じて制御部4が通電性発熱体へ流す電力を計測された力に応じて調整することで、発熱する温度を制御し、獲得された力に応じて装置カバー部2の温度変色部材を変色させる。
ステップ5のロボット装置がアーム部9を備え、アーム部9に腕部力センサ12が備わっている場合には、アーム部9に物体の接触があると腕部力センサ12からの計測値で制御部4が判断すると、「腕に何かぶつかっています」と発話し、周囲の人間に対して注意を促す。同時に加熱手段に通電し、力の程度に応じて表面を変色させ注意を促す。
ステップ6のロボット装置が、胴部1を備え、胴部1に胴部圧力センサ13が備わっている場合には、胴部1に物体の接触があると胴部圧力センサ13からの計測値で制御部4が判断すると、「胴に何かぶつかっています」と発話し、周囲の人間に対して注意を促す。
このような方法を取ることで、温度以外の状態も専門知識がない人間にわかるように提示することができる。同時に加熱手段に通電し、力の程度に応じて表面を変色させ注意を促す。
なお、本実施例では応力センサとして力センサと圧力センサを用いたが、これに限らずトルクを検出するトルクセンサや触覚センサなど種々のセンサを用いてもよい。
【実施例4】
【0011】
図6は、本発明の実施例4を示すフローチャートである。
ステップ1では、ロボット装置への外部からの入力情報が温度(気温など)の場合は、その温度によって装置カバー部2の温度変色部材5が反応して変色する。
ステップ7では、外部からの入力情報が音の場合は、図示しない音声センサ(例えばマイク)にて音を検出して制御部4に入力される。そして、制御部4は図4に示す加熱手段6の通電性発熱体などの発熱装置へ流す電力を調整することにより、音に応じた表情として装置カバー部2の温度変色部材を変色させる。
このように、外部からの入力情報に応じて制御部4が図示しない通電性発熱体へ流す電力を計測された音に応じて調整することで発熱する温度を制御することにより、獲得された音に応じた表情として装置カバー部2の温度変色部材を変色させる。すなわち、受動的に発生する温度上昇による変色以外に外部からの入力情報に応じて能動的に表面を変色させ、表面の変色で感情表現をすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0012】
装置の温度変化を表面の変色による監視と音による状態提示という手順をとるため専門知識のない人間でも装置の状態を把握できて、人間と共存・協調して働く装置の安全性と親和性の確保という用途にも適用できる。例えば、医療・福祉機器、掃除機や電子レンジなどの家庭内サービス装置を含めた装置などである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例1を示すロボット装置の斜視図である。
【図2】本発明の実施例1の処理手順を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施例2の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施例3を示すロボット装置の斜視図である。
【図5】本発明の実施例3の処理手順を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施例4の処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0014】
1 胴部
2 装置カバー部
4 制御部
5 温度変色部材
6 加熱手段
7 温度センサ
8 スピーカー
9 ハンド部
10 アーム部
11 指先部力センサ
12 腕部力センサ
13 胴部圧力センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴部と、前記胴部に設けられ物体を把持するマニプレータ部と、センサ部と、予め記憶された音データや音合成によって人間に音で状態を通知する発音部と、前記各部の動作を制御する制御部とを備え人間と作業空間を共有して作業するロボット装置において、
前記胴部および前記マニプレータ部の表面を覆う装置カバー部と、前記装置カバー部の表面に設けられた温度変色部材とを備え、前記温度変色部材の変色および前記センサ部の入力情報に基づく前記発音部の発声により装置の状態を提示することを特徴とする状態提示機能付ロボット装置。
【請求項2】
前記センサ部は各部に配置した温度センサとし、前記胴部および前記マニプレータ部の温度上昇により前記温度変色部材を変色させるとともに過熱温度を検出時には前記発音部から過熱情報を発声させることを特徴とする請求項1記載の状態提示機能付ロボット装置。
【請求項3】
前記センサ部は光センサとし、かつ前記胴部または前記マニプレータ部に加熱手段を配置し、前記光センサからの入力情報に応じて前記加熱手段に電流を通じて加熱し、前記温度変色部材を変色させるとともに前記発音部から光度情報を発声させることを特徴とする請求項1記載の状態提示機能付ロボット装置。
【請求項4】
前記センサ部は各部に配置した応力センサとし、かつ前記胴部または前記マニプレータ部に加熱手段を配置し、前記応力センサが設定出力を超えた場合に前記加熱手段に電流を通じて加熱し前記温度変色部材を変色させるとともに前記発音部から過負荷情報を発声させることを特徴とする請求項1記載の状態提示機能付ロボット装置。
【請求項5】
前記センサ部は各部に配置した音声センサとし、かつ前記胴部または前記マニプレータ部に加熱手段を配置し、前記音声センサからの入力情報に応じて前記加熱手段に電流を通じて加熱し前記温度変色部材を変色させるとともに前記発音部から入力された音に応じた音を発声させることを特徴とする請求項1記載の状態提示機能付ロボット装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−50479(P2007−50479A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−237454(P2005−237454)
【出願日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】