独特のマヌカ因子(UMF)により栄養強化した蜂蜜
【課題】 本発明は、UMFを調合した食品および医薬品に関する。
【解決手段】 本発明は、提示例のみに限定されるわけではないが、とりわけ、UMFにより栄養強化した蜂蜜とUMFにより栄養強化した蜂蜜の調合方法とUMFを含有する蜂蜜の画分の製造方法とに関する。
【解決手段】 本発明は、提示例のみに限定されるわけではないが、とりわけ、UMFにより栄養強化した蜂蜜とUMFにより栄養強化した蜂蜜の調合方法とUMFを含有する蜂蜜の画分の製造方法とに関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、UMFを調合した食品と医薬品とに関する。本発明は、提示例のみに限定されるわけではないが、とりわけ、UMFにより栄養強化した蜂蜜とUMFにより栄養強化した蜂蜜の調合方法とUMFを含有する蜂蜜の画分の調合方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
マヌカツリーはニュージーランドに自生しており、強い香りを有する蜂蜜を産する。蜂蜜は何千年も食品として利用されてきただけでなく、医薬品目的としても、とりわけ抗生物質として活用されてきた。抗菌活性の主たる機能は過酸化水素に依拠し、それは蜂蜜中で産生される酵素、グルコースオキシダーゼである。マヌカハニーはこの抗菌活性に加えて、追加活性を有する事が知られてきた。この追加活性とは、非過酸化活性として知られており、独特のマヌカ因子(UMF)として市販されている。
この非過酸化活性の特性については多くの研究によって明らかにされており、この追加活性を司る画分を同定する試みは既に成されてはいるが、決して成功してきたとは言えない。
【0003】
蜂蜜は数千年に渡り使用されてきており、蜂蜜について扱った最初の文献は約4000年前に遡る。蜂蜜は食用として利用するのに何の操作も加工も必要としない唯一の甘味料である(ホワイト(White),1992)。
【0004】
マヌカツリーは、ニュージーランドに自生している。湿った養分の低い溶脱土壌を好み、樹齢寿命は60年程度である。この樹木は高さ6〜8mに成長し、直径は7〜10cmとなる。差し渡し10〜12mmの花をつけ、通常は白色である(ウォード(Ward),2000)。マヌカツリーから得られる蜂蜜は、ハーブのような、ウッディな特徴ある強い香りを有し、濃い暗色の色調である。
【0005】
蜂蜜中に存在する成分を同定する数多くの研究が成されてきた。蜂蜜の梼w紋買fータベースを作成する目的には、産地や採取元の花を特定する事であり、更には混ぜ物による蜂蜜の粗悪品を検出する為でもある。
【0006】
含有されている成分のほとんどは、炭水化物類、酵素類、芳香族有機酸類、炭化水素類、直鎖一塩基酸類、直鎖二塩基酸類、水分である。
蜂蜜は主として糖類であるグルコース、フラクトース、シュクロース、マルトースなどで構成されているが(ホワイト(White),1978)、他の多くの多糖類も同定されている。
【0007】
同定されているマヌカハニー中に含まれる重要な多糖類は、マルツロース、コウジビオース、ツラノース、ニゲロース、マルトース、トレハロース、パラチノース、シュクロース、エルロース、パノース、メレジトース、マルトトリオースなどがある(ウエストンとブロックルバンク(Weston&Brocklebank),1999; ウー(Wu),2000)。ウー(2000)はマヌカハニーの主要多糖類としてツラノースを発見し、ウエストンとブロックルバンク(1999)はマルトースを発見した。
【0008】
蜂によって蜂蜜に加えられる他の成分にはアミン酸類があり、最も多量に含まれるのはプロリンであり、少量のカタラーゼも含まれる(ホワイト(White),1992)。酵素であるカタラーゼは過酸化水素を分解して水と酸素に転換する。
【0009】
マヌカハニーには高濃度の芳香族有機酸類が含有され、その大部分は2−ヒドロキシ−3−フェニルプロピオン酸(タン(Tan)等1988; ウィルキンス(Wilkins)等1993)であり、芳香族有機酸類の含有量は、ニュージーランドクローバーから採取された蜂蜜よりも遥かに高い濃度(1000倍)で含まれる(タン(Tan)等1988)。他に同定されている含有芳香族有機酸類は、2−メトキシ安息香酸、2'−メト
キシアセトフェノン、2−デセンジオン酸、4−キドロキシ−3−5−ジメトキシ安息香酸、2−ヒドロキシ−3−(4'−メトキシフェニル)プロピオン酸、シリンガ酸、3,
4,5−トリメトキシ安息香酸、アセトフェノンなどである(タン(Tan)等1988; ウィルキンス(Wilkins)等1993)。
【0010】
季節や産地に関係なく、1種類の花種から採れたマヌカハニーのサンプルは、プロピオン酸類の総計濃度が蜂蜜1kg当り700mg以上、安息香酸類の総計濃度が蜂蜜1kg当り35mg以上、アセトフェノン類の総計濃度が蜂蜜1kg当り20mg以上であることから特定される(ウィルキンス等1993)。
【0011】
タン等(1989)は主要な特徴的含有成分として2−ヒドロキシ−3−フェニルプロピオン酸も同定し、2−メトキシ安息香酸と21−メトキシアセトフェノンと共にこの成
分が高濃度で含有される事がマヌカの花から採取した蜂蜜である事の指標として利用できる事を指摘している。
【0012】
ウィルキンス等(1993)は、マヌカハニーにおいてはデカンジオン酸とトランス−2−デセンジオン酸とが他の蜂蜜に比べて高濃度に含まれる事が多いと指摘している。オクタンデジオン酸、デカンジオン酸、トランス−2−デセンジオン酸のような二価酸類が含有されている事も報告されている(タン(Tan)等1988; ウィルキンス(Wilkins)等1993)。
【0013】
他種の蜂蜜に含有される他の成分としては、ラクトン、ジアスターゼ、酸性成分が無い事、灰分などがホワイト(White)等(1962)により同定されている。この文献ではこれらの成分がマヌカハニーに含まれているという記述は無く、マヌカハニーに含まれる水分について報告されている文献は出版されていない。
【0014】
蜂蜜は太古の昔から多くの文化圏において医薬品として利用されてきた(ランソム(Ransom),1937; アドコック(Adcock),1962)。最近では、その確実な抗菌作用が認識されるに至って、蜂蜜への興味が話題性のある成分として注目されてきた。この蜂蜜が有する抗菌効果は、実際には蜂蜜の種類によって異なる(ダストマン(Dustmann),1979)。
【0015】
マヌカハニーは高い抗菌効果を有するが、その機構は単純に蜂蜜の浸透圧、pH、グルコース酸化酵素活性だけではない事が観察されている(ラッセル(Russell),1983)。活性に寄与する機構は現在では、"非過酸化活性"或は"UMF"として認識されている。
【0016】
ダストマン(Dustmann)(1979)は、抗菌活性の存在はグルコース酸化酵素活性や高い浸透圧に依拠するものではないことを報告していた。しかし、同氏は後者の活性については総抗菌活性のほんの一部にしか関わらないと論じている。
【0017】
モランとラッセル(Molan&Russell)(1988)は抗菌活性の存在はマヌカハニー中の過酸化水素に依拠するものではないことを検証し、更に、総合的な高い活性を有するマヌカハニーは、高値な非過酸化活性を有している事も明らかにした。
【0018】
蜂蜜が有する非過酸化活性についての研究によって、蜂蜜はいくつかの興味深く且つ明らかに矛盾する特性を有する事が判った。ヴェルジェ(Verge)(1951)は活性画分を水、アルコール、エーテル、アセトン中に抽出した。シュラーとボーゲル(Schler&Vogel)(1956)は活性画分をエーテルにより抽出した。ラヴィ(Lavie)(1960)は、活性画分はアセトンでは抽出できるが、エーテルでは抽出できない事を示した。ゴネットとラヴィ(Gonnet&Lavie)(1960)は冷エーテルで抽出した活性画分は95度で揮発する事を示した。ムラデノフ(Mladenov)(1974)は、蜂蜜は揮発性、難揮発性、不揮発性の抗菌活性を有する成分を含んでいる事を報告している。
【0019】
マヌカハニーの活性は熱にも光に対しても安定している事が判っており(モランとラッセル(Molan&Russell),1988, タン(Tan)等,1988, ラッセル(Russell)等,1990)、タン(Tan)等による予備的な研究では(1988)、追加活性物質は有機溶媒、例えばエタノールやエーテル等に可溶である事が判った。
【0020】
既に蜂蜜から単離されている過酸化水素と酵素であるリゾチーム以外で抗菌活性を有するのは、芳香族有機酸類とフェノール系成分だけである(ウエストン(Weston)等,2000)。
【0021】
カフェインとフェルラ酸は両方共にフェノール酸であり、抗菌活性を有する事が同定されており(シズマークとマーテル(Cizmark&Matel),1970, シズマークとマーテル(Cizmark&Matel),1973)、蜂蜜から単離されている(ウォーダン(Wahdan),1998, ウエストン(Weston),2000)。しかし、それらは低い濃度でしか含まれておらず、蜂蜜の抗菌作用としては過酸化水素の貢献度に比べて僅かな貢献度しかない(ウエストン(Weston),2000)。
【0022】
マルエンダ リケンダ(Marhuenda Requenda)等(1987)は抗菌活性を有する他のフェノール酸類として、カフェイン酸、バニリン酸、p−クマル酸、p−ヒドロキシ安息香酸、シリンガ酸などを報告している。
【0023】
ピノセンブリン、ピノバンクシン、クリシン、フラボノンなどフラボノイド類が蜂蜜から単離された(ウォーダン(Wahdan),1988, フェレス(Ferreres)等,1994)。これらについては抗菌活性が詳細に報告されている(リヴェラ−ヴァルガス(Rivera−Vargas)等,1993, Ito等,1994))が、これらも顕著な抗菌活性を発揮するのに十分な含有量が蜂蜜中には観察されない(ウエストン(Weston),2000)。
【0024】
ラッセル(Russell)(1983)は蜂蜜から得られる主要な抗菌成分として2つの芳香族成分を同定した。それらは、4−ヒドロキシ−3−5−ジメトキシ安息香酸とメチル−3,4,5−トリメトキシ安息香酸である。
【0025】
プロポリスは、樹木のゴム性滲出液から蜂が集めてくる樹脂性素材でミツバチの巣箱の抗菌試薬として使用されているが、これには安息香酸とシナミン酸類とフラボノイド類とに代わる成分が含まれている(マルクッチ(Marcucci),1995)。ワルダン(Waldan)(1998)はフラボノイド類が抗菌作用を有するプロポリスの主要成分であると論じている。
【0026】
抗菌活性を司る物質として同定されているものは、ガランジン、ピノセンブリン、カフェイン酸、フェルラ酸等がある(ラヴィ(Lavie),1960, ジサルベール(G
hisalbert),1979, ラッセル(Russell)等,1990)。ウエストン(Weston)(2000)はその後、これらの個々の成分自体には抗菌活性は無いものの、プロポリス総体として初めて生物活性がある事を実証した。
【0027】
蜂毒の成分であるメリチンとフォスフォリパーゼは弱い抗菌活性があると考えられていた。これらは両方共にタンパク質であるが、ゲル浸透クロマトグラフィによってマヌカハニーに含まれる抗菌作用物質は分子量が1000amu以下である事が判った(ラッセル等,1990)。
【0028】
他の物質でマヌカハニーの有する非過酸化活性を司るものとして、蜂の体液に特異的に含まれる抗菌性ペプチド類が考えられる。これらは、アバエシン、アピダエシン、ヒメノプタエシン、ローヤリシン、リゾチーム類等である。このペプチド類は強い抗菌作用を有し、これらが蜂蜜に含まれていれば顕著な非過酸化活性を司ると考えられる(ウエストン等,2000)。
【0029】
マヌカハニーの抗菌活性物質(UMF)の非過酸化活性については長年研究されてきたが、単離も同定もなされていない。実際、マヌカハニー中に単離可能な画分は存在しないと考えている研究者もいる。
【0030】
ラッセル等(1990)は、追加抗菌活性の重要性についての考え方の違いは、おそらく抗菌活性の定量性の差異(すなわち、過酸化水素もしくは高浸透圧によらないもの)に依拠するのであろうと考察している。モランとラッセル(Molan&Russell)(1988)は様々なニュージーランドハニーの試料について調べ、追加活性はある試料では観察されず、ある試料ではほとんど全ての活性が見受けられた。また彼等は、どの試料についても、追加抗菌活性の強さの程度と総体的な抗菌活性の強さの程度との間に緊密な相関関係があることも指摘している。
【0031】
ボグダノフ(Bogdanov)(1997)はどの画分に非過酸化活性があるのかを調べる為に、揮発性成分、非極性成分と不揮発性成分、酸性成分、塩基性成分を分離する試みを行なった。彼はこれを行なうにあたり、試料の活性を測定し、次いでその画分を取り除き、然る後に再び活性を測定した。もしその試料に活性が残っていなかったら、取り除かれた画分に抗菌作用構成成分が存在した事になると結論している。揮発成分の抽出はロトベイパー(Rotovapor)を60℃に設定し、2時間加熱して行なわれた。非極性及び不揮発性成分の抽出はC−18カラムを用いて行なわれた。塩基性成分の抽出はH型陽イオン交換カラムを用い、酸性成分の抽出はOH型陰イオン交換カラムを用いて行なわれた。酸の除去には、酸が遊離陰イオン型になるように、蜂蜜はpH=11に調整された。
【0032】
ボグダノフは、逆滴定によって初期のpHに戻したら本来の抗菌活性は回復したので、最初の蜂蜜のpHを11に変化させても抗菌活性には全く影響を及ぼさないと指摘している。マヌカハニーについて、ボグダノフは黄色ブドウ球菌に対して抗菌活性試験を行なった場合は酸性の画分に100%の活性が見受けられ、一般好気性菌に対して抗菌活性試験を行なった場合は酸性の画分に75%、塩基性の画分に10%、非極性の画分に5%、揮発性の画分に10%の活性がそれぞれ観察されたと論じている。それゆえに、蜂蜜中の酸性画分が非過酸化抗菌活性を有し、酸の含有量と明白に相関関係があるがpHとは相関関係を有さないと結論付けられた。
【0033】
ウォーダン(1998)は浸透圧の効果について、糖質溶液と希釈しない蜂蜜とで比較を行い、高い糖質濃度が抗菌活性の重要な因子である事を発見したが、希釈した場合は、また別の因子が抗菌活性に関与する事が明らかになった。更には本研究において蜂蜜はp
H=7.2のニュートリエントブロスによって希釈して用いた理由により、pHは活性に影響しない事が判明し、影響を与える他の物質が存在する事が予測された。
【0034】
ウエストンとブロックルバンク(1999)は、ポリ(カプリル)アミド、セファデックス G−10、バイオゲルP−2、XAD−2樹脂などを酸性及び塩基性条件で使用するクロマトグラフィを用いたいくつかの方法によって、抗菌性物質から単糖の分離を試みた。2−ブタノールによる単離も試験した。ポリアミドとセファデックス G−10とを用いたクロマトグラフィによって、活性物質は遅く溶出する画分に存在し、HPLCによる分析ではフラボノイド類が存在する事が示唆された。
【0035】
フェノール抽出物の主要な産生物はシリンジ酸メチルである事が薄相クロマトグラフィによって同定され、フェニル乳酸が僅かに存在する事も判った。HPLCの分析によって、シリンジ酸メチルは総フェノール抽出物の45%以上を占める事が明らかになった。同論文では、マヌカハニーに含まれるシリンジ酸メチルとフェニル乳酸の含有量では、それ自体で全ての非過酸化活性を満たせない事が検討され、結論付けられている。更には、このレベルのシリンジ酸メチルの含有量は、活性マヌカハニーと不活性マヌカハニーとに同様に含有される量であって、故に、観察される活性の差異には関与していないと考えられる。
【0036】
XAD−2では全ての活性成分が炭水化物と一緒に溶出し、フェノール酸類と一緒に溶出する活性成分はない。バイオゲル−P2を用いた場合も同様の結果であった。単糖は何の抗菌活性特性も有していないので、抗菌活性物質は糖類によって運ばれる事が推測された。
【0037】
ウエストン等(1999)は、活性蜂蜜と不活性蜂蜜どちらのフェノール酸画分にも全体として同じ抗菌活性を有する事が実証されたので、マヌカハニーのフェノール酸物質類が個々に或は全体として抗菌活性を有していたとしても、"観測される活性"には関与していないと結論付けた。
【0038】
ウエストンとブロックルバンク(1999)は、活性マヌカハニーは、四糖であるシアル酸ルイスX(この糖は胃の内壁に潰瘍を生じさせるバクテリアの接着作用を制御する抗原決定基である)に類似した特殊なオリゴ糖を有するものではないかと推定した。彼等は活性マヌカハニーと不活性マヌカハニーとについてオリゴ糖組成を調べたが、両方のマヌカハニーに違いは見つからなかった。
【0039】
ペリー(Perry)等(1997)はニュージーランドに成育する、異なる化学的特性を有する3種のマヌカを発見したが、これらの成分は葉から採れる芳香油の組成から判別できる。その一つはピネン類の割合が高く、もう一つはセスキテルペン類の割合が高く、イーストランド地域に成育する3つ目はサイクリックトリケトンとレプトスペルモンの含有量が高かった。これらの中で3つ目の芳香油が最も抗菌活性が高かった。
【0040】
ウエストン等(2000)は非常に高い非過酸化活性を有するマヌカハニーの試料からレプトスペルモンを検出する為に3種類の方法を試みた。一つ目の方法はXAD−2樹脂を用いてフェノール酸を吸着させる方法で、2つ目の方法は2−ブタノールを用いて抽出する方法で、3つ目の方法は液―液抽出を用いる方法であった。これら3種の方法から得た抽出物のどれからもトリケトン類は検出されなかった。これによって、レプトスペルモンは水に不溶であるから花蜜内には存在せず、よって蜂蜜中には存在しないと結論付けられた。
【0041】
ウエストン等(2000)は抗菌活性を有するマヌカと有しないマヌカとに含まれるフ
ェノール酸を比較して、定量的にも定性的にも両者に違いがない事を実証した。シナミン酸とフラボノイド類との含有量は多くのヨーロッパ産蜂蜜と近い値か同値であった。19種のマヌカハニー試料の分析によって、含有されるフェノール酸類の組成や量は全ての試料について同等であったので、産地の違いによるフェノール酸類の違いはない事が判った。
【0042】
ウエストン(2000)は下記のまとめをしている;
(i) 蜂蜜において何等かの抗菌活性に関与する唯一の物質は過酸化水素であり、プロポリス由来のフェノール酸類のような他の物質は過酸化水素と比較して重要ではなく、
(ii) 蜂蜜中の過酸化水素含有量は原則的に、植物由来のカタラーゼを一定量加えて解析されるが、但し
(iii) 過酸化水素は蜂蜜或は画分サンプル中のグルコース酸化酵素によって産生されるというホワイト(White)等(1963)とダストマン(Dustmann)(1971)との研究結果に基づけば、抗菌活性分析を行なう為にサンプル類を希釈し前処理する現在の解析方法(アレン,モラン,リード(Reid),1991, モランとラッセル,1998)ではこれらのサンプルに加えるカタラーゼ量は、上記の機序で産生される過酸化水素を分解するのに十分な量ではない。
【0043】
これに加えて、揮発成分類はGC−MSにより分析され、一般的に、花蜜の構成成分であり、花の香りに寄与する事もわかった。これらの成分は多岐にわたるが、それらの蜂蜜中における含有量は少なく、特定の花や蜂蜜に特異的に含まれる揮発成分もこれらの含有量においては抗菌作用を発揮する事はない。更に、蜂蜜が1種類の花種から採取された事を同定する為に使用される花蜜に含有されるフェノール酸成分類も抗菌特性は有していない。但し、抗菌活性を有する為の適切な含有量があるのかどうかについては判っていない。
【0044】
よってウエストン(2000)は、この時点の研究の結論としてUMFの存在の可能性を低いとし、それはカタラーゼの添加で十分分解できなかった結果として異常な高値として残ってしまった過酸化水素を計測していたにすぎないと示した。"独特の因子"は実際のところ、マヌカハニー中に大量のカタラーゼが存在するか否かによって、マヌカハニーの抗菌活性の有無を区別していたのかもしれない。
【0045】
高いUMF値を有する蜂蜜、そしてそのような蜂蜜から加工した製品は消費者から強く求められている。これは高いUMF値の蜂蜜が有する効能はともかくとして、UMF含有画分の単離が出来るかどうかに帰結する。
【0046】
もしマヌカハニーの画分がUMF活性に関係しているとすれば、単離されたUMFにより栄養強化した蜂蜜や他の加工食品や医薬品へ応用する事が可能である。公知のマヌカハニーの好都合な特性や有用な効果を更に発展させる事が出来る。
【0047】
本発明の目的は、マヌカハニーからUMFを含有する画分を調整する方法を提供し、もしくは少なくとも消費者に役に立つ選択肢を提供する事である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0048】
UMFを含有する画分は、熟練した技術者が知る多くの装置を用いれば大量の蜂蜜から分離精製されるであろう。しかし、これまでHPLCを用いて蜂蜜に非過酸化生物活性を与える成分の精製と単離とが試みられてきたが、従来技術で行なわれてきたカラム類や溶離液の選択はこの目的への具体的な到達を阻んできた。
【0049】
従来技術の試みは、間違った実験条件を用いる事によって蜂蜜の生物活性を無意識に破壊しがちであったか、もしくは使用していたカラムが十分な分離能を持たずそれ故分離した画分の同定が困難であったかのいずれかであった。
【0050】
更には、UMF画分が蜂蜜に占める割合は小さい為に、これまで行なわれてきた分離技術であれば溶離液のピークは無意識的に無視されてきたか他の成分類と重なって見つからなかったとも考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0051】
本発明は、通常乾燥重量で1%にも満たない少量の蜂蜜画分が実質的に全ての非過酸化活性を有しており、しかもこの画分は大量の蜂蜜減量からUMFを含有する画分として単離されることを定めるものである。
【0052】
本発明の第一の態様は、UMFにより栄養強化された蜂蜜について定める。
望ましくは、この蜂蜜はマヌカハニーである。
望ましくはこの蜂蜜は栄養強化されていない如何なるマヌカハニーよりもUMF値が高いものである。更に望ましくは、この栄養強化された蜂蜜はUMF値25以上を有し、更に望ましくはUMF値35以上を有する。
【0053】
本発明の第二の態様は、蜂蜜にUMFを含有する画分を混合する工程を含むUMFにより栄養強化された蜂蜜を調整する方法について定める。
本発明の第三の態様は、画分が得られたサンプルに存在する実質的に全ての単糖の糖質類から画分を分離する事によりUMFを含有する画分を調整する方法について定める。
【0054】
望ましくは、本方法は、
・ マトリクスにある量の蜂蜜を加え、
・ 溶液を用いてマトリクスからサンプルを溶出させ、そして
・ UMFを含有する画分を採取する
工程を含む。
【0055】
望ましくは、UMFを含む画分の採取は、サンプルに存在する実質的に全ての単糖の糖質類を溶出させた後に開始する。更に望ましくは、採取されたUMFを含有する画分は、実質的にサンプルに存在する総ての単糖の糖質類を含んでいない。
【0056】
望ましくは、蜂蜜はマヌカハニーである。
望ましくは、マヌカハニーはUMF値25以上を有し、更に望ましくはUMF値35以上を有する。
【0057】
望ましくは、マトリクスはサイズ排除マトリクスかもしくは逆相マトリクスである。
望ましくは、溶離液は水である。
望ましくは、マトリクスはクロマトグラフィ用カラムに充填してある。
【0058】
本発明における第三の態様の、第一実施例において、マトリクスはサイズ排除とイオン交換マトリクスである。望ましくは、対イオンはNa+である。更に望ましくは、マトリクスは排除限界の値が104である。更に望ましくは、マトリクスはスチレンとジビニルベンゼンとの共重合体である。
【0059】
本発明における第三の態様の第二実施例において、マトリクスはC18である。望ましくは、マトリクスは粒子径15μm、細孔径100Åである。
蜂蜜をそのまま全量使用する事が望ましいが、裏漉しした蜂蜜を含む、予め蜂蜜から分取した構成成分や一部分を、本方法に使用する事も出来る。
【0060】
本発明の第四の態様は、マヌカハニーからのUMFを含有する画分を定める。
望ましくは、この画分は実質的に単糖の糖質類を含有していない。
望ましくは、UMFを含有する画分が有する抗菌活性はアルカリpH領域で不安定である。更に望ましくは、アルカリpH領域は9以上である。
【0061】
望ましくは、UMFを含有する画分は本発明の第三の態様に準じた方法により調整される。
望ましくは、UMFを含有する画分は実施例2と3と4とに記載されているクロマトグラフ上の特徴を有する。
【0062】
望ましくは、UMFを含有する画分は、UMFを含有する画分を含む蜂蜜のサンプル(20μL)を分析用カラムであるショウデックスTMSugar KS−801とKS−802とを直列に繋ぎナトリウム化したカラムに注入して、カラム温度50℃でミリQ水にて流量1mL/minで溶離させた時に、保持時間が19.4分から25分の間となる。更に望ましくは、UMFを含有する画分の保持時間が19.4分から21.7分の間となる。
【0063】
本発明の第五の態様は、本発明の第四の態様に準じたUMFを含有する画分の医薬品用途への転用を定める。
望ましくは、医薬品用途はニュージーランド特許出願NO.501687に記載されているような、創傷包帯である。
【0064】
本発明の第六の態様は、本発明の第四の態様に準じたUMFを含有する画分の食品用途への転用を定める。
望ましくは、食品用途は蜂蜜である。
【0065】
"UMFにより栄養強化した蜂蜜"とは、単離したUMFを含有する画分を加えた蜂蜜を意味する。
"マヌカハニー"とは、そのほとんどをマヌカの花から採取した花蜜を意味する。
【0066】
"UMF値"とは、全蜂蜜もしくは裏漉し蜂蜜もしくはその画分を寒天プレート拡散分析法によってフェノール相当量に関連させて測定した抗菌活性の測定値を意味する。
"UMFを含有する画分"とは、全蜂蜜もしくは裏漉し蜂蜜に含まれる非過酸化抗菌活性成分の画分を意味する。
【0067】
画分について"実質的に単糖の糖質類がない"とは、画分を採取するサンプル中に含有される単糖の総糖質類量に比べて、画分中の単糖の糖質類の重量が、少量もしくは無視できる程度に少ない事を意味し、例えば、単糖の総糖質類量の5%(w/w)以下であり、更に典型例では1%(w/w)以下である。
【0068】
本発明が採用されれば、全蜂蜜中のUMFを含有する画分が明確に検出でき、これまで出来なかった非過酸化活性を定量的に表す事が可能となる事が確認される。更には、マヌカハニー以外の蜂蜜UMFを含有する画分の存在が調べられていないものに非過酸化活性がある事が示される可能性がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0069】
本発明における望ましい実施例では、蜂蜜中に存在する主要な単糖類を分離するように
設計された分離用カラムが用いられる。これらの主要な単糖類はグルコースとフラクトースとである。カラムの実施例としてはレゼックスTM、ヌクレオシルTM、ショウデックスTMなどが含まれる。これらは例としてのみ取り上げて頂きたい。
【0070】
カラムを通して蜂蜜を溶離する間に、UV吸光度光度計と示差屈折計の両方またはいずれかを用いて溶離液中の対象となる分画をモニターしながら、小さな画分を分取し分析する事が望ましい。
【0071】
ショウデックスTM(配位子交換とサイズ排除の混合モード)クロマトグラフィカラムはグルコースとフラクトースとを蜂蜜中の他の成分から分離するのに利用されてきた。示差屈折計によって小さなピークとして検出される分画がフラクトースのピークの後に溶出する事が明らかにされている。
【0072】
フラクトースにはUV吸収はないが、この分画にはUV吸収がある。この分画を調べると実質的に蜂蜜の全ての非過酸化性抗菌活性を有している事が明らかになっている。この分画がいわゆるUMFを含有する画分と呼ばれる。カタラーゼを用いて蜂蜜中の過酸化物由来のどの抗菌活性を破壊しても、UMF画分の活性は維持された。
【0073】
エーテルを用いた蜂蜜の液―液抽出もUMFを含有する画分の単離を簡便化するのに利用される。これらの実験において、エーテルは多くの非糖質と有機化合物を蜂蜜から取り除く事ができ、一方、残りのサンプルの非過酸化活性は維持される。
【0074】
更にUMF画分を精製する為には、画分を何回もカラムに通してますます多くの不純物を取り除くか、例えば逆相カラムのような他の種類の充填剤を詰めたカラムを用いたクロマトグラフィを行なえば、画分から化合物を分離する事が出来るであろう。
【0075】
このUMF画分はこれまで決して分離されておらず、数多くの研究グループによって様々な試みが成されてきたにも拘らず、ただ別個の集合体として存在する事が認識されていただけであった。逆相、バイオゲル P−2、XAD−40、陰イオン交換カラムなどは全て従来技術において、非過酸化生物活性を有する化合物の単離と同定のために既に使用されてきた。
【0076】
これらの状況の中でこの画分は分離されなかったかもしくは確認されなかった。その理由は、その存在量が微量であり、蜂蜜研究におけるこれまでのHPLCでは、おそらく大きな単糖のピークに隠されていたか、クロマトグラフィ条件が蜂蜜の生物活性を破壊していたのであろう。
【0077】
発明者等が行った予備的な研究によって、陰イオン交換カラムのようにアルカリ領域のpHを必要とするカラムではUMF分画を分離できない事が判った。アルカリ条件では蜂蜜の活性は破壊される事が判った。つまり、中性領域のpHで使用するカラムを採用せねばならない。
【0078】
UMFを含有する画分はpH9では30分後にその生物活性のほとんどを失う事が判った。この画分はpH10では5分間で破壊される事が判った。HPLCの分析時間は通常これよりも長い。pH11では蜂蜜の生物活性は直ちに破壊される。
【0079】
非過酸化活性(UMF)を示すマヌカハニーサンプルをエーテルで抽出し標準的技術でクロマトグラフィの分離を阻害する脂肪酸を取り除いた。水層とエーテル層両方を、抗菌分析法を用いて試験し、どちらの層にUMF活性を単離出来るか調べた。UMF活性は水層に維持されており、エーテル層には何等有意義な生物活性も見られなかった。
【0080】
蜂蜜サンプル中の非過酸化活性レベルを検証する為に、過酸化水素によって蜂蜜に供せられるどの抗菌活性も破壊するカタラーゼを用いて行なった。カタラーゼ溶液は蒸留水(10mL)にカタラーゼ(0.02g)を溶解させて作成した。蜂蜜は蒸留水に溶解させ、1mLの水に対して1gの蜂蜜の割合に調整し、1mL毎に分けた。次いで1mLの蒸留水(総活性測定用)か1mLのカタラーゼ溶液(非過酸化活性用)を各サンプルバイアルに加えた。
【0081】
(第1実施形態)−抗菌活性の拡散分析
寒天(23g)を蒸留水(1L)に溶解させて寒天培地を作成しオートクレーブにかける前に150mLをフラスコに分け取った。必要であればフラスコを水槽で蒸気処理(100℃,30分間)し、次いで他の水槽で寒天温度をバクテリア培養に耐えられる温度に下げた(50℃、30分間)。
黄色ブドウ球菌培地は無菌の接種用トリプティックソイ培養液(30g/L)を用いたビーズ培養法によって調整し、次いでインキュベートした(37℃、18時間)。S.aureus培地はトリプティックソイ培養液において0.5AUの吸光度になるようにサーモスペクトロニクス社 ヘリオスγ分光光度計(540nm)を用いて調整した。ブランクとしてトリプティックソイブイヨンを使用した。
【0082】
大きなサイズの矩形分析プレート(コーニング社製431111 無菌バイオアッセイ皿, 245mm×245mm×18mm)の調整は、S.aureus培地(上記条件100μL, 0.5 OD)を接種した寒天培地150mLを基準面まで注いで行なった。一旦凝固させてから分析プレートを上下逆さまにして4℃で一晩保存した。
【0083】
全蜂蜜のサンプル調整は、全蜂蜜を秤量し(1.00g)蒸留水に溶解させて(1mL)行なった。再現性の良い分析を行なう為に、これらの作業はインキュベーション(37℃、30分間)によって蜂蜜を柔らかくして行い、その間の時間を管理し過酸化水素の産生を一定にするようにした。過酸化水素活性を計測しない他の実験では、室温下で溶解するまで撹拌した。
【0084】
作成された50%(w/v)溶液は、更に、総非過酸化活性の必要性に応じて、蒸留水かカタラーゼ溶液(20mg/10mL蒸留水)かで同量希釈(1:1)してサンプルとした。
【0085】
HPLCから得た蜂蜜の分画と液/液抽出物とは蒸留水で希釈し(1:1)蜂蜜の分離前の調整濃度と同じにした。作成された50%溶液は、非過酸化活性の目的の為に、更にカタラーゼ溶液で希釈した(1:1)。
【0086】
フェノール標準液は10%のフェノールストック溶液(10gフェノール/100mL蒸留水)を用いて2,3,4,5,6,7%の濃度に調整した。これらの溶液は暗所に4℃の条件で保存し、1ヶ月毎に再調整する。
【0087】
ウェルは、8mmの穿孔器を用いて標準の8×8グリッドに穿孔し、接種針を用いて寒天を剥がした。プレート上にサンプルをセットするのに使用するテンプレートは、それぞれ16個の番号を付けられたウェルが繰り返し4連あり行と列の組合せは1つずつの準ラテン方格法用とした。これによってサンプルはランダムにセットできるので、エッジ効果によるデータのバイアスを取り除く事ができる。
【0088】
25%濃度の蜂蜜サンプルとフェノール標準液は配分された各ウェルに添加した(11
μL)。
(第2実施形態)
高速液体クロマトグラフィ(HPLC)は、515HPLCポンプ、2410示差屈折計、996フォトダイオードアレイ検出器、ミレニアム操作ソフトウエアを使用するウォーターズ社のHPLCシステムにより実施した。
【0089】
初期の研究でショウデックスTMSugar KS800シリーズのカラム類が使用した全てのカラムの中で最も良い分離結果を出した。ここでは、ショウデックスTMSugar KS801と ショウデックスTMSugar KS802を直列に繋いで、サイズ排除クロマトグラフィと配位子交換クロマトグラフィを組み合わせて蜂蜜サンプルを分画分取した。
【0090】
KS801はナトリウム型で排除限界は103であった。KS802もナトリウム型で排除限界は104であった。両方のカラム共にスチレンジビニルベンゼンが充填剤に使用されている。使用温度は、製造元の推奨では1mL/minの流量において最初は80℃であった。溶離液にはミリQ水を用いた。
【0091】
20mg/20μLである蜂蜜サンプルの注入はKS800シリーズHPLCカラムへ行われた。図1と図2は示差屈折計によって検出されて得られたデータのプロットである。抗菌活性分析に使用する分画は20回の注入から採取された。
【0092】
図1において、分画Aは0分から12分まで、分画Bは12分から19.4分まで、分画Cは19.4分から25分までを分取したものである。プロットによれば、グルコース(1)のピークの後にフラクトース(2)のピークが観察される。オリゴ糖(3)のピークも観察される。
【0093】
分離された分画の抗菌活性は試験用培地として黄色ブドウ球菌を使用したウェル拡散法によって行なった。
試験用にHPLCで採取した分画を、ビュッヒ461水槽を付属させた、ビュッヒ(B・モ・堰j RE111 ロトベイパー(Rotovapor)を用いて40℃で減圧乾
固させた。次いでそのサンプルを200μLの蒸留水と200μLのカタラーゼ溶液とを含む溶液で再溶解させ、非過酸化活性のみが存在する事を確かめた。
【0094】
蜂蜜サンプルは25%濃度に調整し、抗菌活性の試験を行なった。抗菌活性分析は2%から6%の値域のフェノール標準液を3複製用い、サンプルは3複製から5複製用いて、寒天プレート上の番号管理されたランダムウェルに添加して実施した。
【0095】
そのプレートを37℃で一晩、バクテリアが成育可能な条件にてインキュベートした。インキュベーションの後、デジタルキャリパー計によってウェル周りの阻害領域の直径を計測した。
【0096】
蜂蜜の非過酸化活性は分画C(図1)に完全に含まれていた。
HPLCプロットのベースライン領域に注目すれば、分画Cの活性領域に2つのピークが観察される(図2)。これらのピークのどれが活性に関与しているかを検証する為に、他の分画分取時間の設定方法を工夫した;分画Dは0分から19.4分、分画Eは19.4分から21.7分、分画Fは21.7分から25分とした。
【0097】
これらの実験から、全抗菌活性成分は分画Eに単離出来た。
この試験は更に2回繰り返し実施し、同様の結果を得た。
(第3実施形態) 蜂蜜のセミ分画分取(サイズ排除とイオン交換との組合せ)
これまでの研究によって(第2実施形態とスノウ(Snow)(2001))、UMFを含有する画分は単糖の糖質類の大きな部分からショウデックスTMSUGAR KS−801とKS−802分析用カラムを用いて分離できる事が実証されている。
【0098】
サンプルの注入量を増加させカラムを通すのに適切であるこのカラムの分取用バージョン(KS−2002カラム)を使用した。裏漉し蜂蜜からの溶出液の内訳は、最初にフェノール酸類、次いで二糖類とオリゴ糖類、最後に単糖類である事が同定された。
【0099】
ショウデックスTMSUGAR KS2002(20mm×300mm,20μm粒子径,60Å細孔径)分取スケールカラムはサイズ排除と配位子交換機能が組合わされている。このカラムはナトリウム(Na+)型で使用し排除限界は1×104である。クロマトグラフィはミリQ水を溶離液とし、使用流量は3mL/minで、室温で行った。
【0100】
300mg/mL濃度の蜂蜜の大量注入は200μLのループによって行なった。996PDAと2410RI両検出器によってスペクトルをモニターした。採取した分画は全て大サイズの蒸発皿で凍結乾燥した。
【0101】
図3は300mg/mL濃度の裏漉し蜂蜜を200μL注入して得た溶出液の内訳である。全蜂蜜中に観察されるグルコースとフラクトースの量はほぼ等しい(ホワイト(White)等,1962)が、今回は蜂蜜を注入前に裏漉ししているのでグルコースのピークはフラクトースのピークに比べて減少している。
【0102】
サイズ排除マトリクスは通常僅かに疎水性を有する弱い陰イオン性であり、その為に理想的な分離とはならず、分離は分子量サイズが厳密に反映されない(クニコ(Cunico)等,1998)。このカラムはスチレンジビニルベンゼンをサイズ排除用重合体として使用しており、フェノール酸類とはイオン交換相互作用を有する。それ故保持時間は分子量サイズを表すものではない。
【0103】
カラムからの溶出液はまず4つの分画として分取した;
1. 0.0−13.0分 フェノール酸類
2. 13.0−18.4分 二糖類とオリゴ糖類
3. 18.4−22.6分 グルコースとフラクトース
4. 22.6−30.0分 遅く溶出する成分類
活性は常に18.4分から30分の間の分画に観察された。次いで一つの分画に全ての活性が含まれているかどうかを確認した。
【0104】
【表1】
各数値は a)プレート全体の各ウェルの数値、b)フェノール活性をプレート毎に計算した数値、に基づいている。
【0105】
表1は分取時間の違いによる3〜5つの分画の試験結果と得られた分画の非過酸化活性試験結果をまとめたものである。注記として、最初の分析は全蜂蜜を使用し、後の2つは裏濾した蜂蜜を使用したものである。
【0106】
検出可能な全ての活性は最終的に19.5分から25.0分の間の分画類に限定される事が判った。これら2つの分画の95%信頼区間(CI,=平均±2×SE)は表2にまとめた。
【0107】
信頼区間は阻害領域にもフェノール相当領域にも重ならず、分画4の活性は統計的に裏漉し蜂蜜のそれとは同じではない事を示している。すなわち、カラムへの吸着かもしくは他の分画へ分割移行し分析の検出限界以下の量しか残っていないかの原因で何等かの活性の損失が起こっている事が示唆される。分画4の活性平均値はフェノール活性相当として裏漉し蜂蜜の90%を占めた。
【0108】
【表2】
阻害領域の数値は個々のウェルの数値で、フェノール相当領域の数値はプレートデータから計算した数値である。
【0109】
図3に示す通り、この分画にはほとんど全てのフラクトースが含まれる。単糖類そのものは抗菌活性を有していないが、水分活性を減少させ、且つグルコース酸化酵素の基質を供給し過酸化水素とグルコン酸とを産生させる物理的効果がある。それゆえ、低い濃度ではあっても他の化合物がこの分画に存在する事は明らかである。
【0110】
フラクトースのテーリング上にある小さなピークはこのカラムの分析用バージョンを使用したスノウ(2001)の研究によって観察された。スノウ(2001)によってこの分画を単離し、その構成成分をGC−MSとNMRを用いて同定する試みが成された。しかし、サンプル中のほとんどの化合物が結果として同定できなかった。更にこのピークの大きさと全蜂蜜の活性との相関関係を調べる試みも成されたが、何の関連性も見つからなかった。これによって、このピークはどの一つも活性を有しない多くの化合物で構成されている事が示唆される。
【0111】
スノウ(2001)は活性画分に関連するこのピークにはUV活性があることを指摘している。しかしこれらのUV活性ピーク類は、分取用カラムの性質上分離能が低く、この領域の弱いUV活性を有する大量の開鎖単糖類が干渉するために、同定されなかった。
【0112】
単糖類を含まない分画を得るために分画4を再度注入する事とした。再度注入した分画から得たスペクトル(図4)には、10.5分に新たなピークが出現しているものの、単糖ピークのテーリング上に何の濃縮されたピークも見受けられなかった。単糖のピークの立ち上がり位置に膨らみが観察されるが、グルコースの残渣であるようだ。ベースライン領域を拡大した図を図5に示す。
【0113】
糖類は、通常水溶液系に溶解しにくい化合物の溶解性を向上させる。よって、その化合物は糖類と相互作用を有するか糖類によって可溶化される可能性がある。糖類の濃度を低下させれば相互作用が無くなり早く溶出した。
【0114】
このピークは活性因子である可能性があるが、そのピークの大きさは、非過酸化活性に寄与する化合物(もしくは化合物類)は極めて低い濃度で存在するという考え方をとるのが良いであろう。或は、それは、冷凍庫で一ヶ月保存されていたサンプルを使用したので、分解物であるかかもしれない。
【0115】
再注入する前にサンプルの活性を試験したが活性の低下は見受けられず、この結果は単離するまで2ヶ月以上も冷凍保存していても活性画分は安定であったという研究結果からも裏打ちされている。このピークは非抗菌性化合物の分解物を反映している可能性もある。
【0116】
分画4を再注入して得られた20.5分から25.0分の間の分画を分取し、スノウ(
2001)によって観察された活性ピークが同定できるかどうかを検証する為に、その分画を再度注入した。大変小さいとはいえ、10.5分にやはり新たなピークがはっきりとスペクトル上に出現した(図6、拡大図は図7)。
【0117】
これにより、このピークは保存による分解物ではなく実際に活性が糖類に関連していない事を反映しているであろう事が示唆される。
この再注入から得られた分画の活性を調べるバイオ分析を行なう為に十分な量(極めて大まかな活性を示す為には最低200mgの蜂蜜をカラムに通さねばならず、厳密な活性分析を行なうには800mg必要である)は分取しなかった。
【0118】
再注入によるクロマトグラム上のデータの変化動向について確定的なことは言えない。この方針はこれ以上追究しない事としたが、カラムによって分離を行なう条件を変えるなど、より大きな容量を検討する方針は継続する。
【0119】
(第4実施形態) 蜂蜜のセミ分画分取(逆相)
C18 25mm逆相カラムの優位性は、カラムへ一度に1gを注入する事が出来る実質的により大きな保持容量を有する事であり、一方KS−2002カラムは60mgしか注入できない。
【0120】
逆相の分取用カラムにはデルタパック C18カートリッジ(25mm×100mm,
15μm粒子径、100Å細孔径)を3本直列に繋いで使用した。これにデルタ C18ガードインサート(25mm×10mm、15μm粒子径、100Å細孔径)を装着した。クロマトグラフィは室温にて流量10mL/min、0.5g/mLのサンプルの大量注入は2mLループで行なった。
【0121】
溶離システムは2種類を使用した。一つ目はミリQ水のみを使用した。しかし後に、最初に100%ミリQ水を流し、糖類が溶出した後で100%アセトニトリルに切替える方法に変更した。高い流量を使用するために、検出には広口径カラム用のWaters(ウォーターズ) 410示差屈折計を使用した。
【0122】
水中に採取された画分は大型の蒸発皿で凍結乾燥した。アセトニトリル中に採取された分画は減圧下で濃縮し、凍結乾燥器を用いて完全に乾燥させた。
これによって、活性の生物学的分析を行なう為に十分な量のサンプルを採取するのに費やす時間が大幅に短縮された。加えて、このカラムによって単糖類から活性成分をより効率よく分離する事が出来るかどうかが関心事であった。図8はこのカラムに大量注入して(0.5g/mL、2mL注入)ミリQ水で溶離させて得られたスペクトルである。
【0123】
このスペクトルのほとんどは単糖類のピークである。このカラムではフラクトースからグルコースを分離する事は出来なかったが、単糖類の直ぐ後の14分から25分ぐらいの間に複数のピークのセットが溶出しているのが観察される。
【0124】
これらのうち、いくつかのピークはオリゴ糖類である事が判明したが、これらの成分は活性マヌカハニー中に全蜂蜜量比でおよそ8%含まれている(WestonとBrocklebank,1999)。図9はこれらのピークを表示する為にベースライン領域を拡大してある。
【0125】
カラムからの溶出液はまず3つの分画として分取した;
1. 0.0−8.3分 早い時間に溶出する成分類
2. 8.3−11.8分 糖類
3. 11.8−25.0分 遅い時間に溶出する成分類
検出可能な活性成分は全て分画Cに含まれていることが判った(表3)。
【0126】
【表3】
各数値は a)プレート全体の各ウェルの数値、b)フェノール活性をプレート毎に計算した数値、に基づいている。
【0127】
興味を引くのは、いくつかの活性成分がアセトニトリルによって溶出しているかであり、それはアセトニトリルが分画に対して異なった溶解性を有するからである。加えて、全ての活性成分がミリQ水によってカラムから溶出されるかどうかも検討する必要がある。
【0128】
逆相クロマトグラフィにおいて、アセトニトリルは水よりも強力な溶媒であり、カラムから残存化合物を洗い出す目的で使用する事が出来る。分取された分画類は図10にまとめた。
【0129】
カラムはまずミリQ水で溶離を行い、概要を前述したように分画AとBを分取した。分画Bから分画C(11.8分)へ越える時点で送液ポンプを止め、溶離液を直接100%アセトニトリルに交換した。
【0130】
分画CH2Oを11.8分からアセトニトリルが検出器に到達するまで分取し(およそ13分間もしくは保持時間24分まで)、溶離液の置き換わりは屈折率の変化によってベースラインが急速に上昇する事で確かめられた。この時間から3本のカラム容量分のアセトニトリルをカラムに通してフラッシュし、溶出液はCMeCN分画として分取した。
【0131】
表4に示す通り、検出可能な活性成分は全て分画CH2Oに含まれており、CMeCN分画には一切含まれていない。これにより、活性成分はカラムに逆相的に保持されていない事がわかった。
【0132】
分画Cと分画CH2Oだけがそれぞれ72%と75%の裏漉し蜂蜜相当フェノール活性があったが、他の分画には検出可能な活性は観察されなかった。これにより、活性成分が不可逆的にカラムに吸着されていることが示唆された。
【0133】
使用したカラムは分取用でありエンドキャップされていないシリカゲル基材上にC18鎖を有しているため、分析成分類はシリカゲルに吸着しているか、もしくは活性シラノール基との反応によって変性している可能性がある。加えて、分画にはばらついた値ではあるが常に部分的な活性を有する。この特殊なケースは、糖類の含有量が低下した時の分析
で非過酸化活性の拡散が無くなる事によるものかもしれない。
【0134】
【表4】
各数値は a)複製HPLC分析、b)プレート全体の各ウェルの数値、c)フェノール活性をプレート毎に計算した数値、に基づいている。
【0135】
KS−2002とC18カラムとの比較
デルタパック C18による活性分画はKS−2002による場合と比べて遥かに糖類の混入が少なく、且つそれにより活性成分の糖質類からの分離状態がより良い。逆に言え
ば、KS−2002カラムからはより多くの割合の活性成分が回収されるが、これは活性成分のC18カラムのシリカゲル基材との化学的相互作用が反映されている。
【0136】
KS−2002カラムから得た活性分画では、全活性が観察されるのと反対に、C18カラムから得た分画では、部分的な活性しか得られない。しかし、これはKS−2002分画がより多くの糖質を含有する為に分析の際に拡散を補助するからとも考えられる。
【0137】
(第6実施形態) UMFを含有する画分における非過酸化性活性の安定性
これまでの文献で、非過酸化性活性は蜂蜜を加熱した後も顕著な活性が持続し(ボグダノフ,1984; モランとラッセル,1988; ロス(Roth)等,1986)、もしくは貯蔵しても持続(ボグダノフ,1984;Sealey,1986)する事が指摘されており、そしてこの事は非過酸化性活性を推奨する所見の理由の一つとなっている。
【0138】
本研究では単離されたHPLC分画が室温と冷蔵温度で短時間貯蔵された(8時間から24時間)場合と、冷凍温度で中期間貯蔵された(1週間から8週間)場合の安定性について調べた。
【0139】
これは実験を進めるに当り実際的な検討課題であり、分画に劣化がなくそれゆえ非活性化合物を取り除いても活性の損失はない事を確かめたかった。加えて、どのくらいの量のサンプルを試験使用のために"備蓄"出来るかを知る事も大切であった。
【0140】
付随する興味は、実際、貯蔵によって全蜂蜜の活性を増加できるとメーカーが提言している事例証拠のように本当に活性が増加するのかの検討であった。
この実験の結果の概要は表5にまとめ、視覚的に表したのが図11である。
【0141】
【表5】
各数値は a)プレート全体の各ウェルの数値、b)フェノール活性をプレート毎に計算した数値、に基づいている。
【0142】
裏漉し蜂蜜をKS−2002カラムで分離し19.5分から25分までの分画を分取し、速やかに冷凍した。注入が完了したその日のうちに分画は凍結乾燥させた。
一旦乾燥させてから蒸留水によって50%の活性強度にもどし、次いで様々な時間の貯蔵を室温、冷蔵、冷凍にて行なった。各サンプルは裏漉し蜂蜜換算で480mgに相当する。
【0143】
貯蔵の後、サンプルを25%活性強度に希釈し、2枚の複製プレート上の各々4ウェルで試験し、何等かの活性の損失や獲得が無いかを調べた。これらの結果を、新しく採取した活性分画を同じプレートで試験した活性値と比較した。加えて、裏漉し蜂蜜を凍結乾燥した2つの複製サンプルを作成し、凍結乾燥の工程が蜂蜜の活性に与える影響について調べた。
【0144】
元の分画の保持率を表6にまとめた。元の活性の保持率は阻害領域では94%から106%、フェノール相当領域では86%から114%であった。これにより、様々な条件の貯蔵によって単離された活性分画の非過酸化性活性は何等かの影響を受ける事がわかった
。
【0145】
【表6】
表7はこれらの結果のREML解析である。これらの結果によって、貯蔵による活性の変化のいくつかは、統計的に重要である。阻害領域のデータでは室温と冷蔵貯蔵サンプルは共にコントロールに比べて有意に低くなっている。
【0146】
フェノール相当領域についてはこれらの処理においては統計的に有意な差は見られず、おそらくそれはこのデータセットの反復性が低く、それにより標準エラーを生じ予想平均間の差異が曖昧になったのであろう。
【0147】
活性の増加について統計的有意性が見られるのは、阻害領域のデータで8週間冷凍貯蔵したものと、フェノール相当領域のデータで4週間冷凍貯蔵したものとである。
しかし、この実験の制限は実験が反復実施されず、同じ日に複製プレートで試験された事である。ついては、有意性を検証するためには日差データの変動が重要な役割を担う。フェノール標準品検量線を用いたフェノール相当活性解析値は阻害領域を使うよりもより大きな幅の値を生じるように見え、フェノール標準品は日差データの変動を補正できない事を示唆している。
【0148】
これらの結果に統計的有意性が見られなくても、活性の良好な保持は依然として観察された。冷凍貯蔵されたサンプルのいくつかからは活性が増加する統計的に有意な結果が得られた。しかし、日差変動とプレート間変動との影響については本実験において反復実験をしていないので未知のままである。
【0149】
【表7】
平均値間の差異は、サンプル値の予想平均値からコントロール値の予想平均値を減じて求めた。各数値は a)プレート全体の各ウェルの数値、b)フェノール活性をプレート毎に計算した数値、に基づいている。
【0150】
(第6実施形態) 蜂蜜の栄養強化
蜂蜜は、通常は自然には起こらない非常に優れた高い抗菌活性を有しており、その結果、値段が高い。よって、もしそのままでは活性が低すぎて医薬品利用が出来ない蜂蜜の活性を濃縮する方法や、既に高い活性を有する蜂蜜の効能を通常自然には得られない程度にまで増加させる方法が開発されたら、市場優位性を有する。
【0151】
蜂蜜の過酸化性活性は自然に産生され、過酸化物破壊物質の濃度とグルコース酸化酵素の安定性に依存するので、非過酸化性活性(UMF)を濃縮することだけが有効である。
逆相HPLCはUMFを分離でき、サイズ排除/イオン交換による分画4とは対照的にサンプルの大量注入にカラムが対応し、分画C(100%ミリQ水で溶出)は分取され、裏漉し蜂蜜の栄養強化に利用される。
【0152】
栄養強化サンプルを作成する為に、分画C(1gの裏漉し蜂蜜を分離して作成)を1mLの蒸留水に未処理の裏漉し蜂蜜を1g溶解させた溶液に加えた。この50%溶液を更にカタラーゼで希釈し25%の溶液とした。よって、サンプルは理論的に裏漉し蜂蜜コントロールの2倍量のUMFを含有している事になる。
【0153】
最初の実験(表8)では、裏漉し蜂蜜の活性に加えて少しの増加が得られた。
【0154】
【表8】
各数値は a)プレート全体の各ウェルの数値、b)フェノール活性をプレート毎に計算した数値、に基づいている。
【0155】
これによると、裏漉し蜂蜜の活性がフェノール活性相当で23.5%増加している事が判る。活性の倍増は観察されなかったので、栄養強化レベルの増加を含む実験に拡張し、活性分画の調合分量を増加させれば直接比例した活性応答を得る事が可能かどうかを検討した。
【0156】
各調合は前述のように、各々裏漉し蜂蜜1,2,3gと未処理裏漉し蜂蜜1gとに相当する濃度の分画Cの添加により構成された。
表9は作成されたサンプルの活性を示し、図12は阻害領域の結果をグラフ化して示している。
【0157】
【表9】
各数値は a)プレート全体の各ウェルの数値、b)フェノール活性をプレート毎に計算した数値、に基づいている。
【0158】
高い相関関係が見られ(R2=0.9874)、直接比例した活性応答が起こった事を示している。これによって、蜂蜜の非過酸化性活性を増加させる事は可能である事が確認
された。
【0159】
しかし、直線回帰解析によれば、これらサンプル試験で用いた複製プレートデータには傾きにおいて統計学上有意な違いがあった(p値=0.011)。これらのグラフはミニタブによる解析結果として図13に示してある。
【0160】
これらのようなプレートの影響は珍しい事ではない。既に議論したように、プレートに拠る変動はWDA法において最も有意な変動要因であり、よってサンプルの試験は複製プレート法で行い、平均化する事でこの影響を補正する事が出来る。
【0161】
あるいは、栄養強化のデータが1:3のデータポイント(比率3、図13)では、他の3つの栄養強化レベルと比較して2つのグラフ間の変移量がより大きい。これはおそらく何らかの要因がこのポイントを制限し、グラフが曲がったのであろう。
【0162】
これは単にこのサンプルが2つのプレートに添加された時に同質でなかった事に依拠している。但し、分析自体が高い活性による高感度のものではなかった。この理由は3つにまとめられる;
(i) 阻害領域が重なると細長くなる傾向があり、計測を困難にする
(ii) 拡散がより変動する
(iii) 阻害領域が標準の最高値を超える
本研究において分画は注意深くスペースを空け、阻害領域が重ならないようにしたが、1:3栄養強化サンプルは標準の最高値に近接した。
【0163】
これらの検討とは関係なく、マヌカハニーからのUMFを含有する分画の調整と、蜂蜜の栄養強化に使用する方法が実証された。
前述の論及された説明書きが完全であるかもしくは構成要素が既知の等価な内容を有する場合は、そのような等価な内容は個別の陳述として組み込まれる。
【0164】
本発明が実施例と可能な実施形態に関連したものとを用いて記載されているとしても、それについての改善および修正、もしくは改善または修正は、本発明の範囲や主旨から逸脱するものではない。
【0165】
【表10】
【図面の簡単な説明】
【0166】
【図1】配位子交換クロマトグラフィとサイズ排除クロマトグラフィとを用いたHPLC示差屈折計によるマヌカハニーの分析を示すグラフ。
【図2】配位子交換クロマトグラフィとサイズ排除クロマトグラフィとを用いたHPLC示差屈折計によるマヌカハニーの分析におけるベースラインを拡大したグラフ。
【図3】裏漉し蜂蜜をKS−2002カラムでHPLC分析(300mg/mLの裏漉し蜂蜜を200μL注入して示差屈折計によりピークの溶出をモニターした)を示すグラフ。
【図4】KS−2002カラムから得た活性画分を再度注入しHPLC分析(分画4(蜂蜜裏漉し1mL当り200mgの濃度に相当する濃度に調整した)を200μL注入し、溶出液を示差屈折計でモニターした)を示すグラフ。
【図5】KS−2002カラムから得た活性画分を再度注入しHPLC分析。分画4(蜂蜜裏漉し1mL当り200mgの濃度に相当する濃度に調整した)を200μL注入し、溶出液を示差屈折計でモニターしたデータを拡大したグラフ。
【図6】KS−2002カラムに分画4を注入して得られた20.5分から25分までのHPLC分析(200μL注入して得られた溶離ピークの示差屈折計によるモニター(蜂蜜裏漉し1mL当り100mgの濃度に相当する濃度に調整した))したグラフ。
【図7】分画4をKS−2002カラムに再度注入して得られた20.5分から25分までの分画のHPLCスペクトル。この分画を200μL注入し、溶出液を示差屈折計でモニターしたデータを拡大した図(蜂蜜裏漉し1mL当り100mgの濃度に相当する濃度に調整した)。
【図8】C18カラムを用いたHPLCのスペクトル。0.5g/mLの裏漉し蜂蜜を2mL注入し、溶出液を示差屈折計でモニターした。
【図9】C18カラムを用いたHPLC。0.5g/mLの裏漉し蜂蜜を2mL注入し、溶出液を示差屈折計でモニターしたデータを拡大したスペクトル。
【図10】C18カラムから得た分画をミリQとアセトニトリルとに収集した実例を示すグラフ。
【図11】保管が活性画分の非過酸化活性に与える影響を示すグラフ。
【図12】栄養強化した裏漉し蜂蜜の組成検討を示すグラフ。
【図13】プレート毎にグループ分けして栄養強化実験を行なったデータ(1〜2はオープンスペース、単位はmm2、割合は画分Cと裏漉し蜂蜜との比、単位はg/g)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、UMFを調合した食品と医薬品とに関する。本発明は、提示例のみに限定されるわけではないが、とりわけ、UMFにより栄養強化した蜂蜜とUMFにより栄養強化した蜂蜜の調合方法とUMFを含有する蜂蜜の画分の調合方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
マヌカツリーはニュージーランドに自生しており、強い香りを有する蜂蜜を産する。蜂蜜は何千年も食品として利用されてきただけでなく、医薬品目的としても、とりわけ抗生物質として活用されてきた。抗菌活性の主たる機能は過酸化水素に依拠し、それは蜂蜜中で産生される酵素、グルコースオキシダーゼである。マヌカハニーはこの抗菌活性に加えて、追加活性を有する事が知られてきた。この追加活性とは、非過酸化活性として知られており、独特のマヌカ因子(UMF)として市販されている。
この非過酸化活性の特性については多くの研究によって明らかにされており、この追加活性を司る画分を同定する試みは既に成されてはいるが、決して成功してきたとは言えない。
【0003】
蜂蜜は数千年に渡り使用されてきており、蜂蜜について扱った最初の文献は約4000年前に遡る。蜂蜜は食用として利用するのに何の操作も加工も必要としない唯一の甘味料である(ホワイト(White),1992)。
【0004】
マヌカツリーは、ニュージーランドに自生している。湿った養分の低い溶脱土壌を好み、樹齢寿命は60年程度である。この樹木は高さ6〜8mに成長し、直径は7〜10cmとなる。差し渡し10〜12mmの花をつけ、通常は白色である(ウォード(Ward),2000)。マヌカツリーから得られる蜂蜜は、ハーブのような、ウッディな特徴ある強い香りを有し、濃い暗色の色調である。
【0005】
蜂蜜中に存在する成分を同定する数多くの研究が成されてきた。蜂蜜の梼w紋買fータベースを作成する目的には、産地や採取元の花を特定する事であり、更には混ぜ物による蜂蜜の粗悪品を検出する為でもある。
【0006】
含有されている成分のほとんどは、炭水化物類、酵素類、芳香族有機酸類、炭化水素類、直鎖一塩基酸類、直鎖二塩基酸類、水分である。
蜂蜜は主として糖類であるグルコース、フラクトース、シュクロース、マルトースなどで構成されているが(ホワイト(White),1978)、他の多くの多糖類も同定されている。
【0007】
同定されているマヌカハニー中に含まれる重要な多糖類は、マルツロース、コウジビオース、ツラノース、ニゲロース、マルトース、トレハロース、パラチノース、シュクロース、エルロース、パノース、メレジトース、マルトトリオースなどがある(ウエストンとブロックルバンク(Weston&Brocklebank),1999; ウー(Wu),2000)。ウー(2000)はマヌカハニーの主要多糖類としてツラノースを発見し、ウエストンとブロックルバンク(1999)はマルトースを発見した。
【0008】
蜂によって蜂蜜に加えられる他の成分にはアミン酸類があり、最も多量に含まれるのはプロリンであり、少量のカタラーゼも含まれる(ホワイト(White),1992)。酵素であるカタラーゼは過酸化水素を分解して水と酸素に転換する。
【0009】
マヌカハニーには高濃度の芳香族有機酸類が含有され、その大部分は2−ヒドロキシ−3−フェニルプロピオン酸(タン(Tan)等1988; ウィルキンス(Wilkins)等1993)であり、芳香族有機酸類の含有量は、ニュージーランドクローバーから採取された蜂蜜よりも遥かに高い濃度(1000倍)で含まれる(タン(Tan)等1988)。他に同定されている含有芳香族有機酸類は、2−メトキシ安息香酸、2'−メト
キシアセトフェノン、2−デセンジオン酸、4−キドロキシ−3−5−ジメトキシ安息香酸、2−ヒドロキシ−3−(4'−メトキシフェニル)プロピオン酸、シリンガ酸、3,
4,5−トリメトキシ安息香酸、アセトフェノンなどである(タン(Tan)等1988; ウィルキンス(Wilkins)等1993)。
【0010】
季節や産地に関係なく、1種類の花種から採れたマヌカハニーのサンプルは、プロピオン酸類の総計濃度が蜂蜜1kg当り700mg以上、安息香酸類の総計濃度が蜂蜜1kg当り35mg以上、アセトフェノン類の総計濃度が蜂蜜1kg当り20mg以上であることから特定される(ウィルキンス等1993)。
【0011】
タン等(1989)は主要な特徴的含有成分として2−ヒドロキシ−3−フェニルプロピオン酸も同定し、2−メトキシ安息香酸と21−メトキシアセトフェノンと共にこの成
分が高濃度で含有される事がマヌカの花から採取した蜂蜜である事の指標として利用できる事を指摘している。
【0012】
ウィルキンス等(1993)は、マヌカハニーにおいてはデカンジオン酸とトランス−2−デセンジオン酸とが他の蜂蜜に比べて高濃度に含まれる事が多いと指摘している。オクタンデジオン酸、デカンジオン酸、トランス−2−デセンジオン酸のような二価酸類が含有されている事も報告されている(タン(Tan)等1988; ウィルキンス(Wilkins)等1993)。
【0013】
他種の蜂蜜に含有される他の成分としては、ラクトン、ジアスターゼ、酸性成分が無い事、灰分などがホワイト(White)等(1962)により同定されている。この文献ではこれらの成分がマヌカハニーに含まれているという記述は無く、マヌカハニーに含まれる水分について報告されている文献は出版されていない。
【0014】
蜂蜜は太古の昔から多くの文化圏において医薬品として利用されてきた(ランソム(Ransom),1937; アドコック(Adcock),1962)。最近では、その確実な抗菌作用が認識されるに至って、蜂蜜への興味が話題性のある成分として注目されてきた。この蜂蜜が有する抗菌効果は、実際には蜂蜜の種類によって異なる(ダストマン(Dustmann),1979)。
【0015】
マヌカハニーは高い抗菌効果を有するが、その機構は単純に蜂蜜の浸透圧、pH、グルコース酸化酵素活性だけではない事が観察されている(ラッセル(Russell),1983)。活性に寄与する機構は現在では、"非過酸化活性"或は"UMF"として認識されている。
【0016】
ダストマン(Dustmann)(1979)は、抗菌活性の存在はグルコース酸化酵素活性や高い浸透圧に依拠するものではないことを報告していた。しかし、同氏は後者の活性については総抗菌活性のほんの一部にしか関わらないと論じている。
【0017】
モランとラッセル(Molan&Russell)(1988)は抗菌活性の存在はマヌカハニー中の過酸化水素に依拠するものではないことを検証し、更に、総合的な高い活性を有するマヌカハニーは、高値な非過酸化活性を有している事も明らかにした。
【0018】
蜂蜜が有する非過酸化活性についての研究によって、蜂蜜はいくつかの興味深く且つ明らかに矛盾する特性を有する事が判った。ヴェルジェ(Verge)(1951)は活性画分を水、アルコール、エーテル、アセトン中に抽出した。シュラーとボーゲル(Schler&Vogel)(1956)は活性画分をエーテルにより抽出した。ラヴィ(Lavie)(1960)は、活性画分はアセトンでは抽出できるが、エーテルでは抽出できない事を示した。ゴネットとラヴィ(Gonnet&Lavie)(1960)は冷エーテルで抽出した活性画分は95度で揮発する事を示した。ムラデノフ(Mladenov)(1974)は、蜂蜜は揮発性、難揮発性、不揮発性の抗菌活性を有する成分を含んでいる事を報告している。
【0019】
マヌカハニーの活性は熱にも光に対しても安定している事が判っており(モランとラッセル(Molan&Russell),1988, タン(Tan)等,1988, ラッセル(Russell)等,1990)、タン(Tan)等による予備的な研究では(1988)、追加活性物質は有機溶媒、例えばエタノールやエーテル等に可溶である事が判った。
【0020】
既に蜂蜜から単離されている過酸化水素と酵素であるリゾチーム以外で抗菌活性を有するのは、芳香族有機酸類とフェノール系成分だけである(ウエストン(Weston)等,2000)。
【0021】
カフェインとフェルラ酸は両方共にフェノール酸であり、抗菌活性を有する事が同定されており(シズマークとマーテル(Cizmark&Matel),1970, シズマークとマーテル(Cizmark&Matel),1973)、蜂蜜から単離されている(ウォーダン(Wahdan),1998, ウエストン(Weston),2000)。しかし、それらは低い濃度でしか含まれておらず、蜂蜜の抗菌作用としては過酸化水素の貢献度に比べて僅かな貢献度しかない(ウエストン(Weston),2000)。
【0022】
マルエンダ リケンダ(Marhuenda Requenda)等(1987)は抗菌活性を有する他のフェノール酸類として、カフェイン酸、バニリン酸、p−クマル酸、p−ヒドロキシ安息香酸、シリンガ酸などを報告している。
【0023】
ピノセンブリン、ピノバンクシン、クリシン、フラボノンなどフラボノイド類が蜂蜜から単離された(ウォーダン(Wahdan),1988, フェレス(Ferreres)等,1994)。これらについては抗菌活性が詳細に報告されている(リヴェラ−ヴァルガス(Rivera−Vargas)等,1993, Ito等,1994))が、これらも顕著な抗菌活性を発揮するのに十分な含有量が蜂蜜中には観察されない(ウエストン(Weston),2000)。
【0024】
ラッセル(Russell)(1983)は蜂蜜から得られる主要な抗菌成分として2つの芳香族成分を同定した。それらは、4−ヒドロキシ−3−5−ジメトキシ安息香酸とメチル−3,4,5−トリメトキシ安息香酸である。
【0025】
プロポリスは、樹木のゴム性滲出液から蜂が集めてくる樹脂性素材でミツバチの巣箱の抗菌試薬として使用されているが、これには安息香酸とシナミン酸類とフラボノイド類とに代わる成分が含まれている(マルクッチ(Marcucci),1995)。ワルダン(Waldan)(1998)はフラボノイド類が抗菌作用を有するプロポリスの主要成分であると論じている。
【0026】
抗菌活性を司る物質として同定されているものは、ガランジン、ピノセンブリン、カフェイン酸、フェルラ酸等がある(ラヴィ(Lavie),1960, ジサルベール(G
hisalbert),1979, ラッセル(Russell)等,1990)。ウエストン(Weston)(2000)はその後、これらの個々の成分自体には抗菌活性は無いものの、プロポリス総体として初めて生物活性がある事を実証した。
【0027】
蜂毒の成分であるメリチンとフォスフォリパーゼは弱い抗菌活性があると考えられていた。これらは両方共にタンパク質であるが、ゲル浸透クロマトグラフィによってマヌカハニーに含まれる抗菌作用物質は分子量が1000amu以下である事が判った(ラッセル等,1990)。
【0028】
他の物質でマヌカハニーの有する非過酸化活性を司るものとして、蜂の体液に特異的に含まれる抗菌性ペプチド類が考えられる。これらは、アバエシン、アピダエシン、ヒメノプタエシン、ローヤリシン、リゾチーム類等である。このペプチド類は強い抗菌作用を有し、これらが蜂蜜に含まれていれば顕著な非過酸化活性を司ると考えられる(ウエストン等,2000)。
【0029】
マヌカハニーの抗菌活性物質(UMF)の非過酸化活性については長年研究されてきたが、単離も同定もなされていない。実際、マヌカハニー中に単離可能な画分は存在しないと考えている研究者もいる。
【0030】
ラッセル等(1990)は、追加抗菌活性の重要性についての考え方の違いは、おそらく抗菌活性の定量性の差異(すなわち、過酸化水素もしくは高浸透圧によらないもの)に依拠するのであろうと考察している。モランとラッセル(Molan&Russell)(1988)は様々なニュージーランドハニーの試料について調べ、追加活性はある試料では観察されず、ある試料ではほとんど全ての活性が見受けられた。また彼等は、どの試料についても、追加抗菌活性の強さの程度と総体的な抗菌活性の強さの程度との間に緊密な相関関係があることも指摘している。
【0031】
ボグダノフ(Bogdanov)(1997)はどの画分に非過酸化活性があるのかを調べる為に、揮発性成分、非極性成分と不揮発性成分、酸性成分、塩基性成分を分離する試みを行なった。彼はこれを行なうにあたり、試料の活性を測定し、次いでその画分を取り除き、然る後に再び活性を測定した。もしその試料に活性が残っていなかったら、取り除かれた画分に抗菌作用構成成分が存在した事になると結論している。揮発成分の抽出はロトベイパー(Rotovapor)を60℃に設定し、2時間加熱して行なわれた。非極性及び不揮発性成分の抽出はC−18カラムを用いて行なわれた。塩基性成分の抽出はH型陽イオン交換カラムを用い、酸性成分の抽出はOH型陰イオン交換カラムを用いて行なわれた。酸の除去には、酸が遊離陰イオン型になるように、蜂蜜はpH=11に調整された。
【0032】
ボグダノフは、逆滴定によって初期のpHに戻したら本来の抗菌活性は回復したので、最初の蜂蜜のpHを11に変化させても抗菌活性には全く影響を及ぼさないと指摘している。マヌカハニーについて、ボグダノフは黄色ブドウ球菌に対して抗菌活性試験を行なった場合は酸性の画分に100%の活性が見受けられ、一般好気性菌に対して抗菌活性試験を行なった場合は酸性の画分に75%、塩基性の画分に10%、非極性の画分に5%、揮発性の画分に10%の活性がそれぞれ観察されたと論じている。それゆえに、蜂蜜中の酸性画分が非過酸化抗菌活性を有し、酸の含有量と明白に相関関係があるがpHとは相関関係を有さないと結論付けられた。
【0033】
ウォーダン(1998)は浸透圧の効果について、糖質溶液と希釈しない蜂蜜とで比較を行い、高い糖質濃度が抗菌活性の重要な因子である事を発見したが、希釈した場合は、また別の因子が抗菌活性に関与する事が明らかになった。更には本研究において蜂蜜はp
H=7.2のニュートリエントブロスによって希釈して用いた理由により、pHは活性に影響しない事が判明し、影響を与える他の物質が存在する事が予測された。
【0034】
ウエストンとブロックルバンク(1999)は、ポリ(カプリル)アミド、セファデックス G−10、バイオゲルP−2、XAD−2樹脂などを酸性及び塩基性条件で使用するクロマトグラフィを用いたいくつかの方法によって、抗菌性物質から単糖の分離を試みた。2−ブタノールによる単離も試験した。ポリアミドとセファデックス G−10とを用いたクロマトグラフィによって、活性物質は遅く溶出する画分に存在し、HPLCによる分析ではフラボノイド類が存在する事が示唆された。
【0035】
フェノール抽出物の主要な産生物はシリンジ酸メチルである事が薄相クロマトグラフィによって同定され、フェニル乳酸が僅かに存在する事も判った。HPLCの分析によって、シリンジ酸メチルは総フェノール抽出物の45%以上を占める事が明らかになった。同論文では、マヌカハニーに含まれるシリンジ酸メチルとフェニル乳酸の含有量では、それ自体で全ての非過酸化活性を満たせない事が検討され、結論付けられている。更には、このレベルのシリンジ酸メチルの含有量は、活性マヌカハニーと不活性マヌカハニーとに同様に含有される量であって、故に、観察される活性の差異には関与していないと考えられる。
【0036】
XAD−2では全ての活性成分が炭水化物と一緒に溶出し、フェノール酸類と一緒に溶出する活性成分はない。バイオゲル−P2を用いた場合も同様の結果であった。単糖は何の抗菌活性特性も有していないので、抗菌活性物質は糖類によって運ばれる事が推測された。
【0037】
ウエストン等(1999)は、活性蜂蜜と不活性蜂蜜どちらのフェノール酸画分にも全体として同じ抗菌活性を有する事が実証されたので、マヌカハニーのフェノール酸物質類が個々に或は全体として抗菌活性を有していたとしても、"観測される活性"には関与していないと結論付けた。
【0038】
ウエストンとブロックルバンク(1999)は、活性マヌカハニーは、四糖であるシアル酸ルイスX(この糖は胃の内壁に潰瘍を生じさせるバクテリアの接着作用を制御する抗原決定基である)に類似した特殊なオリゴ糖を有するものではないかと推定した。彼等は活性マヌカハニーと不活性マヌカハニーとについてオリゴ糖組成を調べたが、両方のマヌカハニーに違いは見つからなかった。
【0039】
ペリー(Perry)等(1997)はニュージーランドに成育する、異なる化学的特性を有する3種のマヌカを発見したが、これらの成分は葉から採れる芳香油の組成から判別できる。その一つはピネン類の割合が高く、もう一つはセスキテルペン類の割合が高く、イーストランド地域に成育する3つ目はサイクリックトリケトンとレプトスペルモンの含有量が高かった。これらの中で3つ目の芳香油が最も抗菌活性が高かった。
【0040】
ウエストン等(2000)は非常に高い非過酸化活性を有するマヌカハニーの試料からレプトスペルモンを検出する為に3種類の方法を試みた。一つ目の方法はXAD−2樹脂を用いてフェノール酸を吸着させる方法で、2つ目の方法は2−ブタノールを用いて抽出する方法で、3つ目の方法は液―液抽出を用いる方法であった。これら3種の方法から得た抽出物のどれからもトリケトン類は検出されなかった。これによって、レプトスペルモンは水に不溶であるから花蜜内には存在せず、よって蜂蜜中には存在しないと結論付けられた。
【0041】
ウエストン等(2000)は抗菌活性を有するマヌカと有しないマヌカとに含まれるフ
ェノール酸を比較して、定量的にも定性的にも両者に違いがない事を実証した。シナミン酸とフラボノイド類との含有量は多くのヨーロッパ産蜂蜜と近い値か同値であった。19種のマヌカハニー試料の分析によって、含有されるフェノール酸類の組成や量は全ての試料について同等であったので、産地の違いによるフェノール酸類の違いはない事が判った。
【0042】
ウエストン(2000)は下記のまとめをしている;
(i) 蜂蜜において何等かの抗菌活性に関与する唯一の物質は過酸化水素であり、プロポリス由来のフェノール酸類のような他の物質は過酸化水素と比較して重要ではなく、
(ii) 蜂蜜中の過酸化水素含有量は原則的に、植物由来のカタラーゼを一定量加えて解析されるが、但し
(iii) 過酸化水素は蜂蜜或は画分サンプル中のグルコース酸化酵素によって産生されるというホワイト(White)等(1963)とダストマン(Dustmann)(1971)との研究結果に基づけば、抗菌活性分析を行なう為にサンプル類を希釈し前処理する現在の解析方法(アレン,モラン,リード(Reid),1991, モランとラッセル,1998)ではこれらのサンプルに加えるカタラーゼ量は、上記の機序で産生される過酸化水素を分解するのに十分な量ではない。
【0043】
これに加えて、揮発成分類はGC−MSにより分析され、一般的に、花蜜の構成成分であり、花の香りに寄与する事もわかった。これらの成分は多岐にわたるが、それらの蜂蜜中における含有量は少なく、特定の花や蜂蜜に特異的に含まれる揮発成分もこれらの含有量においては抗菌作用を発揮する事はない。更に、蜂蜜が1種類の花種から採取された事を同定する為に使用される花蜜に含有されるフェノール酸成分類も抗菌特性は有していない。但し、抗菌活性を有する為の適切な含有量があるのかどうかについては判っていない。
【0044】
よってウエストン(2000)は、この時点の研究の結論としてUMFの存在の可能性を低いとし、それはカタラーゼの添加で十分分解できなかった結果として異常な高値として残ってしまった過酸化水素を計測していたにすぎないと示した。"独特の因子"は実際のところ、マヌカハニー中に大量のカタラーゼが存在するか否かによって、マヌカハニーの抗菌活性の有無を区別していたのかもしれない。
【0045】
高いUMF値を有する蜂蜜、そしてそのような蜂蜜から加工した製品は消費者から強く求められている。これは高いUMF値の蜂蜜が有する効能はともかくとして、UMF含有画分の単離が出来るかどうかに帰結する。
【0046】
もしマヌカハニーの画分がUMF活性に関係しているとすれば、単離されたUMFにより栄養強化した蜂蜜や他の加工食品や医薬品へ応用する事が可能である。公知のマヌカハニーの好都合な特性や有用な効果を更に発展させる事が出来る。
【0047】
本発明の目的は、マヌカハニーからUMFを含有する画分を調整する方法を提供し、もしくは少なくとも消費者に役に立つ選択肢を提供する事である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0048】
UMFを含有する画分は、熟練した技術者が知る多くの装置を用いれば大量の蜂蜜から分離精製されるであろう。しかし、これまでHPLCを用いて蜂蜜に非過酸化生物活性を与える成分の精製と単離とが試みられてきたが、従来技術で行なわれてきたカラム類や溶離液の選択はこの目的への具体的な到達を阻んできた。
【0049】
従来技術の試みは、間違った実験条件を用いる事によって蜂蜜の生物活性を無意識に破壊しがちであったか、もしくは使用していたカラムが十分な分離能を持たずそれ故分離した画分の同定が困難であったかのいずれかであった。
【0050】
更には、UMF画分が蜂蜜に占める割合は小さい為に、これまで行なわれてきた分離技術であれば溶離液のピークは無意識的に無視されてきたか他の成分類と重なって見つからなかったとも考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0051】
本発明は、通常乾燥重量で1%にも満たない少量の蜂蜜画分が実質的に全ての非過酸化活性を有しており、しかもこの画分は大量の蜂蜜減量からUMFを含有する画分として単離されることを定めるものである。
【0052】
本発明の第一の態様は、UMFにより栄養強化された蜂蜜について定める。
望ましくは、この蜂蜜はマヌカハニーである。
望ましくはこの蜂蜜は栄養強化されていない如何なるマヌカハニーよりもUMF値が高いものである。更に望ましくは、この栄養強化された蜂蜜はUMF値25以上を有し、更に望ましくはUMF値35以上を有する。
【0053】
本発明の第二の態様は、蜂蜜にUMFを含有する画分を混合する工程を含むUMFにより栄養強化された蜂蜜を調整する方法について定める。
本発明の第三の態様は、画分が得られたサンプルに存在する実質的に全ての単糖の糖質類から画分を分離する事によりUMFを含有する画分を調整する方法について定める。
【0054】
望ましくは、本方法は、
・ マトリクスにある量の蜂蜜を加え、
・ 溶液を用いてマトリクスからサンプルを溶出させ、そして
・ UMFを含有する画分を採取する
工程を含む。
【0055】
望ましくは、UMFを含む画分の採取は、サンプルに存在する実質的に全ての単糖の糖質類を溶出させた後に開始する。更に望ましくは、採取されたUMFを含有する画分は、実質的にサンプルに存在する総ての単糖の糖質類を含んでいない。
【0056】
望ましくは、蜂蜜はマヌカハニーである。
望ましくは、マヌカハニーはUMF値25以上を有し、更に望ましくはUMF値35以上を有する。
【0057】
望ましくは、マトリクスはサイズ排除マトリクスかもしくは逆相マトリクスである。
望ましくは、溶離液は水である。
望ましくは、マトリクスはクロマトグラフィ用カラムに充填してある。
【0058】
本発明における第三の態様の、第一実施例において、マトリクスはサイズ排除とイオン交換マトリクスである。望ましくは、対イオンはNa+である。更に望ましくは、マトリクスは排除限界の値が104である。更に望ましくは、マトリクスはスチレンとジビニルベンゼンとの共重合体である。
【0059】
本発明における第三の態様の第二実施例において、マトリクスはC18である。望ましくは、マトリクスは粒子径15μm、細孔径100Åである。
蜂蜜をそのまま全量使用する事が望ましいが、裏漉しした蜂蜜を含む、予め蜂蜜から分取した構成成分や一部分を、本方法に使用する事も出来る。
【0060】
本発明の第四の態様は、マヌカハニーからのUMFを含有する画分を定める。
望ましくは、この画分は実質的に単糖の糖質類を含有していない。
望ましくは、UMFを含有する画分が有する抗菌活性はアルカリpH領域で不安定である。更に望ましくは、アルカリpH領域は9以上である。
【0061】
望ましくは、UMFを含有する画分は本発明の第三の態様に準じた方法により調整される。
望ましくは、UMFを含有する画分は実施例2と3と4とに記載されているクロマトグラフ上の特徴を有する。
【0062】
望ましくは、UMFを含有する画分は、UMFを含有する画分を含む蜂蜜のサンプル(20μL)を分析用カラムであるショウデックスTMSugar KS−801とKS−802とを直列に繋ぎナトリウム化したカラムに注入して、カラム温度50℃でミリQ水にて流量1mL/minで溶離させた時に、保持時間が19.4分から25分の間となる。更に望ましくは、UMFを含有する画分の保持時間が19.4分から21.7分の間となる。
【0063】
本発明の第五の態様は、本発明の第四の態様に準じたUMFを含有する画分の医薬品用途への転用を定める。
望ましくは、医薬品用途はニュージーランド特許出願NO.501687に記載されているような、創傷包帯である。
【0064】
本発明の第六の態様は、本発明の第四の態様に準じたUMFを含有する画分の食品用途への転用を定める。
望ましくは、食品用途は蜂蜜である。
【0065】
"UMFにより栄養強化した蜂蜜"とは、単離したUMFを含有する画分を加えた蜂蜜を意味する。
"マヌカハニー"とは、そのほとんどをマヌカの花から採取した花蜜を意味する。
【0066】
"UMF値"とは、全蜂蜜もしくは裏漉し蜂蜜もしくはその画分を寒天プレート拡散分析法によってフェノール相当量に関連させて測定した抗菌活性の測定値を意味する。
"UMFを含有する画分"とは、全蜂蜜もしくは裏漉し蜂蜜に含まれる非過酸化抗菌活性成分の画分を意味する。
【0067】
画分について"実質的に単糖の糖質類がない"とは、画分を採取するサンプル中に含有される単糖の総糖質類量に比べて、画分中の単糖の糖質類の重量が、少量もしくは無視できる程度に少ない事を意味し、例えば、単糖の総糖質類量の5%(w/w)以下であり、更に典型例では1%(w/w)以下である。
【0068】
本発明が採用されれば、全蜂蜜中のUMFを含有する画分が明確に検出でき、これまで出来なかった非過酸化活性を定量的に表す事が可能となる事が確認される。更には、マヌカハニー以外の蜂蜜UMFを含有する画分の存在が調べられていないものに非過酸化活性がある事が示される可能性がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0069】
本発明における望ましい実施例では、蜂蜜中に存在する主要な単糖類を分離するように
設計された分離用カラムが用いられる。これらの主要な単糖類はグルコースとフラクトースとである。カラムの実施例としてはレゼックスTM、ヌクレオシルTM、ショウデックスTMなどが含まれる。これらは例としてのみ取り上げて頂きたい。
【0070】
カラムを通して蜂蜜を溶離する間に、UV吸光度光度計と示差屈折計の両方またはいずれかを用いて溶離液中の対象となる分画をモニターしながら、小さな画分を分取し分析する事が望ましい。
【0071】
ショウデックスTM(配位子交換とサイズ排除の混合モード)クロマトグラフィカラムはグルコースとフラクトースとを蜂蜜中の他の成分から分離するのに利用されてきた。示差屈折計によって小さなピークとして検出される分画がフラクトースのピークの後に溶出する事が明らかにされている。
【0072】
フラクトースにはUV吸収はないが、この分画にはUV吸収がある。この分画を調べると実質的に蜂蜜の全ての非過酸化性抗菌活性を有している事が明らかになっている。この分画がいわゆるUMFを含有する画分と呼ばれる。カタラーゼを用いて蜂蜜中の過酸化物由来のどの抗菌活性を破壊しても、UMF画分の活性は維持された。
【0073】
エーテルを用いた蜂蜜の液―液抽出もUMFを含有する画分の単離を簡便化するのに利用される。これらの実験において、エーテルは多くの非糖質と有機化合物を蜂蜜から取り除く事ができ、一方、残りのサンプルの非過酸化活性は維持される。
【0074】
更にUMF画分を精製する為には、画分を何回もカラムに通してますます多くの不純物を取り除くか、例えば逆相カラムのような他の種類の充填剤を詰めたカラムを用いたクロマトグラフィを行なえば、画分から化合物を分離する事が出来るであろう。
【0075】
このUMF画分はこれまで決して分離されておらず、数多くの研究グループによって様々な試みが成されてきたにも拘らず、ただ別個の集合体として存在する事が認識されていただけであった。逆相、バイオゲル P−2、XAD−40、陰イオン交換カラムなどは全て従来技術において、非過酸化生物活性を有する化合物の単離と同定のために既に使用されてきた。
【0076】
これらの状況の中でこの画分は分離されなかったかもしくは確認されなかった。その理由は、その存在量が微量であり、蜂蜜研究におけるこれまでのHPLCでは、おそらく大きな単糖のピークに隠されていたか、クロマトグラフィ条件が蜂蜜の生物活性を破壊していたのであろう。
【0077】
発明者等が行った予備的な研究によって、陰イオン交換カラムのようにアルカリ領域のpHを必要とするカラムではUMF分画を分離できない事が判った。アルカリ条件では蜂蜜の活性は破壊される事が判った。つまり、中性領域のpHで使用するカラムを採用せねばならない。
【0078】
UMFを含有する画分はpH9では30分後にその生物活性のほとんどを失う事が判った。この画分はpH10では5分間で破壊される事が判った。HPLCの分析時間は通常これよりも長い。pH11では蜂蜜の生物活性は直ちに破壊される。
【0079】
非過酸化活性(UMF)を示すマヌカハニーサンプルをエーテルで抽出し標準的技術でクロマトグラフィの分離を阻害する脂肪酸を取り除いた。水層とエーテル層両方を、抗菌分析法を用いて試験し、どちらの層にUMF活性を単離出来るか調べた。UMF活性は水層に維持されており、エーテル層には何等有意義な生物活性も見られなかった。
【0080】
蜂蜜サンプル中の非過酸化活性レベルを検証する為に、過酸化水素によって蜂蜜に供せられるどの抗菌活性も破壊するカタラーゼを用いて行なった。カタラーゼ溶液は蒸留水(10mL)にカタラーゼ(0.02g)を溶解させて作成した。蜂蜜は蒸留水に溶解させ、1mLの水に対して1gの蜂蜜の割合に調整し、1mL毎に分けた。次いで1mLの蒸留水(総活性測定用)か1mLのカタラーゼ溶液(非過酸化活性用)を各サンプルバイアルに加えた。
【0081】
(第1実施形態)−抗菌活性の拡散分析
寒天(23g)を蒸留水(1L)に溶解させて寒天培地を作成しオートクレーブにかける前に150mLをフラスコに分け取った。必要であればフラスコを水槽で蒸気処理(100℃,30分間)し、次いで他の水槽で寒天温度をバクテリア培養に耐えられる温度に下げた(50℃、30分間)。
黄色ブドウ球菌培地は無菌の接種用トリプティックソイ培養液(30g/L)を用いたビーズ培養法によって調整し、次いでインキュベートした(37℃、18時間)。S.aureus培地はトリプティックソイ培養液において0.5AUの吸光度になるようにサーモスペクトロニクス社 ヘリオスγ分光光度計(540nm)を用いて調整した。ブランクとしてトリプティックソイブイヨンを使用した。
【0082】
大きなサイズの矩形分析プレート(コーニング社製431111 無菌バイオアッセイ皿, 245mm×245mm×18mm)の調整は、S.aureus培地(上記条件100μL, 0.5 OD)を接種した寒天培地150mLを基準面まで注いで行なった。一旦凝固させてから分析プレートを上下逆さまにして4℃で一晩保存した。
【0083】
全蜂蜜のサンプル調整は、全蜂蜜を秤量し(1.00g)蒸留水に溶解させて(1mL)行なった。再現性の良い分析を行なう為に、これらの作業はインキュベーション(37℃、30分間)によって蜂蜜を柔らかくして行い、その間の時間を管理し過酸化水素の産生を一定にするようにした。過酸化水素活性を計測しない他の実験では、室温下で溶解するまで撹拌した。
【0084】
作成された50%(w/v)溶液は、更に、総非過酸化活性の必要性に応じて、蒸留水かカタラーゼ溶液(20mg/10mL蒸留水)かで同量希釈(1:1)してサンプルとした。
【0085】
HPLCから得た蜂蜜の分画と液/液抽出物とは蒸留水で希釈し(1:1)蜂蜜の分離前の調整濃度と同じにした。作成された50%溶液は、非過酸化活性の目的の為に、更にカタラーゼ溶液で希釈した(1:1)。
【0086】
フェノール標準液は10%のフェノールストック溶液(10gフェノール/100mL蒸留水)を用いて2,3,4,5,6,7%の濃度に調整した。これらの溶液は暗所に4℃の条件で保存し、1ヶ月毎に再調整する。
【0087】
ウェルは、8mmの穿孔器を用いて標準の8×8グリッドに穿孔し、接種針を用いて寒天を剥がした。プレート上にサンプルをセットするのに使用するテンプレートは、それぞれ16個の番号を付けられたウェルが繰り返し4連あり行と列の組合せは1つずつの準ラテン方格法用とした。これによってサンプルはランダムにセットできるので、エッジ効果によるデータのバイアスを取り除く事ができる。
【0088】
25%濃度の蜂蜜サンプルとフェノール標準液は配分された各ウェルに添加した(11
μL)。
(第2実施形態)
高速液体クロマトグラフィ(HPLC)は、515HPLCポンプ、2410示差屈折計、996フォトダイオードアレイ検出器、ミレニアム操作ソフトウエアを使用するウォーターズ社のHPLCシステムにより実施した。
【0089】
初期の研究でショウデックスTMSugar KS800シリーズのカラム類が使用した全てのカラムの中で最も良い分離結果を出した。ここでは、ショウデックスTMSugar KS801と ショウデックスTMSugar KS802を直列に繋いで、サイズ排除クロマトグラフィと配位子交換クロマトグラフィを組み合わせて蜂蜜サンプルを分画分取した。
【0090】
KS801はナトリウム型で排除限界は103であった。KS802もナトリウム型で排除限界は104であった。両方のカラム共にスチレンジビニルベンゼンが充填剤に使用されている。使用温度は、製造元の推奨では1mL/minの流量において最初は80℃であった。溶離液にはミリQ水を用いた。
【0091】
20mg/20μLである蜂蜜サンプルの注入はKS800シリーズHPLCカラムへ行われた。図1と図2は示差屈折計によって検出されて得られたデータのプロットである。抗菌活性分析に使用する分画は20回の注入から採取された。
【0092】
図1において、分画Aは0分から12分まで、分画Bは12分から19.4分まで、分画Cは19.4分から25分までを分取したものである。プロットによれば、グルコース(1)のピークの後にフラクトース(2)のピークが観察される。オリゴ糖(3)のピークも観察される。
【0093】
分離された分画の抗菌活性は試験用培地として黄色ブドウ球菌を使用したウェル拡散法によって行なった。
試験用にHPLCで採取した分画を、ビュッヒ461水槽を付属させた、ビュッヒ(B・モ・堰j RE111 ロトベイパー(Rotovapor)を用いて40℃で減圧乾
固させた。次いでそのサンプルを200μLの蒸留水と200μLのカタラーゼ溶液とを含む溶液で再溶解させ、非過酸化活性のみが存在する事を確かめた。
【0094】
蜂蜜サンプルは25%濃度に調整し、抗菌活性の試験を行なった。抗菌活性分析は2%から6%の値域のフェノール標準液を3複製用い、サンプルは3複製から5複製用いて、寒天プレート上の番号管理されたランダムウェルに添加して実施した。
【0095】
そのプレートを37℃で一晩、バクテリアが成育可能な条件にてインキュベートした。インキュベーションの後、デジタルキャリパー計によってウェル周りの阻害領域の直径を計測した。
【0096】
蜂蜜の非過酸化活性は分画C(図1)に完全に含まれていた。
HPLCプロットのベースライン領域に注目すれば、分画Cの活性領域に2つのピークが観察される(図2)。これらのピークのどれが活性に関与しているかを検証する為に、他の分画分取時間の設定方法を工夫した;分画Dは0分から19.4分、分画Eは19.4分から21.7分、分画Fは21.7分から25分とした。
【0097】
これらの実験から、全抗菌活性成分は分画Eに単離出来た。
この試験は更に2回繰り返し実施し、同様の結果を得た。
(第3実施形態) 蜂蜜のセミ分画分取(サイズ排除とイオン交換との組合せ)
これまでの研究によって(第2実施形態とスノウ(Snow)(2001))、UMFを含有する画分は単糖の糖質類の大きな部分からショウデックスTMSUGAR KS−801とKS−802分析用カラムを用いて分離できる事が実証されている。
【0098】
サンプルの注入量を増加させカラムを通すのに適切であるこのカラムの分取用バージョン(KS−2002カラム)を使用した。裏漉し蜂蜜からの溶出液の内訳は、最初にフェノール酸類、次いで二糖類とオリゴ糖類、最後に単糖類である事が同定された。
【0099】
ショウデックスTMSUGAR KS2002(20mm×300mm,20μm粒子径,60Å細孔径)分取スケールカラムはサイズ排除と配位子交換機能が組合わされている。このカラムはナトリウム(Na+)型で使用し排除限界は1×104である。クロマトグラフィはミリQ水を溶離液とし、使用流量は3mL/minで、室温で行った。
【0100】
300mg/mL濃度の蜂蜜の大量注入は200μLのループによって行なった。996PDAと2410RI両検出器によってスペクトルをモニターした。採取した分画は全て大サイズの蒸発皿で凍結乾燥した。
【0101】
図3は300mg/mL濃度の裏漉し蜂蜜を200μL注入して得た溶出液の内訳である。全蜂蜜中に観察されるグルコースとフラクトースの量はほぼ等しい(ホワイト(White)等,1962)が、今回は蜂蜜を注入前に裏漉ししているのでグルコースのピークはフラクトースのピークに比べて減少している。
【0102】
サイズ排除マトリクスは通常僅かに疎水性を有する弱い陰イオン性であり、その為に理想的な分離とはならず、分離は分子量サイズが厳密に反映されない(クニコ(Cunico)等,1998)。このカラムはスチレンジビニルベンゼンをサイズ排除用重合体として使用しており、フェノール酸類とはイオン交換相互作用を有する。それ故保持時間は分子量サイズを表すものではない。
【0103】
カラムからの溶出液はまず4つの分画として分取した;
1. 0.0−13.0分 フェノール酸類
2. 13.0−18.4分 二糖類とオリゴ糖類
3. 18.4−22.6分 グルコースとフラクトース
4. 22.6−30.0分 遅く溶出する成分類
活性は常に18.4分から30分の間の分画に観察された。次いで一つの分画に全ての活性が含まれているかどうかを確認した。
【0104】
【表1】
各数値は a)プレート全体の各ウェルの数値、b)フェノール活性をプレート毎に計算した数値、に基づいている。
【0105】
表1は分取時間の違いによる3〜5つの分画の試験結果と得られた分画の非過酸化活性試験結果をまとめたものである。注記として、最初の分析は全蜂蜜を使用し、後の2つは裏濾した蜂蜜を使用したものである。
【0106】
検出可能な全ての活性は最終的に19.5分から25.0分の間の分画類に限定される事が判った。これら2つの分画の95%信頼区間(CI,=平均±2×SE)は表2にまとめた。
【0107】
信頼区間は阻害領域にもフェノール相当領域にも重ならず、分画4の活性は統計的に裏漉し蜂蜜のそれとは同じではない事を示している。すなわち、カラムへの吸着かもしくは他の分画へ分割移行し分析の検出限界以下の量しか残っていないかの原因で何等かの活性の損失が起こっている事が示唆される。分画4の活性平均値はフェノール活性相当として裏漉し蜂蜜の90%を占めた。
【0108】
【表2】
阻害領域の数値は個々のウェルの数値で、フェノール相当領域の数値はプレートデータから計算した数値である。
【0109】
図3に示す通り、この分画にはほとんど全てのフラクトースが含まれる。単糖類そのものは抗菌活性を有していないが、水分活性を減少させ、且つグルコース酸化酵素の基質を供給し過酸化水素とグルコン酸とを産生させる物理的効果がある。それゆえ、低い濃度ではあっても他の化合物がこの分画に存在する事は明らかである。
【0110】
フラクトースのテーリング上にある小さなピークはこのカラムの分析用バージョンを使用したスノウ(2001)の研究によって観察された。スノウ(2001)によってこの分画を単離し、その構成成分をGC−MSとNMRを用いて同定する試みが成された。しかし、サンプル中のほとんどの化合物が結果として同定できなかった。更にこのピークの大きさと全蜂蜜の活性との相関関係を調べる試みも成されたが、何の関連性も見つからなかった。これによって、このピークはどの一つも活性を有しない多くの化合物で構成されている事が示唆される。
【0111】
スノウ(2001)は活性画分に関連するこのピークにはUV活性があることを指摘している。しかしこれらのUV活性ピーク類は、分取用カラムの性質上分離能が低く、この領域の弱いUV活性を有する大量の開鎖単糖類が干渉するために、同定されなかった。
【0112】
単糖類を含まない分画を得るために分画4を再度注入する事とした。再度注入した分画から得たスペクトル(図4)には、10.5分に新たなピークが出現しているものの、単糖ピークのテーリング上に何の濃縮されたピークも見受けられなかった。単糖のピークの立ち上がり位置に膨らみが観察されるが、グルコースの残渣であるようだ。ベースライン領域を拡大した図を図5に示す。
【0113】
糖類は、通常水溶液系に溶解しにくい化合物の溶解性を向上させる。よって、その化合物は糖類と相互作用を有するか糖類によって可溶化される可能性がある。糖類の濃度を低下させれば相互作用が無くなり早く溶出した。
【0114】
このピークは活性因子である可能性があるが、そのピークの大きさは、非過酸化活性に寄与する化合物(もしくは化合物類)は極めて低い濃度で存在するという考え方をとるのが良いであろう。或は、それは、冷凍庫で一ヶ月保存されていたサンプルを使用したので、分解物であるかかもしれない。
【0115】
再注入する前にサンプルの活性を試験したが活性の低下は見受けられず、この結果は単離するまで2ヶ月以上も冷凍保存していても活性画分は安定であったという研究結果からも裏打ちされている。このピークは非抗菌性化合物の分解物を反映している可能性もある。
【0116】
分画4を再注入して得られた20.5分から25.0分の間の分画を分取し、スノウ(
2001)によって観察された活性ピークが同定できるかどうかを検証する為に、その分画を再度注入した。大変小さいとはいえ、10.5分にやはり新たなピークがはっきりとスペクトル上に出現した(図6、拡大図は図7)。
【0117】
これにより、このピークは保存による分解物ではなく実際に活性が糖類に関連していない事を反映しているであろう事が示唆される。
この再注入から得られた分画の活性を調べるバイオ分析を行なう為に十分な量(極めて大まかな活性を示す為には最低200mgの蜂蜜をカラムに通さねばならず、厳密な活性分析を行なうには800mg必要である)は分取しなかった。
【0118】
再注入によるクロマトグラム上のデータの変化動向について確定的なことは言えない。この方針はこれ以上追究しない事としたが、カラムによって分離を行なう条件を変えるなど、より大きな容量を検討する方針は継続する。
【0119】
(第4実施形態) 蜂蜜のセミ分画分取(逆相)
C18 25mm逆相カラムの優位性は、カラムへ一度に1gを注入する事が出来る実質的により大きな保持容量を有する事であり、一方KS−2002カラムは60mgしか注入できない。
【0120】
逆相の分取用カラムにはデルタパック C18カートリッジ(25mm×100mm,
15μm粒子径、100Å細孔径)を3本直列に繋いで使用した。これにデルタ C18ガードインサート(25mm×10mm、15μm粒子径、100Å細孔径)を装着した。クロマトグラフィは室温にて流量10mL/min、0.5g/mLのサンプルの大量注入は2mLループで行なった。
【0121】
溶離システムは2種類を使用した。一つ目はミリQ水のみを使用した。しかし後に、最初に100%ミリQ水を流し、糖類が溶出した後で100%アセトニトリルに切替える方法に変更した。高い流量を使用するために、検出には広口径カラム用のWaters(ウォーターズ) 410示差屈折計を使用した。
【0122】
水中に採取された画分は大型の蒸発皿で凍結乾燥した。アセトニトリル中に採取された分画は減圧下で濃縮し、凍結乾燥器を用いて完全に乾燥させた。
これによって、活性の生物学的分析を行なう為に十分な量のサンプルを採取するのに費やす時間が大幅に短縮された。加えて、このカラムによって単糖類から活性成分をより効率よく分離する事が出来るかどうかが関心事であった。図8はこのカラムに大量注入して(0.5g/mL、2mL注入)ミリQ水で溶離させて得られたスペクトルである。
【0123】
このスペクトルのほとんどは単糖類のピークである。このカラムではフラクトースからグルコースを分離する事は出来なかったが、単糖類の直ぐ後の14分から25分ぐらいの間に複数のピークのセットが溶出しているのが観察される。
【0124】
これらのうち、いくつかのピークはオリゴ糖類である事が判明したが、これらの成分は活性マヌカハニー中に全蜂蜜量比でおよそ8%含まれている(WestonとBrocklebank,1999)。図9はこれらのピークを表示する為にベースライン領域を拡大してある。
【0125】
カラムからの溶出液はまず3つの分画として分取した;
1. 0.0−8.3分 早い時間に溶出する成分類
2. 8.3−11.8分 糖類
3. 11.8−25.0分 遅い時間に溶出する成分類
検出可能な活性成分は全て分画Cに含まれていることが判った(表3)。
【0126】
【表3】
各数値は a)プレート全体の各ウェルの数値、b)フェノール活性をプレート毎に計算した数値、に基づいている。
【0127】
興味を引くのは、いくつかの活性成分がアセトニトリルによって溶出しているかであり、それはアセトニトリルが分画に対して異なった溶解性を有するからである。加えて、全ての活性成分がミリQ水によってカラムから溶出されるかどうかも検討する必要がある。
【0128】
逆相クロマトグラフィにおいて、アセトニトリルは水よりも強力な溶媒であり、カラムから残存化合物を洗い出す目的で使用する事が出来る。分取された分画類は図10にまとめた。
【0129】
カラムはまずミリQ水で溶離を行い、概要を前述したように分画AとBを分取した。分画Bから分画C(11.8分)へ越える時点で送液ポンプを止め、溶離液を直接100%アセトニトリルに交換した。
【0130】
分画CH2Oを11.8分からアセトニトリルが検出器に到達するまで分取し(およそ13分間もしくは保持時間24分まで)、溶離液の置き換わりは屈折率の変化によってベースラインが急速に上昇する事で確かめられた。この時間から3本のカラム容量分のアセトニトリルをカラムに通してフラッシュし、溶出液はCMeCN分画として分取した。
【0131】
表4に示す通り、検出可能な活性成分は全て分画CH2Oに含まれており、CMeCN分画には一切含まれていない。これにより、活性成分はカラムに逆相的に保持されていない事がわかった。
【0132】
分画Cと分画CH2Oだけがそれぞれ72%と75%の裏漉し蜂蜜相当フェノール活性があったが、他の分画には検出可能な活性は観察されなかった。これにより、活性成分が不可逆的にカラムに吸着されていることが示唆された。
【0133】
使用したカラムは分取用でありエンドキャップされていないシリカゲル基材上にC18鎖を有しているため、分析成分類はシリカゲルに吸着しているか、もしくは活性シラノール基との反応によって変性している可能性がある。加えて、分画にはばらついた値ではあるが常に部分的な活性を有する。この特殊なケースは、糖類の含有量が低下した時の分析
で非過酸化活性の拡散が無くなる事によるものかもしれない。
【0134】
【表4】
各数値は a)複製HPLC分析、b)プレート全体の各ウェルの数値、c)フェノール活性をプレート毎に計算した数値、に基づいている。
【0135】
KS−2002とC18カラムとの比較
デルタパック C18による活性分画はKS−2002による場合と比べて遥かに糖類の混入が少なく、且つそれにより活性成分の糖質類からの分離状態がより良い。逆に言え
ば、KS−2002カラムからはより多くの割合の活性成分が回収されるが、これは活性成分のC18カラムのシリカゲル基材との化学的相互作用が反映されている。
【0136】
KS−2002カラムから得た活性分画では、全活性が観察されるのと反対に、C18カラムから得た分画では、部分的な活性しか得られない。しかし、これはKS−2002分画がより多くの糖質を含有する為に分析の際に拡散を補助するからとも考えられる。
【0137】
(第6実施形態) UMFを含有する画分における非過酸化性活性の安定性
これまでの文献で、非過酸化性活性は蜂蜜を加熱した後も顕著な活性が持続し(ボグダノフ,1984; モランとラッセル,1988; ロス(Roth)等,1986)、もしくは貯蔵しても持続(ボグダノフ,1984;Sealey,1986)する事が指摘されており、そしてこの事は非過酸化性活性を推奨する所見の理由の一つとなっている。
【0138】
本研究では単離されたHPLC分画が室温と冷蔵温度で短時間貯蔵された(8時間から24時間)場合と、冷凍温度で中期間貯蔵された(1週間から8週間)場合の安定性について調べた。
【0139】
これは実験を進めるに当り実際的な検討課題であり、分画に劣化がなくそれゆえ非活性化合物を取り除いても活性の損失はない事を確かめたかった。加えて、どのくらいの量のサンプルを試験使用のために"備蓄"出来るかを知る事も大切であった。
【0140】
付随する興味は、実際、貯蔵によって全蜂蜜の活性を増加できるとメーカーが提言している事例証拠のように本当に活性が増加するのかの検討であった。
この実験の結果の概要は表5にまとめ、視覚的に表したのが図11である。
【0141】
【表5】
各数値は a)プレート全体の各ウェルの数値、b)フェノール活性をプレート毎に計算した数値、に基づいている。
【0142】
裏漉し蜂蜜をKS−2002カラムで分離し19.5分から25分までの分画を分取し、速やかに冷凍した。注入が完了したその日のうちに分画は凍結乾燥させた。
一旦乾燥させてから蒸留水によって50%の活性強度にもどし、次いで様々な時間の貯蔵を室温、冷蔵、冷凍にて行なった。各サンプルは裏漉し蜂蜜換算で480mgに相当する。
【0143】
貯蔵の後、サンプルを25%活性強度に希釈し、2枚の複製プレート上の各々4ウェルで試験し、何等かの活性の損失や獲得が無いかを調べた。これらの結果を、新しく採取した活性分画を同じプレートで試験した活性値と比較した。加えて、裏漉し蜂蜜を凍結乾燥した2つの複製サンプルを作成し、凍結乾燥の工程が蜂蜜の活性に与える影響について調べた。
【0144】
元の分画の保持率を表6にまとめた。元の活性の保持率は阻害領域では94%から106%、フェノール相当領域では86%から114%であった。これにより、様々な条件の貯蔵によって単離された活性分画の非過酸化性活性は何等かの影響を受ける事がわかった
。
【0145】
【表6】
表7はこれらの結果のREML解析である。これらの結果によって、貯蔵による活性の変化のいくつかは、統計的に重要である。阻害領域のデータでは室温と冷蔵貯蔵サンプルは共にコントロールに比べて有意に低くなっている。
【0146】
フェノール相当領域についてはこれらの処理においては統計的に有意な差は見られず、おそらくそれはこのデータセットの反復性が低く、それにより標準エラーを生じ予想平均間の差異が曖昧になったのであろう。
【0147】
活性の増加について統計的有意性が見られるのは、阻害領域のデータで8週間冷凍貯蔵したものと、フェノール相当領域のデータで4週間冷凍貯蔵したものとである。
しかし、この実験の制限は実験が反復実施されず、同じ日に複製プレートで試験された事である。ついては、有意性を検証するためには日差データの変動が重要な役割を担う。フェノール標準品検量線を用いたフェノール相当活性解析値は阻害領域を使うよりもより大きな幅の値を生じるように見え、フェノール標準品は日差データの変動を補正できない事を示唆している。
【0148】
これらの結果に統計的有意性が見られなくても、活性の良好な保持は依然として観察された。冷凍貯蔵されたサンプルのいくつかからは活性が増加する統計的に有意な結果が得られた。しかし、日差変動とプレート間変動との影響については本実験において反復実験をしていないので未知のままである。
【0149】
【表7】
平均値間の差異は、サンプル値の予想平均値からコントロール値の予想平均値を減じて求めた。各数値は a)プレート全体の各ウェルの数値、b)フェノール活性をプレート毎に計算した数値、に基づいている。
【0150】
(第6実施形態) 蜂蜜の栄養強化
蜂蜜は、通常は自然には起こらない非常に優れた高い抗菌活性を有しており、その結果、値段が高い。よって、もしそのままでは活性が低すぎて医薬品利用が出来ない蜂蜜の活性を濃縮する方法や、既に高い活性を有する蜂蜜の効能を通常自然には得られない程度にまで増加させる方法が開発されたら、市場優位性を有する。
【0151】
蜂蜜の過酸化性活性は自然に産生され、過酸化物破壊物質の濃度とグルコース酸化酵素の安定性に依存するので、非過酸化性活性(UMF)を濃縮することだけが有効である。
逆相HPLCはUMFを分離でき、サイズ排除/イオン交換による分画4とは対照的にサンプルの大量注入にカラムが対応し、分画C(100%ミリQ水で溶出)は分取され、裏漉し蜂蜜の栄養強化に利用される。
【0152】
栄養強化サンプルを作成する為に、分画C(1gの裏漉し蜂蜜を分離して作成)を1mLの蒸留水に未処理の裏漉し蜂蜜を1g溶解させた溶液に加えた。この50%溶液を更にカタラーゼで希釈し25%の溶液とした。よって、サンプルは理論的に裏漉し蜂蜜コントロールの2倍量のUMFを含有している事になる。
【0153】
最初の実験(表8)では、裏漉し蜂蜜の活性に加えて少しの増加が得られた。
【0154】
【表8】
各数値は a)プレート全体の各ウェルの数値、b)フェノール活性をプレート毎に計算した数値、に基づいている。
【0155】
これによると、裏漉し蜂蜜の活性がフェノール活性相当で23.5%増加している事が判る。活性の倍増は観察されなかったので、栄養強化レベルの増加を含む実験に拡張し、活性分画の調合分量を増加させれば直接比例した活性応答を得る事が可能かどうかを検討した。
【0156】
各調合は前述のように、各々裏漉し蜂蜜1,2,3gと未処理裏漉し蜂蜜1gとに相当する濃度の分画Cの添加により構成された。
表9は作成されたサンプルの活性を示し、図12は阻害領域の結果をグラフ化して示している。
【0157】
【表9】
各数値は a)プレート全体の各ウェルの数値、b)フェノール活性をプレート毎に計算した数値、に基づいている。
【0158】
高い相関関係が見られ(R2=0.9874)、直接比例した活性応答が起こった事を示している。これによって、蜂蜜の非過酸化性活性を増加させる事は可能である事が確認
された。
【0159】
しかし、直線回帰解析によれば、これらサンプル試験で用いた複製プレートデータには傾きにおいて統計学上有意な違いがあった(p値=0.011)。これらのグラフはミニタブによる解析結果として図13に示してある。
【0160】
これらのようなプレートの影響は珍しい事ではない。既に議論したように、プレートに拠る変動はWDA法において最も有意な変動要因であり、よってサンプルの試験は複製プレート法で行い、平均化する事でこの影響を補正する事が出来る。
【0161】
あるいは、栄養強化のデータが1:3のデータポイント(比率3、図13)では、他の3つの栄養強化レベルと比較して2つのグラフ間の変移量がより大きい。これはおそらく何らかの要因がこのポイントを制限し、グラフが曲がったのであろう。
【0162】
これは単にこのサンプルが2つのプレートに添加された時に同質でなかった事に依拠している。但し、分析自体が高い活性による高感度のものではなかった。この理由は3つにまとめられる;
(i) 阻害領域が重なると細長くなる傾向があり、計測を困難にする
(ii) 拡散がより変動する
(iii) 阻害領域が標準の最高値を超える
本研究において分画は注意深くスペースを空け、阻害領域が重ならないようにしたが、1:3栄養強化サンプルは標準の最高値に近接した。
【0163】
これらの検討とは関係なく、マヌカハニーからのUMFを含有する分画の調整と、蜂蜜の栄養強化に使用する方法が実証された。
前述の論及された説明書きが完全であるかもしくは構成要素が既知の等価な内容を有する場合は、そのような等価な内容は個別の陳述として組み込まれる。
【0164】
本発明が実施例と可能な実施形態に関連したものとを用いて記載されているとしても、それについての改善および修正、もしくは改善または修正は、本発明の範囲や主旨から逸脱するものではない。
【0165】
【表10】
【図面の簡単な説明】
【0166】
【図1】配位子交換クロマトグラフィとサイズ排除クロマトグラフィとを用いたHPLC示差屈折計によるマヌカハニーの分析を示すグラフ。
【図2】配位子交換クロマトグラフィとサイズ排除クロマトグラフィとを用いたHPLC示差屈折計によるマヌカハニーの分析におけるベースラインを拡大したグラフ。
【図3】裏漉し蜂蜜をKS−2002カラムでHPLC分析(300mg/mLの裏漉し蜂蜜を200μL注入して示差屈折計によりピークの溶出をモニターした)を示すグラフ。
【図4】KS−2002カラムから得た活性画分を再度注入しHPLC分析(分画4(蜂蜜裏漉し1mL当り200mgの濃度に相当する濃度に調整した)を200μL注入し、溶出液を示差屈折計でモニターした)を示すグラフ。
【図5】KS−2002カラムから得た活性画分を再度注入しHPLC分析。分画4(蜂蜜裏漉し1mL当り200mgの濃度に相当する濃度に調整した)を200μL注入し、溶出液を示差屈折計でモニターしたデータを拡大したグラフ。
【図6】KS−2002カラムに分画4を注入して得られた20.5分から25分までのHPLC分析(200μL注入して得られた溶離ピークの示差屈折計によるモニター(蜂蜜裏漉し1mL当り100mgの濃度に相当する濃度に調整した))したグラフ。
【図7】分画4をKS−2002カラムに再度注入して得られた20.5分から25分までの分画のHPLCスペクトル。この分画を200μL注入し、溶出液を示差屈折計でモニターしたデータを拡大した図(蜂蜜裏漉し1mL当り100mgの濃度に相当する濃度に調整した)。
【図8】C18カラムを用いたHPLCのスペクトル。0.5g/mLの裏漉し蜂蜜を2mL注入し、溶出液を示差屈折計でモニターした。
【図9】C18カラムを用いたHPLC。0.5g/mLの裏漉し蜂蜜を2mL注入し、溶出液を示差屈折計でモニターしたデータを拡大したスペクトル。
【図10】C18カラムから得た分画をミリQとアセトニトリルとに収集した実例を示すグラフ。
【図11】保管が活性画分の非過酸化活性に与える影響を示すグラフ。
【図12】栄養強化した裏漉し蜂蜜の組成検討を示すグラフ。
【図13】プレート毎にグループ分けして栄養強化実験を行なったデータ(1〜2はオープンスペース、単位はmm2、割合は画分Cと裏漉し蜂蜜との比、単位はg/g)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
UMFにより栄養強化された蜂蜜。
【請求項2】
前記蜂蜜はマヌカハニーである、請求項1に記載の蜂蜜。
【請求項3】
前記栄養強化された蜂蜜が栄養強化されていないマヌカハニーよりも高いUMF値を有する、請求項1又は請求項2に記載の蜂蜜。
【請求項4】
前記栄養強化された蜂蜜が25よりも高い、更に望ましくは35より高いUMF値を有する、請求項1〜3のいずれか1つに記載の蜂蜜。
【請求項5】
UMFを含有する画分と蜂蜜とを混合する工程を備える、UMFにより栄養強化された蜂蜜を調整する方法。
【請求項6】
UMFを含有する画分を調整する方法であり、
a) 一定量のマヌカハニーをクロマトグラフィのマトリクスに加える工程と、
b) 溶媒を用いて前記マトリクスからサンプルを溶出させる工程と、
c) UMFを含有する画分を分取する工程とを備える方法。
【請求項7】
マヌカハニーが、25よりも高い、更に望ましくは35より高いUMF値を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記マトリクスがサイズ排除マトリクスもしくは逆相マトリクスである、請求項6もしくは請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記溶媒が水である、請求項6〜8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
前記UMFを含有する画分の分取を、実質的に全ての単糖の糖質類が存在するサンプルの溶出液から採取し始める、請求項6〜9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
前記分取したUMFを含有する画分が、実質的に単糖の糖質類を含まない、請求項6〜10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
前記マトリクスがカラムの形式になっている、請求項6〜11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
前記マトリクスがサイズ排除とイオン交換マトリクスである、請求項6〜12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
対イオンがNa+である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記マトリクスが104の排除限界を有する、請求項13もしくは請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記マトリクスがスチレンジビニルベンゼン共重合体である、請求項13〜15のいずれか1つに記載の方法。
【請求項17】
前記マトリクスがC18である請求項6〜12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項18】
前記マトリクスが15μmの粒子径と100Åの細孔径とを有する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
マヌカハニーから採取した、UMFを含有する画分。
【請求項20】
前記画分が実質的に単糖の糖質類を含まない、請求項19に記載のUMFを含有する画分。
【請求項21】
UMFを含有する画分が有する抗菌活性がアルカリ領域のpHでは不安定である、請求項19又は請求項20に記載のUMFを含有する画分。
【請求項22】
前記アルカリ領域のpHが9を超える、請求項19〜21のいずれか1つに記載のUMFを含有する画分。
【請求項23】
前記UMFを含有する画分が、請求項6〜18のいずれか1つに記載の方法によって調整される、請求項19〜22のいずれか1つに記載のUMFを含有する画分。
【請求項24】
前記UMFを含有する画分が、第2実施形態に記載のクロマトグラフィ上の特性を有するような、請求項19〜23のいずれか1つに記載のUMFを含有する画分。
【請求項25】
UMFを含有する画分を含む蜂蜜のサンプル(20μL)をショウデックスTM Sugar KS−801とKS−802分析用カラムへ直列に繋ぎ、ナトリウム型に調整したカラムに注入し、温度50℃、溶離液ミリQ水、流量1mL/minで運転したときに、前記UMFを含有する画分が、19.4分〜25分の間に保持時間を有するような、請求項19〜23のいずれか1つに記載のUMFを含有する画分。
【請求項26】
前記UMFを含有する画分が保持時間19.4分〜21.7分の間である、請求項25に記載のUMFを含有する画分。
【請求項27】
請求項19〜26のいずれか1つに記載のUMFを含有する画分を調合した医薬品。
【請求項28】
前記医薬品が創傷包帯である、請求項27に記載の医薬品。
【請求項29】
請求項19〜26のいずれか1つに記載のUMFを含有する画分を調合した食品。
【請求項30】
前記食品が蜂蜜である、請求項29に記載の食品。
【請求項1】
UMFにより栄養強化された蜂蜜。
【請求項2】
前記蜂蜜はマヌカハニーである、請求項1に記載の蜂蜜。
【請求項3】
前記栄養強化された蜂蜜が栄養強化されていないマヌカハニーよりも高いUMF値を有する、請求項1又は請求項2に記載の蜂蜜。
【請求項4】
前記栄養強化された蜂蜜が25よりも高い、更に望ましくは35より高いUMF値を有する、請求項1〜3のいずれか1つに記載の蜂蜜。
【請求項5】
UMFを含有する画分と蜂蜜とを混合する工程を備える、UMFにより栄養強化された蜂蜜を調整する方法。
【請求項6】
UMFを含有する画分を調整する方法であり、
a) 一定量のマヌカハニーをクロマトグラフィのマトリクスに加える工程と、
b) 溶媒を用いて前記マトリクスからサンプルを溶出させる工程と、
c) UMFを含有する画分を分取する工程とを備える方法。
【請求項7】
マヌカハニーが、25よりも高い、更に望ましくは35より高いUMF値を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記マトリクスがサイズ排除マトリクスもしくは逆相マトリクスである、請求項6もしくは請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記溶媒が水である、請求項6〜8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
前記UMFを含有する画分の分取を、実質的に全ての単糖の糖質類が存在するサンプルの溶出液から採取し始める、請求項6〜9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
前記分取したUMFを含有する画分が、実質的に単糖の糖質類を含まない、請求項6〜10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
前記マトリクスがカラムの形式になっている、請求項6〜11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
前記マトリクスがサイズ排除とイオン交換マトリクスである、請求項6〜12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
対イオンがNa+である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記マトリクスが104の排除限界を有する、請求項13もしくは請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記マトリクスがスチレンジビニルベンゼン共重合体である、請求項13〜15のいずれか1つに記載の方法。
【請求項17】
前記マトリクスがC18である請求項6〜12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項18】
前記マトリクスが15μmの粒子径と100Åの細孔径とを有する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
マヌカハニーから採取した、UMFを含有する画分。
【請求項20】
前記画分が実質的に単糖の糖質類を含まない、請求項19に記載のUMFを含有する画分。
【請求項21】
UMFを含有する画分が有する抗菌活性がアルカリ領域のpHでは不安定である、請求項19又は請求項20に記載のUMFを含有する画分。
【請求項22】
前記アルカリ領域のpHが9を超える、請求項19〜21のいずれか1つに記載のUMFを含有する画分。
【請求項23】
前記UMFを含有する画分が、請求項6〜18のいずれか1つに記載の方法によって調整される、請求項19〜22のいずれか1つに記載のUMFを含有する画分。
【請求項24】
前記UMFを含有する画分が、第2実施形態に記載のクロマトグラフィ上の特性を有するような、請求項19〜23のいずれか1つに記載のUMFを含有する画分。
【請求項25】
UMFを含有する画分を含む蜂蜜のサンプル(20μL)をショウデックスTM Sugar KS−801とKS−802分析用カラムへ直列に繋ぎ、ナトリウム型に調整したカラムに注入し、温度50℃、溶離液ミリQ水、流量1mL/minで運転したときに、前記UMFを含有する画分が、19.4分〜25分の間に保持時間を有するような、請求項19〜23のいずれか1つに記載のUMFを含有する画分。
【請求項26】
前記UMFを含有する画分が保持時間19.4分〜21.7分の間である、請求項25に記載のUMFを含有する画分。
【請求項27】
請求項19〜26のいずれか1つに記載のUMFを含有する画分を調合した医薬品。
【請求項28】
前記医薬品が創傷包帯である、請求項27に記載の医薬品。
【請求項29】
請求項19〜26のいずれか1つに記載のUMFを含有する画分を調合した食品。
【請求項30】
前記食品が蜂蜜である、請求項29に記載の食品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2008−501361(P2008−501361A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−527095(P2007−527095)
【出願日】平成17年6月8日(2005.6.8)
【国際出願番号】PCT/NZ2005/000118
【国際公開番号】WO2005/120250
【国際公開日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(506407213)ザ ユニバーシティ オブ ワイカト (2)
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF WAIKATO
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月8日(2005.6.8)
【国際出願番号】PCT/NZ2005/000118
【国際公開番号】WO2005/120250
【国際公開日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(506407213)ザ ユニバーシティ オブ ワイカト (2)
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF WAIKATO
【Fターム(参考)】
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