説明

猫眼草抽出物およびその調製方法と用途

本発明は、薬用植物である猫眼草から活性化合物を単離する方法であって、下記のステップを含む方法を開示する。猫眼草のアセトン抽出物に対し有機溶剤による粗抽出を行うステップ;有機溶剤による抽出物に対しNO産生抑制活性試験を行った上、NO産生抑制活性が高くかつ毒性作用のない抽出物に対してさらに単離を行うステップ;単離により得られた画分に対しNO産生抑制活性試験を行った上、NO産生抑制活性が高い抽出物に対してさらに単離精製を行うステップ;単離によって得られた単一成分の化合物に対し、NO産生抑制活性試験および理化学的特性の分析を行うことにより、その構造を決定するステップ。単離により得られた化合物はNO産生を抑制する活性を有する。そのうち化合物1〜3の構造は次のとおりである。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬用植物である猫眼草(Euphorbia lunulata Bge.)から単離抽出した抗炎症活性物質およびその調製方法と用途に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの人を悩ませている日常的な炎症性の疾患としては、骨関節炎、リウマチ性関節炎、リウマチ性脊髄炎、痛風関節炎などの関節炎;湿疹、乾癬、皮膚炎などの炎症性皮膚病;ブドウ膜炎、結膜炎などの炎症性眼疾;喘息、気管支炎、急性呼吸促迫症候群などの肺疾患;菌血症、内毒素血症、潰瘍性口内炎、歯茎炎、膵臓炎など;限局性回腸炎、萎縮性胃炎、潰瘍性結腸炎、腹膜炎、消化性潰瘍、およびピロリ菌感染による粘膜炎症あるいは非ステロイド系抗炎症薬による胃腸病などの過敏性腸管症候群といった胃腸疾患などがある。
【0003】
各種の炎症の発症メカニズムとしては、体内の一酸化窒素(NO)が細胞の免疫および炎症を導く毒性物質であることが知られている。その前駆物質はL−アルギニンであり、L−アルギニンはNO合成酵素(NOS)の働きによりNOを産生する。現在、内皮型NO合成酵素(eNOS)、神経型NO合成酵素(nNOS)および誘導型NO合成酵素(iNOS)の3つの異なるタイプのNOSがすでに単離されている。また、マクロファージ、肝細胞、平滑筋細胞、腺癌細胞および上皮細胞がいずれもiNOSを発現し得ることが知られている。一部の炎症性細胞因子および例えばリポ多糖(LPS)のような微生物生成物はiNOSの発現を誘導する。iNOSは、誘導されると直ちに高度の活性を発現し、大量のNOを産生する。
【0004】
このため長期にわたり、誘導型NO合成酵素iNOSの抑制剤により上記に関連する炎症性疾病を治療することに力が注がれてきた。しかしこれらの抑制剤はその大部分が化学的手段によりに合成された物質であり、副作用が比較的大きい。従来技術においては、民間薬として使われている天然の植物からの抗炎症活性物質の抽出に関してはいまだ報告されていない。
【0005】
猫眼草(Euphorbia lunulata Bge.)は中国では鎮咳、去痰の薬として用いられ、慢性気管支炎に使用されている。『中華人民共和国薬典』1977年版第1部に収録され、中国名は猫眼草、日本名はビョウガンソウ(猫眼草)という。中国河北省、内蒙古自治区および山西省などの乾燥地帯に分布する多年生の草本植物である。
【0006】
本植物は、苦味があり、薬の性質はやや「寒」(陰性)で、毒性をもつ。去痰、鎮咳、でき物や腫れ物の解消、毒消し、痒み止めおよび抗菌などの薬理作用を有する。慢性気管支炎の治療に使用した場合の臨床効果は良好で、主に慢性気管支炎の咳、痰の緩和、リンパ節結核に対する体外からの治療および白癬・疱疹などの皮膚病の治療に使用される。例えば、中国特許公開番号CN1326751A号(公開日2001年12月19日)には、猫眼草の水による煮液を加工して作られるリンパ結核およびペストの治療に使用される「猫眼膏」が開示されている。
【0007】
しかし今日まで、猫眼草の活性成分についてはあまり深く研究されてこなかった。猫眼草において、すでに分布と構造が究明されている化合物を次に例示する。本植物の茎および葉にはフラボノイド、ステロイド類、揮発油およびフェノール類化合物が含まれ、地上部分からはケンフェロール、クエルセチンなどのグリコシド類化合物を単離することができ、種子および植物体にはクマリン類化合物が含まれる。しかし、各種化合物の作用については大部分がまだ不明であり、さらなる研究が待たれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このため本発明者らは、猫眼草から、毒性がなく安全でかつ効果的にiNOS酵素の活性化を抑制することによりNOの大量産生を抑制して抗炎症の働きをする明確な抗炎症活性を有する成分を抽出する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は下記の構造式を有し、クエルセチン−3−O−(2”,3”−ジガロイル)−β−D−ガラクトピラノシドの名称を有する化合物を提供する。
【化1】

【0010】
本発明は、薬用植物である猫眼草(Euphorbia lunulata Bge.)から活性物質を抽出する方法であって、下記のステップを含むことを特徴とする方法に関する。
1)アセトンにより猫眼草に対し抽出を行った上、濃縮する。
2)前記ステップ1)で得た抽出物を水中に浮遊させ、クロロホルム、酢酸エチルおよびn−ブタノールを溶出剤として、順次それぞれ抽出を行い、抽出物を得る。
3)ステップ2)の有機溶剤抽出物に対し、NO産生抑制活性試験および毒性試験を行った上、NO産生抑制活性が高くかつ毒性作用のない抽出物に対し、さらにカラムクロマトグラフィーによる単離を行い、溶出液を得る。
4)ステップ3)で単離して得た溶出液に対し、NO産生抑制活性試験を行った上、NO産生抑制活性の高かった溶出液をさらに単離精製し、活性物質を得る。
5)ステップ4)で単離して得た単一成分の化合物に対し、NO産生抑制活性試験および理化学的特性の分析を行い、それによりその構造を決定する。
【0011】
前記ステップ1において、好ましくはアセトンの抽出濃度を70%とする。
前記ステップ3において、好ましくはSephadex LH−20のクロマトグラフカラムを用いて単離を行い、50%メタノール、70%メタノール、メタノールおよびアセトンを順次用いて溶出する。
前記ステップ4において、好ましくはCHP−20のクロマトグラフカラムおよび/またはHPLCにより精製を行い、精製方法はCHP−20カラムで単離するときには30%メタノール、50%メタノール、70%メタノールおよびメタノールを順次用いて溶出を行い、HPLC(カラム:YMC Guard pack ODS−AL 150×10mmI.D.)を用いるときには移動相を0.1%TFA−メタノール−アセトニトリル(60:30:5)、紫外線測定波長254nmとする。
前記NO産生抑制活性試験はマウスマクロファージRAW264.7を用い、試料濃度は100μg/mlで行う。
前記毒性作用は、MMT細胞毒性試験により行う。
前記理化学的特性の分析技術には、核磁気共鳴を含む。
前記活性化合物は、抗炎症活性を有することが好ましい。
前記活性化合物には、クエルセチン−3−O−(2”,3”−ジガロイル)−β−D−ガラクトピラノシド、クエルセチン−3−O−(2”−ガロイル)−β−D−ガラクトピラノシド、1,3,4,6−テトラ−O−ガロイル−β−D−グルコシド、ヒペリン、クエルセチン、3,4−レゾルシン酸、ルテオリンおよびアピゲニンなどが含まれる。
クエルセチン−3−O−(2”,3”−ジガロイル)−β−D−ガラクトピラノシドおよびクエルセチン−3−O−(2”−ガロイル)−β−D−ガラクトピラノシド、1,3,4,6−テトラ−O−ガロイル−β−D−グルコシドは、NO産生抑制活性を有する。
【0012】
本発明はさらに、クエルセチン−3−O−(2”,3”−ジガロイル)−β−D−ガラクトピラノシド、クエルセチン−3−O−(2”−ガロイル)−β−D−ガラクトピラノシド、1,3,4,6−テトラ−O−ガロイル−β−D−グルコシド)、ヒペリン、クエルセチン、3,4−レゾルシン酸、ルテオリンおよびアピゲニンの、NO合成酵素と関わりのある炎症の治療薬調製における用途にも関する。
【0013】
本発明により得られた有益な技術的効果は、初めて猫眼草から明確な抗炎症活性を有する物質を単離して得たことであり、これは誘導型NO合成酵素iNOSに対する天然の抑制剤であり、化学合成物質のもつ有害な副作用の問題を克服することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
実施例1 猫眼草抽出物の調製方法
(1)猫眼草の粗抽出方法および生成物
猫眼草(Euphorbia lunulata Bge.)9.0kgを70%アセトン(27L)にて3回抽出し、抽出液を濃縮し、得られたエキスに水を加えて懸濁液にし、クロロホルム、酢酸エチルおよびn−ブタノールを順次用いて抽出を行った。これら3種の抽出物のそれぞれに対し、試料濃度を100μg/mlとして、NO産生抑制試験およびMTT試験を行った。その結果を表1に示す。
【0015】
【表1】

【0016】
この中からNO産生抑制率が高く、かつMTT細胞毒性試験で毒性の認められなかった酢酸エチル抽出物を選び出し、これを次の操作ステップに進めた。
【0017】
(2)酢酸エチル抽出物のカラムクロマトグラフィーの方法および生成物
酢酸エチル抽出物46.1gをSephadex LH−20カラムに付し、単離を行う。50%メタノール、70%メタノール、メタノールおよびアセトンを用いて順次溶出し、合計9画分の溶出液を回収し、これらの1画分ごとにNO産生抑制試験を行った。その結果を表2に示す(Fr.は画分の意)。

【0018】
【表2】

【0019】
この中からNO産生抑制率が高く、かつ収率も比較的よい画分4および8を選び、次の操作ステップに進めたが、画分5は収率が最も高く、NO産生抑制率も特に低くはなかったことから、これも次の操作ステップに進めた。
【0020】
(3)画分4、5および8の単離精製方法ならびに生成物
そこでCHP−20カラムを用いてFr.4、Fr.6およびFr.8に対し、それぞれ単離を行い、30%メタノール、50%メタノール、70%メタノールおよびメタノールを用いて順次溶出を行った。
前記Fr.4からは、単離・純化により6つの画分Fr.4−A(867.2mg)、Fr.4−B(58.1mg)、Fr.4−C(57.7mg)、Fr.4−D(81.5mg)、Fr.4−E(0.52g)およびFr.4−F(16.6mg)を得た。このうち逆相TLC(0.1%TFA:メタノール=60:40)において単スポットを示したFr.4−Dに対し、逆相の高速液体クロマトグラフHPLC(カラム:YMC Guard pack ODS−AL 150×10mm I.D.)において、移動相0.1%TFA−メタノール−アセトニトリル(60:30:5)、紫外線測定波長254nmにて精製を行い、化合物(1)〔5.3mg〕を得た。
前記Fr.5からは、単離・純化により5つの画分Fr.5−A(2.02g)、Fr.5−B(0.16g)、Fr.5−C(33.2mg)、Fr.5−D(0.07g)およびFr.5−E(56.4mg)を得た。Fr.5−Aからは結晶が析出したため、メタノールで再結晶し、化合物(2)〔0.25g〕を得た。
前記Fr.8からは、単離・純化により9つの画分Fr.8−1(10.7mg)、Fr.8−2(17.0mg)、Fr.8−3(356.5mg)、Fr.8−4(352mg)、Fr.8−5(34.5mg)、Fr.8−6(13.1mg)、Fr.8−7(19.4mg)、Fr.8−8(354mg)およびFr.8−9(98.1mg)を得た。Fr.8−4に対し、HPLC(カラム:YMC Guard pack ODS−AL)において、移動相0.1%TFA−メタノール−アセトニトリル(60:30:5)、紫外線測定波長254nmにて精製し、化合物(3)〔3.3mg〕を得た。
【0021】
実施例2 主な化合物の理化学的性状
単離・純化により得られた3つの化合物の物理化学的分析を行った。主なデータを表3、4および5に示す。









【0022】
【表3】

































【0023】
【表4】
















【0024】
【表5】

【0025】
化合物1〜3の構造は下記のとおりである。
【化2】

【0026】
実施例3 猫眼草抽出物のNO産生抑制活性
使用材料
RAW264.7細胞、(マクロファージ、アベルソン白血病ウィルスから転化)、米国ATCC(米国標準菌株保存機構)より取得。10%FBSを含むハムF12培地を用い、5%CO2、37℃にて培養。
IFN−γ:Genzyme/Techne社;LPS:Sigma社;スルファニルアミド:和光純薬;N−1−ナフチルエチレンジアミン塩酸塩(N−1−Naphthylethylene−diamine Dihydrochloride):和光純薬;グリース試薬:(1)N−1−ナフチルエチレンジアミン塩酸塩を注射用水5mlに溶解する;(2)注射用水5ml、スルファニルアミド50mgにリン酸250μlを加える。
【0027】
計測器
マイクロプレートリーダー(3550型マイクロプレートリーダー、BIO−RAD社)
【0028】
具体的な方法および結果
RAW264.7細胞50mlをファルコンチューブに入れて遠心分離し(1000rpm、3分、4℃)、細胞を沈殿させ、上清をアスピレーターを用いて除き、新鮮培地を10ml加えて懸濁させる。(濃度が1.5×105個/mlになるよう調整)96穴プレートの各穴に200μlずつ注入し、CO2インキュベーター内で1〜2時間放置する。LPS(10μg/ml Sigma 055:B5)を2μl加え、マウスIFN−γ(33ng/ml Genzyme)2μl、検体化合物0.4μlを加える。CO2インキュベーターに入れ、16時間培養する。終濃度はIFN−γ0.33ng/ml、LPS100ng/mlとする。検体化合物をDMSOに溶解し、含量が培地に対して0.2%となるようにする。顕微鏡で観察し、MTT試験を行う。グリース法によりNO産生の評価を行う。上清100μlを採取して0.1%N−1−ナフチルエチレンジアミン塩酸塩溶液50μl、スルファニルアミド50μlを加え、室内で遮光して10分間放置する。分光光度計にて570nm(対照655nm)のO.D.値を測定する。
【0029】
活性の評価
NO2-の量を算出し、下記の公式に代入して抑制効果を求める。
抑制効果(%)={1−(X−Y)/(Z−Y)}×100
X:試験化合物の存在下で、IFN−γおよびLPSに誘導されて産生したNO2-の量
Y:試験化合物、IFN−γおよびLPSがいずれも存在しない状態で、誘導されて産生したNO2-の量
Z:IFN−γおよびLPSに誘導されて産生したNO2-の量
【0030】
NO産生抑制効果のIC50値は表6のとおりである。
【0031】
【表6】

【0032】
化合物1、2および3はいずれも強いNO産生抑制活性を有することを示している。
【0033】
実施例4 猫眼草抽出物のiNOS、TNF−α、COX−2およびIL−12のmRNAに対する発現抑制試験
RAW264.7細胞(1.2×106細胞/ml)を化合物IFN−γ(10U/ml)およびLPS(100ng/ml)とともに6時間培養する。RNA単離用試薬キット(QIAGEN社製)を用いてトータルRNAを抽出する。260nmにおける吸光値を測定し、RNAの量を決定し、RNA250ngとオリゴ(dT)12−18プライマーとを用いて逆転写を行い、cDNAを合成する。得られたcDNAを鋳型としてPCR反応を行う。前記反応は、KCl50mM、MgCl25mM、dNTP0.2mM、Ampli Taq酵素(Ampli Taq gold)(Applied Biosystems)0.6ユニットならびにセンスプライマーおよびアンチセンスプライマー0.4μMmolにより30μlの反応溶液中で行う。iNOSに対して使用するプライマーは5’−ACCTACTTCCTGGACATTACGACCC−3’[S]、5’−AAGGGAGCAATGCCCGTACCAGGCC−3’[AS]とし、β−アクチンのプライマーは5’−TGGATCCTGTGGCATCCATGAAAC−3’[S]、5’−TAAAACGCAGCTCAGTAACAGTCCG−3’[AS]とし、TNF−aのプライマーは5’−AGGCGCCACCACGCTCTTCT−3’[S]、5’−GGCAGCCTTGGCCCTTGAA−3’[AS]とする。COX−2のプライマーは5’−TCAAAAGAAGTGCTGGAAAAGGTT−3’[A]、5’−TCTACCTGAGTGTCTTTGACTGTG−3’[AS]とする。IL−12のプライマーは5’−AAGGAAAATGGAATTTGGTCCACTG−3’[S]、5’−GATGATGTCCCTGATGAAGAAGCTG−3’[AS]とする。PCR反応は下記の方式により行った。94℃1分間(変性)、60℃1分間(アニール)および72℃1.5分間を1サイクルとして25サイクル行う。PCR生成物は2%アガロース中で電気泳動した後、エチジウムブロミドで染色し測定する。
【0034】
猫眼草抽出物はiNOSのmRNAの発現に対し濃度依存的な抑制作用を有する。また、TNF−α、IL−12およびCOX−2のmRNAに対する発現抑制から、猫眼草抽出物は転写因子NF−κBの活性化を抑制できると推定される(下図)。


【0035】
上図は猫眼草抽出物のiNOS、TNF−α、COX−2およびIL−12のmRNAに対する発現抑制の結果である。
【0036】
この結果は、猫眼草抽出物がiNOSのmRNA発現に対し濃度依存的な抑制作用を有することを示している。また、TNF−α、IL−12およびCOX−2のmRNAの発現に対しても抑制作用を有し、転写因子NF−κBの活性化抑制が推測される。上記の数種の炎症因子は急性・慢性炎症、アレルギー性疾患などの疾患機序と密接に関わっていることから、猫眼草抽出物から単離されたこれらの炎症因子抑制剤は急性・慢性炎症およびアレルギー性疾患などの疾患の治療薬の調製に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クエルセチン−3−O−(2”,3”−ジガロイル)−β−D−ガラクトピラノシドの名称を有し、下記の構造式を有することを特徴とする猫眼草抽出物。
【化1】

【請求項2】
NO産生を抑制する活性を有することを特徴とする請求項1に記載の猫眼草抽出物。
【請求項3】
NO産生を抑制する活性を有することを特徴とする猫眼草抽出物1,3,4,6−テトラ−O−ガロイル−β−D−グルコシド。
【請求項4】
NO産生を抑制する活性を有することを特徴とする猫眼草抽出物クエルセチン−3−O−(2”−ガロイル)−β−D−ガラクトピラノシド。
【請求項5】
NO合成酵素と関わりのある炎症の治療薬の調製に使用できることを特徴とするクエルセチン−3−O−(2”,3”−ジガロイル)−β−D−ガラクトピラノシド、クエルセチン−3−O−(2”−ガロイル)−β−D−ガラクトピラノシド、1,3,4,6−テトラ−O−ガロイル−β−D−グルコシド、ヒペリン、クエルセチン、3,4−レゾルシン酸、ルテオリンおよびアピゲニン。
【請求項6】
薬用植物である猫眼草から活性物質を抽出する方法であって、
1)アセトンにより猫眼草に対し抽出を行った上、濃縮するステップと、
2)前記ステップ1)で得た抽出物を水中に浮遊させ、クロロホルム、酢酸エチルおよびn−ブタノールを溶出剤として、順次それぞれ抽出を行い、抽出物を得るステップと、
3)ステップ2)の抽出物に対し、NO産生抑制活性試験および毒性試験を行った上、NO産生抑制活性が高くかつ毒性作用のない抽出物に対し、さらにカラムクロマトグラフィーによる単離を行い、溶出液を得るステップと、
4)ステップ3)で単離して得た溶出液に対し、NO産生抑制活性試験を行った上、NO産生抑制活性の高かった溶出液をさらに単離精製し、活性物質を得るステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
前記ステップ1)において、好ましくはアセトンの抽出濃度を70%とすることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ステップ3)において、好ましくはSephadex LH−20カラムを用いて単離を行い、メタノールおよびアセトンで溶出することを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ステップ3)において、50%メタノール、70%メタノール、メタノールおよびアセトンを順次用いて溶出することを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ステップ4)において、好ましくはCHP−20カラムおよび/またはHPLCを用いて精製することを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記ステップ4)の精製方法において、CHP−20カラムによる単離ではメタノールで溶出を行い、HPLCの移動相にはTFA−メタノール−アセトニトリルを用いることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ステップ4)において、30%メタノール、50%メタノール、70%メタノールおよびメタノールを順次用いて溶出し、移動相を0.1%TFA−メタノール−アセトニトリル(60:30:5)としてHPLCにより精製することを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記NO産生抑制活性試験においてはマウスマクロファージ系RAW264.7により分析を行い、試料濃度は100μg/mlとすることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項14】
前記毒性作用がMMT細胞毒性試験により分析されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項15】
前記活性物質がクエルセチン−3−O−(2”,3”−ジガロイル)−β−D−ガラクトピラノシド、クエルセチン−3−O−(2”−ガロイル)−β−D−ガラクトピラノシド、1,3,4,6−テトラ−O−ガロイル−β−D−グルコシド、ヒペリン、クエルセチン、3,4−レゾルシン酸、ルテオリンおよびアピゲニンからなる群から選択されることを特徴とする請求項6に記載の方法。

【公表番号】特表2007−526261(P2007−526261A)
【公表日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−501095(P2007−501095)
【出願日】平成16年3月4日(2004.3.4)
【国際出願番号】PCT/CN2004/000173
【国際公開番号】WO2005/084662
【国際公開日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(899000057)学校法人日本大学 (650)
【出願人】(506300202)
【Fターム(参考)】