説明

現像ローラ、プロセスカートリッジおよび電子写真画像形成装置

【課題】低硬度で、耐磨耗性に優れ、かつ他部材への汚染性が低い現像ローラを提供する。
【解決手段】軸芯体11と、軸芯体の外周面に弾性層12を有する現像ローラ1であって、該弾性層が、式(1)の構造を有する重量平均分子量が3.5×103以上1.1×104以下のエステル系ジオールと、イソシアネートとを、該エステル系ジオールの〔OH〕モル数が該イソシアネートの〔NCO〕モル数より過剰となるように混合しウレタン化した化合物を含む:


(式(1)において、X+Yは2以上の整数。Xは1以上の整数。Yは0以上の整数。R1は炭素数1以上3以下のアルキル基、Zは4以上8以下の整数、mは1以上の整数を表す。)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像ローラ、プロセスカートリッジおよび電子写真画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真画像形成装置に用いられる現像ローラは、潜像担持体と所定の接触幅をもって圧接され、また、表面に現像剤の薄層を形成するために現像剤量規制ブレードが当接されている。そのため、現像ローラには、柔軟かつ耐磨耗性に優れた表面を有することが求められている。強度に優れるという観点から、特許文献1では、現像ローラの弾性層の構成材料として特定構造のポリエステル系ポリオールを原料に用いたポリウレタンを用いることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−59739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らが特許文献1に記載の発明について検討したところ、特許文献1に係るポリエステル系ポリオールを用いたポリエステル系ウレタンは耐磨耗性に優れているものの、柔軟性が不十分であるとの認識を得た。ここで、柔軟性を向上させるためには可塑剤等の添加が考えられるが、一般に、弾性層中に添加された可塑剤は現像ローラ表面にブリードし、現像ローラに当接している他の部材を汚染することがある。
そこで、本発明の目的は、柔軟で、耐磨耗性に優れ、かつ、当接している他の部材を汚染し難い現像ローラの提供にある。
また、本発明の他の目的は、高品位な電子写真画像を形成することのできるプロセスカートリッジおよび電子写真画像形成装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、軸芯体および弾性層を有し、該弾性層はポリウレタンを含み、該ポリウレタンは、下記式(1)で示される、重量平均分子量が3.5×10以上、1.1×10以下のエステル系ジオールと、イソシアネートとを、該エステル系ジオールの〔OH〕モル数が該イソシアネートの〔NCO〕モル数より過剰となるように混合し、反応させることによって形成されたものである現像ローラが提供される:
【0006】
【化1】

【0007】
(式(1)においてR1は炭素数1以上3以下のアルキル基を示す。また、Xは1以上の整数を示し、Yは0または1以上の整数を表す。Zは4以上8以下の整数を表し、mは1以上の整数を表す。)。
また、本発明によれば、現像ローラと、該現像ローラの表面に当接配置された現像剤量規制ブレードとを備え、電子写真装置の本体に着脱可能に構成され、該現像ローラが上記の現像ローラであるプロセスカートリッジが提供される。
更に、本発明によれば、静電潜像を担持可能な潜像担持体、現像ローラおよび該現像ローラの表面に当接配置された現像剤量規制ブレードを備え、該現像ローラが上記の現像ローラである電子写真画像形成装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、低硬度で耐磨耗性に優れ、かつ当接している他の部材への汚染性の低い現像ローラ、該現像ローラを有するプロセスカートリッジ、及び画像形成装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の現像ローラの斜視図である。
【図2】本発明の現像ローラの軸芯体に直交する面での断面図である。
【図3】本発明の現像装置を用いた画像形成装置の模式図である。
【図4】本発明のプロセスカートリッジの模式図である。
【図5】画像評価に用いた、標準チャートの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明をより詳細に説明する。
本発明の現像ローラは、軸心体11の外周面に弾性層12を有している。
本発明の現像ローラにおいて、弾性層12は、式(1)の構造を有する重量平均分子量が3.5×103以上1.1×104以下のエステル系ジオールと、イソシアネートとを、該エステル系ジオールの〔OH〕モル数が該イソシアネートの〔NCO〕モル数より過剰となるように混合しウレタン化することにより、架橋構造になっている。
【0011】
【化1】

(式(1)においてR1は炭素数1以上3以下のアルキル基を示す。また、Xは1以上の整数を示し、Yは0または1以上の整数を表す。Zは4以上8以下の整数を表し、mは1以上の整数を表す。)。
【0012】
前記架橋構造は、架橋点間分子量が大きな網目を形成し、適度な運動性を持つ。また、弾性層中に過剰に残存することとなるエステル系ジオールは、弾性層を柔軟化させると十に、前記架橋構造との相互作用により、弾性層中に安定して存在することができる。その結果、エステル系ジオールは弾性層の表面にブリードしにくくなる。
【0013】
<軸芯体>
上記作用を発現する、本発明の構成を説明する。
軸芯体11は、現像ローラの支持部材であると共に、同時に電極として機能するものである。軸芯体11の構成材料の例としては、アルミニウム、銅合金、ステンレス鋼の如き金属などを挙げられる。
【0014】
<エステル系ジオールの製造>
上記式(1)で示される構造を有するエステル系ジオールは、原料ジオールとニ塩基酸の脱水縮合により得られる。原料ジオールとしては、下記式(2)で示される構造を有するものを用いる。
【0015】
【化2】

【0016】
式(2)において、Xは1以上の整数を示し、Yは0以上の整数を示す。また、R1は、炭素数1以上3以下のアルキル基を示す。Xを付した構造と、Yを付した構造の順序はランダムでよい。
【0017】
この原料ジオールは、両末端に第一級アルコールを有しており、第二級、第三級アルコールである場合と比較して立体障害が少ないため、反応性が高く、脱水縮合して得られるエステル系ジオールの分子量を大きくすることができる。また、主鎖の炭素数が4以上であるため、アルキル鎖に適度な運動性があり、脱水縮合して得られるエステル系ジオールを高分子量とした場合にも、低硬度なウレタン化化合物を得ることができる。さらに、炭素数が1以上3以下のアルキル基の側鎖R1を1つ以上持つことにより、二塩基酸との縮合反応が安定し、エステル系ジオールにおいて結晶性が小さく、低硬度なウレタン化化合物を得ることができる。
【0018】
このような構造を持つ原料ジオールとしては、2−メチル−1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−エチル−1,5−ペンタンジオール、3−プロピル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,6−ヘキサンジオール、3−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,7−ヘプタンジオール、4−プロピル−1,7−ヘプタンジオール、3,5−ジメチル−1,7−ヘプタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール等が挙げられる。
【0019】
これらの原料ジオールは、単独で使用しても良く、または、2種以上を混合して使用してもよい。これらの中でも、二塩基酸との脱水縮合により得られるエステル系ジオール及びこれをウレタン化した化合物をより低硬度なものとする観点から、主鎖の炭素数が5以上(X+Yが3以上)であるものがより好ましい。
ニ塩基酸としては、式(3)の構造を持つものを用いる。
【0020】
【化3】

【0021】
式(3)において、Zは、4以上8以下の整数である。
Zが4以上のものを用いることにより、Zが3以下のものや芳香族のジカルボン酸を用いる場合と比較して炭素鎖部分が適度な運動性を持ち、原料ジオールの持つ分子鎖の運動性を損なうことがなく、低硬度のウレタン化化合物を得ることが出来る。また、Zが8以下のものを用いることにより、Zが9以上のものを用いる場合と比較して炭素鎖の運動性を抑えることができ、エステル系ジオールの結晶性を低くすることが出来る。これにより、低硬度のウレタン化化合物を得ることが出来る。このような構造を持つニ塩基酸としては、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等が挙げられる。
【0022】
上記の式(2)に示す原料ジオールと式(3)に示すニ塩基酸の脱水縮合により式(1)の構造を有するエステル系ジオールを得ることが出来る。その製法としては、公知の方法を適宜用いることが出来る。例えば、原料ジオールとニ塩基酸とを混合し、175℃にて12時間反応させた後、10mmHg減圧下、210℃にて12時間反応させることにより、縮合重合されたエステル系ジオールを得る。
【0023】
本発明において、式(1)の構造を有するエステル系ジオールの重量平均分子量は3.5×103以上1.1×104以下であることが必要である。また、本発明において、エステル系ジオールの〔OH〕モル数を、イソシアネートの〔NCO〕モル数より過剰となるように混合する必要がある。ウレタン架橋物において、エステル系ジオールの〔OH〕モル数をイソシアネートの〔NCO〕モル数より過剰となるように混合した場合、エステル系ジオールの水酸基の一方が未反応で残るものが存在することにより、架橋点から分子鎖が伸びた構造となる。このような構造は、運動性を持ちつつ架橋物に繋がっているため、未反応で残ったエステル系ジオールと相互作用することにより、軟化作用及びブリード抑制効果を発揮するのだと考えられる。
【0024】
式(1)の構造を有するエステル系ジオールの重量平均分子量が3.5×103以上である場合、分子運動性よりも、ウレタン架橋物の末端の水酸基との相互作用を強くして、未反応で残ったエステル系ジオールを弾性層中に安定して存在させることが出来る。すなわち、現像ローラとして構成した場合に、エステル系ジオールのブリードを抑制することが可能となる。重量平均分子量が6.0×103以上である場合には、より安定して存在させることが出来るため、より好ましい。
式(1)の構造を有するエステル系ジオールの重量平均分子量は1.1×104以下である場合、未反応で残ったエステル系ジオールが、弾性層中で軟化作用を示す。
以上を考慮すると、式(1)の構造を有するエステル系ジオールの重量平均分子量は、3.5×103以上1.1×104以下であることが必要で、6.0×103以上1.1×104以下であることがより好ましい。
重量平均分子量の測定方法を以下に示す。
【0025】
〔重量平均分子量〕
GPCカラム「TSKgel SurperHM−M」(商品名、東ソー株式会社製)2本を直列につないだ高速液体クロマトグラフ分析装置「HLC−8120GPC」(商品名、東ソー株式会社製)を用いた。溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)、温度40℃、流速0.6ml/min、RI(屈折率)の測定条件下において、測定サンプルを0.1質量%のTHF溶液として測定した。単分散標準ポリスチレン(東ソー株式会社製)を用いて作成した検量線を基に得られた測定サンプルの保持時間から重量平均分子量を求めた。
【0026】
式(1)の構造を有するエステル系ジオールとともに用いられるイソシアネートとしては、単独または混合物としてのイソシアネートの官能基数が2より大きいものを用いることができる。具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、粗製MDI、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、粗製TDI、2,4−トリレンジイソシアネートウレチジンジオン(2,4−TDIの二量体)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、メタフェニレンジイソシアネート(MPDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)、3,3−ジメチルジフェニル−4,4’−ジイソシアネート(TODI)、トリフェニルメタン−4,4’,4”−トリイソシアネート等が挙げられる。
【0027】
また、上述のイソシアネートの変性体である、ビュレット体、イソシアヌレート体、アダクト体、部分的にポリオール類と反応させて得られるプレポリマーを用いることが出来る。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
これらの中でも、脂肪族系のイソシアネートであるヘキサメチレンジイソシアネート、そのビュレット体、イソシアヌレート体、アダクト体が好適に用いられる。本発明のエステル系ジオールは官能基数が2であるため、反応させるイソシアネートの平均官能基数は、2.5以上であることが好ましい。この観点から、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、及びアダクト体が、より好適に用いられる。
ヘキサメチレンジイソシアネート、及びその変性体を用いた場合には、より低硬度とすることが出来る。
【0028】
エステル系ジオールとイソシアネートの配合割合は、該エステル系ジオールの〔OH〕モル数が該イソシアネートの〔NCO〕モル数より過剰となることが必要で、所望とする硬度に合せて、適宜配合比を決めることが出来る。低硬度と耐磨耗性とのバランスの観点からは、〔NCO〕/〔OH〕比が0.50以上0.85以下であることが好ましい。〔NCO〕/〔OH〕比が0.50以上である場合には、エステル系ウレタン架橋物の量が一定以上となるため、弾性層表面の耐磨耗性に優れたものとなる。ここで、エステル系ウレタン架橋物とは、エステル系ジオールとイソシアネートを混合しウレタン化した化合物中の架橋成分を意味する。〔NCO〕/〔OH〕比が0.85以下である場合には、過剰となり余ったエステル系ジオールを、弾性層全体に分散させることが可能であり、低硬度で、かつ硬度ムラの少ない弾性層を得られる。
【0029】
(水酸基価の測定)
水酸基価は、JIS K 1557−1:2007「プラスチック―ポリウレタン原料ポリオール試験方法―第1部:水酸基価の求め方」に準拠して求められる。
【0030】
(NCO%の測定)
NCO%の測定方法は、JIS
K1603−1:2007「プラスチック―ポリウレタン原料芳香族イソシアネート試験方法―第1部:イソシアネート基含有率の求め方」に準拠して求められる。
【0031】
<弾性層>
本発明の弾性層12のエステル系ジオールと、イソシアネートとを混合しウレタン化した化合物は、単独で用いても良く、他のゴムや樹脂とブレンドしてもよい。その利点を十分に得るには、弾性層に対して、ウレタン化した化合物が、60質量%以上、含有されているものが好ましい。
弾性層12には、エステル系ジオールとイソシアネートの他に、導電性付与剤を必須成分とし、適宜配合して用いる。
弾性層12には、必要に応じて、触媒、界面活性剤、難燃剤、着色剤、非導電性充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、離型剤、奪水剤、抗菌剤等を適宜配合して用いることが可能である。
【0032】
弾性層12の厚さに特に制限はないが、0.5mm以上6.0mm以下がより好ましく、1.0mm以上5.0mm以下がさらに好ましい。
弾性層12の硬度(Asker−C)は、現像ローラとして測定した時に、通常、10°以上60°以下が好ましい。現像ローラの硬度は、弾性層の厚みや、現像ローラ自体の外径にもよるが、弾性層12の硬度(Asker−C)が、10°以上では、適当なゴム弾性が得られ易く、一方、60°以下では、適切なニップ幅を得られ易い。より好ましくは、弾性層を形成するゴム成型体の硬度(Asker−C)は、15°以上50°以下の範囲に選択することが好ましい。
【0033】
(Asker−Cの測定)
日本ゴム協会標準規格SRIS0101に準拠したAsker−C型スプリング式ゴム硬度計(高分子計器株式会社社製)を用いる。温度23℃、相対湿度50%RH環境下に5時間以上放置した現像ローラに対して、長手方向のローラの中心に上記硬度計を1kgの力で当接させてから30秒後の測定値とする。
【0034】
軸芯体11の外周面に弾性層12を形成する手段としては、制限はなく、適宜選択した手段が用いられる。例えば、エステル系ジオール、イソシアネートを含む混合液を、予め加熱された所定の成形用金型に注型し、熱処理して硬化させた後、脱型することにより製造することができる。
【0035】
以上説明したように、本発明の現像ローラは、低硬度で耐磨耗性に優れ、弾性層表面へのブリードが抑制される。
この利点から、プロセスカートリッジ、および画像形成装置における現像ローラとして用いた場合には、画像濃淡ムラが少なく、潜像担持体への汚染が抑制され、経時に渡って、継続的に、高品位な画像を得ることが可能である。
【0036】
次に、本発明のプロセスカートリッジ及び画像形成装置について説明する。
本発明のプロセスカートリッジは、少なくとも、本発明の現像ローラと、該現像ローラに担持されたトナーを摩擦帯電しながら該トナーの層厚を規制する規制部材とを備えている。潜像担持体と、該潜像担持体の表面を帯電する帯電装置は、前記プロセスカートリッジに一体となって備えられたものでも、画像形成装置本体に備えられたものでもよい。いずれの場合でも、現像ローラが、潜像担持体にトナーを付与することにより静電潜像を現像してトナー像を形成する。
【0037】
また、本発明の画像形成装置は、潜像担持体、帯電装置、静電潜像形成装置、現像装置及び転写装置を有している。
図3は、イエロー、シアン、マゼンタ及びブラックの各色の画像形成装置を備えたタンデム型のカラー画像形成装置の概略構成を示したものである。なお、各色の画像形成装置は色ごとの差異はあるものの基本構成は同じであるので、以下では一つの画像形成装置について説明する。
【0038】
図3に示した画像形成装置は、潜像担持体としての感光ドラム21、帯電装置としての帯電部材26、静電潜像形成装置(不図示)、現像装置2、転写装置としての転写ローラ31を有している。そして、図3に示した画像形成装置は、現像装置2として、本発明の現像ローラ1を備えている。図3に示した画像形成装置においては、感光ドラム21が矢印方向に回転し、感光ドラム21は帯電部材26によって一様に帯電され、露光手段であるレーザー光25により、感光ドラム21の表面に静電潜像が形成される。レーザー光25により形成された静電潜像は、感光ドラム21に対して接触配置される現像装置2によってトナーが付与されることにより現像され、トナー像が形成される。現像は、露光部にトナー像を形成する反転現像により行なわれる。感光ドラム21上のトナー像は、転写ローラ31によって転写紙36に転写される。トナー像を転写された転写紙36は、定着装置29により定着処理され、装置外に排出され、プリント動作が終了する。なお、転写紙36は、給紙ローラ37により送られ、吸着ローラ38(バイアス電源32より印加されている)により転写搬送ベルト34に吸着され、転写搬送ベルト34の移動により各カラートナー像の転写位置でトナー像が転写積層される。また、該搬送転写ベルト34は、駆動ローラ30、テンションローラ33及び従動ローラ35に掛けまわされおり、駆動ローラ30の回転により移動する。なお、従動ローラ35は吸着ローラ38に対して対ローラとなっている。さらに、フルカラーのトナー像を担持した転写紙36は、駆動ローラ30の近傍で剥離部材により転写搬送ベルト34から剥離され、定着装置29へ送られる。なお、本装置では感光ドラム21と転写ローラ31の間に転写搬送ベルト34が狭持されている。
【0039】
一方、転写されずに感光ドラム上21上に残存した転写残トナーは、クリーニングブレード28により掻き取られ廃トナー容器27に収納される。クリーニングされた感光ドラム21は上述作用を繰り返し行うために供される。
本発明のプロセスカートリッジの実施形態の一例の説明図を図4に示す。図4に示したプロセスカートリッジは、非磁性トナー23を収容した現像容器と、トナー担持体としての現像ローラ1と、規制ブレード24を備えている。本発明のプロセスカートリッジは、上記部材が一体的に保持されてなるものであり、画像形成装置に着脱可能に設けられる。なお、画像形成時には、現像ローラ1は感光ドラム21と接触幅をもって接触している。現像装置2においては、トナー塗布部材22が、現像容器内で、トナーの層厚を規制する部材である規制ブレード24の現像ローラ1表面との接触部に対し現像ローラ1の回転方向上流側に接触され、かつ、回転可能に支持されている。トナー塗布部材22の構造としては、発泡骨格状スポンジ構造や軸芯体上にレーヨン、ポリアミドの如き繊維を植毛したファーブラシ構造のものが、現像ローラ1へのトナー23の供給及び未現像トナーの剥ぎ取りの点から好ましい。具体的には、軸芯体上にポリウレタンフォームを設けた直径16mmの弾性ローラをトナー塗布部材22として用いることができる。このトナー塗布部材22の現像ローラ1に対する接触幅としては、1mm以上8mm以下が好ましく、また、現像ローラ1に対してその接触部において相対速度をもたせることが好ましい。
【0040】
本発明のプロセスカートリッジは、感光ドラム21と、帯電部材26、クリーニング部材、転写ローラ31のうちの少なくとも一つを有しているものであってもよい。
図3に示すカラー画像形成装置では転写ベルト34が存在するために転写ローラ31を組み込んだプロセスカートリッジとすることはできないが、モノカラー画像形成装置では感光ドラム21等と一体としたプロセスカートリッジとすることが可能である。
【実施例】
【0041】
以下に、実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。実施例に示す手法で作製される現像ローラは、その用途において、電子写真装置等で使用される現像ローラとして好適に使用できる。
【0042】
実施例、比較例に用いるエステル系ジオール1〜39と、式(1)中のX、Y、Zの値、及び重量平均分子量を表1に示す。
【0043】
【表1】

表1中の原料ジオールA〜I、ニ塩基酸J〜Mは以下である。
・原料ジオールA;3−メチル−1,5−ペンタンジオール
・原料ジオールB;2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール
・原料ジオールC;3−プロピル−1,5−ペンタンジオール
・原料ジオールD;3,5−ジメチル−1,7−ヘプタンジオール
・原料ジオールE;2−メチル−1,8−オクタンジオール
・原料ジオールF;2−メチル−1,4−ブタンジオール
・原料ジオールG;2−メチル−1,3−プロパンジオール
・原料ジオールH;1,4−ブタンジオール
・原料ジオールI;1,8−オクタンジオール
・ニ塩基酸J; アジピン酸
・ニ塩基酸K; スベリン酸
・ニ塩基酸L; アゼライン酸
・ニ塩基酸M; セバシン酸
・ニ塩基酸N; コハク酸
・ニ塩基酸O; グルタル酸
・ニ塩基酸P; テレフタル酸
【0044】
実施例、比較例に用いたイソシアネートを、表2に示す。
【0045】
【表2】

【0046】
その他、実施例、比較例に用いた材料を表3に示す。
【0047】
【表3】

【0048】
<エステル系ジオール1の製造例>
表4に記載の材料を混合し、175℃にて12時間反応させた後、10mmHg減圧下、210℃にて12時間反応させることにより、縮合重合されたエステル系ジオール1を得た。
【0049】
【表4】

【0050】
<エステル系ジオール2〜39の製造>
エステル系ジオール2〜39は、エステル系ジオール1の製造例に準じて、表1に示した原料ジオールとニ塩基酸を用いて製造した。
【0051】
[実施例1]
<現像ローラ1の製造>
軸芯体としてニッケル鍍金を施したSUS製の直径6mm、長さ279mmの芯金の外周面に、さらに表3に記載のプライマーを塗布し、温度150℃で10分間焼き付けしたものを用いた。
【0052】
表5に記載の材料を順に混合攪拌し、混合物を作成した。
【0053】
【表5】

【0054】
上記混合物を、上記軸芯体が配置された120℃に予熱された金型に注入し、120℃にて75分間加熱することにより硬化した。金型を温度40℃以下に冷却した後、脱型し、両端部を除く芯金表面に、厚さ3.0mm、長さ235mmの弾性層が形成された現像ローラ1を作製した。
【0055】
[実施例2]
<現像ローラ2の作製>
第四級アンモニウム塩に代えて、カーボンブラック15質量部を使用した以外は、実施例1と同様にして、現像ローラ2を作製した。なお、エステル系ジオールにカーボンブラックを混合する作業は、3本ロールを用いて行った。
【0056】
[実施例3〜12、14〜42、44〜50]
<現像ローラ3〜12、14〜42、44〜50の作製>
表6、表7に示すエステル系ジオール、イソシアネートを、表記の質量部で使用した以外は、実施例1と同様にして、現像ローラ3〜12、14〜42、44〜50を作製した。
【0057】
[実施例13、43]
<現像ローラ13、43の作製>
表6、表7に示すエステル系ジオール、イソシアネートを、表記の質量部で使用した以外は、実施例2と同様にして、現像ローラ13、43を作製した。
【0058】
【表6】

【0059】
【表7】

【0060】
[比較例1〜22]
<現像ローラ51〜72の作製>
表8に示すエステル系ジオール、イソシアネートを、表記の質量部で使用した以外は、実施例1と同様にして、現像ローラ51〜72を作製した。
【0061】
【表8】

【0062】
次に、現像ローラの特性値の測定方法、評価方法について説明する。
〔硬度(ニップ巾)〕
直径30mmの曲面を有する長さ300mmの半円柱状のガラスを用いて、現像ローラの軸芯体に対し片側350g(計700g)の荷重をかけて、直径30mmの曲面に圧接した時のニップ巾を反対側からマイクロスコープにてその状態を観察した。評価結果を表9に示す。なお、測定する現像ローラは温度25℃、相対湿度50%RHの環境下に5時間以上放置した上で、25℃、相対湿度50%RH環境下にて測定を行った。
【0063】
【表9】

【0064】
〔潜像担持体の汚染性〕
「トナーカートリッジ311(シアン)」(商品名、キヤノン株式会社製)に現像ローラを組み込み、温度25℃±2℃、相対湿度60%RH±5%の環境試験機内に30日間、及び180日間放置した。その後に、カートリッジを分解し、潜像担持体表面上への付着の有無を目視で観察し、表10のように評価した。カートリッジへの現像ローラの組み込み、分解、観察は、温度20℃±2℃、相対湿度50%RH±5%の環境下にて行った。
【0065】
【表10】

【0066】
<画像評価>
電子写真画像形成装置として、カラーレーザービームプリンター「Satera LBP5400」(商品名、キヤノン社製)を用意した。このカラーレーザービームプリンターは、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックのカラーカートリッジを備え、各カートリッジに対し、画像書き込み手段(レーザービーム)が設けられ、転写ベルトを備えたタンデム型である。尚、標準の画像作成能力はA4サイズで21枚/分である。
【0067】
上記カラーカートリッジは、感光ドラム、帯電ローラ、現像ローラ、トナー供給ローラ規制ブレードが設けられ(一成分接触現像方式対応)、現像ローラは感光ドラムに当接して配置されている。さらに、前記カラーカートリッジには、感光ドラムに当接して、クリーニングブレードが設けられている。上記カラーレーザービームプリンターは、帯電ローラによる帯電前に感光ドラム上に残る帯電を除去するための前露光手段を備えている。
シアンカラーカートリッジの現像ローラとして、現像ローラ1〜72をそれぞれ組み込んだ。また、マゼンタ、イエローおよびブラックの各カラーカートリッジは、トナーを抜き取り、さらにトナー残量検知機構を無効として、それぞれのステーションに配置した。
【0068】
上記各カラーカートリッジをカラーレーザービームプリンターに装着し、温度25℃±2℃、相対湿度50%RH±5%の環境下で、図6に示す標準チャートの印字画像、全面ベタ画像及び全面ハーフトーン画像を、表11に記載の順序で連続出力した。標準チャートとしては、LETTERサイズに、ベタ黒部6ヶ所と、Sの文字を配置し、印字比率を4%としたものを用いた。なお、転写材としては、A4サイズの普通紙「セレクトペーパー SC−250 A4」(商品名、キヤノン株式会社製)を用いた。
【0069】
【表11】

【0070】
[画像濃淡ムラ]
画像領域全体が一様であるベタ画像(11枚目に出力)及びハーフトーン画像(12枚目に出力)に表れる、現像ローラ周期で発生する濃淡ムラの有無を目視により観察し、表12に記載の基準で評価した。
【0071】
【表12】

【0072】
[経時の画像における縦スジ]
画像領域全体が一様であるベタ画像(1201枚目に出力)及びハーフトーン画像(1202枚目に出力)に表れる縦スジを観察し、表13に記載の基準で評価した。ここでいう縦スジとは、規制部材による当接や、異物の挟み込み等により、現像ローラ表面の一部が周方向に削れ、規制部材によるトナーコートが不均一となり、画像出力方向に濃淡ムラがスジ状に繋がるものである。
【0073】
【表13】

【0074】
実施例1〜50の評価の結果を表14に、比較例1〜22の結果を表15に示す。
【0075】
【表14】

【0076】
【表15】

【0077】
実施例1〜50は、いずれも、低硬度で、体磨耗性に優れ、他部材の汚染性に問題のない現像ローラであり、かつ現像ローラとしてのニップ巾や、初期画像における濃淡ムラも良好であった。その中でも、実施例7,8,22,23,26は、より良好であった。
【符号の説明】
【0078】
1 現像ローラ
11 軸芯体
12 弾性層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸芯体および弾性層を有する現像ローラであって、該弾性層はポリウレタンを含み、
該ポリウレタンは、下記式(1)で示される、重量平均分子量が3.5×10以上、1.1×10以下のエステル系ジオールと、イソシアネートとを、該エステル系ジオールの〔OH〕モル数が該イソシアネートの〔NCO〕モル数より過剰となるように混合し、反応させることによって形成されたものであることを特徴とする現像ローラ:
【化1】

(式(1)においてR1は炭素数1以上3以下のアルキル基を示す。また、Xは1以上の整数を示し、Yは0または1以上の整数を表す。Zは4以上8以下の整数を表し、mは1以上の整数を表す。)。
【請求項2】
前記式(1)の、X+Yは3以上の整数であり、前記エステル系ジオールの〔OH〕モル数と前記イソシアネートの〔NCO〕モル数の[NCO]/[OH]比が0.50以上0.85以下であることを特徴とする請求項1に記載の現像ローラ。
【請求項3】
前記イソシアネートが、ヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト変性体、または、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体のいずれか一つ以上の構造を有する変性体であることを特徴とする請求項1または2に記載の現像ローラ。
【請求項4】
現像ローラと、該現像ローラの表面に当接配置された現像剤量規制ブレードとを備え、電子写真装置の本体に着脱可能に構成されているプロセスカートリッジであって、
該現像ローラが請求項1乃至3のいずれか1項に記載の現像ローラであることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項5】
静電潜像を担持可能な潜像担持体、現像ローラおよび該現像ローラの表面に当接配置された現像剤量規制ブレードを備えている電子写真画像形成装置であって、
該現像ローラが請求項1乃至3のいずれか1項に記載の現像ローラであることを特徴とする電子写真画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−3457(P2013−3457A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136471(P2011−136471)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】