説明

現像ローラ、電子写真現像装置及び電子写真画像形成装置

【課題】低温低湿な環境下で長期間にわたり画像印字した場合にも、かぶりが発生することが無く、良好な画像を得ることができる現像ローラ、電子写真現像装置及び電子写真画像形成装置を提供する。
【解決手段】軸芯体と、表面層とを有する現像ローラであって、該表面層が、アセン化合物と電子導電性フィラーとを含有していることを特徴とする現像ローラ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像ローラ、電子写真現像装置および電子写真画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンター等のOA機器は高画質化が進んでおり、それに伴い現像ローラとして弾性体を用い、感光体に均一に圧接して現像を行う接触現像方式が提案されている。
接触現像方式では、現像剤であるトナーが摩擦により電荷を帯びると考えられている。電荷を帯びたトナーは現像ローラ上から感光体上の静電潜像に現像されることによりトナー像を形成し、このトナー像が複写紙上に転写定着されることにより画像形成が行なわれる。
【0003】
低温低湿環境において画像形成を行った場合、トナーの帯電量が過大となり、感光体上の静電潜像を適正に現像することが難しくなることがある。
また、近年の電子写真画像形成装置のプロセススピードの高速化に伴って、トナーの消費量が増加し、必要な電荷をトナーに与えるため現像ローラを高速で回転しトナーと周擦させて摩擦帯電をおこなうプロセスが増加しており、今後もさらに高速化が進むと考えられる。しかし、印字率が少ない場合は現像ローラ上のトナーは帯電量が過剰となり、静電潜像以外にトナーが移行してしまう、いわゆるかぶりと呼ばれる画質低下を引き起こす場合がある。
また、過剰に帯電したトナーはローラ表面に静電的に強く付着し、現像ローラ上に留まったままストレスを受け続け融着を引き起こし、印字枚数増加に伴いかぶりを促進する原因となる。
【0004】
特許文献1には、トナーの電荷量を適度に保ち電荷量の分布を均一にするために、現像ローラの表面層に電子導電剤とイオン導電剤を併用することが開示されている。特許文献1に係る現像ローラにおいては、電子導電剤だけで抵抗調整をしたときに出現する微小な絶縁部分と導電性部分の電気的不均一性をイオン導電剤で補うことにより、電気的なムラを解消することができ適度なトナーの電荷分布が得られる。しかしながら、イオン導電剤の特徴として温湿度における導電性の変動が大きい。すなわち、低温低湿環境においては、高温高湿環境と比較すると導電性が低下する。
【0005】
また、イオン導電剤を用いずに電子導電剤の添加量を増量し現像ローラの導電性を引き上げて、トナーの電荷量を適度に保つことも考えられるが、電子導電剤の添加量を増量することにより現像ローラの硬度が上昇する。現像ローラの硬度の上昇は、トナーの劣化を促進することがある。
【0006】
そこで、本発明者らは、現像ローラの硬度を上昇させることなく低温低湿環境での導電性を向上することが必須であり、それにより、低温低湿環境での初期かぶり特性や多数枚印字後のかぶり特性を向上した現像ローラの開発が重要であるとの認識を得るに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−15403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本出願は、低温低湿な環境下で長期間にわたり画像印字した場合にも現像ローラ上のトナー融着によるかぶりが発生することが無く、良好な画像を得ることができる現像ローラ、電子写真現像装置及び電子写真画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、軸芯体と、表面層を有する現像ローラであって、該表面層が、下記化学式(1)で表される化合物、および下記化学式(2)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物と電子導電性フィラーとを含有している現像ローラが提供される:
【0010】
【化1】

【0011】
[上記式(1)において、l、mは0又は1を示し、A1乃至A10は各々独立に水素原子、炭素数1〜4の炭化水素基、メトキシ基、メトキシカルボニル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子からなる群から選ばれる何れかの元素を示し、R1乃至R4は各々独立に水素原子、炭素数1〜4の炭化水素基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子からなる群から選ばれる何れかの元素を示し、Yは、下記化学式(3)〜(8)で表される2価の基の何れかを示す。
【0012】
【化2】

【0013】
上記式(2)において、n、pは0又は1を示し、B1乃至B12は各々独立に水素原子、炭素数1〜4の炭化水素基、メトキシ基、メトキシカルボニル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子からなる群から選ばれる何れかの元素を示し、R5乃至R8は各々独立に水素原子、炭素数1〜4の炭化水素基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子からなる群から選ばれる何れかの元素を示す。]。
【0014】
また、本発明によれば、現像ローラ、トナー規制ブレード、および、トナー供給部材が一体化されており、かつ、電子写真画像形成装置の本体に着脱可能に構成されている電子写真現像装置において、該現像ローラが請求項1又は請求項2に記載の現像ローラである電子写真現像装置が提供される。
更に、本発明によれば、感光ドラムと、該感光ドラムに接触して配置されている現像ローラとを備えている電子写真画像形成装置において、該現像ローラが、請求項1又は請求項2に記載の現像ローラである電子写真画像形成装置が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、低温低湿の環境下で長期間にわたり画像印字した場合にも、表面にトナーが融着しにくい現像ローラを得ることができる。
また、本発明によれば、高品位の画像を安定して形成することができる電子写真現像装置および電子写真画像形成装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の現像ローラの断面図。
【図2】本発明の現像ローラを搭載したカラー電子写真画像形成装置の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の現像ローラは、軸芯体と特定の材料を含有する表面層により構成されるものである。図1に、導電性材料で形成される軸芯体2の外周面上に弾性層3を有し、さらにその外周面上に表面層4を積層したものを示す。
【0018】
<表面層4>
表面層は、下記化学式(1)で表される化合物、および下記化学式(2)で表される化合物からなる群から選ばれる、少なくとも1つのアセン化合物と電子導電性フィラーとを含有する。
【0019】
【化3】

【0020】
上記式(1)において、l、mは0又は1を示し、A1乃至A10は各々独立に水素原子、炭素数1〜4の炭化水素基、メトキシ基、メトキシカルボニル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子からなる群から選ばれる何れかの元素を示し、R1乃至R4は各々独立に水素原子、炭素数1〜4の炭化水素基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子からなる群から選ばれる何れかの元素を示し、Yは、下記化学式(3)〜(8)で表される2価の基の何れかを示す。
【0021】
【化4】

【0022】
上記式(2)において、n、pは0又は1を示し、B1乃至B12は各々独立に水素原子、炭素数1〜4の炭化水素基、メトキシ基、メトキシカルボニル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子からなる群から選ばれる何れかの元素を示し、R5乃至R8は各々独立に水素原子、炭素数1〜4の炭化水素基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子からなる群から選ばれる何れかの元素を示す。
【0023】
本発明においては、上記化学式(1)で表されるアセン化合物、および上記化学式(2)で表されるアセン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つのアセン化合物と電子導電性フィラーをバインダー中に存在させることにより、表面層の硬度上昇を抑制したうえで導電性の向上が得られることを見出した。
【0024】
従来のように、バインダー中に電子導電性フィラーを分散したものにおいては、フィラーの分散状態により導電性が変化する。通常、電子導電機構による導電化は導電性フィラーが特定濃度以上で凝集し、系全体にわたりフィラーの繋がりが形成されて導電性を発現するものである。しかし、フィラーの凝集体による繋がりが不完全な場合は、フィラーの微小空間において、トンネル電流が発生することにより導電性を発現している。このようにトンネル電流の流れる系では比較的小さな電圧では充分な導電性を持つことが難しいとされていたが、本発明に係るアセン化合物を電子導電性フィラーと混在させることで比較的小さな電圧でも導電性を向上することができた。これはアセン化合物の分子配向したものが、電子導電性フィラーの凝集体が形成するナノメートルオーダーの微小な間隔に入り込むことによって導電経路を形成し導電性が向上しているものと推察される。この時、効果的なアセン化合物はベンゼン環が4つ以上並ぶ構造をもつものであり、それらが直線的に配列することにより効果を発揮していると推察される。
【0025】
アセン化合物の添加量は、電子導電性フィラーの添加量に対して2質量%乃至20質量%であることが好ましい。アセン化合物の添加量が2質量%以上であると充分な導電性を引き出すことができ、20質量%以下であると系全体の硬度を上昇させることがない。
表面層に含まれる電子導電性フィラーとしては、カーボンブラック、天然グラファイトおよび人造グラファイトの如き導電性としたグラファイトや、導電性を持たせた金属酸化物や、ニッケル、銅、銀およびゲルマニウムの如き金属を用いることもできる。なかでも、ベンゼン環を2次元平面に敷き詰めた縮合芳香族環シート状の構造をもつカーボンブラックやグラファイトが好ましく用いられる。これはアセン化合物がカーボンブラックやグラファイトの縮合芳香族環構造の影響でアセン分子の配向性をより一層強め、それによって導電性を引き出しているものと推察される。
【0026】
本発明においてカーボンブラックの添加量は主成分であるバインダーポリマー100質量部に対して、5質量部乃至30質量部であることが好ましい。5質量部未満であると均一に分散することが難しくなり、硬度のばらつきが発生しやすくなる。30質量部よりも多いと弾性層の硬度が上昇してしまうため他部材へのストレスが大きくなり、長期間経過後に画像弊害を発生する要因となりやすい。
【0027】
表面層のバインダーとしては、ゴムや樹脂などの高分子化合物が用いられる。ゴムとしては、具体的には、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)、アクリルニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、NBRの水素化物、多硫化ゴム、ウレタンゴムが挙げられる。
【0028】
また、樹脂としては具体的には、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹脂、イミド樹脂、メラミン樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ナイロン樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン系樹脂、ABS樹脂、ポリイミド樹脂が挙げられる。そして、これらゴム及び樹脂は、単独であるいは2種以上を混合して用いられる。
【0029】
これらのうち耐摩耗性や柔軟性を有している樹脂を好ましく用いることができる。なかでも芳香族イソシアネートを使用したウレタンゴムまたは樹脂やメラミン骨格を持つ樹脂やフェノール樹脂、ポリスチレン樹脂などが、本発明の効果を引き出すのに最も好ましく用いられる。これはバインダー中で、バインダー樹脂がもつ芳香族環とアセン化合物とカーボンブラックがもつ芳香族環が分子配向を強めあうことにより、導電性が向上していると推察することができる。
【0030】
表面層の膜厚は1μm 〜50μm程度であることが現像ローラとして好ましく用いられる。
また、表面層4にはローラ表面の粗さ制御のために微粒子を添加してもよい。粗さ制御用微粒子としては、体積平均粒径が8〜30μmであることが好ましい。また、樹脂層に添加する粒子添加量が、樹脂層の樹脂固形分100.0質量部に対し、1.0〜50.0質量部であることが好ましい。
【0031】
<軸芯体2>
本発明に用いる軸芯体について説明する。
軸芯体2は、本図では円柱状であるが、前記軸芯体は中空円筒状であってもよい。 現像ローラ1は、一般的に、電気的なバイアスを印加又は接地されて使用される。そこで、軸芯体2は、支持部材であると共に、導電材として少なくとも表面が導電性であるものが用いられる。
【0032】
<弾性層3>
本発明において弾性層3は必須の構成ではないが、現像ローラとして機能を付加する場合には好適に用いられる。ゴム又は樹脂による高分子化合物を主成分として、導電性材料や添加剤などを含有したもので構成されている。原料主成分のゴムや樹脂としては、表面層を構成するゴムや樹脂として例示したものが挙げられる。
弾性層の厚みは0.5mm 〜4mm程度であることが現像ローラとして好ましく用いられる。
弾性層3には、導電性を付与するために導電性付与剤が含有されることが好ましい。導電性付与剤としては、種々のものを用いることが出来るが、とくにカーボンブラックを好ましく用いることができる。カーボンブラックの弾性層中の含有量は、導電性弾性層を形成する基体ゴム100.0質量部に対して、0.5〜50.0質量部であることが、現像ローラとしての導電性を好ましい範囲にすることができるため好ましい。また、弾性層3には所望の機械特性を損なわない範囲で可塑剤や充填剤を添加してもよい。
【0033】
上記本発明の現像ローラは、電子写真画像形成装置の現像ローラとして、また、プロセスカートリッジタイプの電子写真画像形成装置においてはプロセスカートリッジの現像ローラとして有用である。本発明の現像ローラを搭載した電子写真プロセスカートリッジ及び電子写真画像形成装置の模式図を図2に示した。なお、この電子写真画像形成装置は、それぞれイエロー、シアン、マゼンタ及びブラックの画像を形成する画像形成ユニット10a乃至10dが4個あり、タンデム方式で設けられている。そして、感光ドラム11、感光ドラム11に接触して配置されている帯電装置12(帯電ローラ)、露光光13を照射する画像露光装置、現像装置14、クリーニング装置15、画像転写装置16(転写ローラ)を有する構造になっている。また、感光ドラム11、帯電装置12、現像装置14及びクリーニング装置15が一体となったプロセスカートリッジによる構造であっても構わない。さらに、現像装置14は個別に着脱可能なカートリッジタイプのものでもよい。
【0034】
現像装置14には、一成分トナー5を収容した現像容器6と、現像容器6内の長手方向に延在する開口部に位置し、感光ドラム11と対向設置された現像ローラ1とを備え、感光ドラム11上の静電潜像を現像して可視化するようになっている。更に、現像ローラ1に一成分トナー5を供給すると共に現像に使用されずに現像ローラ1に担持された一成分トナー5を掻き取るトナー供給ローラ7及び現像ローラ1上の一成分トナー5の担持量を規制すると共に摩擦帯電する現像ブレード8が設けられている。
【0035】
ここで用いるトナーとしては、一般的にキヤリアをもたない一成分トナーであり、粉砕により得られたトナーや重合法により得られたより球形度の高いものが用いられる。本発明においては、重合法により得られた体積平均粒子径約6μm 程度、平均円形度(S)が、0.960≦S≦1.000のものが好ましく用いられる。トナー粒子の平均円形度は、完全なる球形の場合、1.000であり、表面形状が複雑になる程、円形度は小さい値となる。
【0036】
現像ブレード8には、金属に樹脂を被覆した樹脂ブレード、金属単体の金属ブレード、チューブからなるチューブブレード等が挙げられるが、本発明では金属ブレードを好ましく用いる。
感光ドラム11の表面が帯電装置12により所定の極性・電位に一様に帯電され、画像情報が画像露光装置(不図示)から露光光13として、帯電された感光ドラム11の表面に照射され、静電潜像が形成される。次いで、形成された静電潜像上に本発明の現像ローラを現像ローラ1とする現像装置14から一成分トナーが層状に供給され、感光ドラム11表面上にトナー像が形成され、静電潜像が可視画像化される。このトナー像は感光ドラム11の回転に伴って、画像転写装置16と対向する場所に来たときにその回転と同期して供給されてきた紙等の転写材25に転写される。
【0037】
なお、本図では4つの画像形成ユニット10a乃至10dが一連に連動して所定の色画像を1つの転写材25上に重ねて形成されている。したがって、転写材25をそれぞれの画像形成ユニットの画像形成と同期させる、つまり、画像形成が転写材25の挿入と同期している。そのために、転写材25を輸送するための転写搬送ベルト17が感光ドラム11と画像転写装置16との間に挟まれるように、転写搬送ベルト17の駆動ローラ18、テンションローラ19及び従動ローラ20に架けまわされている。また、転写材25は転写搬送ベルト17に吸着ローラ21の働きにより静電的に吸着された形で搬送されている。なお、22は転写材25を供給するための供給ローラである。
【0038】
画像が形成された転写材25は、転写搬送ベルト17から剥離装置23の働きにより剥がされ、定着装置24に送られ、トナー像は転写材25に定着されて、印画が完了する。一方、トナー像の転写材25への転写が終わった感光ドラム11はさらに回転して、クリーニング装置15により感光ドラム11の表面がクリーニングされ、必要により除電装置(不図示)によって除電される。その後感光ドラム11は次の画像形成に供される。なお、図において、26、27はそれぞれ画像転写装置16、吸着ローラ21へのバイアス電源を示す。
【0039】
なお、ここでは、タンデム型の転写材上へ直接各色のトナー像を転写する装置で説明したが、現像ローラとして本発明の導電性ローラを使用する装置であればいずれでもよい。例えば、白黒の電子写真画像形成装置、中間転写ローラや中間転写ベルトに各色トナー像を重ねてカラー画像を形成後転写材へ一括して転写する電子写真画像形成装置、各色現像ユニットがロータ上に配置された電子写真画像形成装置、感光ドラムに並列して配置した電子写真画像形成装置等が挙げられる。また、プロセスカートリッジではなく、感光ドラム、帯電装置、現像装置等が直接、電子写真画像形成装置に組み込まれていても構わない。
【0040】
<トナー体積平均粒径測定方法>
トナーの体積平均粒子径は、以下の測定方法により測定した測定値を採用することができる。コールターマルチサイザーII(コールター社製)に、個数分布及び体積分布を出力するインターフェース(日科機製)とパーソナルコンピューターを接続する。電解液としては、一級塩化ナトリウムを用いて1%NaCl水溶液を調製してもよいが、ISOTON R−II(コールターサイエンティフィックジャパン社製)等を使用してもよい。電解液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩)を1ml加え、更に測定試料を10mg加える。測定試料を懸濁した電解液を、超音波分散器で約1〜3分間分散処理する。超音波処理された電解液を測定サンプルとして、100μmのアパーチャーを採用するコールターマルチサイザーにより、1.59μmから64.00μmの範囲で16チャンネルの体積粒度分布を測定し、測定された50%D径を体積平均粒子径とする。
【0041】
<平均円形度測定方法>
平均円形度は、トナーの球形度を簡便に定量的に表現する指標として、フロー式粒子像測定装置FPIA−2000型(東亜医用電子社製)を用いて測定を行い、下式(1)及び(2)より求めた値を採用することができる。
円相当径=(粒子投影面積/π)1/2x2・・・(1)
円形度=粒子投影面積と同じ面積の円の周囲長/粒子投影像の周囲長・・・(2)
【0042】
「粒子投影面積」とは設定した輝度の閾値により各画素を二値化してトナー粒子を認識し、認識したトナー粒子像から求める面積であり、「粒子投影像の周囲長」とは粒子像において隣接するエッジを結んで得られる輪郭線の長さとする。
【実施例】
【0043】
実施例及び比較例で使用した電子導電剤の詳細を表1示す。
【0044】
【表1】

【0045】
実施例及び比較例で使用したアセン化合物の詳細を表2に示す。
【0046】
【表2】

【0047】
−軸芯体2の調製−
軸芯体2として、SUS304製の直径6mmの芯金にプライマ−(商品名:DY35−051;東レダウコーニングシリコーン社製)を塗布、焼付けしたものを用意した。
【0048】
−弾性層3の調製−
ついで、軸芯体2を金型に配置し、表3に記載の材料を混合した付加型シリコーンゴム組成物を金型内に形成されたキャビティに注入した。
【0049】
【表3】

【0050】
続いて、金型を加熱してシリコーンゴムを150℃、15分間加硫硬化し、脱型した後、さらに200℃、2時間加熱し硬化反応を完結させ、軸芯体2の外周に厚さ3mmの弾性層3を設け、直径12mmの弾性ローラX−1を得た。
【0051】
−表面層4の調製−
<樹脂バインダーC−1の作製>
表4に記載のバインダー構成成分にMEKを400mL加えたものを別途攪拌モータで30分攪拌し、バインダー混合溶液を作成した。
【0052】
【表4】

【0053】
<樹脂バインダーC−2〜C−4の作製>
以下バインダーC−2〜C−4についてもC−1と同様にして、表5〜表7に記載のバインダー構成成分を用いて、バインダー混合溶液を作製した。
【0054】
【表5】

【0055】
【表6】

【0056】
【表7】

【0057】
実施例及び比較例で使用した樹脂バインダー、電子導電剤、及びアセン化合物を表8にまとめた。また実施例及び比較例で使用した混合溶媒を表9にまとめた。
【0058】
【表8】

【0059】
【表9】

【0060】
〔実施例1〕
表10に記載の材料を秤量後、アセン化合物B−3と電子導電剤D−1を混合溶媒E−1に加え攪拌モータで30分攪拌をおこなった。
【0061】
【表10】

【0062】
この混合液とC−1バインダー液を混ぜ合わせMEKを加えサンドミルで4時間分散した。分散後さらにMEKを加え固形分25%±3%の範囲で調整したものを導電性表面層の原料液とした。この原料液中に弾性ローラX−1を浸漬して、導電性弾性層の外表面をコーティングした後、自然乾燥させた。次いで、窒素雰囲気下150℃にて60分間加熱処理することで、コーティングされた導電性表面層の原料の硬化をおこなった。ゴムの両端部から10mmをカットして現像ローラD−1を得た。
【0063】
〔実施例2〜21、比較例1〜5〕
実施例1で使用したバインダー樹脂、電子導電剤、イオン導電材、アセン化合物、混合溶媒を表8に示す内容に変更した以外は実施例1と同様にして現像ローラを得た。
尚、実施例で使用したイオン導電材は、トリメチルテトラデシルアンモニウムクロリド(東京化成工業社製)で得られ、アセン化合物は、B−1(東京化成工業社製)、B−2,8(特開2009−120570)、B−4,5,6(シグマアルドリッチ社製)、B−7(特開2008−13552)、B−9(東京化成工業社製)で得ることができる。
【0064】
<画像評価>
上記実施例及び比較例で得られた現像ローラについて下記の評価を行った。評価結果を表13に示す。なお、評価に用いたレーザープリンタ(商品名:HPColourLaserJetCP3525dn
プリンター;日本ヒューレット・パッカード株式会社製)は、A4用紙縦出力用のプリンターである。記録メディアの出力スピードは標準30ppmである。また、現像ローラのトナー量規制ブレードへの当接圧力及び進入量は、現像ローラ上のトナー担持量が0.40mg/cm2となるようにした。
【0065】
プロセスカートリッジに組み込んだ電子写真感光体には、支持体上に層厚19μmの有機感光層を形成した有機電子写真感光体を用いた。有機感光層は、支持体側から電荷発生層と変性ポリアリレート(結着樹脂)を含有する電荷輸送層とを積層してなる積層型感光層であり、この電荷輸送層は電子写真感光体の表面層となる。
使用したトナーの母体は、ワックス、荷電制御剤、色素、スチレン、ブチルアクリレート及びエステルモノマーを含む重合性単量体系を水系媒体中で懸濁重合して得られた重合粒子である。前記粒子にシリカ微粒子及び酸化チタン微粒子を外添したものが重合トナーとして得られ、その重合トナーのガラス転移温度は63℃、体積平均粒子径は約6μmである。
【0066】
(1)常温常湿初期カブリ評価
現像ローラを先のCP3525dn用カートリッジに組み込み、さらにカートリッジをCP3525dn本体に組み込み、23℃、55%RHの環境下に24時間以上放置した。同じ環境下において、従来よりも過酷な印字条件を作り出すために、まずはベタ白画像の3000枚連続印字をおこなった。その後、もう一枚のベタ白画像を通常の1/3のスピードで出力し、出力途中で装置を止めた。装置本体からカートリッジを取り出し感光ドラムの表面に市販のセロハンテープ(CT18:ニチバン製)でシワのないように貼り付けた後、はがして白紙上に貼り付けた。さらに、別のセロファンテープで、感光ドラムに貼り付けずにそのまま白紙上に貼り付けた。白紙上のセロハンテープの上からフォトボルト反射濃度計(商品名:TC−6DS/A;東京電色社製)で反射濃度を測定し、ベタ白印字途中のものと印字に関係のないものとの差を初期カブリ(%)とし、トナー帯電量に起因する画像弊害を表11に記載の基準で評価した。
【0067】
【表11】

【0068】
(2)低温低湿初期カブリ評価
現像ローラを先のCP3525dn用カートリッジに組み込み、さらにカートリッジをCP3525dn本体に組み込み、15℃、10%RHの環境下に24時間以上放置した。同じ環境下において、従来よりも過酷な印字条件を作り出すために、まずはベタ白画像の3000枚連続印字をおこなった。その後、もう一枚のベタ白画像を通常の1/3のスピードで出力し、出力途中で装置を止めた。装置本体からカートリッジを取り出し感光ドラムの表面に市販のセロハンテープ(CT18:ニチバン製)でシワのないように貼り付けた後、はがして白紙上に貼り付けた。さらに、別のセロファンテープで、感光ドラムに貼り付けずにそのまま白紙上に貼り付けた。白紙上のセロハンテープの上からフォトボルト反射濃度計(商品名:TC−6DS/A;東京電色社製)で反射濃度を測定し、ベタ白印字途中のものと印字に関係のないものとの差を初期カブリ(%)とし、トナー帯電量に起因する画像弊害を表11と同様のA〜Dの基準で評価した。
【0069】
(3)低温低湿耐久かぶり評価
次いで、初期かぶり評価をおこなったカートリッジを再び本体に組み込んだ。同じ環境下において、5%印字画像を2枚印字ごとに10秒停止し、これを繰り返すことにより10000枚出力した。次いで、通常の1/3のスピードでベタ白画像を出力し、初期かぶり評価と同様にして、反射濃度を測定し、ベタ白印字途中のものと印字に関係のないものとの差を耐久カブリ(%)とし、トナー融着に起因する画像弊害を表12に記載の基準で評価した。
【0070】
【表12】

【0071】
【表13】

【0072】
実施例のローラは常温常湿のかぶり、低温低湿のかぶり、さらに低温低湿での耐久かぶりが優れている結果となった。これに対して、比較例1は本発明に係るアセン化合物を含まないため導電性を十分に満たしていないために、低温低湿環境下でのかぶりが不十分な結果となった。比較例2は、本発明に係るアセン化合物とは異なり、ベンゼン環が3つのアセン化合物を用いているので低温低湿耐久かぶりが不十分な結果となった。比較例3は電子導電性フィラーを含まないために、十分な導電性を得ることができず、全ての環境下でかぶりが不十分な結果となった。比較例4は電子導電性フィラーを多量に含んだので初期状態においては両環境で良いかぶりの結果が得られたが、低温低湿環境の耐久かぶりにおいては十分な結果が得られなかった。比較例5は電子導電性フィラーとイオン導電材を含むものであるが、本発明に係るアセン化合物を含まないため、低温低湿環境の耐久かぶりおいて十分な結果が得られなかった。
【符号の説明】
【0073】
1 現像ローラ
2 軸芯体
3 弾性層
4 表面層
5 非磁性一成分トナー(現像剤)
6 現像容器
7 トナー供給ローラ
8 現像ブレード
10a乃至d 画像形成ユニット
11 感光ドラム(画像形成体)
12 帯電装置(帯電ローラ)
13 露光光
14 現像装置
15 クリーニング装置
16 画像転写装置(転写ローラ)
17 転写搬送ベルト
18 駆動ローラ
19 テンションローラ
20 従動ローラ
21 吸着ローラ
22 供給ローラ
23 剥離装置
24 定着装置
25 転写材
26 バイアス電源(画像転写装置(転写ローラ)16用)
27 バイアス電源(吸着ローラ21用)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸芯体と、表面層とを有する現像ローラであって、
該表面層が、下記化学式(1)で表される化合物、および下記化学式(2)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも一方の化合物と電子導電性フィラーとを含有していることを特徴とする現像ローラ:
【化1】

[上記式(1)において、l、mは0又は1を示し、A1乃至A10は各々独立に水素原子、炭素数1〜4の炭化水素基、メトキシ基、メトキシカルボニル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子からなる群から選ばれる何れかの元素を示し、R1乃至R4は各々独立に水素原子、炭素数1〜4の炭化水素基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子からなる群から選ばれる何れかの元素を示し、Yは、下記化学式(3)〜(8)で表される2価の基の何れかを示す。
【化2】

上記式(2)において、n、pは0又は1を示し、B1乃至B12は各々独立に水素原子、炭素数1〜4の炭化水素基、メトキシ基、メトキシカルボニル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子からなる群から選ばれる何れかの元素を示し、R5乃至R8は各々独立に水素原子、炭素数1〜4の炭化水素基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子からなる群から選ばれる何れかの元素を示す。]。
【請求項2】
前記表面層に含まれる化学式(1)〜(2)から選ばれる1つまたは2つ以上の化合物の合計質量が電子導電性フィラーの2質量%乃至20質量%の範囲にある請求項1に記載の現像ローラ。
【請求項3】
現像ローラ、トナー規制ブレード、および、トナー供給部材が一体化されており、かつ、電子写真画像形成装置の本体に着脱可能に構成されている電子写真現像装置において、
該現像ローラが請求項1又は請求項2に記載の現像ローラであることを特徴とする電子写真現像装置。
【請求項4】
感光ドラムと、該感光ドラムに接触して配置されている現像ローラとを備えている電子写真画像形成装置において、該現像ローラが、請求項1又は請求項2に記載の現像ローラであることを特徴とする電子写真画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−252030(P2012−252030A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122137(P2011−122137)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】