説明

現像ローラの製造方法

【課題】耐久性に優れ、且つ電子写真像として十分な濃度を達成する、現像ローラの製造方法を提供する。
【解決手段】導電性弾性層の表面にエキシマUV光を照射する工程で、導電性弾性層の両端部に対するエキシマUV光の照射量を、両端部以外の照射量に比べ多くすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真装置、静電記録装置等に用いられる現像ローラの製造方法に関するものであり、詳しくは通電性軸芯体の上に導電性弾性層と被覆層を積層する現像ローラにおいて、導電性弾性層と被覆層の接着方法に特徴のある現像ローラの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置、静電記録装置等に用いられる現像ローラは、図1に示すような、通電性軸芯体Aの上に、主にゴムから成る導電性弾性層B、さらに主に樹脂から成る被覆樹脂層Cから成る構成のものが多く知られている。そして、導電性弾性層と表面層の接着性を向上させる目的で、被覆層を形成する前に導電性弾性層の上にプライマー等の接着剤を塗布したり、紫外線や電子線を照射することで導電性弾性層の表面を改質し、被覆層との接着性を向上させる方法が多く用いられている。中でも紫外線や電子線を照射する方法は、プライマーを用いた場合に課題となる希釈用の有機溶剤の使用によるVOC等の問題が無いこと、光を照射するというシンプルな工程であることから、特に多く用いられている。
【0003】
導電性弾性層に紫外線を照射する場合、UV光を発する低圧水銀ランプやエキシマUVランプが用いられる。特にエキシマUVランプは、エネルギーが強く、比較的短時間で導電性弾性層表面の改質が行われているので量産性に優れている。通常、導電性弾性層の表面を光改質して接着性を持たせる場合、接着性の閾値に対して十分余裕を持った照射量とすることで、確実な接着性を持たせてきたが、量産性の観点からすれば、必要最低限の処理を短時間で済ませることが望まれている。また、エキシマ光の過剰なる照射は導電性弾性層の高抵抗化を伴うために、それによって現像効率が低下し、電子写真の画像としては、濃度が薄くなる傾向があることが分かった。よって、エキシマUV光を照射する工程においては、接着性と画像濃度は、トレード・オフの関係になっていた。
【0004】
例えば先行技術においては、導電性軸芯体の外周面に、半導電性シリコーンゴムからなる弾性半導電層を形成し、その表面に主波長253.7nmおよび184.9nmで、積算光量が1.2〜76mJ/cm2である紫外線照射を行って表面層を改質している。この改質により表面層の耐磨耗性を向上させると共に、表面層に微細な凹凸を高密度に生成させている(特許文献1)。同特許文献によれば、この半導電性ロールは耐環境性に優れ、長期間使用してもトナーの搬送力が低下することなく優れた印字特性が維持出来るとある。
【0005】
また、軸芯体の外側に、ゴムを主成分とする弾性体層を形成する工程と、前記弾性体層の表面に、酸素含有雰囲気中で、分光分布のピークは172nmにあり、その他にピークを有さない紫外線を照射する工程と、前記紫外線を照射した弾性体層の外側に、樹脂層を形成する工程とを有する弾性ローラの製造方法が開示されている(特許文献2)。同特許文献によれば、弾性体層表面を均一に改質し、この弾性体層の外周に溶液の塗布により薄く、均一な樹脂層を安定して設けることのできる、生産性の高い弾性ローラの製造方法を提供するとある。
【0006】
【特許文献1】特開平9−250539号公報
【特許文献2】特開2004−37666号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の方法は、主波長253.7nmおよび184.9nmの紫外線は主に低圧水銀ランプによるものであり、エキシマUVランプに比べると表面改質能力が低く、量産性の面で不利である。
【0008】
また、特許文献2に記載の方法では、導電性弾性体層がシリコーンゴムを材料である場合、エキシマ光の照射量が少なすぎる(目安として50mJ/cm2未満)と、導電性弾性体層と被覆樹脂層との接着性が不十分になる場合がある。また、照射量が多すぎる(目安として300mJ/cm2を超える)場合には、現像ローラの抵抗値が高くなり、電子写真の画像濃度が低下することがあった。
【0009】
本発明は上述の問題に鑑みなされたものであり、軸芯体と、前記軸芯体の外周面に設けられた導電性弾性層と、前記導電性弾性層の周りに設けられた表面層とを有する現像ローラの製造方法において、接着性とローラの高抵抗化による電子写真像の画像欠陥とのトレード・オフの関係を解消して、耐久性に優れ、且つ十分な画像濃度を有する、現像ローラの製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
軸芯体と、前記軸芯体の外周面に設けられた導電性弾性層と、前記導電性弾性層の周りに設けられた被覆樹脂層とを有する現像ローラの製造方法において、
(1)軸芯体の外周面に導電性シリコーンゴムにより前記導電性弾性層を形成する工程と、
(2)前記導電性弾性層の外周面にエキシマUV光を照射する工程と、
(3)前記エキシマUV光を照射した導電性弾性層の外側に、前記被覆樹脂層を形成する工程と、を有し、
前記工程(2)において、前記導電性弾性層の両端部に対する前記エキシマUV光の照射量を、前記両端部以外の導電性弾性層への照射量よりも多くすることを特徴とする、現像ローラの製造方法である。
【0011】
また、前記工程(2)において、前記導電性弾性層の両端部への照射量を、前記両端部以外の導電性弾性層への照射量よりも多くするための手段が、前記エキシマUV光を発するUVランプと前記導電性弾性層の表面との間に存在する気体の酸素濃度を、前記両端部においてより低くなるようにして、前記エキシマUV光を照射することが望ましい。
【0012】
また、前記気体の酸素濃度を両端部において低くする手段が、少なくとも窒素を含むガスを前記両端部に吹き付けることが望ましい。
【0013】
また、前記窒素を含むガスは、窒素:酸素=85:15〜100:0(体積比)の気体であることが望ましい。
【0014】
また、前記工程(2)における前記UVランプと前記導電性弾性層の表面との照射と同じになるように、UV照度計を前記UVランプ下に設置し、前記導電性弾性層の長手方向全域に相当する範囲で172nm波長の照度を測定したとき、前記両端部に相当する照度をA[mW/cm2]、前記両端部以外の導電性弾性層に相当する照度をB[mW/cm2]とすると、A/B≧1.2となることが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に基づいた現像ローラの製造方法を採用することで、先に述べた接着性とローラの高抵抗化による電子写真像の画像欠陥とのトレード・オフの関係を解消することができる。すなわち、十分な接着性及び耐久性を有しながらも、電子写真像の画像濃度が十分である現像ローラを製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明者らは、導電性弾性層表面の改質、すなわち接着性が不十分であった場合に、電子写真装置に組み込まれた現像ローラがどのような状態になるのかを調査した。その結果、まず現像ローラの両端部で被覆樹脂層に徐々にシワが発生し、そのうちにこのシワに亀裂が入り、そこから被覆樹脂層が剥離していく様子が確認された。また、紫外線の照射量が多過ぎる場合には、ローラの抵抗値が高くなってしまい、電子写真像として、画像濃度が薄くなる傾向があることが分かった。そこで、導電性弾性層の両端部のみ紫外線の照射量を多くして、接着性を選択的に向上させることで、現像ローラ全体を高抵抗化させることなく、画像濃度の低下を抑え、導電性弾性層と被覆樹脂層の接着力を十分に取ることが出来たため、本発明に至った。
【0017】
そこで、本発明に係る現像ローラの製造方法は、
軸芯体と、前記軸芯体の外周面に設けられた導電性弾性層と、前記導電性弾性層の周りに設けられた被覆樹脂層とを有する現像ローラの製造方法において、
(1)軸芯体の外周面に導電性シリコーンゴムにより前記導電性弾性層を形成する工程と、
(2)前記導電性弾性層の外周面にエキシマUV光を照射する工程と、
(3)前記エキシマUV光を照射した導電性弾性層の外側に、前記被覆樹脂層を形成する工程と、を有し、
前記工程(2)において、前記導電性弾性層の両端部に対する前記エキシマUV光の照射量を、前記両端部以外の導電性弾性層への照射量よりも多くすることを特徴とする。
【0018】
本発明の現像ローラの概念的断面図を図1に示す。本発明の現像ローラは、少なくとも、軸芯体(A)、該軸芯体(A)上に積層された導電性シリコーンゴムからなる導電性弾性層(B)、及び該導電性弾性層(B)上に積層された被覆樹脂層(C)からなる。なお、導電性弾性層(B)及び被覆樹脂層(C)は単層であっても、複層であってもよいが、導電性弾性層(B)が複層の場合には、導電性弾性層(B)のなかの最外層が導電性シリコーンゴムである必要がある。
【0019】
(軸芯体)
軸芯体は、導電性を有する材料であれば特に限定されずに用いることができ、材料としては、例えば鉄、銅又はステンレス等の金属等が挙げられる。また、防錆や耐傷性付与を目的として、これらの金属表面は、メッキ処理などの被覆処理が施されていても構わない。導電性軸芯体1の形状は、電子写真装置用の現像ローラに用い得る形状であれば特に制限されないが、例えば円柱状、円筒状などが挙げられる。
【0020】
(導電性弾性層)
本発明では、導電性弾性層は導電性シリコーンゴムから構成されている。導電性シリコーンゴムは、導電剤により導電性が付与されたシリコーンゴムである。通常、導電性弾性層は、液状シリコーンゴムに導電剤を添加して所望の抵抗を有するように調整した導電性液状シリコーンゴムを、前記軸芯体を設置した円筒形金型に注入し、熱硬化して形成される。前記導電剤としては、例えば、カーボンブラック、グラファイト又は導電性金属酸化物等の電子伝導機構を有する導電剤や、アルカリ金属塩又は四級アンモニウム塩等のイオン伝導機構を有する導電剤等が挙げられる。なお、ここで形成された導電性弾性層を有するローラを「弾性ローラ」と称する。弾性ローラはその後、反応の完結および低分子シロキサンの除去を目的とした二次硬化処理が行なわれる。
【0021】
前記シリコーンゴムとしては、例えば、ポリジメチルシロキサン,ポリメチルトリフルオロプロピルシロキサン,ポリメチルビニルシロキサン,ポリトリフルオロプロピルビニルシロキサン,ポリメチルフェニルシロキサン,ポリフェニルビニルシロキサン、これらポリシロキサンの共重合体等が挙げられる。また、これらの材料の1種または2種以上を所望の割合で配合したものを用いることもできる。
【0022】
前記ポリシロキサンの架橋剤としては、例えば、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、p−クロロベンゾイルパーオキサイドなどが挙げられる。
【0023】
また、導電性弾性層の両端部とは、導電性弾性層の長手方向における両末端の部分のことをいう(図6参照)。より具体的には、導電性弾性層末端から例えば10mmの部分をいう。本発明の効果を阻害しない範囲で、両端部の幅は適宜調整することができ、特に限定されるものではない。
【0024】
(エキシマUV光)
本発明においては、弾性ローラ表面、つまり最外層の導電性弾性層にエキシマUV光を照射する。導電性弾性層は二次硬化処理後であることが好ましい。エキシマUVランプとしては、例えば、Xe2エキシマランプ(波長172nm)、Kr2エキシマランプ(波長146nm)、Ar2エキシマランプ(波長126nm)等があり、特に限定されずに用いることができる。一般的にはXe2エキシマランプが多く市販されている。弾性ローラ表面の改質には低圧水銀ランプによるUV光を用いることも出来るが、改質エネルギーがエキシマUVランプに比べ劣ることから長時間の照射が必要とされ、量産性の面で不利である。
【0025】
(照射方法)
本発明において、導電性弾性層のエキシマUV光による照射方法は、所望の照射を行うことができれば、特に限定されるものではないが、例えば、以下に示すような方法により行うことができる。
【0026】
エキシマUV光を弾性ローラ表面に照射するためのエキシマUV照射装置は、エキシマUVランプと平行に弾性ローラを配置し、これを回転させながら照射させる構成とすることができる。この構成により、弾性ローラの表面全体に均一にUV光を当てることが出来る。このときの弾性ローラの回転速度は、10〜60rpmであることが好ましい。また、エキシマUVランプ表面と弾性ローラ表面との距離は1〜5mmとすることが好ましい。1mmより短い場合には装置として制御することが困難であり、5mmより長い場合にはエキシマUV光のエネルギーの多くが空気中の酸素に吸収されてしまうため効率的でない。そして、本発明においては、導電性弾性層の両端部、具体的には導電性弾性層末端から例えば10mm幅を目安としてエキシマUV光の照射量を多くする必要がある。この方法としては、まず前述したエキシマUV照射装置により、弾性ローラ全体にほぼ均一に照射した後、両端部にのみさらにエキシマUV光を照射する方法がある。この場合、弾性ローラとエキシマUVランプを図3に示すように直交するように配置することで、目的とする導電性弾性層の端部にのみエキシマ光を照射することが出来る。この時も弾性ローラを回転させながら照射することで、周方向の照射量を揃えることが出来る。なお、図3中のエキシマUVランプは長管ランプを用いているが、短管タイプやスポット照射タイプのものを使用することも出来る。
【0027】
また、導電性弾性層の両端部へのエキシマUV光の照射量を大きくする他の方法としては、以下の例が好ましく挙げられる。その方法としては、エキシマUVランプの下に平行に弾性ローラを配置し、これを回転させながら照射させる際に、UVランプと弾性ローラ表面との間に存在する気体の酸素濃度を、両端部において低くなるようにすることがより好ましい。エキシマUV光はエネルギーが酸素に多く吸収されてしまう特徴があるため、エキシマUVランプの出力はランプ全体で一様であっても、酸素濃度を低くした部分ではエネルギーが強いまま届く。したがって、酸素濃度をコントロールすることで、導電性弾性層の両端部への照射エネルギー(照度)をその他の部分(両端部以外の導電性弾性層)に比べて大きくすることができる。照射量は、照射エネルギーと照射時間との積、すなわち、積算光量換算で表すことができることから、全体で同じ照射時間であっても両端部とその他の部分の照射エネルギーをそれぞれ調整することで、照射量に差を与えることができる。そのため、一度の照射工程で本発明の形態を達成することが出来る。一度の照射工程で済むことで、生産タクトの短縮および装置の小型化が可能となる。
【0028】
導電性弾性層の両端部の酸素濃度を低くする方法としては、弾性ローラ両端部に、エキシマUVランプと弾性ローラとの間へ、少なくとも窒素を含むガスを吹き付けることが好ましい。さらにはこの窒素を含むガスの成分が、体積比、窒素:酸素=85:15〜100:0の気体であることが好ましい。酸素濃度を低くするためには、不活性ガスを吹き付けることが有効である。中でも窒素は安価であり、空気から分離、精製することも出来る。窒素発生器等を使用し、脱酸素化した気体を用いる場合には、体積比で窒素:酸素=85:15〜100:0の範囲にあることで、導電性弾性層の両端部のエキシマUV照射エネルギーを他の部分に比べて大きくしやすくなる。なお、ガスを吹き付ける関係からも、エキシマUVランプとローラ表面との距離は1〜5mmであることが好ましい。距離が1mmより小さい場合には酸素によるエネルギーの吸収がそもそも少ないので、酸素濃度に勾配をつけることが難しい。距離が5mmより大きい場合にはガスの分布の制御が難しくなるため、目的としたエキシマUVの照射量分布とはならない場合がある。また、吹き付けるガスの流量などは適宜調整可能である。
【0029】
また、上述のように、両端部への照射量を酸素濃度をコントロールすることで調整する場合、両端部への照射量と両端部以外の導電性弾性層への照射量の差を設けるため、以下のような条件で行うことが好ましい。つまり、弾性ローラ表面にエキシマUV光を照射する工程での照射距離と同じになるようにUV照度計をエキシマUVランプ下に設置し、導電性弾性層の長手方向全域に相当する範囲で172nm波長の照度を測定したとき、両端部での照度をA[mW/cm2]、それ以外の部分での照度をB[mW/cm2]とすると、A/B≧1.2となることが好ましい。A/B≧1.2の関係を満たすことで、本発明の効果を十分享受することが出来る。
【0030】
照射量は、導電性弾性層に用いる材料やエキシマUV光の波長等により適宜調整することができるが、両端部以外の導電性弾性層への照射量は、例えば、積算光量換算で、30〜300mJ/cm2とすることが好ましい。また、両端部への照射量は、例えば、積算光量換算で、50〜1000mJ/cm2とすることができ、100〜500mJ/cm2とすることが好ましい。両端部と、両端部以外の照度の差については、172nm波長の照度を測定したとき、両端部での照度をA[mW/cm2]、それ以外の部分での照度をB[mW/cm2]とすると、A/B≧1.2となることが好ましい。
【0031】
(被覆樹脂層)
被覆樹脂層の形成に用いられる主剤樹脂としては、熱可塑性、熱硬化性のどちらであっても良い。主剤樹脂としては、例えば、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ブチラール樹脂、スチレン−エチレン・ブチレン−オレフィン共重合体(SEBC)、オレフィン−エチレン・ブチレン−オレフィン共重合体(CEBC)等が用いられる。これらの樹脂には、静摩擦係数を小さくする目的でグラファイト、雲母、二硫化モリブデン、フッ素樹脂粉末等の固体潤滑材、フッ素系界面活性剤、ワックス又はシリコーンオイル等が添加されることも好ましい。
【0032】
また、被覆樹脂層に導電性を持たせるために、導電剤を加えることも好ましい。この導電剤としては、導電性を有する材料であればトナー等に使用されている種々の材料から適宜選択して使用でき、例えば、導電性カーボン、グラファイト、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄粉、金属酸化物である導電性酸化錫や導電性酸化チタンなどが挙げられる。
【0033】
さらに、耐磨耗性やトナー搬送性を得るために、球形の樹脂粒子を被覆樹脂層中に配することも好ましい。この粒子の例として、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン又はポリウレタン等の微粒子が挙げられる。なお、その樹脂粒子の平均粒径は3μm以上30μm以下(レーザ回折式粒度分布測定装置SALD−2100/島津製作所製 の測定による)の範囲にあることが好ましい。
【0034】
これらの材料を塗工できる状態とするため、各種有機溶剤を用いるが、中でも分散性に優れるMEK及びMEKを主成分とする混合溶剤を用いることが好ましい。これらの材料をビーズミルやポットミル等で分散し、さらに溶剤を加えて塗工に適した粘度に調整される。このように調製された塗工液を、ディップ法、スプレーコート法、ロールコート法等により弾性層上に被覆樹脂層の塗膜を形成する。中でも均一な表面を得やすいディップ法によることが好ましい。塗膜形成後、乾燥、硬化して導電性弾性層上に被覆樹脂層を形成する。
【実施例】
【0035】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施例を説明する。なおこの説明は、本発明を限定するものではない。
【0036】
[参考例1]
まず、従来の技術である、弾性ローラ全体に一様にエキシマUV光を照射した場合について説明する。本参考例では、下記の要領で現像ローラを作製した。
【0037】
<導電性弾性層の作製>
外径φ8mmの鉄製軸芯体を内径φ16mmの円筒状金型内に同心となるように設置し、液状導電性シリコーンゴム(東レダウコーニング社製 体積固有抵抗107Ωcm品)を注型後、130℃のオーブンに入れ20分加熱成型した。脱型後、200℃のオーブンで4時間二次硬化をおこない、通電性軸芯体上に厚み3mm、長さ240mmの導電性弾性層を有する弾性ローラを得た。
【0038】
<導電性弾性層へのエキシマUV光の照射>
エキシマUV光の照射は、エキシマUVランプ(商品名:GEL40XTS、ハリソン東芝ライティング社製)を使用し、弾性ローラをエキシマUVランプと水平に配置し且つ回転させることが出来るエキシマUV照射装置を用いた。また、エキシマUVランプと弾性ローラとの距離を2mm、弾性ローラの回転速度を60rpmという条件で12秒間、弾性ローラ表面に均一にエキシマUV光を照射した。なお、エキシマUVランプ表面から大気中で2mm離れたところの172nm波長の照度を紫外線積算光量計(本体:UIT−150、受光部:VUV−S172、共にウシオ電機社製)で測定したところ、4.9mW/cm2であった。弾性ローラに届いた照射量は、積算光量換算で59mJ/cm2となった。
【0039】
<被覆樹脂層用塗工液の調製>
・ポリウレタンポリオール 100質量部
(商品名:ニッポランN5033、日本ポリウレタン社製)
・イソシアネート 10質量部
(商品名:コロネートL、日本ポリウレタン社製)
・カーボンブラック 20質量部
(商品名:MA77、三菱化学社製)
・樹脂粒子 6質量部
(商品名:アートパールC400、根上工業社製)
【0040】
上記原料にメチルエチルケトンを加え、ビーズミルで十分に分散させた。分散後さらにメチルエチルケトンを加えて十分混合した。また、塗工液の粘度が、測定温度23±1℃、回転式粘度計(VISMETRON VDA;芝浦システム製)、No.1ロータ、回転速度60rpmにて、15mPa・sになるよう粘度を調製した。
【0041】
<被覆樹脂層の形成>
調製した塗工液を塗工槽に装入し、塗工液の液面に対してローラの軸芯体の中心線が垂直になるように保持し、液面に向かって垂直に降下させ、10mm/sの速度で浸漬させた。最下点まで降下させてから10秒間停止させた後に引き上げ、ローラの導電性弾性層の外周面上に塗工層を形成した。引き上げ時の速度は引き上げ開始直後で500mm/min、導電性弾性層下端が塗工液液面から出た時点で200mm/minとなるよう一次関数のプログラムを組んで調速した。このようにして形成した塗工層を室温にて30分間風乾し、150℃のオーブンに入れ1時間加熱硬化して樹脂被覆層を形成、現像ローラを得た。
【0042】
[参考例2]
参考例1における、エキシマUV光照射時間を12秒間から60秒間に変更した以外は、参考例1と同様に現像ローラを作製した。ローラに届いた照射量は積算光量換算で294mJ/cm2となった。
【0043】
[実施例1]
参考例では、導電性弾性層へのエキシマUV光照射工程は、弾性ローラ表面全域に均一にエキシマUV光を照射するのみであった。本実施例では、その後さらに、弾性ローラ回転機構を、UVランプと弾性ローラが水平の状態から、導電性弾性層の末端から5mmの位置がUVランプ直下になるようT字型に配置した状態(図3参照)でエキシマUV光の照射を行った。照射時間は、弾性ローラ全域への照射を8秒間、両端部への追加照射時間をそれぞれ4秒間とした。
【0044】
結果、ローラに届いた照射量は積算光量換算で、両端部で59mJ/cm2、それ以外の部分で39mJ/cm2となった。
【0045】
[実施例2]
導電性弾性層へのエキシマUV光照射以外は、参考例1と同じ方法で作製した。以下に導電性弾性層へのエキシマUV光照射の方法を示す。
【0046】
参考例1のエキシマUV照射装置に、弾性ローラの導電性弾性層両端部5mmの位置に対して、純度99.9%の窒素を両端それぞれ0.5リットル/分の流量で吹き付けた(図4、図5参照)。ノズルは内径4mmのステンレス製で、ノズル先端はエキシマUVランプと導電性弾性層表面との距離(3mm)のちょうど中央に向けた。エキシマUVランプと導電性弾性層表面との中間点から、窒素吹き出しノズルまでの距離は10mmとした。このように窒素を吹き付けている状態で導電性弾性層表面に届く172nm波長の照度を測定したところ、14.0mW/cm2であった。つまり、両端部の照度は14.0mW/cm2、それ以外の部分では4.9mW/cm2という条件下で、8秒間照射を行った。
【0047】
結果、ローラに届いた照射量は積算光量換算で、両端部で112mJ/cm2、それ以外の部分で39mJ/cm2となった。
【0048】
[実施例3]
エキシマUV光照射装置は実施例1と同じながら、弾性ローラ全域へのエキシマUV光照射時間を60秒間、両端部への追加照射時間をそれぞれ12秒間とした。
【0049】
結果、ローラに届いた照射量は積算光量換算で、両端部で353mJ/cm2、それ以外の部分で294mJ/cm2となった。
【0050】
[実施例4]
エキシマUV光照射装置および窒素供給条件は実施例2と同じながら、弾性ローラ全域へのエキシマUV光照射時間を60秒間とした。
【0051】
結果、ローラに届いた照射量は積算光量換算で、両端部で840mJ/cm2、それ以外の部分で294mJ/cm2となった。
【0052】
[比較例1]
エキシマUV光照射装置は参考例1と同じながら、弾性ローラ全域へのエキシマUV光照射時間を8秒間とした。
【0053】
結果、ローラに届いた照射量は積算光量換算で、39mJ/cm2となった。
【0054】
[比較例2]
エキシマUV光照射装置は参考例1と同じながら、弾性ローラ全域へのエキシマUV光照射時間を72秒間とした。
【0055】
結果、ローラに届いた照射量は積算光量換算で、353mJ/cm2となった。
【0056】
[現像ローラの評価]
以上、参考例1〜2、実施例1〜4、比較例1〜2で作製した現像ローラのエキシマUV光照射条件を表1に示す。さらに、これら現像ローラをキヤノン社製のレーザープリンタ「LBP−2510」のカートリッジに組み込み、テスト用標準パターンを連続印字した結果を合わせて表1に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
表1中の「ローラ耐久性」では、カートリッジの耐久性としては8000枚の印字耐久を達成することでカートリッジとしての品質を満足することとなる。また、可能な場合は8000枚以降も印字し、場合によってはトナーを補充して最大22,000枚まで印字を続けた。結果、参考例1、2および実施例1〜4については8000枚以上の耐久をクリアし、さらに参考例2、実施例2〜4については16000枚以上の高耐久性を示した。しかし、比較例1では6000枚印字後のローラの確認で、現像ローラの一方の端部に、被覆樹脂層のシワが見られた。
【0059】
また、画像性の評価においては、参考例1、2および実施例1〜4で得られた現像ローラについては画像濃度は基準以上であり、特に実施例1、2においては参考例以上の濃度を得た。しかし、比較例2では印字初期の時点から十分な濃度を得ることが出来なかった。比較例1は4000枚印字までは高画質を保っていたが、6000枚印字後のローラの確認で、前述した被覆樹脂層のシワが見られたため、以降の印字を中止した。なお、表中の画像性の記号は、◎が最も良好で、以下○、○△、△までが基準以上の品質となり、△×、×、××が品質NGとなる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の、現像ローラの断面図である。
【図2】現像ローラにエキシマUV光を照射する概略図である。
【図3】本発明の実施例に係る、現像ローラの端部にのみエキシマUV光を照射する方法の概略図である。
【図4】本発明の実施例に係る、現像ローラの両端部の酸素濃度を、その他の領域に比べ低くするためのガス吹き出し口を設けた装置の概略図である。
【図5】図3のガス吹き出し口の詳細を示す概略図である。
【図6】導電性弾性層の両端部を説明する概略図である。
【符号の説明】
【0061】
A:軸芯体
B:導電性弾性層
C:被覆樹脂層
1:エキシマUVランプ
2:現像ローラ
3、3−1、3−2:ガス吹き出し口
4、4’:両端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸芯体と、前記軸芯体の外周面に設けられた導電性弾性層と、前記導電性弾性層の周りに設けられた被覆樹脂層とを有する現像ローラの製造方法において、
(1)軸芯体の外周面に導電性シリコーンゴムにより前記導電性弾性層を形成する工程と、
(2)前記導電性弾性層の外周面にエキシマUV光を照射する工程と、
(3)前記エキシマUV光を照射した導電性弾性層の外側に、前記被覆樹脂層を形成する工程と、を有し、
前記工程(2)において、前記導電性弾性層の両端部に対する前記エキシマUV光の照射量を、前記両端部以外の導電性弾性層への照射量よりも多くすることを特徴とする、現像ローラの製造方法。
【請求項2】
前記工程(2)において、前記導電性弾性層の両端部への照射量を、前記両端部以外の導電性弾性層への照射量よりも多くするための手段が、前記エキシマUV光を発するUVランプと前記導電性弾性層の表面との間に存在する気体の酸素濃度を、前記両端部においてより低くなるようにして、前記エキシマUV光を照射することを特徴とする請求項1に記載の現像ローラの製造方法。
【請求項3】
前記気体の酸素濃度を両端部において低くする手段が、少なくとも窒素を含むガスを前記両端部に吹き付けることを特徴とする請求項2に記載の現像ローラの製造方法。
【請求項4】
前記窒素を含むガスは、窒素:酸素=85:15〜100:0(体積比)の気体であることを特徴とする請求項3に記載の現像ローラの製造方法。
【請求項5】
前記工程(2)における前記UVランプと前記導電性弾性層の表面との照射と同じになるように、UV照度計を前記UVランプ下に設置し、前記導電性弾性層の長手方向全域に相当する範囲で172nm波長の照度を測定したとき、前記両端部に相当する照度をA[mW/cm2]、前記両端部以外の導電性弾性層に相当する照度をB[mW/cm2]とすると、A/B≧1.2となることを特徴とする、請求項2乃至4のいずれかに記載の現像ローラの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−14791(P2010−14791A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−172380(P2008−172380)
【出願日】平成20年7月1日(2008.7.1)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】