説明

現像ローラ

【課題】 アルマイト処理が施されるアルマイト領域と、アルマイトが施されない非アルマイト領域とを確実に設定し分けながらも、効率よく製造することのできる現像ローラを提供する。
【解決手段】 アルマイト処理される円筒状の外周面を有するローラ本体12と、このローラ本体12の一端(左側)から軸方向外側へ突出して導電性軸受16により回転自在に支持される左軸部14aとを有する現像ローラ10において、左軸部14aの外周面に、アルマイト処理されない非アルマイト領域Bを設定し、この左軸部14aの非アルマイト領域Bの、隣接するアルマイト領域Aとの境界部の近傍に、周状の溝部141,142を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を利用したプリンタ、複写機、ファクシミリ装置、又はこれらの機能を併せ持つ複合機等の画像形成装置に使用される現像ローラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の画像形成装置に使用される現像ローラは、一般に、円筒状の外周面を有するローラ本体と、このローラ本体の両端よりも軸方向外側へ突出して外部の軸受により回転自在に支持される軸部とを有し、隣接する感光体上の静電潜像を現像するためのトナーを前記ローラ本体上に保持する構成となっている。
【0003】
この現像ローラの材質としては、軽量化のためにアルミニウムを用いることがある。一方、現像ローラには、通常、前記ローラ本体上のトナーを前記感光体上の静電潜像へ移動させるためのバイアス電圧が印加される。このため、ローラ本体の表面の電気絶縁性が低いと、ローラ本体に隣接する感光体へこのバイアス電圧がリークする恐れがあった。そこで、特許文献1の現像ローラにおいては、アルミニウム製のローラ本体の表面にアルミニウムの酸化皮膜を形成することによってローラ本体表面の電気絶縁性を高めるという技術が適用されている。さらに、この現像ローラによれば、アルミニウムの酸化皮膜により、表面の耐摩耗性や耐食性も向上させることが可能であった。
【0004】
一方、このローラ本体の両端の軸部についても、前記ローラ本体と同様に、表面に酸化皮膜が形成されたアルミニウムによって構成すれば、軸部のうち特に軸受と回転摺動する部分の耐摩耗性を向上させることが可能であった。
【特許文献1】特開2004−318092号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、前記バイアス電圧は、通常、ローラ本体の一端側の軸部に印加されるため、当該一端側の軸部については、その外周面の全域にわたって電気絶縁性の高い酸化皮膜を形成することはできない。従って、軸部の外周面のうち少なくとも前記バイアス電圧が印加される部分については、酸化皮膜を形成しないようにする必要がある。
【0006】
ここで、アルミニウムの酸化皮膜を形成するためのアルマイト処理は、一般に、電解液が満たされたアルマイト処理槽に、被処理体を浸漬することによって行われる。従って、前記のように、軸部の外周面の一部に酸化皮膜が形成されない領域を設けるには、現像ローラのアルマイト処理を、当該領域をマスキングした状態で行う必要がある。具体的には、例えば、前記軸部の一部に筒状のマスキング部材を被せ、その状態で現像ローラをアルマイト処理槽に浸漬すればよい。このマスキング部材の材質としては、アルマイト処理時に電解液に悪影響を与えないもので、かつ、前記軸部にある程度密着し得る材質を用いることが好ましい。従って、マスキング部材の材質は、例えば、ある程度の弾性を有するゴムや樹脂が好適であると考えられる。
【0007】
しかしながら、ゴム製や樹脂製のマスキング部材を、現像ローラを大量生産する場合において繰り返し使用すると、マスキング部材の密着力が、必然的に生じるゴムや樹脂の劣化によって低下してくる。そして、マスキング部材の劣化が進行すると、マスキング部材と前記軸部との間に隙間が生じてその内部に電解液が侵入し、本来アルマイト処理してはならない部分である前記バイアス電圧の印加部分までがアルマイト処理されてしまい、当該部分にバイアス電圧を良好に印加することができなくなる。
【0008】
もちろん、マスキング部材の劣化がそこまで進行する前に、マスキング部材を新品に交換すれば前記のような問題は生じないが、通常は、マスキング部材の劣化の進行度合を判断するための基準となるものが存在しないため、マスキング部材の交換時期を適切に定めることは困難であった。このため、現像ローラをアルマイト処理した後は、前記軸部がアルマイト処理されていないか(電気絶縁性が高まっていないか)どうかを、導通チェック等により検査する必要があった。このことは、現像ローラの製造効率を悪化させる要因となっていた。
【0009】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、アルマイト処理が施されるアルマイト領域と、アルマイトが施されない非アルマイト領域とを確実に設定し分けながらも、効率よく製造することのできる現像ローラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するためのものとして、本発明は、アルマイト処理される円筒状の外周面を有するローラ本体と、このローラ本体の一端から軸方向外側へ突出して導電性軸受により回転自在に支持される軸部とを有する現像ローラであって、前記軸部の外周面には、アルマイト処理されない非アルマイト領域が設定されており、この軸部の非アルマイト領域には、隣接するアルマイト領域との境界部の近傍に、周状の溝部が少なくとも1つ設けられていることを特徴とするものである。
【0011】
この現像ローラによれば、ローラ本体の一端から軸方向外側へ突出して導電性軸受により回転自在に支持される軸部の外周面に、アルマイト処理されない非アルマイト領域が設定され、この軸部の非アルマイト領域には、隣接するアルマイト領域との境界部の近傍に、周状の溝部が少なくとも1つ設けられていることにより、アルマイト処理時に軸部の非アルマイト領域をマスキングするために、軸部の外周面に密着し得る内周面を有するマスキング部材を用いる際、このマスキング部材が、現像ローラの大量生産過程における繰り返しの使用によって多少劣化していたとしても、アルマイト領域と非アルマイト領域とを確実に設定し分けることができる。すなわち、電解液が満たされたアルマイト処理槽に現像ローラを浸漬する際、マスキング部材の密着力が劣化により低下していれば、マスキング部材は、軸部の非アルマイト領域内に電解液が侵入することを許容するようになるが、前記のように非アルマイト領域の境界部近傍に溝部が設けられていれば、侵入した電解液をその溝部に溜めることによってそれ以上電解液が非アルマイト領域内に侵入することを防止することができ、その結果、非アルマイト領域のうち溝部が形成された領域を除いた部分には、確実にアルマイト処理が施されないようにすることができる。そして、当該部分に、導電性軸受を介してバイアス電圧の印加を行うようにすれば、酸化皮膜が形成されていないために導通性が良好な部分に、バイアス電圧の印加を確実に行うことができる。
【0012】
ただし、前記溝部に電解液が溜まるような状態となってから、その後の現像ローラの製造においても同じマスキング部材を使用し続けると、マスキング部材の劣化がさらに進行して電解液の侵入量が増加し、前記溝部では電解液を吸収しきれなくなる。従って、マスキング部材は、溝部がアルマイト処理されるようになった時点で、新品と交換するのがよい。換言すれば、本発明の現像ローラによれば、前記溝部が存在することにより、マスキング部材の交換時期を適確に定めることが可能である。すなわち、前記溝部がアルマイト処理されない間はマスキング部材を継続使用し、前記溝部がアルマイト処理された時点でマスキング部材を交換するというように、マスキング部材の交換時期を定めることができる。しかも、前記溝部がアルマイト処理された時点でも、非アルマイト領域のうち溝部が形成された領域を除いた部分はまだアルマイト処理されていないため、このときの現像ローラも良品として使用することができる。このように、マスキング部材の交換時期を定める基準が明確で、しかも、それまでの期間確実に良品を製造することができるため、従来の現像ローラと異なり、導通チェックを行う必要がなく、その結果、現像ローラの製造効率を高めることができる。
【0013】
この構成において、前記非アルマイト領域に設けられた溝部の数は、1つよりも複数である方が、マスキング部材の交換周期を長くできる点で好ましい。すなわち、溝部が複数設けられていれば、非アルマイト領域の境界部に最も近い溝部から遠いものに向かって、順番に溝部がアルマイト処理されることとなるため、最も境界部から遠い溝部がアルマイト処理されるまで、マスキング部材を継続使用することができる。ただし、溝部の数を多くし過ぎても、溝の加工に要する時間が増大して製造効率が悪化することとなる。従って、これら両方の点を考慮すれば、溝部は2つであることが好ましい。
【0014】
ここで、アルマイト処理時に前記マスキング部材を軸部に被せる作業は、前記軸部をその先端側からマスキング部材に挿入するようにして行う。このため、前記軸部の先端の角部と、前記溝部の角部のうち少なくとも前記ローラ本体側の角部とには、それぞれ面取りを形成することが好ましい。このようにすれば、軸部にマスキング部材を被せる作業を円滑に行うことができる。
【0015】
また、前記軸部を、その先端側に形成された小径部と、前記ローラ本体側に形成される大径部とを有する段付きの部材によって構成し、このうちの小径部の外周面に前記非アルマイト領域を設定するようにしてもよい。このようにすれば、大径部と小径部との段差部が、非アルマイト領域の境界部にあたることとなるため、アルマイト処理を行う作業者は、マスキング部材を被せるべき領域を容易に判別することができる。しかも、作業者は、マスキング部材を大径部に当接させることによってマスキング部材の位置決めを行うことができるため、マスキング作業を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、アルマイト処理が施されるアルマイト領域と、アルマイト処理の施されない非アルマイト領域とを確実に設定し分けながらも、効率よく製造することのできる現像ローラを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の好ましい実施の形態を図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1、2は本発明の実施の形態にかかる現像ローラを示す図、図3は当該現像ローラが好適に使用される現像装置の一例を示す図、図4は当該現像装置が搭載された画像形成装置の一例を示す図である。
【0019】
最初に、図4を用いて、画像形成装置の全体構成について説明しておく。本図に示すように、画像形成装置70は、4連タンデム型のフルカラー画像形成装置であり、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの各色用に設けられた4つの画像形成ユニット22と、この画像形成ユニット22の下方に配設され、反時計方向に回転する転写ベルト62によって用紙を下流側へ(図4の左方へ)搬送し、その過程で前記画像形成ユニット22に形成されたトナー像を用紙へ転写させる用紙搬送ユニット60と、この用紙搬送ユニット60と前記画像形成ユニット22との間に、複数の給紙カセット66から選択的にピックアップされた用紙を送り込む給紙ユニット64と、前記用紙搬送ユニット60の下流側(図4の左方)に配設され、トナー像が転写された用紙を加熱することによって定着処理を行う定着ユニット68とが、略箱型の本体72に内装されることにより構成されている。
【0020】
前記各画像形成ユニット22は、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの各色に応じた4つのトナー容器(トナーカートリッジ)21と、この各トナー容器21の下方に配設される現像装置20と、この現像装置20に対向する感光体ドラム50とを備えている。
【0021】
前記各感光体ドラム50は、図4において時計方向に回転するように構成されており、この感光体ドラム50の上方には、帯電装置52と、露光装置54がそれぞれ設けられている。そして、感光体ドラム50は、帯電装置52によって外周面が一様に帯電されるとともに、その帯電後の外周面に、図略の原稿画像の読取り装置等から入力された画像データに基づく露光装置54からの光(例えばLED光や半導体レーザ)の照射を受けることにより、その外周面に静電潜像が形成されるようになっている。かかる静電潜像に現像装置20からトナーが供給されることにより、感光体ドラム50の外周面にトナー像が形成される。
【0022】
次に、前記現像装置20について、図3を用いて説明する。
【0023】
図3(a)は現像装置20の断面構造を模式的に示す図、同図(b)は上部の蓋体が取り外された状態の現像装置20の全体構成を示す斜視図である。本図に示す現像装置20は、磁性キャリアと非磁性のトナーから成る2成分現像剤を用いる場合に好適に使用されるものであり、あらかじめ内部に有するキャリアと、前記トナー容器21(図4)から供給されるトナーとを撹拌させることによってトナーを帯電させ、その帯電したトナーを所定の経路を経由させて前記感光体ドラム50上の静電潜像に飛翔させることにより、トナー像を形成するようにした非接触現像方式の現像装置である。
【0024】
この現像装置20は、前記トナー容器21(図4)から供給されたトナーをキャリアと混合して撹拌することによりトナーを帯電させる撹拌ミキサ32及びパドルミキサ34と、キャリアを外周面に保持して磁気ブラシを形成する磁気ローラ30と、この磁気ローラ30上の磁気ブラシからトナーの供給を受けてトナー薄層を外周面に形成する現像ローラ10とが、ケース35の内部に所定の位置関係で配設されることにより構成されている。
【0025】
前記ケース35は、前記現像ローラ10等を内装するケース本体36と、このケース本体36の上部をカバーする蓋体37から構成されている。ケース本体36の内部の前記磁気ローラ30の近傍には、前記磁気ブラシの厚さを制御するための規制ブレード38が設けられている。また、蓋体37には、その上部に位置する前記トナー容器21(図4)からトナーの供給を受けるためのトナー供給孔37aが設けられている。
【0026】
前記磁気ローラ30は、内部に磁性体を有しており、前記撹拌ミキサ32及びパドルミキサ34によって混合・撹拌された現像剤(トナーとキャリア)の供給を受けると、内部の磁性体に基づく磁力によって外周面にキャリアを吸着して磁気ブラシを形成するとともに、その磁気ブラシにトナーを同伴させる。この磁気ブラシは、前記規制ブレード38によって穂切りされることにより、一定の厚さに形成される。また、磁気ローラ30には、直流電源44による直流バイアスVd2が印加されている。
【0027】
一方、前記現像ローラ10には、直流電源42による直流バイアスVd1が印加されている。この直流バイアスVd1と前記磁気ローラ30に印加される直流バイアスVd2との電位差|Vd2−Vd1|(以下、電位差Δという)により、前記磁気ローラ30上の磁気ブラシに付着したトナーが現像ローラ10に移り、現像ローラ10の外周面にトナー薄層が形成されるようになっている。なお、このトナー薄層の厚みは、現像剤の抵抗や、現像ローラ10と磁気ローラ30との回転速度差によっても変化するが、前記電位差Δによっても制御することが可能である。電位差Δを大きくすると、トナー薄層が厚くなり、電位差Δを小さくすると薄くなる。この電位差Δの範囲は一般的に100v〜250v程度が適切である。
【0028】
そして、前記現像ローラ10は、外周面に形成したトナー薄層から、対向する前記感光体ドラム50上に形成された(周囲よりも電位が低下している)静電潜像に選択的にトナーを飛翔させることにより、感光体ドラム50上にトナー像を形成させる。この際、現像ローラ10へのトナーの吸着度を弱めてこのトナーの飛翔を円滑化させるため(現像性を高めるため)、現像ローラ10には、交流電源40による交流バイアスVaが、前記直流バイアスVd1に重畳して印加される。この交流バイアスVaの印加は、トナーの飛散を防ぐため、現像の直前に行われる。なお、ここでは、現像ローラ10についてその機能を中心に説明したが、その具体的形態については本文後段でさらに詳述するものとする。
【0029】
なお、現像に使用されずに前記現像ローラ10上に残ったトナーである現像残トナーは、そのまま放置しておくとカブリ等の要因になる。従って、前記電位差Δは定期的に変化するようになっており、これによって現像残トナーが磁気ローラ30上の磁気ブラシに回収されるようになっている。このようにすれば、剥ぎ取りブレードなどの特別な装置を設けることなく、現像残トナーを容易に回収してカブリの発生を抑制し、鮮明な画像を形成することができる。
【0030】
ここで、前記現像ローラ10と感光体ドラム50との間のギャップは、現像ローラ10の両端部に装着されているギャップコロ17によって定められており、そのギャップ値は150〜400μm程度、より好ましくは200〜300μm程度に設定される。このギャップ値が150μmより狭い場合は、カブリの要因となるとともに、現像ローラ10に印加された電圧の感光体ドラム50へのリークを発生させ易くなる。一方、400μmより広い場合は、トナーを前記感光体ドラム50に飛翔させることが困難になり、十分な画像濃度を得ることができない。また、選択現像を発生させる要因にもなる。
【0031】
一方、前記磁気ローラ30と現像ローラ10との間のギャップ値は、0.3〜1.5mm程度に設定するのが好ましい。
【0032】
そしてここで、以上のような現像装置20に用いられる前記現像ローラ10の具体的形態、すなわち、本発明にかかる現像ローラ10の一実施形態について、図1を用いて説明する。
【0033】
図1(a)は現像ローラ10の全体構成を示す斜視図、同図(b)〜(d)はその一端側の拡大図である。本図に示すように、現像ローラ10は、円筒状の外周面を有するローラ本体12と、このローラ本体12の両端から軸方向外側へ突出するように設けられた軸部14とを備えている。
【0034】
前記ローラ本体12は、アルミニウム合金製のいわゆる三ツ矢管によって構成されている。具体的には、外管12aと、この外管12aの内部に平行に配設される軸12cが、3個のリブ12bによって連結されることによって構成されている。
【0035】
前記軸部14は、前記ローラ本体12の軸12cから軸方向外側へ向けて一体に延設されて成る部材であり、図面左方向に突出する左軸部14aと、図面右方向に突出する右軸部14bとから構成される。これら左軸部14aと右軸部14bとは、それぞれ外部の軸受やギャップコロ17(図3)によって回転自在に支持されている。
【0036】
このうちの左軸部14aには、前記交流・直流電源40、42(図3)によるバイアス電圧の印加が、軸受を介して行われるようになっている。このため、左軸部14aを支持する軸受は、図1(a)(b)に示す導電性軸受16によって構成されている。この導電性軸受16は、その外周面(回転しない)が、外部に固定されたバイアス電圧の接点(図示省略)と接触するようになっており、その接点から供給された電圧を、導電性軸受16の内周面と回転摺動する左軸部14aに伝達するしくみになっている。また、左軸部14aは、図1(c)に示すように、先端側の小径部114aと、ローラ本体12側の大径部214aとを有する段付きの部材であり、前記導電性軸受16は、このうちの小径部114aを支持するようになっている。
【0037】
そして、前記ローラ本体12の外周面と、右軸部14bの外周面とには、全面的にアルマイト処理が施されており、これにより、電気絶縁性が高く、耐摩耗性に優れたアルミニウムの酸化皮膜が形成されている。このため、ローラ本体12においては、印加された前記バイアス電圧が感光体ドラム50(図3)へリークすることが防止され、一方の右軸部14bにおいては、軸受やギャップコロ17(図3)との回転摺動による摩耗の発生が軽減されるようになっている。さらに、アルマイト処理は、前記左軸部14aのうち大径部214aの外周面にも施されている。このように、アルマイト処理は、ローラ本体12の外周面、右軸部14bの外周面、及び左軸部14aのうち大径部214aの外周面に施されている。すなわち、これらの部材の外周面は、アルマイト処理が施されたアルマイト領域A(図1(c))となっている。
【0038】
一方、前記左軸部14aのうち小径部114aの外周面には、アルマイト処理が施されていない。すなわち、この小径部114aの外周面は、アルマイト処理が施されない非アルマイト領域Bとなっている。さらに、この小径部114aのローラ本体12側の端部には(非アルマイト領域Bのアルマイト領域A側の端部には)、周状の溝部141,142が設けられている。
【0039】
前記非アルマイト領域Bは、さらに、溝部141,142が形成される溝部形成領域B1と、それよりも小径部114aの先端側に位置して非アルマイト領域Bの大部分を占める本領域B2に分けられる。このうち溝部形成領域B1は、基本的にはアルマイト処理されないが、現像ローラ10をアルマイト処理する際のマスキングの状況によっては、アルマイト処理されるときもある(詳細は後述する)。一方、本領域B2は、確実にアルマイト処理が施されないようになっている(これについても詳細は後述する)。そして、左軸部14aのうち前記導電性軸受16によって支持されかつその導電性軸受16を介してバイアス電圧が印加される部分は、本領域B2に含まれるように設定されている。すなわち、バイアス電圧の印加は、酸化皮膜が形成されず、導通性が良好な本領域B2の一部において確実に行われるようになっている。これにより、導通不良による異常画像の発生を確実に防止することができる。一方、前記ギャップコロ17は、アルマイト処理されることによって外周面に酸化皮膜が形成されている大径部214aを支持するようになっている。これにより、ギャップコロ17との回転摺動による摩耗の発生が軽減されるようになっている。
【0040】
また、前記左軸部14aの先端の角部には、面取り15が形成されている。さらに、前記溝部141,142の左右の角部には、それぞれ面取り141a・b、142a・bが形成されている。
【0041】
次に、以上のような構成による現像ローラ10の製造方法について、図1、2を参照しながら説明する。
【0042】
現像ローラ10の製造方法は、まず、アルミニウム合金の押出し加工、または引抜き加工によってアルミニウム合金の三ツ矢管を成形し、さらにこれを切削加工することにより、前記のような、ローラ本体12と左右の軸部14a、14bとを有する形状に成形する。このとき、溝部141,142も同時に形成する。
【0043】
次に、このように成形された現像ローラ10に対してアルマイト処理を施すが、その前に、左軸部14aの小径部114a(非アルマイト領域B)に、図2に示すマスキング部材18を被せる。このマスキング部材18は、小径部114aに挿入され得る内径を有する筒状の部材であり、その一端には、底部18aを有している。また、マスキング部材18は、弾性を有するウレタンゴムによって構成されており、小径部114aにある程度密着する状態で被せられる。このマスキング部材18を小径部114aに被せる作業は、マスキング部材18の端縁部18bが大径部214aに当接するまで、マスキング部材18を押し込むことによって行う。すなわち、作業者は、マスキング部材18を大径部214aに当接させることによってマスキング部材18の位置決めを行うことができるため、その作業が行い易い。さらに、小径部114aの先端角部の面取り15、及び、溝部141、142の角部のうちローラ本体12側の面取り141b、142bが形成されていることにより、このマスキング部材18を押し込む作業を、角部に邪魔されることなく円滑に行うことができる。
【0044】
そして、このように左軸部14aの小径部114aにマスキング部材18を被せた状態で、電解液が満たされたアルマイト処理槽に現像ローラ10を浸漬することにより、現像ローラ10にアルマイト処理を施す。すると、現像ローラ10の外周面のうちマスキングされていない部分であるアルマイト領域A、すなわち、ローラ本体12の外周面と、右軸部14bの外周面と、左軸部14aのうち大径部214aの外周面とには、アルマイト処理が施される。(なお、本実施形態では、ローラ本体12の外管12aと軸12cとの間に形成された空間にも電解液が入り込むため、これに伴って外管12aの内周面やリブ12bの表面、軸12cの外周面にもアルマイト処理が施される。)一方、非アルマイト領域B、すなわち左軸部14aのうち小径部114aの外周面は、マスキング部材18によって覆われていて基本的には電解液に接触しないため、この小径部114aの外周面(非アルマイト領域B)には、アルマイト処理は施されない。
【0045】
ここで、現像ローラ10を大量生産する場合において、マスキング部材18を繰り返し使用したときは、マスキング部材18を構成するゴムの劣化により、マスキング部材18と小径部114aとの密着度が低下することがある。このようにマスキング部材18の密着度が低下すると、マスキング部材18の端縁部18bと小径部114aとの間のわずかな隙間から電解液が侵入し、非アルマイト領域Bが誤ってアルマイト処理されてしまう恐れがある。しかしながら、本実施形態の現像ローラ10によれば、小径部114aのローラ本体12側の端部(溝部形成領域B1)に、前記溝部141、142が設けられていることにより、非アルマイト領域B内に侵入した電解液は、まずローラ本体12側の溝部142に溜まるようになっているため、それ以上電解液が小径部114aの先端側(本領域B2側)へ侵入しないようになっている。ただし、侵入する電解液の量が多い場合は、電解液でこの溝部142がいっぱいになり、そこから溢れた電解液がさらに小径部114aの先端側へ侵入しようとするが、その場合でも、先端側に設けられたもう一つの溝部141がその侵入を阻むため、本領域B2まで電解液が侵入することがより確実に防止されるようになっている。
【0046】
以上のように、左軸部14aの小径部114a(非アルマイト領域B)に筒状のマスキング部材18を被せておき、その状態で現像ローラ10をアルマイト処理槽に浸漬すれば、溝部141,142の作用により、非アルマイト領域Bのうちその大部分にあたる本領域B2がアルマイト処理されることを確実に防止しながら、現像ローラ10のアルマイト処理を行うことができる。以上の工程により現像ローラ10が完成する。
【0047】
ここで、溝部形成領域B1は、マスキング部材18がどの程度小径部114aに密着しているかにより、アルマイト処理されるときもあれば、アルマイト処理されないときもある。すなわち、マスキング部材18の劣化がそれ程進行していない場合は、マスキング部材18は自身の有する弾性力によって小径部114aにある程度の力で密着し、電解液がマスキング部材18の端縁部18bから溝部形成領域B1内に侵入する余地を与えないため、溝部形成領域B1はアルマイト処理されない。一方、マスキング部材18が劣化して密着度が低下した場合は、電解液の溝部形成領域B1内への侵入がある程度許容されるため、溝部形成領域B1は、ある程度の範囲にわたってアルマイト処理される。なお、逆にこのことを利用して、マスキング部材18の交換時期を定めることも可能である。すなわち、マスキング部材18の劣化がそれ程進行していない場合は、溝部141,142はともにアルマイト処理されないか、アルマイト処理されるとしても、ローラ本体12側の溝部142のみがアルマイト処理されるため、この時点ではマスキング部材18を交換する必要はない。そして、マスキング部材18の劣化がかなり進行した場合は、溝部141,142がともにアルマイト処理されることになるため、この時点でマスキング部材18を交換すればよい。
【0048】
以上説明したように、本実施形態の現像ローラ10によれば、ローラ本体12の一端(左側)から軸方向外側へ突出して導電性軸受16により回転自在に支持される左軸部14aの外周面に、アルマイト処理されない非アルマイト領域Bが設定され、この左軸部14aの非アルマイト領域Bには、隣接するアルマイト領域Aとの境界部の近傍に、周状の溝部141,142が設けられていることにより、アルマイト処理時に左軸部14aの非アルマイト領域Bをマスキングするために用いられるマスキング部材18が、現像ローラ10の大量生産過程における繰り返しの使用によって多少劣化していたとしても、アルマイト領域Aと非アルマイト領域Bとを確実に設定し分けることができる。すなわち、現像ローラ10をアルマイト処理槽に浸漬する際、マスキング部材18の密着力が劣化により低下していれば、マスキング部材18は、電解液が非アルマイト領域B内に侵入することを許容するようになるが、前記のように小径部114aのローラ本体12側の端部(溝部形成領域B1)に溝部141,142が設けられていれば、侵入した電解液をその溝部141,142に溜めることによってそれ以上電解液が小径部114aの先端側に侵入することを防止することができ、その結果、非アルマイト領域Bのうちその大部分にあたる本領域B2がアルマイト処理されることを確実に防止することができる。そして、この本領域B2にバイアス電圧の印加を行うようにすれば、酸化皮膜が形成されていないために導通性が良好な部分に、バイアス電圧の印加を確実に行うことができる。
【0049】
しかも、本実施形態の現像ローラ10によれば、溝部141,142が存在することにより、マスキング部材18の交換時期を適確に定めることが可能である。すなわち、溝部141,142がともにアルマイト処理されない状態、またはローラ本体12側の溝部142のみがアルマイト処理される状態ではマスキング部材18を継続使用し、小径部114aの先端側の溝部141がアルマイト処理された時点でマスキング部材18を交換するというように、マスキング部材18の交換時期を定めることができる。しかも、溝部141がアルマイト処理された時点でも、非アルマイト領域Bのうちの本領域B2はまだアルマイト処理されていないため、このときの現像ローラ10も良品として使用することができる。このように、マスキング部材18の交換時期を定める基準が明確で、しかも、それまでの期間確実に良品を製造することができるため、従来の現像ローラと異なり、導通チェックを行う必要がなく、その結果、現像ローラ10の製造効率を高めることができる。
【0050】
ここで、左軸部14aの小径部114aは、その外周面に酸化皮膜が形成されていないためにバイアス電圧が良好に印加されるようになっているものの、反面、導電性軸受16と回転摺動する部分であるため、摩耗し易い状態になっている。従って、長期間の使用によって摩耗量が増大すると、それによって発生した摩耗紛が、小径部114aと導電性軸受16との間の隙間に蓄積したり、大径部214aとギャップコロ17との間の隙間に侵入したりして、現像ローラ10の回転駆動トルクのトルクアップ等を引き起こす要因となる恐れがある。しかしこのような場合でも、本実施形態の現像ローラ10によれば、溝部141、142が設けられていることにより、その摩耗紛がこの溝部141、142に溜まることとなるため、前記のように摩耗紛がギャップコロ17に侵入するというような不具合をも解消することができる。
【0051】
なお、本実施形態では、左軸部14aを、小径部114aと大径部214aとを有する段付きの部材によって構成したが、特に必要なければ段差は設けなくてもよい。また、非アルマイト領域Bは、左軸部14aの先端側の一部(小径部114a)に設けたが、導電性軸受16やギャップコロ17の配置により、左軸部14aのローラ本体12側の一部に設けてもよい。この場合、左軸部14aの根元部分までマスキング部材18を被せる必要があるため、マスキング部材18は、底部18aを有さない、両端に開口した筒状の部材によって構成するとよい。さらにこの場合、溝部141,142は、非アルマイト領域Bの左右両端部にそれぞれ設ければよい。
【0052】
また、左軸部14aの境界領域Bに設けた溝部(141,142)の数は、必ずしも2つである必要はなく、1つにしてもよい。ただし、マスキング部材18の交換周期を長くできる点からは、溝部は1つよりも複数である方が好ましい。逆に、溝部の数は2つより多くしてもよいが、製造効率の点からは、溝部は多すぎない方が好ましい。本実施形態では、これら両方の点を考慮して、溝部を2つとしている。
【0053】
ここで、前記溝部(141,142)と同様の溝部は、マスキング部材18の内周面に設けることも可能である。すなわち、図5に示すマスキング部材180のように、マスキング部材180の内周面の端部に、溝部181,182を設けてもよい。このようにすれば、左軸部14aに溝部を設けることを不要にすることができる。
【0054】
また、マスキング部材18は、ウレタンゴムによって構成したが、ある程度の弾性を有し、かつ、アルマイト処理時に電解液に悪影響を与えないものであればこれに限るものではなく、例えばその他の種類のゴムや樹脂等を使用してもよい。
【0055】
さらにまた、ローラ本体12は、外管12aと軸12cが3個のリブ12bによって連結されて成る三ツ矢管によって構成したが、必要な強度が得られればリブ12bは3本でなくてもよい。また、軸部14は、ローラ本体12(の軸12c)から一体に延設されるものとしたが、ローラ本体12とは別部材であってもよい。例えば、ローラ本体12を、内部に軸12cやリブ12bを有さない薄肉パイプ状の部材によって構成するとともに、軸部14を、大径部分と小径部分を有する段付きの部材とし、このうちの大径部分を薄肉パイプ状のローラ本体12に圧入するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】(a)は本発明の実施の形態にかかる現像ローラの全体構成を示す斜視図、(b)〜(d)はその一端側の拡大図である。
【図2】(a)は前記現像ローラの一端側の軸部にマスキング部材が被せられた状況を示す図である。
【図3】(a)は前記現像ローラが好適に使用される現像装置の断面構造を模式的に示す図、(b)は上部の蓋体が取り外された状態の現像装置の全体構成を示す斜視図である。
【図4】前記現像装置が搭載された画像形成装置の全体構成を模式的に示す図である。
【図5】前記マスキング部材の変形例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0057】
10 現像ローラ
12 ローラ本体
14(14a、14b) 軸部
114a 小径部
214a 大径部
141,142 溝部
114a、141a・b、142a・b 面取り
18 マスキング部材
A アルマイト領域
B 非アルマイト領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルマイト処理される円筒状の外周面を有するローラ本体と、このローラ本体の一端から軸方向外側へ突出して導電性軸受により回転自在に支持される軸部とを有する現像ローラであって、
前記軸部の外周面には、アルマイト処理されない非アルマイト領域が設定されており、
この軸部の非アルマイト領域には、隣接するアルマイト領域との境界部の近傍に、周状の溝部が少なくとも1つ設けられていることを特徴とする現像ローラ。
【請求項2】
前記溝部は2つであることを特徴とする請求項1記載の現像ローラ。
【請求項3】
請求項1又は2記載の現像ローラにおいて、
前記軸部の先端の角部と、前記溝部の角部のうち少なくとも前記ローラ本体側の角部とには、それぞれ面取りが形成されていることを特徴とする現像ローラ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の現像ローラにおいて、
前記軸部は、その先端側に形成される小径部と、前記ローラ本体側に形成される大径部とを有する段付きの部材とされ、
前記非アルマイト領域は、このうちの小径部の外周面に設定されていることを特徴とする現像ローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−337518(P2006−337518A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−159575(P2005−159575)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】