説明

現像ロール

【課題】トナー搬送性やトナー帯電性に優れ、長期間使用してもトナーフィルミング等による画像不良を生じず、耐久性に優れる現像ロールを提供する。
【解決手段】軸体の外周面にベースゴム層2と、上記ベースゴム層2の外周に直接もしくは他の層を介して形成された中間層3と、上記中間層3の外周に形成された表層4とを備え、上記中間層3に表面粗さ形成用の粒子1が分散されている現像ロールであって、上記表層4が、下記の(A)と(B)とを構成成分とするブロック共重合体を用いて形成されている。
(A)シリコーンポリマーから誘導される構造単位。
(B)アクリルポリマー、ポリウレタンおよびポリカーボネートからなる群から選ばれた少なくとも一つから誘導される構造単位。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真複写機、プリンター等に用いられる現像ロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真複写機等の現像ロールには、トナー帯電性およびトナー搬送性が要求される。そして、これらの性能を発現させるため、そのロール表面を均一に粗面化することが重要となる。このような、ロール表面を均一に粗面化した現像ロールを得るため、従来では、芯金の外周にベースゴム層を形成してなるベースロールの外周面を研磨し、これによりベースロール外周面に所定の表面粗さを出し、その上からコーティング液を塗工して表層を形成し、上記ロールの製造を行っていた。しかし、上記のようにベースゴム層の研磨により表面粗さの均一性を確保することは、実際には困難である。そのため、近年においては、上記ベースロールの外周面に直接もしくは他の層を介して、所定の粒径に揃えられた多数の粒子を分散させたコーティング液を塗工し、その粒子の粒径により所定の表面粗さを現出させた現像ロールが、主流となりつつある。このような現像ロールの表層材料(粒子以外の部分)には、通常、ウレタン樹脂やアクリル樹脂が用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−316111公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に開示された現像ロールのように、多数の粒子を分散させたコーティング液によってその表層を形成した場合、ロール表面に、上記多数の粒子のうちの一部のものが完全に被覆されずに、ロール表面に部分的に露出していることがある。また、ロール表面に粒子が部分的に露出していない場合であっても、ロール表面の凸部は上記粒子により形成されているため、その粒子を被覆する膜がロールの使用によって削れ、粒子が露出することがある。そして、このように粒子が露出すると、ロール表面の帯電むらを生じたり、また、そこを起点としてトナーフィルミングが生じやすくなる。
【0004】
ところで、近年、電子写真複写機等における消費電力の抑制や高速印刷等を目的とし、その印刷に用いられるトナーの低融点化が進められている。しかしながら、このような低融点トナーは、現像ロールや、他の規制部材の押圧による摩擦熱で融解しやすく、特に、前述のように表面粗さを現出させた現像ロールの外周面には、上記融解したトナーおよびその外添剤が付着しやすい。また、トナーカートリッジのロングライフ化に起因するトナー劣化も、上記付着を助長する要因となっている。そして、このように、現像ロールの外周面に上記融解したトナーおよびその外添剤が付着すると、初期段階で設定されたロールの表面粗度が増大し、かぶり性能の低下を招くこととなる。すなわち、ロール表面の粗面を形成する突起部(山部)の周りにトナーおよびトナー外添剤の局所的な付着が発生して、粗度の上昇が起こり、トナー搬送量が増加するために、かぶり性能が低下する、換言すると、トナー消費量が増加し、かつ、画像不具合を招くという問題が生じる。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、トナー搬送性やトナー帯電性に優れ、長期間使用してもトナーフィルミング等による画像不良を生じず、耐久性に優れる現像ロールの提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の現像ロールは、ベースロールと、その外周に直接もしくは他の層を介して形成される中間層と、上記中間層の外周に形成される表層とを備え、上記中間層に表面粗さ形成用の粒子が分散されている現像ロールであって、上記表層が、下記の(A)と(B)とを構成成分とするブロック共重合体を用いて形成されているという構成をとる。
(A)シリコーンポリマーから誘導される構造単位。
(B)アクリルポリマー、ポリウレタンおよびポリカーボネートからなる群から選ばれた少なくとも一つから誘導される構造単位。
【0007】
すなわち、本発明者らは、前記課題を解決するため、一連の研究を重ねた。その研究の過程で、現像ロールの表層に表面粗さ形成用の粒子を分散させるのではなく、図1に示すように、ベースゴム層2と表層4との間に中間層3を設け、この中間層3に粒子1を分散させ、ロールを作製すると、ロール表面における粗さのばらつきが、表層に粒子を分散させた場合と殆ど同じになるとともに、ロール表面に粒子が露出することもなくなり、上記粒子の露出に起因する帯電むらやトナーフィルミングは、ほぼ解消されるようになるとの知見を得た。しかしながら、このようにしてロール表面を粗面に形成した場合、低融点トナー等が融解したものが付着しやすく、特にその表層の材料に、ウレタン樹脂やアクリル樹脂等の、従来の表層材料を用いた場合、ロール表面の摩擦係数が大きくなり過ぎ、摩擦熱の発生により、上記トナーの融解が顕著になる。このような問題を解決する過程において、本発明者らは、まず、シリコーングラフトアクリル樹脂を表層材料に用い、摩擦係数の小さいロールを試作した。しかし、このロールも、耐久使用により表面摩耗が生じると、トナー離型性が低下し、画像濃度の劣化がみられた。そのため、本発明者らは更に研究を重ねた。その結果、シリコーンポリマーから誘導される構造単位(A)と、アクリルポリマー,ポリウレタンおよびポリカーボネートの少なくとも一つから誘導される構造単位(B)とを構成成分とするブロック共重合体を用いて表層を形成すると、ロール表面の摩擦係数が小さくなるとともに、たとえ耐久使用により表面摩耗した場合であっても、先のシリコーングラフトアクリル樹脂のようなトナー離型性の劣化が殆どみられず、所期の目的が達成できることを見いだし、本発明に到達した。
【0008】
上記のように、本発明の現像ロールが、その表層材料にシリコーングラフトアクリル樹脂を用いた場合よりも、耐久使用によるトナー離型性に優れる理由は、次のように考えられる。すなわち、シリコーングラフトアクリル樹脂のようにアクリルポリマー主鎖にシリコーンをグラフト重合した分子構造のものは、図4に示すように、直鎖状のポリマー主鎖41にシリコーンマクロモノマーからなる側鎖42を備えており、この側鎖42が、表面側に、いわば起立した状態で偏在分布しているため、摩耗によりこの側鎖42が削れると、途端にトナー離型性が劣化すると考えられるのである。これに対し、図3に示すように、構造単位(A)と構造単位(B)とが直鎖状に連結したブロック構造を有するポリマーであると、たとえ表面摩耗しても、摩耗したところに、その下側の構造単位(A)のシリコーン成分が露呈することとなり、トナー離型性が劣化し難くなると思われる。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明の現像ロールは、ベースロールと、その外周に直接もしくは他の層を介して形成される中間層と、上記中間層の外周に形成される表層とを備え、上記中間層に、表面粗さ形成用の粒子が分散されており、上記表層が、シリコーンポリマーから誘導される構造単位(A)と、アクリルポリマー,ポリウレタンおよびポリカーボネートの少なくとも一つから誘導される構造単位(B)とを構成成分とするブロック共重合体を用い、形成されている。そのため、トナー搬送性等に優れるとともに、長期の使用によるトナー帯電むらやトナーフィルミングを生じずに、長期にわたって良好な画像を得ることができる。また、上記粒子が露出しにくいため、帯電性、耐摩耗性の制限がなく、粒子選択の幅を広げることができる。
【0010】
特に、上記ブロック共重合体を構成する上記(A)成分と(B)成分との割合が特定の範囲に設定されていると、トナー帯電性、耐久性が良好となり、先に述べたような本発明の現像ロールにおける各特性のバランスが、より向上するようになる。
【0011】
また、上記ブロック共重合体を構成する(B)成分のガラス転移温度(Tg)が特定の範囲に設定されていると、トナーフィルミング等が解消され、より良好な画像を得ることができる。
【0012】
さらに、上記表層が導電性フィラー不含であると、耐磨耗性等の点で、より優れるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
つぎに、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0014】
本発明の現像ロールの一例を図2に基づいて説明する。この現像ロールは、軸体10と、この軸体10の外周面に沿って形成されたベースゴム層11と、このベースゴム層11の外周に形成された中間層12と、この中間層12の外周に形成された表層13とを備えている。そして、上記表層13が、特定のブロック共重合体を用いて形成されている。
【0015】
上記軸体10としては、特に限定されるものではなく、例えば、金属製の中空体や中実体が用いられる。そして、その材質としては、ステンレス、アルミニウム等があげられる。上記軸体10の外周面には、ベースゴム層11の接着性を高めるため、必要に応じて、接着剤、プライマー等を塗布してもよく、また上記接着剤、プライマー等は必要に応じて導電化してもよい。
【0016】
上記軸体10の外周面に形成されるベースゴム層11は、例えばエチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、シリコーンゴム、ポリウレタン系エラストマー等によって形成される。なかでも、上記ベースゴム層11の形成材料としては、低硬度で、へたりが少ないという点から、導電性シリコーンゴムを用いることが好ましい。この材料には、導電剤やシリコーンオイル等の各種の添加剤が適宜に配合される。導電剤としては、カーボンブラック、グラファイト、チタン酸カリウム、酸化鉄、c−TiO2 、c−ZnO、c−SnO2 (ここで「c−」は導電性を有するという意味)等の各種のものがあげられる。また、シリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル等の各種のものがあげられる。
【0017】
そして、上記ベースゴム層11の外周面に形成される中間層12には、図1に示す、本発明の基礎となる中間層3と同様に、表面粗さ形成用の粒子1を分散している。
【0018】
上記表面粗さ形成用の粒子1の形成材料としては、特に限定されるものではなく、例えば、シリカ,ウレタン樹脂,ポリアミド樹脂,フッ素樹脂,アクリル樹脂,尿素樹脂,シリコーン樹脂等があげられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。なかでも、トナーを高帯電化させることのできるシリカが好適に用いられる。
【0019】
また、上記粒子1の平均粒径は、特に限定されるものではないが、3〜30μmの範囲に設定されていることが好ましく、より好ましくは5〜15μmの範囲である。すなわち、この範囲を外れると、得られるロールにおいて、所望の表面粗さが得られなくなる傾向がみられるからである。なお、上記粒子1の平均粒径は、母集団から任意に抽出される試料を用いて導出される値である。また、粒子形状が真球状ではなく楕円球状(断面が楕円の球)等のように一律に粒径が定まらない場合には、最長径と最短径との単純平均値をその粒子の粒径とする。
【0020】
上記粒子1の分散割合は、上記中間層12の層形成用材料(粒子を除く材料)100重量部(以下「部」と略す)に対して3〜80部の範囲に設定することが好ましい。より好ましくは10〜40部の範囲である。すなわち、この範囲を外れると、ロール表面において、均一な粗面が得られにくくなる傾向がみられるからである。
【0021】
上記層形成用材料としては、例えば、EPDM,SBR,ニトリルゴム,アクリル−ニトリルゴム(NBR),水素化ニトリルゴム等の各種ゴム材料や、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル、N−メトキシメチル化ナイロン等の各種樹脂材料が用いられる。なお、上記成分以外に、必要により、カーボンブラック、金属酸化物、四級アンモニウム塩、ほう酸塩等の導電剤等を適宜に添加してもよい。
【0022】
そして、上記層形成用材料は、有機溶剤に溶解等され、コーティング液として使用に供される。上記有機溶剤としては、メチルエチルケトン(MEK)、メタノール、トルエン、イソプロピルアルコール、メチルセロソルブ、ジメチルホルムアミド等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。特に、メチルエチルケトンを用いることが、上記層形成用材料に対する溶解性と乾燥性の点で好ましい。このようなコーティング液は、粘度を0.02〜0.10Pa・sにすることが、塗工性等の点で好ましい。
【0023】
上記中間層12の外周に形成される表層13は、その形成材料として、シリコーンポリマーから誘導される構造単位(A)と、アクリルポリマー,ポリウレタンおよびポリカーボネートの少なくとも一つから誘導される構造単位(B)とを構成成分とするブロック共重合体が用いられる。また、上記構造単位の組合わせやブロック配列の順序等は、特に限定されるものではない。上記ブロック共重合体の一例としては、シリコーンブロックアクリル樹脂、シリコーンブロックウレタン樹脂、シリコーンブロックポリカーボネート等があげられるが、これらは単独であるいは二種以上併せて用いられる。なかでも、シリコーンブロックアクリル樹脂が、トナーに対する帯電性と耐磨耗性とのバランスに優れていることから、好ましい。そして、上記ブロック共重合体を構成する(A)成分と(B)成分との割合が、重量比で、(A)/(B)=5/95〜40/60の範囲に設定されていることが好ましく、より好ましくは、(A)/(B)=10/90〜35/65の範囲内である。すなわち、このような範囲に設定されていると、トナー帯電性、耐久性が良好となり、本発明の現像ロールにおける各特性のバランスが、より向上するようになるからである。他方、上記ブロック共重合体を構成する(B)成分のガラス転移温度(Tg)が−30〜60℃の範囲に設定されていることが好ましく、より好ましくは、ガラス転移温度(Tg)が−15〜45℃の範囲内である。すなわち、上記ガラス転移温度が上記範囲より低過ぎると、粘着性や摩擦係数が大きくなるためトナーフィルミングが生じ、複写画像が悪くなりやすく、逆に、上記範囲より高過ぎると、ブロック共重合体が硬くなりすぎ、スタート時にロールが円滑に回転しなかったり、クリック音が発生する等の問題が生じやすくなるからである。
【0024】
なお、上記表層13の形成材料には、導電性を付与するため、通常、カーボンブラック等の導電性フィラーが添加される。しかしながら、一方で、カーボンブラック等の導電性フィラーを添加すると、表層バインダーの持つ可とう性が損なわれ、他部材との摺動による磨耗性が大きくなったり、また、カーボンブラック等の表面に存在する−OH、−COOH等の活性水素の作用により、シリカ、ステアリン酸等のトナー外添剤やトナーバインダーが、上記カーボンブラック等に電気的・化学的に吸着し、その結果、トナー融着が発生しやすくなる場合もあることから、このような導電性フィラーを添加せずに、上記表層13を形成してもよい。
【0025】
なお、上記ブロック共重合体における重合法としては、特に限定するものではなく、例えば、溶液重合法、バルク重合法、懸濁重合法、乳化重合法等があげられる。また、重合反応を行う際に、必要に応じ、ラウリルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ブチルメルカプタン、2−メチルカプトエタノール、チオグリコール酸ブチル等の連鎖移動剤を添加し、分子量の調製を行ってもよい。また、上記ブロック共重合体以外にも、必要に応じ、導電剤、帯電制御剤等を適宜に添加してもよい。
【0026】
また、上記表層13の形成材料も、上記中間層12の形成材料と同様に、有機溶剤に溶解等され、コーティング液として使用に供される。上記有機溶剤としては、MEK等の従来公知のものが用いられる。このようなコーティング液は、粘度を0.02〜0.10Pa・sにすることが、塗工性、ロール表面における粗さのばらつきに与える影響等の点で好ましい。
【0027】
そして、上記コーティング液の塗工により形成された表層13の表面粗さ(Rz)が、2〜20μmの範囲内になっていることが好ましい。より好ましくは、3〜12μmの範囲である。すなわち、表面粗さ(Rz)が2μm未満であると、上記表層13の表面が平滑すぎるため、トナーの供給が不足し、画像濃度が出ないおそれがあり、逆に20μmを超えると、上記表層13の表面の凹凸粗面度合が大きすぎるため、トナーの供給が過剰となり、複写画質にむらが生じるおそれがあるからである。なお、上記表面粗さ(Rz)は、JIS B 0601の表面粗さの定義と表示により示されるなかの十点平均粗さに準拠して測定した値である。
【0028】
本発明の現像ロールは、例えば、つぎのようにして作製することができる。
【0029】
すなわち、まず、上記ベースゴム層11形成材料の各成分をニーダー等の混練機で混練し、ベースゴム層11形成材料を作製する。ついで、円筒状金型の中空部に、金属製の軸体10をセットし、上記円筒状金型と軸体10との空隙部に、上記ベースゴム層11形成材料を注型した後、金型を蓋し、加熱して、ベースゴム層11形成材料を架橋させる。その後、上記円筒状金型から脱型することにより、軸体10の外周面にベースゴム層11を形成する。このように、軸体の外周面にベースゴム層が形成され、ベースロールが構成される。
【0030】
一方、上記中間層12の層形成用材料を、有機溶剤とともに混合することにより溶解させて、溶液をつくる。そして、これに、上記粒子1を添加し混合することにより、中間層12形成用溶液を作製する。この場合、上記粒子1は硬質であることから、上記溶剤に溶解せず、分散状態となる。
【0031】
また、上記表層13の形成材料を、有機溶剤とともに混合し、表層13形成用溶液を作製する。
【0032】
そして、上記ベースロールにおけるベースゴム層11の外周面に、上記中間層12形成用溶液を塗工する。この塗工法は、特に制限するものではなく、ディッピング法、スプレー法、ロールコート法等の従来の方法が適用できる。そして、塗工後、乾燥および加熱処理(加硫処理、条件:120〜200℃×20〜90分)を行うことにより、上記中間層12形成用溶液中の溶剤の除去を行い、中間層12を形成する。そして、上記中間層12の外周面に、上記表層13形成用溶液を塗工する。この塗工法は、上記中間層12形成用溶液のときと同様に、従来の方法が適用できる。そして、塗工後、乾燥および加熱処理(加硫処理、条件:120〜200℃×20〜90分)を行うことにより、上記表層13形成用溶液中の溶剤の除去を行い、表層13を形成する。このようにして、図2に示すような三層構造の現像ロールを作製することができる。この現像ロールにおいて、ベースゴム層11の厚みは1〜10mmの範囲に設定することが好ましく、特に好ましくは2〜6mmである。また、中間層12の厚みは3〜30μmの範囲に設定することが好ましく、特に好ましくは5〜20μmである。そして、表層13の厚みは0.1〜10μmの範囲に設定することが好ましく、特に好ましくは0.5〜5μmである。すなわち、上記表層13の厚みが0.1μm未満であると、表層の離型性等を充分に発揮することができず、逆に、上記表層13の厚みが10μmを超えると、中間層の粗さを平滑化させ、所望の表面粗さが得られなくなるとともに、表面硬度が高くなり過ぎ、トナーに対するストレスを増加させ、トナー劣化やかぶりを引き起こすおそれがあるからである。また、硬度が高く、弾性率の高い材料を用い、厚みの薄い表層を形成した場合、へこんでも回復率がよく、圧接痕等の問題も解消される。なお、上記中間層12の厚みは、図1の矢印Aが示す厚み、すなわち、上記粒子1によって凹凸状に形成された中間層12における凹部の厚みを指す。そして、上記中間層12を含む各層の厚みは、現像ロールから、表層13、中間層12およびベースゴム層11を含む断面試料を採取し、これの顕微鏡写真に基づき測定して得ることができる。
【0033】
なお、本発明の現像ロールの例として、図2において三層構造のものをあげたが、軸体10の外周に形成される層は必ずしも三層である必要はなく、ロールの用途等に応じ、ベースゴム層11と中間層12との間に適宜の数の層を形成して三層以上としてもよい。
【0034】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
【実施例1】
【0035】
〔ベースロールの作製〕
まず、芯金としてアルミニウム製芯金を準備し、上記芯金の外周面に接着剤を塗布した。ついで、円筒状金型の中空部に、上記芯金をセットし、円筒状金型と芯金との空隙部に、シリコーンゴムコンパウンドを注型した後、金型に蓋をし、これを加熱(180℃×5分)して、シリコーンゴムコンパウンドを加硫し、その後脱型して、ベースゴム層付き芯金(ベースロール)を作製した。
【0036】
〔中間層形成用溶液の調製〕
ポリウレタン系エラストマー(UN278、坂井化学社製)100部と、カーボンブラック20部と、架橋剤10部と、MEK400部とを混合して得られるポリマーの溶液に、平均粒径20μmのウレタン樹脂からなる粒子(バーノックCFB100、大日本インキ化学工業社製)20部を分散して混合、攪拌することにより、中間層形成用溶液を調製した。
【0037】
〔表層形成用溶液の調製〕
シリコーンポリマー(KF6001、信越化学社製)20部と、メタクリル酸メチル(MMA)50部と、アクリル酸n−ブチル(BA)24部と、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)6部とを、メチルイソブチルケトン(MIBK)溶液中、100℃×5時間還流し反応させ、シリコーンブロックアクリル樹脂〔シリコーンブロック/アクリルブロック=20/80(重量比)、アクリルブロックのガラス転移温度(Tg):35℃〕を得た。このようにして得られたシリコーンブロックアクリル樹脂100部と、カーボンブラック20部と、MEK400部とを混合することにより、表層形成用溶液を調製した。
【0038】
〔現像ロールの作製〕
上記ベースロールの外周面に、上記中間層形成用溶液をロールコート法により塗工した後、乾燥および加熱処理を行い、ベースゴム層の外周面に中間層を形成した。さらに、上記中間層の外周面に、上記表層形成用溶液をロールコート法により塗工した後、乾燥および加熱処理を行い、中間層の外周面に表層を形成した。このようにして、三層構造の現像ロールを作製した(図2参照)。そして、このロールのベースゴム層の厚みは5mmであり、中間層の厚みは10μmであり、表層の厚みは1μmである。
【実施例2】
【0039】
実施例1と同様にして、シリコーンブロックアクリル樹脂〔シリコーンブロック/アクリルブロック=20/80(重量比)、アクリルブロックのガラス転移温度(Tg):35℃〕を得、このシリコーンブロックアクリル樹脂100部と、MEK400部とを混合し、樹脂溶液を調製した。そして、実施例1における表層形成用溶液を、上記調製の樹脂溶液に代えた。それ以外は、実施例1と同様にして、現像ロールを作製した。
【実施例3】
【0040】
シリコーンポリマー(KF6001、信越化学工業社製)30部と、メタクリル酸メチル(MMA)44部と、アクリル酸n−ブチル(BA)20部と、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)6部とを、メチルイソブチルケトン(MIBK)溶液中、100℃×5時間還流し反応させ、シリコーンブロックアクリル樹脂〔シリコーンブロック/アクリルブロック=30/70(重量比)、アクリルブロックのガラス転移温度(Tg):35℃〕を得た。このようにして得られたシリコーンブロックアクリル樹脂100部と、カーボンブラック20部と、MEK400部とを混合し、樹脂溶液を調製した。そして、実施例1における表層形成用溶液を、上記調製の樹脂溶液に代えた。それ以外は、実施例1と同様にして、現像ロールを作製した。
【実施例4】
【0041】
シリコーンポリマー(KF6001、信越化学工業社製)20部と、メタクリル酸メチル(MMA)46部と、アクリル酸n−ブチル(BA)28部と、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)6部とを、メチルイソブチルケトン(MIBK)溶液中、100℃×5時間還流し反応させ、シリコーンブロックアクリル樹脂〔シリコーンブロック/アクリルブロック=20/80(重量比)、アクリルブロックのガラス転移温度(Tg):25℃〕を得た。このようにして得られたシリコーンブロックアクリル樹脂100部と、カーボンブラック20部と、MEK400部とを混合し、樹脂溶液を調製した。そして、実施例1における表層形成用溶液を、上記調製の樹脂溶液に代えた。それ以外は、実施例1と同様にして、現像ロールを作製した。
【実施例5】
【0042】
シリコーンブロックウレタン樹脂〔シリコーンブロック/ウレタンブロック=16/84(重量比)、ウレタンブロックのガラス転移温度(Tg):25℃〕(X−22−2782、信越化学社製)100部と、カーボンブラック20部と、MEK400部とを混合し、樹脂溶液を調製した。そして、実施例1における表層形成用溶液を、上記調製の樹脂溶液に代えた。それ以外は、実施例1と同様にして、現像ロールを作製した。
【実施例6】
【0043】
シリコーンブロックウレタン樹脂〔シリコーンブロック/ウレタンブロック=15/85(重量比)、ウレタンブロックのガラス転移温度(Tg):35℃〕(X−22−2760、信越化学社製)100部と、カーボンブラック20部と、MEK400部とを混合し、樹脂溶液を調製した。そして、実施例1における表層形成用溶液を、上記調製の樹脂溶液に代えた。それ以外は、実施例1と同様にして、現像ロールを作製した。
【実施例7】
【0044】
シリコーンブロックポリカーボネート〔シリコーンブロック/カーボネートブロック=10/90(重量比)、カーボネートブロックのガラス転移温度(Tg):40℃〕(PS099、ハルスアメリカ社製)100部と、カーボンブラック20部と、MEK400部とを混合し、樹脂溶液を調製した。そして、実施例1における表層形成用溶液を、上記調製の樹脂溶液に代えた。それ以外は、実施例1と同様にして、現像ロールを作製した。
【0045】
〔比較例1〕
シリコーングラフトアクリル樹脂(ガラス転移温度:40℃)(サイマックUS270、東亞合成社製)100部と、カーボンブラック20部と、MEK400部とを混合し、樹脂溶液を調製した。そして、実施例1における表層形成用溶液を、上記調製の樹脂溶液に代えた。それ以外は、実施例1と同様にして、現像ロールを作製した。
【0046】
〔比較例2〕
シリコーングラフトウレタン樹脂(ガラス転移温度:43℃)(ダイアロス−SP2200、大日精化社製)100部と、カーボンブラック20部と、MEK400部とを混合し、樹脂溶液を調製した。そして、実施例1における表層形成用溶液を、上記調製の樹脂溶液に代えた。それ以外は、実施例1と同様にして、現像ロールを作製した。
【0047】
〔比較例3〕
アクリル樹脂(ダイナトールBR106、三菱レーヨン社製)100部と、カーボンブラック20部と、MEK400部とを混合し、樹脂溶液を調製した。そして、実施例1における表層形成用溶液を、上記調製の樹脂溶液に代えた。それ以外は、実施例1と同様にして、現像ロールを作製した。
【0048】
〔比較例4〕
ウレタン樹脂(ニッポラン2304、日本ポリウレタン社製)100部と、カーボンブラック20部と、MEK400部とを混合し、樹脂溶液を調製した。そして、実施例1における表層形成用溶液を、上記調製の樹脂溶液に代えた。それ以外は、実施例1と同様にして、現像ロールを作製した。
【0049】
〔比較例5〕
フッ素樹脂(ネオフロンVT−100、ダイキン工業社製)100部と、カーボンブラック20部と、MEK400部とを混合し、樹脂溶液を調製した。そして、実施例1における表層形成用溶液を、上記調製の樹脂溶液に代えた。それ以外は、実施例1と同様にして、現像ロールを作製した。
【0050】
このようにして得られた各現像ロールについて、下記の基準に従い、各特性の比較評価および測定を行った。これらの結果を後記の表1〜表2に併せて示した。
【0051】
〔粗度〕
現像ロールを、電子写真複写機に組み込み、LBP2510用マゼンダカラーカートリッジを使用し、高温高湿環境(42.5℃×85%RH)下で空回転(216rpm)させた。そして、現像ロールの表面粗さに関して、十点平均粗さ(Rz)を、電子写真複写機に組み込む前(初期)と、電子写真複写機に組み込み24時間後、48時間後について、それぞれ測定した。この表面粗さ(周方向)の測定は、サーフコム(東京精密社製)にて、JIS B 0601:1982に準拠して行った。
【0052】
〔トナー付着〕
上記粗度の測定の際、その現像ロール表面のトナー付着具合(24時間後、48時間後)をSEMにて観察した。そして、トナー付着が殆どみられないものを○と示し、現像ロール表面の凸部あるいは凹部にトナー付着による外観変化がみられたものを×と示した。
【0053】
〔画像評価〕
得られた現像ロールを電子写真プリンターに組み込み、実際にプリントを行った。そして、1万枚プリント後(耐久後)において目視評価した。すなわち、文字を印刷し、プリント画像に問題がなく、細線にいたるまで鮮明にプリントされたものを○とし、かすれやかぶり等が発生したものを×とした。なお、かすれとは、細線がとぎれたものをいい、かぶりとは、イメージのないところにトナーが飛んでいるものをいう。
【0054】
【表1】

【0055】
【表2】

【0056】
上記の結果から、実施例品では、耐久後の粗度が、初期に比べてほとんど差がないことがわかる。さらに、実施例品では、耐久後の画像評価が、初期の画像評価とほとんど差がなく良好であることから、耐久後でも、画像の劣化がほとんどみられない。これに対して、比較例品では、トナー帯電性の点では良好であるが、耐久後の粗度が初期に比べて大きく変動しており、耐久後の画像評価が、初期の画像評価に比べて顕著に劣化する。なかでも、グラフト変性した表層材料を用いた比較例1、2品は、24時間時点では粗度変化およびトナー付着具合が少ないが、耐久使用(48時間時点)でトナー付着がみられ、粗度が上昇した。これは、表層材料のシリコーン(側鎖)が、表面に出ているため、摩耗しやすいことにより生じたものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の現像ロールにおける、層形成状態の一例を示す要部拡大図である。
【図2】本発明の現像ロールの一例を示す断面図である。
【図3】ブロック共重合体の構造を示す模式図である。
【図4】シリコーングラフトアクリル樹脂の構造を示す模式図である。
【符号の説明】
【0058】
1 粒子
2 ベースゴム層
3 中間層
4 表層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースロールと、その外周に直接もしくは他の層を介して形成される中間層と、上記中間層の外周に形成される表層とを備え、上記中間層に表面粗さ形成用の粒子が分散されている現像ロールであって、上記表層が、下記の(A)と(B)とを構成成分とするブロック共重合体を用いて形成されていることを特徴とする現像ロール。
(A)シリコーンポリマーから誘導される構造単位。
(B)アクリルポリマー、ポリウレタンおよびポリカーボネートからなる群から選ばれた少なくとも一つから誘導される構造単位。
【請求項2】
上記ブロック共重合体を構成する上記(A)成分と(B)成分との割合が、重量比で、(A)/(B)=5/95〜40/60の範囲に設定されている請求項1記載の現像ロール。
【請求項3】
上記ブロック共重合体を構成する(B)成分のガラス転移温度(Tg)が−30〜60℃の範囲に設定されている請求項1または2記載の現像ロール。
【請求項4】
上記表層が、導電性フィラー不含である請求項1〜3のいずれか一項に記載の現像ロール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−178099(P2006−178099A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−369938(P2004−369938)
【出願日】平成16年12月21日(2004.12.21)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】