説明

現像剤担持体、現像ローラ、現像装置及び画像形成装置

【課題】放置横帯の発生を防止できる現像ローラと、この現像ローラを用いた画像形成装置とを提供する。
【解決手段】導電性のシャフト10aと、シャフト10aの周囲に設けた弾性層10bと、弾性層10bの表面に形成した表面処理層10cとを備えた現像ローラ10において、表面処理層がウレタン溶液で表面処理したものある場合、表面処理層10cにコロナ放電を発生させた際の定常状態の抵抗値であるコロナ放電抵抗値の上限を7.85[LogΩ]以下にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光体ドラムの静電潜像を現像する現像剤担持体と、この現像剤担持体を用いた現像ローラ、現像装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真式の画像形成装置は、現像ローラとトナー供給ローラでトナーを摩擦帯電して現像ローラの周面に吸着させ、像担持体としての現像ローラから感光体ドラムにトナーを搬送し、感光体ドラムの周面の静電潜像にトナーを吸着させて可視化させるように構成されている。現像ローラとしては、導電性シャフトの周囲に半導電性の弾性層を設けたものを使用している。弾性層は、カーボン、導電性フィラー等の電子導電剤又はイオン導電剤を分離させたウレタンゴム、NBR、EPDM、シリコーンゴム等からなる。そして、弾性層の表面には、トナーの帯電性を良くし、かつ、化学反応による感光体ドラムの汚染が発生しないようにするため、帯電性付与剤、表面改質剤等による表面処理が施されている。この表面処理には、感光体ドラムに長期間圧接された状態に置かれても、ニップ痕が形成されない材料、すなわち、圧縮永久歪みの小さい材料を使用している。圧縮永久歪みの小さい表面処理層を形成する技術としては、イオン導電性の高いウレタンゴム製の弾性層の表面をイソシアネート溶液で表面処理を行う方法が知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−148470号公報(段落0026)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、現像ローラの周面には、トナーの層厚を均一にする現像ブレードと、トナーの現像装置ケーシング外への飛散を防止するシール部材とを摺接させてある。つまり、これらの部材によって、現像ローラの周面はケーシングの内側と外側に面する部分とに区画されている。現像ローラの表面電位は、現像装置の運転時に上昇し、運転停止時には外気からの吸湿により徐々に低下するが、ケーシング内に面する部分は、ケーシング外に面する部分に較べてトナーの接触量が多いため、吸湿による表面電位の低下が緩慢になる。このため、現像装置の運転停止期間が長くなると、現像ローラの表面電位に差を生じ、画像の濃度むらを生じる原因となる。つまり、運転停止の期間が長くなると、その後の運転開始時に現像ローラの周長間隔でバンド状の濃度むら(以下、放置横帯という)を生じることになる。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑み、放置横帯の発生を防止できる現像剤担持体と、この現像剤担持体を用いた現像ローラ、現像装置及び画像形成装置とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するための本発明の現像剤担持体は、現像剤を担持する担持層を備え、該担持層のコロナ放電抵抗値が所定値であることを特徴とする。
【0006】
前記目的を達成するための本発明の現像ローラは、前記現像剤担持体を導電性のシャフトの周囲に設けたことを特徴とする。
【0007】
前記目的を達成するための本発明の現像装置は、前記現像ローラを備えたことを特徴とする。

【0008】
前記目的を達成するための本発明の画像形成装置は、前記現像装置と、該現像装置により現像された現像剤像を記録媒体に転写する転写装置とを備えたことを特徴する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、現像剤担持体の担持層の表面電荷が移動し易くなる。従って、現像剤担持体の担持層の表面電荷が現像剤担持体に備えられる導電部に逃げ易くなり、長期の運転停止があっても、現像ローラの表面電位が大きな差を生じなくなり、放置横帯の発生防止に役立つ。
また、放置横帯の発生を防止できる上限値を部分抵抗ではなくてコロナ放電抵抗で規定してあるので、弾性層の材質の相違による上限値のばらつきがなくなり、実用性が増す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は画像形成装置の概略構成図、図2は図1の現像装置の拡大図、図3は現像ローラの断面図、図4は現像ローラのコロナ放電抵抗の測定方法を説明する図、図5は現像ローラのコロナ放電抵抗を測定する際の等価回路を示す図、図6は現像ローラの表面電位の変化を示す図、図7は現像ローラの表面電位の分布を示す展開図、図8は印刷パターンを示す図である。
【0011】
図1において、記録媒体である記録紙1は給紙カセット2に収容されており、搬送ローラ3により現像装置4に供給される。現像装置4は記録紙1に画像を形成し、画像の形成された記録紙1は定着装置5を通って筐体6の上方に排出される。
【0012】
図2は図1の現像装置4を拡大して示している。
感光体ドラム7は導電性支持体と光導電層からなるもので、図示しない駆動機構により図中矢印方向に回転する。導電性支持体としてはアルミニウム製の胴体を用い、光導電層としては電荷発生層、電荷輸送層を順次積層した有機系感光体を用いる。帯電ローラ8は金属シャフトに半導電性エピクロロヒドリンゴム層を被覆したものである。LEDヘッド9は、露光装置であり、感光体ドラム7に対向して配設されている。現像剤であるトナーを担持する現像剤担持体である現像ローラ10は、金属シャフト10aの周囲に発泡材からなる弾性層10bを設け、その表面に表面層としての表面処理層10cを設けたもので、これを感光体ドラム7の周面に圧接してある(図3参照)。トナー供給ローラ11は金属シャフトの周囲に発泡層を設けたもので、これを現像ローラ10の周面に圧接されている。現像ローラ10とトナー供給ローラ11は別々の駆動手段に連結されて同一方向に回転する。
【0013】
トナー12は、結着樹脂としてポリエステル樹脂を用い、内部添加剤及び帯電制御剤、離型剤、着色剤、外部添加剤としてシリカを有している。現像ブレード13は、現像ローラ10のトナー層の厚さを均一化する薄層形成器であって、現像装置4のケーシング4aの内部で現像ローラ10の上方に配置され、その先端を現像ローラ10の周面に摺接させてある。現像ローラ10の下方には、トナー12がケーシング4aの外に飛散するのを防止するためのシール部材14を設けてある。このシール部材14の先端も現像ローラ10の周面に摺接させてある。クリーニングブレード15は、感光体ドラム7上の残留トナーを掻き落して容器16に回収する(図1参照)。
【0014】
次に、この現像装置4の動作について説明する。
感光体ドラム7は、図示しない駆動機構により図中矢印方向に回転させられる。帯電ローラ8は、感光体ドラム7に接触して摩擦力により図中矢印方向に回転させられ、図外の直流電源からの電圧印加により感光体ドラム7を帯電させる。また、LEDヘッド9は帯電ロ−ラ8によって帯電させられた感光体ドラム7に露光することで静電潜像を形成する。そして、現像ローラ10は、感光体ドラム7に接触しながら、図外の駆動機構を介し感光体ドラム7に対して相対速度が速くなるよう図中矢印方向に回転させられ、トナー12を現像領域に運び、感光体ドラム7に形成された静電潜像にトナー12を付着させ、静電潜像を可視像化してトナー像を形成する。
【0015】
トナー供給ローラ11は、現像ロ−ラ10に接触しながら、図外の駆動機構を介して図中矢印方向に回転し、現像ロ−ラ10との圧接によりトナー12を摩擦帯電させて現像ロ−ラ10に吸着する。なお、トナー供給ローラ11は、現像ローラ10から感光体ドラム7へ現像されなかったトナー12を掻き取り、現像ローラ10上のトナー12を一定の状態にする役割をしている。現像ブレード13は、トナー供給ロ−ラ11によって現像ロ−ラ10に供給されたトナー17を薄層化する。転写ローラ17は、感光体ドラム7に接触しながら、図外の駆動機構を介して図中矢印方向に回転させられ、図外の電源によって電圧が印加され、可視像化された感光体ドラム7上のトナー像を記録紙1に転写する。クリーニングブレード15は感光体ドラム7上の残留トナー12を除去する。定着装置5は転写されたトナー像を記録紙1に定着する。なお、トナーカートリッジ18はトナー12を収容し、その自重によりトナー12を現像装置4に供給する(図1参照)。
【0016】
次に、本発明の要部である現像ローラ10について詳細に説明する。
現像ローラ10は、図3に示すように、現像ローラ10へ図示せぬ電圧印加部から電圧を印加するために導電部である(本実施形態では、金属製の)シャフト10aと、シャフト10aの周囲に設けた弾性層10bと、弾性層10bの表面に帯電性付与剤、表面改質剤等による表面処理で形成した表面層である表面処理層10cとを備えている。弾性層10bは、弾性体材料としてのウレタンゴムに、1種類又は2種類以上の電子伝導性の材料から成る導電剤(例えば、カーボンブラック)を所定の添加量だけ添加し、均一に分散させて形成されている。表面処理層10cは、弾性層10bの表面にウレタン溶液を塗布し、加熱し硬化させ、乾燥させて形成されている。表面処理層10cの形成には、ウレタン溶液にフッ素を添加したものを使用する場合もある。なお、現像ローラ10の製造方法については、既に特開2005−148470号公報等より公知であるので、詳細な説明は省略する。なお、本実施形態では、現像剤担持体を弾性層10bと表面処理層10cとを備えた担持層から構成される現像ローラ10を例として説明したが、例えば弾性層を複数備えるなど、担持層がより多くの複数の層から形成されてもよい。
【0017】
表面処理層10cがウレタン溶液のみによる表面処理である場合、現像ローラ10のコロナ放電抵抗値は7.85[LogΩ](より好ましくは7.75[LogΩ])以下にしてある。一方、表面処理層10cがフッ素を添加したウレタン溶液による表面処理である場合には、現像ローラ10のコロナ放電抵抗値は7.89[LogΩ] (より好ましくは7.70[LogΩ])以下にしてある。現像ローラ10のコロナ放電抵抗方法については後述する。コロナ放電抵抗値の変化は、弾性層10bを成形する際の導電剤の配合比の調整で行っている。なお、表面処理層10cを含む弾性層10bの部分抵抗値の下限は5.10[LogΩ]にしてある。抵抗値がこれを下回ると、感光体ドラム7への電荷のリークが生じるためである。なお、部分抵抗の測定方法については後述する。
【0018】
次に、現像ローラ10のコロナ放電抵抗値の測定方法について説明する。
コロナ放電抵抗値の測定には、図4に示す誘電緩和測定装置を用いる。キャリア50には、現像ローラ10の表面処理層10cとの間にコロナ放電を発生させる電極51と、現像ローラ2の表面電荷を検出するプローブ52とを設けてある。そして、電極51と現像ローラ10のシャフト10aとの間に所定の電圧を印加して、電極51と表面処理層10cとの間にコロナ放電を発生させながらプローブ52を現像ローラ10の軸方向に沿って移動させる。図5はその際の等価回路を示している。ここで、コロナ放電による電流Jaは、電極51と電源との間に設けた電流計(図示せず)で測定される。また、現像ローラ10の表面電荷をプローブ52で検出して表面電位Vaを求める。キャパシタンスCのコンデンサを流れる電流とその両端電圧は経時的に減衰し、両者はコロナ電圧印加後の時間の関数になる。つまり、以下の式で表わされる皮相抵抗値Raは、プローブ52が電荷を測定している瞬間における表面電位Vaと電流Jaの比を意味する。
Ra=Va/Ja
【0019】
ただし、この値Raは、帯電した材料の固有電荷密度、移動度等の電荷移送パラメータを考慮に入れておらず、いわば見かけ上の抵抗値(所謂、皮相抵抗)である。この抵抗値Raの値からキャパシタンス成分、電荷移送パラメータ等を考慮して算出したものがコロナ放電抵抗値Reであって、これは以下の式で表わされる定常状態の電圧Vaと電流Jaの比である。本明細書では、現像ローラ10のコロナ放電抵抗値をこのように定義する。
【数1】

【0020】
ところで、現像ローラ10の表面電位Vaとコロナ放電抵抗値Reは、図6に示すように現像装置4の運転にともなって上昇し、運転停止時には、外気からの吸湿により徐々に低下していく。現像ローラ10の周面は、現像ブレード13とシール部材14によって現像装置4のケーシング4aの内側と外側に面する部分とに区画されている(図2,7参照)。このうち、ケーシング4aの内側に面する部分Aは、ケーシング4aの外側に面する部分Bに較べて、トナー12の接触量が多く、外気からの吸湿による表面電位Vaの低下が緩慢になる。このため、現像装置4の運転停止期間が長くなると、現像ローラ10の表面電位Vaはケーシング内外に面する部分A,Bで差を生じ、画像の濃度むらを生じる原因となる(図6参照)。つまり、運転停止の期間が長くなると、その後の運転開始時に現像ローラ10の周長間隔でバンド状の濃度むらを生じ、所謂、放置横帯を生じるのである。
【0021】
そこで、現像ローラ10のコロナ放電抵抗値Reを上述の値に設定して放置横帯の発生を防止している。このようにすれば、現像剤担持体である現像ローラ10の担持層の表面電荷が移動し易くなる。従って、現像ローラ10の表面処理層10cの表面電荷が現像ローラ10に備えられる導電部であるシャフト10aに逃げ易くなり、現像ローラの表面電荷がシャフトに逃げ易くなるので、長期の運転停止があっても、現像ローラの表面電位は大きな差を生じなくなり、放置横帯の発生を防止できるのである。
ところで、放置横帯の発生を防止するためには、表面処理層10cを含む弾性層10bの抵抗値の上限は、コロナ放電抵抗ではなくて、測定の容易な部分抵抗で規定してもよいが、その場合、表面処理層10cの肉厚や弾性層10bの材質などの相違による上限値のばらつきが生じ、実用性がなくなってしまう。
【0022】
すなわち、現像装置4の放置期間(運転停止期間)が長くなると、現像ローラ10の表面上のA部とB部に生じる残留電荷の差により放置横帯が発生すると考えられる。そのため、コロナ放電を行い、現像ローラ10上の電荷減衰、残留電荷、誘電抵抗等のパラメータを測定できる誘電緩和測定装置によるコロナ放電抵抗の規定が最も適している。これに対し、部分抵抗で規定すると、放置前後の残留電荷の差を測定することができない。
【実施例1】
【0023】
本実施例では、現像ローラ10の表面電位差と放置横帯の発生との関係を調べた。
まず、1つの現像ローラ10を現像装置4にセットし、運転停止期間を変化させて放置横帯の発生状況を調べた。その後、現像装置4から現像ローラ10を取り外し、そのケーシング内外に面する部分A,Bにおけるコロナ放電抵抗値Reと表面電位Vaを調べた。現像ローラ10には、表面処理層10cをウレタン溶液のみの表面処理で形成したものを用いた。実験に用いた現像ローラ10の寸法は次の通りである。
・シャフト2a:直径10mm
・弾性層10b:肉厚4.8mm、長さ348mm
・表面処理層10c:厚さ5〜10μm
【0024】
本実施例では、図1に示す画像形成装置を用い、図8に示す5%デューティーのパターン60を2000枚印刷した後、温度10℃、湿度20%の環境に画像形成装置を所定の時間放置した。印刷実行時の現像バイアスは次のように設定した。なお、デューティーとは印刷密度を示しており、例えば、A4用紙1枚の印刷可能範囲に全面ベタ印刷時の面積率100%印刷のことを100%dutyとする。
・現像ローラ10:−200V
・ トナー供給ローラ11:−350V
・ 帯電ローラ8:−1000V
・ 現像ブレード13:−350V
【0025】
所定時間の放置後、ハーフトーンの印字パターンを印字し、放置横帯の発生状況を調べた。放置横帯の判定基準としては、以下の式で表わされる、印刷サンプル上での横帯部分の濃度Daと非横帯部分の濃度Dbの濃度段差率σを用いた。なお、濃度測定にはキャノンアイテック株式会社製の分光濃度計(X-Rite500)を使用した。
σ=Da/Db
この値を基準とすると、放置横帯がほぼ消えていて視覚的に確認できない場合(表1,2,3に示す判定○)はσ≦1.052、濃度段差が大きく放置横帯が非常に目立つ場合(同判定×)はσ<1.07、放置横帯が僅かに視覚的に確認できる場合(同判定△)は1.052<σ≦1.07であった。
【0026】
放置横帯の判定を行った後、現像装置4から現像ローラ10を取り出し、誘電緩和測定装置(Quality Engineering Associates社製のDRA-2000L)により現像ローラ10のコロナ放電抵抗値Reと表面電位Vaを測定し、以下の式で示す比率Sr,Svを求めた。
Sr=Rea/Reb(Rea は放置横帯発生部分AでのReの平均値、Rebは放置横帯非発生部分BでのReの平均値である)
Sv=V/V(Vは放置横帯発生部分AでのVaの平均値、Vは放置横帯非発生部分BでのVaの平均値)
なお、測定の条件としては、コロナ電圧は6KV、軸方向の測定サンプリング間隔は0.1mm、周方向の測定サンプリング間隔は6°、キャリア50の軸方向移動速度は151.3mm/S、カットオフ電圧Vmx0.91KV、最大電流密度Jmxは23.97μA/cmとした。なお、各計測ポイントの測定値の平均を測定の結果とした。
【0027】
そして、放置時間を変えて同様のことを繰り返し、比率Srと比率Svをパラメータとする放置横帯の発生状況を調べた。結果は表1に示すとおりであった。
【表1】

この表より、比率Srが1.25まで低下すると、放置横帯が目立ちにくくなり、比率Srが1.15になると、放置横帯が発生しなくなるのが分かる。
また、比率Svが1.75まで低下すると、放置横帯が目立ちにくくなり、比率Svが1.35になると、放置横帯が発生しなくなるのが分かる。
【実施例2】
【0028】
本実施例では、カーボンブラックの配合比を変えて電気抵抗の異なる弾性層10bを有する現像ローラ10を9個製作し、各現像ローラ10について放置横帯の発生状況を調べた。
まず、各現像ローラ10のコロナ放電抵抗値Reと部分抵抗値を測定した。次いで、各現像ローラ10を画像形成装置に組み込んで印刷を実行し、96時間の放置後、再度印刷を実行して放置横帯の発生状況を調べた。結果は表2に示すとおりであった。
実験に用いた現像ローラ10は、弾性層10bと表面処理層10cが実施例1のものと同じである。その他、画像形成装置の運転方法や放置横帯の発生評価方法なども実施例1と同じである。
【0029】
部分抵抗の測定は次のようにして行った。
すなわち、外径6mm、幅1.5mmのボールベアリングを現像ローラ10の長手方向6箇所に等ピッチで配設し、これらボールベアリングを20.0gfの力で表面処理層10cに押し当て、各ボールベアリングとシャフト10aとの間にDC−100Vの電圧を印加して6箇所の抵抗値を測定し、その平均を取ったものが部分抵抗値である。
【表2】

【0030】
この表より、コロナ放電抵抗値Re(印刷実行前の初期の値)が7.85[LogΩ]まで低下すると、放置横帯が目立ちにくくなり、コロナ放電抵抗値Reが7.75[LogΩ]になると、放置横帯が発生しなくなるのが分かる。
【実施例3】
【0031】
本実施例では、弾性層10bの表面処理液としてウレタン溶液にフッ素を添加したものを用い、表面処理層10cの相違によるコロナ放電抵抗値Reの上限値の変化を調べた。その他、現像ローラ10の弾性層10bの材質や画像形成装置の運転方法、放置横帯の発生評価方法などは実施例2と同じである。結果は表3に示すとおりである。
【表3】

【0032】
この表より、コロナ放電抵抗値Reが7.89[LogΩ]まで低下すると、放置横帯が目立ちにくくなり、コロナ放電抵抗値Reが7.70[LogΩ]になると、放置横帯が発生しなくなるのが分かる。なお、フッ素を含むウレタン溶液で表面処理層10cを形成すると、現像ローラ10の絶縁性が向上し、画像濃度が向上するが、このこともコロナ放電抵抗値Reの増加により裏付けられている。
【0033】
なお、本実施例では、現像剤担持体を弾性層10bと表面処理層10cとを備えた担持層から構成される現像ローラ10を例として説明したが、担持層が複数の層から形成される必要はなく、現像剤を担持するための担持層のコロナ放電抵抗値が先述の実施例1ないし実施例3のいずれかの所定値であればよく、例えば、担持層がベルト状でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、プリンタや複写機、ファクシミリなどの電子写真方式の画像形成装置に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】画像形成装置の概略構成図である。
【図2】図1の画像形成装置で使用する現像装置の拡大図である。
【図3】現像ローラの断面図である。
【図4】現像ローラのコロナ放電抵抗の測定方法を説明する図である。
【図5】現像ローラのコロナ放電抵抗を測定する際の等価回路を示す図である。
【図6】現像ローラの表面電位の変化を示す図である。
【図7】現像ローラの表面電位の分布を示す展開図である。
【図8】図8は印刷パターンを示す図である。
【符号の説明】
【0036】
1 記録紙
4 現像装置
4a ケーシング
7 感光体ドラム
10 現像ローラ
10a シャフト
10b 弾性層
10c 表面処理層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤を担持する担持層を備え、該担持層のコロナ放電抵抗値が所定値であることを特徴とする現像剤担持体。
【請求項2】
前記担持層が弾性層と表面層とからなることを特徴とする請求項1に記載の現像剤担持体。
【請求項3】
前記担持層が導電部に設けてあることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の現像剤担持体。
【請求項4】
前記導電部がシャフトであることを特徴とする請求項3に記載の現像剤担持体。
【請求項5】
前記表面層がウレタン溶液による表面処理で形成してあることを特徴とする請求項2ないし請求項4のいずれか1項に記載の現像剤担持体。
【請求項6】
前記コロナ放電抵抗値の常用対数値が7.85[LogΩ]以下 であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の現像剤担持体。
【請求項7】
前記表面層がフッ素を含むウレタン溶液による表面処理で形成してあることを特徴とする請求項2ないし請求項4のいずれか1項に記載の現像剤担持体。
【請求項8】
前記コロナ放電抵抗値の常用対数値が7.89[LogΩ]以下 であることを特徴とする請求項1ないし請求項4及び請求項7のいずれか1項に記載の現像剤担持体。
【請求項9】
前記弾性層がウレタンゴムで形成してあることを特徴とする請求項2ないし請求項8のいずれか1項に記載の現像剤担持体。
【請求項10】
前記ウレタンゴムがカーボンブラックを含むことを特徴とする請求項9に記載の現像剤担持体。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の現像剤担持体を導電性のシャフトの周囲に設けたことを特徴とする現像ローラ。
【請求項12】
請求項11に記載の現像ローラを備えたことを特徴とする現像装置。
【請求項13】
請求項12に記載の現像装置と、該現像装置により現像された現像剤像を記録媒体に転写する転写装置とを備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−152024(P2010−152024A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−328973(P2008−328973)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】