説明

現像方法および該現像方法に用いる現像剤担持体

【課題】 高湿度あるいは低湿度環境下においても安定した帯電能を有し、長期にわたって濃度低下、カブリおよびスリーブゴーストのような問題点が発生せず、均一で濃度ムラが無く、高画像濃度で且つ高精細な画像を安定して得ることのできる現像方法および該現像方法に用いることのできる現像剤担持体を提供する。
【解決手段】 現像剤担持体が基体表面に少なくとも導電性樹脂被覆層を有するもので、その導電性樹脂被覆層表面のユニバーサル硬さHUの平均値Aおよび標準偏差σが、それぞれ300N/mm2〜800N/mm2、30N/mm2未満であり、現像剤が、少なくとも結着樹脂および酸化鉄を含有するトナー粒子で、個々のトナー粒子に含有される酸化鉄のうち70個数%以上が該トナー粒子の表面から投影面積相当径Cの0.2倍の深さまでに存在する構造を有しているトナー粒子を40個数%〜95個数%含有しているものであること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電記録法、磁気記録法、トナージェット記録法等を利用した記録方法において、静電潜像担持体上に形成された潜像を可視像化する現像方法および該現像方法に用いる現像剤担持体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真法は、一般的に光導電性物質を利用し、種々の手段により静電潜像担持体(感光体)上に静電潜像を形成し、次いで該静電潜像を現像剤(トナー)で可視像化し、必要に応じて紙等の転写材にトナー像を転写した後、加熱、圧力、溶剤蒸気等により定着し、複写物を得るものである。
【0003】
近年、電子写真法を用いた機器は、従来の複写機以外にプリンターやファクシミリ等多数になってきている。現像方式にはキヤリア粒子を用いる二成分現像方式とキヤリア粒子を用いない一成分現像方式に大別される。一成分現像方式には、磁性粒子をトナーに内包させて磁力の作用により現像剤の担持搬送を行なう磁性一成分現像方式と、磁性粒子を用いずに現像剤の摩擦電荷の作用などで現像剤を現像剤担持体(現像スリーブ)へ担持させる非磁性一成分現像方法がある。磁性一成分現像方式においては、カーボンブラックなどの着色剤は用いず、磁性粒子を着色剤として兼用させることもできる。
【0004】
二成分現像方式は、ガラスビーズや鉄粉等のキヤリア粒子が必要なため、あるいは現像剤中のトナー濃度を一定に保つ必要があるため、トナー濃度を検知して必要量のトナーを補給する装置が必要となり、現像装置が大きくて重く、且つ複雑な構成となる。また、二成分現像方式ではトナー成分のキヤリアへの付着(スペント)が起こりやすいため、キヤリアの交換頻度が高くなる。
【0005】
この点で、一成分現像方式では、このようなキヤリアや上述の複雑な構成は不必要となり、現像装置自体は小型化・軽量化が可能であり、さらにはキヤリアの交換が必要ないため長期にわたりメンテナンスの必要がなくなるという利点がある。
【0006】
その一方で、磁性一成分現像方法は、暗黒色の磁性粒子をトナーに使用するためカラー化が困難であり、二成分現像方式は濃度検知装置などにより細かい現像状態の調整が可能であるため、カラー現像用には好ましい。しかし、近年では、電子写真装置の軽量・小型化等を目的として複写装置部分を小さくすることが求められており、そのため一成分現像方式を用いた現像装置が使用されることが多くなってきている。
【0007】
しかしながら、磁性一成分現像方法は、使用する磁性一成分現像剤に関わる不安定な要素がある。これは、磁性現像剤(磁性トナー)中には微粉体状の磁性体が相当量混合分散されており、該磁性体の一部がトナー粒子表面に露出しているため、それが磁性トナーの流動性や摩擦帯電性に影響を与え、その結果、磁性トナーの現像特性や耐久性等の磁性トナーに要求される種々の特性が変動し、トナー自体も劣化してしまうという問題がある。
【0008】
従来の磁性体を含有する磁性トナーで、上記のような問題が発生するのは、磁性トナー表面に磁性体が露出していることがその大きな原因と考えられる。磁性トナー表面に、トナーを構成する結着樹脂に比べて相対的に低抵抗である磁性体微粒子が露出することにより、トナーの帯電能低下や流動性低下、また、長期の使用においては、トナー粒子同士や現像剤担持体や現像剤層厚規制部材との摺擦による磁性体の剥離に伴う画像濃度の低下や、現像スリーブ上に複写パターンの履歴である、いわゆる「スリーブゴースト」が生じ、これが形成された画像上にも現れてしまう等の弊害が起きてしまう。
【0009】
このスリーブゴーストは、図2に示すようなものであって、非印字部(白地)が続いていたために、コピーまたはプリントが行なわれても薄い現像しか行なわれない部分(X)と、コピーが継続されていたために濃い現像が行なわれる部分(Y)とで濃度ムラが生じるという現象である。
【0010】
このスリーブゴースト形成のメカニズムについて考えてみる。現像工程において、現像剤担持体(現像スリーブ)上で現像剤(トナー)が消費された箇所に、新たに帯電付与を受けたトナーが供給されて次の現像が行なわれる。この時、消費されずに現像スリーブ上に残っているトナーと新たに供給されたトナーとでは帯電量が異なる。帯電量が高いトナーほど感光体上の静電潜像への飛翔能力は高くなるが、同時にトナーと現像スリーブとの間に働く鏡映力により、静電的に強く拘束される傾向も見られる。このように、現像能力は上記の飛翔能力と鏡映力のバランスによって決定される。
【0011】
一般的に、トナーが消費された箇所に、新たに帯電付与を受けて供給されたトナーが、消費されずに現像スリーブ上に残っているトナーよりも現像能力が高い場合、図2に示したようなポジゴーストが発生し、これと逆に新たに供給されたトナーが、現像スリーブ上に残っていたトナーに較べて現像能力が低い場合は、図2と反対に、非印字部(白地)が続いており、トナーの入れ替わりがなかった部分と比べ、コピーまたはプリントが継続されていたためにトナーの入れ替わりが行なわれた部分の方が低濃度になるという、ネガゴーストが発生する。ネガゴーストは、特にトナーの帯電の立ち上がりが不十分になりやすい使用開始初期の段階で、ポジゴーストはある程度使用された段階で、連続プリント等を実施している際に発生しやすい。
【0012】
このような磁性体の露出に伴う画像特性の劣化に関しては、従来トナー処方や構造等の面から多くの提案がなされてきている。このうち、トナー処方としては磁性体の改良が挙げられる。ケイ素元素を含有する磁性酸化鉄を用いた磁性トナーが提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしここでは、意識的にケイ素元素をその内部に存在させているにすぎず、磁性トナーの流動性に未だ改良すべき点を有している。
【0013】
また、ケイ酸塩を添加することで、磁性酸化鉄の形状を球形に制御する技術が開発されている(例えば、特許文献2参照)。このような方法で得られた磁性酸化鉄は、粒子形状制御のためケイ酸塩を使用するために磁性酸化鉄内部にケイ酸元素が多く分布し、磁性酸化鉄表面におけるケイ酸元素の存在量が少なく、磁性酸化鉄の平滑度が高いため、磁性トナーの流動性はある程度改良されるものの、磁性トナーを構成する結着樹脂と磁性酸化鉄との密着性が不十分である。
【0014】
更に、酸化反応中にヒドロキソケイ酸塩溶液を添加する四三酸化鉄の製造方法も提案されている(例えば、特許文献3参照)。この方法により得られる四三酸化鉄は、表面近傍に層を成して存在し、表面が摩擦のような機械的衝撃に対して弱いという問題を有している。
【0015】
一方、トナー粒子構造の面からのアプローチとして、例えば粒子内部の特定の部分のみに磁性体微粒子が含有されている特殊なトナーが知られている。具体的にはコア粒子製造後、磁性体を乾式付着させ、その後シェル層を形成するという2段乃至3段の工程により製造される圧力定着用トナーであり、トナー中間層のみに磁性体が存在するものがある(例えば、特許文献4、5参照)。また、トナー粒子表面付近に磁性体粒子の存在しない樹脂層が一定量以上の厚みで形成されている構造を有したトナーも開発されている(例えば、特許文献6参照)。
【0016】
最近では、プリンター装置はLED(発光ダイオード)プリンターやLBP(レーザービームプリンター)が市場の主流になっており、技術の方向としてより高解像度、すなわち、従来300dpiや400dpiであったものが、600dpi、800dpiあるいは1200dpiとなってきている。従って現像方式もこれに伴って、更なる高精細化が要求されてきている。また、複写機もデジタル化が主流となってきており、ファクシミリやプリンターとしても同時に使えるいわゆるマルチファンクション化を目指した設計が主となりつつある。このため、複写機とプリンターの違いは徐々になくなってきており、ここでも高解像・高精細の現像方式が要求されている。
【0017】
この問題に対応するため、トナーとしては粒度の小径化が提案されており、高解像度が要求されるにつれトナーは、中心粒径5μm〜9μm程度であるものが主流となっている。しかしながら、トナーの小粒径化を促進して高解像・高精細化を達成する上で種々の課題があることがわかった。
【0018】
まず一つは、低温低湿度環境下におけるチャージアップ現象、すなわち、摩擦帯電電荷量が過多になり易いことが挙げられる。これは、本発明者らの検討の結果、前述したような粒子内部の特定の部分のみに磁性体粒子が含有されているトナーは、磁性体が本質的に表面に存在せず、主に結着樹脂で覆われているため、表面が高抵抗になり、且つ樹脂の帯電特性を直接反映することによるということがわかった。よって、トナー粒径が小さくなり比表面積が大きくなるほどチャージアップ現象が発生し易くなる。
【0019】
また、特許文献4には、磁性体の種類/添加量とシェル部の厚みを調整することによってトナー表面層の最近傍に磁性体を存在させ、表面抵抗をある程度低下させることができることが示されているが、コア表面に磁性体層が1層以下にしか存在できないという制約があるため、トナーとしては低磁力のものしか得られない。このため、小粒径トナーで一成分現像方法の磁力による規制に耐えられるほどの磁性体量を安定して含有させることは困難である。
【0020】
別の課題は、長期の使用により比較的粒径の大きなトナー粒子が現像容器内に残存しやすく、画像濃度あるいは画質の低下が生じやすくなってしまうことである。これは、上述したような粒子内部の特定の部分のみに磁性体粒子が含有されているトナーは、特に小粒径トナーの場合には磁性体粒子が存在しうる容積が小さくなるため、必要十分な量の磁性体粒子を内包し難いということに由来すると思われる。
【0021】
すなわち、このような現像剤では、粒度分布において粒径の大きなトナー粒子と小さいトナー粒子とでは磁性体粒子の存在しない表面樹脂層の割合が異なってしまい、これに対応して内包される磁性体の含有量も異なってしまうこととなる。そのため、トナー粒径の違いにより、現像性にも違いが発生してしまうという、粒径に依存する選択現像性が起きてしまう。従って、粒径が均一でない磁性現像剤を用いて長期にわたってプリントやコピーを行なうと、磁性体含有比率が高く現像されにくいトナー粒子、すなわち粒径の大きなトナー粒子が現像容器内に残りやすくなり、画像濃度や画質の低下、カブリ悪化等の弊害をもたらすことになる。
【0022】
また、高画質化を達成するために低画像濃度域での再現性ということも更に重要になってくるが、トナーの小粒径化によってトナーの着色力、すなわち磁性体粒子の分散性に関して更なる改良が望まれる。以上のように、磁性体露出に起因する画質劣化の防止やトナーの小粒径化に伴う着色力の確保等を満足する磁性現像剤(磁性トナー)はこれまでのところ開示されていない。
【0023】
一方、現像性向上を図る手段として、現像剤担持体(現像スリーブ)からのアプローチもされている。
【0024】
従来、現像剤担持体(現像スリーブ)としては、例えば金属、その合金またはその化合物を円筒状に成型し、その表面を電解、ブラスト、ヤスリ等で所定の表面粗度になるように処理したものが用いられてきた。しかし、この場合、現像剤層厚規制部材によって現像剤担持体表面に形成される現像剤層中の現像剤担持体表面近傍に存在する現像剤は非常に高い電荷を有することになり、現像剤担持体表面で鏡映力によって強く引きつけられてしまう。これによりトナーと現像剤担持体との摩擦機会が持てなくなるため、現像剤は好適な電荷が保持できなくなる。このような状況下では、十分な現像および転写は行われず、得られた画像は濃度ムラや文字飛び散りの多いものになってしまっていた。
【0025】
このような過剰な電荷を有する現像剤の発生や、現像剤の強固な付着を防止するため、樹脂中にカーボン、結晶性グラファイトのような導電性物質やグラファイトのような固体潤滑剤を分散させた樹脂被覆層を上記金属製の現像剤担持体上に形成する方法が提案されている(例えば、特許文献7等参照)。
【0026】
このような結晶性グラファイトを分散させた樹脂被覆層を用いた場合は、樹脂被覆層表面が結晶性グラファイトの燐片状の構造に基づく潤滑性を有するようになるのでチャージアップやスリーブゴーストに対しては十分な効果を発揮するが、結晶性グラファイトが燐片状であるがために樹脂被覆層表面形状が不均一となり、さらに結晶性グラファイトの硬度が低いため、樹脂被覆層表面で結晶性グラファイト自体の摩耗や脱離が発生しやすく、耐久を進めていった(長期使用した)場合に樹脂被覆層の表面粗さや表面組成が変化して、トナーの搬送不良やトナーへの帯電付与の不均一化が起きる場合がある。
【0027】
このような問題を解決するために、黒鉛粒子を含有し、特定の硬度分布を有する樹脂被覆層を基体表面に形成した現像剤担持体が提案されている(例えば、特許文献8等参照)。従来周知のトナーを使用した場合、このように高硬度の樹脂被覆層を有することで耐久性の向上を図ることが可能となるが、硬くて変形しにくいトナーを使用した場合には樹脂被覆層の削れや摩耗が発生する場合もあり、耐久性の面で更に改善していく必要がある。
【特許文献1】特開昭63−279352号公報
【特許文献2】特公平03−009045号公報
【特許文献3】特開昭61−034070号公報
【特許文献4】特開昭60−003647号公報
【特許文献5】特開昭63−089867号公報
【特許文献6】特開平07−209904号公報
【特許文献7】特開平01−277265号公報
【特許文献8】特開2003−323039号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
以上説明したように、現像剤および現像剤担持体に関する従来例を組み合わせることで、ある程度は現像面のレベルアップを図ることは可能になるものの十分ではない。
【0029】
従って、本発明の目的は、高湿度あるいは低湿度環境下においても安定した帯電能を有し、濃度低下、カブリおよびスリーブゴーストのような問題が発生せず、均一で濃度ムラが無く、高画像濃度で且つ高精細な画像を安定して得ることのできる現像方法および該現像方法に用いることのできる現像剤担持体を提供することである。
【0030】
また、本発明の他の目的は、長期にわたる使用による現像剤担持体表面の樹脂被覆層の劣化が生じ難く、高耐久性を有し、終始安定した画質が得られる現像方法および該現像方法に用いることのできる現像剤担持体を提供することである。
【0031】
更に本発明の他の目的は、長期間にわたる連続複写においても現像剤担持体上の現像剤に高くて均一な帯電を付与するとともに、チャージアップ現象の発生もなく安定した電荷を付与することで、耐久中の画像濃度低下や均一で濃度ムラやカブリのない高品位の画像を得ることのできる現像剤担持体および現像装置を提供することにある。
【0032】
また、本発明は、特に微小孤立ドットにおいても十分な画像濃度および再現性が得られ、且つ低トナー消費量化をも達成することができる現像方法および該現像方法に用いることのできる現像剤担持体を提供することも目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0033】
本発明者らは、これまで磁性現像剤を用いた現像方法において、耐久試験における帯電の均一化および安定化について鋭意検討してきた結果、現像剤担持体はその表面に、表面被膜物性試験におけるユニバーサル硬さHUの硬度分布から求められる平均値Aおよび標準偏差σが特定の値となるような導電性樹脂被覆層を有することが有効であることがわかった。なお、ユニバーサル硬さはISO/FDIS14577に規定されている。
【0034】
更に磁性一成分現像剤に関しては、トナー粒子中に含有されている酸化鉄の存在状態に着目し、磁性体の表面露出が無く、且つ一定量極めて表面近傍に磁性体が集中する構造を有していることが好ましい形態であることがわかった。
【0035】
そして、該現像剤担持体と該磁性現像剤の両方を用いた現像方法を採用することによって、現像性等の画像特性を満足するだけでなく、高耐久性も十分に付与できることを見出し、本発明に至った。
【0036】
すなわち、本発明は、以下の構成を有する。
【0037】
(1)現像剤を収容するための現像容器、該現像容器から供給された現像剤を表面に担持し、回転自在に保持された現像剤担持体、該現像剤担持体上の現像剤量を規制するための現像剤層厚規制部材を少なくとも有し、静電潜像担持体に対向する現像領域へ担持された現像剤を搬送し、該現像剤により静電潜像担持体に形成された静電潜像を可視像化する現像方法において、(ア)現像剤担持体は、基体表面に少なくとも導電性樹脂被覆層を有し、導電性樹脂被覆層の表面は、ユニバーサル硬さHUの平均値Aおよびその標準偏差σがそれぞれ300N/mm2〜800N/mm2および30N/mm2未満であり、(イ)現像剤は、結着樹脂および酸化鉄を少なくとも含有するトナー粒子からなり、透過型電子顕微鏡を用いたトナー粒子の断面を観察した際に、トナー粒子に含有される酸化鉄の内の70個数%以上が観察しているトナー粒子の表面から投影面積相当径Cの0.2倍の深さまでに存在するトナー粒子を40個数%〜95個数%含有していることを特徴とする現像方法。
【0038】
(2)現像剤担持体の導電性樹脂被覆層中に黒鉛化粒子が含有されている上記(1)の現像方法。
【0039】
(3)現像剤担持体の導電性樹脂被覆層中に含有されている黒鉛化粒子の黒鉛化度p(002)が0.20〜0.95である上記(2)の現像方法。
【0040】
(4)現像剤担持体の導電性樹脂被覆層中に含有されている黒鉛化粒子が、バルクメソフェーズピッチ粒子またはメソカーボンマイクロビーズ粒子を黒鉛化して得られたものである上記(2)または(3)の現像方法。
【0041】
(5)現像剤担持体の樹脂被覆層中に、表面に凹凸を形成するための粒子がさらに含有されている上記(1)〜(4)の現像方法。
【0042】
(6)トナー粒子は、X線光電子分光分析により測定されるトナー粒子表面に存在する炭素元素の含有量Qに対する鉄元素の含有量Rの比(R/Q)が0.001未満であり、トナー粒子の投影面積相当径C、酸化鉄とトナー粒子表面との距離の最小値DがD/C≦0.02の関係を満足するトナー粒子が50個数%以上含むものである上記(1)〜(5)の現像方法。
【0043】
(7)フロー式粒子像測定装置で計測される円相当径3μm〜400μmのトナー粒子における平均円形度が0.970以上である上記(1)〜(5)の現像方法。
【0044】
(8)現像剤が、結着樹脂、酸化鉄および含硫黄樹脂を少なくとも含有するトナー粒子からなり、該含硫黄樹脂は少なくともスルホン酸基含有(メタ)アクリルアミドに由来する構成単位を有している上記(1)〜(7)の現像方法。
【0045】
(9)上記(1)〜(8)のいずれかの現像方法に使用される現像剤担持体であって、その基体表面に少なくとも導電性樹脂被覆層を有し、導電性樹脂被覆層の表面は、ユニバーサル硬さHUの平均値Aおよびその標準偏差σがそれぞれ300N/mm2〜800N/mm2および30N/mm2未満であることを特徴とする現像剤担持体。
【発明の効果】
【0046】
本発明に使用することのできる磁性現像剤のトナー粒子は硬く、従来のものより変形し難い傾向にあり、現像工程において、磁性体のカプセル中間層は特に内包されているワックスや低分子量/低Tgの樹脂等の染み出しを防ぐことができるので、現像剤担持体表面の導電性樹脂被覆層へのトナー融着防止に対しては有効である。しかし、長期にわたる耐久時等において現像剤担持体表面との摺擦を繰り返していくと、現像剤担持体表面の導電性樹脂被覆層に削れを誘発してしまい、磁性現像剤に対して均一な帯電付与ができなくなってしまうという弊害があったが、本発明のように、導電性樹脂被覆層の表面被膜物性試験におけるユニバーサル硬さHUの平均値Aおよび標準偏差σが特定の値を有するような現像剤担持体を用いるので、導電性樹脂被覆層の削れを低減することができ、更なる高耐久性が維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
先ず、本発明の現像剤担持体における導電性樹脂被覆層の構成について説明する。
【0048】
図1に、本発明の現像剤担持体の構成の模式断面図を示す。
【0049】
本発明の現像剤担持体は、少なくとも円筒状あるいは無端ベルト状の基体1と導電性樹脂被覆層2からなるものである。そして、該導電性樹脂被覆層2の表面がISO/FDIS14577に規定されるユニバーサル硬さHUを測定したときに、その平均値Aが300N/mm2〜800N/mm2であること及びその標準偏差σが30N/mm2未満であることが必須である。
【0050】
なお、本発明では、導電性樹脂被覆層の表面のユニバーサル硬さHUは、ISO/FDIS14577に準拠するフィッシャー・インストルメンツ社製フィッシャースコープH100V(商品名)により、対面角度が136°である四角錘のダイヤモンド圧子を用い、測定荷重を段階的にかけて皮膜に押し込んで行き、荷重をかけた状態での押し込み深さh(単位:mm)を電気的に検出して読み取り、試験荷重F(単位:N)と押し込み深さhから下記計算式(1)により求める。ここで係数Kは1/26.43である。
HU=K×F/h2 [N/mm2] 式(1)
【0051】
なお、このユニバーサル硬さHUは、他の硬さ(例えば、ロックウェル硬さ、ビッカース硬さ等)よりも微小な荷重で測定でき、弾性、塑性を有する材料に関しても、弾性変形や塑性変形分を含んだ硬度が得られるので、導電性樹脂層の硬さを評価するのに好ましいものである。
【0052】
導電性樹脂被覆層表面のユニバーサル硬さHUの平均値Aが300N/mm2未満である場合は、導電性樹脂被覆層が、耐摩擦性が十分でなく、削れ易くなってしまい、使用初期から画像不良を生じてしまう。また、この平均値Aが800N/mm2を超える場合は、使用初期の段階で、現像剤層厚規制部材、特に弾性規制ブレードタイプものの表面に摺擦キズがつきやすく、現像剤担持体上のトナーにコートムラが発生し、ベタ画像のスジ・ムラ等の画像劣化の原因となってしまう。すなわち、導電性樹脂被覆層表面のユニバーサル硬さHUの平均値Aが300N/mm2〜800N/mm2の範囲であることが好ましい。また、この画像劣化を更に長期にわたって抑制するためには、この平均値Aは350N/mm2〜700N/mm2の範囲にあることが更に好ましい。
【0053】
そして、導電性樹脂被覆層表面のユニバーサル硬さ測定値HUの硬度分布から求められる標準偏差σが30N/mm2以上である場合、導電性樹脂被覆層において、高硬度の箇所と低硬度の箇所が各所に点在していることになる。そのため、使用初期における導電性樹脂被覆層表面の形状は均一化されていても、耐久を進めるにつれて、導電性樹脂被覆層表面が低硬度の箇所から選択的に摩耗してしまい、磁性現像剤に対して均一な帯電付与ができなくなってしまう。これにより、低温低湿度下においては、カブリや文字飛び散りの悪化の原因となったり、高温高湿度下では濃度低下となったりという弊害をもたらす。
【0054】
本発明の現像剤担持体は図1に示すような構造を有するが、その導電性樹脂被膜層には導電性付与粒子、黒鉛化粒子、凹凸形成粒子等が結着樹脂に配されている。その様子を図3に示す。
【0055】
図3は本発明に用いることのできる導電性樹脂被覆層を形成している様子を示す模式断面図である。
【0056】
金属円筒管等からなる基体1の上に導電性樹脂被膜層2が形成されており、その導電性樹脂被膜層2は、結着樹脂b中に導電性付与粒子a、黒鉛化粒子c及び凹凸形成粒子dが配されている。図3(a)は、導電性付与粒子aが結着樹脂b中に分散されている形態を表わしたものである。図3(b)は、結着樹脂b中に導電性付与粒子aに加えて黒鉛化粒子cを添加することで更に導電性を付与させた構成であり、黒鉛化粒子cは、導電性付与以外にも被覆層表面への比較的小さな凹凸形成や、トナー粒子に対する離型性およびトナー粒子への帯電付与性等にも寄与している。しかしながら、黒鉛化粒子cに限らず、添加される別の固体粒子により微小な凹凸が形成される様態も含まれる。
【0057】
図3(c)および(d)は更に凹凸形成粒子dを加えたものである。
【0058】
図3(c)おいて、凹凸形成粒子dが樹脂被覆層2の表面に比較的大きな凹凸を与えるために結着樹脂b中に更に添加されたものを示し、黒鉛化粒子cは樹脂被覆層2の表面に小さな凹凸を形成している。このような構成は、現像剤規制部材が現像剤担持体に対して(トナー粒子を介して)弾性的に圧接されるタイプの現像装置に用いる場合に有利である。すなわち、この樹脂被覆層2の表面の凹凸形成粒子dにより弾性規制部材の圧接力を規制し且つ導電性付与粒子aは小さな凹凸を形成して、トナー粒子と樹脂被覆層との接触帯電機会やトナー粒子との離型性を調整する役割も果たす。
【0059】
一方、図3(d)は、黒鉛化粒子cと凹凸形成粒子dの双方が樹脂被覆層2の表面の凹凸形成に寄与している。このような形態は、例えば、凹凸形成粒子dに凹凸付与以外に導電性や帯電付与性および耐摩耗性等の別の機能を持たせようとした場合に有用である。
【0060】
ここで、現像剤担持体の基体としては、円筒状部材、ベルト状部材等があるが、静電潜像担持体に非接触の現像方法においては、金属のような剛体の円筒管が好ましく用いられる。このような基体はアルミニウム、ステンレス鋼、真鍮等の非磁性の金属または合金を円筒状に成型し、研磨、研削等を施したものが好適に用いられる。材料コストや加工のしやすさからアルミニウムが好ましく用いられる。
【0061】
これらの基体は画像の均一性を良くするために、高精度に成型あるいは加工されて用いられる。例えば長手方向の真直度は30μm以下もしくは20μm以下、さらに好ましくは10μm以下が好ましく、現像剤担持体と静電潜像担持体との間隙の振れ、例えば、垂直面に対し均一なスペーサーを介して突き当て、現像剤担持体を回転させた場合の垂直面との間隙の振れも30μm以下もしくは20μm以下、さらに好ましくは10μm以下であることが好ましい。
【0062】
また、弾性層を有する基体としては、芯材と、ウレタンゴム、EPDM、シリコーンゴム等のゴムやエラストマーを含む層構成を有する円筒部材が、特に静電潜像担持体に現像剤担持体を直接接触させる現像方法の場合好ましく用いられる。
【0063】
本発明の現像剤担持体を構成する導電性樹脂被覆層の結着樹脂としては、一般に公知の樹脂が使用可能である。例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂等の熱あるいは光硬化性樹脂、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、繊維素系樹脂、アクリル系樹脂等の熱可塑性樹脂等を使用することができる。中でもフェノール樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂のような機械的性質に優れたもの、あるいはシリコーン樹脂、フッ素樹脂のような離型性のあるものが好ましく用いられる。更にフェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂などは、現像剤に摩擦帯電を付与させるという観点からも好ましい。
【0064】
上記した形成材料によって現像剤担持体上に形成される導電性樹脂被覆層は、チャージアップによる現像剤の現像剤担持体上への固着や、現像剤のチャージアップに伴って生じる現像剤担持体の表面から現像剤への摩擦帯電付与不良を防ぐためには、樹脂被覆層の体積抵抗値としては、104Ω・cm以下であることが好ましく、より好ましくは103Ω・cm以下である。現像剤担持体表面の導電性樹脂被覆層の体積抵抗値が104Ω・cmを超えると現像剤への摩擦帯電付与不良が発生し易く、その結果、ブロッチ(斑点画像や波模様画像)や画像濃度低下が発生し易い。
【0065】
樹脂被覆層の抵抗値を上記の値に調整するためには、下記に挙げる導電性付与粒子を樹脂被覆層中に含有させることが好ましい。この際に使用される導電性付与粒子としては、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、銀等の金属の微粉末、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化モリブデン、チタン酸カリウム等の導電性金属酸化物、各種カーボンファイバー、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック等の導電性カーボンブラック、更には金属繊維等が好ましい。
【0066】
これらの内、導電性カーボンブラック、とりわけ導電性のアモルファスカーボンは、特に電気伝導性に優れ、高分子材料に充填して導電性を付与し、その添加量をコントロールするだけで、ある程度任意の導電度を得ることができるため好適に用いられる。また塗料にした場合のチキソ性効果により分散安定性・塗工安定性も良好となる。
【0067】
また、導電性カーボンブラックの添加量は、その粒径によっても異なるが、結着樹脂100質量部に対して1質量部〜100質量部の範囲とすることが好ましい。1質量部未満では樹脂被覆層の抵抗値を所望のレベルに下げることは、通常困難であり、また、樹脂被覆層に用いた結着樹脂に対してトナー付着が発生する可能性が高い。100質量部超であると、樹脂被覆層の強度(摩耗性)が低下することがある。
【0068】
更に、導電性樹脂被覆層が本願にて規定した被膜強度を有するためには、導電性樹脂被覆層中に黒鉛化粒子が配されていることが、更に、該黒鉛化粒子が、黒鉛化度p(002)0.20〜0.95であることが好ましい。
【0069】
黒鉛化度p(002)とは、Franklinのp値といわれるもので、黒鉛化粒子のX線回折図から得られる黒鉛の格子間隔d(002)から、下記計算式(2)で求められる。このp(002)値は、炭素の六方網目平面の積み重なりのうち、無秩序な部分の割合を示すもので、この値が小さいほど黒鉛化の程度が大きい。
d(002)=3.440−0.086(1−p2) 式(2)
【0070】
黒鉛化粒子のp(002)が0.95を超える場合は、耐摩耗性には優れているが、導電性や潤滑性が低下して現像剤のチャージアップを誘発する場合があり、スリーブゴースト、カブリ、画像濃度等の画質が悪化しやすくなり、更に弾性ブレードを使用した場合にはブレード傷が発生したり、画像にスジ・濃度ムラ等が発生したりすることがある。また、このp(002)が0.20未満である場合は、黒鉛化粒子が耐摩耗性に劣るため、導電性樹脂被覆層表面の耐摩耗性、導電性樹脂被覆層の機械的強度が低下してしまう場合がある。このように黒鉛化粒子のp(002)を特定の範囲とすることで、良導電性、高潤滑性を有すると共に、導電性樹脂被覆層の機械的強度の低下を防止し、導電性樹脂被覆層の選択的な削れを抑制することができるという効果が得られる。
【0071】
本発明で使用できる黒鉛化粒子として、グラファイト、およびメソカーボンマイクロビーズ粒子またはバルクメソフェーズピッチ粒子を焼成して得られた黒鉛化粒子が挙げられる。
【0072】
この内、グラファイトは、天然黒鉛、人造黒鉛が知られており、そのp(002)値が所定の範囲内であれば、いずれでも使用可能である。人造黒鉛は、ピッチコークスをタールピッチ等により固めて1200℃位で一度焼成してから黒鉛化炉に入れ、2300℃位の高温で処理することにより、炭素の結晶が成長して黒鉛に変化する。天然黒鉛は、長い間の天然の地熱と地下の高圧によって完全に黒鉛化したものが地中により産出するものである。これらの黒鉛は、種々の優れた性質を有していることから工業的に広い用途を持っている。黒鉛は、暗灰色ないし黒色の光沢のある非常に柔らかい滑性のある結晶鉱物で、鉛筆等に利用され、その他耐熱性、化学的安定性、潤滑性、耐火性に優れるため、電気材料等に粉末や固体や塗料の形で利用されている。結晶構造は六方晶とその他菱面晶系に属するものがあり、完全な層状構造を有している。電気的特性に関しては、炭素と炭素の結合の間に自由電子が存在し、電気の良導体となっている。更にグラファイトは、構造的な性質の一つである「劈開性」に見られるように結晶構造に異方性があり、これによって導電性樹脂被覆層表面に出現させた場合、表面に潤滑性を付与させることも可能であることからも、好ましい材料である。なお、グラファイトを添加する場合には、導電性樹脂被覆層の表面のユニバーサル硬さHUを本発明の範囲になるようにすることが必要である。
【0073】
また、本発明では、黒鉛化粒子として、メソカーボンマイクロビーズ粒子またはバルクメソフェーズピッチ粒子を焼成して得られた黒鉛化粒子が好ましい。この黒鉛化粒子は、上記グラファイトとは、原材料および製造工程が異なる。そのため、黒鉛化粒子は結晶性グラファイトより黒鉛化度は若干低いものの、結晶性グラファイトと同様に高い導電性や潤滑性を有しており、更に粒子の形状が結晶性グラファイトの燐片状あるいは針状とは異なり塊状若しくは概略球状であり、しかも粒子自身の硬度が比較的高いのが特徴である。従って、このような特性を有する黒鉛化粒子は導電性樹脂被覆層中で均一に分散しやすくなるため、均一な表面粗度と耐摩耗性を導電性樹脂被覆層表面に与え、且つ粒子自身の形状が変化しがたいために導電性樹脂被覆層の削れ、あるいはその影響による粒子自身の脱落が生じたとしても、導電性樹脂被覆層中から粒子が再度突出あるいは露出してくることもあり、表面形状の変化を小さく抑えることができるうえに、現像剤担持体表面の導電性樹脂被覆層中に黒鉛化粒子を配すると、トナーのチャージアップを発生させることなく、結晶性グラファイトを用いた場合よりもトナーへの摩擦帯電付与能を向上することが可能となる。
【0074】
通常、沸点が500℃以上の有機化合物は、常圧下、不活性気相中で加熱すれば固相または液相を経由して炭素化されるが、200℃付近までの温度で分解を始め、残留物中では環化が起き、ついで400℃までの間に芳香族化する。この温度を越すと、芳香族同士の重縮合がすすむ。中でも縮合多環芳香族やそれらの混合物であるピッチ類等のように、この温度で液状を示すものは、400℃以上で縮合多環芳香族の平面分子からなる液晶状態をつくる。この液晶のことをメソフェーズと呼ぶ。メソフェーズは500℃までの間で更に高分子化が進んで層状構造を作ったまま固化する。該層状構造は、選択的な配向性の高いものであり、高温処理で黒鉛化になりやすい性質を有している。
【0075】
よって、原材料としてメソカーボンマイクロビーズ粒子やバルクメソフェーズピッチ粒子のような光学的に異方性で、しかも単一の相からなる粒子を用いて黒鉛化することによって、黒鉛化粒子の結晶性を高め且つ塊状若しくは概略球状の形状を保持させることができる。上記の原材料の光学的異方性は、芳香族分子の積層から生じるものであり、その秩序性が黒鉛化処理でさらに発達し、高い結晶性を有する黒鉛化粒子が得られる。
【0076】
メソカーボンマイクロビーズ粒子を得る方法として代表的なものは、例えば、石炭系重質油または石油系重質油を300℃〜500℃の温度で熱処理し、重縮合させて粗メソカーボンマイクロビーズ粒子を生成し、反応生成物を濾過、静置沈降、遠心分離などの処理に供することによりメソカーボンマイクロビーズ粒子を分離した後、ベンゼン、トルエン、キシレン等の溶剤で洗浄し、更に乾燥することによって得る方法が挙げられる。
【0077】
メソカーボンマイクロビーズ粒子を用いて黒鉛化する方法としては、まず乾燥を終えたメソカーボンマイクロビーズ粒子を、破壊させない程度の温和な力で機械的に一次分散させておくことが黒鉛化後の粒子の合一防止や均一な粒度を得るために好ましい。この一次分散を終えたメソカーボンマイクロビーズ粒子は、不活性雰囲気下において200℃〜1500℃の温度で一次加熱処理され、炭化される。一次加熱処理を終えた炭化物は、やはり炭化物を破壊させない程度の温和な力で炭化物を機械的に分散させることが黒鉛化後の粒子の合一防止や均一な粒度を得るために好ましい。
【0078】
二次分散処理を終えた炭化物は、不活性雰囲気下において2000℃〜3500℃で二次加熱処理することにより所望の黒鉛化粒子が得られる。
【0079】
バルクメソフェーズピッチ粒子を得る方法としては、例えば、コールタールピッチ等から溶剤分別によりβ−レジンを抽出し、これを水素添加、重質化処理を行うことによって得る方法がある。更に、この重質化処理後、微粉砕し、次いでベンゼンまたはトルエン等により溶剤可溶分を除去することで得ることもできる。得られたバルクメソフェーズピッチ粒子はキノリン可溶分が95質量%以上であることが好ましい。すなわち、キノリン可溶分が95質量%未満であるものは粒子内部が液相炭化しにくく、固相炭化するため粒子が破砕状のままとなり、球状のものが得られないことがある。
【0080】
バルクメソフェーズピッチ粒子を用いて黒鉛化する方法としては、先ず、バルクメソフェーズピッチ粒子を2μm〜25μmに微粉砕して、これを空気中で200℃〜350℃で熱処理して、軽度に酸化処理する。この酸化処理によって、バルクメソフェーズピッチ粒子は表面のみ不融化され、次工程の黒鉛化熱処理時の溶融、融着が防止される。この酸化処理されたバルクメソフェーズピッチ粒子は酸素含有量が5質量%〜15質量%であることが好ましい。5質量%未満であると熱処理時の粒子同士の融着が促進されることがあり、また15質量%を超えると粒子内部まで酸化されてしまい、形状が破砕状のまま黒鉛化してしまい、球状のものが得られにくい場合がある。
【0081】
最後に酸化処理したバルクメソフェーズピッチ粒子を窒素、アルゴン等の不活性雰囲気下にて、2000℃〜3500℃で熱処理することにより所望の黒鉛化粒子が得られる。
【0082】
上記いずれの原材料を用いた黒鉛化粒子の生成方法においても、黒鉛化粒子の最終焼成温度は2000℃〜3500℃が好ましく、2300℃〜3200℃がより好ましい。
【0083】
焼成温度が2000℃未満の場合は、黒鉛化粒子の黒鉛化が不十分であり、導電性や潤滑性が低下してトナーのチャージアップを発生する場合があり、スリーブゴースト、カブリ、画像濃度等の画質が悪化しやすくなり、更に弾性ブレードを使用した場合にブレード傷が発生する場合があり、画像にスジ・濃度ムラ等が発生しやすくなる。一方、焼成温度が3500℃超の場合は黒鉛化粒子の黒鉛化の程度が高くなりすぎてしまう場合があり、そのため黒鉛化粒子の硬度が下がり、黒鉛化粒子の耐摩耗性の悪化により導電性樹脂被覆層表面の耐摩耗性、導電性樹脂被覆層の機械的強度およびトナーへの帯電付与性が低下することがある。
【0084】
また、前記のいずれの原材料から得られた黒鉛化粒子であっても、いずれの製法で得られたかにかかわらず、分級により粒度分布をある程度均一にしておくことが、導電性樹脂被覆層の表面形状を均一にするために好ましい。
【0085】
本発明おいて、この黒鉛化粒子は、体積平均粒径が0.5μm〜30μmであることが好ましく、1μm〜25μmであることがより好ましい。体積平均粒径が0.5μm未満では表面に均一な粗さを付与する効果と帯電性能を高める効果が少なく、磁性現像剤への迅速且つ均一な帯電が不十分となると共に、導電性樹脂被覆層の摩耗によるトナーのチャージアップ、トナー汚染およびトナー融着が発生し、ゴーストの悪化、画像濃度低下を生じやすくなる。体積平均粒径が30μmを超える場合には、導電性樹脂被覆層表面の粗さが大きくなり過ぎ、磁性現像剤への帯電付与が十分に行なわれにくくなってしまうと共に、導電性樹脂被覆層の機械的強度が低下してしまうことがある。
【0086】
導電性樹脂被覆層表面に凹凸を形成するために、導電性樹脂被覆層中に凹凸形成粒子を含有させることが可能である。そのために使用する凹凸形成粒子としては、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリブタジエン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等のビニル系重合体や共重合体、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂等の樹脂粒子、アルミナ、酸化亜鉛、シリコーン、酸化チタン、酸化錫等の酸化物粒子、炭素化粒子、導電処理を施した樹脂粒子等の導電性粒子、その他、例えばイミダゾール化合物のような有機化合物を粒子状にして用いることも可能である。この場合にイミダゾール化合物は、トナーに摩擦帯電電荷を付与する役割も果たす。また耐摩耗性や導電性、疎水性等の機能を付与する目的で、該粒子表面に金属酸化物等の無機微粉末を付着させてもよい。
【0087】
凹凸形成粒子としては、これらの中でも、特に現像剤担持体上の導電性樹脂被覆層の硬度分布を本願規定の範囲内にするためには、炭素化粒子、特開平08−240981号公報に記載された導電性球状粒子を用いることがより好ましい。
【0088】
本発明において用いることのできる凹凸形成粒子は、体積抵抗値が106Ω・cm以下、より好ましくは10-3Ω・cm〜106Ω・cmの粒子であることが好ましい。凹凸形成粒子の体積抵抗が106Ω・cmを超えると、摩耗によって導電性樹脂被覆層表面に露出した該粒子を核として現像剤の汚染や融着を発生しやすくなるとともに、迅速且つ均一な帯電が行われにくくなることがある。さらには粒子の真密度としては3g/cm3以下であることがより好ましい。導電性であっても、粒子の真密度が高すぎる場合、同じ粗さを形成するために添加量を増やさなければならず、また、樹脂または樹脂組成物と真密度差が大きくなるため、製造時の粒子の分散状態が非均一となりやすく、したがって形成された導電性樹脂被覆層においても分散状態が不均一になることがある。また粒子が球状であると、圧接される現像剤層厚規制部材等との接触面積が低減されるので、摩擦力による現像剤担持体の回転トルクの増加や、現像剤の付着などを軽減することができるのでより好ましい。
【0089】
更に上記凹凸形成粒子の粒径は、体積平均粒径で0.3μm〜30μmであることが好ましい。0.3μm未満では均一な表面凹凸の形成は難しく、表面粗さを大きくしようとした場合添加量が過大になり、導電性樹脂被覆層が脆くなり耐摩耗性が低下することがある。逆に30μmより大きくなると、粒子が現像剤担持体表面から突出しすぎるため、現像剤層の厚みが大きくなり過ぎて現像剤の帯電が低下したり、不均一になったりしやすく、バイアスをかけた際に静電潜像担持体(感光ドラム)へリークするポイントになる場合がある。
【0090】
導電性樹脂被覆層の帯電系列をコントロールするために、導電性樹脂被覆層中に荷電制御剤を添加する構成をとることは好ましい。負荷電性に制御するものとしては、例えば有機金属錯体、キレート化合物が有効であり、モノアゾ金属錯体、アセチルアセトン金属錯体、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸系の金属錯体がある。他には、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族モノおよびポリカルボン酸およびその金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノール等のフェノール誘導体類などがある。
【0091】
これらの荷電制御剤の中でも、特に球形化度の高い現像剤(トナー粒子)を用いる場合は、荷電制御剤として鉄粉に対して正帯電性である第4級アンモニウム塩化合物を導電性樹脂被覆層中に含有させることが、本発明に用いられる磁性現像剤への良好な帯電付与性を向上させる点で好ましい。このとき、前記導電性樹脂被覆層は、樹脂構造中にアミノ基、=NH基、または−NH−結合の少なくともいずれかを有することが、球形化度の高いトナー粒子への良好な帯電付与性の点で更に好ましい。
【0092】
現像剤担持体上に、上記の第4級アンモニウム塩化合物を含有する導電性樹脂被覆層を設けることで、球形化度の高い現像剤(トナー粒子)の過剰帯電を防ぐ方向に働き、現像剤への摩擦帯電付与をコントロールすることができる。これにより、現像剤担持体上での現像剤のチャージアップを防ぎ、導電性樹脂被覆層表面にトナー粒子の融着が発生しにくく現像剤の高帯電安定性を保持でき、その結果環境安定性および長期安定性を有する高精細画像を提供すること可能となるので好ましい。
【0093】
この明確な理由は定かではないが、本発明で好適に用いられる、それ自身が鉄粉に対して正帯電性である第4級アンモニウム塩化合物は、添加されると、構造中にアミノ基、=NHまたは−NH−の少なくとも1つを含む樹脂中に均一に分散され、更に、被覆を形成する際に樹脂の構造中に取り込まれ、このような化合物を有する結着樹脂組成物自身が負帯電性を持つようになるものと考えられる。
【0094】
本発明において好適に使用される、上記した機能を有する第4級アンモニウム塩化合物としては、鉄粉に対して正帯電性を有するものであればいずれのものでもよいが、例えば、下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0095】
【化1】

(式中、R1〜R4は、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、アルキル基を表し、X-は酸イオンを表す。)
【0096】
一般式(1)におけるX-の酸イオンの具体例としては、有機硫酸イオン、有機スルホン酸イオン、有機リン酸イオン、モリブデン酸イオン、タングステン酸イオン、モリブデン原子あるいはタングステン原子を含むヘテロポリ酸イオン等が好ましい。
【0097】
本発明に好適に用いられる、それ自身が鉄粉に対して正帯電性である第4級アンモニウム塩化合物としては、具体的には、以下の表1〜3に示すようなものが挙げられるが、勿論、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0098】
【表1】

【0099】
【表2】

【0100】
【表3】

【0101】
また、前記4級アンモニウム塩との組み合わせで、構造中にアミノ基、=NHまたは−NH−の少なくとも1つを含む好ましい樹脂として、その製造工程において触媒としてアンモニア等の含窒素化合物を用いて製造されたフェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドを硬化剤として用いたエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、あるいはこれらの樹脂を一部に含んだ共重合体等が挙げられる。これら被覆樹脂との混合物の成膜時に第4級アンモニウム塩化合物が被覆樹脂の構造中に容易に取り込まれる。
【0102】
また、正帯電させるための物質としては下記のようなものがある。
【0103】
ニグロシンおよび脂肪酸金属塩等による変性物、トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート等の四級アンモニウム塩、およびこれらの類似体であるホスホニウム塩等のオニウム塩およびこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、燐タングステン酸、燐モリブデン酸、燐タングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物など);高級脂肪酸の金属塩;ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイド等のジオルガノスズオキサイド;ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレート等のジオルガノスズボレート類;グアニジン化合物;イミダゾール化合物などである。
【0104】
この中でイミダゾール化合物は導電性樹脂被覆層中での分散性に優れ、導電性樹脂被覆層に適度な正帯電性を付与することができるため、好ましい。
【0105】
特に、イミダゾール化合物の中でも、下記一般式(2)または(3)で示されるイミダゾール化合物が現像剤(トナー)の迅速且つ均一な帯電性および導電性樹脂被覆層の強度の点でより好ましい。
【0106】
【化2】

〔式中、R5およびR6は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アラルキル基またはアリール基を表し、R7およびR8はそれぞれ独立に炭素数が3〜30の直鎖状アルキル基を表す。〕
【0107】
【化3】

〔式中、R9およびR10は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アラルキル基またはアリール基を表し、R11は、炭素数が3〜30の直鎖状アルキル基を表す。〕
【0108】
また、極性基を有するモノマーをベースモノマーに共重合させ適当な分子量に重合させたポリマーを導電性樹脂被覆層に添加し、樹脂制御剤として用いることも可能である。
【0109】
例えば、負帯電性の樹脂制御剤としては、少なくともビニル重合性単量体とスルホン酸含有アクリルアミド系単量体との共重合体が挙げられる。より詳しくは、ビニル重合性モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、メチル(メタ)クリレート、エチル(メタ)クリレート、プロピル(メタ)クリレート、n−ブチル(メタ)クリレート、iso−ブチルメタクリレート、シクロヘキシル(メタ)クリレート、ジメチル(アミノ)エチルメタクリレート、ジエチル(アミノ)メタクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)クリレート、(メタ)アクリル酸、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等であり、これらは単独で、もしくは2種以上の混合で使用することができる。好ましくはスチレンとアクリル酸エステルまたはメタアクリル酸エステルとの組み合わせが挙げられる。
【0110】
またスルホン酸含有アクリルアミド系単量体としては、2−アクリルアミドプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−n−ブタンスルホン酸、2−アクリルアミド−n−ヘキサンスルホン酸、2−アクリルアミド−n−オクタンスルホン酸、2−アクリルアミド−n−ドデカンスルホン酸、2−アクリルアミド−n−テトラデカンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−フェニルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2,2,4−トリメチルペンタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルフェニルエタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−(4−クロロフェニル)プロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−カルボキシメチルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−(2−ピリジル)プロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−1−メチルプロパンスルホン酸、3−アクリルアミド−3−メチルブタンスルホン酸、2−メタクリルアミド−n−デカンスルホン酸、2一メタクリルアミド−n−テトラデカンスルホン酸などを挙げることができる。好ましくは2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸である。
【0111】
さらに、正帯電性の樹脂制御剤としては、少なくともビニル重合性単量体と含窒素ビニル単量体との共重合体が挙げられる。より詳しくは、含窒素ビニルモノマーの代表例としては、例えば、p−ジメチルアミノスチレン、ジメチルアミノメチルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリレート、ジエチルアミノメチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノメチルメタクリレート、ジメチルアミノメチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルメタクリレート、ジエチルアミノメチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレートなどがあり、さらに、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルベンズイミダゾール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロール、N−ビニルピペリジン、N−ビニルモルフォリン、N−ビニルインドールなどの含窒素複素環式N−ビニル化合物がある。特に、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレートなどの下記一般式(4)に示される含窒素ビニルモノマーまたは、4級アンモニウム基含有ビニルモノマーを用いることが好ましい。
【0112】
【化4】

〔但し、R12〜R14は水素原子あるいは炭素数1〜4の飽和炭化水素基を示し、nは1〜4の整数を示す。〕
【0113】
本発明に用いられる4級アンモニウム基含有ビニルモノマーとしては、ビニル重合性モノマーと共重合可能なものであれば特にその構造は限定されるものではないが、より好ましい4級アンモニウム基含有ビニルモノマーとしては、下記一般式(5)に示される4級アンモニウム基含有ビニルモノマーがある。
【0114】
【化5】

〔式中、R16は、水素原子またはメチル基を示し、R17は、炭素数1〜4のアルキレン基を示し、R18〜R20は、メチル基、エチル基またはプロピル基を示し、X1は、−COO−または−CONH−を示し、A-は、Cl-、(1/2)SO42-のようなアニオンを示す。〕
【0115】
本発明で好適に使用される上記のような構成を有する現像剤担持体表面の導電性樹脂被覆層の表面粗さは、一般的には、JIS B0601−2001に規定の算術平均粗さRaで0.3〜3.5μmの範囲にあることが好ましい。Raが0.3μm未満の場合には、現像剤の十分な搬送性が得られず、現像剤不足による画像濃度薄や、現像剤の過剰な帯電による飛び散りやブロッチなどが発生しやすい。また、Raが3.5μmより大きい場合には、現像剤への摩擦帯電付与が不均一となり、スジむらや、反転カブリ、帯電不足による画像濃度薄などが発生しやすい。
【0116】
更に、本発明においては、現像剤担持体表面への現像剤の付着をより軽減化するため、導電性樹脂被覆層中に固体潤滑剤を混合させることもできる。この際に使用し得る固体潤滑剤として、例えば、二硫化モリブデン、窒化硼素、フッ化グラファイト、銀−セレンニオブ、塩化カルシウム−グラファイト、滑石等が挙げられる。また、本発明で使用することのできるこれらの固体潤滑剤の添加量は、結着樹脂100質量部に対して1質量部〜100質量部の範囲とすることが好ましい。1質量部未満では導電性樹脂被覆層の結着樹脂表面に対する現像剤の付着性の改善効果は少なく、100質量部を超えると、特にサブミクロンオーダーの粒度を有する微粉体が多く含まれる材料を用いた場合、導電性樹脂被覆層の強度(耐摩耗性)が低下することがある。これらの潤滑性粒子は、体積平均粒径が好ましくは0.2μm〜20μm、より好ましくは1μm〜15μmのものを使用するのが良い。潤滑性粒子の体積平均粒径が0.2μm未満の場合には、潤滑性が十分に得られ難くなり、体積平均粒径が20μmを超える場合には、導電性樹脂被覆層表面の形状への影響が大きく表面性が不均一となりやすく、現像剤の均一な帯電化、および導電性樹脂被覆層の強度の点で不十分になることがある。
【0117】
本発明の導電性樹脂被覆層を形成する方法としては、例えば、各成分を溶剤中に分散混合して塗料化し、前記基体上に塗工することにより得ることが可能である。各成分の分散混合には、サンドミル、ペイントシェーカー、ダイノミル、パールミル等のビーズを利用した公知の分散装置が好適に利用可能である。また、塗工方法としては、ディッピング法、スプレー法、ロールコート法等公知の方法が適用可能である。
【0118】
導電性樹脂被覆層をこのような構成とすることによって、導電性樹脂被覆層に選択的な削れを生じず、また長期にわたる繰り返しの使用により削れが生じた際にも、導電性樹脂被覆層表面が均一に削れると共に、表面粗さを維持するための微少凹凸を有していることから、導電性樹脂被覆層の表面形状の変化を抑制し、磁性現像剤の帯電量および現像剤担持体上でのコート量を更に安定化するという効果を発揮できる。詳細は後述するが、本発明のような、トナー粒子中に含有されている酸化鉄が一定量極めて表面近傍に磁性体が集中する構造を有している磁性現像剤を使用した場合には、特に有効である。
【0119】
次に、本発明で使用することのできる磁性現像剤について説明する。
【0120】
本発明に使用される磁性現像剤は、少なくとも結着樹脂および酸化鉄を含有するトナー粒子からなり、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いたトナー粒子の断面観察において、個々のトナー粒子に含有される酸化鉄のうち、70個数%以上が当該トナー粒子の表面から投影面積相当径Cの0.2倍の深さまでに存在する構造を満足しているトナー粒子を40個数%〜95個数%、好ましくは60個数%〜95個数%含有していることを特徴としている。すなわち、トナー粒子の極めて表面近傍に酸化鉄(磁性体)が集中して存在する構造を有するトナー粒子が一定量存在することを特徴とする。このように実質的な磁性体のカプセル構造(以下、これを「マグ中間層」と表記することがある)を有した構成にすることによって、トナー粒子の剛性が飛躍的に向上するため、内層に従来よりも多量にワックスや低分子量/低Tgの樹脂を内包させることが可能になり、定着性の向上が図れるばかりでなく、耐久使用時における外添剤のトナー粒子内部への埋め込みも少なくなるため、耐久性の向上を図ることができる。
【0121】
該トナー粒子の表面から投影面積相当径Cの0.2倍の深さまでに70個数%以上の酸化鉄が存在する構造を満足しない場合、トナー粒子内での磁性体の存在状態のバラツキが大きくなり、本発明の効果である十分な現像安定性が得られなくなる。
【0122】
更に、上記のマグ中間層を有するトナー粒子(トナー粒子の表面から投影面積相当径Cの0.2倍の深さまでに70個数%以上の酸化鉄が存在するトナー粒子)が40個数%未満であると、磁性体のカプセル構造が十分でないため磁性体の存在状態のバラツキが発生し易くなり、耐久性に対して本発明の効果が得られず、トナー粒子表面の外添剤劣化が促進されたりすることで、耐久に伴い現像性の低下をもたらす。
【0123】
また、上記のマグ中間層を有するトナー粒子の比率が95個数%を超えると、トナー粒子表面近傍に摩擦帯電電荷のリークサイトが多数存在することになり、その結果トナー粒子表面から電荷が逃げ易くなってしまい、現像剤へ十分な帯電付与ができなくなってしまう。
【0124】
また、本発明に用いることのできる磁性現像剤は、X線光電子分光分析により測定される、トナー粒子表面に存在する炭素元素の含有量Qに対する鉄元素の含有量Rの比(R/Q)が0.001未満であり、トナー粒子の投影面積相当径をC、酸化鉄とトナー粒子表面との距離の最小値をDとした時、D/C≦0.02の関係を満足するトナー粒子が50個数%以上存在することが好ましい。
【0125】
上記R/Qが0.001以上となると、トナー粒子表面に露出した酸化鉄粒子の比率が増加しており、磁性体の吸湿や帯電のリークにより特に高温高湿度以下におけるカブリ、耐久による画像濃度の低下が生じ易くなる。
【0126】
更にD/C≦0.02の関係を満足するトナー粒子が50個数%未満であると、過半数のトナー粒子において少なくともD/C=0.02の境界線よりも外側には酸化鉄粒子がほとんど存在しないことになる。すなわち、トナー粒子表面が高抵抗となり且つ結着樹脂の帯電特性が直接反映され易くなるため、特に低温低湿度下でのカブリやチャージアップに伴う画像濃度低下が生じてしまう場合がある。
【0127】
なお、本発明に用いることのできる磁性現像剤のトナー粒子構造に関しては、酸化鉄粒子の高疎水化処理とその均一処理方法、更に特定のケン化価を有する極性物質を添加することを、水系媒体中での直接重合方法に組み合わせることで、トナー粒子中における酸化鉄粒子の偏在を一段階で制御することが可能である。
【0128】
これは、従来、一般に用いられている磁性酸化鉄を用いた磁性現像剤では達成が困難であったものであり、また簡易な工程で達成できる手段も開示されていない。その理由の一つは、用いる磁性酸化鉄を十分に且つ均一に疎水化できていなかったことに起因する。
【0129】
磁性現像剤を製造する時は、表面が疎水化処理された磁性酸化鉄を用いることにより、結着樹脂中への磁性酸化鉄粒子の分散性を向上することができる。また、トナー粒子表面に磁性酸化鉄が多く露出している場合にも、磁性酸化鉄の表面が均一に疎水化処理されていれば、いかなる環境下においても現像剤の帯電性能を損ないにくくなる。
【0130】
そこで、従来、磁性酸化鉄粒子の表面を疎水化する方法が種々提案されてきた。しかしながら、これまでの方法では、十分に且つ均一に疎水化された磁性酸化鉄はなかなか得られなかった。また、処理剤等を多量に添加したり、高粘度の処理剤等を使用したりした場合、疎水化の程度は確かに上がるものの、粒子同士の合一等の弊害が生じてしまい、疎水性と分散性の両立を図ることは困難であった。
【0131】
一般に、未処理の酸化鉄は親水性を有しているので、疎水性の酸化鉄を得るには親水性の酸化鉄を疎水化する必要があるが、これまでの表面処理方法では十分に且つ均一に疎水化することができず、そのような酸化鉄を用いた従来の現像剤は、環境に左右されて帯電能が変動してしまい、安定性に欠けるものであった。
【0132】
これに対し、本発明に用いることのできる酸化鉄は非常に高いレベルでの疎水化の均一性が図られているものであり、例えば疎水化する際に、水系媒体中で、酸化鉄を一次粒径となるように分散しながらカップリング剤を加水分解しながら表面処理することによって得られる酸化鉄である。水系媒体中での疎水化処理方法は、気相中での処理に比べ、酸化鉄粒子同士の合一が生じにくく、また疎水化処理による酸化鉄粒子間の帯電反発作用が働き、酸化鉄はほぼ一次粒子の状態で表面処理されるようになるので、高い均一性の疎水化が達成できる。
【0133】
カップリング剤を水系媒体中で加水分解しながら酸化鉄表面を処理する方法は、クロロシラン類やシラザン類のようにガスを発生するようなカップリング剤を使用する必要もなく、さらに、気相中では酸化鉄粒子同士が合一しやすくて、良好な処理が困難であった高粘性のカップリング剤も使用できるようになるため、疎水化の効果は非常に大きい。
【0134】
本発明において酸化鉄粒子の表面処理のために使用できるカップリング剤として、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等が挙げられる。より好ましくは下記一般式(6)で示されるシランカップリング剤である。
(R21O)mSiR22(4-m) (6)
[式中、R21はアルキル基を示し、R22はアルキル基,ビニル基,グリシドキシ基,メタクリル基のような炭化水素基を示し、mは1〜3の整数を示す。]
【0135】
例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ヒドロキシプロピリトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0136】
特に、下記一般式(7)で示されるアルキルトリアルコキシシランカップリング剤を使用して水系媒体中で酸化鉄粒子を疎水化処理するのが良い。
p2p+1Si(OCq2q+13 (7)
(式中、pは2〜20の整数を示し、qは1〜3の整数を示す。)
【0137】
上記一般式(7)におけるpが2より小さいと、疎水化処理は容易となるが、疎水性を十分に付与することが困難であり、トナー粒子からの酸化鉄粒子の露出を抑制するのが難しくなる。またpが20より大きいと、疎水性は十分になるが、酸化鉄粒子同士の合一が多くなり、トナー中へ酸化鉄粒子を均一に分散性させることが困難になり、カブリや転写性さらには選択現像性が悪化する傾向となる。また、qが3より大きいと、シランカップリング剤の反応性が低下して疎水化が十分に行われにくくなる。
【0138】
特に、一般式(7)中のpが2〜20の整数(より好ましくは、3〜15の整数)でああり、qが1〜3の整数(より好ましくは、1または2の整数)であるアルキルトリアルコキシシランカップリング剤を使用するのが良い。
【0139】
その処理での使用量は、処理による効果、生産性等の観点から、酸化鉄100質量部に対して0.05質量部〜20質量部、好ましくは0.1質量部〜10質量部とするのが良い。
【0140】
ここでの水系媒体とは、水を主要成分としている媒体である。具体的には、水系媒体として水そのもの、水に少量の界面活性剤を添加したもの、水にpH調整剤を添加したもの、水に有機溶剤を添加したもの等が挙げられる。ここで使用する界面活性剤としては、ポリビニルアルコールのようなノンイオン系界面活性剤が好ましい。界面活性剤の添加量としては、水に対して0.1質量%〜5質量%とするのが良い。pH調整剤としては、塩酸のような無機酸が挙げられる。
【0141】
撹拌は、例えば撹拌羽根を有する混合機(具体的には、アトライター、TKホモミキサーのような高剪断力混合装置)で、酸化鉄粒子が水系媒体中で、一次粒子になるように十分に行なうのが良い。
【0142】
こうして得られる酸化鉄粒子は表面が均一に疎水化処理されているため、トナー材料として用いた場合、トナー粒子中への分散性が非常に良好であり、加えて酸化鉄粒子の凝集性が低いため、本発明に使用できるような表面近傍に酸化鉄が偏在するようなトナー粒子においてもトナー粒子表面からの露出が無い。従って、このような酸化鉄を用いることにより、X線光電子分光分析により測定される、トナー粒子表面に存在する炭素元素の含有量Qに対する鉄元素の含有量Rの比(R/Q)が0.001未満になり、これによって良好な現像性が得られる。
【0143】
本発明に用いることのできる磁性現像剤に使用できる酸化鉄は、例えば以下のような方法で製造できる。
【0144】
硫酸第一鉄水溶液等の第一鉄塩水溶液に、鉄成分に対して少なくとも当量の水酸化ナトリウムのようなアルカリを加え、水酸化第一鉄を含む水溶液を調製する。調製した水溶液のpHを7以上、好ましくは8〜10に維持しながら空気を吹き込み、水溶液を70℃以上に加温しながら水酸化第一鉄の酸化反応を行ない、磁性酸化鉄粒子の芯となる種晶をまず生成する。
【0145】
次に、種晶を含むスラリー状の液に、前に加えたアルカリの添加量を基準として約1当量の硫酸第一鉄を含む水溶液を加える。液のpHを6〜10に維持しつつ更に空気を吹き込みながら水酸化第一鉄の反応を進め、種晶を芯にして磁性酸化鉄粒子を成長させる。酸化反応が進むにつれて液のpHは酸性側に移行していくので、液のpHが6を下まわらないよう適宜アルカリ、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、を加えることが好ましい。酸化反応の終期に液のpHを調整し、磁性酸化鉄が一次粒子になるように十分攪拌し、カップリング剤を添加して十分に混合攪拌し、攪拌後に濾過/乾燥を行ない、軽く解砕することで疎水化処理磁性酸化鉄粒子が得られる。なお、酸化反応終了後に、濾過、洗浄して酸化鉄粒子を得、乾燥せずに別の水系媒体中に再分散させた後、再分散液のpHを調整し、十分攪拌しながらシランカップリング剤を添加し、カップリング処理を行なってもよい。
【0146】
いずれにせよ、水溶液中で生成した未処理の酸化鉄粒子を、乾燥工程を経る前の含水スラリーの状態で疎水化することが重要である。これは、未処理の酸化鉄粒子をそのまま乾燥してしまうと粒子同士の凝集による合一が避けられず、こういった凝集状態の粉末にたとえ湿式疎水化処理を行なっても、均一な疎水化処理が困難であるからである。
【0147】
酸化鉄の製造の際に第一鉄塩水溶液に用いる第一鉄塩としては、一般的に硫酸法チタン製造に副生する硫酸鉄、鋼板の表面洗浄に伴って副生する硫酸鉄の利用が可能であり、硫酸第一鉄以外には塩化鉄等も使用できる。
【0148】
水溶液法による磁性酸化鉄の製造方法では、一般に反応時の粘度の上昇を抑えること、および硫酸鉄の溶解度から鉄濃度0.5mol/リットル〜2mol/リットルの硫酸第一鉄水溶液が用いられる。硫酸鉄の濃度は一般に薄いほど製品の粒度が細かくなる傾向を有する。また、反応に際しては、空気量が多いほど、そして反応温度が低いほど微粒子になりやすい。
【0149】
なお、酸化鉄の形状としては、8面体、6面体、球状、針状、鱗片状などがあるが、8面体、6面体、球状、不定形等の異方性の少ないものが画像濃度を高める上で好ましい。こういった酸化鉄の形状は、電子顕微鏡などによって確認することができる。酸化鉄粒子の粒度としては、体積平均粒径が0.1μm〜0.3μmであり、かつ体積粒径が0.03μm〜0.1μmの範囲にある粒子が40個数%以下であることが好ましい。
【0150】
体積平均粒径が0.1μm未満の酸化鉄粒子を用いた磁性トナーから画像を得ると、画像の色味が赤味にシフトし、画像の黒色度が不足したり、ハーフトーン画像ではより赤味が強く感じられたりする傾向が強くなることがある。さらに、酸化鉄粒子の表面積が増大するために結着樹脂への分散性が悪化する場合もある。また、酸化鉄粒子の添加量から得られるべき画像の濃度が不足することもある。
【0151】
一方、酸化鉄粒子の体積平均粒径が0.3μmを超えると、一粒子あたりの質量が大きくなるため、製造時に結着樹脂との比重差の影響でトナー粒子表面に露出する確率が高まることがある。
【0152】
また、トナー粒子中において、該酸化鉄の0.1μm以下の粒子が40個数%を超えると、酸化鉄粒子の表面積が増大して分散性が低下し、トナー中にて凝集塊を生じやすくなりトナーの帯電性を損なう場合がある。
【0153】
このようにして製造された疎水化酸化鉄粒子を現像剤(トナー粒子)に使用することにより画像特性に優れた磁性現像剤を得ることが可能となる。
【0154】
なお、特公昭60−3181号公報においては、乾燥粉末状の未処理磁性体の表面をシランカップリング剤で湿式処理した磁性体微粒子を含有する磁性重合トナーの製造方法が開示されているが、上記したように、この未処理乾燥磁性体粉末は、製造に際しての乾燥工程での一次凝集による粒子同士の合一が避けられないため、湿式表面処理を行なっても個々の粒子にまで媒体中へ分散させることはできず、個々の磁性体粒子の疎水化は困難である。したがって、このような表面処理磁性体を用いてトナー化を行なっても十分な現像性を得ることは困難である。
【0155】
本発明に使用することのできる磁性現像剤(磁性トナー粒子)に用いることのできる酸化鉄は、リン、コバルト、ニッケル、銅、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、ケイ素のような元素を含んでいても良く、四三酸化鉄、γ―酸化鉄を主成分とするものであり、これらを1種または2種以上を併用して用いることができる。これら酸化鉄は、窒素吸着法によるBET比表面積が好ましくは2m2/g〜30m2/g、より好ましくは3m2/g〜28m2/gであり、更にそのモース硬度が5〜7であるものが好ましい。
【0156】
また酸化鉄の添加量は、結着樹脂100質量部に対して、10質量部〜200質量部とすることが好ましく、20質量部〜180質量部とすることが更に好ましい。酸化鉄の添加量が10質量部未満では現像剤の着色力が乏しく、カブリの制御も困難であり、一方、200質量部を超えると、現像剤担持体への磁力による保持力が強まることで現像性が低下したり、個々のトナー粒子への酸化鉄を均一に分散したりすることが難しくなる。
【0157】
なお、前記のような疎水性酸化鉄においてもトナー粒子内部の構造の制御までは困難であり、該疎水性酸化鉄のみで本発明のような酸化鉄の分布構造を得るにはコア粒子を設計し、その後酸化鉄粒子を添加する等の多段階の工程が必要である。
【0158】
そのために本発明者らは、鋭意検討の結果、水系媒体中直接重合の系において、ケン化価が20〜200の極性化合物を更に酸化鉄に添加することによって、内部に均一に分散する酸化鉄を表面近傍に偏析させられることを見出した。
【0159】
該ケン化価が20〜200の極性化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、アビエチン酸等のカルボン酸誘導体基や、スルホン基、硫酸基等の硫黄系酸基を有する樹脂またはその変性物であれば全て使用可能であり、このような樹脂を構成する具体的なモノマー成分としてはアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル等のようなアクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルのようなメタクリル酸エステル類;無水マレイン酸、マレイン酸ハーフエステル等のマレイン酸類;スルホン酸等の硫黄系酸基;アビエチン酸等が例示される。
【0160】
なお、これらの化合物の中ではマレイン酸成分を有する樹脂が特に微量で本発明の効果を発揮できるという点で好ましく、帯電性を損なわずに結着樹脂との相溶性にも優れるため好ましい。特に、下記一般式(8)や(9)に示される無水マレイン酸共重合体またはその開環化合物が特に好ましく、本発明の効果が一層発揮される。
【0161】
【化6】

【0162】
【化7】

(式(8)および(9)中、Aはアルキレン基を示し、Rは水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を示す。nは1〜20の整数を示し、x、yおよびzは夫々各成分の共重合比を示す。)
【0163】
トナー粒子中への極性化合物の添加量としては、結着樹脂100質量部に対して0.001質量部〜10質量部であることが好ましい。極性化合物の添加量が0.001質量部未満であると添加した効果が発揮されず、10質量部を超えると電荷のリークに伴う帯電量の絶対値低下が生じ易くなり、カブリや画像濃度低下等の弊害が発生し易くなる。
【0164】
静電潜像担持体上の非画像部へのトナー付着等を低減させるためには、現像剤(トナー粒子)の帯電性が十分であり且つ均一であることが必要である。更に、高画質化の観点から微小粒径のトナー粒子を用いる場合は、トナー粒子の付着力が増大するため、トナー粒子の形状も静電潜像担持体上の非画像部へのトナー付着に大きな影響を及ぼす。すなわち、トナー粒子が球状に近く、形状が揃っているほど粒子の付着面積が減少し、静電潜像担持体上の非画像部へのトナー付着を低減させることができる。以上のことから、本発明において使用するトナー粒子の平均円形度(後記)は0.970以上であることが好ましい。
【0165】
また、本発明において使用するトナー粒子の重量平均粒径は3μm〜10μmであることが良い。トナー粒子の重量平均粒径が10μmを超えるような場合は、微小ドット画像の再現性が低下し、且つ本発明の構成ではより耐久的な使用における粒度変動の影響を受けやすくなるため、過酷環境下等での帯電安定性が十分に発揮できない場合がある。一方、トナー粒子の重量平均粒径が3μm未満の場合は、本発明の特殊な構造を用いても流動性の低下に伴って外添剤等の劣化が生じ易く、帯電不良によるカブリ、濃度薄等の問題が発生することがある。
【0166】
本発明にて使用することのできる現像剤(トナー粒子)は、従来の粉砕法によって製造することも可能ではあるが、この場合本発明のようなトナー粒子中の酸化鉄のカプセル構造を得るためには、多段階の工程を経る必要があるため、収率やコストの面から不利である。
【0167】
これに対して水系媒体中で単量体系を直接重合して得られるトナー製造方法(以下、単に「重合法」と表記する)においては、水系媒体との親和性の観点から極性―非極性成分との間に局在/分離が生じ易いため、本発明の酸化鉄のカプセル構造を一段階で得ることが可能となり、好ましい。特に本発明では、上記極性化合物を微量用いることで重合中の液滴の安定化をも向上でき、粒度分布をシャープにすることができるため、収率の面からも好ましい。
【0168】
本発明にて使用することのできる現像剤(トナー粒子)の結着樹脂の原料である重合性単量体として、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−エチルスチレン等のスチレン系単量体、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のメタクリル酸エステル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のその他の単量体が挙げられる。これらの単量体は単独でまたは2種以上混合して使用し得る。上述の単量体の中でも、スチレンまたはスチレン誘導体を単独であるいは他の単量体と混合して使用することがトナーの現像特性および耐久性の点から好ましい。
【0169】
更に、本発明に用いることのできる現像剤(トナー粒子)の中に、他成分との相溶性に優れ、均一に帯電できる点から、極性高分子の荷電制御剤として含硫黄樹脂を含有させることは、好ましい形態である。該含硫黄樹脂の中でも、特に少なくともスルホン酸基含有(メタ)アクリルアミドモノマーに由来する成分を含有していることが好ましく、特に、該モノマーとして、帯電性の面から2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)および2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸が好ましい。また、上記単量体と共重合体をなす単量体としては単官能性重合性単量体や多官能性重合性単量体を使用することができる。
【0170】
単官能性重合性単量体として、スチレン;α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレンのようなスチレン誘導体;メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、iso−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−ノニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、ジメチルフォスフェートエチルアクリレート、ジエチルフォスフェートエチルアクリレート、ジブチルフォスフェートエチルアクリレート、2−ベンゾイルオキシエチルアクリレートのようなアクリル系重合性単量体;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、iso−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、iso−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、n−ノニルメタクリレート、ジエチルフォスフェートエチルメタクリレート、ジブチルフォスフェートエチルメタクリレートのようなメタクリル系重合性単量体;メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、ギ酸ビニルのようなビニルエステル;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルのようなビニルエーテル;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロピルケトンのようなビニルケトンが挙げられる。
【0171】
多官能性重合性単量体として、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2’−ビス(4−(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、2,2’−ビス(4−(メタクリロキシ・ジエトキシ)フェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタリン、ジビニルエーテル等が挙げられる。
【0172】
スルホン酸基含有(メタ)アクリルアミドを有する樹脂としては、上述のような単量体を用いることができるが、スチレン誘導体を単量体として含有していることが、より好ましい。
【0173】
該スルホン酸基含有(メタ)アクリルアミドモノマーを有する樹脂の製造方法は、塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、イオン重合、分散重合等があるが、製造が簡易であること、スルホン酸基を含むモノマーを均一に混合し得ることが容易であること等から溶液重合が好ましい。
【0174】
該スルホン酸基含有(メタ)アクリルアミドモノマーを有する樹脂は、下記一般式(10)のような構造を有する。
XCONHR23(SO3-n・mY+k (10)
[式(10)中、Xは重合性単量体に由来する重合体部位を表し、R23は炭素数1〜6のn価の炭化水素基を表し、Y+:対イオンを表し、kは対イオンの価数であり、mおよびnはn=k×mを満足する数である。]
【0175】
対イオンとしては、水素カチオン、ナトリウムカチオン、カリウムカチオン、カルシウムカチオン、アンモニウムカチオンなどであることが良く、より好ましくは水素カチオンである。
【0176】
また、スルホン酸基含有(メタ)アクリルアミドに由来する成分を含有する樹脂は極性が高いため、トナー粒子中に含有させることにより、トナー粒子の摩擦帯電時の電荷移動速度が向上し、低湿下でのチャージアップや高湿下での帯電量の低下が抑制できる。
【0177】
この含硫黄樹脂は、スルホン酸基含有(メタ)アクリルアミド系モノマーに由来する成分を樹脂中に2〜20質量%で含有する共重合体からなる高分子型化合物である。また、この含硫黄樹脂の添加量はトナー粒子中の結着樹脂100質量部に対して0.1質量部〜1.8質量部であることがトナー粒子の帯電性能上好ましい。
【0178】
含硫黄樹脂中のスルホン酸基含有(メタ)アクリルアミド系モノマーの共重合割合が2質量%未満である場合は、帯電の立ち上がりを生じ特に耐久初期においてベタ画像を出すことにより、ゴースト画像が現れることがある。また、20質量%を超える場合には該含硫黄樹脂のトナー粒子中への含有量を減らしても、トナーのチャージアップが生じ、特に低温低湿環境下においてカブリ特性の悪化やブロッチの発生が見られる場合もある。
【0179】
含硫黄樹脂の添加量がトナー中の結着樹脂100質量に対して1.8質量部を超える場合にも上記チャージアップ現象が発生し易く、反対に0.1質量部未満の場合には帯電量が上がりにくく、必要十分な電荷制御作用が得られない場合がある。
【0180】
トナー粒子の良好な帯電性能を得るためには、スルホン酸基含有(メタ)アクリルアミドを一定の範囲の割合で含有する樹脂からなる荷電制御剤をトナー粒子中に一定の範囲の割合で存在させることが重要であると考えられる。
【0181】
なお、トナー中のスルホン酸基を有する樹脂の含有量は、キャピラリー電気泳動法などを用いて測定することができる。
【0182】
また、含硫黄樹脂の重量平均分子量(Mw)が2000〜15000であることが好ましい。分子量が低くMwが2000未満の場合には、トナーの流動性が悪化し、特に連続使用において外添剤の埋め込みによるトナー劣化が発生する場合がある。また、Mwが15000を超える場合には、トナー粒子中の酸化鉄の分散性が悪化し、帯電能の悪化や着色力の低下を招くことがある。
【0183】
本発明に使用することのできるトナー粒子には、離型剤(ワックス成分)を含有することも好ましい使用形態の一つである。
【0184】
使用可能なワックスとしては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタムのような石油系ワックスおよびその誘導体、モンタンワックスおよびその誘導体、フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックスおよびその誘導体、ポリエチレンに代表されるポリオレフィンワックスおよびその誘導体、カルナウバワックス、キャンデリラワックスのような天然ワックスおよびその誘導体などが含まれる。ここでの誘導体には酸化物や、ビニル系モノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物が含まれる。さらに、高級脂肪族アルコール、ステアリン酸、パルミチン酸のような脂肪酸またはその化合物、酸アミドワックス、エステルワックス、ケトンワックス、硬化ヒマシ油およびその誘導体、植物系ワックス、動物性ワックスも使用できる。
【0185】
本発明ではトナー粒子を製造する際に、単量体系に樹脂を添加して重合しても良い。例えば、単量体では水溶性のため水性懸濁液中では溶解して乳化重合を起こすため使用できないアミノ基、カルボン酸基、水酸基、グリシジル基、ニトリル基のような親水性官能基含有の単量体成分をトナー中に導入したい時には、これらとスチレンあるいはエチレン等ビニル化合物とのランダム共重合体、ブロック共重合体、あるいはグラフト共重合体のような共重合体の形にして、あるいはポリエステル、ポリアミドのような重縮合体、ポリエーテル、ポリイミンのような重付加重合体の形で使用が可能となる。その使用量としては、重合性単量体100質量部に対して1質量部〜20質量部が適当である。使用量が1質量部未満では添加効果が小さく、一方20質量部を超えて使用された場合には、重合トナーの種々の物性設計が難しくなってしまう。
【0186】
本発明に使用することのできる現像剤(トナー粒子)には帯電特性をコントロールするために、含硫黄樹脂以外に荷電制御剤を添加しても良い。荷電制御剤としては、従来公知のものが利用できるが、特に帯電速度が速く、且つ一定の帯電量を安定して維持できるものを好ましく用いることができる。
【0187】
但し、トナー粒子を直接重合法にて製造する場合には、重合阻害性が低く、水系分散媒体への可溶化物が実質的に無い荷電制御剤が特に好ましい。
【0188】
その具体的な化合物として、負帯電性荷電制御剤としてサリチル酸、アルキルサリチル酸、ジアルキルサリチル酸、ナフトエ酸、ダイカルボン酸のような芳香族カルボン酸の金属化合物、アゾ染料あるいはアゾ顔料の金属塩または金属錯体、スルホン酸またはカルボン酸基を側鎖に持つ高分子型化合物、ホウ素化合物、尿素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーン等が挙げられ、正帯電性荷電制御剤として四級アンモニウム塩、該四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物、グアニジン化合物、ニグロシン系化合物、イミダゾール化合物等が挙げられる。
【0189】
これらの電荷制御剤の使用量としては、結着樹脂の種類、他の添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではないが、好ましくは結着樹脂100質量部に対して0.1質量部〜10質量部、より好ましくは0.1質量部〜5質量部の範囲が適当である。
【0190】
本発明に使用する磁性現像剤(磁性トナー粒子)を重合法で製造する際には、重合反応時に半減期0.5時間〜30時間である重合開始剤を、重合性単量体の0.5質量%〜20質量%の添加量で用いて重合反応を行なうと、分子量1万〜10万の間に極大を有する重合体を得ることが可能であり、トナー粒子に望ましい強度と適当な溶融特性を付与することができる。
【0191】
重合開始剤の例として、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリルのようなアゾ系またはジアゾ系重合開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイドのような過酸化物系重合開始剤が挙げられる。
【0192】
また架橋剤を添加しても良く、好ましい添加量としては、重合性単量体の0.001質量%〜15質量%である。
【0193】
重合法によるトナー粒子の製造では、重合性単量体中に、酸化鉄、含硫黄樹脂、ケン化価が20〜200の極性化合物、着色剤、離型剤、可塑剤、結着剤、荷電制御剤、架橋剤等トナーとして必要な成分およびその他の添加剤、例えば重合反応で生成する重合体の粘度を低下させるために入れる有機溶媒、分散剤等を適宜加えて、ホモジナイザー、ボールミル、コロイドミル、超音波分散機等の分散機で均一に溶解または分散させる。こうして得られた単量体系を、分散安定剤を含有する水系媒体中に分散/懸濁する。この時、高速撹拌機もしくは超音波分散機のような高速分散機を使用して一気に所望のトナー粒子のサイズとする方が、得られるトナー粒子の粒径がシャープになる。重合開始剤添加の時期としては、重合性単量体中に他の添加剤を添加する時同時に加えても良いし、水系媒体中に分散する直前に混合しても良い。また、造粒直後、重合反応を開始する前に重合性単量体あるいは溶媒に溶解した重合開始剤を加えることもできる。
【0194】
ここで使用する分散安定剤として、公知の界面活性剤や有機あるいは無機分散剤が使用でき、中でも無機分散剤が有害な超微粉を生じ難く、その立体障害性により分散安定性を得ているので反応温度を変化させても安定性が崩れ難く、洗浄も容易でトナー粒子に対して悪影響を与え難いので、好ましい。こうした無機分散剤の例としては、燐酸カルシウム、燐酸マグネシウム、燐酸アルミニウム、燐酸亜鉛のような燐酸多価金属塩;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムのような炭酸塩;メタ硅酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウムのような無機塩;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、シリカ、ベントナイト、アルミナのような無機酸化物が挙げられる。
【0195】
これらの無機分散剤は、重合性単量体100質量部に対して、0.2質量部〜20質量部を単独でまたは2種類以上組み合わせて使用することが好ましい。平均粒径が5μm以下であるような、より微粒化されたトナー粒子を製造する場合には、0.001質量部〜0.1質量部の界面活性剤を併用しても良い。
【0196】
界面活性剤として、例えばドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウムが挙げられる。
【0197】
これら無機分散剤を用いる場合には、そのまま使用しても良いが、より細かい粒子を得るため、水系媒体中にて該無機分散剤粒子を生成させることができる。例えば、燐酸カルシウムの場合、高速撹拌下、燐酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液とを混合して、水不溶性の燐酸カルシウムを生成させることができ、より均一で細かな分散が可能となる。この時、同時に水溶性の塩化ナトリウム塩が副生するが、水系媒体中に水溶性塩が存在すると、重合性単量体の水への溶解が抑制されて、乳化重合に依る超微粒トナー粒子が発生し難くなるので、より好都合である。重合反応終期に残存重合性単量体を除去する時には障害となることから、水系媒体を交換するか、イオン交換樹脂で脱塩したほうが良い。無機分散剤は、重合終了後酸あるいはアルカリで溶解して、ほぼ完全に取り除くことができる。
【0198】
上記重合工程においては、重合温度は40℃以上、一般には50℃〜90℃に設定する。この温度範囲で重合を行なうと、内部に封じられるべき離型剤やワックスの類が、相分離により析出して内包化がより完全となる。残存する重合性単量体を消費するために、重合反応終期ならば、反応温度を90℃〜150℃にまで上げることは可能である。
【0199】
重合トナー粒子は重合終了後、公知の方法によって濾過、洗浄、乾燥を行うが、更に該製造工程後に分級工程を入れ、粗粉や微粉を除去することも、本発明の望ましい形態の一つである。
【0200】
また、本発明に用いることのできるトナー粒子には、流動性向上剤として、無機微粉体または疎水性無機微粉体がトナー粒子に外部添加され混合されていることが好ましい。例えば、酸化チタン微粉末、シリカ微粉末、アルミナ微粉末を添加して用いることが好ましい。
【0201】
上記無機微粉体は、BET法で測定した窒素吸着による比表面積が30m2/g以上、特に50m2/g〜400m2/gの範囲であるものが良好な結果を与えるので好ましい。
【0202】
中でも、シリカ微粉末が好ましい。シリカ微粉体としては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成されたいわゆる乾式法またはヒュームドシリカと称される乾式シリカおよび水ガラス等から製造されるいわゆる湿式シリカのいずれもが使用可能であるが、表面および内部にあるシラノール基が少なく、製造残渣のない乾式シリカが好ましい。
【0203】
さらにシリカ微粉体は、疎水化処理されているものが高温高湿環境下での特性から好ましい。トナー粒子に添加された無機微粉体が吸湿すると、トナー粒子の帯電量が低下し、画像濃度が低下する。疎水化処理するには、シリカ微粉体と反応あるいは物理吸着する有機ケイ素化合物などで処理することによって付与される。好ましい方法としては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された乾式シリカ微粉体をシランカップリング剤で処理した後、あるいはシランカップリング剤で処理すると同時にシリコーンオイルのような有機ケイ素化合物で処理する方法が挙げられる。
【0204】
シリカ微粉末の疎水化処理に使用されるシランカップリング剤として、例えばヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、β−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシランメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシロキサンが挙げられる。
【0205】
また、有機ケイ素化合物として、シリコーンオイルが挙げられる。好ましいシリコーンオイルとして、25℃における動粘度がおよそ30mm2/s(cSt)〜1,000mm2/s(cSt)のものが用いられ、例えばジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、α−メチルスチレン変性シリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイルが好ましい。
【0206】
シリコーンオイル処理の方法は、例えばシランカップリング剤で処理されたシリカ微粉体とシリコーンオイルをヘンシェルミキサー等の混合機を用いて直接混合しても良いし、ベースとなるシリカヘシリコーンオイルを噴射する方法によっても良い。あるいは適当な溶剤にシリコーンオイルを溶解あるいは分散せしめた後、ベースのシリカ微粉体を混合し、溶剤を除去して作製しても良い。
【0207】
更に本発明に用いることのできる磁性トナー粒子には、必要に応じて流動性向上剤以外の外添剤が混合されていても良い。
【0208】
例えばクリーニング性を向上させる等の目的で、一次粒径が30nmを超える(好ましくは比表面積が50m2/g未満)微粒子、より好ましくは一次粒径が50nm以上(好ましくは比表面積が30m2/g未満)で球状に近い無機微粒子または有機微粒子を更にトナー粒子に添加することも好ましい形態の一つである。例えば球状のシリカ粒子、球状の樹脂粒子を用いるのが好ましい。
【0209】
更に他の添加剤、例えばフッ素樹脂粉末、ステアリン酸亜鉛粉末、ポリフッ化ビニリデン粉末のような滑剤粉末;または酸化セリウム粉末、炭化ケイ素粉末、チタン酸ストロンチウム粉末、ケイ酸ストロンチウム粉末のような研磨剤;ケーキング防止剤;または例えばカーボンブラック粉末、酸化亜鉛粉末、酸化スズ粉末のような導電性付与剤;また、逆極性の有機微粒子、および無機微粒子を現像性向上剤として少量加えることもできる。これらの添加剤も、その表面を疎水化処理して用いることも可能である。
【0210】
上記のような外添剤は、トナー粒子100質量部に対して0.05質量部〜5質量部、好ましくは0.1質量部〜4質量部を使用するのが良い。
【0211】
本発明の磁性現像剤(磁性トナー粒子)を粉砕法により製造する場合は、公知の方法が用いられるが、例えば、結着樹脂、ケン化価が20〜200の極性化合物、酸化鉄粒子、離型剤、荷電制御剤、場合によって着色剤等、およびその他の添加剤等をヘンシェルミキサー、ボールミル等の混合機により十分混合してから加熱ロール、ニーダー、エクストルーダのような熱混練機を用いて溶融混練して樹脂類をお互いに相溶した中に酸化鉄等の他のトナー材料を分散または溶解し、冷却固化、粉砕後、分級、必要に応じて表面処理を行なって磁性トナー粒子を得ることができる。分級および表面処理の順序はどちらが先でもよい。分級工程においては生産効率上、多分割分級機を用いることが好ましい。
【0212】
粉砕工程は、機械衝撃式、ジェット式等の公知の粉砕装置を用いた方法により行なうことができる。更に特定の円形度を有する磁性トナー粒子を得るためには、さらに熱をかけて粉砕したり、あるいは補助的に機械的衝撃を加えたりして処理をすることが好ましい。また、微粉砕(必要に応じて分級)された磁性トナー粒子を熱水中に分散させる湯浴法、熱気流中を通過させる方法などを用いても良い。
【0213】
機械的衝撃力を加える手段としては、例えば川崎重工(株)製のクリプトロンシステム(商品名)、ターボ工業(株)製のターボミル(商品名)等の機械衝撃式粉砕機を用いる方法、また、ホソカワミクロン(株)製のメカノフージョンシステム(商品名)、(株)奈良機械製作所製ハイブリダイゼーションシステム(商品名)等の装置のように、高速回転する羽根により磁性トナー粒子をケーシングの内側に遠心力により押しつけ、圧縮力、摩擦力等の力により磁性トナー粒子に機械的衝撃力を加える方法が挙げられる。
【0214】
機械的衝撃法を用いる場合においては、処理温度を磁性トナー粒子のガラス転移点Tg付近の温度(Tg±30℃)とすることが、凝集防止、生産性の観点から好ましい。さらに好ましくは、磁性トナー粒子のガラス転移点Tg±20℃の範囲の温度で行なうことが、転写効率を向上させる上で特に有効である。
【0215】
図4は、本発明の現像方法を実現するための一実施形態の現像装置の模式図である。
【0216】
図4において、公知のプロセスにより形成された静電潜像担持体、例えば、感光ドラム601は、矢印B方向に回転する。現像スリーブ608は、現像容器603に供給された磁性トナー粒子を有する磁性一成分現像剤を担持して、矢印A方向に回転することによって、現像スリーブ608と感光ドラム601とが対向している現像領域Dに現像剤を搬送する。現像剤担持体610においては、現像スリーブ608内に、現像剤を現像スリーブ608上に磁気的に吸引且つ保持するために、磁石(マグネットローラ)609が配置されている。
【0217】
本発明の現像方法で用いられる現像スリーブ608は、基体としての金属円筒管606上に被覆された導電性樹脂被覆層607を有する。現像容器603には、現像剤補給容器(不図示)から現像剤供給部材(スクリューなど)612を経由して磁性現像剤が送り込まれてくる。現像容器603は、第一室614および第二室615に分割されており、第一室614に送り込まれた磁性現像剤は攪拌搬送部材605により現像容器603と仕切り部材604により形成される隙間を通過して第二室615に送られ、磁性現像剤はマグネットローラ609による磁力の作用により現像スリーブ608上に担持される。第二室615中には磁性現像剤が滞留するのを防止するための攪拌部材611が設けられている。
【0218】
磁性現像剤は、磁性トナー粒子相互間および現像スリーブ608上の導電性樹脂被覆層607との摩擦により、感光ドラム601上の静電潜像を現像することが可能な摩擦帯電電荷を得る。本例では、現像領域Dに搬送される現像剤の層厚を規制するために、現像剤層厚規制部材としての強磁性金属製の磁性規制ブレード(ドクターブレード)602が、現像スリーブ608の表面から50μm〜500μmの間隙を有して現像スリーブ608に対向するように現像容器603に装着されている。マグネットローラ609の磁極N1からの磁力線が磁性規制ブレード602に集中することにより、現像スリーブ608上に現像剤の薄層が形成される。なお、この磁性規制ブレード602に代えて非磁性の規制ブレードを使用することもできる。
【0219】
この様にして、現像スリーブ608上に形成される磁性現像剤の薄層の厚みは、現像領域Dにおける現像スリーブ608と感光ドラム601との間の最小間隙よりも小さいものであることが好ましい。
【0220】
本発明の現像剤担持体は、以上の様な磁性現像剤の薄層により静電潜像を現像する方式の現像装置、すなわち非接触型現像装置に組み込むのが特に有効であるが、現像領域Dにおいて、磁性現像剤層の厚みが現像スリーブ608と感光ドラム601との間の最小間隙以上の厚みである現像装置、いわゆる接触型現像装置にも本発明の現像剤担持体を適用することができる。以下の説明は、説明の煩雑を避けるため、非接触型現像装置を例にとって行なう。
【0221】
現像スリーブ608に担持された磁性現像剤を飛翔させるため、上記現像スリーブ608にはバイアス手段として現像バイアス電源613より現像バイアス電圧が印加される。この現像バイアス電圧として直流電圧を使用するとき、静電潜像の画像部(現像剤が付着して可視化される領域)の電位と背景部の電位との間の値の電圧を現像スリーブ608に印加するのが好ましい。
【0222】
現像された画像の濃度を高め、且つ階調性を向上させるためには、現像スリーブ608に交番バイアス電圧を印加し、現像領域Dに向きが交互に反転する振動電界を形成してもよい。この場合には、上記した現像画像部の電位と背景部の電位の中間の値を有する直流電圧成分を重畳した交番バイアス電圧を現像スリーブ608に印加するのが好ましい。
【0223】
この時、高電位部と低電位部を有する静電潜像の高電位部に磁性現像剤を付着させて可視化する正規現像の場合には、静電潜像の極性と逆極性に帯電する磁性現像剤を使用し、高電位部と低電位部を有する静電潜像の低電位部に磁性現像剤を付着させて可視化する反転現像の場合には、静電潜像の極性と同極性に帯電する磁性現像剤を使用する。この場合、高電位、低電位というのは、絶対値による表現である。これらいずれの場合にも、磁性現像剤(磁性トナー粒子)は少なくとも現像スリーブ608表面(導電性樹脂被覆層607)との摩擦により帯電する。
【0224】
図4においては、現像スリーブ608上の現像剤の層厚を規制する現像剤層厚規制部材として、現像スリーブから離間されて配置された磁性ブレードの例を示したが、図5に示されるように、ウレタンゴム、シリコーンゴムのようなゴム弾性を有する材料、あるいはリン青銅、ステンレス鋼のような金属弾性を有する材料の弾性板からなる弾性規制ブレードを使用し、この弾性規制ブレード616を、現像スリーブ608に現像剤を介して接触あるいは圧接させて用いても良く、本発明では特にこの形態を有する系において、従来技術と比較して、耐摩耗性および帯電付与能の面で格段に優れた効果を得ることができる。これは、規制ブレードを接触または圧接させるタイプの現像装置では、トナー層はさらに強い規制を受けながら現像スリーブ608上に現像剤の薄層を形成することから、現像スリーブ608上に、上記した図4の装置例の場合よりも更に薄い現像剤層を形成することができるが、現像スリーブ608表面の導電性樹脂被覆層607への負荷が大きくなり、導電性樹脂被覆層607が摩耗し易くなる。本発明では、このような系においても導電性樹脂被覆層607の摩耗を軽減することができるため、高耐久化を達成することができる。なお、現像スリーブ608に対する弾性規制ブレード616の当接圧力は、線圧5g/cm〜50g/cmであることが、磁性現像剤の規制を安定化させ、磁性現像剤層厚を好適にさせることができる点で好ましい。弾性規制ブレード616の当接圧力が線圧5g/cm未満の場合には、磁性現像剤への規制能力が弱くなり、カブリや現像剤もれの原因となり易く、線圧50g/cmを超える場合には、現像剤へのダメージが大きくなり、現像剤劣化やスリーブおよびブレードへの融着の原因となり易い。
【0225】
図4および図5はあくまでも本発明の現像方法に使用可能な現像装置を模式的に例示したものであり、前記した現像剤層厚規制部材以外にも、現像容器(ホッパー)603の形状、攪拌翼605、611の有無、磁極の配置、供給部材612の形状、補給容器の有無、などに様々な形態があることは言うまでもない。
【0226】
以下に本発明に関わる物性の測定方法について述べる。
【0227】
(1)導電性樹脂被覆層表面のユニバーサル硬さHU
導電性樹脂被覆層表面のユニバーサル硬さHUは、ISO/FDIS14577に準拠するフィッシャー・インストルメンツ社製のフィッシャースコープH100V(商品名)を用いる表面被膜物性試験から得られる硬さ値であり、対面角度が136°に規定されている四角錘のダイヤモンド圧子を使用し、測定荷重F(単位:N)を段階的にかけて被硬さ測定試料に押し込んでいき、荷重をかけた状態での押し込み深さh(単位:mm)を電気的に検出して読み取り、下記式(1)で計算される値である。
HU=K×F/h2 [N/mm2] 式(1)
ここで、Kは定数であり、1/26.43である。
【0228】
測定用試料は、基体表面に導電性樹脂被覆層を形成した試料を用いるが、測定精度を向上させるためには、導電性樹脂被覆層表面が平滑である方がよいので、研磨処理等の平滑化処理を施した後測定することが、更に好ましい。したがって、本発明においては、導電性樹脂被覆層表面を♯2000の研磨テープを用いて研磨処理を施し、研磨処理後の表面粗さRaが0.2μm以下になるように調整したものを測定した。
【0229】
試験荷重Fおよび圧子の最大押し込み深さhは、導電性樹脂被覆層表面の表面粗さの影響を受けず、且つ下地の基体の影響を受けない程度の範囲が好ましいので、本発明においては、圧子の最大押し込み深さhを1μm〜2μm程度になるよう試験荷重Fをかけて測定した。なお、測定環境は23℃、50%とし、測定回数は異なる測定点にて100回とし、その測定値から求めた平均値をAとし、標準偏差をσとした。
【0230】
(2)導電性樹脂被覆層表面の算術平均粗さRa
導電性樹脂被覆層表面の算術平均粗さRaは、JIS−B0601−2001に準拠する小坂研究所(株)製のサーフコーダーSE−3500(商品名)により、カットオフ0.8mm、評価長さ8mm、送り速度0.5mm/sの条件にて、軸方向3点×周方向3点=9点について測定し、その平均値をRaとした。
【0231】
(3)黒鉛化粒子の黒鉛化度p(002)
黒鉛化度p(002)は、マックサイエンス社製の強力型全自動X線回折装置“MXP18”システム(商品名)により、黒鉛化粒子のX線回折スペクトルから得られる黒鉛の格子間隔d(002)を測定し、d(002)=3.440−0.086(1−p2)から求めた。なお、格子間隔d(002)は、標準物質として高純度シリコンを使用し、測定した回折パターンのピーク位置Si(111)より、補正した値を使用した。
【0232】
主な測定条件:
X線発生装置 ; 18kW
測定X線 ; CuKα(CuKβをニッケルフィルターにより除去)
ゴニオメータ ; 横型ゴニオメータ
モノクロメータ ; 使用
管電圧/管電流 ; 30.0kV/10.0mA
測定法 ; 連続法
スキャン軸 ; 2θ/θ
サンプリング間隔; 0.020deg
スキャン速度 ; 6.000deg/min
発散スリット ; 0.50deg
散乱スリット ; 0.50deg
受光スリット ; 0.30mm
【0233】
(4)黒鉛化粒子および凹凸形成粒子の粒径
黒鉛化粒子および凹凸形成粒子の粒径は、レーザー回折型粒度分布計のコールターLS−130型またはLS−230型粒度分布計(商品名、共に、ベックマン・コールター社製)を用いて測定した。
【0234】
測定方法としては、水系モジュールを用い、測定溶媒としてはイソプロピルアルコールを使用した。まず、イソプロピルアルコールで粒度分布計の測定系内を約5分間洗浄し、消泡剤として測定系内に亜硫酸ナトリウムを10mg〜25mg加えて、バックグラウンドファンクションを実行し、次にイソプロピルアルコール50ml中に界面活性剤3滴〜4滴を加え、更に測定試料を5mg〜25mg加え、次いで超音波分散器で1分間〜3分間分散処理を行なって試料液とした。測定装置の測定系内に試料液を徐々に加えて、装置の画面上のPIDSが45%〜55%になるように測定系内の試料濃度を調整して測定を行なった。この測定値を用い、体積分布から算術した体積平均粒径を求め、これらの粒径とした。
【0235】
(5)導電性樹脂被覆層の体積抵抗値
導電性樹脂被覆層の体積抵抗値は、100μmの厚さのPETシート上に、現像剤担持体上の導電性樹脂被覆層を構成するのと同じ塗布液を用い、7μm〜20μmの厚さの被覆層を形成し、抵抗率計ローレスターAP(商品名、三菱油化(株)製)に4端子プローブを取り付けて測定した。なお、測定環境は20℃〜25℃、50%RH〜60%RHとした。
【0236】
(6)粒子の体積抵抗
粒状試料を40mmφのアルミリングに入れ、2500Nで加圧成型し、抵抗率計ローレスターAPまたはハイレスタIP(商品名、共に、三菱油化(株)製)にて4端子プローブを用いて体積抵抗値を測定した。なお、測定環境は、20℃〜25℃、50%RH〜60%RHとした。
【0237】
(7)球状粒子の真密度
球状粒子の真密度は、乾式密度計アキュピック1330(商品名、(株)島津製作所製)を用いて測定した。
【0238】
(8)導電性樹脂被覆層の膜厚および削れ量
導電性樹脂被覆層の膜厚および削れ量(膜削れ)の測定には、KEYENCE社製レーザー寸法測定器LS5000(商品名)を用いた。なお、コントローラLS−5500およびセンサーヘッドLS−5040Tを用い、スリーブ固定治具およびスリーブ送り機構を取り付けた装置にセンサー部を別途固定し、スリーブの外径寸法をスリーブ長手方向に対し30分割して30箇所、更にスリーブを周方向に90°回転させた後更に30箇所、計60箇所測定し、その平均値を求める。一方、表面被覆層形成前のスリーブの外径を予め測定しておき、表面被覆層形成後の外径との差から導電性樹脂被膜の膜厚を算出した。更に耐久使用後に再び外径を測定し、その差分から削れ量を算出した。
【0239】
(9)トナー粒子の重量平均粒径および粒度分布
トナー粒子の重量平均粒径および粒度分布の測定は、コールターカウンター法にて行なった。なお、装置としては、ベックマン・コールター社から販売されているコールターカウンターTA−II、コールターマルチサイザーIIまたはコールターマルチサイザーIII(いずれも商品名)を用いた。
【0240】
測定試料を、分散剤として界面活性剤(好ましくは、アルキルベンゼンスルホン酸塩)を含む電解液に分散させ、測定液溜に分散液を入れて測定した。この電解液として、1級塩化ナトリウムを用いた1%NaCl水溶液を使用する。なお、市販品として、例えばISOTON R−II(商品名、ベックマン・コールター社)が使用できる。
【0241】
電解液100ml〜150ml中に、界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸塩液)0.1ml〜5mlを加え、次いで、測定試料を2mg〜20mg加える。試料を懸濁した電解液を超音波分散器で1〜3分間分散処理を行ない、上記粒度分布測定装置にセットし、100μmアパーチャーを用い、2.00μm以上のトナー粒子の体積・個数を測定する。この測定結果から体積分布−個数分布を算出する。次いで、体積分布から求めた重量基準の重量平均粒径(D4)(各チャンネルの中央値をチャンネル毎の代表値とする)を算出する。
【0242】
なお、チャンネルとして、2.00μm〜2.52μm未満;2.52μm〜3.17μm未満;3.17μm〜4.00μm未満;4.00μm〜5.04μm未満;5.04μm〜6.35μm未満;6.35μm〜8.00μm未満;8.00μm〜10.08μm未満;10.08μm〜12.70μm未満;12.70μm〜16.00μm未満;16.00μm〜20.20μm未満;20.20μm〜25.40μm未満;25.40μm〜32.00μm未満;32.00μm〜40.30μm未満の13チャンネルを用いた。
【0243】
(10)トナー粒子中の酸化鉄分布、トナー粒子の投影面積相当径Cおよび酸化鉄とトナー粒子表面との距離の最小値Dの比率(D/C)
トナー粒子の投影面積相当径C、トナー粒子中の酸化鉄の分布については、トナー粒子をエポキシ樹脂(常温硬化性)に分散させ、硬化させた後に、ダイヤモンド刃を備えたミクロトームにより薄片とし、これを透過型電子顕微鏡(本発明では日立製作所製の日立H−600型(商品名)を使用、加速電圧100kVとした)にて、透過電子顕微鏡写真を得て、その写真より下記により求めた。なお、精度の高い測定を行うために、透過電子顕微鏡の写真拡大倍率を1万倍〜2万倍とすることが望ましい。
【0244】
顕微鏡写真より得られるトナー粒子の断面積から円相当径を求め、これを「投影面積相当径C」とし、そのうち、上記(9)のコールターカウンターを用いる方法によって求めた重量平均粒径の±10%の幅に含まれるものを評価粒子として、100個を選択し、その各粒子の断面中に存在する酸化鉄粒子の分布を観察し、そのうちの各粒子の円相当径の表面より0.2倍の深さまでにある酸化鉄粒子が70個%以上であるトナー粒子についての個数を計測する(酸化鉄分布)。一方、各トナー粒子について、表面と酸化鉄粒子表面との距離の最小値Dを求め、比率D/Cが0.02以下である粒子の割合を計測する。
【0245】
(11)トナー表面に存在する炭素元素の含有量Qに対する鉄元素の含有量Rの比(R/Q)
本発明におけるトナー表面に存在する炭素元素の含有量Qおよび鉄元素の含有量Rは、Physical Electronics Industries,Inc.)製のESCA(X線光電子分光分析)装置1600S型(商品名)を使用し、X線源MgKα(400W)、分光領域800μmφで、表面組成分析にて測定した。
【0246】
炭素元素は結合エネルギー283eV〜293eVに測定されるピークトップから、また、鉄元素は結合エネルギー706eV〜730eVに測定されるピークトップから、それぞれピーク強度を求め、装置に添付された相対感度因子を用いて表面原子濃度(原子%)を算出した。
【0247】
なお、測定試料として、トナー粒子を用いる。しかし、トナー粒子に外添剤が添加されている場合には、トナー粒子表面に付着する外添剤をイソプロピルアルコールのようなトナー粒子を溶解しない溶媒を用いて、取り除いた後に測定を行たった。
【0248】
(12)トナー粒子の平均円形度
平均円形度は、粒子の形状を定量的に表現する簡便な方法として用いたものであり、東亞医用電子製フロー式粒子像分析装置「FPIA−1000」(商品名)を用いて測定し、3μm以上の円相当径の粒子iについてその円形度(Ji)を下式(3)により求めた。ここで、Ei(μm)は粒子iの投影像の周囲長であり、Ki(μm)は粒子iと同じ投影面積の円の周囲長である。
粒子iの円形度Ji=Ki/Ei 式(3)
【0249】
次に、下式(4)により、測定された全粒子の円形度(Ji)の総和を全粒子数nで除した値を平均円形度Jと定義する。
平均円形度J=(1/n)×ΣJi=(1/n)×Σ(Ki/Ei) 式(4)
【0250】
なお、測定装置「FPIA−1000」は、各粒子の円形度を算出した後、平均円形度およびモード円形度の算出に当たって、粒子を得られた円形度によって、円形度0.40〜1.00を0.010間隔で61分割したクラスに分け、分割点の中心値と頻度を用いて平均円形度の算出を行なう算出法を用いている。この算出法で算出される平均円形度の値と、上述した各粒子の円形度を直接用いる算出式によって算出される平均円形度の値の誤差は、非常に小さく、実質的には無視出来る程度のものであるので、本発明においては、上述した各粒子の円形度を直接用いる算出式の概念を利用した、一部変更したこのような算出法を用いている本装置から直接出力される値を採用した。
【0251】
この平均円形度は、粒子の凹凸の度合いの指標であり、粒子が完全な球形の場合1.000を示し、現像剤の表面形状が複雑になるほど小さな値となる。
【0252】
具体的な測定方法としては、界面活性剤約0.1mgを溶解している水10mlに現像剤約5mgを分散させて分散試料液を調製し、超音波(20kHz、50W)を5分間照射し、粒子分散濃度を5000個/μl〜20000個/μlとする。次いで、前記装置により測定を行ない、3μm以上の円相当径を有する粒子の円形度から平均円形度を求める。
【0253】
測定は測定装置添付のマニュアルに従った。その概要は、以下のとおりである。
【0254】
試料分散液は、フラットで扁平なフローセル(厚み約200μm)の流路(流れ方向に沿って広がっている)を通過させる。フローセルの厚みに対して交差して通過する光路を形成するように、ストロボとCCDカメラが、フローセルに対して、相互に反対側に位置するように装着されている。試料分散液が流れている間に、ストロボ光がフローセルを流れている粒子の画像を得るために1/30秒間隔で照射され、その結果、それぞれの粒子は、フローセルに平行な一定範囲を有する2次元画像として撮影される。それぞれの粒子の2次元画像の面積から、同一の面積を有する円の直径を円相当径として算出する。それぞれの粒子の2次元画像の投影面積および投影像の周囲長から上記の円形度算出式を用いて各粒子の円形度を算出する。
【0255】
なお、本測定において3μm以上の円相当径の粒子群についてのみ円形度を測定する理由は、3μm未満の円相当径の粒子群にはトナー粒子とは独立して存在する外部添加剤の粒子群も多数含まれるため、その影響によりトナー粒子群についての円形度が正確に見積もれないからである。
【0256】
(13)ケン化価の測定方法
ケン化価(試料1g中に含有されている遊離脂肪酸、樹脂酸等を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数)は、JIS−K0070に準ずる基本操作により求める。
【0257】
(13−1)試薬
溶剤:エチルエーテル−エチルアルコール混合溶液(1+1または2+1)またはベンゼン−エチルアルコール混合溶液(1+1または2+1)。これらの溶液は使用直前にフェノールフタレインを指示薬として0.1N水酸化カリウムエチルアルコール溶液で中和したものを使用する。
フェノールフタレイン溶液:フェノールフタレイン1gをエチルアルコール(95v/v%)100mlに溶解させる。
0.1N水酸化カリウム−エチルアルコール溶液:水酸化カリウム7.0gをできるだけ少量の水に溶かしてエチルアルコール(95v/v%)を加えて1リットルとし、2日〜3日放置後濾過する。標定は、JIS K8006(試薬の含量試験中滴定に関する基本事項)に準じて行なう。
【0258】
(13−2)操作
試料1g〜20gを正しく量り取り、これに溶剤100mlおよび指示薬としてフェノールフタレイン溶液を数滴加え、試料が完全に溶けるまで十分に振る。固体試料の場合は水浴上で加温して溶かす。冷却後これに過剰量の0.1N水酸化カリウム−エチルアルコール溶液100ml〜200ml添加し、1時間加熱還流してケン化させ、その後冷却する。得られた溶液を0.1N塩酸水溶液で逆滴定し、指示薬の微紅色が30秒間続いて消失したときを中和の終点とする。なお、本試験と並行して空実験を行なう。
【0259】
(13−3)計算式
次式(5)に従ってケン化価を算出する。
ZA={(ZB)−(ZC)}×5.611×f/S 式(5)
ここで、ZA:ケン化価
ZB:空試験の0.1N塩酸水溶液の添加量(ml)
ZC:本試験の0.1N塩酸水溶液の添加量(ml)
f :0.1N塩酸水溶液のファクター
S :試料(g)
【0260】
(14)酸化鉄粒子の疎水化度
酸化鉄粒子の疎水化度は、水に酸化鉄粒子を分散し、撹拌している中にメタノールを徐々に加えて行き、酸化鉄粒子の全部が沈むとき(液表面に酸化鉄粒子が確認されなくなったとき)のメタノール−水混合溶媒のメタノール濃度(体積%)あるいは所定水量に対するアルコール添加量で表す。なお、この測定方法(メタノール滴定試験)は、疎水化された表面を有する磁性粉体の疎水化度を確認する実験的試験である。
【0261】
具体的には、酸化鉄粒子0.1gを250ml容ビーカー中の水50mlに添加し、緩やかに撹拌している中に、メタノールを液底部より滴定する。滴定は緩やかに撹拌しながら行なう。液面に酸化鉄粒子の浮遊物が確認されなくなった時を滴定の終了点とする。疎水化度は、沈降終了時点に達した際のメタノール量あるいは水混合液中のメタノールの体積百分率として示すことができる。
【0262】
(15)含硫黄樹脂の分子量
含硫黄樹脂の重量平均分子量は、テトラヒドロフランを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定し、ポリスチレン換算値として求めた。具体的には、以下の方法に従った。検出器としてRIを用いた。
【0263】
<試料調製>
試料約10mgをテトラヒドロフラン5mlに溶解し、25℃で16時間放置した後、孔径0.45μmのメンブランフィルターで濾過し、試料とした。
【0264】
<装置>
装置として、高速GPC HPLC8120 GPC(商品名、東ソー(株)製)を使用した。
【0265】
<測定条件>
温度 : 35℃
溶媒 : テトラヒドロフラン
流速 : 1.0ml/min
濃度 : 0.2質量%
試料注入量: 100μl
カラム : 昭和電工(株)製のGPC用カラム(ショウデックス GPC KF806M(商品名))30cmを2本連結
【0266】
<検量線>
東ソー(株)製のTSK スタンダード ポリスチレン F−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000およびA−500(いずれも商品名)を標準ポリスチレン試料として用いて検量線を作成した。
【実施例】
【0267】
次に、具体的実施例をもって、本発明を更に詳しく説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。また、以下において、「部」は、特にことわらない限りすべて質量部を表す。
【0268】
まず、以下の実施例、比較例で使用する黒鉛化粒子、凹凸形成粒子および現像スリーブについて、それらの製造例を示す。
【0269】
参考例1(黒鉛化粒子A−1の製造)
石炭系重質油を熱処理することで得られたメソカーボンマイクロビーズを、洗浄・乾燥した後、アトマイザーミルで機械的に分散を行ない、窒素雰囲気下において1200℃で一次加熱処理を行ない炭化させた。次いで、アトマイザーミルで二次分散を行った後、窒素雰囲気下において2800℃で熱処理し、更に分級して体積平均粒径3.5μmの黒鉛化粒子を集め、黒鉛化粒子A−1とした。
【0270】
参考例2(黒鉛化粒子A−2の製造)
コールタールピッチから溶剤分別によりβ−レジンを抽出し、これを水素添加、重質化処理を行った後、次いでトルエンにより溶剤可溶分を除去することでメソフェーズピッチを得た。そのメソフェーズピッチを微粉砕し、その粒子を空気中において約800℃で酸化処理した後、窒素雰囲気下中にて3000℃で焼成して黒鉛化し、更に分級して体積平均粒径2.9μm黒鉛化粒子を集め、黒鉛化粒子をA−2とした。
【0271】
参考例3〜6(黒鉛化粒子A−3〜A−6の製造)
焼成温度および分級条件を変えた以外は参考例1と同様にして、体積平均粒径0.7μm(黒鉛化粒子A−3)、5.9μm(黒鉛化粒子A−4)、10.3μm(黒鉛化粒子A−5)または7.8μm(黒鉛化粒子A−6)である黒鉛化粒子を作製した。
【0272】
参考例7(黒鉛化粒子A−7の製造)
黒鉛化粒子の原材料として、コークスとタールピッチの混合物を用い、この混合物をタールピッチの軟化点以上の温度で練り込み、押出し成型し、窒素雰囲気下において1000℃で一次焼成を行なって炭化させ、続いてコールタールピッチを含浸させた後、窒素雰囲気下において2800℃で二次焼成を行ない黒鉛化し、更に粉砕および分級して体積平均粒径7.1μmの黒鉛化粒子を集め、黒鉛化粒子A−7を得た。
【0273】
上記にて作製した黒鉛化粒子A−1〜A−7の物性を測定し、表4に示した。
【0274】
【表4】

【0275】
参考例8(凹凸形成粒子B−1の製造)
コールタールピッチから溶剤分別によりβ−レジンを抽出し、これを水素添加および重質化処理を行った後、次いでトルエンにより溶剤可溶分を除去することでメソフェーズピッチ粉末を得た。そのメソフェーズピッチ粉末を微粉砕し、それを空気中において約300℃で酸化処理した後、窒素雰囲気下にて3000℃で熱処理し、更に分級して体積平均粒径5.4μmの凹凸形成粒子を集め、凸凹形成粒子B−1を得た。
【0276】
参考例9(凹凸形成粒子B−2の製造)
石炭系重質油を熱処理して得たメソカーボンマイクロビーズを、洗浄・乾燥した後、アトマイザーミルで機械的に分散を行ない、窒素雰囲気下において1200℃で一次加熱処理を行い炭化させた。次いで、アトマイザーミルで二次分散を行った後、窒素雰囲気下において2400℃で熱処理し、更に分級して体積平均粒径10.5μmの凹凸形成粒子を集め、凸凹径性粒子B−2を得た。
【0277】
参考例10(凹凸形成粒子B−3の製造)
体積平均粒径5.5μmの球状フェノール樹脂粒子100部に、ライカイ機(自動乳鉢、石川工場製)を用いて体積平均粒径1μm〜2μmのバルクメソフェーズピッチ粒子15部を均一に被覆し、空気中下350℃で熱安定化処理した後に窒素雰囲気下2300℃で焼成し、更に分級して体積平均径6.0μmの球状導電性炭素粒子を集め、凹凸形成粒子B−3を得た。
【0278】
参考例11(凹凸形成粒子B−4の製造)
PMMA樹脂100部およびカーボンブラック25部を溶融混合し、混練、粉砕、および分級を行なって、体積平均粒径7.1μmのカーボンブラック分散PMMA樹脂粒子を得た後、ハイブリタイザー(商品名、奈良機械(株)製)を用いて球形化処理を行なうことによって、球状のカーボンブラック分散PMMA樹脂粒子を作製した。この球状カーボンブラック分散PMMA樹脂粒子を凹凸形成粒子B−4とした。
【0279】
参考例12(凹凸形成粒子B−5の製造)
シリコーン樹脂粒子を分級した後、ハイブリタイザーを用いて球形化処理を行なうことにより、体積平均粒径6.5μmのシリコーン樹脂粒子を作製した。このシリコーン樹脂粒子を凹凸形成粒子B−5とした。
【0280】
上記にて作製した凸凹形成粒子B−1〜B−5およびアルミナ(凸凹形成粒子B−6)の物性を測定し、表5に示した。
【0281】
【表5】

【0282】
参考例13(現像スリーブS−1の製造)
レゾール型フェノール樹脂(固形分50質量%メタノール溶液)160部、黒鉛化粒子A−1(参考例1で作製)36部、導電性カーボンブラック(商品名:Conductex975、コロンビアカーボン(株)製)4部、凹凸形成粒子B−1(参考例8で作製)10部、イミダゾール化合物(一般式(2)において、R5=R6=CH3、R7=R8=(CH210CH3であるもの)6部およびメタノール120部に直径1mmのガラスビーズを加え、サンドミルにて2時間分散し、ふるいにてビーズを分離した後、メタノールで固形分を35質量%に調整し、塗工液を得た。
【0283】
この塗工液を、垂直に立てられ、一定速度で回転している、上下端部がマスキングされた、厚み2mm、外径20mmφかつ算術平均粗さRa=0.2μmの研削加工したアルミニウム製円筒管上に、スプレーガンを一定速度で下降させながら塗布することによって、導電性樹脂被覆層を形成させた。続いて熱風乾燥炉により150℃、30分間加熱して、導電性樹脂被覆層を硬化させ、現像スリーブS−1を作成した。この現像スリーブS−1の導電性樹脂被覆層の処方と物性を表6に示す。
【0284】
参考例14〜28(現像スリーブS−2〜S−16の製造)
表6に示した材料構成および配合比にて塗工液を作製した以外は、参考例13と同様にして現像スリーブS−2〜S−16を作製した。なお、現像スリーブS−12〜S−16は、アルミ製円筒基体として、厚み2mm、外径24.5mmφおよび算術平均粗さRa=0.3μmに研削加工したものを用いた。これら現像スリーブの導電性樹脂被覆層の処方および物性を表6に示す。
【0285】
【表6】

【0286】
次に、以下の実施例、比較例で使用する磁性一成分現像剤の成分の製造例および該現像剤の製造例を示す。
【0287】
参考例29(表面処理酸化鉄粒子G−1の製造)
硫酸第一鉄水溶液中に、鉄イオンに対して1.0当量〜1.1当量の苛性ソーダ溶液を混合し、水酸化第一鉄を含む水溶液を調製した。この水溶液のpHを9前後に維持しながら、空気を吹き込み、80℃〜90℃で酸化反応を行い、種晶を生成させるスラリー液を調製した。
【0288】
次いで、このスラリー液に当初のアルカリ量(苛性ソーダのナトリウム成分)に対し0.9当量〜1.2当量となるよう硫酸第一鉄水溶液を加えた後、スラリー液をpH8前後に維持して、空気を吹き込みながら酸化反応をすすめ、酸化反応の終期にpHを約6に調製し、十分攪拌しながらn−ヘキシルトリメトキシシランカップリング剤を酸化鉄100部に対し0.6部添加し、カップリング処理を行った。生成した疎水性酸化鉄粒子を常法により洗浄、濾過、乾燥し、次いで若干凝集している粒子を解砕処理して、平均粒径0.19μm、疎水化度87である表面処理酸化鉄粒子G−1を得た。
【0289】
参考例30(表面処理酸化鉄粒子G−2の製造)
参考例29においてスラリー液に当初のアルカリ量(苛性ソーダのナトリウム成分)に対し0.9当量〜1.2当量となるよう硫酸第一鉄水溶液を加えた後、スラリー液をpH8前後に維持して、空気を吹き込みながら酸化反応をすすめ、酸化反応の終期にpHを約6に調整して、酸化反応を終了した。生成した粒子を常法により洗浄、濾過、乾燥し、次いで凝集している粒子を解砕処理し、酸化鉄粒子G−3を得た。得られた酸化鉄粒子G−3を気相中にてメタノールで10倍希釈したn−ヘキシルトリメトキシシランカップリング剤(酸化鉄100部に対し0.6部となるように調整)で疎水化処理して、表面処理酸化鉄粒子G−2を得た。この表面処理酸化鉄G−2は平均粒径0.20μm、疎水化度67であった。
【0290】
参考例31(含硫黄重合体P−1の製造)
還流管、撹拌機、温度計、窒素導入管、滴下装置および減圧装置を備えた反応容器に、溶媒としてメタノール250部、2−ブタノン150部および2−プロパノール100部、モノマーとしてスチレン92.5部、2−エチルヘキシルアクリレート5部、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)2.5部を入れ、撹拌しながら還流温度まで加熱した。その中へ、重合開始剤としてt−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート4.0部を2−ブタノン20部に溶解した溶液を30分かけて滴下し、その後4時間撹拌を継続し、更にt−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート0.40部を2−ブタノン20部に溶解した溶液を30分かけて滴下して、更に5時間撹拌して重合を終了した。溶媒を減圧留去した後に得られた重合体を100μmのスクリーンを装着したカッターミルを用いて100μm以下に粉砕し、含硫黄重合体P−1を得た。得られた含硫黄重合体P−1の物性を表7に示す。
【0291】
参考例32、33(含硫黄重合体P−2、P−3の製造)
モノマー種および使用量を表7に示すように変更する以外は参考例31と同様にして、含硫黄重合体P−2、含硫黄重合体P−3を得た。得られた含硫黄重合体P−2および含硫黄重合体P−3の物性を表7に示す。
【0292】
【表7】

【0293】
参考例34(磁性現像剤T−1の製造)
イオン交換水709部に0.1M−Na3PO4水溶液451部を投入し60℃に加温した後、1.0M−CaCl2水溶液67.7部を添加してCa3(PO42を含む水系媒体を調製した。
【0294】
スチレン78部、n−ブチルアクリレート22部、ジビニルベンゼン0.5部、飽和ポリエステル樹脂(酸価8、ピーク分子量(Mp)12000)2部、表面処理酸化鉄粒子G−1(参考例29で作製)80部および極性化合物としてスチレン−無水マレイン酸共重合体(ケン化価:15、ピーク分子量(Mp)3000)0.1部を、アトライター(商品名、三井三池化工機(株)製)を用いて均一に分散混合した。この単量体組成物を60℃に加温し、そこにエステルワックス(DSCにおける吸熱ピークの極大値72℃)10部を添加混合溶解し、これに重合開始剤t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート3部を溶解して、重合性単量体組成物を調製した。
【0295】
この重合性単量体組成物を上記水系媒体中に投入し、60℃、N2雰囲気下においてTK式ホモミキサー(商品名、特殊機化工業(株)製)にて10,000rpmで15分間撹拌し、分散させて懸濁させた。その後、パドル撹拌翼で撹拌しつつ、80℃で1.5時間反応した。
【0296】
次いで、スチレン10部、含硫黄重合体P−1(参考例31で作製)3部および2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.3部を均一に溶解した液を、上記80℃の懸濁液中に滴下し、さらに4.5時間重合を行った。
【0297】
反応終了後、80℃で更に2時間蒸留を行ない、その後、懸濁液を冷却し、塩酸を加えて分散剤Ca3(PO42を溶解し、濾過、水洗、乾燥して重量平均粒径6.5μmの黒色粒子を得た。
【0298】
一次粒径12nmのシリカをヘキサメチルジシラザンで処理した後シリコーンオイルで処理し、処理後のBET値が120m2/gである疎水性シリカ微粉体1.2部を上記で得た黒色粒子100部に加え、ヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株))を用いて十分混合し、磁性現像剤T−1を調製した。この磁性現像剤T−1の物性を表8に示す。
【0299】
参考例35(磁性現像剤T−2の製造)
イオン交換水709部に0.1M−Na3PO4水溶液451部を投入し60℃に加温した後、1.0M−CaCl2水溶液67.7部を添加してCa3(PO42を含む水系媒体を調製した。
【0300】
スチレン78部、n−ブチルアクリレート22部、ジビニルベンゼン0.5部、飽和ポリエステル樹脂(酸価8、ピーク分子量(Mp)12000)2部、負荷電性制御剤(モノアゾ系鉄錯体化合物)2部、表面処理酸化鉄粒子G−1(参考例29で作製)80部および極性化合物としてスチレン−無水マレイン酸共重合体(ケン化価:15、ピーク分子量(Mp)3000)0.05部をアトライターにて均一に分散混合した。この単量体組成物を60℃に加温し、そこにエステルワックス(DSCにおける吸熱ピークの極大値72℃)10部を添加混合溶解し、これに重合開始剤t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート3部を溶解して重合性単量体組成物を調製した。
【0301】
この重合性単量体組成物を上記水系媒体中に投入し、60℃、N2雰囲気下においてTK式ホモミキサーにて10,000rpmで15分間撹拌し、懸濁させた。その後パドル撹拌翼で撹拌しつつ、80℃で1.5時間反応させた。
【0302】
反応終了後、80℃で更に8時間攪拌を続行した。その後、懸濁液を冷却し、塩酸を加えて分散剤Ca3(PO42を溶解し、濾過、水洗、乾燥して重量平均粒径7.1μmの黒色粒子を得た。
【0303】
この黒色粒子100部と、一次粒径12nmのシリカをヘキサメチルジシラザンで処理した後シリコーンオイルで処理し、処理後のBET値が120m2/gである疎水性シリカ微粉体1.1部をヘンシェルミキサーにて混合し、磁性現像剤T−2を調製した。この磁性現像剤T−2の物性を表8に示す。
【0304】
参考例36(磁性現像剤T−3の製造)
スチレン/n−ブチルアクリレート共重合体(モノマー比:78/22、Mn=25000、Mw/Mn=2.5)100部、飽和ポリエステル樹脂(酸価8、ピーク分子量(Mp)12000)2部、含硫黄重合体P―1(参考例31で作製)5部、表面処理酸化鉄粒子G−1(参考例29で作製)20部、極性化合物としてスチレン−無水マレイン酸共重合体(ケン化価:15、ピーク分子量(Mp)3000)0.07部およびエステルワックス(DSCにおける吸熱ピークの極大値72℃)5部をヘンシェルミキサーで前混合した後、130℃に加熱された2軸エクストルーダで溶融混練し、冷却した混練物をハンマーミルで粗粉砕してトナー粗粉砕物を得た。得られた粗粉砕物を、機械式粉砕機ターボミル(商品名、ターボ工業(株)製;回転子および固定子の表面に炭化クロムを含有したクロム合金めっきでコーティング)を用いて、機械式粉砕にて微粉砕し、得られた微粉砕物をコアンダ効果を利用した多分割分級装置(日鉄鉱業(株)製、エルボジェット分級機(商品名))で微粉および粗粉を同時に分級除去し、トナー粒子を得た。その後、このトナー粒子100部に対して表面処理酸化鉄粒子G−1(参考例29で作製)60部をヘンシェルミキサーにて混合してトナー粒子表面に外添し、衝撃式表面処理装置(処理温度55℃、回転式処理ブレード周速90m/sec)を用いて酸化鉄粒子をトナー粒子表面に固着させて、酸化鉄固着トナー粒子を得た。
【0305】
この酸化鉄固着トナー粒子100部に対してスチレン−メタクリル酸共重合体からなる乳化粒子(粒径0.05μm)8部を外添した後、衝撃式表面処理装置(処理温度55℃、回転式処理ブレード周速90m/sec)を用いて固着・被膜形成化を行ない、被膜トナー粒子を得た。得られた被膜トナー粒子100部に対して、参考例34と同様にして疎水性コロイダルシリカを外添し、重量平均粒径が7.2μmである磁性現像剤T−3を調製した。この磁性現像剤T−3の物性を表8に示す。
【0306】
参考例37(磁性現像剤T−4の製造)
スチレン/n−ブチルアクリレート共重合体(モノマー比:78/22、Mn=25000、Mw/Mn=2.5)100部、飽和ポリエステル樹脂2部、含硫黄重合体P−1(参考例で作製)5部、表面処理磁性粉体G−1(参考例29で作製)80部、極性化合物としてスチレン−無水マレイン酸共重合体(ケン化価:15、ピーク分子量(Mp)3000)0.07部およびエステルワックス(DSCにおける吸熱ピークの極大値72℃)5部をヘンシェルミキサーで前混合した後、130℃に加熱された2軸エクストルーダで溶融混練し、冷却した混練物をハンマーミルで粗粉砕してトナー粗粉砕物を得た。この粗粉砕物をジェットミルで微粉砕後、得られた微粉砕物を風力分級して重量平均粒径7.0μmのトナー粒子を得た。このトナー粒子100部に対して参考例34で使用したと同じシリカ1.0部を加え、ヘンシェルミキサーで混合し、磁性現像剤T−4を調製した。この磁性現像剤T−4の物性を表8に示す。
【0307】
参考例38(磁性現像剤T−5の製造)
疎水性酸化鉄G−1を添加しない以外は参考例34と同様の方法にしてトナー粒子を得た。得られたトナー粒子100部に対して表面未処理酸化鉄(酸化鉄粒子G−3、参考例30で作製)40部を外添し、衝撃式表面処理装置(処理温度55℃、回転式処理ブレード周速90m/sec)にて酸化鉄粒子をトナー粒子表面に固着させて酸化鉄固着トナー粒子を得た。
【0308】
この酸化鉄固着トナー粒子100部に対してスチレン−メタクリル酸共重合体からなる乳化粒子(粒径0.05μm)20部および酸化鉄粒子G−3(参考例30にて作製)40部を外添した後、衝撃式表面処理装置(処理温度55℃、回転式処理ブレード周速90m/sec)にて該乳化粒子および酸化鉄粒子の固着・被膜形成化を行ない、被膜トナー粒子を得た。得られた被膜トナー粒子100部に対して、参考例34と同様にして疎水性コロイダルシリカを外添し、重量平均粒径が7.1μmである磁性現像剤T−5を調製した。この磁性現像剤T−5の物性を表8に示す。
【0309】
参考例39(磁性現像剤T−6の製造)
表面処理磁性粉体G−1に代えて表面処理磁性粉体G−2(参考例30で作製)を、また、含硫黄重合体P−1に代えて含硫黄重合体P−2を使用する以外は、参考例34と同様の方法で懸濁重合を行ない、重量平均粒径7.5μmの黒色粒子を得た。この黒色粒子100部に対し、ヘキサメチルジシラザンおよびジメチルシリコーンオイル処理を施した負帯電性疎水性シリカ微粉末(BET300m2/g)1.5部およびチタン酸ストロンチウム0.5部を加え、ヘンシェルミキサーにて混合し、磁性現像剤T−6を得た。この磁性現像剤T−6の物性を表8に示す。
【0310】
参考例40(磁性現像剤T−7の製造)
含硫黄重合体P−2に代えて含硫黄重合体P−3(参考例33で作製)を使用する以外は、参考例39にと同様の方法で懸濁重合を行ない、重量平均粒径7.1μmの黒色粒子を得た。この黒色粒子100部に対し、ヘキサメチルジシラザンおよびジメチルシリコーンオイル処理を施した負帯電性疎水性シリカ微粉末(BET300m2/g)1.8部およびチタン酸ストロンチウム0.7部を加え、ヘンシェルミキサーにて混合し、磁性現像剤T−7を得た。この磁性現像剤−7(T−7)の物性を表8に示す。
【0311】
参考例41(磁性現像剤T−8の製造)
参考例39にて得られた黒色粒子100部に対して乳化粒子(スチレン−メタクリル酸、粒径0.05μm)30部を外添した後、衝撃式表面処理装置(処理温度50℃、回転式処理ブレード周速90m/sec)を用いて繰り返し乳化粒子の固着・被膜形成化を行ない、被膜トナー粒子を得た。得られた被膜トナー粒子100部に、ヘキサメチルジシラザンおよびジメチルシリコーンオイル処理を施した負帯電性疎水性シリカ微粉末(BET300m2/g)1.5部およびチタン酸ストロンチウム0.5部を外添し、磁性現像剤T−8を得た。この磁性現像剤T−8の物性を表8に示す。
【0312】
参考例42(磁性現像剤T−9の製造)
疎水性酸化鉄G−2を添加しない以外は参考例39と同様の方法にしてトナー粒子を得た。得られたトナー粒子100部に対して表面未処理酸化鉄(酸化鉄粒子G−3、参考例30)40部を外添し、衝撃式表面処理装置(処理温度55℃、回転式処理ブレード周速90m/sec)を用いて酸化鉄粒子をトナー粒子表面に固着させて酸化鉄固着トナー粒子を得た。
【0313】
この酸化鉄固着トナー粒子100部に対してスチレンーメタクリル酸共重合体からなる乳化粒子(粒径0.05μm)20部および酸化鉄粒子G−3(参考例30で製造)40部を外添した後、衝撃式表面処理装置(処理温度55℃、回転式処理ブレード周速90m/sec)で乳化粒子および酸化鉄粒子の固着・被膜形成化を行ない、被膜トナー粒子を得た。得られた被膜トナー粒子100部に対して、参考例39と同様にして外添処理を実施し、重量平均粒径が7.1μmの磁性現像剤T−9を得た。この磁性現像剤T−9の物性を表8に示す。
【0314】
【表8】

【0315】
実施例1
参考例13で作成した現像スリーブS−1にマグネットネットローラを装着し、フランジを嵌合して現像剤担持体を得た。この現像剤担持体を、OPCドラムを使用したキヤノン製デジタル複写機IR2000(230V機仕様)の現像器に組み込み、さらに、この現像器に現像剤として参考例34で作製した磁性現像剤T−1を用供給した。このようなセットを3装置用意し、それぞれ常温常湿度環境(23℃、50%RH;N/N)、低温低湿度環境(15℃、10%RH;L/L)および高温高湿度環境(32℃、85%RH;H/H)において、1枚/10秒の間欠モードで15万枚画出し(耐久)を行った。画像評価は、初期(画出し10枚目)および耐久終了後にそれぞれの画像評価項目に応じたテストチャートの画出しを行い、下記により画像評価した。いずれの環境下においても終始良好な現像性を得ることができた。また、現像スリーブの下記性能についても評価した。ここで使用した現像装置は、概略、図5に挙げたようなもので、現像剤層厚規制部材として、ウレタンゴムからなる弾性ブレードを使用した。画像評価、性能評価の結果を表9に示す。
【0316】
評価項目、評価方法および評価基準は以下の通りである。
【0317】
(1)画像濃度
画像比率5.5%であるテストチャート上の5mmφ黒丸のコピー画像濃度を、反射濃度計RD918(マクベス社製)により反射濃度測定を行い、10点の平均値をとって画像濃度とした。
【0318】
(2)カブリ
適正画像におけるベタ白画像部の反射率を、反射率計(東京電色社製、TC−6DS)で10箇所ランダムに測定した。この測定値の最悪値から未使用の転写紙の反射率(10箇所の平均値)を差し引いたものをカブリ濃度とし、下記基準にて評価した。
A:1%未満(目視ではカブリは認められない)
B:1%〜2%(注視しなければカブリは認められない)
C:2%〜3%(カブリはあるものの実用上問題なし)
D:3%超(カブリが目立ちNGレベル)
【0319】
(3)ドット再現性
80μm×50μmのチェッカー模様を有するテストチャート(図6)用いて画出しテストを行ない、顕微鏡により画像部(黒色部)の欠損の有無を観察し、下記基準にて評価した。
A:100個中欠損が2個以下
B:100個中欠損が3〜5個
C:100個中欠損が6〜10個
D:100個中欠損が11個以上
【0320】
(4)スリーブゴースト
幅x×長さlの帯状ベタ黒部(図7(a))を画出しした後、幅y(但し、>x)×長さlのハーフトーン(図7(b))を画出しする。このハーフトーン画出し画像の画像濃度を図7(c)の領域ア(画像形成開始点から現像スリーブ1回転の長さz以降の部分)、領域イ(画像形成開始点から現像スリーブ1回転の長さzまででベタ黒画像の画出しをした部分と重なる部分)および領域ウ(画像形成開始点から現像スリーブ1回転の長さzまででハーフトーンのみを画出しした部分)でそれぞれ画像濃度を測定し、現れた濃度差(濃淡の程度)を、下記基準にてスリーブゴーストを評価した。
A:濃度差が全く見られない(濃度差が0.02未満)
B:領域イと領域ウで軽微な濃度差が見られる(濃度差が0.02以上0.04未満)
C:領域ア、領域イ、領域ウ各々で若干の濃度差が見られる(濃度差が0.04以上0.07未満)
D:顕著な濃度差が見られる(濃度差が0.07以上)
【0321】
(5)現像剤担持体の表面粗さRaの変化
耐久前と後に現像剤担持体の表面粗さRaを測定し、Raの減少量(ΔRa)から、下記基準で、現像剤担持体表面の耐摩耗性を評価した。
A:耐摩耗性が極めて良好(ΔRaが0.10μm未満)
B:耐摩耗性は比較的良好(ΔRaが0.10μm以上0.20μm未満)
C:耐摩耗性はやや弱いものの実用上問題ない(ΔRaが0.20μm以上0.35μm未満)
D:耐摩耗性は弱く、実用上でも問題になる(ΔRaが0.35μm以上)
【0322】
(6)導電性樹脂被覆層の耐摩耗性
耐久前と後に現像剤担持体表面の導電性樹脂被覆層の膜厚を測定し、その差より導電性樹脂被覆層の削れ量を測定した。
【0323】
実施例2〜10、比較例1〜5
表6に示す現像スリーブS−1〜S−10および磁性現像剤T−1〜T−5を用い、実施例1と同様の評価方法にて、画像評価、性能評価を行なった。評価結果を表9に示す。
【0324】
【表9】

【0325】
実施例11〜15、比較例6〜8
表10に示す現像スリーブS−11〜S−15、磁性現像剤T−6〜T−9を用い、複写機として、静電潜像担持体としてアモルファスシリコンドラムを使用したキヤノン製デジタル複写機IR6000を用いた。耐久は連続モードで60万枚画出しを行うことによった。なお、この現像装置は、概略、図4に挙げたようなものであり、現像剤層厚規制部材として、厚さ0.6mmの磁性ブレードを使用した。評価の結果を表10に示す。
【0326】
【表10】

【図面の簡単な説明】
【0327】
【図1】本発明の現像剤担持体(現像スリーブ)の模式断面図である。
【図2】スリーブゴーストが生じたコピー画像を説明するための模式図である。
【図3】本発明の現像剤担持体(現像スリーブ)の導電性樹脂被覆層の模式断面図である。
【図4】磁性ブレードを用いた一成分系現像装置を示した概略的説明図である。
【図5】弾性ブレードを用いた一成分系現像装置を示した概略的説明図である。
【図6】ドット再現性を試験するためのチェッカー模様の説明図である。
【図7】スリーブゴーストの評価に用いたプリント画像の模式図である。
【符号の説明】
【0328】
1 基体
2 導電性樹脂被覆層
601 静電潜像担持体(感光ドラム)
602 強磁性金属製の現像剤層厚規制部材(現像ブレード)
603 現像容器
604 仕切り部材
605 攪拌搬送部材
606 基体
607 導電性樹脂被覆層
608 現像スリーブ
609 磁石(マグネットローラー)
610 現像剤担持体
611 攪拌搬送部材
612 現像剤供給部材
613 現像バイアス電源
614 第一室
615 第二室
616 弾性体からなる現像剤層厚規制部材(現像ブレード)
a 導電性付与粒子
b 結着樹脂
c 黒鉛化粒子
d 凹凸形成粒子
l スリーブゴースト評価の黒ベタ、ハーフトーンおよび評価長さ
x スリーブゴースト評価の黒ベタ幅
y スリーブゴースト評価のハーフトーン幅
z スリーブゴースト評価の際の現像スリーブの1回転長さ
D 現像領域
(X) 薄い現像しか行なわれない部分
(Y) 濃い現像が行なわれる部分
ア スリーブゴースト評価の領域ア
イ スリーブゴースト評価の領域イ
ウ スリーブゴースト評価の領域ウ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤を収容するための現像容器、現像剤を表面に担持し回転自在に保持された現像剤担持体、該現像剤担持体上の現像剤量を規制するための現像剤層厚規制部材を少なくとも有し、静電潜像担持体に対向する現像領域へ担持された現像剤を搬送し、該現像剤により静電潜像担持体に形成された静電潜像を可視像化する現像方法において、
(ア)現像剤担持体は、基体表面に少なくとも導電性樹脂被覆層を有し、導電性樹脂被覆層の表面は、ユニバーサル硬さHUの平均値Aおよびその標準偏差σがそれぞれ300N/mm2〜800N/mm2および30N/mm2未満であり、
(イ)現像剤は、結着樹脂および酸化鉄を少なくとも含有するトナー粒子からなり、透過型電子顕微鏡を用いたトナー粒子の断面を観察した際に、トナー粒子に含有される酸化鉄の内の70個数%以上が観察しているトナー粒子の表面から投影面積相当径Cの0.2倍の深さまでに存在するトナー粒子を40個数%〜95個数%含有している
ことを特徴とする現像方法。
【請求項2】
現像剤担持体の導電性樹脂被覆層中に黒鉛化粒子が含有されている請求項1に記載の現像方法。
【請求項3】
現像剤担持体の導電性樹脂被覆層中に含有されている黒鉛化粒子の黒鉛化度p(002)が0.20〜0.95である請求項2に記載の現像方法。
【請求項4】
現像剤担持体の導電性樹脂被覆層中に含有されている黒鉛化粒子が、バルクメソフェーズピッチ粒子を黒鉛化して得られたものである請求項2または3に記載の現像方法。
【請求項5】
現像剤担持体の導電性樹脂被覆層中に含有されている黒鉛化粒子が、メソカーボンマイクロビーズ粒子を黒鉛化して得られたものである請求項2または3に記載の現像方法。
【請求項6】
現像剤担持体の樹脂被覆層中に、表面に凹凸を形成するための粒子がさらに含有されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の現像方法。
【請求項7】
トナー粒子は、X線光電子分光分析により測定されるトナー粒子表面に存在する炭素元素の含有量Qに対する鉄元素の含有量Rの比(R/Q)が0.001未満であり、トナー粒子の投影面積相当径C、酸化鉄とトナー粒子表面との距離の最小値DがD/C≦0.02の関係を満足するトナー粒子が50個数%以上含むものである請求項1〜6のいずれか1項に記載の現像方法。
【請求項8】
フロー式粒子像測定装置で計測される円相当径3μm〜400μmのトナー粒子における平均円形度が0.970以上である請求項1〜7のいずれか1項に記載の現像方法。
【請求項9】
現像剤が、結着樹脂、酸化鉄および含硫黄樹脂を少なくとも含有するトナー粒子からなり、該含硫黄樹脂は少なくともスルホン酸基含有(メタ)アクリルアミドに由来する構成単位を有している請求項1〜8のいずれか1項に記載の現像方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の現像方法に使用される現像剤担持体であって、その基体表面に少なくとも導電性樹脂被覆層を有し、導電性樹脂被覆層の表面は、ユニバーサル硬さHUの平均値Aおよびその標準偏差σがそれぞれ300N/mm2〜800N/mm2および30N/mm2未満であることを特徴とする現像剤担持体。
【請求項11】
導電性樹脂被覆層中に、少なくとも黒鉛化粒子が含有されている請求項10に記載の現像剤担持体。
【請求項12】
導電性樹脂被覆層中に含有されている黒鉛化粒子の黒鉛化度p(002)が0.20〜0.95である請求項11に記載の現像剤担持体。
【請求項13】
導電性樹脂被覆層中に含有されている黒鉛化粒子が、バルクメソフェーズピッチ粒子を黒鉛化して得られたものである請求項11または12に記載の現像剤担持体。
【請求項14】
導電性樹脂被覆層中に含有されている黒鉛化粒子が、メソカーボンマイクロビーズ粒子を黒鉛化して得られたものである請求項11または12に記載の現像剤担持体。
【請求項15】
樹脂被覆層中に、さらに表面に凹凸を形成するための粒子が含有されている請求項10〜14のいずれか1項に記載の現像剤担持体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−276714(P2006−276714A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−98750(P2005−98750)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】