説明

現像装置および画像形成装置

【課題】トナーを貯留するハウジングに回転自在に軸着されたトナー担持ローラおよびその表面に当接してトナーを規制する規制手段とを備える現像装置および画像形成装置において、トナー担持ローラの端部付近からのトナーの漏れ出しを確実に防止する。
【解決手段】バネ性を有する板状部材461の先端に取り付けられた弾性部材462は、現像ローラ44回転軸方向(X方向)における先端部462aが拡幅されている。現像ローラ44の周面端部に摺接する周面シール部材467には、弾性部材462の先端部462aの形状に対応した切り欠き部467aが設けられて、弾性部材462が嵌合されている。このため、現像ローラ44の軸方向への動きに起因する周面シール部材467のX方向への動きが規制されて弾性部材462との間に隙間ができにくく、またトナーがトラップされるので漏れ出しが防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トナーを貯留するハウジングに回転自在に軸着されたトナー担持ローラおよびその表面に当接してトナーを規制する規制手段とを備える現像装置および画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の現像装置および画像形成装置では、略円筒または略円柱形状に形成されたトナー担持ローラの周面にブレード状の規制手段を当接させることで、所定量のトナーをその周面に担持させる。そして、トナー担持ローラの回転によりハウジング内に貯留されたトナーを外部へ搬送する。こうしてトナーを担持するトナー担持ローラを静電潜像を担持する像担持体に対向配置することで、該静電潜像をトナーにより現像してトナー画像を得る。この場合、一般的にはトナー担持ローラ周面のうち端部付近にはトナーを担持させず、この部分に端部シール手段を当接させることにより、ハウジングからのトナーの漏れ出しを防止している。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の現像装置では、端部シール部材の一部を内側に向けて突出させ、この突出部とスリーブ(トナー担持ローラ)とでブレード(規制手段)の中ほどを挟み込むことにより、スリーブ端部付近からのトナーの漏れを防止するようにしている。
【0004】
【特許文献1】特許第2899065号公報(第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、実際の装置においては、ハウジングに対し回転自在にトナー担持ローラを取り付けることから、その構造上、トナー担持ローラが回転軸方向にある程度動く余地(遊び)を持っている。このようにトナー担持ローラが軸方向に動いてしまうと、これに摺接する端部シール手段も一緒に軸方向にずれ、規制手段との隙間が広がってその隙間からトナーが漏れ出すことがある。
【0006】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、トナーを貯留するハウジングに回転自在に軸着されたトナー担持ローラおよびその表面に当接してトナーを規制する規制手段とを備える現像装置および画像形成装置において、トナー担持ローラの端部付近からのトナーの漏れ出しを確実に防止することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明にかかる現像装置は、上記目的を達成するため、内部にトナーを貯留するとともに、該トナーを外部に送出するための開口部を有するハウジングと、略円筒または略円柱形状に形成され、前記ハウジングの前記開口部に所定の回転軸中心に回転自在に軸着されて、その周面のうち前記回転軸方向における両端部を除いた中央部のトナー担持領域にトナーを担持するトナー担持ローラと、前記回転軸方向に延設され、該回転軸方向に直交する方向における一方端が前記ハウジングに固定されるとともに、他方端が前記トナー担持ローラ表面に当接して前記トナー担持ローラ表面に担持されるトナー量を規制する規制手段と、柔軟性を有し、前記トナー担持ローラ周面のうち前記回転軸方向における端部のトナーを担持しない非担持領域と前記ハウジング壁面との間に挟み込まれて、回転する前記トナー担持ローラの周面に摺接しながら前記ハウジングからのトナーの漏れ出しを防止する端部シール手段とを備え、前記端部シール手段のうち前記トナー担持ローラの前記トナー担持領域に臨む側部には、前記回転軸方向における前記規制手段の端部に設けられた嵌合部の形状に対応した切り欠き部が設けられるとともに、前記規制手段の前記嵌合部が前記切り欠き部に嵌合しており、しかも、前記規制手段の前記嵌合部は、前記回転軸に沿って前記トナー担持領域から離れる方向に向かって、前記回転軸に直交する断面の面積が増大する拡大部を有することを特徴としている。
【0008】
また、この発明にかかる画像形成装置は、上記目的を達成するため、静電潜像を担持する像担持体と、内部にトナーを貯留するとともに、該トナーを外部に送出するための開口部を有するハウジングと、略円筒または略円柱形状に形成され、前記ハウジングの前記開口部に所定の回転軸中心に回転自在に軸着されて、その周面のうち前記回転軸方向における両端部を除いた中央部のトナー担持領域にトナーを担持して前記像担持体との対向位置に搬送するトナー担持ローラと、前記回転軸方向に延設され、該回転軸方向に直交する方向における一方端が前記ハウジングに固定されるとともに、他方端が前記トナー担持ローラ表面に当接して前記トナー担持ローラ表面に担持されるトナー量を規制する規制手段と、柔軟性を有し、前記トナー担持ローラ周面のうち前記回転軸方向における端部のトナーを担持しない非担持領域と前記ハウジング壁面との間に挟み込まれて、回転する前記トナー担持ローラの周面に摺接しながら前記ハウジングからのトナーの漏れ出しを防止する端部シール手段とを備え、前記端部シール手段のうち前記トナー担持ローラの前記トナー担持領域に臨む側部には、前記回転軸方向における前記規制手段の端部に設けられた嵌合部の形状に対応した切り欠き部が設けられるとともに、前記規制手段の前記嵌合部が前記切り欠き部に嵌合しており、しかも、前記規制手段の前記嵌合部は、前記回転軸に沿って前記トナー担持領域から離れる方向に向かって、前記回転軸に直交する断面の面積が増大する拡大部を有することを特徴としている。
【0009】
このように構成された発明では、トナー担持ローラの端部付近において、規制手段の端部と端部シール手段とが互いに嵌合しているため、単にこれらが当接している場合とは異なり、規制手段と端部シール手段とがトナー担持ローラ回転軸方向(以下、単に「軸方向」という)に相対的に移動したとしても両者の間に隙間ができない。さらにこの発明では、規制手段の嵌合部が、トナー担持領域から離れる方向に向かって、つまりトナー担持ローラ中央部から見て外側に向かって断面積が増大する拡大部を有している。一方、端部シール手段には、規制手段の嵌合部の形状に対応する切り欠き部が設けられている。そのため、規制手段の嵌合部が端部シール手段の軸方向への移動を規制する機能を有している。
【0010】
このような構成を採ることで、この発明では、トナー担持ローラが軸方向へ移動したとしてもこれに引きずられて端部シール手段も軸方向に動いてしまうことが防止され、トナー担持ローラの端部近傍からのトナーの漏れを確実に防止することができる。
【0011】
この発明においては、前記規制手段の前記トナー担持ローラ回転方向上流側端面が、前記嵌合部において前記トナー担持ローラ回転方向上流側に向かってせり出していることがより好ましい。端部シール手段の軸方向の動きを抑制するためには、上記したように規制手段の嵌合部が外側に向かって断面積が拡大するように形成されれば足り、拡大の方向については任意である。しかしながら、トナーの漏れ出し防止効果をより高めるためには、規制手段の端面がトナー担持ローラ回転方向上流側に向かってせり出すような形状とすることが好ましい。その理由は以下の通りである。
【0012】
軸方向へのトナー担持ローラの移動はトナーを軸方向に移動させ、結果的に本来トナーを担持させないトナー担持ローラ端部の非担持領域にまでトナーを送り込む原因となる。特にトナー担持ローラ回転方向上流側における規制手段の端面には、トナー担持ローラ表面から掻き取られたトナーが堆積し、これが規制手段の端面に沿って外側へ送られるとやがてトナー担持ローラ端部から漏れ出してしまう。ここで、規制手段の端面をトナー担持ローラ回転方向上流側に向かってせり出すようにしておけば、そのせり出した部分が外側へのトナーの流れを食い止めるように作用し、さらに外側にトナーが流れ出すのを防止することができる。
【0013】
また、前記規制手段は、前記回転軸方向に沿って延設され、該回転軸方向に直交する方向における一方端が前記ハウジングに固着されたバネ性を有する板状部材と、前記板状部材の他方端の前記トナー担持ローラ表面に向け取り付けられた前記回転軸方向に沿って延びる弾性部材とを備えるように構成されてもよい。トナー担持ローラ表面に担持されたトナーに対する適度の当接圧と耐久性とを両立させるためには、規制手段をこのようにバネ性を有する板状部材と弾性部材とを組み合わせた構成とすることが望ましい。
【0014】
この発明は、前記トナー担持ローラ周面のうち前記トナー担持領域には、転造加工により規則的な凹凸を設けている装置において顕著な効果を奏し、さらに前記トナー担持ローラ周面の前記非担持領域のうち前記端部シール手段と当接する領域には前記凹凸を設けていない装置において特に優れた効果を奏する。非担持領域のうち端部シール手段と当接する部分に関しては、トナーの漏れを防止するためにトナー担持ローラの表面はできるだけ平滑であることが望ましい。しかしながら、転造加工によってトナー担持ローラ周面に凹凸を設ける場合、その加工上の特質から、凹凸を設けた部分と設けていない部分との境界を明確に作ることが困難であり、その境界付近に不均一な凹凸が生じる。そのため、トナー担持領域の外側でトナーの漏れ出しが起こりやすい。このような構成の装置に本発明を適用すれば、トナーの漏れ出しを効果的に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1はこの発明を適用した画像形成装置の一実施形態を示す図である。また、図2は図1の画像形成装置の電気的構成を示すブロック図である。この装置は、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の4色のトナー(現像剤)を重ね合わせてフルカラー画像を形成したり、ブラック(K)のトナーのみを用いてモノクロ画像を形成する画像形成装置である。この画像形成装置では、ホストコンピュータなどの外部装置から画像信号がメインコントローラ11に与えられると、このメインコントローラ11からの指令に応じてエンジンコントローラ10に設けられたCPU101がエンジン部EG各部を制御して所定の画像形成動作を実行し、シートSに画像信号に対応する画像を形成する。
【0016】
このエンジン部EGでは、感光体22が図1の矢印方向D1に回転自在に設けられている。また、この感光体22の周りにその回転方向D1に沿って、帯電ユニット23、ロータリー現像ユニット4およびクリーニング部25がそれぞれ配置されている。帯電ユニット23は所定の帯電バイアスを印加されており、感光体22の外周面を所定の表面電位に均一に帯電させる。クリーニング部25は一次転写後に感光体22の表面に残留付着したトナーを除去し、内部に設けられた廃トナータンクに回収する。これらの感光体22、帯電ユニット23およびクリーニング部25は一体的に感光体カートリッジ2を構成しており、この感光体カートリッジ2は一体として装置本体に対し着脱自在となっている。
【0017】
そして、この帯電ユニット23によって帯電された感光体22の外周面に向けて露光ユニット6から光ビームLが照射される。この露光ユニット6は、外部装置から与えられた画像信号に応じて光ビームLを感光体22上に露光して画像信号に対応する静電潜像を形成する。
【0018】
こうして形成された静電潜像は現像ユニット4によってトナー現像される。すなわち、この実施形態では、現像ユニット4は、図1紙面に直交する回転軸中心に回転自在に設けられた支持フレーム40、支持フレーム40に対して着脱自在のカートリッジとして構成されてそれぞれの色のトナーを内蔵するイエロー用の現像器4Y、シアン用の現像器4C、マゼンタ用の現像器4M、およびブラック用の現像器4Kを備えている。この現像ユニット4は、エンジンコントローラ10により制御されている。そして、このエンジンコントローラ10からの制御指令に基づいて、現像ユニット4が回転駆動されるとともにこれらの現像器4Y、4C、4M、4Kが選択的に感光体22と所定のギャップを隔てて対向する所定の現像位置に位置決めされると、当該現像器に設けられて選択された色のトナーを担持する現像ローラ44が感光体22に対し対向配置され、その対向位置において現像ローラ44から感光体22の表面にトナーを付与する。これによって、感光体22上の静電潜像が選択トナー色で顕像化される。
【0019】
図3は現像器の外観を示す図である。また、図4は現像器の構造および現像バイアス波形を示す図である。より詳しくは、図4(a)は現像器の構造を示す断面図である。また、図4(b)は現像バイアス波形と感光体表面電位との関係を示す図である。各現像器4Y、4C、4M、4Kはいずれも同一構造を有している。したがって、ここでは、現像器4Kの構成について図3および図4(a)を参照しながらさらに詳しく説明するが、その他の現像器4Y、4C、4Mについてもその構造および機能は同じである。
【0020】
この現像器4Kでは、その内部に非磁性一成分トナーTを収容するハウジング41に供給ローラ43および現像ローラ44が回転自在に軸着されており、当該現像器4Kが上記現像位置に位置決めされると、現像ローラ44が感光体2と現像ギャップDGを隔てて対向位置決めされるとともに、これらのローラ43、44が本体側に設けられた回転駆動部(図示省略)と係合されて所定の方向に回転する。供給ローラ43は例えば発泡ウレタンゴム、シリコンゴムなどの弾性材料により円筒状に形成されている。また、現像ローラ44は、銅、アルミニウム、ステンレス等の金属または合金により円筒状に形成されている。そして、2つのローラ43、44が接触しながら回転することでトナーが現像ローラ44の表面に擦り付けられて所定厚みのトナー層が現像ローラ44表面に形成される。この実施形態では負帯電トナーを用いるが、正帯電トナーであってもよい。
【0021】
ハウジング41の内部空間は隔壁41aによって第1室411および第2室412に仕切られている。供給ローラ43および現像ローラ44はともに第2室412に設けられており、これらのローラの回転に伴って第2室412内のトナーが流動し攪拌されながら現像ローラ44の表面に供給される。一方、第1室411に貯留されているトナーは、供給ローラ43および現像ローラ44とは隔離されているので、これらの回転によっては流動しない。このトナーは、現像ユニット4が現像器を保持したまま回転することによって、第2室412に貯留されたトナーと混合され攪拌される。
【0022】
このように、この現像器では、ハウジング内部を2室に仕切り、供給ローラ43および現像ローラ44の周囲をハウジング41の側壁および隔壁41aで囲み比較的容積の小さい第2室412を設けることにより、トナー残量が少なくなった場合でも、トナーが効率よく現像ローラ44の近傍に供給されるようにしている。また、第1室411から第2室412へのトナー供給およびトナー全体の攪拌を現像ユニット4の回転によって行うようにすることで、現像器内部にトナー攪拌のための攪拌部材(オーガ)を省いたオーガレス構造を実現している。
【0023】
第2室412の壁面の一部には外部に向かって開口する開口部413が設けられている。開口部413は図4(a)紙面に垂直な方向に細長く延びており、この開口部を塞ぐように現像ローラ44が取り付けられている。
【0024】
また、この現像器4Kでは、現像ローラ44の表面に形成されるトナー層の厚みを所定厚みに規制するための規制ブレード46が配置されている。この規制ブレード46は、ステンレスやリン青銅などのバネ弾性を有する板状部材461と、板状部材461の先端部に取り付けられたシリコンゴムやウレタンゴムなどの樹脂部材からなる弾性部材462とで構成されている。この板状部材461の後端部はハウジング41に取り付けられた支持ブロック48に固着されており、図4の矢印に示す現像ローラ44の回転方向D4において、板状部材461の先端部に取り付けられた弾性部材462が板状部材461の後端部よりも上流側に位置するように配設されている。そして、その弾性部材462が現像ローラ44表面に弾性的に当接することで規制ニップを形成し、現像ローラ44の表面に形成されるトナー層を最終的に所定の厚みに規制する。なお、規制ブレード46を支持する支持ブロック48の詳細な構造については後に説明する。
【0025】
このようにして現像ローラ44の表面に形成されたトナー層は、現像ローラ44の回転によって順次、その表面に静電潜像が形成されている感光体2との対向位置に搬送される。そして、エンジンコントローラ10に制御されるバイアス用電源140からの現像バイアスが現像ローラ44に印加される。図4(b)に示すように、感光体22の表面電位Vsは、帯電ユニット23により均一に帯電された後露光ユニット6からの光ビームLの照射を受けた露光部では残留電位Vr程度にまで低下し、光ビームLが照射されなかった非露光部ではほぼ均一の電位Voとなっている。一方、現像ローラ44に与えられる現像バイアスVbは直流電位Vaveを重畳した矩形波交流電圧であり、そのピーク間電圧を符号Vppにより表す。このような現像バイアスVbが印加されることにより、現像ローラ44上に担持されたトナーは現像ギャップDGにおいて飛翔して感光体22の表面各部にその表面電位Vsに応じて部分的に付着し、こうして感光体22上の静電潜像が当該トナー色のトナー像として顕像化される。
【0026】
現像バイアス電圧Vbとしては、例えば、ピーク間電圧Vppが1500V、周波数が3kHz程度の矩形波電圧を用いることができる。また、その直流成分Vaveは、感光体22の残留電位Vrとの電位差がいわゆる現像コントラストとなり画像濃度に影響を与えるので、所定の画像濃度を得るために必要な値とすることができる。
【0027】
さらに、ハウジング41には、現像ローラ44の回転方向において感光体22との対向位置よりも下流側で現像ローラ44表面に圧接されたシール部材47が設けられている。シール部材47は、ポリエチレン、ナイロンまたはフッ素樹脂などの柔軟性を有する樹脂材料により形成され、現像ローラ44の回転軸に平行な方向Xに沿って延びる帯状のフィルムであり、長手方向Xに直交する短手方向(現像ローラ44の回転方向に沿った方向)における一方端部がハウジング41に固着されるとともに、他方端部が現像ローラ44表面に当接されている。他方端部は現像ローラ44の回転方向D4における下流側に向かうように、いわゆるトレイル方向に現像ローラ44に当接されており、感光体22との対向位置を通過した現像ローラ44表面に残留しているトナーをハウジング41内に案内するともに、ハウジング内のトナーが外部へ漏れ出すのを防止している。
【0028】
図5は現像ローラおよびその表面の部分拡大図を示す図である。現像ローラ44は略円筒形のローラ状に形成されており、その長手方向の両端にはローラと同軸にシャフト440が設けられており、該シャフト440が現像器本体により軸支されて現像ローラ44全体が回転自在となっている。現像ローラ44表面のうちその中央部44aには、図5の部分拡大図(点線円内)に示すように、規則的に配置された複数の凸部441と、それらの凸部441を取り囲む凹部442とが設けられている。
【0029】
複数の凸部441のそれぞれは、図5紙面の手前側に向けて突出しており、各凸部441の頂面は、現像ローラ44の回転軸と同軸である単一の円筒面の一部をそれぞれ成している。また、凹部442は凸部441の周りを網目状に取り囲む連続した溝となっており、凹部442全体も現像ローラ44の回転軸と同軸かつ凸部のなす円筒面とは異なる1つの円筒面をなす。そして、凸部441とそれを取り囲む凹部442との間は緩やかな側面443によって繋がれている。すなわち、該側面443の法線は現像ローラ44の半径方向外向き(図において上方)、つまり現像ローラ44の回転軸から遠ざかる方向の成分を有する。
【0030】
図1に戻って画像形成装置の説明を続ける。上記のようにして現像ユニット4で現像されたトナー像は、一次転写領域TR1で転写ユニット7の中間転写ベルト71上に一次転写される。転写ユニット7は、複数のローラ72〜75に掛け渡された中間転写ベルト71と、ローラ73を回転駆動することで中間転写ベルト71を所定の回転方向D2に回転させる駆動部(図示省略)とを備えている。そして、カラー画像をシートSに転写する場合には、感光体22上に形成される各色のトナー像を中間転写ベルト71上に重ね合わせてカラー画像を形成するとともに、カセット8から1枚ずつ取り出され搬送経路Fに沿って二次転写領域TR2まで搬送されてくるシートS上にカラー画像を二次転写する。
【0031】
このとき、中間転写ベルト71上の画像をシートS上の所定位置に正しく転写するため、二次転写領域TR2にシートSを送り込むタイミングが管理されている。具体的には、搬送経路F上において二次転写領域TR2の手前側にゲートローラ81が設けられており、中間転写ベルト71の周回移動のタイミングに合わせてゲートローラ81が回転することにより、シートSが所定のタイミングで二次転写領域TR2に送り込まれる。
【0032】
また、こうしてカラー画像が形成されたシートSは定着ユニット9によりトナー像を定着され、排出前ローラ82および排出ローラ83を経由して装置本体の上面部に設けられた排出トレイ部89に搬送される。また、シートSの両面に画像を形成する場合には、上記のようにして片面に画像を形成されたシートSの後端部が排出前ローラ82後方の反転位置PRまで搬送されてきた時点で排出ローラ83の回転方向を反転し、これによりシートSは反転搬送経路FRに沿って矢印D3方向に搬送される。そして、ゲートローラ81の手前で再び搬送経路Fに乗せられるが、このとき、二次転写領域TR2において中間転写ベルト71と当接し画像を転写されるシートSの面は、先に画像が転写された面とは反対の面である。このようにして、シートSの両面に画像を形成することができる。
【0033】
また、図2に示すように、各現像器4Y,4C,4Mおよび4Kには該現像器の製造ロットや使用履歴、内蔵トナーの残量などに関するデータを記憶するメモリ91〜94がそれぞれ設けられている。さらに、各現像器4Y,4C,4M、4Kには無線通信器49Y、49C、49M、49Kがそれぞれ設けられている。そして、必要に応じて、これらが選択的に本体側に設けられた無線通信器109と非接触にてデータ通信を行い、インターフェース105を介してCPU101と各メモリ91〜94との間でデータの送受を行って該現像器に関する消耗品管理等の各種情報の管理を行っている。なお、この実施形態では、無線通信等の電磁的手段を用いて非接触にてデータ送受を行っているが、本体側および各現像器側にコネクタ等を設け、コネクタ等を機械的に嵌合させることで相互にデータ送受を行うようにしてもよい。
【0034】
また、この装置では、図2に示すように、メインコントローラ11のCPU111により制御される表示部12を備えている。この表示部12は、例えば液晶ディスプレイにより構成され、CPU111からの制御指令に応じて、ユーザへの操作案内や画像形成動作の進行状況、さらに装置の異常発生やいずれかのユニットの交換時期などを知らせるための所定のメッセージを表示する。
【0035】
なお、図2において、符号113はホストコンピュータなどの外部装置よりインターフェース112を介して与えられた画像を記憶するためにメインコントローラ11に設けられた画像メモリである。また、符号106はCPU101が実行する演算プログラムやエンジン部EGを制御するための制御データなどを記憶するためのROM、また符号107はCPU101における演算結果やその他のデータを一時的に記憶するRAMである。
【0036】
また、ローラ75の近傍には、クリーナ76が配置されている。このクリーナ76は図示を省略する電磁クラッチによってローラ75に対して近接・離間移動可能となっている。そして、ローラ75側に移動した状態でクリーナ76のブレードがローラ75に掛け渡された中間転写ベルト71の表面に当接し、二次転写後に中間転写ベルト71の外周面に残留付着しているトナーを除去する。
【0037】
さらに、ローラ75の近傍には、濃度センサ60が配置されている。この濃度センサ60は、中間転写ベルト71の表面に対向して設けられており、必要に応じ、中間転写ベルト71の外周面に形成されるトナー像の画像濃度を測定する。そして、その測定結果に基づき、この装置では、画像品質に影響を与える装置各部の動作条件、例えば各現像器に与える現像バイアスや、露光ビームLの強度、さらには装置の階調補正特性などの調整を行っている。
【0038】
この濃度センサ60は、例えば反射型フォトセンサを用いて、中間転写ベルト71上の所定面積の領域の濃淡に対応した信号を出力するように構成されている。そして、CPU101は、中間転写ベルト71を周回移動させながらこの濃度センサ60からの出力信号を定期的にサンプリングすることで、中間転写ベルト71上のトナー像各部の画像濃度を検出することができる。
【0039】
次に、上記のように構成された画像形成装置の現像器4K等における、現像ローラ44上のトナー層規制の詳細について説明する。上記のようにトナーを担持する現像ローラ44表面に凹凸を設けた構成においては、その凸部441および凹部442の双方にトナーを担持させることが可能であるが、この実施形態では、規制ブレード46を直接現像ローラ44表面の凸部441に当接することにより凸部441のトナーを除去するようにしている。このようにする理由は以下の通りである。
【0040】
まず、凸部441に均一なトナー層を形成するためには規制ブレード46と凸部441とのギャップの精密な管理が必要となるが、凹部442のみにトナーを担持させるためには規制ブレード46と凸部442とを当接させて凸部441のトナーを全て除去すればよいので実現が比較的容易である。また、搬送されるトナーの量は規制ブレード46と凹部442との隙間に生じる空間の容積によって決まるので、トナー搬送量を安定させることができる。
【0041】
また、搬送されるトナー層の良好さという点においても利点がある。すなわち、凸部441にトナーを担持させると規制ブレード46との摺擦に起因するトナーの劣化が起こりやすい。具体的には、トナーの流動性や帯電性が低下したり、トナーが圧粉状態となり凝集したり現像ローラ44に固着してフィルミングを生じさせるなどの問題がある。これに対し、規制ブレード46からの押圧をあまり受けない凹部442にトナーを担持させるとこのような問題が起こりにくい。また、凸部441に担持されるトナーと凹部442に担持されるトナーとでは規制ブレード46との摺接のされ方が大きく異なるため、トナーの帯電量のばらつきが大きくなることが予想されるが、凹部442のみにトナーを担持させることでこのようなばらつきも抑えられる。
【0042】
特に近年では、画像の高精細化やトナー消費量および消費電力の削減を実現するためにトナーの小粒径化や定着温度の低温化が求められているが、本実施形態の構成はこのような要求にも対応することが可能なものである。小粒径トナーにおいては帯電の立ち上がりが鈍いにもかかわらず飽和帯電量が高いため、凸部441に担持されたトナーは凹部442に担持されたトナーよりも帯電量が著しく高く(過帯電)なる傾向にある。このような帯電量の差はいわゆる現像履歴として画像に現れる。また、低融点トナーでは摺擦によるトナー同士または現像ローラ44等への固着が起きやすい。しかしながら、凹部442のみにトナーを担持する本実施形態の構成ではこのような問題は生じにくい。
【0043】
図6はこの実施形態の現像ローラの製造方法の概要を示す図である。本実施形態の現像ローラ44は、銅、アルミニウム、ステンレス等の金属または合金製の円筒または円柱形状を有するローラ素材400に、互いに交わる二種類の溝を形成することによって製造することができる。より具体的には、図6(a)に示すように、互いに同一方向に回転する1対のダイス901,902をローラ素材400の表面に押し当てながら所定方向に送る転造加工によって、ローラ素材400の表面につるまき線状の溝を形成する。
【0044】
ダイス901の回転軸A1とローラ素材400の中心軸A4とは平行ではなくわずかに(例えば1度)傾けられる。また、ダイス902の回転軸A2とローラ素材400の中心軸A4との間も、上記とは反対方向かつ同じ大きさ(例えば−1度)に傾けられる。こうすることにより、ローラ素材400にはダイス901および902の回転に起因するスラスト力が作用することとなり、ダイス901および902を回転させるとローラ素材400が軸方向に沿って送られることになる。図6(a)に示す例では、ダイス901および902の回転によってローラ素材400は矢印方向D8に回転しながら図の矢印方向D9に沿って送られる。
【0045】
詳細な図示を省略しているが、ダイス901,902それぞれの外周面には、螺旋状の突起が形成されている。これらの突起をローラ素材400に押し当てることにより、ローラ素材400の外周面には格子状に交わる2種類の溝が刻まれて、この溝が現像ローラ表面の凹部442として機能する。また、溝に囲まれた多数の突起部が現像ローラ表面の凸部441として機能することとなる。
【0046】
また、ローラ素材400の送り方向D9に沿って、ガイド903が延設されている。ガイド903は、ダイス901,902がそれぞれローラ素材400と当接する当接位置とはローラ素材400の中心軸A4を挟んで反対側の第3の位置でローラ素材400の表面に当接して、ダイス901,902の押圧に起因するローラ素材400の位置ずれや撓みを防止するバックアップ手段として機能している。
【0047】
ダイス901,902がローラ素材400の表面に対し転がるように当接されているのに対して、ガイド903は固定されている。このため、ローラ素材400はその表面をガイド903に摺擦されながら、矢印方向D8に回転するとともに矢印方向D9に送られることとなる。こうしてローラ素材400の一方端から他方端に向けて溝が刻まれてゆく。
【0048】
このように表面加工されてなる現像ローラ44では、図6(b)に示すように、その周面のうち回転軸方向Xにおける両端部近傍はダイス901,902による溝を形成されていない非加工領域URとなっている。この領域にはトナーを担持させないため凹凸を設ける必要がなく、むしろ後述する周面シール部材との摺接をスムーズにしトナー漏れを防ぐことができるという点において、この部分の表面を平滑に保つことが望ましい。そのため、ローラ素材400の一方端から他方端まで全体にダイスを当てて加工するのではなく、端部から少し内側に入った位置から加工を始め、反対側端部の手前で加工を終了することが望ましい。
【0049】
このようにすると、現像ローラ44周面のうち中央部ではダイス901,902により等ピッチで溝が彫り込まれて規則的な凹凸が形成されるが、加工の始めと終わり、つまり端部付近では、溝の幅や深さ、ピッチなどが乱れて不完全な溝となってしまうことが避けられない。以下では、現像ローラ44周面のうち中央部の規則的な凹凸が形成された領域を規則的表面領域RR、その端部の不規則な領域を不規則領域IRと称する。
【0050】
図7は支持フレームの要部の構造を示す図である。より詳しくは、図3に符号Aで示す部分を、現像ローラ44(外形を破線で示す)を取り除いて拡大した図である。なお、ここでは現像ローラ44の一方端部近傍における支持フレーム48の構造について説明するが、もう一方の端部側も同様の構造である。支持フレーム48の主要部は、それぞれプレス加工された鉄板からなるフレーム本体480とブレード支持板金482とがネジ等により結合されたものである。フレーム本体480には、図示しない軸受けを介して現像ローラ44のシャフト440を挿通するための孔481が設けられている。
【0051】
また、現像ローラ44の周面端部に相当する位置に、開口部413からのトナーの漏れ出し、特に現像ローラ44の端部近傍からのトナーの漏れ出しを防止するための周面シール部材467が設けられている。周面シール部材467は、不織布、モケット、フェルトなどの繊維製品またはポリウレタンフォーム、スポンジなどの樹脂製品からなる柔軟性および弾力性に富んだ帯状の部材である。支持フレーム48に現像ローラ44が装着された状態では、周面シール部材467の表面が現像ローラ44の周面端部に巻き付くように摺接することにより、現像ローラ回転軸方向外側へのトナーの漏れ出しを防止している。
【0052】
現像ローラ回転軸方向Xにおける規制ブレード46の弾性部材462の先端部462aは、現像ローラ44の回転方向上流側および下流側のそれぞれに向けて突出した略T字形状となっており、弾性部材462の幅が端部側に向けて増大している。一方、周面シール部材467には、弾性部材462の先端形状に対応した切り欠き部467aが設けられている。そして、略T字形状に拡幅する弾性部材462の先端部462aが、周面シール部材467の切り欠き部467aにすっぽりと嵌合されている。この構造について図8を参照してさらに説明する。
【0053】
図8は規制ブレードおよび周面シール部材の分解斜視図である。規制ブレード46の弾性部材462の両端部は上記したように略T字形状をしており、現像ローラ回転軸方向Xに沿って中央部462cから外側に向かって見たとき、その幅が先端部462a,462bで中央部462cよりも増大した形状となっている。このような形状とするために、例えば射出成型によって弾性部材462を形成することができる。弾性部材462は、バネ弾性を有し基材として機能する板状部材461の片面の一方端部461aに接着されている。板状部材461の他方端部461bはブレード支持板金482に固定される。
【0054】
一方、現像ローラ44の両端部近傍に設けられる一対の周面シール部材467,468は、略T字形状の弾性部材先端部462a,462bがちょうど嵌まり込む形状に打ち抜かれた切り欠き部467a,468bを有しており、この切り欠き部467a,468bと弾性部材462の先端部462a,462bとがそれぞれ嵌合する。つまり、弾性部材462の先端部462a,462bの側面部が周面シール部材467,468の切り欠き部467a,468bの端面によって取り囲まれた状態となる。
【0055】
なお、弾性部材462の厚みt1は周面シール部材467,468の厚みt2よりも小さい。その一方、周面シール部材467,468は弾性部材462よりも柔らかい。このため、現像ローラ44が取り外された状態では、図7に示すように弾性部材462の表面が周面シール部材467の表面よりも後退した状態となっているが、現像ローラ44が取り付けられた状態では、周面シール部材467,468が現像ローラ44表面に押圧されて撓み込むため、周面シール部材467,468の表面と弾性部材462の表面とはほぼ同一となる。この状態で、弾性部材462のエッジ部Eが現像ローラ44表面に当接してトナー層の厚みを規制する。
【0056】
図9および図10は周面シール部材および規制ブレードと現像ローラとの当接状態を示す図である。より詳しくは、図9(a)は現像ローラ44と規制ブレード46との当接部位を横から見た図であり、図9(b)はそれを現像ローラ44の上方側から俯瞰した図である。また、図10は現像ローラ44の回転軸方向から見た図である。
【0057】
図9(a)に示すように、現像ローラ44周面のうちトナーを担持させるトナー担持領域TRについては、トナー搬送量や帯電量を安定させるために規則的な凹凸が形成された規則的表面領域RR内に設けることが好ましい。つまり、トナー担持領域TRは現像ローラ44周面のうち軸方向における中央部に設けられ、その幅は規則的表面領域RRの幅以下である。そして、トナー担持領域TRよりも外側の現像ローラ44周面は、トナーを担持させない非担持領域NRである。
【0058】
トナー担持領域TRにおいては、規制ブレード46に取り付けられた弾性部材462のエッジ部Eを当接させることにより、安定したトナー搬送量および帯電量を得ることができる。したがって、少なくともトナー担持領域TRに対しては、弾性部材462を当接させる。これに対して、周面シール部材467,468については、現像ローラ44表面との摺接によってトナーの漏れ出しを防止するものであることから、現像ローラ44表面のうち平滑な非加工領域URと当接させることが望ましい。不規則領域IRは、不完全ながら溝が形成されているので、周面シール部材467,468とは当接させないのが好ましい。
【0059】
トナー担持領域TRよりも外側、かつ非加工領域URのうち周面シール部材467,468と摺接される領域よりも内側についても、規制ブレード46の弾性部材462を当接させる。こうすることにより、この部分に余分なトナーが担持されるのを防止するとともに、この部分で現像ローラ44表面と弾性部材462等との間に隙間ができてトナーが現像器外へ飛散するのを防止することができる。
【0060】
弾性部材462の拡幅された先端部462a,462bについては、図9(b)に示すように周面シール部材467,468の内部に入り込んでいるため、当然に現像ローラ44表面の非加工領域URと当接することになる。
【0061】
また、図9(a)および図10に示すように、周面シール部材467,468は現像ローラ44の周面、より具体的にはそのうち非加工領域URに押し付けられて弾性的に変形しており、弾性部材462のエッジ部Eが現像ローラ44表面を受け止める形となるため、エッジ部Eの近傍では弾性部材462の高さとほぼ同じとなっている。つまり、この実施形態では、より柔らかい周面シール部材467,468を弾性部材462よりも厚くして高低差(図7)を設けておくことにより、現像ローラ44が実装された状態でのトナー漏れを防止している。
【0062】
次に、弾性部材462の両端部462a,462bの形状を上記のようにしている理由について、図11を参照しながら説明する。このような形状とする主たる理由は、現像ローラ44の軸方向への移動に起因してその端部付近で生じるトナー漏れを防止するためである。現像ローラ44は現像器4K等に回転自在に取り付けられているが、構成部品の加工上の寸法公差および熱による収縮に対応するために、その取り付けには多少の遊びが許容される。したがって、現像ローラ44は基準となる位置から周方向および軸方向に幾らか移動する余地がある。しかしながら、特に軸方向への移動は、現像ローラ44の周面に摺接する周面シール部材467,468を軸方向に動かしてしまい、これが規制ブレード46との間に隙間をもたらしてトナー漏れを引き起こすことがある。
【0063】
図11は弾性部材の端部形状の例を示す図である。例えば図11(a)に示す比較例では、規制ブレードA46の端面を周面シール部材A467,A468の内側端面に密着されている。このとき、現像ローラA44が破線矢印で示すように軸方向(X方向)に揺れ動くと、周面シール部材A467,A468は柔らかく厚みがあるため現像ローラA44に引っ張られて図において左右方向に揺れ動くことになる(点線)。これにより規制ブレードA46の端面と周面シール部材A467,A468の内側端面との間に隙間ができてトナーが漏れ出してしまう。
【0064】
規制ブレードA46と周面シール部材A467,A468とが当接する位置は本来トナーがない領域である。しかしながら、現像ローラ44の軸方向への移動は、その回転によって上流側から下流側へ向けて送られてくるトナーTに対し規制ブレードA46のエッジ部AEに沿った軸方向への流れ(実線矢印)を誘起するため、この領域にもトナーが回り込んでしまう。
【0065】
また、図11(b)に示す比較例では、規制ブレードB46の先端部B46a,B46bが周面シール部材B467,B468にそれぞれ設けられた切り欠き部B467a,B468bに入り込んでいるが、規制ブレードB46の先端部B46a,B46bは拡幅していない。この状態では、現像ローラB44の軸方向の動きに起因する周面シール部材B467,B468の動きを規制する作用はなく、この動きは規制ブレードB46の先端部B46a,B46bと切り欠き部B467a,B468bとの間に隙間Wをもたらす。このため、規制ブレードB46のエッジ部BEに沿ってトナー担持領域TRから回り込んできたトナーTがこの隙間Wに入り込み、やがて漏れ出してしまう。また隙間に入り込んだトナーが継続的に現像ローラ44表面に摺擦されることにより、現像ローラ44表面に融着する場合もある。
【0066】
これらの比較例に対して、図11(c)に示す本実施形態では、弾性部材462の先端部462a,462bが外側に向けて拡幅しており、しかも、こうして拡幅した形状に合わせて周面シール部材467,468に設けられた切り欠き部467a,468bに嵌合しているため、特にその嵌合している部分の近傍で、周面シール部材467,468の軸方向(X方向)への動きが規制されている。そのため、この実施形態では、現像ローラ44が軸方向へ動いたとしても周面シール部材467,468の動きは小さく抑えられており、弾性部材462との間に隙間ができることがない。その結果、この実施形態では、現像ローラ44端部近傍からのトナーの漏れ出しを効果的に防止することができる。
【0067】
特に、弾性部材462の端部を現像ローラ44の回転方向上流側に向かってせり出す形状としているため、図11(c)に示すように、弾性部材462のエッジ部Eに沿って中央部から外側に流れてきたトナーTは弾性部材462の先端部462a,462bにおいて幅の変化した部分でせき止められる。これによって、トナーの漏れ出し防止効果をさらに高めることができる。
【0068】
なお、この発明では、弾性部材の両端部を、現像ローラ44の回転軸方向(X方向)に直交する幅が増大するような形状とすることで、現像ローラ44の軸方向の移動に起因する周面シール部材467,468の動きを規制しトナーの漏れ出しを防止する。この観点からは、上記したT字形状に限定されず、例えば以下のような端部形状としてもよい。
【0069】
図12は弾性部材の端部形状の他の例を示す図である。図12(a)の例では、弾性部材4621の両端部を現像ローラ回転方向上流側に向けて突出させた略L字形状としている。このような形状によっても、周面シール部材のX方向への移動を規制する作用があるので、トナーの漏れ出しを防止する効果が得られる。周面シール部材の移動を規制するという点からは下流側に向けて突出させるようにしても差異はないが、外側へのトナーの移動を抑える効果の点では図12(a)のように上流側に突出させる方が好ましい。そして、周面シール部材の移動をより効果的に抑えるためには、上記実施形態のように現像ローラ回転方向の上流側、下流側の双方へ突出させた形状とするのが最も好ましい。
【0070】
また、図12(b)に示すように、現像ローラ44の回転軸方向(X方向)に直交する幅が端部に向けて漸増するような形状の弾性部材4622であってもよい。また、図12(c)に示すように、いったん幅が減少し、その外側で再び幅が増加するような形状の弾性部材4623であってもよい。いずれの形状であっても、周面シール部材のX方向への移動を規制する作用があり、またエッジ部に沿って流れてくるトナーが弾性部材の端部にまで到達するのを食い止める作用もある。
【0071】
さらには次のような構造であってもよい。これまで述べてきた規制ブレード46の弾性部材462(4621,4622,4623)の端部形状はいずれも、弾性部材の中央部から端部に向かう間で、現像ローラ44の回転軸方向(X方向)に直交する幅が増大するように構成される一方、その厚みは一定であった。このような形状の部材は射出成型によって製造することが可能であるほか、板状の素材を打ち抜くことによっても製造可能である。一方、射出成型であればより任意の形状に形成することができるので、以下のように弾性部材の厚みが変化するようにしてもよい。
【0072】
図13は弾性部材の端部形状のさらに別の例を示す図である。この弾性部材4624は、X方向に直交する幅Wbは全体において一定である。そして、その両端部近傍の一部に、厚みを周囲より小さくした肉薄部4624a,4624bが設けられている。したがって、この肉薄部4624a,4624bからさらに外側の先端部4624c、4624dに向かって弾性部材4624の厚みが増大している。
【0073】
一方、一対の周面シール部材4674,4684には、それぞれ弾性部材4624の先端部4624c、4624dに対応する位置に、これらに形状に対応する形状の孔4674c,4684dが穿設されている。そして、板状部材4614、弾性部材4624および周面シール部材4674,4684が支持フレームに取り付けられた状態では、弾性部材4624の先端部4624c、4624dがそれぞれ周面シール部材4674に設けられた孔4674c、周面シール部材4674に設けられた孔4674dと嵌合する。
【0074】
このような構造では、孔4674c,4674dに相通された弾性部材4624の先端部4674c,4674dが、現像ローラ44の移動に起因する周面シール部材4674,4684のX方向への動きを規制するため、弾性部材4624と周面シール4674との間に隙間ができにくい。また、トナーが弾性部材4624のエッジ部4624Eに沿ってX方向に移動したとしても、肉薄部4624a,4624bから先端部4624c,4624dに向かって厚みが増大しているためトナーは肉薄部4624a,4624bにトラップされ、端部まで回り込んでくることが防止される。そのため、上記実施形態と同様に、現像ローラ44端部トナーが漏れ出すのを効果的に防止することができる。
【0075】
すなわち、周面シール部材の切り欠き部に嵌合された弾性部材の先端部の少なくとも一部に、その断面積が外側(端面方向)に向かって拡大する部分があれば、それより外側へのトナーの回り込みを防止して外部へのトナーの漏れ出しを防止するという本発明の効果を得ることができる。この意味において、弾性部材の幅および厚みの一方のみが変化してもよく、両方が変化するようにしてもよい。
【0076】
以上説明したように、この実施形態では、感光体22、現像ローラ44および規制ブレード46がそれぞれ本発明の「像担持体」、「トナー担持ローラ」および「規制手段」として機能している。また、周面シール部材467,468が本発明の「端部シール手段」として機能している。また、上記実施形態においては、当該先端部の内側に隣接する領域と比べて拡幅されたあるいは厚みの増大された先端部462a,462b、4624cおよび4624dが本発明の「嵌合部」に相当し、これらの先端部とその内側隣接領域との境界部が、外側に向けて断面積が拡大する本発明の「拡大部」に相当している。
【0077】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、弾性部材の端部形状に関しては、上記したもののほか、外側に向かって断面積の増大する拡大部を有する任意の形状とすることができる。
【0078】
また、上記実施形態の現像ローラ44は、転造加工によって表面に規則的な凹凸が設けられたものであるが、本発明の適用対象はこのような構造のトナー担持ローラを持つ装置に限定されるものではなく、例えばブラスト加工によって表面を荒らしたトナー担持ローラを使用する装置に対しても、本発明を適用することが可能である。このような構造のトナー担持ローラにおいても、その端部近傍は表面を平滑に保つとともに、上記した構成の規制ブレードおよび周面シール部材を組み合わせることで、トナー担持ローラ端部近傍からのトナーの漏れ出しを防止することが可能である。
【0079】
また、上記実施形態の画像形成装置は、ロータリー現像ユニット4に現像器4K等を装着したカラー画像形成装置であるが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではない。例えば、中間転写ベルトに沿って複数の現像器を並べたいわゆるタンデム方式のカラー画像形成装置や、現像器を1個だけ備えてモノクロ画像を形成するモノクロ画像形成装置に対しても本発明を適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】この発明を適用した画像形成装置の一実施形態を示す図。
【図2】図1の画像形成装置の電気的構成を示すブロック図。
【図3】現像器の外観を示す図。
【図4】現像器の構造および現像バイアス波形を示す図。
【図5】現像ローラおよびその表面の部分拡大図を示す図。
【図6】この実施形態の現像ローラの製造方法の概要を示す図。
【図7】支持フレームの要部の構造を示す図。
【図8】規制ブレードおよび周面シール部材の分解斜視図。
【図9】周面シール部材および規制ブレードと現像ローラとの当接状態を示す図。
【図10】周面シール部材および規制ブレードと現像ローラとの当接状態を示す図。
【図11】弾性部材の端部形状の例を示す図。
【図12】弾性部材の端部形状の他の例を示す図。
【図13】弾性部材の端部形状のさらに別の例を示す図。
【符号の説明】
【0081】
22…感光体(像担持体)、 41…ハウジング、 44…現像ローラ(トナー担持ローラ)、 46…規制ブレード(規制手段)、 47…シール部材、 441…凸部、 442…凹部、 461…板状部材、 462…弾性部材、462a,462b…先端部(嵌合部)、 467a,468b…切り欠き部、 467,468…周面シール部材(端部シール手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にトナーを貯留するとともに、該トナーを外部に送出するための開口部を有するハウジングと、
略円筒または略円柱形状に形成され、前記ハウジングの前記開口部に所定の回転軸中心に回転自在に軸着されて、その周面のうち前記回転軸方向における両端部を除いた中央部のトナー担持領域にトナーを担持するトナー担持ローラと、
前記回転軸方向に延設され、該回転軸方向に直交する方向における一方端が前記ハウジングに固定されるとともに、他方端が前記トナー担持ローラ表面に当接して前記トナー担持ローラ表面に担持されるトナー量を規制する規制手段と、
柔軟性を有し、前記トナー担持ローラ周面のうち前記回転軸方向における端部のトナーを担持しない非担持領域と前記ハウジング壁面との間に挟み込まれて、回転する前記トナー担持ローラの周面に摺接しながら前記ハウジングからのトナーの漏れ出しを防止する端部シール手段と
を備え、
前記端部シール手段のうち前記トナー担持ローラの前記トナー担持領域に臨む側部には、前記回転軸方向における前記規制手段の端部に設けられた嵌合部の形状に対応した切り欠き部が設けられるとともに、前記規制手段の前記嵌合部が前記切り欠き部に嵌合しており、しかも、
前記規制手段の前記嵌合部は、前記回転軸に沿って前記トナー担持領域から離れる方向に向かって、前記回転軸に直交する断面の面積が増大する拡大部を有する
ことを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記規制手段の前記トナー担持ローラ回転方向上流側端面が、前記嵌合部において前記トナー担持ローラ回転方向上流側に向かってせり出している請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記規制手段は、前記回転軸方向に沿って延設され、該回転軸方向に直交する方向における一方端が前記ハウジングに固着されたバネ性を有する板状部材と、前記板状部材の他方端の前記トナー担持ローラ表面に向け取り付けられた前記回転軸方向に沿って延びる弾性部材とを備えている請求項1または2に記載の現像装置。
【請求項4】
前記トナー担持ローラ周面のうち前記トナー担持領域には、転造加工により規則的な凹凸を設けている請求項1ないし3のいずれかに記載の現像装置。
【請求項5】
前記トナー担持ローラ周面の前記非担持領域のうち前記端部シール手段と当接する領域には、前記凹凸を設けていない請求項4に記載の現像装置。
【請求項6】
静電潜像を担持する像担持体と、
内部にトナーを貯留するとともに、該トナーを外部に送出するための開口部を有するハウジングと、
略円筒または略円柱形状に形成され、前記ハウジングの前記開口部に所定の回転軸中心に回転自在に軸着されて、その周面のうち前記回転軸方向における両端部を除いた中央部のトナー担持領域にトナーを担持して前記像担持体との対向位置に搬送するトナー担持ローラと、
前記回転軸方向に延設され、該回転軸方向に直交する方向における一方端が前記ハウジングに固定されるとともに、他方端が前記トナー担持ローラ表面に当接して前記トナー担持ローラ表面に担持されるトナー量を規制する規制手段と、
柔軟性を有し、前記トナー担持ローラ周面のうち前記回転軸方向における端部のトナーを担持しない非担持領域と前記ハウジング壁面との間に挟み込まれて、回転する前記トナー担持ローラの周面に摺接しながら前記ハウジングからのトナーの漏れ出しを防止する端部シール手段と
を備え、
前記端部シール手段のうち前記トナー担持ローラの前記トナー担持領域に臨む側部には、前記回転軸方向における前記規制手段の端部に設けられた嵌合部の形状に対応した切り欠き部が設けられるとともに、前記規制手段の前記嵌合部が前記切り欠き部に嵌合しており、しかも、
前記規制手段の前記嵌合部は、前記回転軸に沿って前記トナー担持領域から離れる方向に向かって、前記回転軸に直交する断面の面積が増大する拡大部を有する
ことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−288475(P2009−288475A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−140407(P2008−140407)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】