現像装置および画像形成装置
【課題】2層の微細ピッチ電極群をトナー担持体に設けたフレアローラを用いる際に、フレアローラ表面での電位を一定に維持して電位差による画像の濃度ムラや地汚れの発生を防止できる構成を備えた現像装置を提供する。
【解決手段】潜像担持体1に対向して配置されるトナー担持体101と、トナー担持体101において所定間隔により並べられた複数の電極101A1,1010A2と、前記複数の電極間の電界が時間的に切り替わるように前記電極に電圧を供給する電圧供給手段とを備え、前記電極間の電界により前記トナー担持体の表面に担持されたトナーを飛翔させてクラウドを形成し、前記潜像担持体上に形成された潜像にトナーを付着させて該潜像を現像する現像装置100において、前記規制部材に電圧を印加する電圧印加手段を設け、前記電圧印加手段に印加するバイアスの平均値が、トナー担持体内部の電極群に印加するバイアスの平均電位と同電位であることを特徴とする。
【解決手段】潜像担持体1に対向して配置されるトナー担持体101と、トナー担持体101において所定間隔により並べられた複数の電極101A1,1010A2と、前記複数の電極間の電界が時間的に切り替わるように前記電極に電圧を供給する電圧供給手段とを備え、前記電極間の電界により前記トナー担持体の表面に担持されたトナーを飛翔させてクラウドを形成し、前記潜像担持体上に形成された潜像にトナーを付着させて該潜像を現像する現像装置100において、前記規制部材に電圧を印加する電圧印加手段を設け、前記電圧印加手段に印加するバイアスの平均値が、トナー担持体内部の電極群に印加するバイアスの平均電位と同電位であることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式に用いられる潜像担持体上に形成された静電潜像を現像する現像装置およびこれを用いる画像形成装置に関し、さらに詳しくは、電気的にトナークラウドを生起させるクラウド現像方式に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に用いられる現像装置には、2成分現像方式や1成分現像方式などがある。2成分現像方式は、高速現像に非常に適しており、現在の中速や高速の画像形成装置の主流方式である。
2成分現像方式では、高画質を狙うためには、潜像担持体上の静電潜像との接触部における現像剤の状態を非常に緻密にする必要がある。そのために、現在はキャリア粒子の小径化が進んでおり、商用レベルでは30μm程度のキャリアも使われ始めている。
【0003】
1成分現像方式は、機構が小型軽量になることから、現在の低速の画像形成装置で主流となっている。1成分現像方式では、現像ローラ上にトナー薄層を形成するために、ブレードやローラなどのトナー規制部材を現像ローラ上のトナーに当接させ、そのときに現像ローラやトナー規制部材とトナーとの摩擦によってトナーは帯電される。
現像ローラ上に薄層に形成された帯電トナー層は、現像部に運ばれて潜像担持体上の静電潜像を現像する。ここでの現像方式には大きく分けて接触型と非接触型があり、前者は現像ローラと潜像担持体とが接触するものであり、後者は現像ローラと潜像担持体とが非接触である。
2成分系現像方式においては、キャリアによるトナーの帯電性が優れ長寿命化が得られる反面、現像装置が大型化することやキャリアの耐久性によって画質の変化が大きくなるという欠点があり、また1成分系現像方式においては、現像装置が小型化でき、ドット再現性に優れている反面、現像ローラや補給に用いられるローラの耐久性が低く、しかも層厚規定される際の摩擦力によって層厚木底部材への固着やフィルミングが生じやすいという欠点がある。そこで、これら欠点を補い合うべく特許文献1に記載されているように、2成分現像方式と1成分現像方式とを混成したハイブリッド化方式も幾つか提案されている。
【0004】
高解像度の微小均一ドットを現像する方法としては、例えば特許文献2に記載の方式がある。この方式は、上記ハイブリッド化方式に対して、現像部に高周波バイアスを印加したワイヤを設置することにより、現像部でのトナークラウド化を行い、高解像度のドット現像性を実現するものである。
特許文献3には、最も効率良く、且つ安定なトナークラウドを形成するために、回転ローラ上に電界カーテンを形成する方法が提案されている。
特許文献6には、進行波電界による電界カーテンで現像剤を搬送する現像装置が記載されている。
特許文献7には、現像ローラの周面上にほぼ1層のキャリアをほぼ均等に吸着する複数の磁極を有する現像装置が記載されている。
特許文献8には、非磁性トナーを担持する現像剤担持体表面に、絶縁部を介して周期的な導電性電極パターンを設け、該電極に所定のバイアス電位を与えることで現像剤担持体表面近傍に電界勾配を発生せしめ、前記現像剤担持体上に前記非磁性トナーを付着搬送させる現像装置が記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開平3−100575号公報
【特許文献2】特開平3−113474号公報
【特許文献3】特開平3−21967号公報
【特許文献4】特開2002−341656号公報
【特許文献5】特開2004−286837号公報
【特許文献6】特開2003−15419号公報
【特許文献7】特開平9−269661号公報
【特許文献8】特開2003−84560号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
2成分現像方式では、高画質化に対する要求が益々高まっており、必要とされる画素のドットサイズ自身が現状のキャリア粒子径と同等もしくはそれよりも小さい必要があるために、孤立ドットの再現性という意味では更にキャリア粒子を小さくする必要がある。
しかしながら、キャリア径を小さくしていくと、キャリア粒子の透磁率が低下するために、現像ローラからのキャリア離脱が生じやすくなり、離脱したキャリア粒子が潜像担持体に付着した場合には、キャリア付着そのものによる画像欠陥が生じるだけでなく、それを起点として潜像担持体に傷をつけてしまうなどいろいろな副作用が生じる。
【0007】
キャリア離脱を防止するために、材料面からキャリア粒子の透磁率を上げる試みや、現像ローラに内包されるマグネットの磁力を強くする試みが進められているが、低コスト化及び高画質化との兼ね合いの中で開発は困難を極めている。
また、小型化の煽りを受けて、現像ローラは益々小径化の一途をたどっていることからも、キャリア離脱を完全に抑止できるような強力な磁場構成を有した現像ローラ設計が困難となっている。
【0008】
そもそも2成分現像方式は、磁気ブラシと呼ばれる2成分現像剤の穂を静電潜像に対して擦り付けるようにしてトナー像を形成するプロセスであるために、どうしても穂の不均一性によって、孤立ドットの現像性にムラが生じやすい。
現像ローラと潜像担持体との間に交番電界を形成することで画質の向上は可能であるが、現像剤の穂のムラといった根本的な画像ムラを完全に消滅させることは困難である。
【0009】
1成分現像方式では、トナー規制部材により薄層化された現像ローラ上のトナー層は、現像ローラ上に十分に圧接されてしまっているために、現像部での電界に対するトナー応答性が非常に悪い。よって、通常は高画質を得るために、現像ローラと潜像担持体との間に強力な交番電場を形成するのが主流であるが、この交番電場の形成をもってしても静電潜像に対して一定量のトナーを安定して現像することは困難であり、高解像度の微小ドットを均一に現像することは難しい。
【0010】
また、この1成分現像方式は、現像ローラへのトナー薄層形成時にトナーに対して大きなストレスをかけてしまうため、現像装置内を循環するトナーの劣化が早い。トナーの劣化につれて、現像ローラへのトナー薄層形成の工程でもムラなどが生じやすくなり、1成分現像方式は一般には高速や高耐久の画像形成装置としては向かない。
【0011】
ハイブリッド化方式では、現像装置そのものの大きさや部品点数は増えてしまうものの、幾つかの課題は克服される。しかし、現像部においてはやはり1成分現像方式と同様の問題があり、つまり高解像度の微小均一ドットを現像することには難が残る。
特許文献2記載の方式は、高安定且つ高画質な現像が実現できるものと考えられるが、現像装置の構成が複雑になる。
特許文献3記載の方法は、小型且つ高画質の現像を得るには非常に優れたものと解釈できるが、本発明者らが鋭意研究した結果、理想的な高画質を得るためには、形成する電界カーテンや現像などの条件を限定しなくてはならないことが発見された。すなわち、適正な条件から外れた条件で作像を行ってしまうと、全く効果が得られないばかりか、かえって粗悪な画質を提供してしまうことになる。
【0012】
ところで、潜像担持体に第一のトナー像が形成され、その上に順に第二のトナー像、第三のトナー像を形成していくような作像プロセスにおいては、先に潜像担持体上に形成されているトナー像を乱さないような現像方式でなくてはならない。非接触一成分現像方式や、特許文献2記載のトナークラウド現像方式を用いることで、潜像担持体上に順に各色トナー像を形成していくことは可能であるが、いずれの方式も、潜像担持体と現像ローラとの間に交番電界が形成されてしまうために、潜像担持体上に先に形成されたトナー像からトナーの一部が引き剥がされて現像装置に入り込んでしまう。これによって、潜像担持体上の画像が乱されてしまうばかりでなく、現像装置内のトナーが混色するという問題も生じてしまう。これらは高画質画像を得るには致命的であり、この問題を解決するためには潜像担持体と現像ローラとの間に交番電界を形成しない方法で現像する必要がある。
【0013】
このような現像を実現できる方法としては、先に挙げた特許文献3記載のクラウド現像方式などが有効と考えられるが、これに関しては先にも述べた通り、適当な条件の元で利用しないと全く効果がない。
【0014】
また、特許文献4記載の方式などのように、トナー担持体の機械的な駆動をなくし、3相以上の交互電界によってトナーを静電的に搬送し現像する方法も有効と考えられる。しかし、この方法によれば、何かのきっかけで静電搬送できなくなったトナーを起点として、搬送基板上にトナーが堆積してしまい、結果として機能しなくなる問題を抱えてしまう。このような問題を解決すべく、例えば特許文献5記載の方式のように固定搬送基板とその表面を移動するトナー担持体の組合せのような構造も提案されているが、機構が非常に複雑になってしまう。
【0015】
このような問題を解決するための方策として、2層の電極間に時間周期的に変化する電解を印可してトナーをトナー担持体から飛翔させてトナー担持体の回転駆動に併せて潜像担持体との対向領域にトナーを運んで現像させることが本発明者による検討結果として提案されている。
このように、従来の1成分現像ローラの代わりに、内部に2相の微細ピッチの電極群を埋め込んだローラ(以後、フレアローラと呼ぶ。)を用いて、そのローラ表面でトナーをホッピングさせる方式では、電極間の上に絶縁性の表面保護層を設けている。
【0016】
ところが、本発明者の検討によれば、このようなローラを回転駆動させると、トナー層厚規制部材とローラの摩擦帯電や、ホッピングするトナー自身とローラとの摩擦帯電、および供給ローラに印加するバイアスとフレアローラに印加するバイアスの平均値との電位差によるフレアローラ表面への電荷注入等の理由により、フレアローラの表面電位が大きく変動してしまうことが発見された。
ひいては潜像担持体との対向部で、フレアローラ表面と潜像担持体の画像部、もしくは非画像部との電位差が変動し、画像の濃度ムラ、地汚れの原因となってしまう。
【0017】
そこで、本発明の目的は、1成分系現像ローラの代わりに、2層の微細ピッチ電極群をトナー担持体に設けたフレアローラを用いる際に、フレアローラ表面での電位を一定に維持して電位差による画像の濃度ムラや地汚れの発生を防止できる構成を備えた現像装置および画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明では、潜像担持体に対向して配置されるトナー担持体と、該トナー担持体において所定間隔により並べられた複数の電極と、前記複数の電極間の電界が時間的に切り替わるように前記電極に電圧を供給する電圧供給手段とを備え、前記電極間の電界により前記トナー担持体の表面に担持されたトナーを飛翔させてクラウドを形成し、前記潜像担持体上に形成された潜像にトナーを付着させて該潜像を現像する現像装置において、前記規制部材に電圧を印加する電圧印加手段を設け、前記電圧印加手段に印加するバイアスの平均値が、トナー担持体内部の電極群に印加するバイアスの平均電位と同電位であることを特徴とする。
【0019】
請求項2記載の発明では、請求項1記載の現像装置において、 トナー担持体内部の一方の電極群に印加するバイアスが時間的に変化する波形であり、もう一方の電極群に印加するバイアスが逆位相の時間的に変化する波形であり、前記規制部材に印加するバイアスがDCバイアスであることを特徴とする。
【0020】
請求項3記載の発明では、請求項1記載の現像装置において、トナー担持体内部の一方の電極群に印加するバイアスが時間的に変化する波形であり、もう一方の電極群に印加するバイアスがDCバイアスであり、前記規制部材に印加するバイアスがDCバイアスであることを特徴とする。
【0021】
請求項4記載の発明では、請求項1記載の現像装置において、トナー担持体内部の一方の電極群に印加するバイアスが時間的に変化する波形であり、もう一方の電極群に印加するバイアスが逆位相の時間的に変化する波形であり、前記規制部材に印加するバイアスが、時間的に変化する波形であることを特徴とする。
【0022】
請求項5記載の発明では、請求項4記載の現像装置において、前記規制部材に印加するバイアスが、トナー担持体内部の一方の電極群に印加するバイアスと同一であることを特徴とする。
【0023】
請求項6記載の発明では、請求項1記載の現像装置において、トナー担持体内部の一方の電極群に印加するバイアスが、時間的に変化する波形であり、もう一方の電極群に印加するバイアスがDCバイアスであり、前記規制部材に印加するバイアスが、トナー担持体内部の一方の電極群に印加する時間的に変化する波形と同一であることを特徴とする。
【0024】
請求項7記載の発明では、請求項1〜6いずれかに記載の現像装置において、前記規制部材が、導電性を有することを特徴とする。
【0025】
請求項8記載の発明では、請求項1〜7のいずれか一つに記載の現像装置を用いて電子写真画像を形成することを特徴とする。
【0026】
請求項9記載の発明では、請求項1〜8のいずれか一つに記載の現像装置を複数備え、像担持体上で複数回の色重ねを行う構成を備えたことを特徴とする。
【0027】
請求項10記載の発明では、請求項8または9に記載の画像形成装置において、像担持体、これに対する帯電手段およびクリーニング手段のうちの少なくとも一つと、現像装置とを一体に装備したプロセスカートリッジを備えていることを
特徴とする。
【0028】
請求項11記載の発明では、請求項10に記載の画像形成装置において、前記プロセスカートリッジを複数備えて複数色の画像形成が可能なことを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、従来のクラウド現像方式に比べて、潜像の現像ニップ通過時にフレア活性(ホッピング状態変化)させる際に、トナー担持体の表面電位を一定にすることができるので、感光体上の静電潜像の画像部、非画像部との電位差を一定にすることができ、画像濃度ムラのない良好な画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を、図を参考に説明する。
図1は本発明の1つの実施形態を示す。この実施形態は、図2に示すフレア方式の現像装置100を利用して構成され、像担持体としての感光体1上に各色のトナー像を重ねて形成する画像形成装置200の例である。フレア現像方式については後で詳しく説明する。
この実施形態では、ベルト状の感光体1は、複数のローラ1A〜1Dに掛け渡され、図示しない駆動部により回転駆動される。なお、便宜上、以下の説明において一つの色の画像形成を行う作像部を対象と刷る符号を他の色の作像部においても付けるが、図中、K(黒),Y(イエロー),C(シアン),M(マゼンタ)という表示で作像部で形成される色を区別している。
【0031】
感光体1と対向して、複数色、例えばブラック、イエロー、シアン、マゼンタの画像をそれぞれ形成する複数の画像形成手段としての現像装置100が配列されている。感光体1は、まず、帯電装置2により一様に帯電されて図示しない露光手段としての書込装置3により、マゼンタの画像データで変調された光ビームによって露光されることで静電潜像が形成され、この静電潜像が現像装置(マゼンタ)100により現像されてマゼンタのトナー像となる。その後、感光体1は図示しない除電器により除電されて次の色の画像形成に備える。
【0032】
次いで、感光体1は、次の帯電装置2により一様に帯電されて図示しない露光手段としての書込装置3により、シアンの画像データで変調された光ビームによって露光されることで静電潜像が形成され、この静電潜像が現像装置(シアン)100により現像されて上記マゼンタのトナー像と重なるシアンのトナー像となる。その後、感光体1は図示しない除電器により除電されて次の画像形成に備える。
さらに感光体1は、次の帯電装置2により一様に帯電されて図示しない露光手段としての書込装置3により、イエローの画像データで変調された光ビームによって露光されることで静電潜像が形成され、この静電潜像が現像装置(イエロー)100により現像されて上記マゼンタのトナー像及び上記シアンのトナー像と重なるイエローのトナー像となる。その後、感光体1は図示しない除電器により除電されて次の画像形成に備える。
【0033】
最後に、感光体1は、次の帯電装置2により一様に帯電されて図示しない露光手段としての書込装置により、ブラックの画像データで変調された光ビームによって露光されることで静電潜像が形成され、この静電潜像が現像装置(ブラック)100により現像されて上記マゼンタのトナー像、上記シアンのトナー像及び上記イエローのトナー像と重なるブラックのトナー像となることでフルカラー画像が形成される。
【0034】
一方、図示しない給紙装置から記録紙等の記録媒体が給送され、この記録媒体は電源から転写バイアスが印加される転写手段としての転写ローラ4により感光体1上のフルカラー画像が転写される。フルカラー画像が転写された記録媒体は、定着装置によりフルカラー画像が定着され、外部へ排出される。感光体1は、フルカラー画像転写後にクリーニング手段としてのクリーナ(図示されず)により残留トナー等が除去される。
【0035】
以上に述べた実施形態では、同一の感光体上に4色分の書き込みを行うので、通常の4連タンデム方式と比較すると、原理的に位置ズレがほとんど発生せず、感光体上で色重ねができて位置ズレのない高画質のフルカラー画像を得ることができる。また、上記実施形態の現像装置を用いた色重ねシステムは、現像装置100内に装備されているトナー担持体と感光体が非接触で、かつ現像領域で交番電界がかかっていないため、次の色の現像工程が、感光体上に一度形成されたトナー像に対しては機械的にも電界的にも影響を与えないので、スキャベンジや混色などの問題が無く、高画質な作像プロセスを長期的に渡り安定して行うことができる。
【0036】
以下に、現像装置において実行されるフレア現像について説明する。なお、フレア(Flare)現像で用いるトナー担持体を以後、フレアローラと呼ぶことにする。
フレアローラの概略図を図3に示す。また、図4はフレアローラの電極部分の周方向断面の概略図である。
支持基板101A上に電極101A1、101A2が所定の間隔で配置され、その上に無機又は有機の絶縁性材料で形成した表面保護層が積層されている。なお、図4において各電極から伸びる線は各電極に電圧を印加するための導電線を表しており、各線の重なる部分のうち黒丸で示した部分だけが電気的に接続されており、他の部分は電気的に絶縁状態である。各電極に対しては、本体側の電源から2相の異なる駆動電圧が印加される。
【0037】
また、図5はフレアローラ電極部の平面展開図である。これらの図からわかるようにフレアローラは、トナーをホッピングさせるための電界を発生する2相の電極群を有し、偶数番目の電極群と奇数番目の電極群にそれぞれ図示しない駆動回路から一例としては図6(B)に示すような逆位相の駆動波形が印加され、2相の電極間に時間周期的な電位差が形成される。
そしてフレアローラは回転駆動され、回転軸の一方に奇数番電極が接続され、回転軸のもう一方に偶数番電極が接続されている。
【0038】
なお、図2の現像装置は、本発明の画像形装置に使われる現像装置の一例である。図2において、現像装置100には、感光体1に対して非接触な常置で対向するトナー担持体としてのフレアローラ101,フレアローラ101に担持される現像剤の層厚を規定する層厚規定部材102,フレアローラ101に現像剤(トナー)を供給する供給ローラ103,感光体1との対向位置を通過したフレアローラ101の表面に残留する現像剤を回収する回収ローラ104および回収ローラ104から現像剤を振り落とすフリッカ105および現像剤撹拌パドル106が現像ユニット内に纏めて収容されて構成されている。なお、符号107は、シールなどが用いられるトナー漏れ防止部材を示している。
現像装置100では、現像剤を撹拌する撹拌パドル106このような構成により、供給ローラ103からフレアローラ101に供給されたトナーは、時間周期的に変化する電界に従ってホッピング運動を行う。そしてフレアローラ101自体の回転駆動により、像担持体である感光体1との対向領域に搬送され、感光体1上の潜像にトナーが電界からの力を受けて移動して現像が行われる。
【0039】
一方、現像に寄与しなかった不要なトナーはトナー漏れ防止部材107を通過して、回収ローラ104との対向領域へ運ばれてくる。フレアローラ101上のトナーはホッピングしているため、フレアローラ101とトナーの付着力は非常に低く、回収ローラ104で容易に回収される。そして供給ローラ104との対向領域では、再び新しいトナーがフレアローラに供給される。これを繰り返すことによって、フレアローラ101上には常に一定量のトナーがホッピングしている状態が形成される。なお、フレアローラ101の支持基板としては、ガラス基板、樹脂基板或いはセラミックス基板等の絶縁性材料からなる基板、あるいはSUS等の導電性材料からなる基板にSiO2等の絶縁膜を成膜したもの、ポリイミドなどの材料からなる基板等を適用できる。
電極は、支持基板上に、Al、Ni−Cr等の導電性材料を0.1〜10μm厚、好ましくは0.5〜2.0μmで成膜し、これをフォトリソ技術等で所要の電極形状にパターニングして形成している。
【0040】
次にトナーのホッピングを行うためのフレアローラ上の電極幅L及び電極間隔R、駆動波形形状並びに表面保護層について説明する。搬送部材における電極幅Lと電極間隔Rはトナーのホッピング効率に大きく影響する。なお電極ピッチPは、P=R+Lで表される。
電極と電極の間にあるトナーは、ほぼ水平方向の電界により、基板表面を隣接する電極まで移動する。これに対して、電極上に乗っているトナーは、少なくとも垂直方向の成分も持った初速が与えられることから、多くは基板面から離れて飛翔する。
【0041】
特に、電極端面付近にあるトナーは、隣接電極を飛び越えて移動するため、電極幅Lが広い場合には、その電極上に乗っているトナーの数が多くなり、移動距離の大きいトナーが増える。ただし、電極幅Lが広すぎると、電極中央付近の電界強度が低下するためにトナーが電極に付着し、ホッピング効率が低下することになる。そこで、本発明者らの研究結果により、低電圧で効率よくトナーをホッピングさせるための適正な電極幅があることを見出した。
【0042】
また、電極間隔Rは、距離と印加電圧の関係から電極間の電界強度を決定し、間隔Rが狭い程電界強度は当然強く、ホッピングの初速が得られやすい。しかし、電極から電極へ移動するようなトナーについては、一回の移動距離が短くなり、駆動周波数を高くしないとホッピングしている時間が短くなり、着地している時間が長くなる。
これについても、本発明者らが検討および実験した結果、低電圧で効率よくトナーを搬送、ホッピングするための適正な電極間隔があることを見出した。
さらに、電極表面を覆う表面保護層の厚さも電極表面の電界強度に影響を与え、特に垂直方向成分の電気力線への影響が大きく、ホッピングの効率を決定することをも見出した。
すなわちフレアローラの電極幅、電極間隔、表面保護層厚さの関係を適正に設定することによって、低電圧で効率的なホッピングを行うことができる。
【0043】
そこで本実施例では、図4に示す電極幅Lは、トナー平均粒径の1倍以上20倍以下とし、かつ、電極間隔Rもトナー平均粒径の1倍以上20倍以下としている。
【0044】
次に、表面保護層は、例えばSiO2、BaTiO2、TiO2、TiO4、SiON、BN、TiN、Ta2O5等を適用でき、厚さは0.5〜10μm、好ましくは0.5〜3μmで形成している。
また、SiO2等の上にポリカなどの有機材料をコートしても良い。ジルコニア、あるいは二成分現像剤のキャリアのコート材料として一般的に使われる材料、例えばシリコーン系樹脂を選択することもできる。表面保護層は、絶縁性、耐久性、フレアローラ自体の製法、及び使用するトナーとの帯電列との関係から適宜選択される。
【0045】
本発明に係る現像装置を画像形成装置に用いる場合、フレアローラとして、少なくともA4縦幅21cm、または横幅30cm以上の長尺、大面積にファインパターンの実用が必要になってくる。
【0046】
ここでフレアローラの製法についていくつか挙げる。
まず、はじめに、フレキシブルな電極パターンを形成し、それを支持ドラムに巻きつけてフレアローラを形成する場合について説明する。
フレキシブルなファインピッチ薄層電極を有する基板の一例としては、ポリイミドのベースフィルム(厚さ20〜100μm)を基材(支持基板11)として、その上に蒸着法によって0.1〜0.3μmのCu、Al、Ni−Cr等を成膜する。幅30〜60cmであれば、ロール・トゥ・ロールの装置で製造可能であり、量産性が非常に高まる。共通バスラインは同時に幅1〜5mm程度の電極を形成する。
【0047】
この蒸着法の具体的手段としては、スパッタ法、イオンプレーティング法、CVD法、イオンビーム法、等の方法が可能である。例えば、スパッタ法で電極を形成する場合において、ポリイミドとの密着性を向上させるため、Cr膜を介在させても良いし、プラズマ処理やプライマー処理によっても密着性を向上させることができる。
【0048】
また、蒸着法以外の工法としては、電着法によっても薄層電極を形成することができる。この場合は、前記ポリイミドの基材上に、まず、無電解メッキによって電極を形成する。塩化Sn、塩化Pd、塩化Niに順次浸漬して下地電極を形成した後、Ni電解液中で電解メッキを行ってNi膜1〜3μmをロール・トゥ・ロールで製造することが可能である。
【0049】
そして、これらの薄膜電極にレジスト塗布、パタンニング、エッチングで電極12を形成する。この場合、0.1〜3μm厚さの薄層電極であれば、フォトリソ、エッチング処理によって5μm〜数10μm幅、又は間隔のファインパターン電極を精度良く形成することができる。
【0050】
次いで、表面保護層13としてSiO2、BaTiO2、TiO2等を厚さ0.5〜2μmをスパッタ等により形成する。或いは、表面保護層としてPI(ポリイミド)を厚さ2〜5μmにロールコータ、その他コーティング装置により塗布し、ベークして仕上げる。PIのままで支障を生じるときには、更に最表面にSiO2、その他無機膜を0.1〜0.5μmの厚みにスパッタ等で形成すればよい。また、SiO2等の上にポリカなどの有機材料をコートしても良い。ジルコニア、あるいは二成分現像剤のキャリアのコート材料として一般的に使われる材料、例えばシリコーン系樹脂を選択することもできる。
【0051】
このようなフレキシブル基板を構成することによって、円筒形状のドラムに貼り付けたり、或いは、部分的に曲面形状にしたりすることが容易に行える。
【0052】
また、別の例としては、ポリイミドのベースフィルム(厚さ20〜100μm)を基材(支持基板11)として、その上に電極材料として、厚さ10〜20μmのCu、SUS等を使用することも可能である。この場合は、逆に金属材の上にポリイミドをロールコータにて20〜100μm塗布してベークする。その後、金属材をフォトリソ、エッチング処理によって電極12の形状にパターン化し、その電極12面上に保護層13としてポリイミドをコーティング、金属材電極の厚さ10〜20μmに応じた凹凸がある場合は平坦化して完成する。
【0053】
例えば、粘度50〜10,000cps、より好ましくは100〜300cpsのポリイミド系材料、ポリウレタン系材料をスピンコートして放置することによって、材料の表面張力によって基板の凹凸がスムージングされ、搬送部材最表面が平坦化される。
【0054】
さらに、フレキシブル基板の強度を上げた更に他の例としては、基材として厚さ20〜30μmのSUS、Al材等を用いて、その表面に絶縁層(電極と基材との間の絶縁)として5μm程度の希釈したポリイミド材をロールコータによりコーティングする。そして、このポリイミドを例えば150℃−30分という条件でのプリベーク、350℃−60分という条件でポストベークして薄層ポリイミド膜を形成して支持板11とする。
【0055】
その後、密着性向上のプラズマ処理やプライマー処理を施した後、薄層電極層としてNi−Crを0.1〜0.2μmの厚みに蒸着し、フォトリソ、エッチングによって前記数10μmのファインパターンの電極12を形成する。さらに、表面に前記SiO2、BaTiO2、TiO2等の表面保護層13を0.5〜1μm程度の厚みにスパッタにより形成することで、フレキシブル搬送部材を得ることができる。また、SiO2等の上にポリカなどの有機材料をコートしても良い。ジルコニア、あるいは二成分現像剤のキャリアのコート材料として一般的に使われる材料、例えばシリコーン系樹脂を選択することもできる。
【0056】
フレアローラの別の製法としては、はじめから円筒ドラムに対して電極をパターニング及び表面保護層を形成する方法もある。
一例として図7に示すような工法が挙げられる。
図7(a)〜(e)に示す各工程でパターン電極を形成する。図7はトナー担持ローラ31の表面を回転軸に沿った方向に見た図で、分かりやすいように平面状に展開している。
図7(a)に示す工程では、ローラ51の表面を外周旋削によって平滑に仕上げる。
図7(b)に示す工程では、溝のピッチが100[μm]、溝幅が50[μm]となるように溝53の切削を行う。図7(c)に示す工程では、溝切削を行ったローラ51に無電解ニッケル54のメッキを施し、図7(d)に示す工程では、無電解ニッケル54のメッキを施したトナー担持ローラ31の外周を旋削して不要な導体膜を取り除く。
この時点で電極41、42、43・・・(図7では、4i−1、4i、4i+1という順列表示とされている)が溝53の部分に互いに絶縁して形成される。その後、ローラ51にシリコーン系樹脂をコーティングすることでローラ51の表面を平滑にし、同時に表面保護層(厚み約5[μm]、体積抵抗率約1010[Ω・cm])55を形成してトナー担持ローラ31を製作した。このような工程により得られた電極は、図5に示す展開図の通りである。
【0057】
さらに別のフレアローラの製法としては、導電インクを用いたスクリーン印刷、インクジェットによるプリント、メッキ加工した電極の非電極部をレーザ加工で除去する等の製法も挙げられる。
フレアローラの電極パターンおよび表面保護層の作成方法は上述の方法に限定されるものではなく、電極材料としては銀、銅などを使用しても良い。
【0058】
次にその他の実験条件について説明する。
本実施例では図10に示す現像装置を用いた。なお、図10においては、部材を直接表示してある。
トナー収容部に収容されているトナーが撹拌パドルにより、供給ローラ(図10では、供給・回収ローラと表示してある)に運ばれる。さらに、供給ローラをフレアローラとカウンター方向に回転させることによって、供給ローラに回収ローラとしての機能も持たせている。もちろん、このような機能集約化を図らずに図2に示す現像装置のように供給部材と回収部材が独立していても良い。
トナー供給部材でフレアローラにトナーが供給されると、同時にトナーが摩擦帯電される。その後、トナーはフレアローラの回転とともに運ばれ、トナー層厚規制部材で付着量が規制される。規制部材には導電性のゴムブレードを用いたが、ローラ形状のものでも良い。
【0059】
付着量を規制されたトナーは飛翔(ホッピング)しながら均一に再配置されつつ、現像領域に搬送され、感光体上の静電潜像を非接触で現像する。現像に使用されなかったトナーは、現像領域を通過して、トナー漏れ防止部材を通過した後、回収ローラ(回収機能と供給機能が集約されている場合は、前述の供給ローラ)で回収され、トナー収容部に一旦戻される。
【0060】
次に現像装置でのバイアス制御について説明する。
フレアローラ表面でトナーをホッピングさせるための駆動波形として図6(b)に示すような矩形波を用いた。すなわち、2相の電極とも平均値V0が−200[V]で、周波数fが1[kHz]、ピークツーピーク電圧Vppが300[V]の矩形波バイアスである。
トナー層厚規制部材には電極の1相に印加したのと同じDCバイアスV0として−200[V]を印加した。この条件とすることが請求項2記載の発明の実施例に相当する。
本実施例のように、矩形波バイアスのDutyが50%の場合は、フレアローラに印加するバイアスの平均値Vaveは矩形波バイアスのオフセット電圧V0に一致する。
【0061】
一方、Dutyが50%でないなどの理由によって、フレアローラに印加するバイアスの平均値Vaveとオフセット電圧V0が一致しない場合には、トナー層厚規制部材に印加するバイアスはフレアローラに印加するバイアスの平均値Vaveを印加してトナー層厚規制部材を同電位にする。
【0062】
このような条件のもとで、図2の構成の現像装置でフレアローラを連続回転させても、層厚規制後のトナー付着量と帯電量は一定であった。さらに図8に示すように、クラウド電位が一定であった。
【0063】
なお、クラウド電位とは、フレアローラの上にトナーが付着した状態で、かつフレアバイアス印加状態でホッピング中の表面電位のことである。
クラウド電位が一定であると、感光体上の潜像電位との電位差が一定に保たれるので、画像濃度は安定しており地汚れも発生せず、良好な画像形成を行うことができた。
【0064】
ここで、比較例1を挙げて実施例1との画像への影響について検証を行った結果が次の通りである。
(比較例)
実施例1と同様の構成で、フレアローラに印加するバイアスは実施例1と同じにして、トナー漏れ防止部材に、−400[V]印加したところ、図9に示すように電位はローラ回転後20秒程度まで下がり続けた。このとき現像領域で適正な現像ポテンシャルが維持されないため、画像濃度が濃くなり、地汚れも発生する不具合が生じた。
また、実質的に供給ポテンシャルが初期より小さくなってしまっているため、十分な量のトナーがフレアローラに供給されない問題も発生した。
【0065】
これらの結果をまとめると、フレアローラ回転開始直後は、フレアローラ表面電位が0であるため、狙い通りの画像が得られるが、表面電位がマイナス側に大きくなると、感光体上の潜像電位との差である現像ポテンシャルが大きくなり、画像濃度が濃く不具合が生じる。
【0066】
次に別の実施例(以下、実施例2という)では、トナーをホッピングさせるための駆動波形として図6(A)に示すような矩形波を用いた。
すなわち、1相は平均値V0が−300[V]で、周波数fが1[kHz]、ピークツーピーク電圧Vppが600[V]の矩形波であり、もう1相はDCバイアスV0として−300[V]印加した。このように2相ある電極のうちの一方の電極を常に一定の電圧を印加しておき、もう一方の電極に矩形波電圧を印加しても、同様にトナーをホッピングさせることが可能である。
このようにフレアローラに印加する一方のバイアスをDCバイアスにすることで、パルスを生成する電源系統を1つ減らせ、電源の低コスト化が可能である。
このトナー層厚規制部材には、V0のDCバイアスを印加した。これが請求項3記載の発明の実施例に相当する。
【0067】
このようにしてトナー漏れ防止部材に印加するバイアスとフレアローラに印加するバイアスの平均値を同電位とすることによって、フレアローラ表面電位を常に一定に維持することができ、フレアローラを連続回転させてもクラウド電位が一定であった。そのため、画像濃度ムラのない良好な画像形成を行うことができた。
【0068】
実施例3では、トナーをホッピングさせるための駆動波形として図6(b)に示す矩形波を用いた。すなわち、2相の電極とも平均値V0が−300[V]で、周波数fが1[kHz]、ピークツーピーク電圧Vppが300[V]の互いに逆位相の矩形波バイアスである。
また、トナー漏れ防止部材には、平均値V0が−300[V]、周波数f2が500[Hz]、ピークツーピーク電圧V2が400[V]の矩形波バイアスを印加した(請求項4記載の発明の実施例に相当)。
【0069】
このような条件のもとで、フレアローラを連続回転させてもクラウド電位が一定であった。そのため、画像濃度ムラのない良好な画像形成を行うことができた。
【0070】
実施例4では、実施例3と同じ駆動波形をフレアバイアスとして印加し、トナー層厚規制部材には、フレアローラ印加バイアスのA相もしくはB相に印加する矩形波バイアスと同一の波形を印加した(請求項5記載の発明の実施例に相当)。
【0071】
このような条件のもとで、フレアローラを連続回転させてもクラウド電位が一定であった。そのため、画像濃度ムラのない良好な画像形成を行うことができた。
【0072】
実施例5では、トナーをホッピングさせるための駆動波形として図6(a)に示す矩形波を用いた。すなわち、1相は平均値V0が−300[V]で、周波数fが1[kHz]、ピークツーピーク電圧Vppが600[V]の矩形波であり、もう1相はDCバイアスV0として−300[V]を印加した。
【0073】
このときのトナー漏れ防止部材に印加するバイアスは、フレアローラの片側1相に印加した矩形波バイアスと同一の矩形波バイアスとした。(請求項6記載の発明の実施例に相当)
【0074】
このような条件のもとで、フレアローラを連続回転させてもクラウド電位が一定であった。そのため、画像濃度ムラのない良好な画像形成を行うことができた。
【0075】
最後に、これらの実験結果のように、トナー漏れ防止部材に適切な電圧を印加しないとフレアローラの表面電位が変動してしまうメカニズムについて説明しておく。
【0076】
本発明者らが鋭意研究した結果、フレアローラ表面電位の変動要因には以下の3つがあることを発見した。
1.コンデンサーモデルによる電荷の蓄積(図11、12参照)
トナーの介在をなくし、供給ローラとフレアローラの影響のみを抽出するために、供給ローラとフレアローラのみを空回転させ、フレアローラの表面電位の時間推移を測定した結果を図11に示す。この挙動は図12に示したRC直列回路のコンデンサーに蓄積される電荷が生み出すコンデンサーの表面電位に他ならない。
【0077】
すなわち、供給ローラとフレアローラ表面電位の電位差がなくなるまでフレアローラの表面保護層に電荷が蓄積し、電位が飽和する。
供給バイアス、フレアバイアスの電源をオフにして放置すれば電荷は徐々に失われるが、表面保護層は電極間の絶縁性を出すために抵抗が高いため、いったん蓄えた電荷をなかなか自然にはリークしない。したがって、除電機能を設けずにシステムを成立させるのは難しいと考えられる。
【0078】
2.フレアローラと供給ローラの摩擦帯電(図13参照)
供給ローラとフレアローラ表面電位の影響のうち、さらに、供給ローラに印加するバイアス、フレアローラに印加するバイアスの影響を取り除き、両者の摩擦帯電特性のみを調べるために、供給バイアス、2相のフレアローラ印加バイアス、をすべてグランド接続して、同様にフレアローラ表面電位の時間推移を測定した結果を図13に示す。この挙動から、フレアローラと供給ローラの摩擦帯電のみでフレアローラが−40V程度帯電することが分かった。この値、収束速度は、供給ローラとフレアローラ表面保護層の材料の帯電列の関係や、供給ローラの食い込み量なども影響する。
【0079】
3.トナーのマイナス電荷を打ち消す電荷が誘起される。(図14参照)
供給ローラから供給されたトナーがフレアローラ上でホッピングしていると、逆チャージのプラス電荷がフレアローラ表面保護層に誘起され、トナーを除去した後のフレアローラ表面電位を測定すると、プラス側の表面電位を持つ。トナーの帯電量が高いほど、この値は顕著となる。
1番目のモデルだけならば、トナーの供給・回収を機械的な掻き取りのみに頼るようにして電界を使わなければ、コンデンサーモデルによる表面電位の変動は避けることができる。
しかし、同時に2番目、3番目のモデルで表面電位が帯電しているので、フレアローラの表面電位を常に一定にして感光体との対向領域へトナーを運ぶためには、いずれにしても除電が必要であるといえる。
【0080】
なお、上記説明に用いた画像形成装置は、図1に示すように一つの感光体ベルトを対象として複数の作像部を配置した関係としているが、本発明ではこれに限らず、各色の作像部毎に感光体、帯電装置、現像装置およびクリーニング装置の少なくとも一つを纏めて収容したプロセスカートリッジを用い、各作像部での法ロセスカートリッジにおいて形成された画像を順次転写ベルトなどの中間転写手段あるいは記録媒体に対して順次重ね転写することで、多色画像を形成可能な画像形成装置を同じ画像を得るようにすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明による現像装置を適用した画像形成装置の構成を説明するための模式図である。
【図2】本発明による現像装置の構成を説明するための模式図である。
【図3】フレアローラの構成を示す斜視図である。
【図4】フレアローラにおける電極構造を説明するための模式図である。
【図5】電極構造の展開図である。
【図6】電極への印加電圧を説明するための図である。
【図7】トナー担持体の製造工程の他の一部を示す断面図である。
【図8】本発明による現像装置でのフレアローラに対するバイアス制御によるクラウド電位の変化状態を示す図である。
【図9】図8に示したフレアローラに対する比較例でのクラウド電位の変化状態を示す図である。
【図10】本発明による現像装置の別例を示す図である。
【図11】供給ローラとフレアローラのみを空回転させ、フレアローラの表面電位の時間推移を測定した結果を示す図である。
【図12】本発明の現像装置に用いられるフレアローラの電気的解析結果を説明するためのRC直列回路を示す図である。
【図13】現像装置での供給バイアス、2相のフレアローラ印加バイアス、をすべてグランド接続して、同様にフレアローラ表面電位の時間推移を測定した結果を示す図である。
【図14】フレアローラ表面電位の変動要因の一つについて説明するための図である。
【符号の説明】
【0082】
1 感光体
100 現像装置
101 トナー担持体であるフレアローラ
101A1,101A2 電極
200 画像形成装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式に用いられる潜像担持体上に形成された静電潜像を現像する現像装置およびこれを用いる画像形成装置に関し、さらに詳しくは、電気的にトナークラウドを生起させるクラウド現像方式に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に用いられる現像装置には、2成分現像方式や1成分現像方式などがある。2成分現像方式は、高速現像に非常に適しており、現在の中速や高速の画像形成装置の主流方式である。
2成分現像方式では、高画質を狙うためには、潜像担持体上の静電潜像との接触部における現像剤の状態を非常に緻密にする必要がある。そのために、現在はキャリア粒子の小径化が進んでおり、商用レベルでは30μm程度のキャリアも使われ始めている。
【0003】
1成分現像方式は、機構が小型軽量になることから、現在の低速の画像形成装置で主流となっている。1成分現像方式では、現像ローラ上にトナー薄層を形成するために、ブレードやローラなどのトナー規制部材を現像ローラ上のトナーに当接させ、そのときに現像ローラやトナー規制部材とトナーとの摩擦によってトナーは帯電される。
現像ローラ上に薄層に形成された帯電トナー層は、現像部に運ばれて潜像担持体上の静電潜像を現像する。ここでの現像方式には大きく分けて接触型と非接触型があり、前者は現像ローラと潜像担持体とが接触するものであり、後者は現像ローラと潜像担持体とが非接触である。
2成分系現像方式においては、キャリアによるトナーの帯電性が優れ長寿命化が得られる反面、現像装置が大型化することやキャリアの耐久性によって画質の変化が大きくなるという欠点があり、また1成分系現像方式においては、現像装置が小型化でき、ドット再現性に優れている反面、現像ローラや補給に用いられるローラの耐久性が低く、しかも層厚規定される際の摩擦力によって層厚木底部材への固着やフィルミングが生じやすいという欠点がある。そこで、これら欠点を補い合うべく特許文献1に記載されているように、2成分現像方式と1成分現像方式とを混成したハイブリッド化方式も幾つか提案されている。
【0004】
高解像度の微小均一ドットを現像する方法としては、例えば特許文献2に記載の方式がある。この方式は、上記ハイブリッド化方式に対して、現像部に高周波バイアスを印加したワイヤを設置することにより、現像部でのトナークラウド化を行い、高解像度のドット現像性を実現するものである。
特許文献3には、最も効率良く、且つ安定なトナークラウドを形成するために、回転ローラ上に電界カーテンを形成する方法が提案されている。
特許文献6には、進行波電界による電界カーテンで現像剤を搬送する現像装置が記載されている。
特許文献7には、現像ローラの周面上にほぼ1層のキャリアをほぼ均等に吸着する複数の磁極を有する現像装置が記載されている。
特許文献8には、非磁性トナーを担持する現像剤担持体表面に、絶縁部を介して周期的な導電性電極パターンを設け、該電極に所定のバイアス電位を与えることで現像剤担持体表面近傍に電界勾配を発生せしめ、前記現像剤担持体上に前記非磁性トナーを付着搬送させる現像装置が記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開平3−100575号公報
【特許文献2】特開平3−113474号公報
【特許文献3】特開平3−21967号公報
【特許文献4】特開2002−341656号公報
【特許文献5】特開2004−286837号公報
【特許文献6】特開2003−15419号公報
【特許文献7】特開平9−269661号公報
【特許文献8】特開2003−84560号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
2成分現像方式では、高画質化に対する要求が益々高まっており、必要とされる画素のドットサイズ自身が現状のキャリア粒子径と同等もしくはそれよりも小さい必要があるために、孤立ドットの再現性という意味では更にキャリア粒子を小さくする必要がある。
しかしながら、キャリア径を小さくしていくと、キャリア粒子の透磁率が低下するために、現像ローラからのキャリア離脱が生じやすくなり、離脱したキャリア粒子が潜像担持体に付着した場合には、キャリア付着そのものによる画像欠陥が生じるだけでなく、それを起点として潜像担持体に傷をつけてしまうなどいろいろな副作用が生じる。
【0007】
キャリア離脱を防止するために、材料面からキャリア粒子の透磁率を上げる試みや、現像ローラに内包されるマグネットの磁力を強くする試みが進められているが、低コスト化及び高画質化との兼ね合いの中で開発は困難を極めている。
また、小型化の煽りを受けて、現像ローラは益々小径化の一途をたどっていることからも、キャリア離脱を完全に抑止できるような強力な磁場構成を有した現像ローラ設計が困難となっている。
【0008】
そもそも2成分現像方式は、磁気ブラシと呼ばれる2成分現像剤の穂を静電潜像に対して擦り付けるようにしてトナー像を形成するプロセスであるために、どうしても穂の不均一性によって、孤立ドットの現像性にムラが生じやすい。
現像ローラと潜像担持体との間に交番電界を形成することで画質の向上は可能であるが、現像剤の穂のムラといった根本的な画像ムラを完全に消滅させることは困難である。
【0009】
1成分現像方式では、トナー規制部材により薄層化された現像ローラ上のトナー層は、現像ローラ上に十分に圧接されてしまっているために、現像部での電界に対するトナー応答性が非常に悪い。よって、通常は高画質を得るために、現像ローラと潜像担持体との間に強力な交番電場を形成するのが主流であるが、この交番電場の形成をもってしても静電潜像に対して一定量のトナーを安定して現像することは困難であり、高解像度の微小ドットを均一に現像することは難しい。
【0010】
また、この1成分現像方式は、現像ローラへのトナー薄層形成時にトナーに対して大きなストレスをかけてしまうため、現像装置内を循環するトナーの劣化が早い。トナーの劣化につれて、現像ローラへのトナー薄層形成の工程でもムラなどが生じやすくなり、1成分現像方式は一般には高速や高耐久の画像形成装置としては向かない。
【0011】
ハイブリッド化方式では、現像装置そのものの大きさや部品点数は増えてしまうものの、幾つかの課題は克服される。しかし、現像部においてはやはり1成分現像方式と同様の問題があり、つまり高解像度の微小均一ドットを現像することには難が残る。
特許文献2記載の方式は、高安定且つ高画質な現像が実現できるものと考えられるが、現像装置の構成が複雑になる。
特許文献3記載の方法は、小型且つ高画質の現像を得るには非常に優れたものと解釈できるが、本発明者らが鋭意研究した結果、理想的な高画質を得るためには、形成する電界カーテンや現像などの条件を限定しなくてはならないことが発見された。すなわち、適正な条件から外れた条件で作像を行ってしまうと、全く効果が得られないばかりか、かえって粗悪な画質を提供してしまうことになる。
【0012】
ところで、潜像担持体に第一のトナー像が形成され、その上に順に第二のトナー像、第三のトナー像を形成していくような作像プロセスにおいては、先に潜像担持体上に形成されているトナー像を乱さないような現像方式でなくてはならない。非接触一成分現像方式や、特許文献2記載のトナークラウド現像方式を用いることで、潜像担持体上に順に各色トナー像を形成していくことは可能であるが、いずれの方式も、潜像担持体と現像ローラとの間に交番電界が形成されてしまうために、潜像担持体上に先に形成されたトナー像からトナーの一部が引き剥がされて現像装置に入り込んでしまう。これによって、潜像担持体上の画像が乱されてしまうばかりでなく、現像装置内のトナーが混色するという問題も生じてしまう。これらは高画質画像を得るには致命的であり、この問題を解決するためには潜像担持体と現像ローラとの間に交番電界を形成しない方法で現像する必要がある。
【0013】
このような現像を実現できる方法としては、先に挙げた特許文献3記載のクラウド現像方式などが有効と考えられるが、これに関しては先にも述べた通り、適当な条件の元で利用しないと全く効果がない。
【0014】
また、特許文献4記載の方式などのように、トナー担持体の機械的な駆動をなくし、3相以上の交互電界によってトナーを静電的に搬送し現像する方法も有効と考えられる。しかし、この方法によれば、何かのきっかけで静電搬送できなくなったトナーを起点として、搬送基板上にトナーが堆積してしまい、結果として機能しなくなる問題を抱えてしまう。このような問題を解決すべく、例えば特許文献5記載の方式のように固定搬送基板とその表面を移動するトナー担持体の組合せのような構造も提案されているが、機構が非常に複雑になってしまう。
【0015】
このような問題を解決するための方策として、2層の電極間に時間周期的に変化する電解を印可してトナーをトナー担持体から飛翔させてトナー担持体の回転駆動に併せて潜像担持体との対向領域にトナーを運んで現像させることが本発明者による検討結果として提案されている。
このように、従来の1成分現像ローラの代わりに、内部に2相の微細ピッチの電極群を埋め込んだローラ(以後、フレアローラと呼ぶ。)を用いて、そのローラ表面でトナーをホッピングさせる方式では、電極間の上に絶縁性の表面保護層を設けている。
【0016】
ところが、本発明者の検討によれば、このようなローラを回転駆動させると、トナー層厚規制部材とローラの摩擦帯電や、ホッピングするトナー自身とローラとの摩擦帯電、および供給ローラに印加するバイアスとフレアローラに印加するバイアスの平均値との電位差によるフレアローラ表面への電荷注入等の理由により、フレアローラの表面電位が大きく変動してしまうことが発見された。
ひいては潜像担持体との対向部で、フレアローラ表面と潜像担持体の画像部、もしくは非画像部との電位差が変動し、画像の濃度ムラ、地汚れの原因となってしまう。
【0017】
そこで、本発明の目的は、1成分系現像ローラの代わりに、2層の微細ピッチ電極群をトナー担持体に設けたフレアローラを用いる際に、フレアローラ表面での電位を一定に維持して電位差による画像の濃度ムラや地汚れの発生を防止できる構成を備えた現像装置および画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明では、潜像担持体に対向して配置されるトナー担持体と、該トナー担持体において所定間隔により並べられた複数の電極と、前記複数の電極間の電界が時間的に切り替わるように前記電極に電圧を供給する電圧供給手段とを備え、前記電極間の電界により前記トナー担持体の表面に担持されたトナーを飛翔させてクラウドを形成し、前記潜像担持体上に形成された潜像にトナーを付着させて該潜像を現像する現像装置において、前記規制部材に電圧を印加する電圧印加手段を設け、前記電圧印加手段に印加するバイアスの平均値が、トナー担持体内部の電極群に印加するバイアスの平均電位と同電位であることを特徴とする。
【0019】
請求項2記載の発明では、請求項1記載の現像装置において、 トナー担持体内部の一方の電極群に印加するバイアスが時間的に変化する波形であり、もう一方の電極群に印加するバイアスが逆位相の時間的に変化する波形であり、前記規制部材に印加するバイアスがDCバイアスであることを特徴とする。
【0020】
請求項3記載の発明では、請求項1記載の現像装置において、トナー担持体内部の一方の電極群に印加するバイアスが時間的に変化する波形であり、もう一方の電極群に印加するバイアスがDCバイアスであり、前記規制部材に印加するバイアスがDCバイアスであることを特徴とする。
【0021】
請求項4記載の発明では、請求項1記載の現像装置において、トナー担持体内部の一方の電極群に印加するバイアスが時間的に変化する波形であり、もう一方の電極群に印加するバイアスが逆位相の時間的に変化する波形であり、前記規制部材に印加するバイアスが、時間的に変化する波形であることを特徴とする。
【0022】
請求項5記載の発明では、請求項4記載の現像装置において、前記規制部材に印加するバイアスが、トナー担持体内部の一方の電極群に印加するバイアスと同一であることを特徴とする。
【0023】
請求項6記載の発明では、請求項1記載の現像装置において、トナー担持体内部の一方の電極群に印加するバイアスが、時間的に変化する波形であり、もう一方の電極群に印加するバイアスがDCバイアスであり、前記規制部材に印加するバイアスが、トナー担持体内部の一方の電極群に印加する時間的に変化する波形と同一であることを特徴とする。
【0024】
請求項7記載の発明では、請求項1〜6いずれかに記載の現像装置において、前記規制部材が、導電性を有することを特徴とする。
【0025】
請求項8記載の発明では、請求項1〜7のいずれか一つに記載の現像装置を用いて電子写真画像を形成することを特徴とする。
【0026】
請求項9記載の発明では、請求項1〜8のいずれか一つに記載の現像装置を複数備え、像担持体上で複数回の色重ねを行う構成を備えたことを特徴とする。
【0027】
請求項10記載の発明では、請求項8または9に記載の画像形成装置において、像担持体、これに対する帯電手段およびクリーニング手段のうちの少なくとも一つと、現像装置とを一体に装備したプロセスカートリッジを備えていることを
特徴とする。
【0028】
請求項11記載の発明では、請求項10に記載の画像形成装置において、前記プロセスカートリッジを複数備えて複数色の画像形成が可能なことを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、従来のクラウド現像方式に比べて、潜像の現像ニップ通過時にフレア活性(ホッピング状態変化)させる際に、トナー担持体の表面電位を一定にすることができるので、感光体上の静電潜像の画像部、非画像部との電位差を一定にすることができ、画像濃度ムラのない良好な画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を、図を参考に説明する。
図1は本発明の1つの実施形態を示す。この実施形態は、図2に示すフレア方式の現像装置100を利用して構成され、像担持体としての感光体1上に各色のトナー像を重ねて形成する画像形成装置200の例である。フレア現像方式については後で詳しく説明する。
この実施形態では、ベルト状の感光体1は、複数のローラ1A〜1Dに掛け渡され、図示しない駆動部により回転駆動される。なお、便宜上、以下の説明において一つの色の画像形成を行う作像部を対象と刷る符号を他の色の作像部においても付けるが、図中、K(黒),Y(イエロー),C(シアン),M(マゼンタ)という表示で作像部で形成される色を区別している。
【0031】
感光体1と対向して、複数色、例えばブラック、イエロー、シアン、マゼンタの画像をそれぞれ形成する複数の画像形成手段としての現像装置100が配列されている。感光体1は、まず、帯電装置2により一様に帯電されて図示しない露光手段としての書込装置3により、マゼンタの画像データで変調された光ビームによって露光されることで静電潜像が形成され、この静電潜像が現像装置(マゼンタ)100により現像されてマゼンタのトナー像となる。その後、感光体1は図示しない除電器により除電されて次の色の画像形成に備える。
【0032】
次いで、感光体1は、次の帯電装置2により一様に帯電されて図示しない露光手段としての書込装置3により、シアンの画像データで変調された光ビームによって露光されることで静電潜像が形成され、この静電潜像が現像装置(シアン)100により現像されて上記マゼンタのトナー像と重なるシアンのトナー像となる。その後、感光体1は図示しない除電器により除電されて次の画像形成に備える。
さらに感光体1は、次の帯電装置2により一様に帯電されて図示しない露光手段としての書込装置3により、イエローの画像データで変調された光ビームによって露光されることで静電潜像が形成され、この静電潜像が現像装置(イエロー)100により現像されて上記マゼンタのトナー像及び上記シアンのトナー像と重なるイエローのトナー像となる。その後、感光体1は図示しない除電器により除電されて次の画像形成に備える。
【0033】
最後に、感光体1は、次の帯電装置2により一様に帯電されて図示しない露光手段としての書込装置により、ブラックの画像データで変調された光ビームによって露光されることで静電潜像が形成され、この静電潜像が現像装置(ブラック)100により現像されて上記マゼンタのトナー像、上記シアンのトナー像及び上記イエローのトナー像と重なるブラックのトナー像となることでフルカラー画像が形成される。
【0034】
一方、図示しない給紙装置から記録紙等の記録媒体が給送され、この記録媒体は電源から転写バイアスが印加される転写手段としての転写ローラ4により感光体1上のフルカラー画像が転写される。フルカラー画像が転写された記録媒体は、定着装置によりフルカラー画像が定着され、外部へ排出される。感光体1は、フルカラー画像転写後にクリーニング手段としてのクリーナ(図示されず)により残留トナー等が除去される。
【0035】
以上に述べた実施形態では、同一の感光体上に4色分の書き込みを行うので、通常の4連タンデム方式と比較すると、原理的に位置ズレがほとんど発生せず、感光体上で色重ねができて位置ズレのない高画質のフルカラー画像を得ることができる。また、上記実施形態の現像装置を用いた色重ねシステムは、現像装置100内に装備されているトナー担持体と感光体が非接触で、かつ現像領域で交番電界がかかっていないため、次の色の現像工程が、感光体上に一度形成されたトナー像に対しては機械的にも電界的にも影響を与えないので、スキャベンジや混色などの問題が無く、高画質な作像プロセスを長期的に渡り安定して行うことができる。
【0036】
以下に、現像装置において実行されるフレア現像について説明する。なお、フレア(Flare)現像で用いるトナー担持体を以後、フレアローラと呼ぶことにする。
フレアローラの概略図を図3に示す。また、図4はフレアローラの電極部分の周方向断面の概略図である。
支持基板101A上に電極101A1、101A2が所定の間隔で配置され、その上に無機又は有機の絶縁性材料で形成した表面保護層が積層されている。なお、図4において各電極から伸びる線は各電極に電圧を印加するための導電線を表しており、各線の重なる部分のうち黒丸で示した部分だけが電気的に接続されており、他の部分は電気的に絶縁状態である。各電極に対しては、本体側の電源から2相の異なる駆動電圧が印加される。
【0037】
また、図5はフレアローラ電極部の平面展開図である。これらの図からわかるようにフレアローラは、トナーをホッピングさせるための電界を発生する2相の電極群を有し、偶数番目の電極群と奇数番目の電極群にそれぞれ図示しない駆動回路から一例としては図6(B)に示すような逆位相の駆動波形が印加され、2相の電極間に時間周期的な電位差が形成される。
そしてフレアローラは回転駆動され、回転軸の一方に奇数番電極が接続され、回転軸のもう一方に偶数番電極が接続されている。
【0038】
なお、図2の現像装置は、本発明の画像形装置に使われる現像装置の一例である。図2において、現像装置100には、感光体1に対して非接触な常置で対向するトナー担持体としてのフレアローラ101,フレアローラ101に担持される現像剤の層厚を規定する層厚規定部材102,フレアローラ101に現像剤(トナー)を供給する供給ローラ103,感光体1との対向位置を通過したフレアローラ101の表面に残留する現像剤を回収する回収ローラ104および回収ローラ104から現像剤を振り落とすフリッカ105および現像剤撹拌パドル106が現像ユニット内に纏めて収容されて構成されている。なお、符号107は、シールなどが用いられるトナー漏れ防止部材を示している。
現像装置100では、現像剤を撹拌する撹拌パドル106このような構成により、供給ローラ103からフレアローラ101に供給されたトナーは、時間周期的に変化する電界に従ってホッピング運動を行う。そしてフレアローラ101自体の回転駆動により、像担持体である感光体1との対向領域に搬送され、感光体1上の潜像にトナーが電界からの力を受けて移動して現像が行われる。
【0039】
一方、現像に寄与しなかった不要なトナーはトナー漏れ防止部材107を通過して、回収ローラ104との対向領域へ運ばれてくる。フレアローラ101上のトナーはホッピングしているため、フレアローラ101とトナーの付着力は非常に低く、回収ローラ104で容易に回収される。そして供給ローラ104との対向領域では、再び新しいトナーがフレアローラに供給される。これを繰り返すことによって、フレアローラ101上には常に一定量のトナーがホッピングしている状態が形成される。なお、フレアローラ101の支持基板としては、ガラス基板、樹脂基板或いはセラミックス基板等の絶縁性材料からなる基板、あるいはSUS等の導電性材料からなる基板にSiO2等の絶縁膜を成膜したもの、ポリイミドなどの材料からなる基板等を適用できる。
電極は、支持基板上に、Al、Ni−Cr等の導電性材料を0.1〜10μm厚、好ましくは0.5〜2.0μmで成膜し、これをフォトリソ技術等で所要の電極形状にパターニングして形成している。
【0040】
次にトナーのホッピングを行うためのフレアローラ上の電極幅L及び電極間隔R、駆動波形形状並びに表面保護層について説明する。搬送部材における電極幅Lと電極間隔Rはトナーのホッピング効率に大きく影響する。なお電極ピッチPは、P=R+Lで表される。
電極と電極の間にあるトナーは、ほぼ水平方向の電界により、基板表面を隣接する電極まで移動する。これに対して、電極上に乗っているトナーは、少なくとも垂直方向の成分も持った初速が与えられることから、多くは基板面から離れて飛翔する。
【0041】
特に、電極端面付近にあるトナーは、隣接電極を飛び越えて移動するため、電極幅Lが広い場合には、その電極上に乗っているトナーの数が多くなり、移動距離の大きいトナーが増える。ただし、電極幅Lが広すぎると、電極中央付近の電界強度が低下するためにトナーが電極に付着し、ホッピング効率が低下することになる。そこで、本発明者らの研究結果により、低電圧で効率よくトナーをホッピングさせるための適正な電極幅があることを見出した。
【0042】
また、電極間隔Rは、距離と印加電圧の関係から電極間の電界強度を決定し、間隔Rが狭い程電界強度は当然強く、ホッピングの初速が得られやすい。しかし、電極から電極へ移動するようなトナーについては、一回の移動距離が短くなり、駆動周波数を高くしないとホッピングしている時間が短くなり、着地している時間が長くなる。
これについても、本発明者らが検討および実験した結果、低電圧で効率よくトナーを搬送、ホッピングするための適正な電極間隔があることを見出した。
さらに、電極表面を覆う表面保護層の厚さも電極表面の電界強度に影響を与え、特に垂直方向成分の電気力線への影響が大きく、ホッピングの効率を決定することをも見出した。
すなわちフレアローラの電極幅、電極間隔、表面保護層厚さの関係を適正に設定することによって、低電圧で効率的なホッピングを行うことができる。
【0043】
そこで本実施例では、図4に示す電極幅Lは、トナー平均粒径の1倍以上20倍以下とし、かつ、電極間隔Rもトナー平均粒径の1倍以上20倍以下としている。
【0044】
次に、表面保護層は、例えばSiO2、BaTiO2、TiO2、TiO4、SiON、BN、TiN、Ta2O5等を適用でき、厚さは0.5〜10μm、好ましくは0.5〜3μmで形成している。
また、SiO2等の上にポリカなどの有機材料をコートしても良い。ジルコニア、あるいは二成分現像剤のキャリアのコート材料として一般的に使われる材料、例えばシリコーン系樹脂を選択することもできる。表面保護層は、絶縁性、耐久性、フレアローラ自体の製法、及び使用するトナーとの帯電列との関係から適宜選択される。
【0045】
本発明に係る現像装置を画像形成装置に用いる場合、フレアローラとして、少なくともA4縦幅21cm、または横幅30cm以上の長尺、大面積にファインパターンの実用が必要になってくる。
【0046】
ここでフレアローラの製法についていくつか挙げる。
まず、はじめに、フレキシブルな電極パターンを形成し、それを支持ドラムに巻きつけてフレアローラを形成する場合について説明する。
フレキシブルなファインピッチ薄層電極を有する基板の一例としては、ポリイミドのベースフィルム(厚さ20〜100μm)を基材(支持基板11)として、その上に蒸着法によって0.1〜0.3μmのCu、Al、Ni−Cr等を成膜する。幅30〜60cmであれば、ロール・トゥ・ロールの装置で製造可能であり、量産性が非常に高まる。共通バスラインは同時に幅1〜5mm程度の電極を形成する。
【0047】
この蒸着法の具体的手段としては、スパッタ法、イオンプレーティング法、CVD法、イオンビーム法、等の方法が可能である。例えば、スパッタ法で電極を形成する場合において、ポリイミドとの密着性を向上させるため、Cr膜を介在させても良いし、プラズマ処理やプライマー処理によっても密着性を向上させることができる。
【0048】
また、蒸着法以外の工法としては、電着法によっても薄層電極を形成することができる。この場合は、前記ポリイミドの基材上に、まず、無電解メッキによって電極を形成する。塩化Sn、塩化Pd、塩化Niに順次浸漬して下地電極を形成した後、Ni電解液中で電解メッキを行ってNi膜1〜3μmをロール・トゥ・ロールで製造することが可能である。
【0049】
そして、これらの薄膜電極にレジスト塗布、パタンニング、エッチングで電極12を形成する。この場合、0.1〜3μm厚さの薄層電極であれば、フォトリソ、エッチング処理によって5μm〜数10μm幅、又は間隔のファインパターン電極を精度良く形成することができる。
【0050】
次いで、表面保護層13としてSiO2、BaTiO2、TiO2等を厚さ0.5〜2μmをスパッタ等により形成する。或いは、表面保護層としてPI(ポリイミド)を厚さ2〜5μmにロールコータ、その他コーティング装置により塗布し、ベークして仕上げる。PIのままで支障を生じるときには、更に最表面にSiO2、その他無機膜を0.1〜0.5μmの厚みにスパッタ等で形成すればよい。また、SiO2等の上にポリカなどの有機材料をコートしても良い。ジルコニア、あるいは二成分現像剤のキャリアのコート材料として一般的に使われる材料、例えばシリコーン系樹脂を選択することもできる。
【0051】
このようなフレキシブル基板を構成することによって、円筒形状のドラムに貼り付けたり、或いは、部分的に曲面形状にしたりすることが容易に行える。
【0052】
また、別の例としては、ポリイミドのベースフィルム(厚さ20〜100μm)を基材(支持基板11)として、その上に電極材料として、厚さ10〜20μmのCu、SUS等を使用することも可能である。この場合は、逆に金属材の上にポリイミドをロールコータにて20〜100μm塗布してベークする。その後、金属材をフォトリソ、エッチング処理によって電極12の形状にパターン化し、その電極12面上に保護層13としてポリイミドをコーティング、金属材電極の厚さ10〜20μmに応じた凹凸がある場合は平坦化して完成する。
【0053】
例えば、粘度50〜10,000cps、より好ましくは100〜300cpsのポリイミド系材料、ポリウレタン系材料をスピンコートして放置することによって、材料の表面張力によって基板の凹凸がスムージングされ、搬送部材最表面が平坦化される。
【0054】
さらに、フレキシブル基板の強度を上げた更に他の例としては、基材として厚さ20〜30μmのSUS、Al材等を用いて、その表面に絶縁層(電極と基材との間の絶縁)として5μm程度の希釈したポリイミド材をロールコータによりコーティングする。そして、このポリイミドを例えば150℃−30分という条件でのプリベーク、350℃−60分という条件でポストベークして薄層ポリイミド膜を形成して支持板11とする。
【0055】
その後、密着性向上のプラズマ処理やプライマー処理を施した後、薄層電極層としてNi−Crを0.1〜0.2μmの厚みに蒸着し、フォトリソ、エッチングによって前記数10μmのファインパターンの電極12を形成する。さらに、表面に前記SiO2、BaTiO2、TiO2等の表面保護層13を0.5〜1μm程度の厚みにスパッタにより形成することで、フレキシブル搬送部材を得ることができる。また、SiO2等の上にポリカなどの有機材料をコートしても良い。ジルコニア、あるいは二成分現像剤のキャリアのコート材料として一般的に使われる材料、例えばシリコーン系樹脂を選択することもできる。
【0056】
フレアローラの別の製法としては、はじめから円筒ドラムに対して電極をパターニング及び表面保護層を形成する方法もある。
一例として図7に示すような工法が挙げられる。
図7(a)〜(e)に示す各工程でパターン電極を形成する。図7はトナー担持ローラ31の表面を回転軸に沿った方向に見た図で、分かりやすいように平面状に展開している。
図7(a)に示す工程では、ローラ51の表面を外周旋削によって平滑に仕上げる。
図7(b)に示す工程では、溝のピッチが100[μm]、溝幅が50[μm]となるように溝53の切削を行う。図7(c)に示す工程では、溝切削を行ったローラ51に無電解ニッケル54のメッキを施し、図7(d)に示す工程では、無電解ニッケル54のメッキを施したトナー担持ローラ31の外周を旋削して不要な導体膜を取り除く。
この時点で電極41、42、43・・・(図7では、4i−1、4i、4i+1という順列表示とされている)が溝53の部分に互いに絶縁して形成される。その後、ローラ51にシリコーン系樹脂をコーティングすることでローラ51の表面を平滑にし、同時に表面保護層(厚み約5[μm]、体積抵抗率約1010[Ω・cm])55を形成してトナー担持ローラ31を製作した。このような工程により得られた電極は、図5に示す展開図の通りである。
【0057】
さらに別のフレアローラの製法としては、導電インクを用いたスクリーン印刷、インクジェットによるプリント、メッキ加工した電極の非電極部をレーザ加工で除去する等の製法も挙げられる。
フレアローラの電極パターンおよび表面保護層の作成方法は上述の方法に限定されるものではなく、電極材料としては銀、銅などを使用しても良い。
【0058】
次にその他の実験条件について説明する。
本実施例では図10に示す現像装置を用いた。なお、図10においては、部材を直接表示してある。
トナー収容部に収容されているトナーが撹拌パドルにより、供給ローラ(図10では、供給・回収ローラと表示してある)に運ばれる。さらに、供給ローラをフレアローラとカウンター方向に回転させることによって、供給ローラに回収ローラとしての機能も持たせている。もちろん、このような機能集約化を図らずに図2に示す現像装置のように供給部材と回収部材が独立していても良い。
トナー供給部材でフレアローラにトナーが供給されると、同時にトナーが摩擦帯電される。その後、トナーはフレアローラの回転とともに運ばれ、トナー層厚規制部材で付着量が規制される。規制部材には導電性のゴムブレードを用いたが、ローラ形状のものでも良い。
【0059】
付着量を規制されたトナーは飛翔(ホッピング)しながら均一に再配置されつつ、現像領域に搬送され、感光体上の静電潜像を非接触で現像する。現像に使用されなかったトナーは、現像領域を通過して、トナー漏れ防止部材を通過した後、回収ローラ(回収機能と供給機能が集約されている場合は、前述の供給ローラ)で回収され、トナー収容部に一旦戻される。
【0060】
次に現像装置でのバイアス制御について説明する。
フレアローラ表面でトナーをホッピングさせるための駆動波形として図6(b)に示すような矩形波を用いた。すなわち、2相の電極とも平均値V0が−200[V]で、周波数fが1[kHz]、ピークツーピーク電圧Vppが300[V]の矩形波バイアスである。
トナー層厚規制部材には電極の1相に印加したのと同じDCバイアスV0として−200[V]を印加した。この条件とすることが請求項2記載の発明の実施例に相当する。
本実施例のように、矩形波バイアスのDutyが50%の場合は、フレアローラに印加するバイアスの平均値Vaveは矩形波バイアスのオフセット電圧V0に一致する。
【0061】
一方、Dutyが50%でないなどの理由によって、フレアローラに印加するバイアスの平均値Vaveとオフセット電圧V0が一致しない場合には、トナー層厚規制部材に印加するバイアスはフレアローラに印加するバイアスの平均値Vaveを印加してトナー層厚規制部材を同電位にする。
【0062】
このような条件のもとで、図2の構成の現像装置でフレアローラを連続回転させても、層厚規制後のトナー付着量と帯電量は一定であった。さらに図8に示すように、クラウド電位が一定であった。
【0063】
なお、クラウド電位とは、フレアローラの上にトナーが付着した状態で、かつフレアバイアス印加状態でホッピング中の表面電位のことである。
クラウド電位が一定であると、感光体上の潜像電位との電位差が一定に保たれるので、画像濃度は安定しており地汚れも発生せず、良好な画像形成を行うことができた。
【0064】
ここで、比較例1を挙げて実施例1との画像への影響について検証を行った結果が次の通りである。
(比較例)
実施例1と同様の構成で、フレアローラに印加するバイアスは実施例1と同じにして、トナー漏れ防止部材に、−400[V]印加したところ、図9に示すように電位はローラ回転後20秒程度まで下がり続けた。このとき現像領域で適正な現像ポテンシャルが維持されないため、画像濃度が濃くなり、地汚れも発生する不具合が生じた。
また、実質的に供給ポテンシャルが初期より小さくなってしまっているため、十分な量のトナーがフレアローラに供給されない問題も発生した。
【0065】
これらの結果をまとめると、フレアローラ回転開始直後は、フレアローラ表面電位が0であるため、狙い通りの画像が得られるが、表面電位がマイナス側に大きくなると、感光体上の潜像電位との差である現像ポテンシャルが大きくなり、画像濃度が濃く不具合が生じる。
【0066】
次に別の実施例(以下、実施例2という)では、トナーをホッピングさせるための駆動波形として図6(A)に示すような矩形波を用いた。
すなわち、1相は平均値V0が−300[V]で、周波数fが1[kHz]、ピークツーピーク電圧Vppが600[V]の矩形波であり、もう1相はDCバイアスV0として−300[V]印加した。このように2相ある電極のうちの一方の電極を常に一定の電圧を印加しておき、もう一方の電極に矩形波電圧を印加しても、同様にトナーをホッピングさせることが可能である。
このようにフレアローラに印加する一方のバイアスをDCバイアスにすることで、パルスを生成する電源系統を1つ減らせ、電源の低コスト化が可能である。
このトナー層厚規制部材には、V0のDCバイアスを印加した。これが請求項3記載の発明の実施例に相当する。
【0067】
このようにしてトナー漏れ防止部材に印加するバイアスとフレアローラに印加するバイアスの平均値を同電位とすることによって、フレアローラ表面電位を常に一定に維持することができ、フレアローラを連続回転させてもクラウド電位が一定であった。そのため、画像濃度ムラのない良好な画像形成を行うことができた。
【0068】
実施例3では、トナーをホッピングさせるための駆動波形として図6(b)に示す矩形波を用いた。すなわち、2相の電極とも平均値V0が−300[V]で、周波数fが1[kHz]、ピークツーピーク電圧Vppが300[V]の互いに逆位相の矩形波バイアスである。
また、トナー漏れ防止部材には、平均値V0が−300[V]、周波数f2が500[Hz]、ピークツーピーク電圧V2が400[V]の矩形波バイアスを印加した(請求項4記載の発明の実施例に相当)。
【0069】
このような条件のもとで、フレアローラを連続回転させてもクラウド電位が一定であった。そのため、画像濃度ムラのない良好な画像形成を行うことができた。
【0070】
実施例4では、実施例3と同じ駆動波形をフレアバイアスとして印加し、トナー層厚規制部材には、フレアローラ印加バイアスのA相もしくはB相に印加する矩形波バイアスと同一の波形を印加した(請求項5記載の発明の実施例に相当)。
【0071】
このような条件のもとで、フレアローラを連続回転させてもクラウド電位が一定であった。そのため、画像濃度ムラのない良好な画像形成を行うことができた。
【0072】
実施例5では、トナーをホッピングさせるための駆動波形として図6(a)に示す矩形波を用いた。すなわち、1相は平均値V0が−300[V]で、周波数fが1[kHz]、ピークツーピーク電圧Vppが600[V]の矩形波であり、もう1相はDCバイアスV0として−300[V]を印加した。
【0073】
このときのトナー漏れ防止部材に印加するバイアスは、フレアローラの片側1相に印加した矩形波バイアスと同一の矩形波バイアスとした。(請求項6記載の発明の実施例に相当)
【0074】
このような条件のもとで、フレアローラを連続回転させてもクラウド電位が一定であった。そのため、画像濃度ムラのない良好な画像形成を行うことができた。
【0075】
最後に、これらの実験結果のように、トナー漏れ防止部材に適切な電圧を印加しないとフレアローラの表面電位が変動してしまうメカニズムについて説明しておく。
【0076】
本発明者らが鋭意研究した結果、フレアローラ表面電位の変動要因には以下の3つがあることを発見した。
1.コンデンサーモデルによる電荷の蓄積(図11、12参照)
トナーの介在をなくし、供給ローラとフレアローラの影響のみを抽出するために、供給ローラとフレアローラのみを空回転させ、フレアローラの表面電位の時間推移を測定した結果を図11に示す。この挙動は図12に示したRC直列回路のコンデンサーに蓄積される電荷が生み出すコンデンサーの表面電位に他ならない。
【0077】
すなわち、供給ローラとフレアローラ表面電位の電位差がなくなるまでフレアローラの表面保護層に電荷が蓄積し、電位が飽和する。
供給バイアス、フレアバイアスの電源をオフにして放置すれば電荷は徐々に失われるが、表面保護層は電極間の絶縁性を出すために抵抗が高いため、いったん蓄えた電荷をなかなか自然にはリークしない。したがって、除電機能を設けずにシステムを成立させるのは難しいと考えられる。
【0078】
2.フレアローラと供給ローラの摩擦帯電(図13参照)
供給ローラとフレアローラ表面電位の影響のうち、さらに、供給ローラに印加するバイアス、フレアローラに印加するバイアスの影響を取り除き、両者の摩擦帯電特性のみを調べるために、供給バイアス、2相のフレアローラ印加バイアス、をすべてグランド接続して、同様にフレアローラ表面電位の時間推移を測定した結果を図13に示す。この挙動から、フレアローラと供給ローラの摩擦帯電のみでフレアローラが−40V程度帯電することが分かった。この値、収束速度は、供給ローラとフレアローラ表面保護層の材料の帯電列の関係や、供給ローラの食い込み量なども影響する。
【0079】
3.トナーのマイナス電荷を打ち消す電荷が誘起される。(図14参照)
供給ローラから供給されたトナーがフレアローラ上でホッピングしていると、逆チャージのプラス電荷がフレアローラ表面保護層に誘起され、トナーを除去した後のフレアローラ表面電位を測定すると、プラス側の表面電位を持つ。トナーの帯電量が高いほど、この値は顕著となる。
1番目のモデルだけならば、トナーの供給・回収を機械的な掻き取りのみに頼るようにして電界を使わなければ、コンデンサーモデルによる表面電位の変動は避けることができる。
しかし、同時に2番目、3番目のモデルで表面電位が帯電しているので、フレアローラの表面電位を常に一定にして感光体との対向領域へトナーを運ぶためには、いずれにしても除電が必要であるといえる。
【0080】
なお、上記説明に用いた画像形成装置は、図1に示すように一つの感光体ベルトを対象として複数の作像部を配置した関係としているが、本発明ではこれに限らず、各色の作像部毎に感光体、帯電装置、現像装置およびクリーニング装置の少なくとも一つを纏めて収容したプロセスカートリッジを用い、各作像部での法ロセスカートリッジにおいて形成された画像を順次転写ベルトなどの中間転写手段あるいは記録媒体に対して順次重ね転写することで、多色画像を形成可能な画像形成装置を同じ画像を得るようにすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明による現像装置を適用した画像形成装置の構成を説明するための模式図である。
【図2】本発明による現像装置の構成を説明するための模式図である。
【図3】フレアローラの構成を示す斜視図である。
【図4】フレアローラにおける電極構造を説明するための模式図である。
【図5】電極構造の展開図である。
【図6】電極への印加電圧を説明するための図である。
【図7】トナー担持体の製造工程の他の一部を示す断面図である。
【図8】本発明による現像装置でのフレアローラに対するバイアス制御によるクラウド電位の変化状態を示す図である。
【図9】図8に示したフレアローラに対する比較例でのクラウド電位の変化状態を示す図である。
【図10】本発明による現像装置の別例を示す図である。
【図11】供給ローラとフレアローラのみを空回転させ、フレアローラの表面電位の時間推移を測定した結果を示す図である。
【図12】本発明の現像装置に用いられるフレアローラの電気的解析結果を説明するためのRC直列回路を示す図である。
【図13】現像装置での供給バイアス、2相のフレアローラ印加バイアス、をすべてグランド接続して、同様にフレアローラ表面電位の時間推移を測定した結果を示す図である。
【図14】フレアローラ表面電位の変動要因の一つについて説明するための図である。
【符号の説明】
【0082】
1 感光体
100 現像装置
101 トナー担持体であるフレアローラ
101A1,101A2 電極
200 画像形成装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
潜像担持体に対向して配置されるトナー担持体と、該トナー担持体において所定間隔により並べられた複数の電極と、前記複数の電極間の電界が時間的に切り替わるように前記電極に電圧を供給する電圧供給手段とを備え、前記電極間の電界により前記トナー担持体の表面に担持されたトナーを飛翔させてクラウドを形成し、前記潜像担持体上に形成された潜像にトナーを付着させて該潜像を現像する現像装置において、
前記規制部材に電圧を印加する電圧印加手段を設け、前記電圧印加手段に印加するバイアスの平均値が、トナー担持体内部の電極群に印加するバイアスの平均電位と同電位であることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
請求項1記載の現像装置において、
トナー担持体内部の一方の電極群に印加するバイアスが時間的に変化する波形であり、もう一方の電極群に印加するバイアスが逆位相の時間的に変化する波形であり、前記規制部材に印加するバイアスがDCバイアスであることを特徴とする現像装置。
【請求項3】
請求項1記載の現像装置において、
トナー担持体内部の一方の電極群に印加するバイアスが時間的に変化する波形であり、もう一方の電極群に印加するバイアスがDCバイアスであり、前記規制部材に印加するバイアスがDCバイアスであることを特徴とする現像装置。
【請求項4】
請求項1記載の現像装置において、
トナー担持体内部の一方の電極群に印加するバイアスが時間的に変化する波形であり、もう一方の電極群に印加するバイアスが逆位相の時間的に変化する波形であり、前記規制部材に印加するバイアスが、時間的に変化する波形であることを特徴とする現像装置。
【請求項5】
請求項4記載の現像装置において、
前記規制部材に印加するバイアスが、トナー担持体内部の一方の電極群に印加するバイアスと同一であることを特徴とする現像装置。
【請求項6】
請求項1記載の現像装置において、
トナー担持体内部の一方の電極群に印加するバイアスが、時間的に変化する波形であり、もう一方の電極群に印加するバイアスがDCバイアスであり、前記規制部材に印加するバイアスが、トナー担持体内部の一方の電極群に印加する時間的に変化する波形と同一であることを特徴とする現像装置。
【請求項7】
請求項1〜6いずれかに記載の現像装置において、
前記規制部材が、導電性を有することを特徴とする現像装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一つに記載の現像装置を用いて電子写真画像を形成することを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一つに記載の現像装置を複数備え、像担持体上で複数回の色重ねを行う構成を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項8または9に記載の画像形成装置において、
像担持体、これに対する帯電手段およびクリーニング手段のうちの少なくとも一つと、現像装置とを一体に装備したプロセスカートリッジを備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
請求項10に記載の画像形成装置において、
前記プロセスカートリッジを複数備えて複数色の画像形成が可能なことを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
潜像担持体に対向して配置されるトナー担持体と、該トナー担持体において所定間隔により並べられた複数の電極と、前記複数の電極間の電界が時間的に切り替わるように前記電極に電圧を供給する電圧供給手段とを備え、前記電極間の電界により前記トナー担持体の表面に担持されたトナーを飛翔させてクラウドを形成し、前記潜像担持体上に形成された潜像にトナーを付着させて該潜像を現像する現像装置において、
前記規制部材に電圧を印加する電圧印加手段を設け、前記電圧印加手段に印加するバイアスの平均値が、トナー担持体内部の電極群に印加するバイアスの平均電位と同電位であることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
請求項1記載の現像装置において、
トナー担持体内部の一方の電極群に印加するバイアスが時間的に変化する波形であり、もう一方の電極群に印加するバイアスが逆位相の時間的に変化する波形であり、前記規制部材に印加するバイアスがDCバイアスであることを特徴とする現像装置。
【請求項3】
請求項1記載の現像装置において、
トナー担持体内部の一方の電極群に印加するバイアスが時間的に変化する波形であり、もう一方の電極群に印加するバイアスがDCバイアスであり、前記規制部材に印加するバイアスがDCバイアスであることを特徴とする現像装置。
【請求項4】
請求項1記載の現像装置において、
トナー担持体内部の一方の電極群に印加するバイアスが時間的に変化する波形であり、もう一方の電極群に印加するバイアスが逆位相の時間的に変化する波形であり、前記規制部材に印加するバイアスが、時間的に変化する波形であることを特徴とする現像装置。
【請求項5】
請求項4記載の現像装置において、
前記規制部材に印加するバイアスが、トナー担持体内部の一方の電極群に印加するバイアスと同一であることを特徴とする現像装置。
【請求項6】
請求項1記載の現像装置において、
トナー担持体内部の一方の電極群に印加するバイアスが、時間的に変化する波形であり、もう一方の電極群に印加するバイアスがDCバイアスであり、前記規制部材に印加するバイアスが、トナー担持体内部の一方の電極群に印加する時間的に変化する波形と同一であることを特徴とする現像装置。
【請求項7】
請求項1〜6いずれかに記載の現像装置において、
前記規制部材が、導電性を有することを特徴とする現像装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一つに記載の現像装置を用いて電子写真画像を形成することを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一つに記載の現像装置を複数備え、像担持体上で複数回の色重ねを行う構成を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項8または9に記載の画像形成装置において、
像担持体、これに対する帯電手段およびクリーニング手段のうちの少なくとも一つと、現像装置とを一体に装備したプロセスカートリッジを備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
請求項10に記載の画像形成装置において、
前記プロセスカートリッジを複数備えて複数色の画像形成が可能なことを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−36929(P2009−36929A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−200079(P2007−200079)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]