説明

現像装置及びこれを用いた画像形成装置

【課題】トナー保持体から振動電界を用いてトナーを飛翔させる方式にあって、トナーの不要な帯電状態の変化を抑えながら電界ムラの発生を低減する。
【解決手段】トナー保持体3と、トナー保持体3から離間して配置される飛翔電極部材4と、この飛翔電極部材4とトナー保持体3との間に設けられ且つトナー保持体3からトナーを飛翔させる予め定めた振動電界を生成する振動電界生成電源8と、を備え、飛翔電極部材4は、少なくともトナー保持体3の回転軸方向に沿って延びる導電部材5と、この導電部材5のうちトナー保持体3との最近接部位及びトナー保持体3から像保持体1に向かってトナーTが通過する経路に面して最も突出した部位を少なくとも含むようにトナー保持体3側に位置する表面を連続的に絶縁被覆する絶縁被覆層6と、導電部材5のうち絶縁被覆層6に隣接して像保持体1側に位置する表面を露出させる露出部7と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像装置及びこれを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、感光体とドナーローラとの対向領域(現像領域)に対応してドナーローラから離間した電極ワイヤを設け、ドナーローラと電極ワイヤとの間に交流電圧を印加する方式が開示され、印加交流電圧の短絡防止のために電極ワイヤ上に誘電体被膜を形成することが記されている。
また、特許文献2には、像形成体に対向する現像スリーブの対向領域(現像領域)内の上流側部分に、現像スリーブに近接または接触可能な絶縁部材を介して電極を備える制御電極を設け、電極部分は少なくともその下流側端部が絶縁部材により被覆されているものが開示されている。
更に、特許文献3には、現像剤搬送体と感光体ドラムとの対向域に板状部材を屈曲して配置し、その下流側に延びるひさし部分に電極部を設けた構成が開示され、電流のリークを防ぐには電極部の露出部分に絶縁層を設けることが記されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−113474号公報(実施例、図2)
【特許文献2】特開平6−175485号公報(実施例、図8)
【特許文献3】特開平9−54486号公報(実施例、図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、トナー保持体から振動電界を用いてトナーを飛翔させる方式にあって、トナーの不要な帯電状態の変化を抑えながら電界ムラの発生を低減するようにした現像装置及びこれを用いた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、静電潜像が保持された像保持体に対向して配置され且つ帯電されたトナーを外周面に保持して回転するトナー保持体と、このトナー保持体から離間して配置される飛翔電極部材と、この飛翔電極部材と前記トナー保持体との間に設けられ且つトナー保持体からトナーを飛翔させる予め定めた振動電界を生成する振動電界生成電源と、を備え、前記飛翔電極部材は、少なくともトナー保持体の回転軸方向に沿って延びる導電部材と、この導電部材のうちトナー保持体との最近接部位及びトナー保持体から像保持体に向かってトナーが通過する経路に面して最も突出した部位を少なくとも含むようにトナー保持体側に位置する表面を連続的に絶縁被覆する絶縁被覆層と、前記導電部材のうち前記絶縁被覆層に隣接して像保持体側に位置する表面を露出させる露出部と、を有することを特徴とする現像装置である。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の現像装置のうち導電部材が一又は複数の線状部材である態様において、前記絶縁被覆層は、導電部材の表面のうちトナー保持体側に位置する表面を少なくとも半周に亘って絶縁被覆するものであることを特徴とする現像装置である。
請求項3に係る発明は、請求項1記載の現像装置のうち導電部材がトナー保持体の回転方向に沿っても延びる板状部材である態様において、前記絶縁被覆層は、導電部材の表面のうちトナー保持体から像保持体に向かってトナーが通過する経路に面した端部面及びトナー保持体側に位置する表面を絶縁被覆するものであることを特徴とする現像装置である。
請求項4に係る発明は、請求項3記載の現像装置のうちトナー保持体が曲面状の表面を有している態様において、前記絶縁被覆層は、導電部材のトナー保持体側に位置する表面のうち、トナー保持体の回転方向上流側に位置し且つトナー保持体との間の距離が離間した振動電界の弱い領域に対応した部位を除いて設けられることを特徴とする現像装置である。
請求項5に係る発明は、請求項1乃至4のいずれかに係る現像装置において、更に、トナー保持体で保持されるトナーに対し電荷注入を行う電荷注入機構を備えることを特徴とする現像装置である。
請求項6に係る発明は、請求項5に係る現像装置において、トナーは予め定めた規定電界を境に抵抗が急変する抵抗変化特性を有するものであり、前記電荷注入機構は、前記規定電界を超える電界強度を有する予め定めた注入電界にて抵抗が低下した状態のトナーに電荷注入を行い、前記振動電界生成電源は、前記振動電界を前記規定電界と前記注入電界との間に設定したことを特徴とする現像装置である。
請求項7に係る発明は、請求項6に係る現像装置において、前記飛翔電極部材は、トナー保持体と導電部材との間の電界強度が前記規定電界を超える部位に対応して絶縁被覆層を設けたものであることを特徴とする現像装置である。
【0007】
請求項8に係る発明は、静電潜像を保持して回転する像保持体と、この像保持体に対向して配置される請求項1乃至7のいずれかに係る現像装置と、を備えることを特徴とする画像形成装置である。
請求項9に係る発明は、請求項8に係る画像形成装置のうち導電部材が複数の線状部材である態様において、前記飛翔電極部材は、像保持体とトナー保持体との最近接部位を挟んでトナー保持体の回転方向に沿った領域に導電部材としての複数の線状部材を配置したものであることを特徴とする画像形成装置である。
請求項10に係る発明は、請求項8に係る画像形成装置のうち導電部材が板状部材である態様において、前記飛翔電極部材は、像保持体とトナー保持体との最近接部位に対し、トナー保持体の回転方向上流側に偏って前記板状部材を配置したものであることを特徴とする画像形成装置である。
請求項11に係る発明は、請求項8乃至10のいずれかに係る画像形成装置において、最大画像形成領域以上の周面を有する回転可能な支持体並びにこの支持体上に当該支持体の回転方向及びこの回転方向に交差する交差方向に沿って画素単位毎に行列配列された画素電極を有する像保持体と、前記交差方向に沿った各行の画素電極群のうち走査信号によって選択された行の夫々の画素電極に対応して画像信号に基づいた潜像電圧を印加することにより潜像を書き込む潜像書込手段と、を備えることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明によれば、トナー保持体から振動電界を用いてトナーを飛翔させる方式にあって、トナーの不要な帯電状態の変化を抑えながら電界ムラの発生を低減することができる。
請求項2に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、飛翔電極部材のレイアウトに対する自由度が向上する。
請求項3に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、振動電界によるトナーの飛翔量を多くすることができる。
請求項4に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、振動電界によるトナー保持体からのトナー飛翔時にも電界ムラが低減できる。
請求項5に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、安定した帯電状態のトナーがトナー保持体に保持されるようになる。
請求項6に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、飛翔されるトナーの安定した帯電状態が保たれる。
請求項7に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、トナーが飛翔電極部材に接触してもトナーの帯電状態が安定に保たれる。
請求項8に係る発明によれば、トナー保持体から振動電界を用いてトナーを飛翔させる方式にあって、トナーの不要な帯電状態の変化を抑えながら電界ムラの発生を低減することができる画像形成装置を提供できる。
請求項9に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、トナー保持体からの効果的なトナーの飛翔が促されると共に像保持体の静電潜像に対する良好な現像が実現できる。
請求項10に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、トナー保持体からの効果的なトナーの飛翔が促されると共に像保持体の静電潜像に対する良好な現像が実現できる。
請求項11に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、帯電工程を実施する際の画質低下を考慮することのない高画質画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】(a)及び(b)は本発明が適用された現像装置を用いた画像形成装置の実施の形態の概要を示す説明図である。
【図2】(a)は飛翔電極部材の作用を示す説明図であり、(b)はトナーの抵抗と電界強度との関係を示すグラフである。
【図3】実施の形態1に係る画像形成装置の全体構成の概略を示す説明図である。
【図4】実施の形態1の像保持体の構成を示す説明図である。
【図5】(a)(b)は画素電極の構成を示す説明図であり、(c)は等価回路を示す説明図である。
【図6】画素電極の駆動方式を示す説明図である。
【図7】実施の形態1の現像装置を示す説明図である。
【図8】(a)(b)は導電性トナーを示す説明図である。
【図9】(a)(b)は実施の形態1の現像時におけるトナーの挙動を示す説明図である。
【図10】実施の形態2の現像装置を示す説明図である。
【図11】(a)(b)は実施の形態2の現像時におけるトナーの挙動を示す説明図である。
【図12】(a)(b)は実施例1の結果を示すグラフであり、(c)は比較例の結果を示すグラフである。
【図13】(a)(b)は実施例2の結果を示すグラフであり、(c)(d)は比較例の結果を示すグラフである。
【図14】実施例3の結果を示すグラフである。
【図15】実施例4の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
◎実施の形態の概要
先ず、本発明が適用された現像装置の実施の形態の概要について説明する。
図1(a)及び(b)は、本発明を具現化する実施の形態モデルに係る画像形成装置の概略を示すものであって、静電潜像を保持して回転する像保持体1と、この像保持体1に対向して配置され且つ像保持体1上に保持された静電潜像に対しトナーTを飛翔させて現像する現像装置2と、を備えたものとなっている。
【0011】
ここで、現像装置2は、静電潜像が保持された像保持体1に対向して配置され且つ帯電されたトナーTを外周面に保持して回転するトナー保持体3と、このトナー保持体3から離間して配置される飛翔電極部材4と、この飛翔電極部材4とトナー保持体3との間に設けられ且つトナー保持体からトナーを飛翔させる予め定めた振動電界を生成する振動電界生成電源8と、を備え、飛翔電極部材4は、少なくともトナー保持体3の回転軸方向に沿って延びる導電部材5と、この導電部材5のうちトナー保持体3との最近接部位及びトナー保持体3から像保持体1に向かってトナーTが通過する経路に面して最も突出した部位を少なくとも含むようにトナー保持体3側に位置する表面を連続的に絶縁被覆する絶縁被覆層6と、導電部材5のうち絶縁被覆層6に隣接して像保持体1側に位置する表面を露出させる露出部7と、を有する構成のものである。
【0012】
ここで、像保持体1やトナー保持体3はドラム状、ベルト状いずれでもよく、トナーTを保持して回転できるようになっていればよい。
また、飛翔電極部材4は、像保持体1とトナー保持体3との対向領域にてトナー保持体3上のトナーTを振動電界によって飛翔できるようになっていればその形状等は特に限定されず、ワイヤ状、メッシュ状、板状等の態様が挙げられる。
更に、振動電界生成電源8は、トナー保持体3と飛翔電極部材4(具体的には導電部材5)との間に作用させる振動電界を生成するもので、振動電界としては、トナー保持体3からトナーTが飛翔できるように予め定めた電界強度を有するものであればよく、少なくとも交流電界が含まれるもので、直流電界が重畳されたものであっても差し支えない。
【0013】
そして、飛翔電極部材4の導電部材5としては金属製のものが好適であるが、例えば絶縁性の部材に導電性材料によるめっき等を施す態様であってもよい。また、絶縁被覆層6としては、導電部材5に例えば絶縁コートを施すようにしてもよいし、導電部材5の一部を例えば酸化処理等によって絶縁処理するようにしてもよい。このとき、絶縁被覆層6は、厚すぎるとトナー保持体3上のトナーTに作用する振動電界の電界強度が小さくなり、また、厚い絶縁層によって作用する電界に電界ムラが生じ易くなることから、通常、10μm以下の厚さのものが選定される。そして、このような絶縁被覆層6の絶縁性は、絶縁被覆層6に振動電界で飛翔したトナーTが接触しても、トナーT自体の帯電状態の変化が抑えられる程度の絶縁性を有していればよく、通常、1010Ω・cm以上の体積抵抗率を有するものが用いられる。
【0014】
ここで、絶縁被覆層6が設けられる部位として、「導電部材5のうちトナー保持体3との最近接部位及びトナー保持体3から像保持体1に向かってトナーTが通過する経路に面して最も突出した部位を少なくとも含むようにトナー保持体3側に位置する表面を連続的に絶縁被覆する」としたのは、振動電界による高エネルギ状態にあるトナーTが導電部材5表面に直接接触する可能性の高い部位を意味する。
図2(a)は一例としての飛翔電極部材4が配置された模式図を示すもので、飛翔電極部材4の導電部材5とトナー保持体3との間の振動電界生成電源8(図1参照)による振動電界Esが作用することで、トナー保持体3上のトナーTは飛翔を開始する。トナー保持体3から飛翔したトナーTは、飛翔電極部材4との衝突を繰り返しながら飛翔電極部材4の横を通って像保持体1側に向かう。このとき、飛翔電極部材4には、トナー保持体3側に位置する表面が絶縁被覆層6で覆われ、また、飛翔電極部材4のトナーTが通過する経路に面した突出端も絶縁被覆層6が設けられている。そのため、トナー保持体3から飛翔したトナーTの帯電量をqとすると、トナーTが飛翔電極部材4に接触しても絶縁被覆層6に接触することから、トナーTの帯電量はqのまま維持される。更に、トナーTが像保持体1に向かう経路で飛翔電極部材4に接触しても絶縁被覆層6に接触するため、トナーTは帯電量が保持されたまま像保持体1側に向かう。また、飛翔電極部材4に露出部7を設けたことで、飛翔電極部材4と像保持体1との間の電界Eは、トナー保持体3の回転軸方向に沿って連続して設けられた露出部7による効果が発揮され、振動電界Esより小さな電界強度であっても回転軸方向に沿って安定した電界が作用するようになり、像保持体1上に付着するトナーTの特にトナー保持体3の回転軸方向に沿ったムラは大幅に改善されるようになる。仮に、露出部7の代わりに絶縁被覆層6を設けると、トナー保持体3の回転軸方向に沿って電界ムラが発生し易くなり、像保持体1上に付着するトナーT量もその方向に沿ってムラが発生し、例えば画像ムラの発生要因となり易い。
【0015】
このような飛翔電極部材4の第一の態様としては、図1(a)に示すように、導電部材5が一又は複数の線状部材である態様において、絶縁被覆層6は、導電部材5の表面のうちトナー保持体3側に位置する表面を少なくとも半周に亘って絶縁被覆するものが挙げられる。このように線状部材を導電部材5とする代表的態様としては、ワイヤを用いるものが挙げられるが、その断面形状は円形に限らず、トナー保持体3との間で振動電界が有効に作用する形状であればよく、例えばワイヤを撚った撚り線であっても差し支えない。また、導電部材5としては、例えばトナー保持体3の回転方向に沿った方向にも設けるようにした所謂メッシュ状であっても差し支えない。このように導電部材5として線状部材を用いることで、現像装置2への飛翔電極部材4のレイアウトの自由度が向上すると共に、トナー保持体3と像保持体1とが対向する領域のうち飛翔電極部材4が配置された部位で像保持体1側へトナーTが飛翔されるようになる。更に、この態様において、絶縁被覆層6は導電部材5の半周を超える部位にまで設けるようにしても差し支えなく、露出部7が設けられていればよい。
【0016】
また、飛翔電極部材4の第二の態様としては、図1(b)に示すように、導電部材5がトナー保持体3の回転方向に沿っても延びる板状部材である態様において、絶縁被覆層6は、導電部材5の表面のうちトナー保持体3から像保持体1に向かってトナーTが通過する経路に面した端部面及びトナー保持体3側に位置する表面を絶縁被覆するものが挙げられる。このように板状部材を導電部材5とする場合、振動電界による電界強度は、特に、板状部材のエッジ効果が大きく作用するようになるが、絶縁被覆層6によって大幅に軽減される。更に、飛翔電極部材4として板状部材の導電部材5を用いる場合、飛翔電極部材4とトナー保持体3との間の振動電界をより安定化させる観点から、トナー保持体3が曲面状の表面を有している態様において、絶縁被覆層6は、導電部材5のトナー保持体3側に位置する表面のうち、トナー保持体3の回転方向上流側に位置し且つトナー保持体3との間の距離が離間した振動電界の弱い領域に対応した部位を除いて設けられることが好ましい。
【0017】
そして、トナー保持体3に保持されるトナーTがより安定した帯電状態を維持する観点からすれば、現像装置2は、更に、トナー保持体3で保持されるトナーTに対し電荷注入を行う電荷注入機構を備えることが好ましい。このような電荷注入機構としては、公知の電荷注入方式を採用するようにすればよく、トナーTが電荷注入機構によって注入帯電されることで、例えば摩擦帯電方式によって帯電させる方式に比べ、環境依存性への配慮が大幅に改善される。
【0018】
次に、本実施の形態モデルでのトナーTについて説明する。図2(b)に示すように、トナーTは、予め定めた規定電界Enを境に抵抗が急変する抵抗変化特性を有するものであり、電荷注入機構は、規定電界Enを超える電界強度を有する予め定めた注入電界Eiにて抵抗が低下した状態のトナーTに電荷注入を行い、振動電界生成電源8は、振動電界Esを規定電界Enと注入電界Eiとの間に設定することが好ましい。このように、規定電界Enより大きな電界強度を有する注入電界Eiを用いることで、トナーTへの電荷注入が容易になされると共に、より大きな電界強度を有する振動電界Esによってトナー保持体3から有効にトナーTの飛翔がなされる。更に、振動電界EsによってトナーTの帯電状態が変化する虞は殆どなく、また、振動電界Esによって抵抗の低下したトナーTが飛翔電極部材4に接触しても、絶縁被覆層6によって直接導電部材5に接触する確率は大きく低減され、トナーTの帯電状態の変化が抑えられる。
【0019】
更に、飛翔電極部材4での電界ムラをより低減する観点からすれば、飛翔電極部材4は、トナー保持体3と導電部材5との間の電界強度が規定電界Enを超える部位に対応して絶縁被覆層6を設けることが好ましい。この場合、規定電界Enを超える電界強度にて抵抗の低下したトナーTが導電部材5に直接接触することがなくなり、トナーTの帯電状態はより安定に保たれる。
また、このことは、導電部材5の表面のうち規定電界En未満の部位では露出部7が設けられることから、仮に、この部位に絶縁被覆層6を設ける場合に比べて、飛翔電極部材4と例えば像保持体1との間の電界ムラが低減されるようになる。
【0020】
このような飛翔電極部材4を用いてトナー保持体3からトナーTを飛翔させる、所謂トナークラウド方式を利用する現像装置2の必要性としては、次のような点が挙げられる。
近年、高画質化を狙いとしてトナーの小径化が進んでいるが、小径化に伴いトナー一個当たりの帯電量も小さくなり、従来、静電潜像が保持された像保持体とトナーが保持されたトナー保持体との間に用いられる現像電界による静電気力(qE)が、所謂非静電気的な力である例えばファンデルワールス力と同等な大きさの範囲となりつつある。
そのため、現像時の現像電界を従来に比べ強くすることが想定される。現像電界を強くするには、現像時の間隙(像保持体とトナー保持体との間隙)を狭く、像保持体側の潜像電位とトナー保持体側の電位との電位差を大きくする必要があるが、従来から現像電界としては放電が生じない程度の十分大きな電界強度のものが用いられており、これ以上現像電界を大きくすることは困難な状況下にある。
【0021】
また、現像電界による静電気力を大きくするには、トナー一個当たりの電荷量(帯電量q)を大きくすることも想定されるが、トナーの帯電はその表面を利用するため、小径化によりトナーの表面積は二乗の割合で小さくなることを考えると困難となる。また、単に電荷量を大きくすると、静電的な付着力は、トナーの径をdとすると(q/d)の二乗に比例することから、この場合、トナーをトナー保持体から飛翔させるには却って大きな電界強度を要するようにもなる。
このような理由により、トナー保持体からトナーを飛翔させるための電極部材(飛翔電極部材に相当)を像保持体とトナー保持体との間に設け、トナー保持体との間でより強い電界強度を作用させることでトナーを飛翔させるようにした現像方式(トナークラウド現像)が提案される。
【0022】
一方、従来、トナーの帯電は摩擦帯電によるものが用いられていたが、この摩擦帯電は温度、湿度、帯電に用いる部材の表面状態等に影響され易い。中でも、湿度の影響は大きく、高湿度時と低湿度時とでその帯電量が大きく異なり、現像時の適性幅を狭める要因ともなる。
このような摩擦帯電方式に代わるトナーの帯電方式として、電荷注入(注入帯電)方式が提案されているが、このような電荷注入方式を従来のトナーに適用しようとしても困難であり、トナーとして電荷注入時に低抵抗化する特性が必要である。
本発明は、このような点を鑑み案出されたものである。
【0023】
そして、本実施の形態モデルの現像装置2を用いた画像形成装置としては、静電潜像を保持して回転する像保持体1と、この像保持体1に対向して配置される現像装置2と、を備え、この現像装置2として上述した現像装置2を用いるようにすればよい。
このような画像形成装置の第一の態様としては、例えば図1(a)に示すように、導電部材5が複数の線状部材である態様において、飛翔電極部材4は、像保持体1とトナー保持体3との最近接部位を挟んでトナー保持体3の回転方向に沿った領域に導電部材5としての複数の線状部材を配置したものが挙げられる。尚、この態様において、飛翔電極部材4は、導電部材5の像保持体1側に位置する表面の少なくとも一部に露出部7を備えるものであればよい。
【0024】
また、画像形成装置の第二の態様としては、例えば図1(b)に示すように、導電部材5が板状部材である態様において、飛翔電極部材4は、像保持体1とトナー保持体3との最近接部位に対し、トナー保持体3の回転方向上流側に偏って板状部材を配置したものが挙げられる。ここで、上流側に偏って板状部材を配置とは、トナー保持体3の回転方向下流側の板状部材の端部位置が、最近接部位より上流側にある場合、最近接部位と一致する場合、最近接部位より上流側にある場合を含むことを意味するものである。尚、例えば前記端部位置が最近接部位より下流側に配置される場合、トナー保持体3から有効にトナーTが飛翔され、飛翔したトナーTが像保持体1側に向かうような位置に前記端部位置が配置されていることは言うまでもない。
【0025】
また、このような画像形成装置において、現像時の現像濃度を高める観点から、トナー保持体3の回転速度は像保持体1の回転速度より速く設定されていることが好ましい。
更に、このような現像装置2を適用する好適な画像形成装置としては、次のものが挙げられる。すなわち、最大画像形成領域以上の周面を有する回転可能な支持体並びにこの支持体上に当該支持体の回転方向及びこの回転方向に交差する交差方向に沿って画素単位毎に行列配列された画素電極を有する像保持体1と、前記交差方向に沿った各行の画素電極群のうち走査信号によって選択された行の夫々の画素電極に対応して画像信号に基づいた潜像電圧を印加することにより潜像を書き込む潜像書込手段と、を備えるものである。このような所謂アクティブマトリクス方式の像保持体1を用いる場合、画素電極に印加する潜像電圧(潜像電位に相当)が小さい場合であっても有効な現像がなされるようになる。
【0026】
次に、図面に示す実施の形態に基づいて本発明を更に詳細に説明する。
◎実施の形態1
図3は、本発明が適用された実施の形態モデルの画像形成装置の実施の形態1を示す。
<画像形成装置の全体構成>
同図において、本実施の形態の画像形成装置は、所謂タンデム型のカラー画像形成装置であり、装置筐体15内に例えば電子写真方式にて各色成分(例えばイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K))の各色トナー像が形成される四色の像保持体20(20a〜20d)を略鉛直方向に並べて配置したものである。
四色の像保持体20a〜20dに対向する位置には、二つの張架ロール61、62に掛け渡され、記録材を吸着して搬送する記録材搬送ベルト60が設けられ、例えば張架ロール61を駆動ロールとして循環回転するようになっている。また、張架ロール62と記録材搬送ベルト60を挟んで対向する位置には、記録材を記録材搬送ベルト60に吸着するための帯電器63が設けられている。そして、各色の像保持体20の周囲には、像保持体20上に形成された静電潜像をトナーにて現像して可視像化する現像装置40と、像保持体20上の残留トナーを清掃する清掃器65とが設けられ、更に、各色の像保持体20と記録材搬送ベルト60を挟んで対向する位置には、記録材搬送ベルト60によって搬送される記録材上に像保持体20上のトナー像を転写する転写器64が夫々設けられている。尚、符号41は現像装置40(詳細は後述する)内にて像保持体20にトナーを供給する現像ロールを示している。
【0027】
また、装置筐体15内の下方には、記録材を供給する記録材供給装置70が設けられ、例えば供給容器71内に収容された記録材が、供給ロール72及び捌き機構73にて一枚毎に鉛直方向に延びる記録材搬送路74に向かって供給される。
そのため、記録材供給装置70から記録材搬送路74に供給された記録材は、記録材搬送路74の下流側に配置された位置合わせロール(レジストロール)78にて一旦位置合わせされた後、予め定めたタイミングで記録材搬送路74を更に搬送される。そして、搬送された記録材は、帯電器63によって記録材搬送ベルト60に吸着され、そのまま記録材搬送ベルト60の回転と共に搬送される。記録材搬送ベルト60上の記録材には、各色の転写器64によって夫々のトナー像が順次転写されて多重化される。トナー像が多重化された記録材は定着器76にて定着された後、排出ロール77から装置筐体15の一部で構成される記録材排出受け16に排出される。尚、記録材搬送路74には、記録材を搬送するための搬送部材(例えば搬送ロール等)78が適宜設けられる一方、記録材搬送ベルト60の出口近傍(張架ロール61近傍)には図示外の剥離部材が設けられ、記録材搬送ベルト60からの記録材の剥離が容易になされる。
【0028】
<像保持体>
次に、本実施の形態で用いられる像保持体20について詳述する。
本実施の形態における像保持体20は、図4に示すように、フィルム上に多数の画素電極34が行列配列状(所謂マトリクス状)に形成された画素電極フィルム30を回転可能な支持体である剛体ドラム21上に巻き付けて固定支持したものとなっている。
本例において、画素電極フィルム30は、例えばポリイミド系樹脂フィルム基体上に、所謂IC製造プロセス等で用いられる薄膜技術を利用して作製されたもので、画素電極34が行列配列されている。そして、このように行列配列された画素電極34は、例えば剛体ドラム21の回転方向に沿った方向にデータライン、剛体ドラム21の回転軸方向に沿った方向に走査ラインを設け、各画素電極34に対応するデータライン及び走査ラインはまとめられて適宜数のデータ用ドライバ31及び走査用ドライバ32に接続されている。尚、画素電極フィルム30は画素電極34を覆うように全体が図示外の保護膜で覆われており、また、図中符号21aは、剛体ドラム21の外周面の一部に回転軸方向に沿って開口された溝であり、本例では、画素電極フィルム30の端部がこの溝21aから剛体ドラム21の内側に入り込む構造となっている。
【0029】
−画素電極の周辺構造−
次に、画素電極フィルム30の画素電極34及びその周辺構造について説明する。
本実施の形態において、画素電極フィルム30は、図5(a)〜(c)に示すように、各画素電極34が所謂アクティブマトリクス方式に構成され、画素電極34を切り替えるスイッチング素子として例えばTFT(Thin Film Transistor)33が用いられ、蓄積容量35及び配線(ソース線Ls、ゲート線Lg等)が夫々付加されたものである。
そして、各画素電極34間の結線は、データライン毎にTFT33のソースsが結線されるソース線Ls、走査ライン毎にTFT33のゲートgが結線されるゲート線Lgとしてまとめられている。また、TFT33のドレインdには該当する画素電極34及び蓄積容量35が並列に接続され、蓄積容量35の一方はゲート線Lg毎にまとめられており、図5(c)のような等価回路を呈するように構成されている。
【0030】
画素電極フィルム30では、画素電極34がマトリクス状に多数並べられた構成のために、画素電極34の駆動回路は次のように行われる。
つまり、画素電極フィルム30には、図6に示すように、データライン及び走査ライン毎に予め定めた数量の画素電極34が配列されており、各画素電極34をスイッチングするTFT33のソースs側がデータライン毎に夫々データ用ドライバ31へ接続される一方、TFT33のゲートg側が走査ライン毎に夫々走査用ドライバ32に接続される。また、これらのデータ用ドライバ31及び走査用ドライバ32は、像保持体20に設けられた像書込制御装置100によって駆動され、像書込制御装置100によってデータ用ドライバ31及び走査用ドライバ32を駆動することで、選択された画素電極34に画像信号に基づいた潜像電圧が印加され、蓄積容量35によって保持される。尚、図6では画素電極34は省略しているが、図5(c)に示すように、TFT33と蓄積容量35との間に画素電極34が接続されていることは言うまでもない。
【0031】
<現像装置>
−現像装置の構成例−
本実施の形態において、現像装置40としては注入帯電型トナーを用いたときの構成が採用される。
本実施の形態における現像装置40は、図7に示すように、トナーが収容される現像容器40aを有し、この現像容器40aには像保持体20に対向して現像用開口40bを開設すると共に、この現像用開口40bに面して像保持体20と離間配置され且つ対向部位で同方向に回転する現像ロール41を配設し、像保持体20と現像ロール41とが対向する部位にて像保持体20上に形成された静電潜像をトナーにて現像して顕像化するものである。
そして、本実施の形態では、像保持体20と現像ロール41との間の間隙が例えば500μm、夫々の周速は例えば像保持体20が20mm/s、現像ロール41が60mm/sと現像ロール41の周速の方が速くなっている。
【0032】
また、現像ロール41の像保持体20側と異なる側には、現像ロール41との間にてトナーに電荷注入を行う電荷注入ロール43が設けられ、互いに軽く接触又は微小間隙をもって支持された状態で対向部位では互いに同方向に回転している。本例では、電荷注入ロール43の周速が現像ロール41の周速に対して約二倍になるように設定されている。そして、現像ロール41と電荷注入ロール43との間には、対向部位にあるトナーに対して電荷注入を行うための注入電界を生成する注入電界生成電源91が設けられている。つまり、本実施の形態では電荷注入ロール43や注入電界生成電源91等で電荷注入機構が構成される。
更に、現像ロール41と電荷注入ロール43との対向部位より電荷注入ロール43の回転方向に沿った上流側には、電荷注入ロール43上にトナーの薄層を形成する層規制ブレード45が設けられ、この層規制ブレード45によって電荷注入ロール43上のトナーの層厚規制がなされることで、層厚規制がなされたトナーが現像ロール41との対向部位に搬送されて電荷注入がなされる。
また、現像容器40a内の電荷注入ロール43の奥側にはトナーを撹拌するアジテータ48が設けられ、電荷注入ロール43側へのトナーの供給を行うようになっている。
【0033】
本実施の形態における現像ロール41は、例えば快削ステンレス鋼(SUM)の芯がねにゴム厚約5mmの相対的に低抵抗なシリコーンゴム層を設け、その表面を約20μm厚の相対的に高抵抗のフッ素樹脂系コート層で被覆したものを用いた。このような現像ロール41の硬さはアスカーC硬度が約50度であり、抵抗は、線圧200gf/cmの荷重で金属板上に押し付けた状態で100Vの電圧を印加したときの電流から換算すると10Ω程度であった。尚、下地のシリコーンゴム層の抵抗は、これより一桁以上低くした。
【0034】
また、層規制ブレード45は例えば厚さ0.03〜0.3mm程度のステンレスの板ばねに例えばシリコーンやEPDMゴムを接着剤等により固着したものであり、この層規制ブレード45の自由端側は電荷注入ロール43の表面に軽く接触し、固定端側は現像容器40aの一部に固定されている。
【0035】
そして、本実施の形態の現像装置40には、現像ロール41と像保持体20との対向部位に飛翔電極部材50が設けられている。また、この飛翔電極部材50は、像保持体20と現像ロール41との間隙にて現像ロール41に近い側に設けられており、本例では現像ロール41との間隙が約30μmになるように配置されている。更に、飛翔電極部材50は、線状部材からなる導電部材51を少なくとも現像ロール41の回転軸方向に沿って予め定めた間隔を持って複数本張ったものであり、例えば現像ロール41の回転軸方向の両端側にて夫々の線状部材の端部が張られた状態で支持されている。
【0036】
そして、飛翔電極部材50は、導電部材51の表面のうち現像ロール41側に位置する表面を少なくとも半周に亘って覆うように絶縁被覆層52が形成され、絶縁被覆層52がない像保持体20側に位置する表面は導電部材51の表面がそのまま露出した露出部53となっている。つまり、ここでは、導電部材51の現像ロール41に面する側は絶縁被覆され、半周を超える部分まで絶縁被覆されている。
【0037】
本例の導電部材51は、例えば線径約30μmのステンレス線が用いられ、現像ロール41から飛翔したトナーが通過できる十分広い間隔を持って張られている。また、絶縁被覆層52は、導電部材51の一部に例えば溶剤に可溶した樹脂溶液を塗布して加熱炉で溶剤を蒸発して厚さ約3μmの被膜を形成したものである。
導電部材51や絶縁被覆層52としてはこれらに限らず、導電部材51としては、例えばステンレス線の他にピアノ線やタングステン線を用いるようにしてもよく、その線径も他の線径のものを用いるようにしても差し支えない。また、これらの線材表面に例えば金めっき処理等を施したものであってもよい。一方、絶縁被覆層52に用いられる樹脂としては、例えばフェノール、PTFE、PFA、ETFAなどであってもよい。更に、絶縁被覆層52としては樹脂に限らず、例えばチタニア系やアルミナ系のセラミックコートを用いるようにしても差し支えない。そして、絶縁被覆層52の抵抗は、トナーが接触した際にトナーに対して導電部材51からの電荷注入が及ばないように、1012Ω・cm以上の抵抗が好ましい。尚、このような絶縁被覆層52を導電部材51の一部に設ける方法については、公知の技術を用いるようにすればよく、例えば一方向からのスプレー塗布やマスキング等の手法を利用すればよい。
【0038】
また、本実施の形態では、電荷注入ロール43と現像ロール41との間に設けられた注入電界生成電源91の他に、現像ロール41と導電部材51との間に振動電界を生成する振動電界生成電源90が設けられている。尚、本例では、注入電界生成電源91として例えば電荷注入ロール43側が現像ロール41側より100V低い電位になるようにしており、一方、振動電界生成電源90としては例えば現像ロール41側が接地され、導電部材51に例えば600Vpp、15kHzの矩形波が作用するようになっている。
【0039】
−トナーの構成例−
本実施の形態で用いられるトナーは、絶縁性トナーの表面に、例えばITO微粒子を付着させて導電性基体を得た後、更に、その表面に絶縁性微粉を付着させた構成のものとなっている。より具体的には、絶縁性トナーとして例えば平均粒径が6.5μmの球形状のものを用い、ITO微粒子を15wt%加えて、サンプルミル(協立理工製SK−M10型)にて12000rpmで30秒間混合し、その後、精製したラテックス微粉(絶縁性トナーと同一の樹脂)を加え、水冷されたサンプルミルにて12000rpmで30分間混合することで、トナーを作製した。尚、トナーとしては、これに限らず、注入帯電型トナーであればよく、その作製方法も公知の技術を用いるようにすればよい。
このようなトナーでは、高い電界強度の注入電界が作用すると、トナー相互間では精製したラテックス微粉による絶縁層を介して導電性基体同士が接触する形となり、この絶縁層に高電界が作用することでトンネル効果等によって導通し、トナーに対する電荷注入がなされる。
【0040】
トナーとしては、これに限らず、例えば図8(a)に示すように、導電性を有する材料からなる導電性トナー基体(導電性コア)81を有し、この導電性コア81の周囲を絶縁性の被覆層(例えば絶縁性樹脂層)82で被覆すると共に、導電性コア81の一部が露出するように絶縁性の被覆層82に適宜数の凹部83を設けたものが用いられる。このようなトナーは、重合法や各種公知のカプセル化技術等で作製することができる。このとき、導電性コア81としては、ポリエステル系樹脂やスチレンアクリル系樹脂等に導電性カーボンやITO等の透明導電粉などの導電剤を分散させたり、ポリエステル系樹脂やスチレンアクリル系樹脂等からなる粒子表面を前記導電剤により被覆することによって、作製される。
このような態様のトナーに対し高電界を作用させる低抵抗化する傾向を示す。そして、低抵抗化する電界強度については、トナーの主として凹部83の占有割合、あるいは、絶縁性の被覆層82の厚さなどに依存する。
このメカニズムについては、次のように推測される。つまり、導電性コア81が絶縁性の被覆層82にて被覆されているため、導電性コア81自体がコア同士接触することや直接電極部材等に接触することが殆どなく、絶縁性の被覆層82を介して一定の微小間隙を保つことになり、この結果、例えば高電界が作用した時、トンネル効果等により導通することによる。
【0041】
また、このようなトナーの他の態様としては、例えば図8(b)に示すように、導電性コア81を絶縁性若しくは半導電性の被覆層84にて被覆し、半導電性の被覆層84の厚さhを適宜調整することにより、トナーの抵抗を調整可能としたものが挙げられる。このとき、半導電性の被覆層84については、それ自体半導電性の材料を用いるようにしてもよいし、例えば絶縁性樹脂に、酸化チタンや酸化すず等の金属酸化物や導電性カーボンを微量含有させた半導電性樹脂を用いるようにしてもよい。そして、導電性コア81としては、例えば通常の絶縁性トナーからなる絶縁性トナー基体(絶縁性コア)の外表面近傍に導電性微粒子を付着させる態様や、絶縁性コアの内部に導電性微粒子を混入させるものなど適宜選定して差し支えない。
【0042】
<画像形成装置の作動>
次に、本実施の形態に係る画像形成装置の作動についてその概略を説明する。
−像保持体での潜像形成−
像保持体20での潜像形成は、各色の像保持体20a〜20d(図3参照)の各画素電極34(図4参照)に対して画像信号に応じた潜像電圧が印加されることで保持される。本実施の形態では、像保持体20の画像部の表面電位が例えば+50V、非画像部の表面電位が例えば−50Vになるように各潜像電圧が設定されている。
【0043】
−現像装置の作動−
次に、現像装置40での作動を説明するが、先ず、図7を用いてトナーに対する電荷注入工程を中心に説明する。
アジテータ48により撹拌されたトナーは、電荷注入ロール43側に供給された後、電荷注入ロール43の回転に伴って搬送され、層規制ブレード45にてその層厚が規制されて電荷注入ロール43上には略均一なトナー層が形成される。この均一に形成されたトナー層は、電荷注入ロール43と現像ロール41とが対向する対向部位にて互いに同方向に回転する両者間に挟まれた状態で擦られながら、注入電界生成電源91による注入電界によって電荷注入される。尚、このとき、電荷注入ロール43の周速が現像ロール41の周速より速く設定されているため、トナーへの有効な擦りがなされ、良好な電荷注入がなされる。
このような状態において、両者間に挟まれたトナーは電荷注入ロール43と接触する確率が高められ、しかも、トナーとの接触抵抗を小さくすることが可能になり、その結果、トナーの見かけ上の抵抗が小さくなり、トナーは低抵抗な状態のまま有効に電荷注入がなされる。そのため、注入電界としては、比較的低電界であってもトナーには効率的に電荷注入が行われる。
【0044】
このように、単層以下になったトナーに対して電荷注入を行うことで、トナーに対する電荷注入が効果的になされ、WST(Wrong Sign Toner:トナー本来の帯電極性とは異なる逆極性に帯電されたトナー)の発生が抑えられる。そして、電荷注入ロール43との対向部位を経た現像ロール41上には、均一な電荷注入がなされた単層以下のトナー層が形成され、現像ロール41と像保持体20との対向領域に搬送される。尚、このような電荷注入方式にあっては、トナー層間にせん断力が与えられるため、トナー同士が分極状態で重なることが防止され、注入電界が仮に高電界の場合であってもWSTの発生は防止される。
【0045】
−現像時のトナーの挙動−
次に、本実施の形態の特徴点である像保持体20と現像ロール41との対向部位でのトナーの挙動について説明する。
図9(a)は、本実施の形態における像保持体20と現像ロール41との対向部位での電気力線の様子(細線部分)を示したものであり、図中太い破線部分は、現像ロール41上のトナーの飛翔経路の一例を示したものである。また、(b)は(a)の電気力線を部分的に拡大したものを示している。尚、(a)では絶縁被覆層52を省略している。
【0046】
本実施の形態の飛翔電極部材50は、導電部材51のうち現像ロール41との最近接部位及び現像ロール41から像保持体20に向かってトナーが通過する経路に面して最も突出した部位である両横部位を少なくとも含むように現像ロール41側に位置する表面を連続的に絶縁被覆する絶縁被覆層52が設けられている。つまり、現像ロール41側に位置する表面側を含む導電部材51の半周を超える部位に絶縁被覆層52が設けられている。
【0047】
このような状況において、飛翔電極部材50(具体的には導電部材51)と現像ロール41との間に振動電界が作用することで電気力線の密度も高くなり、図9(b)に示すように、夫々の部位での電界強度は、E1>E2>E3>E4>E5の関係となる。本実施の形態では、例えば電界強度がE1、E2、E3の部位に対応して絶縁被覆層52が設けられている。一方、電界強度がE4とE5の部位には導電部材51の表面がそのまま露出した露出部53となる。尚、本例では、E1〜E3までの電界強度が使用されるトナーの規定電界を超える可能性があるものとなっている。
このように、規定電界を超える可能性がある部位であるか否かについては、例えば事前の実験等に基づいて決めておけばよく、例えば環境条件や経時に対する動作保証等を踏まえて予め余裕を持って設定するようにすればよい。
【0048】
このような構成にあって、現像ロール41上のトナーは、飛翔電極部材50(具体的には導電部材51)による電界作用が作用する領域に達すると、現像ロール41から飛翔を開始する。現像ロール41から飛翔したトナーは交流電界である振動電界によって現像ロール41と飛翔電極部材50との間で往復運動を繰り返しながら、像保持体20側に向かうようになる。更に、飛翔電極部材50と像保持体20との間でも、交流電界の作用によってトナーは幾分往復運動をした後、最終的に像保持体20の画像部に付着する。その後、像保持体20と現像ロール41との間には像保持体20側の画像部及び非画像部の電位のみが作用するため、像保持体20上の画像部に付着したトナーはそのまま安定した状態を維持する。
【0049】
ここで、飛翔電極部材50の導電部材51には、規定電界を超える電界強度の部位に対して絶縁被覆層52を設けたことで、抵抗が低下した状態のトナーが導電部材51に直接接触することが阻止され、トナーの帯電状態は保たれる。また、絶縁被覆層52のない露出部53では、導電部材51と現像ロール41、導電部材51と像保持体20との間の電界強度は絶縁被覆層52がない分安定し、安定した電界作用が維持されるようになり、電界ムラが低減する。そのため、像保持体20側に帯電状態の安定したトナーが飛翔し、電界作用も安定し、画像部では濃度が均一になり易く、非画像部へのトナー付着によるかぶり現象も抑えられた良好な画像となって現像される。
【0050】
仮に、導電部材51表面に絶縁被覆層52がない場合を想定すると、電界作用の安定性は得られるものの、現像ロール41から飛翔したトナーが低抵抗の状態のまま導電部材51に直接接触することにより、トナーの帯電状態が変化する。その結果、像保持体20の画像部での濃度変化や、非画像部に付着することによるかぶり現象などが発生する虞がある。
また、導電部材51の全周に亘って絶縁被覆層52を設ける場合を想定すると、トナーの帯電状態の変化は抑えられるものの、電界作用が不安定になり易く、電界ムラを生じ易くなり、例えば像保持体20の回転軸方向に沿っての画像濃度に対する均一性が損なわれたり、かぶり現象を生じる虞がある。更に、このような絶縁被覆層52を設けることで、絶縁被覆層52自体の電荷蓄積により、絶縁被覆層52へのトナーの堆積も生じ易く、結果的に、電界強度の小さい部位での電界ムラがより一層大きくなる。
【0051】
本実施の形態では、導電部材51表面のうち、現像ロール41との間で作用する電界強度が規定電界を超える部位に絶縁被覆層52を設けるようにしたが、規定電界以下の部位の一部に対しても絶縁被覆層52を設けるようにしてもよい。つまり、絶縁被覆層52を設ける領域として、ある程度の余裕を持たせることで、トナーの帯電状態の変化はより効果的に抑えられ、一方、規定電界以下の部位に多少絶縁被覆層52があっても、これに起因する電界ムラは、導電部材51の全周に絶縁被覆層52を設けるものに比べ、影響は小さく抑えられる。
【0052】
本実施の形態では、電荷注入ロール43と現像ロール41とは対向部位で互いに同方向に回転する態様を示したが、例えば対向部位で互いに反対方向に回転するようにしても差し支えない。
また、本実施の形態では、トナーに対する電荷注入を、電荷注入ロール43と現像ロール41との間で行う方式を示したが、例えば電荷注入ロール43に代えてトナーを現像ロール41側に供給する供給ロールとし、現像ロール41とこの供給ロールとの対向部位より現像ロール41の回転方向下流側に現像ロール41上のトナーに電荷注入を行う部材を設けるようにしてもよい。あるいは、例えば電荷注入用の部材を他に設け、トナーを保持して搬送するロール部材との間に注入電界を作用させて、トナーに電荷注入を行った後、適正に電荷注入がなされたトナーを改めて現像ロール41に供給するようにしても差し支えない。
更に、本実施の形態では、現像ロール41や像保持体20はロール形状のものを示したが、これに限らず、例えばベルト形状であっても差し支えない。
【0053】
◎実施の形態2
図10は、本発明が適用された実施の形態モデルに係る実施の形態2の現像装置40の概略を示すものであり、実施の形態1と異なる飛翔電極部材50を用いたものとなっている。尚、実施の形態1と同様の構成要素には同様の符号を付し、ここではその詳細な説明を省略する。
【0054】
同図において、本実施の形態の飛翔電極部材50は、像保持体20と現像ロール41との対向部位のうち、両者の最近接部位から現像ロール41の回転方向上流側に亘って設けられている。そのため、飛翔電極部材50と現像ロール41との間隙は現像ロール41の回転方向下流側に向かって漸減するように設定されている。更に、この飛翔電極部材50の導電部材51の現像ロール41側に位置する表面のうち、現像ロール41の回転方向下流側端部面を含む端部位置から上流側に向かう一部には絶縁被覆層52が設けられ、飛翔電極部材50の像保持体20側に位置する面は導電部材51がそのまま露出した露出部53となっており、一方、飛翔電極部材50の現像ロール41に位置する表面側で現像ロール41の回転方向上流側の一部には、絶縁被覆層52を設けずに導電部材51がそのまま露出する第二の露出部53’が設けられている。
【0055】
また、本実施の形態の飛翔電極部材50は、例えば像保持体20と現像ロール41との間隙500μmに対して、飛翔電極部材50と現像ロール41との間隙が約100μmになるように配置され、例えば現像ロール41の回転軸方向の両端部位にて飛翔電極部材50を支持している。尚、飛翔電極部材50の支持方法としてはこれに限らず、飛翔電極部材50の像保持体20側に位置する面に対して現像ロール41の回転軸方向に沿って延びる支持部材を設けるようにしても差し支えない。そして、本例では、例えば像保持体20の周速が20mm/s、現像ロール41の周速が60mm/sと、現像ロール41の周速が像保持体20の周速より速く設定されている。
【0056】
更に、本実施の形態では、現像ロール41に対して例えばVppが600Vで15kHzの矩形波が印加されるようになっており、飛翔電極部材50側(具体的には導電部材51)が接地されている。また、注入電界生成電源91は、現像ロール41に対して電荷注入ロール43側が−100Vの電位差になるように設定されている。尚、像保持体20側の画像部並びに非画像部の電位は実施の形態1と同様に設定されている。
【0057】
−現像時のトナーの挙動−
次に、本実施の形態の特徴点である像保持体20と現像ロール41との対向部位でのトナーの挙動について説明する。
図11(a)は、本実施の形態における像保持体20と現像ロール41との対向部位での電気力線の様子を示したものであり、図中太い破線部分は、現像ロール41上のトナーの飛翔経路の一例を示したものである。また、(b)は(a)の電気力線を部分的に拡大したものを示している。尚、(a)では絶縁被覆層52を省略している。
【0058】
本実施の形態では、飛翔電極部材50と現像ロール41との間隙が現像ロール41の回転方向下流側に向かって漸減する傾向にある。そのために、電気力線も下流側に向かって徐々に間隔が狭くなり、結果的に、飛翔電極部材50の先端(下流側端部)に向かって振動電界による電界強度が徐々に上昇し、(b)に示すように、電界強度はE3>E2>E1と大きくなる。また、電界強度がE1の部位より下流側では、飛翔電極部材50と現像ロール41との間である程度大きな電界作用が及ぶ領域(E4)もある。
本実施の形態では、このような飛翔電極部材50の導電部材51に対し、端部面及び現像ロール41側に位置する表面の一部に絶縁被覆層52を設けており、この例では、電界強度がE1〜E2の間及び電界強度がE1〜E4の間に相当する部位に絶縁被覆層52が設けられている。つまり、本例では、E1〜E2、E1〜E4までの電界強度が使用されるトナーの規定電界を超えるものとなっている。
【0059】
このような構成にあって、現像ロール41上のトナーは、飛翔電極部材50と現像ロール41との間の振動電界によって、その電界作用が作用する領域に達すると、現像ロール41から飛翔を開始する(本例では、間隙が約1mmとなる部位から飛翔が開始される)。現像ロール41から飛翔したトナーは、飛翔電極部材50と現像ロール41との間を適宜往復しながら徐々に飛翔電極部材50の端部に向かう。このとき、トナーの往復運動に伴い、現像ロール41上のトナーも追加される形で叩き出されるようになり、最終的に現像ロール41から飛翔するトナー量は実施の形態1のような線状部材を用いる構成のものより多くなる。
【0060】
飛翔電極部材50の端部位置では、飛翔電極部材50と現像ロール41との間の狭い空間から像保持体20側に向かってトナーが飛翔するが、導電部材51のエッジ効果も手伝って例えばE4の電界強度もある程度大きいため、多少、飛翔電極部材50と現像ロール41との間を往復しながら像保持体20側に向かう。このとき、現像ロール41と像保持体20との間には交流電界が作用することから、トナーは像保持体20と現像ロール41との間でも若干の往復運動を繰り返しながら像保持体20の画像部に付着する。
【0061】
ここで、飛翔電極部材50には、規定電界を超える電界強度の部位に対して絶縁被覆層52を設けたことで、飛翔電極部材50と現像ロール41との間で往復運動するトナーが低抵抗の状態では直接導電部材51に接触することが避けられる。また、導電部材51の現像ロール41に面する側に絶縁被覆層52のない第二の露出部53’を設けることで、導電部材51と現像ロール41との間の振動電界による電界作用がムラなく安定して行われ、現像ロール41からのトナーの飛翔は良好に安定してなされる。つまり、飛翔電極部材50の端部位置では、トナーの帯電状態が安定すると共に、トナーの飛翔量も十分確保され、更に、現像ロール41の回転軸方向にもトナー量分布がより均一化されたトナーが像保持体20に向かって飛翔する。そして、導電部材51の像保持体20に位置する表面側に露出部53を設けたことで、飛翔電極部材50の端部位置から像保持体20側へ向かうトナーに対して、導電部材51と像保持体20との間の電界作用も有効に作用し、画像部では十分な濃度が確保された画像になり、非画像部へのトナー付着によるかぶり現象が抑えられた良好な画像となって現像される。
【0062】
ここで、このような板状の導電部材51に対し絶縁被覆層52を設けない場合を想定すると、現像ロール41から飛翔したトナーが導電部材51に直接接触することでトナーの帯電状態が変化するようになる。一方、導電部材51に絶縁被覆層52を全面に設けた場合を想定すると、トナーの帯電状態の変化は抑えられるものの、電界作用の安定性が損なわれ、像保持体20の画像部での濃度ムラや非画像部でのかぶり現象が生じ易くなる。
【0063】
また、本実施の形態では導電部材51に薄い絶縁被覆層52を設けたので、現像ロール41との間に作用する電界は絶縁被覆層52の影響を殆ど受けずに、加えられた振動電界は殆どトナーに対して有効に作用する。一方、例えば絶縁被覆層52の代わりに厚い絶縁板を用いる場合を想定すると、現像ロール41から絶縁板までの距離が変わらない設定では、加えられる振動電圧の一部分のみが振動電界形成に役立つに過ぎない。更に、厚い場合には、電界ムラも発生し易くなり、安定したトナーの飛翔を確保することが困難になる。
このことは、現像ロール41と飛翔電極部材50との間を次のようにモデル化することで理解される。
現像ロール41から絶縁被覆層52表面までの空気層の誘電率をε、厚さをdとし、絶縁被覆層52の誘電率をε、厚さをdとし、面積をSとすると、各層の静電容量は、C=ε・S/d、C=ε・S/d
となる。
また、現像ロール41と導電部材51との間の電圧をV、各層に加わる電圧をV、Vとし、各層の静電容量に蓄積される電荷をQとすると、
V=V+V=Q/C+Q/C=(1/C+1/C)・Q
となる。
これらの式から、空気層の電界強度Eは、
=V/d=V/{d+(ε/ε)・d
となる。
その結果、空気層の厚さd(現像ロール41から絶縁被覆層52までの距離に相当)を一定としたとき、dが小さければε/εも小さいのでEは影響を受け難くなる。一方、dが大きくなると、Eは影響を受けて小さくなる。尚、dが大きい(厚い)とdの厚みムラも大きくなり、この厚みムラによってEのムラも目立つようになる。
本実施の形態では、導電部材51に絶縁被覆層52を設けることでこのような問題は低減される。
【0064】
本実施の形態では、飛翔電極部材50を像保持体20と現像ロール41との最近接部位から現像ロール41の回転方向上流側に延びるように設けたが、最近接部位より離れた位置から上流側に延びるように設けてもよいし、最近接部位より現像ロール41の回転方向下流側から上流側に延びるように設けても差し支えない。ただし、飛翔電極部材50の現像ロール41の回転方向下流側の端部位置は、当該端部位置から像保持体20側へ向かってトナーが通過する経路が構成される位置であることは言うまでもない。
【0065】
上述した実施の形態1では、図9に示すように、導電部材51に交流電界を加え、現像ロール41及び像保持体20を接地するようにしたが、実施の形態2のように(図11参照)、現像ロール41に交流電界を加え、導電部材51及び像保持体20を接地してもよい。この場合、導電部材51を超えて像保持体20側に向かうトナーは、現像ロール41と像保持体20との間の交流電界によって像保持体20の画像部に向かうようになり、像保持体20と現像ロール41との間の現像を支配する電界が交流電界(交流ジャンピング電界)となる。
また、上述した実施の形態2では、現像ロール41に交流電界を印加し、導電部材51及び像保持体20を接地するようにしたが、実施の形態1のように、導電部材51に交流電界を印加し、現像ロール41及び像保持体20を接地してもよい。この場合、飛翔電極部材50の端部から飛翔したトナーは、像保持体20と現像ロール41との間の直流電界によって支配されて現像される。
【0066】
また、実施の形態1や実施の形態2では、画像形成装置として四色に対応する像保持体20を用いた構成のものを示したが、これに限らず、単色のものであってもよい。
更に、像保持体20として画素電極34を使用した構成のものとしたが、例えば画素電極34を用いない感光体を適用することも可能であり、この場合、感光体側の潜像電圧(潜像電位)を小さく設定しても安定した画像が得られると共にかぶりの発生が抑えられるようになり、感光体自体の長寿命化が実現される。
【実施例】
【0067】
◎実施例1
実施の形態1の構成にて、像保持体上の画像は非画像部とした状態で、像保持体と現像ロールとの対向部位に対し通過前後の現像ロール上のトナーの帯電分布を評価した。尚、比較例として、導電部材に絶縁被覆層を設けない場合の評価も同時に行った。また、トナーは負帯電トナーを用いた。
図12(a)〜(c)は結果を示すグラフであり、(a)は通過前、(b)は通過後、(c)は比較例の通過後を示す。
【0068】
これらの結果では、対向部位の通過前後によって、実施例及び比較例共に帯電電荷の分布範囲が狭くなる傾向を示した。また、実施例では帯電電荷は、通過前に−5μC/gのトナーが一番多いものであったが、通過後には−10μC/gのトナーが最も多くなった。また、逆極性に帯電したものの量は減少した。しかしながら、全体の分布は大きな変化はなく、このことから、トナーが電極部材に接触しても帯電状態の変化は殆ど確認されないことが理解された。一方、絶縁被覆層を設けないものでは、対向部位通過後のトナーの帯電電荷は逆極性方向にシフトする傾向を示した。具体的には、トナーの帯電電荷は−2.5μC/gが一番多くなり、更に、逆極性トナー量も増加した。つまり、絶縁被覆層を設けることでトナーの帯電状態は安定するが、絶縁被覆層を設けない場合にはトナーが導電部材に接触することでトナーの帯電状態が変化したものと理解された。
【0069】
◎実施例2
実施例1と同様の構成にて、像保持体上の現像を行った場合の非画像部及び画像部へ付着したトナーの帯電分布を評価した。尚、比較例として導電部材に絶縁被覆層を設けないものでの評価も行った。
図13(a)〜(d)は結果を示すグラフであり、(a)は非画像部、(b)は画像部、(c)は比較例の非画像部、(d)は比較例の画像部を示す。
【0070】
非画像部での結果は、図12(a)(c)に示すように、実施例では非画像部(背景部)に殆どトナーの付着が確認されなかったが、比較例では多くのトナー付着が確認され、特に、逆極性トナーが多く付着していることが確認された。
一方、画像部での結果は、図12(b)(d)に示すように、実施例ではトナーの帯電分布の広がりは確認されず、適正な画像が得られることが確認されたが、比較例では帯電分布が広く、逆極性のものまで付着していることが確認された。
【0071】
このことは、飛翔電極部材を用いてトナーを飛翔させて現像する場合(トナークラウド現像)、導電部材に絶縁被覆層を設けることで大きな電界強度を有する振動電界によってもトナーの帯電状態の変化が抑えられ、安定した画像が得られると共に背景部でのかぶりの発生も抑えられることが理解された。一方、絶縁被覆層を設けない場合には、振動電界によってトナーは直接導電部材に接触するようになり、トナーの帯電状態の変化が生じ、帯電分布もより広く、逆極性トナーも出現し易く、かぶりも発生するようになる。
そのため、本件の有効性が確認された。
【0072】
更に、本件発明者らは、部分的な絶縁被覆層の有効性を確認するため、導電部材の現像ロール側に位置する表面をそのままの露出部とし、像保持体側に位置する表面に絶縁被覆層を設けた構成にて、画像評価を行った。その結果、画像部での濃度ムラが発生したり、背景部でのかぶりが見られる結果が得られた。
更に、実施の形態2の構成についても実施例と同様の評価を行ったところ、同様の結果が得られることを確認した。
【0073】
◎実施例3
本実施例は、電荷注入部材と現像ロールとの間に印加する電圧(注入電界を作用させるための電圧に相当する)と注入帯電されたトナーの電荷量(注入電荷量)との関係を評価したもので、環境条件として、通常環境(実験室)、高温高湿環境(28℃85%RH)、低温低湿環境(10℃15%RH)の三水準での測定を行った。尚、通常環境としては、特に温湿度に配慮をしなかったが、高温高湿環境と低温低湿環境の間の環境であった。
結果は、図14に示すように、環境条件に依らず、注入電荷量は印加される電圧によって増加することが確認された。このことは、抵抗依存性を有するトナーに対して注入帯電を行うことで、環境条件に左右されず、単に印加電圧によって注入電荷量が決定されることを示している。
つまり、注入帯電を行う方式を採用することで、環境変化への適性に優れることが理解された。
【0074】
◎実施例4
本実施例は、注入帯電トナーによる注入帯電方式と通常の二成分現像剤による帯電方式(摩擦帯電方式)によるトナーの帯電量が環境条件によってどう変化するかを評価したものである。
結果は、図15に示すように、注入帯電トナーでは、高温高湿環境下(28℃85%RH)で−13.0μC/g、低温低湿環境下(10℃15%RH)で−12.5μC/gの帯電量となったが、一方、二成分現像剤を用いたものでは、高温高湿環境下で−44μC/g、低温低湿環境下で−31μC/gの帯電量となった。
このことは、注入帯電トナーを用いたものでは、環境依存性が殆ど確認されず、一定の帯電量が維持されるが、摩擦帯電方式によるトナーを用いたものでは、環境条件によって帯電量に大きな差が確認され、環境依存性が高いことが理解された。
【符号の説明】
【0075】
1…像保持体,2…現像装置,3…トナー保持体,4…飛翔電極部材,5…導電部材,6…絶縁被覆層,7…露出部,8…振動電界生成電源,T…トナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電潜像が保持された像保持体に対向して配置され且つ帯電されたトナーを外周面に保持して回転するトナー保持体と、
このトナー保持体から離間して配置される飛翔電極部材と、
この飛翔電極部材と前記トナー保持体との間に設けられ且つトナー保持体からトナーを飛翔させる予め定めた振動電界を生成する振動電界生成電源と、を備え、
前記飛翔電極部材は、
少なくともトナー保持体の回転軸方向に沿って延びる導電部材と、
この導電部材のうちトナー保持体との最近接部位及びトナー保持体から像保持体に向かってトナーが通過する経路に面して最も突出した部位を少なくとも含むようにトナー保持体側に位置する表面を連続的に絶縁被覆する絶縁被覆層と、
前記導電部材のうち前記絶縁被覆層に隣接して像保持体側に位置する表面を露出させる露出部と、
を有することを特徴とする現像装置。
【請求項2】
請求項1記載の現像装置のうち導電部材が一又は複数の線状部材である態様において、
前記絶縁被覆層は、導電部材の表面のうちトナー保持体側に位置する表面を少なくとも半周に亘って絶縁被覆するものであることを特徴とする現像装置。
【請求項3】
請求項1記載の現像装置のうち導電部材がトナー保持体の回転方向に沿っても延びる板状部材である態様において、
前記絶縁被覆層は、導電部材の表面のうちトナー保持体から像保持体に向かってトナーが通過する経路に面した端部面及びトナー保持体側に位置する表面を絶縁被覆するものであることを特徴とする現像装置。
【請求項4】
請求項3記載の現像装置のうちトナー保持体が曲面状の表面を有している態様において、
前記絶縁被覆層は、導電部材のトナー保持体側に位置する表面のうち、トナー保持体の回転方向上流側に位置し且つトナー保持体との間の距離が離間した振動電界の弱い領域に対応した部位を除いて設けられることを特徴とする現像装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の現像装置において、
更に、トナー保持体で保持されるトナーに対し電荷注入を行う電荷注入機構を備えることを特徴とする現像装置。
【請求項6】
請求項5記載の現像装置において、
トナーは予め定めた規定電界を境に抵抗が急変する抵抗変化特性を有するものであり、
前記電荷注入機構は、前記規定電界を超える電界強度を有する予め定めた注入電界にて抵抗が低下した状態のトナーに電荷注入を行い、
前記振動電界生成電源は、前記振動電界を前記規定電界と前記注入電界との間に設定したことを特徴とする現像装置。
【請求項7】
請求項6記載の現像装置において、
前記飛翔電極部材は、トナー保持体と導電部材との間の電界強度が前記規定電界を超える部位に対応して絶縁被覆層を設けたものであることを特徴とする現像装置。
【請求項8】
静電潜像を保持して回転する像保持体と、
この像保持体に対向して配置される請求項1乃至7のいずれかに記載の現像装置と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項8記載の画像形成装置のうち導電部材が複数の線状部材である態様において、
前記飛翔電極部材は、像保持体とトナー保持体との最近接部位を挟んでトナー保持体の回転方向に沿った領域に導電部材としての複数の線状部材を配置したものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項8記載の画像形成装置のうち導電部材が板状部材である態様において、
前記飛翔電極部材は、像保持体とトナー保持体との最近接部位に対し、トナー保持体の回転方向上流側に偏って前記板状部材を配置したものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
請求項8乃至10のいずれかに記載の画像形成装置において、
最大画像形成領域以上の周面を有する回転可能な支持体並びにこの支持体上に当該支持体の回転方向及びこの回転方向に交差する交差方向に沿って画素単位毎に行列配列された画素電極を有する像保持体と、
前記交差方向に沿った各行の画素電極群のうち走査信号によって選択された行の夫々の画素電極に対応して画像信号に基づいた潜像電圧を印加することにより潜像を書き込む潜像書込手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−197549(P2011−197549A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66480(P2010−66480)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】