説明

現像装置及び画像形成装置

【課題】媒体に残像が形成されるのを防止することができ、画像品位を向上させることができるようにする。
【解決手段】第1のローラ161と、第2のローラ162と、第3のローラ163と、現像ベルト164とを有する。現像ベルト164は、第1、第2のローラ161、162間の対向部D2において像担持体と、第1、第3のローラ161、163間の接触部において現像剤供給部材と当接させられる。前記対向部D2において、現像ベルト164上の現像剤が前記像担持体に付着させられる。前記接触部において、現像ベルト164に現像剤が供給され、現像剤供給部材に現像剤が回収される。現像ベルト164上に残留した現像剤が、次の現像のプロセスにおいて、そのまま像担持体に付着することがなくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式を利用したプリンタ、複写機、ファクシミリ装置、複合機等の画像形成装置、例えば、プリンタにおいては、帯電、露光、現像、転写、クリーニング、除電等の各プロセスが感光体ドラムの周囲で行われ、該感光体ドラム上に形成されたトナー像が媒体としての用紙に転写され、定着させられるようになっている。
【0003】
ところで、現像のプロセスを行うためにベルト式の現像装置を備えたプリンタが提供されている。該現像装置は、前記感光体ドラム上に形成された静電潜像にトナーを付着させてトナー像を形成する現像ベルト、及び該現像ベルトにトナーを供給するとともに、現像に使用されず、現像ベルト上に残留したトナーを掻き取るための現像ローラを備える。該現像ローラには、現像ベルトにトナーを供給するための電圧が印加される(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−64445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の現像装置においては、前記現像ローラに印加される電圧によって電界を形成し、帯電させたトナーを現像ベルトに付着させるようになっていて、現像ベルト上に残留したトナーを十分に掻き取ることができない。したがって、前回の現像のプロセスにおいて現像ベルト上に残留したトナーが、次の現像のプロセスにおいて、そのまま感光体ドラムに付着することがあり、その場合、用紙に残像が形成され、画像品位が低下してしまう。
【0006】
本発明は、前記従来の現像装置の問題点を解決して、媒体に残像が形成されるのを防止することができ、画像品位を向上させることができる現像装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのために、本発明の現像装置においては、第1のローラと、第2のローラと、第3のローラと、前記第1〜第3のローラによって張設され、第1〜第3のローラのうちの所定のローラに回転が伝達されるのに伴って走行させられる現像ベルトとを有する。
【0008】
そして、該現像ベルトは、第1、第2のローラ間の所定の箇所に設定された対向部において像担持体と対向させられ、第1、第3のローラ間の所定の箇所に設定された接触部において現像剤供給部材と当接させられる。
【0009】
また、前記対向部において、現像ベルト上の現像剤が前記像担持体に付着させられる。
【0010】
そして、前記接触部において、現像剤供給部材から現像ベルトに現像剤が供給され、現像ベルトから現像剤供給部材に現像剤が回収される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、現像装置においては、第1のローラと、第2のローラと、第3のローラと、前記第1〜第3のローラによって張設され、第1〜第3のローラのうちの所定のローラに回転が伝達されるのに伴って走行させられる現像ベルトとを有する。
【0012】
そして、該現像ベルトは、第1、第2のローラ間の所定の箇所に設定された対向部において像担持体と対向させられ、第1、第3のローラ間の所定の箇所に設定された接触部において現像剤供給部材と当接させられる。
【0013】
また、前記対向部において、現像ベルト上の現像剤が前記像担持体に付着させられる。
【0014】
そして、前記接触部において、現像剤供給部材から現像ベルトに現像剤が供給され、現像ベルトから現像剤供給部材に現像剤が回収される。
【0015】
この場合、前記対向部において、現像ベルト上の現像剤が前記像担持体に付着させられ、前記接触部において、現像剤供給部材から現像ベルトに現像剤が供給され、現像ベルトから現像剤供給部材に現像剤が回収されるので、前回の現像のプロセスにおいて現像ベルト上に残留した現像剤が、次の現像のプロセスにおいて、そのまま像担持体に付着することがなくなる。
【0016】
したがって、媒体に残像が形成されるのを防止することができ、画像品位を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施の形態における現像器の動作を説明する図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態におけるプリンタの概念図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における画像形成部の概念図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態における当接部からの距離と現像ベルト上に形成される電位との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。この場合、画像形成装置としてのプリンタについて説明する。
【0019】
図1は本発明の第1の実施の形態における現像器の動作を説明する図、図2は本発明の第1の実施の形態におけるプリンタの概念図、図3は本発明の第1の実施の形態における画像形成部の概念図である。
【0020】
図に示されるように、プリンタ内には、ブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの各色の現像剤としてのトナー14ごとに画像を形成する画像形成部Bk、Y、M、Cが配設され、該各画像形成部Bk、Y、M、Cは、画像形成ユニット15、該各画像形成ユニット15に対応させて配設された露光装置としてのLEDヘッド23及び転写部材としての転写ローラ22を備える。前記各画像形成部Bk、Y、M、Cの下方には、転写ユニット21が配設される。
【0021】
前記画像形成ユニット15は、画像形成ユニット本体15a、及び該画像形成ユニット本体15aに対して着脱自在に配設された現像剤収容部としての、かつ、現像剤カートリッジとしてのトナーカートリッジ13を備え、該トナーカートリッジ13内に前記トナー14が収容される。
【0022】
そして、前記画像形成ユニット本体15aは、ドラム状に形成され、潜像としての静電潜像を担持する像担持体としての感光体ドラム11、該感光体ドラム11の周囲に、感光体ドラム11と当接させて配設された帯電装置としての帯電ローラ12、前記感光体ドラム11の表面に形成された静電潜像を現像し、現像剤像としてのトナー像を形成する現像装置としての現像器20、及びクリーニング部材としてのクリーニングブレード19を備える。
【0023】
前記感光体ドラム11は、有機光半導体から成る感光体を表層として備え、矢印a方向に回転させられ、帯電ローラ12は、前記感光体ドラム11の感光体に電荷を与え、感光体ドラム11の表面を一様に−600〔V〕に帯電させる。そのために、前記帯電ローラ12に負の極性の電圧が印加される。また、感光体ドラム11の摩耗を少なくするために、帯電ローラ12は感光体ドラム11と連れ回りにされる。
【0024】
前記LEDヘッド23は、LED素子を光源とし、感光体ドラム11の表面に静電潜像を形成する。帯電ローラ12によって−600〔V〕に帯電させられた感光体ドラム11の表面は、LEDヘッド23によって露光され、静電潜像が形成された表面の電位は−50〔V〕にされる。なお、前記LEDヘッド23に代えてレーザを使用することもできる。
【0025】
そして、前記転写ユニット21は、駆動用のローラとしての駆動ローラ25a、従動用のローラとしてのアイドルローラ25b、前記駆動ローラ25a及びアイドルローラ25bによって走行自在に張設され、前記各感光体ドラム11と接触させて配設されたベルト部材としての転写ベルト24、該転写ベルト24を介して各感光体ドラム11と対向させて配設された前記転写ローラ22等を備える。該各転写ローラ22は、各感光体ドラム11上の各色のトナー像を、転写ベルト24によって搬送される媒体としての図示されない用紙に順次重ねて転写し、カラーのトナー像を形成する。転写後に感光体ドラム11上に残留したトナー14は、クリーニングブレード19によって掻き取られ、除去される。
【0026】
また、前記転写ユニット21の下方には、用紙を収容する媒体収容部としての給紙カセット31が配設され、該給紙カセット31の前端に配設されたホッピングローラ32によって、前記給紙カセット31から用紙が一枚ずつ繰り出され、搬送ローラ33、34を介して画像形成部Bk、Y、M、Cに送られる。
【0027】
そして、用紙の搬送方向における画像形成部Bk、Y、M、Cより下流側には、定着装置としての定着器35が配設される。該定着器35は、加熱用のローラとしての定着ローラr1及び加圧用のローラとしての加圧ローラr2を備え、定着器35において、カラーのトナー像が用紙に定着させられ、カラーの画像が形成される。カラーの画像が形成された用紙は、排出ローラ36によってプリンタの本体、すなわち、装置本体外に排出される。
【0028】
次に、現像器20について説明する。
【0029】
該現像器20は、現像ベルトユニット16、現像剤供給部材としてのトナー供給ローラ18、現像剤層規制部材としての現像ブレード17等を備え、前記現像ベルトユニット16は、いずれも金属等の導電性を有する材料から成る複数のローラ、本実施の形態においては、第1〜第3のローラ161〜163、及び該第1〜第3のローラ161〜163によって張設された現像剤担持体としての現像ベルト164を備える。
【0030】
前記トナー供給ローラ18は、第1のローラ161と第3のローラ163との間で、現像ベルト164に所定のニップ圧で当接させて配設され、矢印b方向に回転させられてトナー14を現像ベルト164に供給し、前記現像ブレード17は、第1のローラ161と対向させて現像ベルト164に当接させて配設され、現像ベルト164上にトナー14の薄層を形成する。
【0031】
そして、前記現像ベルト164は、第1のローラ161と第2のローラ162との間で感光体ドラム11と対向させて、本実施の形態においては、当接させて配設され、現像ベルト164上のトナー14を感光体ドラム11に付着させる。本実施の形態において、現像ベルト164は感光体ドラム11と当接させて配設されるようになっているが、感光体ドラム11と対向させて配設することもできる。
【0032】
前記第1のローラ161は、駆動ローラとして機能し、駆動部としての図示されない駆動モータから回転を受けて回転させられ、現像ベルト164を矢印c方向に走行させる。また、第2、第3のローラ162、163は、従動ローラとして機能し、現像ベルト164の走行に伴って従動して回転させられる。そのために、第2、第3のローラ162、163のうちのいずれか一方は付勢部材としての図示されないコイルばね等によって第1のローラ161から離れる方向に向けて付勢され、現像ベルト164に所定の張力が与えられる。なお、現像ベルト164は、感光体ドラム11の回転方向に対して逆方向に、トナー供給ローラ18の回転方向に対して同方向に走行させられる。
【0033】
本実施の形態においては、第1のローラ161が駆動ローラとして機能させられるが、第2のローラ162を駆動ローラとして機能させたり、第3のローラ163を駆動ローラとして機能させたりすることもできる。
【0034】
前記トナー供給ローラ18は、金属製のシャフトの周囲に弾性層を被覆することによって形成される。該弾性層は、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリイミドアミド樹脂、ウレタンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム等によって形成され、体積抵抗率が107 〔Ωcm〕以上、かつ、109 〔Ωcm〕以下にされ、表面粗さRzが5〔μm〕以上、かつ、30〔μm〕以下にされる。
【0035】
そして、前記現像ブレード17は弾性を有し、厚さが0.2〔mm〕以上、かつ、1.5〔mm〕以下の金属薄板から成り、現像ブレード17の先端は折り曲げられ、現像ベルト164に対して所定の圧力で押圧される。
【0036】
また、前記現像ベルト164は、クロロプレンゴム等によって形成され、体積抵抗率が105 〔Ωcm〕以上、かつ、108 〔Ωcm〕以下にされる。現像ベルト164の体積抵抗率が105 〔Ωcm〕未満であると、第2、第3のローラ162、163に印加された電圧によって、現像ベルト164上を電流が流れてしまう。これに対して、現像ベルト164の体積抵抗率が108 〔Ωcm〕より大きいと、後述される抵抗分割による電位の勾配を所望どおりに形成することが困難になる。また、前記現像ベルト164の表面粗さRzは、2〔μm〕以上、かつ、15〔μm〕以下にされる。
【0037】
なお、現像ベルト164を、クロロプレンゴム以外の、半導電性を有するウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリイミドアミド樹脂、ウレタンゴム、シリコーンゴム、NBRゴム等によって形成することもでき、同様に、前記現像ベルト164の体積抵抗率が105 〔Ωcm〕以上、かつ、108 〔Ωcm〕以下にされ、表面粗さRzが2〔μm〕以上、かつ、15〔μm〕以下にされる。
【0038】
前記現像ベルト164は、第1のローラ161と第3のローラ163との間の所定の箇所に設定された接触部(ニップ部)において、該接触部の長さ、すなわち、ニップ幅が2〔mm〕以上、かつ、20〔mm〕以下になるようにトナー供給ローラ18と当接させられる。前記ニップ幅が2〔mm〕未満であると、後述される当接開始部R2と当接終了部S2との電位差を十分に確保することができない。これに対して、ニップ幅が20〔mm〕より大きくなると、現像ベルト164とトナー供給ローラ18との摩擦抵抗による負荷が大きくなり、トナー14の劣化が著しくなる。
【0039】
前記現像ベルト164は、前記第1のローラ161の回転に伴って、第1のローラ161と第2のローラ162との間の所定の箇所に設定された対向部D2において感光体ドラム11と当接させられ、感光体ドラム11の回転方向に対して逆方向に、かつ、感光体ドラム11の周速度に対して1.1倍以上、かつ、1.3倍以下の周速度で矢印c方向に走行させられる。
【0040】
また、現像ベルト164は、走行に伴い、分離部R1で第3のローラ163から離れ、当接部S1で第1のローラ161と接触し、分離部R1と当接部S1との間における当接開始部R2でトナー供給ローラ18との当接を開始し、当接終了部S2でトナー供給ローラ18との当接を終了する。
【0041】
すなわち、現像ベルト164は、当接開始部R2から当接終了部S2までの間でトナー供給ローラ18と当接させられる。なお、前記当接開始部R2は、前記現像ベルト164の走行方向における前記接触部の上流側の端部に、当接終了部S2は、前記現像ベルト164の走行方向における前記接触部の下流側の端部にそれぞれ形成される。
【0042】
なお、本実施の形態において、第1のローラ161は、現像ベルト164の走行性を高くするために、金属製のシャフトの周囲に導電性を有する弾性層を被覆することによって形成されるが、弾性層を被覆するほかに、シャフトにサンドブラスト処理、ローレット加工等を施すこともできる。
【0043】
また、本実施の形態において、前記トナー14は、一成分のものが使用され、ポリエステル、ポリスチレン等の樹脂成分、着色剤、離型剤、帯電制御剤等から成るトナー本体、及び該トナー本体の表層に添加されたシリカ等の外添剤から成り、粉砕法又は重合法の製造方法によって形成される。そして、トナー14は、体積平均粒径が3〔μm〕以上、かつ、10〔μm〕以下にされ、平均球形度φが0.90以上、かつ、0.98以下にされる。
【0044】
なお、トナー14の平均球形度φの測定は、フロー式粒子像分析装置(東亜医用電子社製、FPIA−2000)を使用して行われ、測定されたトナー粒子の球形度の総和を、測定されたトナー粒子の数(トナー検出粒子数3500個)で除算することによって算出される。また、球形度は、トナー14の凹凸の度合いを示す指標であり、
球形度=(粒子投影面積に等しい円の直径)
/(粒子投影像に外接する最小円の直径)
で表される。なお、粒子投影面積は2値化されたトナー粒子像面積である。そして、トナー14が完全な球形である場合、球形度は1.00になり、表面形状が複雑になるほど小さな値になる。
【0045】
さらに、トナー14は、帯電制御剤、外添剤等を添加することによって、ブローオフ法で測定したときに、帯電量が−60〔μQ/m〕以上、かつ、−20〔μQ/m〕以下になるように調整される。
【0046】
前記第1のローラ161には高圧電源41によって電圧VD1が、第2のローラ162には高圧電源42によって電圧VD2が、第3のローラ163には高圧電源43によって電圧VRが、トナー供給ローラ18には高圧電源44によって電圧VSが印加される。そして、各電圧VD1、VD2、VR、VSは同じ極性を有し、各電圧VD1、VD2、VR、VSの絶対値は、
|VD1|=|VD2|<|VS|<|VR|
にされる。
【0047】
次に、前記構成のプリンタの動作について説明する。
【0048】
まず、画像形成の動作が開始されると、前記駆動モータが駆動され、感光体ドラム11、第1のローラ161及びトナー供給ローラ18がそれぞれ回転させられる。それに伴って、トナーカートリッジ13から供給されたトナー14がトナー供給ローラ18の表面に付着して搬送され、当接終了部S2で現像ベルト164と接触する。
【0049】
ところで、本実施の形態においては、電圧VD1、電圧VD2が−200〔V〕に、電圧VRが−500〔V〕に、電圧VSが−350〔V〕に設定される。また、現像ベルト164の走行方向に対して逆方向において、当接部S1から分離部R1までの距離L1を12〔mm〕とし、当接部S1から当接終了部S2までの距離L2を2〔mm〕とし、当接終了部S2から当接開始部R2までの距離L3を8〔mm〕とし、当接開始部R2から分離部R1までの距離L4を2〔mm〕とすると、
L1=L2+L3+L4
になる。
【0050】
また、現像ベルト164の厚さは1〔mm〕に、感光体ドラム11の外径は30〔mm〕に、第1〜第3のローラ161〜163の外径は6〔mm〕に、トナー供給ローラ18の外径は15〔mm〕にされる。
【0051】
次に、現像ベルト164の走行方向に対して逆方向における当接部S1からの距離と現像ベルト164上に形成される電位との関係について説明する。
【0052】
図4は本発明の第1の実施の形態における当接部からの距離と現像ベルト上に形成される電位との関係を示す図である。なお、図において、横軸に距離を、縦軸に電位を採ってある。
【0053】
前述されたように、第1のローラ161には電圧VD1が、第3のローラ163には電圧VRが印加されるので、前記当接終了部S2には、当接部S1から当接終了部S2までの距離L2、及び当接終了部S2から分離部R1までの距離(L3+L4)によって、電圧VD1と電圧VRとの電位差を抵抗分割した電位V1が形成され、当接開始部R2には、当接部S1から当接開始部R2までの距離(L2+L3)、及び当接開始部R2から分離部R1までの距離L4によって、電圧VD1と電圧VRとの電位差を抵抗分割した電位V2が形成される。
【0054】
そして、電圧VD1と電圧VRとの電位差VTは、
VT=−500−(−200)
=−300〔V〕
であるので、当接終了部S2に形成される電位V1は、
V1=−200+(−300)×(2/12)
=−250〔V〕
になる。
【0055】
また、当接開始部R2に形成される電位V2は、
V2=−500−(−300)×(2/12)
=−450〔V〕
になる。
【0056】
この場合、当接終了部S2の電位V1は、トナー供給ローラ18に印加される電圧VS(−350〔V〕)と同じ極性を有し、かつ、電圧VSより絶対値が小さい(|V1|<|VS|)ので、当接終了部S2において、負の極性に帯電させられたトナー14をトナー供給ローラ18から現像ベルト164に移動させるための電界が形成され、該電界によってトナー14が現像ベルト164に移動させられ、現像ベルト164に付着させられる。そして、現像ベルト164に付着したトナー14は、現像ベルト164の走行に伴って搬送され、現像ブレード17を通過する際に均一な薄層にされる。
【0057】
さらに、電圧VD1及び電圧VD2は同じ極性及び値を有するので、現像ベルト164が第1のローラ161から離れる分離部D1と、現像ベルト164が第2のローラ162と接触する当接部D3との間において現像ベルト164に形成される電位は、−200〔V〕になる。したがって、前記対向部D2に形成される電位V3は、
V3=−200〔V〕
になる。
【0058】
この場合、電位V3は、感光体ドラム11の静電潜像を反転現像によって現像するのに適した値になり、現像ベルト164上のトナー14は、対向部D2において、感光体ドラム11に付着させられる。すなわち、対向部D2に形成される電位V3は−200〔V〕であり、感光体ドラム11の表面上の静電潜像が形成された部分の電位は−50〔V〕であり、感光体ドラム11の表面上の静電潜像が形成されない部分の電位は−600〔V〕であるので、負の極性に帯電させられたトナー14は、静電潜像が形成されない部分には付着せず、静電潜像が形成された部分に付着する。このようにして、静電潜像を現像することができる。また、現像に使用されず、現像ベルト164上に残留したトナー14は、現像ベルト164の走行に伴って、当接開始部R2においてトナー供給ローラ18に移動させられる。
【0059】
ところで、当接開始部R2には、前述されたように電位V2が形成される。該電位V2は、トナー供給ローラ18に印加される電圧VS(−350〔V〕)と同じ極性を有し、かつ、電圧VSより絶対値が大きい(|V2|>|VS|)ので、当接開始部R2において、負の極性に帯電させられたトナー14をトナー供給ローラ18に移動させるための電界が形成され、該電界によってトナー14が現像ベルト164からトナー供給ローラ18に移動させられ、回収される。
【0060】
その後、回収されたトナー14は、新たにトナーカートリッジ13から供給されたトナー14と共にトナー供給ローラ18の回転に伴って搬送され、当接終了部S2に送られ、前述されたように、当接終了部S2において、現像ベルト164に移動させられ、再び現像ベルト164に付着させられる。
【0061】
このようにして、当接終了部S2におけるトナー供給ローラ18から現像ベルト164へのトナー14の供給、及び当接開始部R2における現像ベルト164からトナー供給ローラ18へのトナー14の回収が繰り返し行われる。
【0062】
このように、本実施の形態においては、現像ベルト164が、第1〜第3のローラ161〜163によって張設され、第1、第2のローラ161、162間で現像ベルト164と感光体ドラム11とが当接させられ、第1、第3のローラ161、163間で現像ベルト164とトナー供給ローラ18とが当接させられ、かつ、現像ベルト164とトナー供給ローラ18との間に所定のニップ幅が形成されるので、当接開始部R2及び当接終了部S2において異なる電位を形成することができる。
【0063】
したがって、トナー供給ローラ18から現像ベルト164にトナー14を供給する電界、及び現像ベルト164からトナー供給ローラ18にトナー14を回収する電界を形成することができるので、前回の現像のプロセスにおいて現像ベルト164上に残留したトナー14が、トナー供給ローラ18によって十分に掻き取られ、次の現像のプロセスにおいて、そのまま感光体ドラム11に付着することがなくなる。その結果、用紙に残像が形成されるのを防止することができ、画像品位を向上させることができる。
【0064】
さらに、第2、第3のローラ162、163に互いに異なる電圧VD2、VRが印加されるので、当接終了部S2、当接開始部R2及び対向部D2に形成される電位V1、V2、V3を各種の値に設定することができ、現像器20の設計の自由度を高くすることができる。
【0065】
また、現像ベルト164に感光体ドラム11及びトナー供給ローラ18を当接させることによってニップ幅が形成されるので、ニップ圧を低くすることができる。したがって、感光体ドラム11、トナー供給ローラ18、現像ベルト164等の各部材が劣化したり、トナー14が劣化したりするのを抑制することができる。
【0066】
そして、電圧VD1及び電圧VD2は同じ極性及び値を有するので、分離部D1と当接部D3との間において現像ベルト164に形成される電位は一定になり、−200〔V〕になる。したがって、前記対向部D2に形成される電位V3は、現像ベルト164と感光体ドラム11とが分離部D1と当接部D3との間のいずれの箇所において当接させられても、同じ−200〔V〕になる。その結果、対向部D2の位置を容易に設定することができ、現像器20の設計の自由度を一層高くすることができる。
【0067】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、本実施の形態におけるプリンタの構造については、前記第1の実施の形態におけるプリンタと同じ構造であるので、図1〜3を援用して説明する。また、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
【0068】
この場合、第1のローラに印加される電圧VD1は+50〔V〕に、第2のローラに印加される電圧VD2は−450〔V〕に、第3のローラに印加される電圧VRは−250〔V〕に、現像剤供給部材としてのトナー供給ローラ18に印加される電圧VSは−100〔V〕に設定される。電圧VD1は、電圧VD2、VR、VSと逆の極性を有し、各電圧VD2、VR、VSの絶対値は、
|VS|<|VR|<|VD2|
にされる。
【0069】
また、現像剤担持体としての現像ベルト164の走行方向に対して逆方向において、当接部S1から分離部R1までの距離L1を12〔mm〕とし、当接部S1から当接終了部S2までの距離L2を2〔mm〕とし、当接終了部S2から当接開始部R2までの距離L3を8〔mm〕とし、当接開始部R2から分離部R1までの距離L4を2〔mm〕とすると、
L1=L2+L3+L4
になる。
【0070】
したがって、第1のローラ161には電圧VD1が、第3のローラ163には電圧VRが印加されるので、前記当接終了部S2には、当接部S1から当接終了部S2までの距離L2、及び当接終了部S2から分離部R1までの距離(L3+L4)によって、電圧VD1と電圧VRとの電位差を抵抗分割した電位V1が形成され、当接開始部R2には、当接部S1から当接開始部R2までの距離(L2+L3)、及び当接開始部R2から分離部R1までの距離L4によって、電圧VD1と電圧VRとの電位差を抵抗分割した電位V2が形成される。
【0071】
そして、電圧VD1と電圧VRとの電位差VTは、
VT=−250−(+50)
=−300〔V〕
であるので、当接終了部S2に形成される電位V1は、
V1=50+(−300)×(2/12)
=0〔V〕
になる。
【0072】
また、当接開始部R2に形成される電位V2は、
V2=−250−(−300)×(2/12)
=−200〔V〕
になる。
【0073】
この場合、当接終了部S2の電位V1は、トナー供給ローラ18に印加される電圧VS(−100〔V〕)と同じ極性を有し、かつ、電圧VSより絶対値が小さい(|V1|<|VS|)ので、当接終了部S2において、負の極性に帯電させられた現像剤としてのトナー14をトナー供給ローラ18から現像ベルト164に移動させるための電界が形成され、該電界によってトナー14が現像ベルト164に移動させられ、現像ベルト164に付着させられる。そして、現像ベルト164に付着したトナー14は、現像ベルト164の走行に伴って搬送され、現像剤層規制部材としての現像ブレード17を通過する際に均一な薄層にされる。
【0074】
ところで、現像ベルト164と像担持体としての感光体ドラム11との対向部D2を第1、第2のローラ161、162間の距離の中央に設定すると、現像ベルト164上の対向部D2に形成される電位V3は、
V3=50+(−450)×(1/2)
=−200〔V〕
になる。
【0075】
この場合、電位V3は、感光体ドラム11の潜像としての静電潜像を反転現像によって現像するのに適した値になり、現像ベルト164上のトナー14は、対向部D2において、感光体ドラム11に付着させられる。すなわち、対向部D2に形成される電位V3は−200〔V〕であり、感光体ドラム11の表面上の静電潜像が形成された部分の電位は−50〔V〕であり、感光体ドラム11の表面上の静電潜像が形成されない部分の電位は−600〔V〕であるので、負の極性に帯電させられたトナー14は、静電潜像が形成されない部分には付着せず、静電潜像が形成された部分に付着する。このようにして、静電潜像を現像することができる。また、現像に使用されず、現像ベルト164上に残留したトナー14は、現像ベルト164の走行に伴って、当接開始部R2においてトナー供給ローラ18に移動させられる。
【0076】
ところで、当接開始部R2には、前述されたように電位V2が形成される。該電位V2は、トナー供給ローラ18に印加される電圧VS(−100〔V〕)と同じ極性を有し、かつ、電圧VSより絶対値が大きい(|V2|>|VS|)ので、当接開始部R2において、負の極性に帯電させられたトナー14をトナー供給ローラ18に移動させるための電界が形成され、該電界によってトナー14が現像ベルト164からトナー供給ローラ18に移動させられ、回収される。
【0077】
その後、回収されたトナー14は、新たに現像剤収容部としての、かつ、現像剤カートリッジとしてのトナーカートリッジ13から供給されたトナー14と共にトナー供給ローラ18の回転に伴って搬送され、当接終了部S2に送られ、前述されたように、当接終了部S2において、現像ベルト164に移動させられ、再び現像ベルト164に付着させられる。
【0078】
このようにして、当接終了部S2におけるトナー供給ローラ18から現像ベルト164へのトナー14の供給、及び当接開始部R2における現像ベルト164からトナー供給ローラ18へのトナー14の回収が繰り返し行われる。
【0079】
なお、第1のローラ161を接地させ、電圧VD1を0〔V〕にすることができる。その場合、電圧VD2を−400〔V〕に、電圧VRを−300〔V〕に、電圧VSを−150〔V〕に設定すると、当接終了部S2の電位V1は−50〔V〕になる。そして、当接終了部S2の電位V1は、トナー供給ローラ18に印加される電圧VS(−150〔V〕)と同じ極性を有し、かつ、電圧VSより絶対値が小さい(|V1|<|VS|)ので、当接終了部S2において、負の極性に帯電させられたトナー14をトナー供給ローラ18から現像ベルト164に移動させるための電界が形成される。また、当接開始部R2における電位V2は、−350〔V〕になる。
【0080】
そして、現像ベルト164と感光体ドラム11との対向部D2を第1、第2のローラ161、162間の距離の中央に設定すると、現像ベルト164上の対向部D2に形成される電位V3は、−200〔V〕になる。この場合、電位V3は、感光体ドラム11の静電潜像を反転現像によって現像するのに適した値になり、現像ベルト164上のトナー14は、対向部D2において、感光体ドラム11に付着させられる。
【0081】
さらに、当接開始部R2の電位V2は、−350〔V〕になり、トナー供給ローラ18に印加される電圧VS(−150〔V〕)と同じ極性を有し、かつ、電圧VSより絶対値が大きい(|V2|>|VS|)ので、当接開始部R2において、負の極性に帯電させられたトナー14をトナー供給ローラ18に移動させるための電界が形成され、該電界によってトナー14が現像ベルト164からトナー供給ローラ18に移動させられ、回収される。
【0082】
前記各実施の形態においては、電子写真方式のカラーのプリンタについて説明しているが、本発明をモノクロのプリンタに適用することができる。また、本発明を、複写機、ファクシミリ装置、複合機等に適用することもできる。
【0083】
なお、本発明は前記各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【符号の説明】
【0084】
11 感光体ドラム
14 トナー
18 トナー供給ローラ
20 現像器
161 第1のローラ
162 第2のローラ
163 第3のローラ
164 現像ベルト
D2 対向部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第1のローラと、
(b)第2のローラと、
(c)第3のローラと、
(d)前記第1〜第3のローラによって張設され、第1〜第3のローラのうちの所定のローラに回転が伝達されるのに伴って走行させられる現像ベルトとを有するとともに、
(e)該現像ベルトは、第1、第2のローラ間の所定の箇所に設定された対向部において像担持体と対向させられ、第1、第3のローラ間の所定の箇所に設定された接触部において現像剤供給部材と当接させられ、
(f)前記対向部において、現像ベルト上の現像剤が前記像担持体に付着させられ、
(g)前記接触部において、現像剤供給部材から現像ベルトに現像剤が供給され、現像ベルトから現像剤供給部材に現像剤が回収されることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記対向部における現像ベルトに、像担持体の表面上の静電潜像が形成された部分に現像剤を付着させるための電位が形成される請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
(a)前記現像ベルトの走行方向における前記接触部の上流側の端部に当接開始部が、下流側の端部に当接終了部がそれぞれ形成され、
(b)該当接終了部において、現像剤供給部材から現像ベルトに現像剤が供給され、前記当接開始部において、現像ベルトから現像剤供給部材に現像剤が回収される請求項1又は2に記載の現像装置。
【請求項4】
(a)前記当接終了部に、前記現像剤供給部材に印加される電圧と同じ極性を有し、かつ、絶対値が前記現像剤供給部材に印加される電圧より小さい電位が形成され、
(b)前記当接開始部に、前記現像剤供給部材に印加される電圧と同じ極性を有し、かつ、絶対値が前記現像剤供給部材に印加される電圧より大きい電位が形成される請求項3に記載の現像装置。
【請求項5】
前記第1、第2のローラに、極性及び値が同じ電圧が印加される請求項1〜4のいずれか1項に記載の現像装置。
【請求項6】
前記第1のローラに印加される電圧をVD1とし、第3のローラに印加される電圧をVRとし、現像剤供給部材に印加される電圧をVSとしたとき、
(a)各電圧VD1、VR、VSは同じ極性を有し、
(b)前記各電圧VD1、VR、VSの絶対値は、
|VD1|<|VS|<|VR|
にされる請求項1〜4のいずれか1項に記載の現像装置。
【請求項7】
前記第1のローラに印加される電圧をVD1とし、第3のローラに印加される電圧をVRとし、現像剤供給部材に印加される電圧をVSとしたとき、
(a)電圧VD1は、各電圧VR、VSと逆の極性を有し、
(b)前記各電圧VR、VSの絶対値は、
|VS|<|VR|
にされる請求項1〜4のいずれか1項に記載の現像装置。
【請求項8】
前記第1のローラに印加される電圧をVD1とし、第3のローラに印加される電圧をVRとし、現像剤供給部材に印加される電圧をVSとしたとき、
(a)電圧VD1は0〔V〕にされ、
(b)各電圧VR、VSは同じ極性を有し、
(c)前記各電圧VR、VSの絶対値は、
|VS|<|VR|
にされる請求項1〜4のいずれか1項に記載の現像装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の現像装置が搭載された画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−8087(P2011−8087A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−152357(P2009−152357)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】