説明

球状多孔質ダイヤモンド粒子及びその製造方法

【課題】本発明は、球状多孔質ダイヤモンド粒子、該球状多孔質ダイヤモンド粒子の製造方法、該球状多孔質ダイヤモンド粒子が充填されているカラム、該カラムを有する液体クロマトグラフ及び該液体クロマトグラフを用いる分析方法を提供することを目的とする。
【解決手段】球状多孔質ダイヤモンド粒子は、平均粒径が0.1μm以上1mm以下である。球状多孔質ダイヤモンド粒子の製造方法は、ナノダイヤモンドを用いて球状多孔質ダイヤモンド粒子を形成する工程を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、球状多孔質ダイヤモンド粒子、球状多孔質ダイヤモンド粒子の製造方法、カラム、液体クロマトグラフ及び分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高速液体クロマトグラフィーの充填剤としては、シリカゲル充填剤、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体等のポリマー充填剤が用いられている。
【0003】
しかしながら、シリカゲル充填剤は、使用可能なpHの範囲が狭いという問題があり、ポリマー充填剤は、移動相として使用可能な溶媒の範囲が狭いという問題がある。
【0004】
非特許文献1には、粒径が3〜6μm、比表面積が153m/g、細孔径が1.2〜7.5nmの範囲内にある不規則な形状の多結晶多孔質ダイヤモンド粒子が開示されている。また、不規則な形状の多結晶多孔質ダイヤモンド粒子の製造方法として、3GPa以上の高圧、1000℃以上の高温条件下で、ナノダイヤモンドを焼結した後、凝塊物を粉砕する方法が開示されている。
【0005】
しかしながら、多結晶多孔質ダイヤモンド粒子の形状を球状にすることができないという問題がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】P.N.Nesterenko,O.N.Fedyanina,Yu.V.Volgin,Analyst,2007,132,403−405
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の従来技術が有する問題に鑑み、球状多孔質ダイヤモンド粒子、該球状多孔質ダイヤモンド粒子の製造方法、該球状多孔質ダイヤモンド粒子が充填されているカラム、該カラムを有する液体クロマトグラフ及び該液体クロマトグラフを用いる分析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の球状多孔質ダイヤモンド粒子は、平均粒径が0.1μm以上1mm以下である。
【0009】
本発明の球状多孔質ダイヤモンド粒子の製造方法は、ナノダイヤモンドを用いて球状多孔質ダイヤモンド粒子を形成する工程を有する。
【0010】
本発明のカラムは、本発明の球状多孔質ダイヤモンド粒子が充填されている。
【0011】
本発明の液体クロマトグラフは、本発明のカラムを有する。
【0012】
本発明の分析方法は、本発明の液体クロマトグラフを用いて試料を分析する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、球状多孔質ダイヤモンド粒子、該球状多孔質ダイヤモンド粒子の製造方法、該球状多孔質ダイヤモンド粒子が充填されているカラム、該カラムを有する液体クロマトグラフ及び該液体クロマトグラフを用いる分析方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ナノダイヤモンドのXPS C1sスペクトルである。
【図2】ナノダイヤモンド及び球状多孔質ダイヤモンド粒子のIRスペクトルである。
【図3】ナノダイヤモンド及びポリエチレングリコールを含む球状粒子のSEM写真である。
【図4】実施例1の球状多孔質ダイヤモンド粒子のSEM写真である。
【図5】実施例1の球状多孔質ダイヤモンド粒子のXPS C1sスペクトルである。
【図6】実施例2の球状多孔質ダイヤモンド粒子のSEM写真である。
【図7】実施例2の球状多孔質ダイヤモンド粒子のXPS C1sスペクトルである。
【図8】実施例3の球状多孔質ダイヤモンド粒子のSEM写真である。
【図9】実施例3の球状多孔質ダイヤモンド粒子のXPS C1sスペクトルである。
【図10】実施例4の球状多孔質ダイヤモンド粒子のSEM写真である。
【図11】実施例4の球状多孔質ダイヤモンド粒子のXPS C1sスペクトルである。
【図12】実施例5の球状多孔質ダイヤモンド粒子のSEM写真である。
【図13】実施例4の球状多孔質ダイヤモンド粒子を用いた場合のクロマトグラムである。
【図14】実施例5の球状多孔質ダイヤモンド粒子を用いた場合のクロマトグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明を実施するための形態を図面と共に説明する。
【0016】
本発明の球状多孔質ダイヤモンド粒子の平均粒径は、0.1μm〜1mmであり、1.5〜500μmが好ましい。
【0017】
なお、球状多孔質ダイヤモンド粒子の平均粒径は、走査型電子顕微鏡写真の視野範囲における50個の球状多孔質ダイヤモンド粒子の直径又は長径の平均値である。
【0018】
本発明の球状多孔質ダイヤモンド粒子の比表面積は、通常、10〜2000m/gであり、50〜500m/gが好ましい。
【0019】
なお、球状多孔質ダイヤモンド粒子の比表面積は、BET法を用いて測定することができる。
【0020】
本発明の球状多孔質ダイヤモンド粒子の全細孔容積は、通常、0.05〜2mL/gであり、0.5〜1.5mL/gが好ましい。
【0021】
なお、球状多孔質ダイヤモンド粒子の全細孔容積は、BJH法を用いて測定することができる。
【0022】
本発明の球状多孔質ダイヤモンド粒子の平均細孔径は、通常、1〜500nmであり、5〜50nmが好ましい。
【0023】
なお、球状多孔質ダイヤモンド粒子の平均細孔径は、比表面積及び全細孔容積から算出することができる。
【0024】
本発明の球状多孔質ダイヤモンド粒子のsp/sp比は、0〜0.3であることが好ましい。球状多孔質ダイヤモンド粒子のsp/sp比が0.3を超えると、本発明の球状多孔質ダイヤモンド粒子が充填されているカラムを有する液体クロマトグラフを用いて分析した場合に、疎水性が小さい芳香族化合物由来のピークのテーリング及び疎水性が大きい芳香族化合物の吸着が発生することがある。
【0025】
なお、球状多孔質ダイヤモンド粒子のsp/sp比は、XPS C1sスペクトルのsp炭素とsp炭素のピーク面積比から算出することができる(S.Kumaragurubaran,T.Yamada,S.Shikata,Jpn.J.Appl.Phys.,48,011602(2009)参照)。
【0026】
本発明の球状多孔質ダイヤモンド粒子は、酸素終端化されていてもよいが、水素終端化されていることが好ましい。これにより、本発明の球状多孔質ダイヤモンド粒子が充填されているカラムを有する液体クロマトグラフを用いて分析した場合に、疎水性が大きい試料由来のピークの分離度を向上させることができる。
【0027】
本発明の球状多孔質ダイヤモンド粒子は、表面にアルキル基が導入されていることが好ましい。これにより、本発明の球状多孔質ダイヤモンド粒子が充填されているカラムを有する液体クロマトグラフを用いて分析した場合に、疎水性が大きい試料由来のピークの分離度をさらに向上させることができる。
【0028】
球状多孔質ダイヤモンド粒子の表面に導入されるアルキル基としては、特に限定されないが、オクタデシル基、オクチル基、ブチル基、メチル基等が挙げられる。
【0029】
本発明の球状多孔質ダイヤモンド粒子は、表面にアルキル基以外の置換基が導入されていてもよい。
【0030】
球状多孔質ダイヤモンド粒子の表面に導入されるアルキル基以外の置換基としては、特に限定されないが、フェニル基、アミノ基、シアノ基、スルホ基、ヒドロキシル基、カルボニル基、カルボキシル基等が挙げられる。
【0031】
本発明の球状多孔質ダイヤモンド粒子の製造方法は、ナノダイヤモンドを用いて球状多孔質ダイヤモンド粒子を形成する工程を有する。
【0032】
ナノダイヤモンドの平均粒径は、通常、1〜900nmであり、1〜100nmが好ましい。
【0033】
ナノダイヤモンドの市販品としては、平均粒径が5nmのNanoAmando(ナノ炭素研究所社製)、平均粒径が50nmのMD−50(トーメイダイヤ社製)等が挙げられる。
【0034】
ナノダイヤモンドを用いて球状多孔質ダイヤモンド粒子を形成する方法としては、特に限定されないが、転動造粒法、押出し造粒法、圧縮造粒法、溶融造粒法、流動層造粒法、破砕造粒法、攪拌造粒法、コーティング造粒法、液相造粒法、真空凍結造粒法等が挙げられる。中でも、ナノダイヤモンドを水溶性高分子の水溶液中に分散させた分散液をスプレードライして、ナノダイヤモンド及び水溶性高分子を含む球状粒子を形成した後、球状粒子に含まれる水溶性高分子を酸化除去する方法が好ましい。
【0035】
水溶性高分子としては、特に限定されないが、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、寒天、水溶性セルロース類等が挙げられる。
【0036】
球状粒子に含まれる水溶性高分子を酸化除去する方法としては、特に限定されないが、気相酸化法、液相酸化法、酸素プラズマ処理等が挙げられる。
【0037】
本発明の球状多孔質ダイヤモンド粒子の製造方法は、化学気相成長法(CVD法)又は物理気相成長法(PVD法)を用いて、球状多孔質ダイヤモンド粒子にダイヤモンド又はダイヤモンドライクカーボンを成長させる工程をさらに有することが好ましい。これにより、球状多孔質ダイヤモンド粒子の機械的強度を向上させることができる。
【0038】
なお、球状多孔質ダイヤモンド粒子に成長させるダイヤモンドは、単結晶及び多結晶のいずれであってもよいし、単結晶及び多結晶の混合物であってもよい。
【0039】
CVD法としては、特に限定されないが、熱CVD法、熱フィラメントCVD法、電子衝撃CVD法、熱プラズマCVD法、低温プラズマCVD法等が挙げられる。また、低温プラズマCVD法としては、RFプラズマCVD法、マイクロ波プラズマCVD法、ECR−プラズマCVD法、化学輸送法等が挙げられる。
【0040】
PVD法としては、特に限定されないが、イオンビーム法、イオンビームスパッタ法、イオン化蒸着法等が挙げられる。
【0041】
本発明の球状多孔質ダイヤモンド粒子の製造方法は、ダイヤモンド又はダイヤモンドライクカーボンが成長した球状多孔質ダイヤモンド粒子を酸素終端化すると共に、グラファイトを酸化除去する工程をさらに有することが好ましい。これにより、本発明の球状多孔質ダイヤモンド粒子が充填されているカラムを有する液体クロマトグラフを用いて分析した場合に、疎水性が小さい芳香族化合物由来のピークのテーリング及び疎水性が大きい芳香族化合物の吸着の発生を抑制することができる。
【0042】
ダイヤモンドが成長した球状多孔質ダイヤモンド粒子を酸素終端化すると共に、グラファイトを酸化除去する方法としては、特に限定されないが、気相酸化法、液相酸化法、酸素プラズマ処理等が挙げられる。
【0043】
本発明の球状多孔質ダイヤモンド粒子の製造方法は、酸素終端化されると共に、グラファイトが酸化除去された球状多孔質ダイヤモンド粒子を水素終端化する工程をさらに有することが好ましい。これにより、本発明の球状多孔質ダイヤモンド粒子が充填されているカラムを有する液体クロマトグラフを用いて分析した場合に、疎水性が大きい試料由来のピークの分離度を向上させることができる。
【0044】
酸素終端化されると共に、グラファイトが酸化除去された球状多孔質ダイヤモンド粒子を水素終端化する方法としては、特に限定されないが、水素プラズマ処理、水素アニール法等が挙げられる。
【0045】
本発明の球状多孔質ダイヤモンド粒子の製造方法は、球状多孔質ダイヤモンド粒子の表面に置換基を導入する工程をさらに有することが好ましい。これにより、本発明の球状多孔質ダイヤモンド粒子が充填されているカラムを有する液体クロマトグラフを用いて分析した場合に、疎水性が大きい試料由来のピークの分離度をさらに向上させることができる。
【0046】
球状多孔質ダイヤモンド粒子の表面に置換基を導入する方法としては、特に限定されないが、水素終端化された球状多孔質ダイヤモンド粒子がアルケン中に分散されている分散液に紫外線を照射する方法等が挙げられる。
【0047】
アルケンとしては、末端に二重結合を有していれば、特に限定されないが、1−オクタデセン、1−オクテン等が挙げられる。
【0048】
なお、酸素終端化されると共に、グラファイトが酸化除去された球状多孔質ダイヤモンド粒子を水素終端化する代わりに、芳香族ジアゾニウム塩、グリニャール試薬等を用いて、表面に置換基を導入してもよい。
【0049】
また、酸素終端化されると共に、グラファイトが酸化除去された球状多孔質ダイヤモンド粒子を還元してヒドロキシル基を導入した後、シランカップリング剤を用いて、表面に置換基を導入してもよい。
【0050】
シランカップリング剤としては、特に限定されないが、モノクロロシラン、ジクロロシラン、トリクロロシラン、モノメトキシシラン、ジメトキシシラン、トリメトキシシラン、モノエトキシシラン、ジエトキシシラン、トリエトキシシラン等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0051】
本発明の球状多孔質ダイヤモンド粒子の用途としては、多孔質粒子が一般に利用される用途であれば、特に限定されないが、液体クロマトグラフのカラムに充填する充填剤、触媒担体、固体酸、固体塩基、吸着材、低屈折率材料、低誘電率材料、プロトン伝導体、断熱材、ガスセンサ材料等が挙げられる。また、本発明の球状多孔質ダイヤモンド粒子は、化粧用粉末、研磨剤として、用いてもよい。
【実施例】
【0052】
[実施例1]
数平均分子量が400のポリエチレングリコールの1質量%水溶液20mL中に、平均粒径が5nmのナノダイヤモンドNanoAmando(ナノ炭素研究所社製)1gを加えた後、超音波分散させて分散液を得た。なお、ナノダイヤモンドの平均粒径は、動的光散乱測定装置Nicomp 380(Particle Sizing Systems社製)を用いて測定した。
【0053】
図1に、ナノダイヤモンドのXPS C1sスペクトルを示す。図1のピーク面積比からsp/sp比を算出すると、0.24であった。このとき、sp炭素及びsp炭素の結合エネルギーは、それぞれ283.8eV及び284.8eVである。なお、XPS C1sスペクトルは、X線光電子分光装置(XPS)AXI−Nova SP(KRATOS社製)を用いて測定した。
【0054】
図2(a)に、ナノダイヤモンドのIRスペクトルを示す。図2(a)から、ナノダイヤモンドは、2879〜2924cm−1に、CH由来のピークを有することがわかる。なお、IRスペクトルは、赤外分光装置FT/IR−6100(JASCO社製)を用いて、KBr法により測定した。
【0055】
スプレードライヤーB−290(ビュッヒ社製)を用いて、以下の条件で、分散液をスプレードライして、ナノダイヤモンド及びポリエチレングリコールを含む球状粒子を得た。
【0056】
入口の温度:180℃
アスピレーターの設定:100%
ペリスタポンプの設定:20
ローターメーターの設定:30mm
図3に、ナノダイヤモンド及びポリエチレングリコールを含む球状粒子のSEM写真を示す。なお、走査型電子顕微鏡(SEM)としては、JSM−6500F(日本電子社製)及びFE−SEM SUPRA40(Carl Zeiss社製)を用いた。
【0057】
マッフル炉を用いて、300℃で1時間加熱して、球状粒子に含まれるポリエチレングリコールを酸化除去して、球状多孔質ダイヤモンド粒子を得た。球状多孔質ダイヤモンド粒子は、比表面積が292m/gであり、全細孔容積が0.61mL/gであり、平均細孔径が8.4nmであった。なお、比表面積、全細孔容積及び平均細孔径は、高性能・多検体・全自動ガス吸着量測定装置Autosorb−3(ユアサアイオニクス社製)を用いて測定した。
【0058】
図4に、球状多孔質ダイヤモンド粒子のSEM写真を示す。図4から、球状多孔質ダイヤモンド粒子は、球状の形状が維持されていることがわかる。また、球状多孔質ダイヤモンド粒子は、平均粒径が1.9μmであった。
【0059】
図5に、球状多孔質ダイヤモンド粒子のXPS C1sスペクトルを示す。図5のピーク面積比からsp/sp比を算出すると、0.41であった。
【0060】
図2(b)に、球状多孔質ダイヤモンド粒子のIRスペクトルを示す。図2(b)から、球状多孔質ダイヤモンド粒子は、CH由来のピークを有さず、1734cm−1にC=O由来の微小なピークを有することがわかる。
【0061】
[実施例2]
マイクロ波プラズマCVD装置AX3120(ASTeX社製)を用いて、アセトン/メタノール混合溶液(体積比9:1)を原料として、以下の条件で、実施例1の球状多孔質ダイヤモンド粒子にダイヤモンドを成長させた。球状多孔質ダイヤモンド粒子は、比表面積が295m/gであり、全細孔容積が0.60mL/gであり、平均細孔径が8.1nmであった。
【0062】
マイクロ波の出力:1300W
ステージの温度:800℃
水素ガスの流量:400sccm
圧力:50Torr
成長時間:10min
図6に、球状多孔質ダイヤモンド粒子のSEM写真を示す。図6(a)から、球状多孔質ダイヤモンド粒子は、球状の形状が維持されていることがわかる。また、球状多孔質ダイヤモンド粒子は、平均粒径が2.0μmであった。さらに、図6(b)から、球状多孔質ダイヤモンド粒子にダイヤモンドが成長し、ナノダイヤモンドが結着していることがわかる。
【0063】
図7に、球状多孔質ダイヤモンド粒子のXPS C1sスペクトルを示す。図7のピーク面積比からsp/sp比を算出すると、0.27であった。
【0064】
図2(c)に、球状多孔質ダイヤモンド粒子のIRスペクトルを示す。図2(c)から、球状多孔質ダイヤモンド粒子は、C=O由来のピークを有さず、2879〜2924cm−1に、CH由来の微小なピークを有することがわかる。
【0065】
[実施例3]
マッフル炉を用いて、425℃で5時間加熱して、実施例2の球状多孔質ダイヤモンド粒子を酸素終端化すると共に、グラファイトを酸化除去した。球状多孔質ダイヤモンド粒子は、比表面積が298m/gであり、全細孔容積が0.76mL/gであり、平均細孔径が10.2nmであった。
【0066】
図8に、球状多孔質ダイヤモンド粒子のSEM写真を示す。図8から、球状多孔質ダイヤモンド粒子は、球状の形状が維持されていることがわかる。また、球状多孔質ダイヤモンド粒子は、平均粒径が1.9μmであった。
【0067】
図9に、球状多孔質ダイヤモンド粒子のXPS C1sスペクトルを示す。図9のピーク面積比からsp/sp比を算出すると、0.06であった。このことから、グラファイトが酸化除去されたことがわかる。
【0068】
図2(d)に、球状多孔質ダイヤモンド粒子のIRスペクトルを示す。図2(d)から、球状多孔質ダイヤモンド粒子は、CH由来のピークを有さず、1786cm−1に、C=O由来のピークを有することがわかる。
【0069】
[実施例4]
マイクロ波プラズマCVD装置AX3120(ASTeX社製)を用いて、実施例3の球状多孔質ダイヤモンド粒子を、以下の条件で水素プラズマ処理して、水素終端化した。球状多孔質ダイヤモンド粒子は、比表面積が333m/gであり、全細孔容積が0.78mL/gであり、平均細孔径が9.3nmであった。
【0070】
マイクロ波の出力:500W
ステージの温度:800℃
水素ガスの流量:100sccm
圧力:25Torr
処理時間:1h
図10に、球状多孔質ダイヤモンド粒子のSEM写真を示す。図10から、球状多孔質ダイヤモンド粒子は、球状の形状が維持されていることがわかる。また、球状多孔質ダイヤモンド粒子は、平均粒径が2.4μmであった。
【0071】
図11に、球状多孔質ダイヤモンド粒子のXPS C1sスペクトルを示す。図11のピーク面積比からsp/sp比を算出すると、0.12であった。このことから、グラファイトが酸化除去されたことがわかる。
【0072】
図2(e)に、球状多孔質ダイヤモンド粒子のIRスペクトルを示す。図2(e)から、球状多孔質ダイヤモンド粒子は、C=O由来のピークを有さず、2879〜2924cm−1に、CH由来のピークを有することがわかる。
【0073】
[実施例5]
1−オクタデセン200mL中で、実施例4の球状多孔質ダイヤモンド粒子1gを攪拌しながら、低圧水銀灯SUV40GS−6(セン特殊光源社製)を用いて、以下の条件で紫外線を照射して、オクタデシル基を表面に導入した。次に、球状多孔質ダイヤモンド粒子を遠心分離した後、ヘキサンを加え、超音波分散させた。さらに、球状多孔質ダイヤモンド粒子を遠心分離した後、乾燥させた。
【0074】
電力:25W
温度:室温
波長:254nm
照射時間:7日間
図12に、球状多孔質ダイヤモンド粒子のSEM写真を示す。図12から、球状多孔質ダイヤモンド粒子は、球状の形状が維持されていることがわかる。また、球状多孔質ダイヤモンド粒子は、平均粒径が4.9μmであった。
【0075】
図2(f)に、球状多孔質ダイヤモンド粒子のIRスペクトルを示す。図2(f)から、球状多孔質ダイヤモンド粒子は、2852cm−1及び2922cm−1に、CH由来のピークを有することがわかる。このことから、オクタデシル基が表面に導入されたことがわかる。
【0076】
表1に、実施例1〜4の球状多孔質ダイヤモンド粒子の特性を示す。
【0077】
【表1】

[球状多孔質ダイヤモンド粒子の評価1]
実施例4の球状多孔質ダイヤモンド粒子を内径2mm、長さ150mmのSUS製のカラムに充填した。得られたカラムを高速液体クロマトグラフSI−2(資生堂社製)に装着し、移動相として、水及びアセトニトリルを用いて、試料を、以下の条件でグラジエント溶出させた。なお、試料として、安息香酸メチル(2.2mg/mL)、トルエン(8.7mg/mL)及びナフタレン(0.9mg/mL)を60体積%アセトニトリル水溶液に溶解させた溶液を用いた。また、移動相中のアセトニトリルの濃度は、0〜20minで0体積%から100体積%まで上昇させた後、25minまで100体積%で保持した。
【0078】
流量:100μL/min
検出器:UV検出器(254nm)
温度:40℃
圧力:17.1MPa
試料注入量:5.0μL
図13に、クロマトグラムを示す。図13から、安息香酸メチル由来のピークのテーリング及びトルエンとナフタレンの吸着の発生を抑制できることがわかる。また、トルエン由来のピークとナフタレン由来のピークの分離度が優れることがわかる。
【0079】
[球状多孔質ダイヤモンド粒子の評価2]
実施例5の球状多孔質ダイヤモンド粒子を内径2mm、長さ150mmのSUS製のカラムに充填した。得られたカラムを高速液体クロマトグラフSI−2(資生堂社製)に装着し、移動相として、40体積%アセトニトリル水溶液を用いて、試料を、以下の条件でアイソクラティック溶出させた。なお、試料として、ウラシル(0.1mg/mL)、安息香酸メチル(2.2mg/mL)、トルエン(8.7mg/mL)及びナフタレン(0.9mg/mL)を60体積%アセトニトリル水溶液に溶解させた溶液を用いた。
【0080】
流量:100μL/min
検出器:UV検出器(254nm)
温度:40℃
圧力:8.0MPa
試料注入量:2.0μL
図14に、クロマトグラムを示す。図14から、安息香酸メチル由来のピークのテーリング及びトルエンとナフタレンの吸着の発生を抑制できることがわかる。また、トルエン由来のピークとナフタレン由来のピークの分離度が優れることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径が0.1μm以上1mm以下であることを特徴とする球状多孔質ダイヤモンド粒子。
【請求項2】
sp/sp比が0以上0.3以下であることを特徴とする請求項1に記載の球状多孔質ダイヤモンド粒子。
【請求項3】
酸素終端化されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の球状多孔質ダイヤモンド粒子。
【請求項4】
水素終端化されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の球状多孔質ダイヤモンド粒子。
【請求項5】
比表面積が10m/g以上2000m/g以下であり、
全細孔容積が0.05mL/g以上2mL/g以下であり、
平均細孔径が1nm以上500nm以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の球状多孔質ダイヤモンド粒子。
【請求項6】
表面に置換基が導入されていることを特徴とする請求項1に記載の球状多孔質ダイヤモンド粒子。
【請求項7】
ナノダイヤモンドを用いて球状多孔質ダイヤモンド粒子を形成する工程を有することを特徴とする球状多孔質ダイヤモンド粒子の製造方法。
【請求項8】
前記ナノダイヤモンドを水溶性高分子の水溶液中に分散させた分散液をスプレードライして、前記ナノダイヤモンド及び前記水溶性高分子を含む球状粒子を形成する工程と、
該球状粒子に含まれる水溶性高分子を酸化除去して前記球状多孔質ダイヤモンド粒子を形成する工程を有することを特徴とする請求項7に記載の球状多孔質ダイヤモンド粒子の製造方法。
【請求項9】
前記球状多孔質ダイヤモンド粒子に、化学気相成長法又は物理気相成長法を用いて、ダイヤモンド又はダイヤモンドライクカーボンを成長させる工程をさらに有することを特徴とする請求項7又は8に記載の球状多孔質ダイヤモンド粒子の製造方法。
【請求項10】
前記ダイヤモンド又はダイヤモンドライクカーボンが成長した球状多孔質ダイヤモンド粒子を酸素終端化すると共に、グラファイトを酸化除去する工程をさらに有することを特徴とする請求項9に記載の球状多孔質ダイヤモンド粒子の製造方法。
【請求項11】
前記酸素終端化されると共に、グラファイトが酸化除去された球状多孔質ダイヤモンド粒子を水素終端化する工程をさらに有することを特徴とする請求項10に記載の球状多孔質ダイヤモンド粒子の製造方法。
【請求項12】
前記球状多孔質ダイヤモンド粒子の表面に置換基を導入する工程をさらに有することを特徴とする請求項7乃至11のいずれか一項に記載の球状多孔質ダイヤモンド粒子の製造方法。
【請求項13】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の球状多孔質ダイヤモンド粒子が充填されていることを特徴とするカラム。
【請求項14】
請求項13に記載のカラムを有することを特徴とする液体クロマトグラフ。
【請求項15】
請求項14に記載の液体クロマトグラフを用いて試料を分析することを特徴とする分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図7】
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【図9】
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【図11】
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【図13】
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【図14】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図8】
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【図10】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−121790(P2012−121790A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245900(P2011−245900)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)
【出願人】(803000115)学校法人東京理科大学 (545)
【Fターム(参考)】