説明

球状曲面を有する焼成または焼結中空体

【課題】本発明は、球状表面を有する焼成されたまたは焼結された中空体の製造方法、該中空体の製造方法を用いて製造された中空体、およびその使用に関する。
【解決手段】本発明の目的は、球状曲面、拡張された自由に近接可能な表面、および/または構造化された表面を有する、焼成または焼結中空体を提供することである。この目的のため、球状の有機担体が、懸濁剤に含まれる中空体の殻を形成する粉末と結合剤とで被覆される。次いで、熱処理によって有機成分の放出および焼結処理を行う。少なくとも1つの隆起部が担体の表面に配置されるかそこに埋め込まれ、焼結処理の間の粉末材料の収縮度を考慮して、突起が、少なくとも完成した焼結中空体の殻の厚さに対応する表面を越えている。この隆起部は、次いで、熱処理の間に、それが形成される材料それぞれの気相への変換によって取り除かれるか、あるいは機械的に取り除かれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、球状曲面を有する焼成または焼結中空体、このような中空体の製造方法、およびそれらの使用に関する。本発明に係る中空体は、事実上焼結され得る全ての原料の殻を有することが可能である。したがって、この殻は金属、金属合金、またはセラミクスから形成され得る。
【背景技術】
【0002】
このような中空体は、それ自体が周知であり、例えばEP1251985A1に記載されるように製造し、加工することができる。
【0003】
これに関連して、球状の中空体は、機械的強度が大きいのと同時に、質量が減少されるという有利な特性を有する。特に、その球面形状によりそれらの外表面が相対的に大きいのと同様に、殻がある気孔率を有する場合であっても、その外表面は、対応する表面粗さで比較的平坦で滑らかである。
【0004】
しかしながら、これらのパラメータは、多くの用途のためには十分ではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本願の目的は、拡張した自由接近性表面、および/または、構造化された表面をもつ球状曲面を有する焼成または焼結中空体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、本発明に係る請求項1の特徴を有する中空体によって達成される。これらは、請求項10に係る方法を用いて製造され得る。有利な使用は、請求項16に記載される。
【0007】
本発明の有利な実施形態およびさらなる開発は、従属請求項に表される特徴を用いて達成され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明に係る中空体には、特に流体が自由に接近可能な表面の拡張のために、中空体の殻の総厚さを貫いて導かれた少なくとも一つの開口が設けられており、その結果、流体は、本発明に係る中空体の殻の内表面にもまた作用し得る。これに関連して、他の有利な、特に機械的強度における特性は、ほとんど減少することがない。
【0009】
このような開口の数および自由断面は、後述するように直接的に操作され得る。
【0010】
中空体の周囲と内部との間の、簡易な液体交換や圧力の均一化を達成するために、本発明の中空体には、一つより多い開口を設けることが好ましい。
【0011】
しかしながらこれは、中空体の殻の材料が、少なくとも90%の気孔率を有することにより達成することもできる。これに関連して、総気孔率における一つ以上の開口の比率は考慮すべきではない。選択的に高い気孔率であっても、本発明で必要とされる開口と同程度とすべきではない。
【0012】
目的とする用途に依存して、中空体の表面および/または周囲にわたって確率的にまたは一定の間隔に分配された開口を配置することも可能である。
【0013】
さらに、開口の自由断面の大きさおよび形状設計は操作され、用途のそれぞれに適合することが可能である。
【0014】
自由断面は、ギャップ状、円形状、円環状、長方形から正方形状、六角形状、八角形状、あるいはまた他の多角形形状に形成され得る。これに関連して、自由断面の形状が異なる開口が中空体に設けられてもよい。
【0015】
特有の用途として、一つの中空体に、少なくとも二つの開口が配置され、直径方向に相対して形成されることが有利となり得る。
【0016】
中空体の殻の外径および厚さは、既知の閉鎖された殻を有する中空体の場合もまたそうであるように、選択され、操作され得る。
【0017】
本発明に係る中空体は、従来技術から知られるように、いくつかの変形を伴って製造される。したがって、有機材料から作られる球面状担体は、結合剤および焼成可能なあるいは焼結可能な粉末によって形成される懸濁剤で被覆される。表面および粉末の層厚さは、殻の厚さ、完全に焼結された中空体の外径、気孔率および表面粗さを左右する。これに関連して、担体の外径は必然的にその外径への影響を有する。
【0018】
用いられる粉末材料それ自体および粉末材料の焼結活性は、同様に中空体の特性に影響するパラメータである。
【0019】
本発明に係る中空体上の開口の形態として、担体上の隆起部、または、プレイスホルダあるいは追加的なプレイスホルダが、有機担体の表面の被覆に埋め込まれてもよい。このようなプレイスホルダは、例えばポリスチレンから成る有機担体の表面を被覆する懸濁剤に、予め含められてもよい。
【0020】
隆起部は有機担体の表面に直接形成されることが可能である。これは、例えば、担体を直接成形することによって達成され得る。これは、プラスチックから成る担体を用いて、本来知られるように、例えば射出成形によって為され得る。ポリスチレンから成る担体が用いられる場合、それらが予めあるいは後に、対応して構造化された金型内で形成されることも可能である。
【0021】
しかしながら、隆起部を、このような担体の表面に順次配置して固定することも可能である。したがって、例えば薄い結合剤フィルムが有機担体の表面に適用されることが可能である。このような隆起部を形成する粒子あるいは他の要素は、焼結が施された後に、粉末を有する懸濁剤が殻を形成する前に、この結合剤を用いてそこに固定される。このような隆起部を形成する要素は、担体の表面の特定の望ましい位置に、確率的に分配され、局所的に画定されるように、例えば浸漬または粒子を散りばめることによって行われる。
【0022】
隆起部は、しかしながら、例えば有機担体(例えば、ポリスチレン担体)の表面に挿入された要素によって形成されてもよい。
【0023】
プレイスホルダと同様に、隆起部を形成する部分、要素、または粒子は、有機担体と同様に、熱処理の間に熱分解され得る、つまり、焼結の温度より低い温度で気相に変換され得る材料、あるいはその混合物から形成されてもよい。
【0024】
しかしながら、材料およびその混合物は、熱処理の間、特有の特性を変化させるものが用いられてもよい。これにより、例えば強度の減少が起こり得る。これに関連して、焼結を行った後に、中空体が破壊されるか損壊されることなく一つ以上の開口を機械的に取り除いてもよい。
【0025】
材料またはその混合物が、個々の中空体の殻の材料に適した膨張の熱係数を有する場合には、冷却中に殻から簡単に落ちることができ、個々の開口は露出する。
【0026】
隆起部またはプレイスホルダは、開口が形成されるように適切な寸法を有するべきである。したがって、隆起部は表面に垂直な突起を有し、プレイスホルダは、少なくとも完全に焼成されまたは焼結された中空体の殻の厚さに対応する体積を有するべきである。つまり、個々の収縮度が焼結の間に考慮され得る。
【0027】
プレイスホルダは、それぞれの用途に応じて、異なる寸法を有するのに加えて異なる設計を有することもまた可能である。したがって、繊維状のプレイスホルダが、例えば隙間が形成された開口に用いられてもよい。しかしながら、適切な粒子サイズの粒子がプレイスホルダとして用いられることも可能である。
【0028】
本発明による、球状曲面を有する中空体は、異なる最終生産物の製造に用いられることが可能であるが、用途自体が異なるもの、例えば、バルク中の中空体としても用いられ得る。
【0029】
したがって、それらは触媒の中の触媒担体として用いられ得る。フィルターまたはマフラーは本発明による中空体から製造され得る。これに関連して、複数の中空体が互いに連結し、好ましくは固く結合した状態で互いに連結し、少なくとも中空体の開口の一部が閉ざされている。
【0030】
中空体の土台部分または構造を通過する流れにおける液体または気体による圧力損失および流れ抵抗は、本発明に係る中空体を用いることで減少され得る。これは、排ガスの背圧が対応して減少するので、内部燃焼機関からの排ガスの側方浸透流において、特に有利であり、内部燃焼機関の性能および効率において、これは有利な効果を有する。
【0031】
触媒/触媒として、または、そのための使用について、拡張した自由到達表面は、外部からも内部からも有利な効果を有し、その結果、触媒効果が改良され得る。
【0032】
本発明に係る中空体を用いてマフラーが製造される場合、従来の、完全に閉ざされた殻を有する中空体を用いる場合と同様に、異なる設計(開口の数および大きさ、気孔率)の中空体の使用および/または異なる寸法の中空体の使用は改良されたマフラーに寄与し得る。
【0033】
本発明に係る中空体が化学プロセスに用いられる場合、反応性、吸収能力、触媒効果、または分離能力が改善され得る。これに関連し、殻が好適な気孔率を有することもまた有利である。材料の使用を減少させることができ、対応する工場施設をより小さくすることができる。
【0034】
しかしながら、本発明に係る中空体は人間や動物のためのインプラント(implant)の製造にもまた用いられ得る。このような場合、組織は成長して、本発明の中空体を用いて形成されたインプラント構造になるのと同様に、組織は、そのような骨のためのインプラントの、改良されたより固い結合が達成されるように、著しく好適な方法で自由開口になる。すでに述べたように、本発明において存在する開口によって、強度はわずかにのみ減少する。しかしながら、このようなインプラントが骨の代替物として製造される場合、これらのインプラントは、閉じられた殻を有する従来の中空体とともに、好適には外側に、随意的には内核に配置された中空体の両者を用いて製造され得る。それにより、高いひずみにも抵抗し得るインプラントの形状安定性および強度が達成され得る。
【0035】
特に、インプラントへの弾性係数の直接の影響によって、異なった局所的な要求への適応もまた可能である。
【0036】
さらに、本発明に係る中空体を用いて質量の減少が可能であることが示され得る。それらは、導電性で、磁化可能であり、空気圧で輸送可能であり得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
球状曲面を有する焼成あるいは焼結中空体であり、
殻を通して導かれた少なくとも1つの開口が前記中空体の殻に形成されることを特徴とする中空体。
【請求項2】
1つより多い開口が形成されることを特徴とする請求項1に記載の中空体。
【請求項3】
開口が前記中空体の表面にわたって、および/または、周囲にわたって、確率的に分配されて配置されることを特徴とする請求項1または2に記載の中空体。
【請求項4】
開口が前記中空体の表面にわたって、および/または、周囲にわたって、一定の間隔で分配されて配置されることを特徴とする請求項1または2に記載の中空体。
【請求項5】
前記中空体の殻原料が少なくとも90%の気孔率を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の中空体。
【請求項6】
異なる大きさの自由断面を有する開口が前記中空体に形成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の中空体。
【請求項7】
前記開口は、予め設定可能な自由断面形状を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の中空体。
【請求項8】
自由断面はギャップ状、円形状、円環状、長方形状、六角形状、および/または八角形状であることを特徴とする請求項7に記載の中空体。
【請求項9】
2つの開口が、前記中空体に、直径方向に相対して配置されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の中空体。
【請求項10】
球状有機担体が、中空体の殻を形成する粉末および結合剤で被覆され、
次いで熱処理によって有機成分の排除および焼結を行い、
少なくとも1つの隆起部が、前記担体の表面に配置されあるいは形成され、および/または、
少なくとも1つのプレイスホルダが、前記粉末および前記結合剤から形成される被覆に埋め込まれ、その表面を超えた垂直の突起、あるいは1つ以上のプレイスホルダの体積が、焼結の間の前記粉末材料の収縮度を考慮して、少なくとも完全に焼結された殻の厚さに対応しており、
前記隆起部および/またはプレイスホルダが、それらを形成する原料それぞれの気相への変換によって、熱処理において取り除かれるか、あるいは機械的に取り除かれることを特徴とする、球状曲面を有する焼成されたあるいは焼結された中空体の製造方法。
【請求項11】
粒子状のプレイスホルダまたは繊維状のプレイスホルダが埋め込まれていることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
担体が、隆起部を有する表面構造で被覆されていることを特徴とする、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
異なる体積を有する、および/または、異なる形状設計のプレイスホルダが、前記被覆に埋め込まれていることを特徴とする、請求項1〜12に記載の方法。
【請求項14】
担体が異なる寸法をもった、および/または、異なって設計された隆起部で被覆されることを特徴とする、請求項10〜13に記載の方法。
【請求項15】
有機材料または材料の混合物から成るプレイスホルダが埋め込まれることを特徴とする、請求項1〜14に記載の方法。
【請求項16】
医療インプラント、触媒担体のための、あるいは、フィルターまたはマフラーの製造のための、請求項1〜9に記載の中空体の使用。

【公表番号】特表2009−504916(P2009−504916A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−526373(P2008−526373)
【出願日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際出願番号】PCT/DE2006/001483
【国際公開番号】WO2007/019846
【国際公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(508051632)グラット システムテクニーク ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】