説明

環境に優しいティッシュ

【課題】環境への影響が最小限であるようなティッシュ製品を提供する。
【解決手段】1プライのロール状製品、例えばバスティッシュやペーパータオルなどに加工するための環境に優しいティッシュシートの製造方法が開示されている。本方法は、エネルギー消費量を最小限に、すなわちティッシュ3.56平方メートル当たり約100g-COe排出量以下に抑えると同時に、望ましいロール嵩、硬さ及び吸収性を有するロール状ティッシュ製品を製造するように決定された数多くのプロセス態様を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境に優しいロール状ティッシュの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ティッシュ製造プロセスが異なると、それにより製造される製品及びそのような製品が環境に及ぼす影響も異なる。スルー乾燥(通気乾燥)などのプロセスは、嵩高のロール状ティッシュを提供することができるので繊維使用量を最小限に抑える利点を有するが、大量の化石燃料エネルギーを消費し、それゆえにCOe排出量によって表されるカーボンフットプリントが大きいという欠点を有する。これに対して、他のプロセス、例えばウェットプレスプロセスなどは、エネルギー消費は遙かに少ないという利点を有するが、嵩高のロール状ティッシュを製造することができないので、繊維利用率が低いという欠点を有する。エネルギー消費量も繊維使用量も共に環境に影響を及ぼすので、上記のいずれのプロセスも環境に優しいロール状ティッシュを提供するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6,440,267号明細書
【特許文献2】米国特許第5,672,248号明細書
【特許文献3】米国特許第6,998,024号明細書
【特許文献4】米国特許第7,166,189号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2007/0131366(A1)号公報
【特許文献6】米国特許第6,077,590号明細書
【特許文献7】米国特許第4,925,531号明細書
【特許文献8】米国特許第5,498,316号明細書
【特許文献9】米国特許第6,096,169号明細書
【特許文献10】米国特許第5,196,091号明細書
【特許文献11】米国特許第5,316,383号明細書
【特許文献12】米国特許第5,814,191号明細書
【特許文献13】米国特許第5,674,364号明細書
【特許文献14】米国特許第6,849,157B2号明細書
【特許文献15】米国特許出願第11/588,652号明細書
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Ranganathan, J. et al., The Greenhouse Gas Protocol - A Corporate Accounting and Reporting Standard, Revised Edition, World Resources Institute and World Business Council for Sustainable Development, March 2004
【非特許文献2】"GHG Emissions from Fuel Use in Facilities", Version 3.0, World Resources Institute, December 2007
【非特許文献3】"Indirect CO2 Emissions from Purchased Electricity", Version 3.0, World Resources Institute, December 2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
米国国内においても全地球規模でも環境問題への関心が高まっているので、環境への影響が最小限であるようなティッシュ製品が市場に投入されることが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
非常に望ましい特性を備えた環境に優しいロール状ティッシュ製品を製造することができることが発見された。より詳細には、COe排出量(定義は後述)を最小限に抑えるように決定された特定の特徴を多数兼ね備えた、よりエネルギー効率の良いプロセスを用いて、同時にロール状ティッシュ製品の品質を高めることとなる特性をティッシュウェブまたはシートに与えるように、スルー乾燥させた様な特性を有するロール状ティッシュ製品を製造することができる。
【0007】
よって、一態様においては、本発明は、ロール状ティッシュの製造方法であって、(a)繊維1グラム当たり水約1.5グラム以下の保水値を有する製紙繊維の水性懸濁液からウエットティッシュウェブを形成するステップと、(b)ウエットウェブを、該ウェブの保水濃度の約50ないし約65パーセントの濃度になるまで脱水するステップと、(c)脱水したウェブを成形ファブリック上へ、脱水したウェブが成形ファブリックの表面に倣った形状をなす成形ウエットウェブを形成するように、移動させるステップと、(d)成形ウエットウェブをフード付きヤンキードライヤーの表面上へ移動させるステップと、(e)ウェブを濃度が約90パーセント以上になるまで乾燥させ、乾燥させたウェブをクレーピングして、坪量が1平方メートル当たり約25ないし約40グラム、地合指数が約110以上、かつ垂直水吸収能力(Vertical Water Absorbent Capacity)が繊維1グラム当たり水約9グラム以上であるティッシュシートを製造するステップと、(f)ティッシュシートを、繊維1グラム当たり約10立方センチメートル以上のロール嵩を有する1プライのロール状ティッシュに加工するステップとを含み、ティッシュシートを脱水しかつ乾燥させるために用いられるティッシュ3.56平方メートル当たりの総COe排出量が、約60ないし約100グラムであることを特徴とする方法の発明である。
【0008】
別の態様においては、本発明は、ロール状ティッシュの製造方法であって、(a)繊維1グラム当たり水約1.5グラム以下の保水値を有する製紙繊維の水性懸濁液からツインワイヤフォーマを用いてウエットティッシュウェブを形成するステップと、(b)ウエットウェブを、該ウエットウェブの保水濃度の約50ないし約65パーセントの濃度になるまで多ゾーンのエアプレス機を用いて脱水するステップと、(c)脱水したウェブを成形ファブリック上へ、脱水したウェブが成形ファブリックの表面に倣った形状をなす成形ウエットウェブを形成するように、移動させるステップと、(d)成形ウエットウェブを、ウェブ1平方センチメートル当たり約0.35キログラム以下の押し付け圧力で、フード付きヤンキードライヤーの表面上へ移動させるステップと、(e)ウェブを濃度が約95パーセント以上になるまで乾燥させ、乾燥させたウェブをクレーピングして、坪量が1平方メートル当たり約25ないし約40グラム、地合指数が約120以上、かつ垂直水吸収能力が繊維1グラム当たり水約9グラム以上であるティッシュシートを製造するステップと、(f)ティッシュシートを、繊維1グラム当たり約10立方センチメートル以上のロール嵩を有する1プライのロール状ティッシュに加工するステップとを含み、ティッシュシートを脱水しかつ乾燥させるために用いられるティッシュ3.56平方メートル当たりの総COe排出量が、約60ないし約100グラムであることを特徴とする方法の発明である。
【0009】
定義
【0010】
本明細書において、以下の用語は以下の意味を有するものとする。
【0011】
「エアプレス機」は、水をウェブの外に出すためにウエットウェブの片面に加圧空気を付与する装置である。本発明において、水の除去を支援するためにウェブの反対の面に真空が付与され得るが、真空を用いて圧力差を生じさせるのに必要なエネルギーは、加圧空気を用いて同じ圧力差を生じさせるのに必要なエネルギーより大きいので、真空の量は最小限に抑えられることとなる。真空を用いる場合、真空は水銀約5インチ以下とすべきである。本発明のために、エアプレス機は好適には多ゾーンのエアプレス機であり、これは脱水中にウェブに徐々に増加する圧力を印加するエアプレス機内の2つ以上の互いに異なるゾーンがあることを意味する。任意の数、例えば2、3、4、5またはそれ以上の多ゾーンが用いられ得るが、特に適切なゾーン数は、費用対効果の理由に基づき3である。
【0012】
「坪量」は、ティッシュシートにおける繊維の絶乾量であり、ティッシュ表面1平方メートル当たりのグラム数(gsm)で表される。本発明のティッシュシートの坪量は、約25gsm以上、より正確には約25ないし約60gsm、より正確には約25ないし約45gsm、さらにより正確には約30ないし約40gsmであり得る。
【0013】
化石燃料の燃焼に関連する「COe(COequivalent)」排出量は、二酸化炭素に対する大気汚染物質の複合放射強制効果の世界的尺度である。この量は、燃料の燃焼によって生成される6つの温室効果ガスのそれぞれの地球温暖化係数(GWP)を示しており、二酸化炭素1単位のGWPに換算した値で表される。これは、共通基準に対する異なる温室効果ガスの放出(または放出回避)を評価するために幅広く用いられている。COe排出量は、温室効果ガス(GHG)プロトコルのガイダンス文書(非特許文献1を参照されたい。非特許文献1は、引用を以て本明細書の一部となす)に従って計算される。この計算は、先ず製造プロセスにおいて消費される炭素含有燃料を決定することを要する(ティッシュ製造に関しては、この定義に合う唯一の燃料は天然ガスである)。この燃料量に適切な排出係数を掛けると、製造プロセスからのCOeの直接排出(スコープ1排出とも呼ばれる)が決定される。非特許文献2を参照されたい。非特許文献2は、引用を以て本明細書の一部となす。2007年の米国のこの排出係数は、1,000,000BTU当たり123lb-COである。製造プロセスに関連する電気関連の間接排出(スコープ1排出)は、プロセスにおいて使用される電気の量及び発電のために与えられた排出係数に基づいて計算される。2005年の米国のこの排出係数は、非特許文献3に報告されているように1000KWh当たり1263lb-COであり、非特許文献3は、引用を以て本明細書の一部となす。本明細書では、総COe排出量の値は、前述の排出係数に基づく。公表される排出係数が時間とともに変化するからには、前述の排出係数は、本発明の範囲を解釈する際に照合し、適用するものとする。
【0014】
本明細書において、COe排出量の総量は、ティッシュマシンのみに対して用いられる脱水/乾燥エネルギーに関するスコープ1とスコープ2のCOe排出量の値の合計であり、マシン駆動、照明、加熱及び他の関連する領域(例えば加工工程など)に起因するエネルギーは計上しない。さらに、「ティッシュ3.56平方メートル(38平方フィート)当たりの」COe排出量は、幅4.5インチ、長さ4.09インチのシートが300シートあるロール状シート(300×(4.5インチ/12(インチ/フィート))×(4.09インチ/12(インチ/フィート))=38.3平方フィート)に基づく。COe排出量を平方メートル(平方フィート)ベースで規定することによって、任意のティッシュ製造方法及び製品に適用することができる。
【0015】
本発明によれば、脱水及び乾燥のティッシュ3.56平方メートル当たりのCOe排出量の合計は、約100グラム以下、より正確には約60または70ないし約100グラム、より正確には約60または70ないし約90グラム、さらにより正確には約60または70ないし約80グラムであり得る。本発明の方法の脱水工程単独(ヤンキードライヤー以前)では、ティッシュ3.56平方メートル当たりのCOe排出量は、約5グラム以下、より正確には約1ないし約5グラム、より正確には約1ないし約3または4グラムであり得る。脱水エネルギー使用量がこれほど小さいため、乾燥工程単独(ヤンキードライヤー/フード)のためのティッシュ3.56平方メートル当たりのCOe排出量は、上記合計値とほぼ同じである。具体的には、乾燥工程のためのティッシュ3.56平方メートル当たりのCOe排出量は、約100グラム以下、より正確には約60または70ないし約100グラム、より正確には約60または70ないし約90グラム、さらにより正確には約60または70ないし約80グラムであり得る。
【0016】
「加工」は、ティッシュシート製造後の工程を指す。加工プロセスは、製紙の分野で公知である。通常は、乾燥直後に、ティッシュシートは巻き取られて大きなペアレントロール(親巻取紙)になり、保管場所に移動させられる。その後のある時点で、ペアレントロールは巻き出され、ティッシュシートは切り込みを入れられて芯に貼り付けられ、再度巻き取られて最終的なロール状ティッシュ製品になる。その後、ロール状製品はパッケージングされる。任意選択の中間作業には、エンボス加工、印刷及び/またはシート上への化学添加物の吹き付けが含まれる。本明細書において、ティッシュシートがヤンキードライヤーから取り除かれた後の処理ステップは全て「加工」の範疇に入る。加工は、本発明のエネルギー消費量には関与していないが、最終的なロール特性において役割を果たすことができる。特に、巻き取り工程は、ロールを作り上げる間に巻取張力を低下させるなど最終製品のロール硬さに影響を与えることになる。これらの工程は公知であり、当業者により理解され、必要なロール嵩及びロール硬さを有するロール状ティッシュ製品は、本発明に従う製造工程で製造された嵩高のクレーピングされたティッシュシートから始めて容易に提供されることができる。
【0017】
「地合指数(Formation Index)」は、ティッシュシートの繊維構造の均一性の尺度である。より均一に形成されるティッシュシートは、乾燥中のエネルギー消費量を最小限に抑えることができることが分かっている。地合指数を決定する方法は米国特許第6,440,267号明細書(特許文献1)に記載されており、特許文献1は引用を以て本明細書の一部となす。本発明のティッシュシートの地合指数は、約110以上、より正確には約120ないし約170、さらにより正確には約130ないし約150であり得る。
【0018】
「成形ファブリック」は、ティッシュシートにかなりの厚さ及び嵩を付与するような、表面が非常にでこぼこした3次元ファブリックである。そのような成形ファブリックは当分野で公知であり、高さ差約0.005インチ(0.12ミリメートル)以上の、ティッシュに接触する表面を有する。そのようなファブリックは、例えば、米国特許第5,672,248号明細書(特許文献2)、米国特許第6,998,024号明細書(特許文献3)、米国特許第7,166,189号明細書(特許文献4)及び米国特許出願公開第2007/0131366(A1)号公報(特許文献5)に開示されており、これらの文献は全て、引用を以て本明細書の一部となす。
【0019】
ティッシュ製品の「ロール嵩」は、単純に、芯の体積を除いたロール状製品の体積をロール状ティッシュの重量で除した値である。ロール嵩は、ティッシュの立方センチメートル/グラム(cc/g)で表される。本発明のロール状製品は、約10cc/g以上、より正確には約10ないし約25cc/g、より正確には約10ないし約20cc/g、さらにより正確には約15ないし約20cc/gのロール嵩を有し得る。
【0020】
ロール状ティッシュの「ロール硬さ」は、荷重印加下でのプローブによるロールの耐変形性の測定値である。ロール硬さは、ミリメートル(mm)で表され、プローブがロールの表面に入り込む程度を表す。従って、より柔らかいロール(プローブをさらにロール内へ入り込ませる)は、より大きなロール硬さ値を有する。逆に、より堅いロール(プローブをそれほど深くロール内へ入り込ませない)は、より小さなロール硬さ値を有する。ロール硬さを測定する手順は、米国特許第6,077,590号明細書(特許文献6)に記載されており、特許文献6は引用を以て本明細書の一部となす。本発明のロール状製品は、約8ミリメートル(mm)以下、より正確には約4ないし約8mm、さらにより正確には約6ないし約8mmのロール硬さ値を有し得る。
【0021】
ウエットティッシュウェブを形成するために任意の種類のフォーマを用いることができるが、本発明においてはツインワイヤフォーマが特に望ましい。その理由は、ツインワイヤフォーマは、最も均一なウェブを形成するからであり、これは、上記したようにウェブの脱水及び乾燥中のエネルギー使用量に有利な影響を及ぼす。「ツインワイヤフォーマ」は、ティッシュ製造分野で公知のフォーミング装置である。ツインワイヤフォーマは、ワイヤがフォーミングロールの外周を通過するときに、一点に集まる2つのフォーミングワイヤ間にヘッドボックスから繊維紙料の懸濁液を注入することを必要とする。一方のフォーミングワイヤを介して水が排出され、新たに形成されたウエット繊維ウェブは他方のフォーミングワイヤ上にとどまり、製紙マシンの脱水セクションに搬送される。適切なツインワイヤフォーマは、米国特許第4,925,531号明細書(特許文献7)及び米国特許第5,498,316号明細書(特許文献8)に開示されており、両文献は引用を以て本明細書の一部となす。しかし、クレセントフォーマ、サクションブレストロールフォーマ、フォードリニアフォーマなど他のフォーマを用いることもできる。
【0022】
「保水値」(Water Retention Value:WRV)は、繊維により本来的に保持されている水の量であり、繊維1グラム当たりの水のグラム数(g/g)で表される。保水値は、米国特許第6,096,169号明細書(特許文献9)に記載されており、特許文献9は引用を以て本明細書の一部となす。本発明の目的に適した製紙繊維のためのWRVは、より少ないエネルギーでより容易に繊維を脱水するために小さくなければならない。より詳細には、WRVは、繊維1g当たり水約1.5g以下、より正確には約1.0ないし約1.5g/g、より正確には約1.2ないし約1.4g/g、さらにより正確には約1.3ないし約1.4g/gであり得る。
【0023】
「保水濃度」(Water Retention Consistency:WRC)は、ウェブの繊維がその保水値にあるときのウェブの濃度(繊維の重量パーセント)である。算術的には、WRC=100/(1+WRV)である。2種類以上の繊維からなる製紙用紙料のWRVは、個々の種類の繊維の成分に対するWRVの加重平均である。例として、紙料が、1.33g/gのWRVを有する繊維成分「A」50%と、1.41g/gのWRVを有する繊維成分「B」50%とからなるとすれば、紙料のWRVは0.5(1.33)+0.5(1.41)=1.37g/gである。紙料のWRCは100/(1+1.37)すなわち42.2パーセントの濃度である。
【0024】
簡略かつ簡潔にするため、本明細書に記載の任意の範囲の値は、範囲内の全ての値を考慮し、かつ、所定の範囲内の同じような数値の整数または他のものである終端を有する任意の部分範囲が記載されている請求項に対しての明細書によるサポートと解釈されるものとする。仮説例として、本明細書において1ないし5の範囲の開示は、次の範囲、すなわち、1〜5、1〜4、1〜3、1〜2、2〜5、2〜4、2〜3、3〜5、3〜4、4〜5のいずれかが記載されている請求項をサポートすると考えられるものとする。同様に、本明細書において0.1ないし0.5の範囲の開示は、次の範囲、すなわち、0.1〜0.5、0.1〜0.4、0.1〜0.3、0.1〜0.2、0.2〜0.5、0.2〜0.4、0.2〜0.3、0.3〜0.5、0.3〜0.4、0.4〜0.5のいずれかが記載されている請求項をサポートすると考えられるものとする。それに加えて、前に「約」なる語がつく値は、値そのものに対しての明細書によるサポートと解釈されるものとする。例として、「約1ないし約5」の範囲は、「1ないし5」、「1ないし約5」及び「約1ないし5」の範囲であると翻訳され、かつこれらの範囲を開示し、サポートを与えるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に従うプロセスの概略図。
【図2】本発明のために有用な多ゾーンのエアプレス機の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1を参照して、本発明に従うプロセスについて説明する。第1のフォーミングファブリック3と第2のフォーミングファブリック4との間に製紙繊維の水性懸濁液を注入するヘッドボックス2を含むツインワイヤフォーマ1が示されている。本発明のために適切な製紙繊維には、有利には再生製紙繊維が含まれるが、バージン製紙繊維を用いることもできる。ヘッドボックスは、単層または多層のヘッドボックスであり得る。濃度希釈は、必要な形成レベルを達成するために有用であり得る。濃度希釈は、米国特許第5,196,091号明細書(特許文献10)、米国特許第5,316,383号明細書(特許文献11)、米国特許第5,814,191号明細書(特許文献12)及び米国特許第5,674,364号明細書(特許文献13)に記載されており、これらの文献は全て、引用を以て本明細書の一部となす。また、フォーミングロール6、ブレストロール7、リターンロール8、及びガイドロール9、11、12も示されている。形成中、ウェブの経路がフォーミングロールの外周面付近を通過するときに遠心力によって第1のフォーミングファブリックにより水が除去される。新たに形成されたウェブ13は、第2のフォーミングファブリック4によってフォーマから取り除かれる。
【0027】
新たに形成されたウェブは、第2のフォーミングファブリックによって支持されているが、ガイドロール17を通過して搬送され、好適にはエアプレス機18を用いて、好適には脱水ゾーン内の真空ボックスに頼らずに、さらに脱水される。有利には、回収システムまたは回収装置19がエアプレス機の反対側にあり、ウエットウェブから排出されている水と空気の混合物を回収する。回収システムは、エネルギー消費量を最低限しか増加させないかまたは全く増加させないように、真空をほとんどまたは全く用いないものとする。回収システムは、標準的なティッシュマシンにおける真空ボックスのようにウェブを脱水するための原動力を与えるという通常の意味では真空ボックスではない。
【0028】
エアプレス機は加圧空気(図1中に矢印で示されている)を利用してウェブを脱水するが、このことは、ウェブを脱水する際に使われるエネルギーを最小限に抑える働きをする。加圧空気を生成するのに必要なエネルギーは、真空によってウェブ両端間に同じ圧力降下を生じさせるのに必要なエネルギーよりも小さい。各真空ボックスはCOe排出量に寄与するので、ティッシュマシンのウェットエンドでの真空の使用は、排除されるのでなければ最小限に抑えられるべきである。本明細書に記載の本発明のプロセスでは、エアプレス機は、エアプレス機単独でウェブが形成後の濃度からウェブの保水濃度(WRC)の約50〜60%まで脱水されるように作動される。具体的には、脱水の程度は、ウェブWRCの65パーセントを超えてはならない。
【0029】
ウェブは、エアプレス機において脱水されるとき、同時に第2のフォーミングファブリックから3次元成形ファブリック21上へ移動させられる。第2のフォーミングファブリックは、リターンロール22及びガイドロール23を経由してフォーミングユニットへ戻る。エアプレス機内の成形ファブリック上へ移動させられると、脱水されたウェブは、結果的に得られる成形ウェブが3次元の表面凹凸(topography)を有するように加圧空気によって成形ファブリックの表面に倣う形状をなすようにされ、それによって、最終的に厚さ及び嵩が大きいティッシュシートが提供されることになる。
【0030】
成形ファブリックへの移動の後、成形ウェブ25は、成形ファブリックアラウンドロール27によって搬送され、長いラップトランスファー部(long wrap transfer)を用いてフード付きヤンキードライヤー31へ移動させられる。長いラップトランスファー部は、1対のプレッシャーロール28及び29を用いて実現され、これらのプレッシャーロールは、成形ウェブを高温ヤンキードライヤーシリンダー表面32にそっと押し付ける働きをする。移動後、成形ファブリックは、リターンロール33を経由してエアプレス機に戻る。可能な最大の嵩を維持するべくウェブの圧搾を最小限に抑えるために、成形ウェブは、約0.07ないし約0.35kg/cm(約1ないし約5ポンド/平方インチ(psi))の範囲の低い押し付け圧力でヤンキードライヤーシリンダー上へ押し付けられる。ヤンキードライヤーシリンダーへの成形ウェブの付着を補強するために、当分野で公知であるような任意の適切なクレーピング接着剤が用いられ得る。
【0031】
ウェブは次に、ヤンキードライヤーシリンダーとヤンキードライヤーフード34の組合せによって、約90パーセント以上、より正確には約95パーセント以上の濃度になるまで乾燥させられる。この乾燥工程の組合せは、シリンダー/フードの乾燥バランスがシリンダーによる最大可能乾燥の実行に偏った状態でエネルギー消費量を最小限に抑える方法で再び作動される。ヤンキーシリンダーは、使用するエネルギーがずっと少なく、従って蒸発する水1ポンド(lb)当たりのCOe排出量はヤンキーフードが生成するものよりもずっと少ない(ヤンキーシリンダーは水1ポンド当たり約1800BTUを使って伝導乾燥によって水を除去することができるが、ヤンキーフードは水1ポンド当たり約2300BTUを使う)。これは、主として、フードはシートを乾燥させるために湿った空気流を循環させて空気を高速で排出しなければならないからである。ヤンキーシリンダーは、乾燥の観点からはよりエネルギー効率が良いが、一般的にフードを用いずに高乾燥速度を達成することができない。目的はドライヤーのCO排出を最小限に抑えることなので、システムは、ヤンキードライヤーシリンダーによってできるだけ多くの水を除去している間にフードがかなりの量の水を除去するように作動されなければならない。
【0032】
乾燥させられると、ウェブは、ドクターブレード36を用いてヤンキードライヤー表面から取り除かれ(クレーピングされ)、必要に応じて巻き取られて、標準的なロール状ティッシュにするためのさらなる加工工程のためのペアレントロール37になる。
【0033】
図2は、本発明に従って用いられることができる3つのゾーンを有するエアプレス機の概略図である。エアプレス機に流入する空気は、少なくともエアプレス機の最高圧力ゾーン内の圧力(ゾーン3内の圧力)に等しい圧力Pで流入する。各ゾーンは、各ゾーン内の圧力を調整するために用いることができる調節手段によって、供給部に接続されている。エネルギー消費量を最小限に抑え、ピンホールを開けることなく、表面凹凸が大きいファブリックへウェブを移動させることができるように、ゾーン1内の圧力(P1)は低く、おそらく4psigである。このセクションは、ピンホールを開けることなくウェブの良好な移動を確実にすると同時に、最小のエネルギーを用いてウェブを脱水する役割を果たす。
【0034】
次に、ウェブは、圧力P2が圧力P1に等しいかまたはそれ以上である第2のゾーンの下を通る。このゾーン内の圧力は、6psigであり得、エネルギー消費量の増加を極僅かに抑えてさらなる脱水を可能にしている。最後に、ウェブは、圧力P3で作動されるゾーン3に移動する。圧力P3は、今度は、ゾーン1及び2内の圧力より大きいことが好ましい。ここで、ウェブを所望のプレヤンキー濃度へと導くために、最大の脱水が行われる。ウェブは3次元インプレッションファブリックに既に移動しているので、ピンホール開孔はこの時点ではそれほど懸念されることではないが、最大許容圧力は尚もインプレッションファブリックの特性によって制限され得る。より高い圧力は、前の2つのゾーンより多くのエネルギーを必要とするが、ウェブ濃度をより高いレベルに増大させる。
【0035】
ピンホールのないウェブを維持しつつエネルギー消費量とウェブ濃度とのトレードオフを最適化するために、ゾーンの長さL1及びL3を変えることができる。ピンホールが開けられると、空気は優先的にピンホールを通過して流れ、ウェブ濃度を増大させることなくエネルギーを浪費し、あまり望ましくない製品を製造することになる。L1、L2及びL3は、長さが等しいこともあるし、いずれかのゾーンの長さが他のゾーンの長さより短いこともある。
【0036】
必要に応じて、P3は供給圧力Pと一致することがあるが、調節手段を不要にはするものの、供給圧力と同じような圧力がゾーン3に対して用いられる場合であっても、流れを制御するために調節手段またはゲート/バルブが用いられることがある。全ての場合において、徐々に増加する圧力を使用することは、インプレッションファブリックを使用するにもかかわらずピンホールのないシートを維持しつつ所与のウェブ濃度に対してエネルギー消費量を最小限に抑えるために有用である。
【0037】

【0038】
比較例1(エアプレス機脱水)
【0039】
特許文献9には、1ゾーンのエアプレス機の使用が教示されている。ティッシュウェブを脱水する点で効果があるが、この特許は、WRCの少なくとも70パーセントの比較的高い濃度まで脱水する一方で約48ないし約156馬力(HP)/ウェブ幅1フィートのエネルギー消費量を用いることを教示している。以下の例5に示すような本発明の方法とは異なり、この特許には、約14HP/フィートのエネルギー消費量を達成しつつ、WRCの約50〜60%の濃度まで脱水しつつ、ウェブを3次元成形ファブリック上へ移動させるために多ゾーンのエアプレス機を使用することについて教示も示唆もされていない。
【0040】
標準的なエアプレス機脱水エネルギーをCOe排出量に換算する、ウェブ坪量及びマシン速度を用いて計算されるときに、ウェブ幅1フィート当たり約48ないし約156HPを用いて標準エアプレス機脱水から予期されるCOe排出量の量は、本発明による例5に従うウェブ幅1フィート当たり約5〜17g-COe排出量に換算される。
【0041】
具体的には、例5に従う脱水セクションは、約14HP/シート幅1フィートを消費する一方で1.5g-COe排出量を生成するので、このとき、48ないし156HP/ウェブ幅1フィートの標準エアプレス機脱水のエネルギー消費量は、(48〜156HP/ウェブ幅1フィート)×1.5g-COe排出量/(ウェブ幅1フィート当たり14HP)すなわちウェブ幅1フィート当たり5〜17g-COe排出量を生成することになる。
【0042】
比較例2(真空脱水)
【0043】
真空脱水は、スルー乾燥(throughdrying)プロセスに関連する分野で公知であり、ウェブのウェットエンドでの脱水のための容認可能な方法である。例えば、この方法は、米国特許第6,849,157B2号明細書(特許文献14)及びスルー乾燥プロセスを取り扱う多くの他の特許に教示されている。しかし、この脱水技術は、同じウェブ濃度を達成するためにエアプレス機より多くのエネルギーを使う。
【0044】
例えば、下表1は、エアプレス機脱水及び真空脱水に関して同一レベルまで脱水するための(所与の圧力降下のための)シート幅1フィート当たりのHP要件を示している。いずれの場合にも、アクティブな脱水面積が同じであれば、圧力降下、エアフロー及び結果的に得られる濃度は同じになることになる。
【表1】

【0045】
真空脱水に必要なエネルギーが常にエアプレス機脱水に必要なエネルギーよりも大きいことは明らかである。それゆえ、真空脱水に依存するプロセスは、より多くの電気エネルギーを必要とすることになり、結果的に所与の脱水レベルに対するCOe排出量がより多くなる。例えば、上記したように、圧力差6ポンド/平方インチ(psi)では、真空脱水のための馬力要件は168HP/ftであり、これに対して、エアプレス機の場合、同じウェブ濃度に対して72HP/ftである。よって、放出されるCOe排出量は、真空脱水の場合2倍以上になる。
【0046】
比較例3(スルー乾燥)
【0047】
スルー乾燥またはスルーエアー乾燥(TAD)プロセスは、COe排出量パラメータ以外は本発明の方法と同一の所望の製品特性を有するロール状ティッシュを製造することができる。TADプロセスから放出されるCOe排出量は、プロセスパラメータの多くによってわずかに変化することになるが、代表的な例を以下に示す。この例は、特許文献14に記載されているものと類似の、4400ft/min(fpm)のTADドライヤー速度で坪量36.3gsmのペーパータオルを製造する200インチ幅の市販のTADマシンに基づく。マシンは、硬い嵩高のロール状ティッシュ製品の製造を可能にするファブリック及び他の技術を用いて、毎時15.70メートルトンのティッシュを製造した。放出されるCOe排出量は、次のように計算される。
【0048】
TADティッシュマシンは、9.26MM BTU(British Thermal Units:英熱量)/繊維1メートルトンのガスエネルギーを利用した。このうち、1.82MM BTU/トンが、マシンのウェットエンド上の蒸気ボックスのための蒸気を生成することになり、残りの7.44MM BTU/メートルトンがスルードライヤー内のガスのために用いられた。
【0049】
(1)9,260,000BTU/繊維2200lb=ガス使用量4210BTU/繊維1lb。36gsmでは、ティッシュ38ft中の繊維の量は、次のように計算される。
【0050】
(2)36g/m×1lb/454g×(1メートル/1.1ヤード)2×(1ヤード/3フィート)2×38ft/38ft=ティッシュ38ft当たり0.277lb。
【0051】
(3)ティッシュ38ft当たり0.277lb×4120BTU/lb=ティッシュ38ft当たり1140BTU。
【0052】
(4)このとき、ティッシュ38ft当たり1140BTU×123lb-COe排出量/1,000,000BTU=ティッシュ38ft当たり0.1402lb-COe排出量。
【0053】
(5)ティッシュ38ft当たり0.1402lb-COe排出量×454g/lb=ティッシュ38ft当たり64g-COe排出量(ガスエネルギーの場合)。
【0054】
他の主要なエネルギー源は、電気エネルギー、真空ボックスのための真空、ファンに電力を供給するための電気であった。
【0055】
(6)真空エネルギーは、5000HPすなわち0.746KW/HP×5000=3730KWであった。
【0056】
(7)毎時15.7メートルトンの物質が生成されたので、15.7メートルトン/hr×2200lb/メートルトン/3730KW=繊維9.2lb/KW-hr。
【0057】
(8)1KW-hr/繊維9.2lb×ティッシュ38ft当たり繊維.277lb×1263lb-COe排出量/電気1000KW-hr=ティッシュ38ft当たり0.0380lb-COe排出量。
【0058】
(9)ティッシュ38ft当たり0.0380lb-COe排出量×454g/lb=ティッシュ38ft当たり17g-COe排出量。
【0059】
(10)供給ファンのためのエネルギーは、繊維1メートルトン当たり416KW-hrであった。
【0060】
(11)ティッシュ38ft当たりの供給ファン電気エネルギーは、416KW-hr/2200lb×.277lb/ロール38ft=.052KW-hr/ティッシュ38ft
【0061】
(12)このとき、0.052KW-hr/ティッシュ38ft×1263lb-COe排出量/1000KW-hr=ティッシュ38ft当たり0.0656lb-COe排出量。
【0062】
(13)ティッシュ38ft当たり0.0656lb-COe排出量×454g/lb=ティッシュ38ft当たり30g-COe排出量(供給ファンのための電気消費の場合)。
【0063】
(14)電気の総COe排出量は、このとき、真空ポンプからの17グラムに供給ファンからの30グラムを加えた量、すなわちティッシュ38ft当たりのCOe排出量は全部で47グラムである。
【0064】
(15)このとき、プロセスに対するティッシュ38ft当たりの総COe排出量は、ティッシュ38ft当たりのガスの総COe排出量合計64グラムにティッシュ38ft当たりの電気の総COe排出量合計47グラムを加えた量に等しく、すなわちTADプロセスを経るティッシュ38ft当たりのCOe排出量は全部で111グラムである。
【0065】
比較例4(ウェットプレスプロセス)
【0066】
当分野で教示されているウェットプレスプロセスが数多くある。これらのプロセスは、通常はウェブをヤンキードライヤーへ移動させるときに、ウェブからの搾水を特徴とする。これらのプロセスは、本発明の製品のCOe排出量の放出要件を満たし得るが、一般的には本発明の製品のロール嵩/硬さ要件も吸水度要件も同時には満たさないであろう。
【0067】
1プライのウェットプレスされたティッシュに対する吸水度は、約6g/g以下である。たとえ2プライのウェットプレスされた製品であっても、プライ間吸水にもかかわらず規定の吸水度を有しないことがある。例えば、ジョージアパシフィック社(Georgia-Pacific Corporation)製のスパークル(Sparkle)(登録商標)タオルは、ウェットプレス製造プロセスにおいて生じる押し付けにより、約5g/gの吸水度を有する。
【0068】
別のウェットプレスプロセスが、米国特許出願第11/588,652号明細書(特許文献15)に開示されている。このプロセスでは、ウェブは、ウェットプレスされるが、その後ヤンキードライヤー上に置かれる前に成形される。2プライの製品の場合、最終製品38gsmの吸収能力は6.7g/gであった。当然のことながら、1プライの製品の場合、1プライの製品形態にはプライ間吸水度がないので、g/gベースの吸収能力はより低いであろう。
【0069】
前述したこれらの例は、最もありふれたティッシュプロセス及び結果的に得られる特性を示している。これらのプロセス及び製品のいずれも、本発明の要件を満たさない。非圧搾技術は、所望のシート及びロール特性を生み出すことができるが、COe排出量の地球温暖化効果に関してはそうではない。ウェットプレスプロセスなどの圧搾技術は、放出されるCOe排出量を必要不可欠な量に抑えることができるが、シート及びロール特性を生み出すことはできない。
【0070】
例5(本発明)
【0071】
図1を参照し、以下の例は、以下に説明する事実及び仮定に基づいて、本発明の方法に関連するCOe排出量の計算について説明する。
【0072】
北方針葉樹クラフト(NSWK)繊維を25%、漂白ユーカリ(Euc)繊維を75%含有する紙料から標準ツインワイヤフォーマを用いて25gsmのウェブが形成される。ヘッドボックス濃度は0.1%である。紙料は、最小限の機械的作用でドライラップ形態から再パルプ化され、最小限しかリファイニングされない。よって、WRVは、この混合紙料に対して出来る限り小さい。最終シート強度を所望のレベルに調節するために澱粉が添加される。
【0073】
紙料は、制御された研究室の状態同様に絶対的な最小限のビーティング動作で処理されるならば、次のように計算される混合したWRV値1.11を有し得る。
【0074】
(1)NSWK WRV=1.25g/g、Euc WRV=1.10g/g。
【0075】
(2)このとき、NSWKとEucの混合比が25:75の場合には、0.25×1.25+0.75×1.10=1.14g/g。これは、研究室で作られたパルプに対する理論的に最小のWRVである。
【0076】
しかし、業務用パルパでは、繊維を再パルプ化するときにある程度の「リファイニング(叩解)」が通常は発生することになり、結果的に得られる繊維のWRVは、この意図せぬビーティング動作のせいで上昇することになる。典型的には、ドライラップパルプの再パルプ化は、WRV値を約0.2g/g上昇させることになるので、混合紙料の全WRVは1.14g/g研究室値から約1.34g/gまで上昇することになる。
【0077】
従って、この例の業務用ティッシュマシンに対する紙料のWRVは、1.34g/gである。ウェブは、2565ft/min(fpm)で移動しているファインメッシュ94Mフォーミングファブリック上で形成される。濃度希釈は、ウェブの地合指数を120以上の値になるように調整するために用いられる。形成後、多ゾーンのエアプレス機を用いてウェブは成形ファブリック上へ移動させられる。成形ファブリックは、既に引用した特許文献2の図7に記載されているようにマシン方向ナックル部が隆起している3次元のファブリックである。
【0078】
エアプレス機は、約1.15インチの全有効脱水長さを有し、かつ、同時に濃度が23.5パーセントになるまでウェブを脱水しながらピンホールを開けることなくウェブを成形ファブリック上へ移動させるように作動される。この濃度は、紙料WRV1.34g/gに関連するWRC42.8パーセントの55パーセントに相当する。
【0079】
エアプレス機は、ピンホールなしの移動および脱水の作業を達成するために3つの互いに異なる圧力ゾーンを備えて作動されることが好ましい。第1のゾーンは、0.4インチの有効長を有し、かつ、形成後濃度(約10パーセント)から約15パーセント濃度までウェブを脱水するように圧力4.1psigで作動される。このゾーンは、ウェブを成形ファブリック上へ移動させる役割も果たす。圧力が低いので、ウェブにピンホールを開けることなくウェブは成形ファブリック上へ移動させられる。
【0080】
次のゾーンは、移動箇所のすぐ下流に位置し、0.375インチの長さを有し、6ポンド/平方インチゲージ(psig)の圧力で作動される。ウェブは既に移動しており、現時点で濃度が15パーセントであるので、より高い動作圧力が印加されることができる。この6psigのゾーンは、15から19.5パーセント濃度にウェブを脱水する役割を果たす。
【0081】
最後に、ウェブはエアプレス機の第3のゾーンに入り、ここでは動作圧力はさらに高く、約8psigである。このゾーンは、0.375インチの有効長を有し、濃度が23.5パーセントになるまでウェブを脱水する。脱水プロセス中にウェブから排出される水は、回収ボックス内に取り込まれ、このボックスから水を排出させるために、真空の力を借りずに、そしてそれに付随する真空を供給するための追加の電気エネルギーが必要ないように、重力が用いられることが好ましい。
【0082】
ウェブがエアプレス機から出る際に、ウェブの濃度は現時点で23.5パーセントであり、ウェブを脱水するためにウェブ幅1フィート当たり約14.3HPが使用された。脱水工程で消費されるエネルギーは、典型的なTADプロセスのためのエネルギーより小さいが、その理由は、脱水のために真空ボックスが用いられておらず、エアプレス機は、真空脱水で用いられるよりも少ないエネルギーを用いるからである。エアプレス機通過後の濃度23.5パーセントは、紙料WRV1.34に関連するWRCの55パーセントに相当する。ウェブの濃度は現時点で23.5パーセントであるので、ウェブはエアプレス機を離れる際に繊維1ポンド当たり水3.26ポンドを含む。
【0083】
(3)このとき、2565ft/min×繊維14.7lb/2880ft=繊維13.1lb/ft-min。これを14.3HP/ftで割ると、繊維0.92lb/min-HPすなわち繊維55.0lb/HP-hrが得られる。
【0084】
(4)繊維55lb/HP-hr×(1HP/0.746KW)=繊維73.7lb/KW-hr。
【0085】
(5)1000KW-hr当たり1263lb-COe排出量という数値に基づき、繊維73.7lb/KW-hr×1000KW-hr/1263lb-COe排出量=繊維58.4lb/lb-COe排出量となる。
【0086】
(6)坪量14.7lb/2880ft×(1lb-COe排出量/繊維58.4lb)×454g/lb=0.040g-COe排出量/ft、すなわち製造されたティッシュ38ft当たり1.5g-COe排出量を用いる。ティッシュ38ft当たり1.5g-COe排出量というこの値は、ティッシュマシンの脱水セクション(プレヤンキードライヤー)に対する結果である。
【0087】
次に、ウェブがヤンキードライヤーに移動させられる。ウェブは、図1に示すような2つのプレッシャーロールを有するラップトランスファー部を用いて移動させられることが好ましい。両プレッシャーロールは、ウェブに印加される圧力が好適には約5psi以下であるようにヤンキードライヤー上で軽く負荷をかけられ、かつウェブがプレッシャーロール間で長さ約3フィートにわたってヤンキードライヤー上にあるように配置される。ウェブは、移動工程中にウェブの圧搾を最小限に抑えるように移動させられる。
【0088】
ウェブは、その後、ヤンキードライヤーシリンダー及びフードの両者を用いて乾燥させられる。ヤンキードライヤーは、125psiの蒸気圧で作動される。このようにして、ヤンキードライヤーシリンダーは、ウェブ1平方フィート当たり毎時約20ポンドの水、あるいは、シート幅1フィート当たり外周1フィート当たり20ポンドの水を除去することができる。
【0089】
ヤンキードライヤーの直径が20フィートなので、ドライヤーの全有効長さにわたる水の除去は、次のように計算される。
【0090】
(7)3/4×3.14×20フィート×外周1フィート当たり蒸発する水20lb/hr=シート幅1フィート当たり水942lb/hr。係数「3/4」は、乾燥のためにアクティブであるのがヤンキードライヤーシリンダーの270°であることに由来する。換言すれば、クレーピングブレードと第1のプレッシャーロール間のデッドスペースは、ドライヤー外周の1/4を表す。
【0091】
(8)入ってくるウェブは、幅1フィート当たり繊維13.1lb/min×繊維1lb当たり水3.26lb×60分/1時間=幅1フィート当たり水2562lb/hrを保有している。ヤンキードライヤーシリンダーは、毎時幅1フィート当たり水942lbを除去することができるので、ヤンキーシリンダー乾燥を考慮した後に残った水は、毎時幅1フィート当たり2562−942=1620ポンドである。このようにして、ヤンキードライヤーシリンダーは単独で、ウェブ濃度を、入ってきたときの23.5パーセントからクレーピングブレードにおける32.7パーセントまで増加させる。
【0092】
(9)濃度32.7%=100×(繊維786lb/hr-ft/(繊維786lb/hr-ft+水1620lb/hr-ft))。
【0093】
(10)ヤンキードライヤーシリンダー上でのエネルギー消費量は、水1ポンド当たり約1400BTUである。水942ポンドを除去するのに使われる全エネルギー消費量は、942lb/ft-hr×水1ポンド当たり1400BTU=1,318,800BTU/幅1ft-hrである。
【0094】
ヤンキードライヤーシリンダーに加えて、ヤンキーシリンダーと関連的に作動する高速のフードによって乾燥が成し遂げられる。フードは、温度約1000°Fの加熱空気を供給する。フードは、幅1フィート当たり残りの水1581ポンドを除去して、クレーピングによってドライヤーからウェブが取り除かれるときのウェブ濃度を約95パーセントの値にする。
【0095】
(11)1581という値は、水1620lb/hr-ftから最終濃度95パーセントに関連する水39lb/hr-ftを引いて得られる(繊維786lb/hr-ftの5パーセント)。
【0096】
(12)フード内のガスエネルギー消費量は約2200BTU/水1lb、すなわち合計で毎時水1581lb/ft×2200BTU/水1lb=毎時幅1フィート当たり3,478,200BTUである。
【0097】
フード及びヤンキーシリンダーは共にガス燃焼式である。すなわち、フード及びヤンキーシリンダーのエネルギーは、ガスの燃焼により供給される。従って、このガス源のための換算係数は、123lb-COe排出量/1MM BTUである。
【0098】
(13)このとき、(ヤンキーシリンダーからの1,318,800BTU/hr-ft+フードからの3,478,200BTU/hr-ft)×123lb-COe排出量/1,000,000BTU=毎時シート幅1フィート当たり590.0lb-COe排出量。
【0099】
(14)毎時1フィート当たり786ポンドの繊維が製造されるので、これを言い換えると、繊維786lb/hr-ft/毎時シート幅1フィート当たり590lb-COe排出量=繊維1.33lb/lb-COe排出量となる。
【0100】
(15)このとき、繊維14.7lb/2880ft×(1lb-COe排出量/繊維1.33lb)×454g/lb=1.74g-COe排出量/製造されるティッシュ1ft
【0101】
(16)1.74g-COe排出量/ft×38ft/38ft=ティッシュ38ft当たり66.2g-COe排出量。
【0102】
フードは、熱風エアスルーシステムを駆動するための電気も必要とする。フードは、熱風エアスルーシステムを駆動するために使用されるエネルギーの量を最小限に抑えるために、可変速ファンを使用する。従って、ファンは、製品1メートルトン当たり約300,000BTUのエネルギーを利用し、このファンから放出されるCOe排出量は、次のように計算される。
【0103】
(17)300,000BTU/繊維2200lb×(0.293KW-hr/1000BTU)=0.04KW-hr/繊維1lb。
【0104】
(18)0.04KW-hr/繊維1lb×(1263lb-COe排出量/1000KW-hr)=0.051lb-COe排出量/繊維1lb。
【0105】
(19)このとき、繊維14.7lb/2880ft×(0.05lb-COe排出量/繊維1lb)×454g/lb=0.116g-COe排出量/製造される物質1ft
【0106】
(20)0.116g-COe排出量/ft×38ft/38ft=4.4g-COe排出量/ティッシュ38ft
【0107】
脱水ゾーンからのCOe排出量(すなわちティッシュ38ft当たり1.5g)とフードファンからのCOe排出量(ティッシュ38ft当たり4.4g)を、ヤンキーのためのガスエネルギー消費量に起因するCOe排出量(ティッシュ38ft当たり66.2g)に加えると、総エネルギー消費量約72.1g-COe排出量/ティッシュ38ftが得られる。これが、このティッシュを製造するための総COe排出量である。
【0108】
乾燥後、ウェブをリールへ搬送し、巻き取ってペアレントロールにすることができる。ウェブはその後、標準的な加工技術を用いてバスルームティッシュ(トイレットペーパー)に加工されることができる。最終製品は、ティッシュ3.56平方メートル当たりの約72.1g-CO相当量を用いて製造されかつ約25g/m以上の坪量及び約120以上の地合指数を有するような1プライのバスティッシュ(トイレットペーパー)である。地合指数は、選択された特定のフォーミングファブリック及びマシンの速度並びに坪量及び繊維の種類によって調整されることができる。垂直水吸収能力は繊維1グラム当たり水約9g以上であり得るが、これは、選択された特定の成形ファブリックに部分的に左右されることになる。同様に、加工後には、ロール嵩は、繊維1グラム当たり約10立方センチメートル以上であり得、特に、選択される成形ファブリック及び選択される巻取張力によって決まることになる。
【0109】
前述の例5に記載の計算値72.1gに対してティッシュ3.56平方メートル当たりのCOe排出量を増加させることになる因子を挙げると、フォーマデザインによるシート形成の向上及び/または形成濃度の低減と、坪量の低減(製品の坪量が小さければヤンキー及びフードからの乾燥エネルギーが少なくてすむが、脱水エネルギーの増加によって部分的に相殺される)と、尚も必要なシート厚さを提供する一方でウェブにおけるピンホールを最小限に抑えるような成形ファブリックの使用と、COe排出量を減らす脱水または乾燥技術の使用と、プロセスにおいて「浪費される」エネルギーの損失(例えばヤンキーヘッドによる損失)の低減と、ヤンキークレーピングブレードでの濃度の低減とが含まれる。COe排出量をさらに削減するために、ティッシュ製造分野の当業者に公知の追加的な因子が用いられることもある。
【0110】
逆に、例5に記載の計算値72.1gに対してティッシュ3.56平方メートル当たりのCOe排出量を増加させることになる因子を挙げると、本来的にそれほど良好ではないフォーマ(例えばサクションブレストロールフォーマなど)に起因する形成不良と、形成濃度の増加に起因する形成不良と、形成不良を是正するための濃度希釈の欠如と、ウェブにピンホールを開けることにつながる成形ファブリック及び/または移動真空の使用と、坪量の増加(乾燥エネルギーの必要量がより大きいことに起因するが、より小さい脱水エネルギーによって部分的に相殺される)と、より多くの無駄なエネルギー、例えばヤンキーヘッドを通じての損失の増加と、クレーピングブレードにおける濃度の増加とが含まれる。ティッシュ製造分野の当業者に公知の追加的な因子が、COe排出量を増加させる傾向がある場合がある。
【0111】
当然のことながら、前述の例は、説明目的で与えられているものであり、本発明の範囲を制限するものと見なされるべきではなく、本発明の範囲は、以下の請求項及びそれに相当する全てのものによって画定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状ティッシュの製造方法であって、
(a)繊維1グラム当たり水約1.5グラム以下の保水値を有する製紙繊維の水性懸濁液からウエットティッシュウェブを形成するステップと、
(b)前記ウエットウェブを、該ウェブの保水濃度の約50ないし約65パーセントの濃度になるまで脱水するステップと、
(c)前記脱水したウェブを成形ファブリック上へ、前記脱水したウェブが前記成形ファブリックの表面に倣った形状をなす成形ウエットウェブを形成するように、移動させるステップと、
(d)前記成形ウエットウェブをフード付きヤンキードライヤーの表面上へ移動させるステップと、
(e)前記ウェブを濃度が約90パーセント以上になるまで乾燥させ、前記乾燥させたウェブをクレーピングして、坪量が1平方メートル当たり約25ないし約40グラム、地合指数が約110以上、かつ垂直水吸収能力が繊維1グラム当たり水約9グラム以上であるティッシュシートを製造するステップと、
(f)前記ティッシュシートを、繊維1グラム当たり約10立方センチメートル以上のロール嵩を有する1プライのロール状ティッシュに加工するステップとを含み、
前記ティッシュシートを脱水しかつ乾燥させるために用いられるティッシュ3.56平方メートル当たりの総COe排出量が、約60ないし約100グラムであることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記成形ウエットウェブが、長いラップトランスファー部によって前記ヤンキードライヤーの前記表面へ移動させられることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ウエットティッシュウェブが、ツインワイヤフォーマを用いて形成されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ウエットウェブが、多ゾーンのエアプレス機を用いて脱水されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記成形ウエットウェブが、前記ウェブ1平方センチメートル当たり約0.35キログラム以下の押し付け圧力を用いて前記ヤンキードライヤーの前記表面上へ移動させられることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記地合指数が、約120ないし約170であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ウェブが、約95パーセント以上の濃度になるまで乾燥させられることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ティッシュシートを脱水しかつ乾燥させるために用いられる前記ティッシュ3.56平方メートル当たりの総COe排出量が、約70ないし約100グラムであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ティッシュシートを脱水しかつ乾燥させるために用いられる前記ティッシュ3.56平方メートル当たりの総COe排出量が、約70ないし約80グラムであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ウェブを脱水するために用いられる前記ティッシュ3.56平方メートル当たりのCOe排出量が、約1ないし約5グラムであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
ロール状ティッシュの製造方法であって、
(a)繊維1グラム当たり水約1.5グラム以下の保水値を有する製紙繊維の水性懸濁液からツインワイヤフォーマを用いてウエットティッシュウェブを形成するステップと、
(b)前記ウエットウェブを、該ウエットウェブの保水濃度の約50ないし約65パーセントの濃度になるまで多ゾーンのエアプレス機を用いて脱水するステップと、
(c)前記脱水したウェブを成形ファブリック上へ、前記脱水したウェブが前記成形ファブリックの表面に倣った形状をなす成形ウエットウェブを形成するように、移動させるステップと、
(d)前記成形ウエットウェブを、前記ウェブ1平方センチメートル当たり約0.35キログラム以下の押し付け圧力で、フード付きヤンキードライヤーの表面上へ移動させるステップと、
(e)前記ウェブを濃度が約95パーセント以上になるまで乾燥させ、前記乾燥させたウェブをクレーピングして、坪量が1平方メートル当たり約25ないし約40グラム、地合指数が約120以上、かつ垂直水吸収能力が繊維1グラム当たり水約9グラム以上であるティッシュシートを生成するステップと、
(f)前記ティッシュシートを、繊維1グラム当たり約10立方センチメートル以上のロール嵩を有する1プライのロール状ティッシュに加工するステップとを含み、
前記ティッシュシートを脱水しかつ乾燥させるために用いられる前記ティッシュ3.56平方メートル当たりの総COe排出量が、約60ないし約100グラムであることを特徴とする方法。
【請求項12】
前記成形ウエットウェブが、長いラップトランスファー部によって前記ヤンキードライヤーの前記表面へ移動させられることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ティッシュシートを脱水しかつ乾燥させるために用いられる前記ティッシュ3.56平方メートル当たりの総COe排出量が、約70ないし約80グラムであることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記ウェブを脱水するために用いられる前記ティッシュ3.56平方メートル当たりのCOe排出量が、約1ないし約2グラムであることを特徴とする請求項11に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−526332(P2011−526332A)
【公表日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515677(P2011−515677)
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【国際出願番号】PCT/IB2009/052456
【国際公開番号】WO2009/156888
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(310007106)キンバリー クラーク ワールドワイド インコーポレイテッド (19)
【Fターム(参考)】