説明

環境浄化材、その製造方法、環境浄化方法及び環境浄化材の回収方法

【課題】多量の光触媒を簡単に基体に担持させることができ、しかも、長期間に亘って高効率な環境浄化作用を提供する。
【解決手段】吸水率が70〜400%の粉粒状無機多孔質基体に、光触媒含有スラリーの塗布含浸により光触媒を固形分で無機多孔質基体1g当たり0.01g以上担持させる。無機多孔質基体は、火山噴出物を焼成発泡処理した無機中空バルーンなどで、数多くの独立気泡と連続気泡により複層状に外殻及び空隙部が形成されているので、それぞれの空隙部に光触媒が浸透しやすく多くの量を担持できる。また、光触媒を担持させた基体を水面に浮遊させた場合、水も浸透するが、空隙部においては空気も多く保持されているため、水は浸透速度が制限されることで長時間沈みにくく、長期に亘って環境浄化材を水面で浮遊させることができ、光触媒も長期に酸化分解効果を持続させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光触媒を利用した環境浄化材、その製造方法、環境浄化方法及び環境浄化材の回収方法の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光触媒を利用して環境、例えば水を浄化する場合には、ガラスビーズ、発泡樹脂、セラミック等の様々な基体に光触媒を担持させることが行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、多孔質基体に光触媒を担持させた光触媒体(環境浄化材)を水面に散布して浮遊させ、光照射により有機物を酸化分解して有害生物の増殖防止を行う技術が提案されている。
【0004】
特許文献2には、石英粗面岩からなる基体に光触媒を担持させた光触媒体を水面に浮遊させて油を分解除去する技術が提案されている。
【0005】
特許文献3には、光触媒を中空状ガラス基体の表面に無機質の結合剤で固定させて光触媒体とし、この光触媒体を水中に浮遊させて水を浄化する技術が提案されている。
【0006】
特許文献4には、熱可塑性重合体からなる基体に光触媒を熱融着させて光触媒体とし、この光触媒体を水面に浮遊させて水中の有機物を分解除去する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−188269号公報(段落0010欄、段落0011欄、図1)
【特許文献2】特開2000−288402号公報(段落0026欄、段落0027欄、図1)
【特許文献3】特開平10−249210号公報(段落0022欄、段落0033欄、図1)
【特許文献4】特開2000−325796号公報(段落0021欄、段落0036欄、図1、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように光触媒を利用した水浄化(環境浄化)は、光触媒の担持量が多いほど酸化分解効果が見込めるが、特許文献1には、基体が単に多孔質とあるのみで具体的な吸水量が開示されていない。
【0009】
特許文献2では、基体である石英粗面岩の吸水率は7.86〜22.58%であると段落0021欄に記載されているが、これでは、多量の光触媒を含浸させて担持させることは困難である。また、光触媒は石英粗面岩の表面に多く付着させると剥離し易くなる。
【0010】
特許文献3では、光触媒の基体表面への固着を確保できるが、その反面、光触媒が結合剤で覆われて光触媒の酸化分解力を十分に発揮できない。
【0011】
特許文献4では、光触媒を基体である熱可塑性重合体に担持させる手法として加熱(熱融着)処理を採用しているため、設備やエネルギーが必要で生産性に劣る。
【0012】
この発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、多量の光触媒を簡単に基体に担持させることができ、しかも、長期間に亘って高効率な環境浄化作用を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するため、この発明は、光触媒を担持させる基体として高吸収率のものを採用するとともに、光触媒の担持手法を工夫したことを特徴とする。
【0014】
具体的には、この発明は、環境浄化材、その製造方法、環境浄化方法及び環境浄化材の回収方法を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0015】
すなわち、第1〜4の発明は、環境浄化材に関するものであり、そのうち、第1の発明は、吸水率が70〜400%の粉粒状無機多孔質基体に、光触媒含有スラリーの塗布含浸により光触媒を固形分で無機多孔質基体1g当たり0.01g以上担持させたことを特徴とする。
【0016】
第2の発明は、第1の発明において、上記無機多孔質基体の水浮揚率が20%以上であることを特徴とする。
【0017】
第3の発明は、第1又は2の発明において、上記無機多孔質基体は、火山噴出物を焼成発泡処理した無機中空バルーンであることを特徴とする。
【0018】
第4の発明は、第1〜3のいずれか1つの発明において、上記無機多孔質基体は、磁性を帯びていることを特徴とする。
【0019】
第5〜8の発明は、環境浄化材の製造方法に関するものであって、そのうち、第5の発明は、粉粒状無機多孔質原料を焼成温度720〜850℃で焼成発泡処理して吸水率が70〜400%の無機多孔質基体とした後、この無機多孔質基体に光触媒含有スラリーを塗布含浸させて、光触媒を固形分で無機多孔質基体1g当たり0.01g以上担持させた環境浄化材を得ることを特徴とする。
【0020】
第6の発明は、第5の発明において、上記無機多孔質基体の水浮揚率が20%以上であることを特徴とする。
【0021】
第7の発明は、第5又は6の発明において、上記無機多孔質基体は、火山噴出物を焼成発泡処理した無機中空バルーンであることを特徴とする。
【0022】
第8の発明は、第5〜7のいずれか1つの発明において、上記無機多孔質基体は、磁性を帯びていることを特徴とする。
【0023】
第9及び第10の発明は、環境浄化方法に関するものであり、そのうち、第9の発明は、第1〜4のいずれか1つの発明に記載の環境浄化材を水面又は汚水面に散布して浮遊させ、光の照射により光触媒の酸化分解作用を誘発して有機物を分解処理し水又は汚水を浄化することを特徴とする。
【0024】
第10の発明は、第1〜4のいずれか1つの発明に記載の環境浄化材を汚物に散布して付着させ、光の照射により光触媒の酸化分解作用を誘発して有機物を分解処理し汚物を浄化することを特徴とする。
【0025】
第11の発明は、環境浄化材の回収方法に関するものであって、第4の発明に記載の環境浄化材を水面又は汚水面に散布して浮遊させ、光の照射により光触媒の酸化分解作用を誘発して有機物を分解処理し水又は汚水を浄化した後、上記環境浄化材を磁力作用を利用して回収することを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
第1,5の発明によれば、吸水率が特許文献2に比べて格段に高く、よって、光触媒の担持量が吸水率に比例して多く、浄化効率を向上させることができる。また、光触媒含有スラリーを例えば簡便な噴霧処理により無機多孔質基体に塗布含浸させるだけで多量の光触媒を担持させることができ、設備が大掛かりにならずに生産的・経済的である。
【0027】
特に、第2,6の発明では、浄化対象が水や汚水である場合、担持量の多い環境浄化材を沈殿することなく長期間に亘って水面に多く浮遊させておくことができ、多くの光触媒に十分に光を照射して高い浄化効果を得ることができて、第9の環境浄化方法の発明に有用である。このような吸水率の高い環境浄化材は、第5の発明のように、無機多孔質原料を焼成発泡処理することで実現できる。
【0028】
さらに、第3,7の発明では、無機多孔質基体は、その材質特性により軽量・高強度・不燃であり、長期に亘って安定して使用できて環境浄化用として適するとともに、光を透過する材料であり、含浸された光触媒の酸化分解効果を妨げず、さらに、多くの独立気泡と連続気泡とを有していて多くの光触媒を含浸担持可能であり、かつ多くの空気層をも有していて、浄化対象が水や汚水である場合、環境浄化材を長期間に亘って水面に浮遊させることが可能であり、浄化作用を長期間持続させることができて、第9の環境浄化方法の発明に有用である。浄化対象が汚物である場合、抗菌・消臭効果が得られ、第10の環境浄化方法の発明に有用である。
【0029】
また、第4,8,11の発明では、浄化対象が水や汚水である場合、環境浄化材が水面(汚水面)や水中(汚水中)に拡散しても、永久磁石や電磁石等を用いて環境浄化材を吸着させたり、方向性を与えたりすることができ、必要な箇所に的確に分散させることができるとともに、所定の箇所に集合させて回収作業を効率かつ簡便に行い、かつリサイクル可能にすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、この発明の実施形態に係る環境浄化材、その製造方法、環境浄化方法及び環境浄化材の回収方法について説明する。
【0031】
この発明の実施形態に係る環境浄化材は、吸水率が70〜400%(望ましくは80〜400%)の粉粒状無機多孔質基体に、光触媒含有スラリーの塗布含浸により光触媒を固形分で無機多孔質基体1g当たり0.01g以上(望ましくは0.04g以上)担持させて構成されている。
【0032】
上記無機多孔質基体として、吸水率が70〜400%のものを採用したのは、70%を下回ると、光触媒含有スラリーを塗布含浸により担持可能な光触媒量が少なすぎるからであり、一方、吸水量が400%を超えると、例えば無機多孔質基体の比重が0.7程度であっても、水面上に蒔いた場合には、短時間で多量に吸水してしまって水中へ沈殿してしまい、光触媒の酸化分解力を水面上で効果的に発揮させることができなくなるからである。なお、吸水率とは、絶乾重量における24時間後の吸水重量から絶乾重量を除した重量の百分率である。
【0033】
上記無機多孔質基体は、例えば、火山噴出物を焼成発泡処理した無機中空バルーンである。この無機中空バルーンとは、例えばシラスバルーンやパーライトが挙げられる。これらは数多くの独立気泡と連続気泡により複層状に外殻及び空隙部が形成されているので、それぞれの空隙部に光触媒が浸透しやすく多くの量を担持できる。また、この光触媒を担持させた基体を水面に浮遊させた場合、水も浸透するのではあるが、空隙部においては空気も多く保持されているため、水は浸透速度が制限されることで長時間沈みにくく、長期に亘って環境浄化材を水面で浮遊させることができ、光触媒も長期に酸化分解効果を持続させることができる。なお、無機多孔質基体としては、シラスバルーンやパーライト以外に、ガラスバルーンやフライアッシュバルーン等も採用することができる。
【0034】
なお、上記無機多孔質基体の比重は、水よりも小さければ水面上に浮遊可能であって、効率的な酸化分解効果を得ることができるが、光触媒の担持量や吸水量を考慮するとその嵩比重は0.05〜0.5程度がよい。
【0035】
上記無機多孔質基体は、磁性を帯びていてもよい。無機多孔質基体に磁性を帯びさせるには、無機多孔質基体に鉄粉、フェライト、ニッケル、コバルト等の磁性粉を付着させたり膜を形成すればよく、その付着方法としては、バインダーを利用したり、光触媒含有スラリーに混入させて無機多孔質基体に噴霧塗布してもよい。
【0036】
光触媒は特に限定されるものではないが、例えば、酸化チタン、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化バナジウム、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化銅、チタン酸ストロンチウム、硫化カドミウム、硫化モリブデン、硫化亜鉛やこれらの混合系あるいは複合系等が挙げられ、これらは単体でも複数併用しても構わないが、特に鉄・酸化チタン複合系のものは、紫外線だけでなく可視光でも反応し、酸化分解力が強いので好ましい。
【0037】
光触媒を無機多孔質基体に担持させる手法は、光触媒含有スラリーを無機多孔質基体の表面に例えばスプレーの噴霧により塗布含浸させることで行われ、上記吸水率の範囲であれば、簡便に担持させることができ、大掛かりな設備は不要であって生産性が高い。
【0038】
光触媒を固形分で無機多孔質基体1g当たり0.01g以上担持させたのは、担持させる光触媒は多いほど効果が見込めるので望ましいが、0.01gを下回ると、環境浄化材の単位重量当たりの酸化分解力が低くて時間が掛かりすぎるからである。また、単位水量当たり必要な環境浄化材が多量となり、水面に浮揚させても重層状になってしまい、下層の環境浄化材には光が当たらず、酸化分解効果が見込めなくなり、経済的にも高コストになるからである。
【0039】
上記無機多孔質基体としては、水浮揚率が20%以上(望ましくは25%以上)のものを採用している。水浮揚率が20%を下回ると、多くの環境浄化材が可視光の直接届かない水中へ沈殿してしまって酸化分解効率が良くないからである。なお、水浮揚率とは、水浄化材が精製水に1時間浮揚している量の割合を示す。
【0040】
上述の如く構成された環境浄化材は、粉粒状無機多孔質原料(シラスや粉砕鉱石等)を焼成炉にて、焼成温度720〜850℃で焼成発泡処理して吸水率が70〜400%の無機多孔質基体とした後、この無機多孔質基体に光触媒含有スラリーを塗布含浸させて、光触媒を固形分で無機多孔質基体1g当たり0.01g以上担持させることで得られる。
【0041】
このようにして得られた環境浄化材は、水面又は汚水面に散布して浮遊させ、光の照射により光触媒の酸化分解作用を誘発して有機物を分解処理し水又は汚水を浄化したり、あるいは、汚物に散布して付着させ、光の照射により光触媒の酸化分解作用を誘発して有機物を分解処理し汚物を浄化する。上記水とは、自然の湖や池、人工のプールや水槽等の水を含み、汚水とはこれらの汚れた水を含むが、限定されない。上記汚物とは、人や動物から生じる汚物や、生ごみ等の有機系汚物等を含むが、これらに限定されない。
【0042】
上記無機多孔質基体として、磁性を帯びたものを使用する場合には、環境浄化材を水面又は汚水面に散布して浮遊させ、光の照射により光触媒の酸化分解作用を誘発して有機物を分解処理し水又は汚水を浄化した後、上記環境浄化材を磁力作用を利用して回収し、リサイクルすればよい。
【0043】
このように、この実施形態では、環境浄化材として、吸水率が70〜400%の粉粒状無機多孔質基体に、光触媒含有スラリーの塗布含浸により光触媒を固形分で無機多孔質基体1g当たり0.01g以上担持させたものを採用したので、特許文献2に比べて格段に高い吸水率によって光触媒を多量に担持させ、浄化効率を向上させることができる。また、光触媒含有スラリーを例えば簡便な噴霧処理により無機多孔質基体に塗布含浸させるだけで多量の光触媒を担持させることができ、大掛かりな設備がいらず、生産的・経済的なものとすることができる。
【0044】
また、上記無機多孔質基体の水浮揚率を20%以上にしたので、浄化対象が水や汚水である場合、担持量の多い環境浄化材を沈殿することなく長期間に亘って水面に多く浮遊させておくことができ、多くの光触媒に十分に光を照射して高い浄化効果を得ることができる。
【0045】
さらに、上記無機多孔質基体として、火山噴出物を焼成発泡処理した無機中空バルーンを採用したので、その材質特性により軽量・高強度・不燃であり、浄化対象が水や汚水である場合、長期に亘って安定して使用できて水浄化用として適するとともに、光を透過する材料であり、含浸された光触媒の酸化分解効果を妨げず、さらに、多くの独立気泡と連続気泡とを有していて多くの光触媒を含浸担持可能であり、かつ多くの空気層をも有していて、環境浄化材を長期間に亘って水面に浮遊させることが可能であり、浄化作用を長期間持続させることができる。
【0046】
また、浄化対象が水や汚水である場合、磁性を帯びた無機多孔質基体を使用すれば、環境浄化材が水面(汚水面)や水中(汚水中)に拡散しても、環境浄化材を吸着させたり、方向性を与えたりすることで分散箇所を自在に設定できるとともに、所定の箇所に集合させて効率良くかつ簡便に回収作業を行い、かつリサイクル可能にすることができる。
【0047】
上記のことを実証するために、下記に実験例(実施例1〜4、比較例)を挙げる。実験の結果、実施例1〜4では、環境浄化材により短期間での脱色効果(光触媒による酸化分解効果)が認められたが、比較例では、脱色効果(光触媒による酸化分解効果)が認められなかった。
【0048】
<実施例1>
シラスを焼成炉にて焼成温度810℃で焼成発泡させ、吸水率200%、嵩比重0.10のシラスバルーンからなる無機多孔質基体を得た。
【0049】
得られた無機多孔質基体3gを分液ロートで精製水に浮揚させて、1時間後に水浮揚物と沈殿物とに分離し、水浮揚物の重量を算出した。その結果、水浮揚率は60%であった。
【0050】
上記無機多孔質基体に鉄・酸化チタン複合系光触媒を含有するスラリー(濃度2%)をスプレーで塗布含浸させ、光触媒を固形分で無機多孔質基体1g当たり0.04g担持させた環境浄化材を得た。
【0051】
−脱色試験−
得られた環境浄化材1gを、ガラス容器内に入ったメチレンブルー水溶液(メチレンブルー0.001mmo1/L)溶液80gに浮遊させて天気の良い屋外に静置し、7時間後に目視で脱色の様子を観察したところ、無色になっており、光触媒による酸化分解効果が十分に認められた。
【0052】
<実施例2>
シラスを焼成炉にて焼成温度760℃で焼成発泡させ、吸水率150%、嵩比重0.30のシラスバルーンからなる無機多孔質基体を得た。
【0053】
得られた無機多孔質基体を対象にして実施例1と同様に水浮揚物の重量を算出した。その結果、水浮揚率は43%であった。
【0054】
上記無機多孔質基体に鉄・酸化チタン複合系光触媒を含有するスラリー(濃度6%)をスプレーで塗布含浸させ、光触媒を固形分で無機多孔質基体1g当たり0.04g担持させた環境浄化材を得た。
【0055】
−脱色試験−
実施例1と同様に脱色試験を行ったところ、脱色して無色となっており、光触媒による酸化分解効果が十分に認められた。
【0056】
<実施例3>
シラスを焼成炉にて焼成温度730℃で焼成発泡させ、吸水率80%、嵩比重0.44のシラスバルーンからなる無機多孔質基体を得た。
【0057】
得られた無機多孔質基体を対象にして実施例1と同様に水浮揚物の重量を算出した。その結果、水浮揚率は25%であった。
【0058】
上記無機多孔質基体に鉄・酸化チタン複合系光触媒を含有するスラリー(濃度10%)をスプレーで塗布含浸させ、光触媒を固形分で無機多孔質基体1g当たり0,04g担持させた環境浄化材を得た。
【0059】
−脱色試験−
実施例1と同様に脱色試験を行ったところ、脱色して無色となっており、光触媒による酸化分解効果が十分に認められた。
【0060】
<実施例4>
シラスを焼成炉にて焼成温度750℃で焼成発泡させ、吸水率100%、嵩比重0.40のシラスバルーンからなる無機多孔質基体を得た。
【0061】
得られた無機多孔質基体を対象にして実施例1と同様に水浮揚物の重量を算出した。その結果、水浮揚率は30%であった。
【0062】
上記無機多孔質基体に鉄・酸化チタン複合系光触媒を含有するスラリー(濃度2%)をスプレーで塗布含浸させ、光触媒を固形分で無機多孔質基体1g当たり0,02g担持させた環境浄化材を得た。
【0063】
−脱色試験−
実施例1と同様に脱色試験を行ったところ、淡く青みがかっているものの、満足のいく光触媒による酸化分解効果が認められた。
【0064】
<比較例>
シラスを焼成炉にて焼成温度700℃で焼成発泡させ、吸水率60%のシラスバルーンからなる無機多孔質基体を得た。
【0065】
得られた無機多孔質基体を対象にして実施例1と同様に水浮揚物の重量を算出した。その結果、浮揚率は13%であった。
【0066】
上記無機多孔質基体に鉄・酸化チタン複合系光触媒を含有するスラリー(濃度2%)をスプレーで塗布含浸させ、光触媒を固形分で無機多孔質基体1g当たり0.04g担持させた環境浄化材を得た。
【0067】
−脱色試験−
実施例1と同様に脱色試験を行ったところ、ほぼ青色のままであり、光触媒による酸化分解効果を確認できなかった。
【産業上の利用可能性】
【0068】
この発明は、光触媒を利用した環境浄化材、その製造方法、環境浄化方法及び環境浄化材の回収方法について有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水率が70〜400%の粉粒状無機多孔質基体に、光触媒含有スラリーの塗布含浸により光触媒を固形分で無機多孔質基体1g当たり0.01g以上担持させたことを特徴とする環境浄化材。
【請求項2】
請求項1に記載の環境浄化材において、
上記無機多孔質基体の水浮揚率が20%以上であることを特徴とする環境浄化材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の環境浄化材において、
上記無機多孔質基体は、火山噴出物を焼成発泡処理した無機中空バルーンであることを特徴とする環境浄化材。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の環境浄化材において、
上記無機多孔質基体は、磁性を帯びていることを特徴とする環境浄化材。
【請求項5】
粉粒状無機多孔質原料を焼成温度720〜850℃で焼成発泡処理して吸水率が70〜400%の無機多孔質基体とした後、この無機多孔質基体に光触媒含有スラリーを塗布含浸させて、光触媒を固形分で無機多孔質基体1g当たり0.01g以上担持させた環境浄化材を得ることを特徴とする環境浄化材の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の環境浄化材の製造方法において、
上記無機多孔質基体の水浮揚率が20%以上であることを特徴とする環境浄化材の製造方法。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の環境浄化材の製造方法において、
上記無機多孔質基体は、火山噴出物を焼成発泡処理した無機中空バルーンであることを特徴とする環境浄化材の製造方法。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか1項に記載の環境浄化材の製造方法において、
上記無機多孔質基体は、磁性を帯びていることを特徴とする環境浄化材の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の環境浄化材を水面又は汚水面に散布して浮遊させ、光の照射により光触媒の酸化分解作用を誘発して有機物を分解処理し水又は汚水を浄化することを特徴とする環境浄化方法。
【請求項10】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の環境浄化材を汚物に散布して付着させ、光の照射により光触媒の酸化分解作用を誘発して有機物を分解処理し汚物を浄化することを特徴とする環境浄化方法。
【請求項11】
請求項4に記載の環境浄化材を水面又は汚水面に散布して浮遊させ、光の照射により光触媒の酸化分解作用を誘発して有機物を分解処理し水又は汚水を浄化した後、上記環境浄化材を磁力作用を利用して回収することを特徴とする環境浄化材の回収方法。

【公開番号】特開2011−156469(P2011−156469A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−18995(P2010−18995)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000204985)大建工業株式会社 (419)
【出願人】(508205545)株式会社フォーティー科研 (1)
【出願人】(507129282)株式会社ナノウェイヴ (1)
【Fターム(参考)】