説明

環状イミド化合物

【課題】ゲル強度に優れた新規な環状イミド化合物、ゲル強度や皮膚等への塗布時の延展性に優れたゲル状組成物、外用剤組成物、化粧料組成物、及び芳香剤組成物、並びに該環状イミド化合物の製造方法を提供する。
【解決手段】一般式(1)で表される環状イミド化合物、この環状イミド化合物を含むゲル化剤を用いることである。


(式中、R1は、水素原子又はアルキル基であり、R2は、全炭素数6〜24の炭化水素基を示し、n、p及びqは、それぞれ独立に0〜3の整数を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規な環状イミド化合物、該環状イミド化合物を含むゲル化剤、ゲル状組成物、外用剤組成物、化粧料組成物、及び芳香剤組成物、並びに該環状イミド化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水に溶解しない油性基材のゲル化剤としては、ポリアミド樹脂、12−ヒドロキシステアリン酸、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジブチルアミド、ジベンジリデン−D−ソルビトール等に代表される芳香族アルデヒドと多価アルコールとの縮合物等が知られている。
また、他の油性基剤のゲル化剤としては、ヘキサン−1,3,6−トリカルボン酸アルキルアミドが知られており、この物質をゲル化剤として含む化粧料組成物等が報告されている(例えば、特許文献1参照)。
これらのゲル化剤は様々な油性基剤をゲル化できるが、得られたゲル状組成物を皮膚や毛髪等に塗布した時の感触は満足できるものではなく、延び易さ(延展性)等に欠けるという問題があった。
【0003】
【特許文献1】特開2005−281292号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ゲル強度に優れた新規な環状イミド化合物、ゲル強度や皮膚等への塗布時の延展性に優れたゲル状組成物、外用剤組成物、化粧料組成物、及び芳香剤組成物、並びに該環状イミド化合物の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、特定の環状イミド化合物が油性基剤のゲル化剤として優れた性質を有しており、この環状イミド化合物と油性基剤とから調製されたゲル状組成物は、優れたゲル強度と、皮膚や毛髪等に塗布する際に優れた延展性を有し、化粧料組成物等としても有用であることを見出した。
すなわち、本発明は、次の(1)〜(7)を提供する。
(1)下記一般式(1)で表される環状イミド化合物。
【0006】
【化1】

【0007】
(式中、R1は、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基であり、R2は、それぞれ独立に水酸基、エーテル基、エステル基、アミノ基、及びアミド基の中から選ばれる少なくとも一種を含んでいてもよい全炭素数6〜24の飽和又は不飽和の直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基を示し、n、p及びqは、それぞれ独立に0〜3の整数を示す。)
(2)油性ゲル化剤と、前記(1)の環状イミド化合物とを含むゲル化剤。
(3)油性基材と、前記(2)のゲル化剤とを含むゲル状組成物。
(4)前記(1)の環状イミド化合物を含む外用剤組成物。
(5)前記(1)の環状イミド化合物を含む化粧料組成物。
(6)香料と、前記(1)の環状イミド化合物とを含む芳香剤組成物。
(7)下記一般式(2)で表されるカルボン酸誘導体又は該カルボン酸反応性誘導体1モルに対して、下記一般式(3)で表されるアミンを1〜3モル反応させる下記一般式(1)で表される環状イミド化合物の製造方法。
【0008】
【化2】

【0009】
(式中、R1及びR2、並びにn、p及びqは、前記に同じである。)
【0010】
【化3】

【0011】
(式中、n、p及びqは前記に同じである。)
【0012】
【化4】

【0013】
(式中、R1及びR2は、前記に同じである。)
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、化粧品分野等における油性基材のゲル化剤として有用な新規な環状イミド化合物、該環状イミド化合物を含み油性基材に対して優れたゲル化能を有するゲル化剤、高いゲル強度と優れた延展性を有するゲル状組成物、化粧料組成物、外用剤組成物、及び芳香剤組成物、並びに該環状イミド化合物の効率的な製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
〔環状イミド化合物〕
本発明の環状イミド化合物は、前記一般式(1)で表される。この一般式(1)において、R1は、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示す。炭素数1〜3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられるが、この中では、プロピル基が好ましい。
【0016】
また、R2は、それぞれ独立に水酸基、エーテル基、エステル基、アミノ基、及びアミド基の中から選ばれる少なくとも一種を含んでいてもよい全炭素数6〜24の飽和又は不飽和の直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基を示す。
2の全炭素数としては、好ましくは8〜24、より好ましくは12〜24である。
飽和の直鎖状炭化水素基としては、例えば、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、イコシル、ドコシル、テトラコシル等の基が挙げられる。
飽和の分岐鎖状炭化水素基としては、例えば、メチルペンチル、メチルヘキシル、エチルヘキシル、メチルノニル、ジメチルオクチル、テトラメチルオクチル、メチルドデシル、ジメチルウンデシル、トリメチルデシル、ヘキシルデシル、メチルペンタデシル、ジメチルテトラデシル、トリメチルトリデシル、テトラメチルドデシル、オクチルドデシル、デシルテトラデシル等の基が挙げられる。
不飽和の直鎖状又は分岐鎖状炭化水素基としては、例えば、ヘキセニル、オクテニル、デセニル、ドデセニル、テトラデセニル、ヘキサデセニル、オクタデセニル、イコセニル、ドコセニル、テトラコセニル、メチルペンテニル、メチルヘキセニル、エチルヘキセニル、メチルノネニル、ジメチルオクテニル、テトラメチルオクテニル等の基が挙げられる。
【0017】
水酸基を有する飽和の直鎖状又は分岐鎖状炭化水素基としては、例えば、ヒドロキシヘキシル、ヒドロキシオクチル、ヒドロキシデシル、ヒドロキシドデシル、ヒドロキシテトラデシル、ヒドロキシヘキサデシル、ヒドロキシオクタデシル、ヒドロキシイコシル、ヒドロキシドコシル、ヒドロキシテトラコシル、ヒドロキシメチルペンチル、ヒドロキシメチルヘキシル、ヒドロキシエチルヘキシル、ヒドロキシメチルノニル、ヒドロキシジメチルオクチル、ヒドロキシテトラメチルオクチル等の基が挙げられる。
水酸基を有する不飽和の直鎖状又は分岐鎖状炭化水素基としては、例えば、ヒドロキシヘキセニル、ヒドロキシオクテニル、ヒドロキシデセニル、ヒドロキシドデセニル、ヒドロキシテトラデセニル、ヒドロキシヘキサデセニル、ヒドロキシオクタデセニル、ヒドロキシイコセニル、ヒドロキシドコセニル、ヒドロキシテトラコセニル、ヒドロキシメチルペンテニル等の基が挙げられる。
【0018】
エーテル基を有する炭化水素基としては、(エチルヘキシロキシ)エチル、ドデシロキシエチル、オクタデシロキシエチル、オクタデシロキシプロピル、[(オクタデシロキシ)エチロキシ]エチル、オクタデセニロキシプロピル等の基が挙げられる。
エステル基を有する炭化水素基としては、2−ステアロイルオキシエチル基等が挙げられ、アミノ基を有する炭化水素基としては、N,N−ジオクチル−3−アミノプロピル基等が挙げられる。
アミド基を有する炭化水素基としては、N−オクタデシロイルアミノエチル、N−ドデシロイルアミノプロピル、N−オクタデセニロイルアミノプロピル、N−(2−エチルヘキサノイル)アミノエチル等の基が挙げられる。
前記の炭化水素基において、分岐の位置、不飽和結合の位置、並びに水酸基、エーテル基、エステル基、アミノ基、及びアミド基の位置は、特に限定されない。
これらの中では、本発明の環状イミド化合物により形成されるゲルの透明性及び強度の観点から、R2としては、炭素数8〜24の飽和又は不飽和の直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基、及びエーテル基を有する前記炭化水素基が好ましく、さらに炭素数12〜24の飽和又は不飽和の直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基、及びエーテル基を有する前記炭化水素基が好ましい。この中では、特にオクタデシロキシエチレン、オクタデシロキシプロピレンが好ましい。
【0019】
前記一般式(1)においてn、p及びqは、それぞれ独立に0〜3の整数を示す。n、p及びqとしては、イミド環の形成の観点から、pとqとの和が1又は2であることが好ましく、さらには、nは1〜3、かつpとqとの和が2であることが好ましい。
【0020】
〔環状イミド化合物の製造方法〕
本発明の環状イミド化合物の製造方法については、特に制限はないが、例えば、以下に示す方法によれば効率的に製造することができる。
すなわち、一般式(1)で表される環状イミド化合物は、下記反応式に示すように、一般式(2)で表されるトリカルボン酸又はその反応性誘導体と、一般式(3)で表されるアミンとを反応させることにより、製造することができる。
【0021】
【化5】

【0022】
(式中、R1及びR2、並びにn、p及びqは、前記に同じである。)
前記一般式(3)で表されるアミンは1種単独で用いてもよいが、2種以上を組み合わせて用いることもできる。該アミンを2種以上用いる場合は、少なくとも1種が、R1に水素原子を有するアミンであればよい。
また、前記一般式(2)で表されるトリカルボン酸の反応性誘導体としては、該トリカルボン酸におけるカルボン酸の少なくとも一部が、低級アルキルエステル化、酸ハロゲン化物化又は酸無水物化しているものを挙げることができる。
【0023】
前記一般式(3)で表されるアミンの使用量は、一般式(2)で表されるトリカルボン酸又はその反応性誘導体1モルに対して、通常1〜10モルである。本発明の環状イミド化合物を収率よく得る観点から、前記アミンの使用量としては、化学量論的量よりも少量用いることが好ましく、前記トリカルボン酸又はその反応性誘導体1モルに対して、1〜3モルであることがより好ましい。
反応温度は、通常120〜220℃である。好ましくは130〜200℃の温度である。反応時間は、反応温度及び原料のトリカルボン酸やアミンの種類等に左右され、一概に定めることはできないが、通常1〜20時間である。
【0024】
〔ゲル化剤〕
本発明のゲル化剤は、本発明の環状イミド化合物と、油性ゲル化剤とを含む。ここで、油性ゲル化剤とは、油性基材をゲル化するために用いる助剤であり、いうまでもなく、本発明の環状イミド化合物を除く化合物からなるものである。
油性ゲル化剤としては、公知のものを用いることができる。例えば、ポリアミド樹脂、12−ヒドロキシステアリン酸、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジブチルアミド、ジベンジリデン−D−ソルビトール等に代表される芳香族アルデヒドと多価アルコールとの縮合物等が挙げられる。好ましくは、下記一般式(4)
【0025】
【化6】

【0026】
(式中、R3は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示し、R4は、それぞれ独立に水酸基、エーテル基、エステル基、アミノ基、及びアミド基の中から少なくとも一種を含んでいてもよい全炭素数6〜24の飽和又は不飽和の直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基を示し、r、s及びtは、それぞれ独立に0〜3の整数を示す。)
で表されるトリアミド化合物が挙げられる。
前記一般式(4)において、R3の全炭素数としては、好ましくは8〜24、より好ましくは12〜24である。炭化水素基の具体例及び好適例は、前記一般式(1)の炭化水素基について説明した例示と同じである。
このトリアミド化合物の好適例としては、ヘキサン−1,3,6−トリカルボン酸トリオクタデシルアミド、ヘキサン−1,3,6−トリカルボン酸トリ(2’−エチルヘキシル)アミド、ヘキサン−1,3,6−トリカルボン酸トリドデシルアミド、ヘキサン−1,3,6−トリカルボン酸トリ(3’−オクタデシロキシプロピル)アミド等が挙げられる。これらの中では、特に好ましくは、ヘキサン−1,3,6−トリカルボン酸トリ(3’−オクタデシロキシプロピル)アミドが挙げられる。
また、油性ゲル化剤は、一種又は二種以上の混合物であってもよい。
【0027】
本発明のゲル化剤中において、前記一般式(1)で表される環状イミド化合物の含有量は、ゲルの強度及び安定性、並びにゲルの外観への透明性付与の観点から、好ましくは0.1〜30質量%、より好ましくは1〜10質量%の範囲である。
【0028】
本発明のゲル化剤において、前記一般式(1)で表される環状イミド化合物と油性ゲル化剤の割合は、油性基剤がゲル化する範囲であれば特に制限はない。通常、該環状イミド化合物の含有量としては、油性ゲル化剤100質量部に対して0.1〜30質量部である。0.1質量部以上であれば、得られるゲル状組成物を皮膚や毛髪に塗布する際の良好な延展性を得ることができる。また、30質量部以下であれば、得られるゲル状組成物が良好なゲル強度を得ることができる。ゲル強度及び延展性の観点から、好ましくは1〜20質量部、より好ましくは2〜15質量部、さらに好ましくは3〜10質量部である。
【0029】
さらに、本発明のゲル化剤には、用途及び必要に応じて、水の他、界面活性剤、水ゲル化剤その他各種添加剤等を含有することができる。
前記界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、又は両性界面活性剤のいずれを用いてもよい。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸塩、アルキルポリアルキレンオキシド硫酸塩、アルキルリン酸塩エステル、脂肪酸塩、N−長鎖アシルアミノ酸塩、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、アルキルエーテルカルボン酸塩等を挙げることができる。
非イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルポリアルキレンオキシド、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド、モノ又はポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリンアルキルエーテル、アルキルポリアルキレンオキシドグリセリンエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、アルキルアミンオキシド等を挙げることができる。
【0030】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルアンモニウムクロライド、ジアルキルアンモニウムクロライドやそれらの4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、脂肪酸アシルアルギニンエステル等を挙げることができる。
両性界面活性剤としては、例えば、カルボキシベタイン等のベタイン型界面活性剤、アミノカルボン酸型界面活性剤、イミダゾリン型界面活性剤等を挙げることができる。
水ゲル化剤としては、架橋化ポリカルボン酸塩や疎水化多糖誘導体等が挙げられる。
【0031】
その他の各種添加剤としては、アミノ酸類、ポリアミノ酸類、多価アルコール、低級アルコール、水溶性高分子化合物類が挙げられる。
アミノ酸類としては、グリシン、アラニン、セリン、スレオニン、アルギニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、ロイシン、バリン等、ポリアミノ酸類としては、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸等を含むポリアミノ酸及びその塩等が挙げられる。
多価アルコールとしては、グリセリン、エチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール等、低級アルコールとしては、エタノール、プロパノール等が挙げられる。また、その他のアルコールとして、マンニトール等の糖アルコール及びそのアルキレンオキシド付加物等が挙げられる。
水溶性高分子化合物としては、ポリエチレングリコール、アラビアゴム類、アルギン酸塩、キサンタンガム、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸塩、キチン、キトサン、水溶性キチン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、ポリ塩化ジメチルメチレンピペリジウム、ポリビニルピロリドン誘導体四級アンモニウム、カチオン化プロテイン、コラーゲン分解物及びその誘導体、アシル化タンパク、ポリグリセリン等が挙げられる。
その他、動植物抽出物、細胞間脂質(セラミド等)、核酸、ビタミン、酵素、抗炎症剤、殺菌剤、防腐剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、キレート剤、制汗剤、顔料、色素、酸化染料、有機及び無機粉体、pH調整剤、パール化剤、湿潤剤、香料等の添加剤も使用することができる。
【0032】
〔ゲル状組成物〕
本発明のゲル状組成物は、油性基材と、本発明のゲル化剤とを含むものである。
このような油性基材としては、加熱により、該ゲル化剤を十分に溶解させ、室温に冷却した際にゲルを形成するものであればよい。例えば、高級アルコール、脂肪酸、エステル類、炭化水素化合物、油脂、香料等が挙げられる。
高級アルコールとしては、シリコーン油やセチルアルコール、イソステアリルアルコール、ラウリルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オクチルドデカノール等が挙げられる。
脂肪酸としては、イソステアリン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸等が挙げられる。
エステル類としては、ミリスチン酸ミリスチル、ラウリン酸ヘキシル、オレイン酸デシル、ミリスチン酸イソプロピル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、モノステアリン酸グリセリン、フタル酸ジエチル、モノステアリン酸エチレングリコール、オキシステアリン酸オクチル等が挙げられる。
炭化水素化合物としては、流動パラフィン、イソパラフィン、ワセリン、スクワラン、スクワレン等が挙げられる。
油脂としては、ラノリン、還元ラノリン、カルナバロウ等のロウ、ヤシ油、パーム核油、ツバキ油、ゴマ油、ヒマシ油、オリーブ油等が挙げられる。
香料としては、ピネン、リモネン、テルピノーレン、ゲラニオール、シトロネロール、メントール、シトラール、シトロネラール、バニリン、ウンデカラクトン、メチルノニルケトン、プレゴン、ヌートカトン、クマリン、ムスコン、シクロペンタデカノン、シクロペンタデカノリド等が挙げられる。
これらの油性基材は単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
シリコーン油の例としては、メチルポリシロキサン、高重合メチルポリシロキサン、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリオキシプロピレン・メチルポリシロキサン共重合体等のエーテル変性シリコーン、ステアロキシメチルポリシロキサン、ステアロキシトリメチルシラン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、オクタメチルポリシロキサン、あるいはデカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、テトラヒドロテトラメチルシクロテトラシロキサン、メチルシクロポリシロキサン及びドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状シリコーン;メチルフェニルポリシロキサン、トリメチルシロキシケイ酸、アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体等のアミノ変性シリコーン、シラノール変性ポリシロキサン、アルコキシ変性ポリシロキサン、脂肪酸変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン、エポキシ変性ポリシロキサン、アルコキシ変性ポリシロキサンパーフルオロポリエーテル、ポリ酢酸ビニルジメチルポリシロキサン、及びそれらの混合物からなる群より選択されるシリコーン油が挙げられる。
これら油性基材のうち、強度及び透明度の観点から、シリコーン油、エステル類、炭化水素化合物、油脂、水酸基を持たない前記香料、及びそれらの混合物が好ましい。
【0034】
本発明のゲル状組成物において、ゲル化剤の含有量は、油性基剤がゲル化する範囲であれば特に制限はない。ゲル化剤の含有量としては、通常、ゲル化させるべき油性基剤100質量部に対し0.1〜15質量部の範囲である。0.1質量部以上であれば、良好なゲル強度を得ることができ、15質量部以下であれば、油性基剤に充分に溶解することができ、得られるゲル化油性基剤の外観が良くなる。
ゲル化剤の含有量としては、ゲル強度及びゲルの外観の観点から、好ましくは0.5〜10質量部であり、より好ましくは1〜10質量部であり、特に好ましくは5〜10質量部である。
【0035】
また、本発明のゲル状組成物における油性基材の含有量は、通常10〜99.9質量%の範囲で選定される。油性基材の含有量が前記範囲にあれば、良好なゲル強度を得ることができる。油性基材の含有量としては、20〜99質量%であることが好ましい。
【0036】
本発明のゲル状組成物の調製方法については特に制限はないが、例えば、油性基材とゲル化剤の混合物を、均一な溶液を形成するまで攪拌しながら、50〜180℃程度に加熱し、その後冷却することにより調製することができる。
【0037】
〔外用剤組成物、化粧料組成物及び芳香剤組成物〕
本発明の外用剤組成物、化粧料組成物、及び芳香剤組成物は、いずれも本発明の環状イミド化合物を含む。これらの組成物としては、本発明のゲル化剤又はゲル状組成物を含むものが好ましい。また、必要に応じて公知のゲル化剤、油性基材、界面活性剤、その他の各種添加剤を、適宜、組成物の調製前、調製中ないしは調製後又はそれらの全ての段階で添加して、含有することができる。
その製造方法については特に限定されず、当業界において一般に利用可能な混合方法、攪拌方法、練合方法等の手段を適宜用いることができる。
また、本発明の外用剤組成物、化粧料組成物、及び芳香剤組成物の形状は、特に限定されず、スティック形状等の固体状であることはもちろんのこと、本発明のゲル化剤を含む均一組成のクリーム状や、本発明のゲル状組成物を分散した溶液状又はクリーム状であってもよい。
これらには、従来使用されている油剤、精製水、各種界面活性剤、湿潤剤、防腐剤、酸化防止剤、香料、粉体、細胞間脂質(セラミド等)、紫外線吸収剤、薬効成分等の成分を適宜配合することもできる。
【実施例】
【0038】
実施例1
〔環状イミド化合物の製造〕
3−オクタデシロキシプロピルアミン163.19g、ヘキサン−1,3,6−トリカルボン酸36.35gを1Lの4つ口丸底フラスコに入れ、窒素気流下150℃で、5時間加熱攪拌した。反応生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより単離精製し環状イミド化合物〔N‐(3’‐オクタデシロキシプロピル)−4−[1−(3’−オクタデシロキシプロピル)−2,6,−ジオキソ−ピペリジン−3イル]−ブチラミド〕を得た。収率は41%であった。なお、収率は、高速液体クロマトグラフィー法(HPLC)で定量することにより算出した。
得られた化合物のIRチャートを 図1に、400MHz 1H−NMRチャートを 図2に示す。
なお、IR(測定機器:HORIBA FT710)は、KBr錠剤法により測定した。400MHz 1H−NMR(測定機器:Varian製 Marcury400)は、溶媒として、CD3OD/CDCl3、内部標準としてTMSを用いて、50℃の条件で測定した。
【0039】
〔外用剤組成物の調製方法〕
磁気攪拌子入り10mlのスクリュ−管瓶に、表1に示すように、前記で得られた環状イミド化合物、アミド化合物、イソパラフィン(油性基材)、環状ジメチコーン(油性基材)の所定量を加え、攪拌しながら110℃まで昇温し、均一に溶解させた。その後、直径10mm、深さ45mmの円柱状に穴を掘ったアルミニウム製の金型に流し込み、25℃で一晩放置した。十分に冷却した後、金型から取り出して、スティック状の外用剤組成物を得た。
【0040】
〔ゲル化能の評価〕
実施例の外用剤組成物のゲル強度を圧縮試験機(カトーテック株式会社「KES−G5」)で測定した。アダプターは、円柱タイプ(3mmφ)を用いた。試料台速度は、0.01cm/sとした。そのときのゲル強度(連続的に加重を行った時の応力の最大値を指す)の結果を表1に示す。
【0041】
〔延展性の評価〕
実施例の外用剤組成物を皮膚に塗布した時の延展性について、以下の評価基準に基づき専門パネラー5人により評価した。
5:非常に優れる
4:優れる
3:普通
2:劣る
1:非常に劣る
その評価結果の平均点が4.5以上を◎、3.5〜4.4を○、2.5〜3.4のときを△、2.4以下の時を×とした。結果を表1に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
比較例1
環状イミド化合物を用いずに、実施例と同様にして表1に示す組成のスティック状の外用剤組成物を得、ゲル強度及び延展性を測定した。結果を表1に示す。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の環状イミド化合物は、高いゲル強度と優れた延展性を有している。このため、ゲル化剤、皮膚用外用剤組成物、芳香剤組成物あるいは高粘度基材としても使用可能である。また、ゲル状化粧料やパック化粧料、粒状化粧料等の多様な形態の化粧料組成物に応用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】実施例で得られた環状イミド化合物のIRチャートである。
【図2】実施例で得られた環状イミド化合物の400MHz 1H−NMRチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される環状イミド化合物。
【化1】

(式中、R1は、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示し、R2は、それぞれ独立に水酸基、エーテル基、エステル基、アミノ基、及びアミド基の中から選ばれる少なくとも一種を含んでいてもよい全炭素数6〜24の飽和又は不飽和の直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基を示し、n、p及びqは、それぞれ独立に0〜3の整数を示す。)
【請求項2】
一般式(1)において、pとqとの和が1又は2である請求項1に記載の環状イミド化合物。
【請求項3】
油性ゲル化剤と、請求項1又は2に記載の環状イミド化合物とを含むゲル化剤。
【請求項4】
油性基材と、請求項3に記載のゲル化剤とを含むゲル状組成物。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の環状イミド化合物を含む外用剤組成物。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の環状イミド化合物を含む化粧料組成物。
【請求項7】
香料と、請求項1又は2に記載の環状イミド化合物とを含む芳香剤組成物。
【請求項8】
下記一般式(2)で表されるカルボン酸誘導体又は該カルボン酸の反応性誘導体1モルに対して、下記一般式(3)で表されるアミンを1〜3モル反応させる下記一般式(1)で表される環状イミド化合物の製造方法。
【化2】

(式中、R1及びR2、並びにn、p及びqは、前記に同じである。)
【化3】

(式中、n、p及びqは、前記に同じである。)
【化4】

(式中、R1及びR2は、前記に同じである。)

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−308409(P2007−308409A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−138200(P2006−138200)
【出願日】平成18年5月17日(2006.5.17)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】